荒子川における1,2-ジクロロエタンの追跡調査結果(その3)

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ページID1008672  更新日 2025年10月17日

平成14年12月26日

環境局公害対策部公害対策課

荒子川の荒子川ポンプ所において、公共用水域の水質常時監視で平成10年度から1,2-ジクロロエタンが環境基準を超過している問題について、以前の調査で高濃度に検出されている荒子川北中島橋付近の2地点において、ボーリング調査を実施した結果、地下水から高濃度の汚染を発見しましたのでお知らせします。

1 調査の概要

(1)調査時期

平成14年12月16日(月曜日)~20日(金曜日)

(2)調査地点(調査地点図及び調査地点断面図)

地点1

荒子川右岸の河床

(中川区中島新町三丁目109番地地先)

地点2

市道高畑町線第1号の歩道植栽部分

(中川区中島新町三丁目111番地の1西側)

(3)調査結果

地点2においてボーリングを行った際、地表下1.7~3.9mにおいて、廃棄物と考えられる層が見られました。

地下水の分析結果は表1のとおりです。

また、平成14年12月25日に地点2地表付近で、大気環境調査を行いました。その結果は表2のとおりで、環境基準値以下であり、名古屋市内の一般的な地点との違いはありませんでした。

2 今後の対応

周辺住民に対して、地下水を飲用しないよう注意を呼びかけるともに、重金属等その他の有害物質の土壌調査や地下水調査などを行い、汚染の状況を確認します。

表1 地下水の水質測定結果[単位:mg/L]

項目

地点1(河床部)

河床
から1m

地点1(河床部)

河床
から2m

地点1(河床部)

河床
から3m

地点2(歩道植栽部)

地表
から2m

地点2(歩道植栽部)

地表
から3m

地点2(歩道植栽部)

地表
から4m

環境基準値
ジクロロメタン <0.002 <0.002 <0.002

<0.002

<0.002 <0.002 0.02
四塩化炭素 <0.0002

<0.0002

<0.0002 <0.0002

<0.0002

<0.0002

0.002
1,2-ジクロロエタン 100 110 80 0.29 180 3200 0.004
1,1-ジクロロエチレエン 1.3 1.3 1.1 0.047 17 88 0.02
シス-1,2-ジクロロエチレン 1.6 1.7 1.2 0.021 17 37 0.04
1,1,1-トリクロロエタン <0.0005

<0.0005

<0.0005

<0.0005

<0.0005

<0.0005 1
1,1,2-トリクロロエタン 11 15 12 0.0017 14 200 0.006
トリクロロエチレン 14 20 15 0.003 7.9 29 0.03
テトラクロロエチレン

0.58

0.75

1.7

0.0016

2.5 14 0.01
1,3-ジクロロプロペン

<0.0002

<0.0002 <0.0002

<0.0002

<0.0002 <0.0002 0.002
ベンゼン 2.8 2.7 2.2 0.047 7.3 28 0.01

イラスト:表1の調査地点・調査地点断面図

表2 有害大気汚染物質環境調査結果[単位:μg/m3]

物質名

中島新町3丁目

地点A

中島新町3丁目

地点B

環境基準値 平成13年度
一般環境
(富田支所)
(年平均値)
ベンゼン 2.8 3.0 3 2.8
トリクロロエチレン 1.0 1.4 200 0.91
テトラクロロエチレン 0.27 0.34 200 0.24
ジクロロメタン 2.2 2.9 150 3.4
アクリロニトリル 0.13 0.19 0.19
塩化ビニルモノマー 0.059

0.075

0.053
クロロホルム 0.32 0.41 0.28
1,2-ジクロロエタン 0.11 0.14 0.12
1,3-ブタジエン 0.31 0.39 0.29

イラスト:表2の調査地点図

参考1 これまでの経緯

(1)公共用水域常時監視結果[単位:mg/L]

1,2-ジクロロエタン 結果
(年平均値)
環境基準値
平成5~9年 <0.0004~0.0009 0.004
平成10年度 0.0064 0.004
平成11年度 0.0095 0.004
平成12年度 0.016 0.004
平成13年度 0.0077 0.004
平成14年度 4月 0.0047 0.004
平成14年度 7月 0.0038 0.004
平成14年度 11月 0.0038 0.004

(2)原因究明調査結果

  1. 平成11年10月の河川の水質調査結果から、1,2-ジクロロエタンの汚染の上限は北中島橋付近で、この付近が汚染源であり、ここから下流に向かって拡散していることが判明しました。
  2. 荒子川流域は、下水道処理区域であり、荒子川へ直接放流しているのは4事業場だけであり、平成11年1月に行った事業場からの排出水の調査では、1,2-ジクロロエタンは全く含まれていませんでした。
  3. 平成10年12月~平成11年3月に実施した、保健所及び上下水道局の周辺事業場の立入調査では、1,2-ジクロロエタンを使用していた事業場は確認できませんでした。
  4. 平成12年1月の北中島橋付近の目視調査等では、汚染と直接関連がありそうな不法投棄物等は発見できませんでした。
  5. 原因究明のため、平成13年2月に汚染の中心と考えられる北中島橋付近の底質調査を行いました。この結果、北中島橋から南北50mの範囲内で、採取した底質の溶出試験で1,2-ジクロロエタンについて最高30mg/Lが検出され、高濃度に汚染された底質の存在が明らかになりました。また、北中島橋から南北50m以上離れた地点では、底質の汚染は認められず、底質の汚染は狭い範囲にとどまっていました。
  6. 底質調査で高濃度の1,2-ジクロロエタンが含まれていることが明らかになったヘドロについて平成14年2・3月に北中島橋から中島橋にかけてしゅん渫を行いました。
  7. しゅん渫の効果を把握するために、平成14年5月に水質の、8月に水質・底質の追跡調査を行った結果、しゅん渫の効果のため1,2-ジクロロエタンの濃度は全体的には下がっていますが、依然として一部の地点では高濃度で検出しました。
  8. 平成14年9月に周辺井戸7か所の地下水の水質調査を行った結果、荒子川北中島橋周辺の既存井戸では地下水汚染は認められませんでした。分析結果は以下のとおりです。
分析結果[単位:mg/L]
No. 所在地 1,2-ジクロロエタン 1,1,2-トリクロロエタン
1 中川区中島新町 0.0004未満 0.0006未満
2 中川区中島新町 0.0004未満 0.0006未満
3 中川区中島新町 0.0004未満 0.0006未満
4 中川区中島新町 0.0004未満 0.0006未満
5 中川区東中島町 0.0004未満 0.0006未満
6 中川区中島新町 0.0004未満 0.0006未満
7 中川区法華 0.0004未満 0.0006未満

参考2

1,2-ジクロロエタン

1,2-ジクロロエタンは合成化学物質であり、自然界には存在しない。用途は主に塩化ビニルの製造であり、そのほか合成樹脂原料、フィルム洗浄剤、有機溶剤、混合溶剤、殺虫剤、医薬品、化学反応中間体などに使用される。

1,2-ジクロロエタンは麻酔剤のような作用を示し、肝臓、腎臓及び循環器系に損傷を与えることが研究によって示されている。

疫学調査からは、1,2-ジクロロエタンによる暴露と発がん性との相関は明らかではない。

発がん性

  • IARC 2B:人に対して発がん性の可能性のあるもの
  • USEPA B2:動物実験では発がん性が認められているものの、人に対する発がん性の証拠は不十分であるもの

1,1-ジクロロエチレン

急性毒性

4000ppm以上の濃度の吸入により、即発性の神経衰弱を引き起こし、暴露が続けば意識を失う。

慢性毒性

この化合物と他のビニル化合物とを同時に暴露されたとき、肝機能障害、頭痛、視覚障害、衰弱、疲労及び知覚神経障害を引き起こしたという報告がある。

発がん性

  • IARC 3:人に対して発がん性有りとして分類できないもの
  • USEPA C:人に対して発がん性の可能性があるもの

シス-1,2-ジクロロエチレン

急性毒性

高濃度の1,2-ジクロロエチレン類は、他の塩素化エチレン類と同様に麻酔作用を有する。

慢性毒性

肝機能障害

発がん性

情報はない。

1,1,2-トリクロロエタン

動物実験

マウスに強制経口投与したところ、肝細胞がん及び副腎褐色芽細胞種が発生した。

発がん性

  • IARC 3:人に対して発がん性ありとして分類できないもの
  • USEPA C:人に対して発がん性の可能性があるもの

トリクロロエチレン

急性毒性

急性高濃度暴露では中枢神経系抑制作用が強く、以前は麻酔にも使用していた。より低濃度ではめいてい状態となる。人に対する15~25mLの経口暴露では、嘔吐、腹痛が起こり、ついで一時的な意識不明を起こす。

長期暴露

50~100ppm以上の暴露ではめまい、腹痛、関節の異常感、不安感などが増加する。職業上の暴露で血清中のトランスアミナーゼの増加が起こるという報告がある。このことは肝実質の損傷を示唆している。

発がん性

  • IARC 3:人に対して発がん性ありとして分類できないもの
  • USEPA B2:動物実験では発がん性が認められているものの、人に対する発がん性の証拠は不十分であるもの

テトラクロロエチレン

急性高濃度暴露では、中枢神経系抑制作用を主としてめいてい感、不快感、めまいなど、さらに高濃度では意識を失う。反復暴露では頭痛、脱力感等を訴え、重症例では不眠、記憶力の低下、手指の知覚低下などが見られる。

作業中に暴露した人に、肝、腎、中枢神経への影響が見受けられる。

発がん性

  • IARC 2B:人に対して発がん性の可能性があるもの
  • USEPA B2:動物実験では発がん性が認められているものの、人に対する発がん性の証拠は不十分であるもの

ベンゼン

急性毒性

麻酔作用がある。高濃度暴露では中枢神経系に作用して、頭痛、悪心、けいれんを起こし昏睡死亡する。20,000ppmの5分暴露で死亡例もある。

慢性毒性

造血組織に対する障害作用があげられる。鋭敏な人では、再生不良性貧血を生じた。また、近年ベンゼンが白血病を引き起こすということも明らかになってきた。ベンゼンの影響は全身的に現れる事実から飲料水を通じての暴露が同じようなレベルの危険を生じる懸念がある

発がん性

  • IARC 1:人に対して発がん性が認められるもの
  • USEPA A:人に対して発がん性が認められるもの

このページに関するお問い合わせ

環境局 地域環境対策部 地域環境対策課 有害化学物質対策担当
電話番号:052-972-2677 ファクス番号:052-972-4155
Eメール:a2677@kankyokyoku.city.nagoya.lg.jp
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