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享和元年(1801年)9月、熱田前新田の干拓者である熱田奉行の津金文左衛門胤臣は、新田に入植した農民の中に、春日井郡瀬戸村の陶工・加藤吉左衛門と民吉の父子がいることを知り、かねてより興味を持って調べていた南京染付の秘法を父子に授け、研究するように命じました。
やがて南京焼に近い磁器の焼成のめどをつけることができた父子は、津金文左衛門の全面的な援助を受けて、熱田前新田右堤に窯を築き、土を知多郡多加家から取り寄せて、杯や小皿などを焼かせて、新製焼(磁器)と称しました。
その後、新製焼の窯は、瀬戸村庄屋・加藤唐左衛門、代官・水野権平らの訴により、津金文左衛門の許可を得て瀬戸に移され、こんにちの瀬戸の陶磁器業隆盛の基となり、後に民吉は、九州の磁器の技法を瀬戸に持ち帰り、瀬戸陶磁器を完成させました。
熱田前新田右堤にあった窯跡の場所については、東海橋あるいは千年交差点付近などの諸説があります。
加藤吉左衛門・民吉父子の功績を称えて、昭和13年(1938年)に辰巳町の稲荷社に建てられた尾張磁器発祥之地碑は、移設されており、現在は港北公園内で見ることができます。
港区制五十周年記念事業実行委員会・編.『名古屋市港区誌』.港区制五十周年記念事業実行委員会,港区役所・発行,1987年,665ページ
名古屋市教育委員会・編.『名古屋の史跡と文化財(新訂版)』.名古屋市教育委員会・発行,1991年,391ページ
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