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大江川におけるダイオキシン類汚染問題(平成12年9月13日公表)

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このページを印刷する最終更新日:2016年1月15日

ページID:77507

大江川におけるダイオキシン類汚染問題について

南区加福町における最終処分場計画に係る現況調査で判明した大江川のダイオキシン類汚染については、河川等の詳細調査及び事業場排出水の調査等を実施した結果、汚染原因者が特定され、原因の究明に努めるとともに汚染防止対策を実施するよう指導してきた。

これまでの一連の調査結果と対応については、次のとおりである。

概要

  1. 河川等の詳細調査及び事業場排出水の水質調査の結果、東レ(株)名古屋事業場(以下「東レ」という)第3工場総合排水口の排出水で120pg-TEQ/L、その下流の河川水で25pg-TEQ/Lのダイオキシン類が検出されたことなどから、大江川のダイオキシン類汚染の汚染原因者は東レであることが判明した。
  2. このため、本市は、東レに対し、早急に汚染原因を究明するとともに速やかに汚染防止対策を実施するよう指導した。併せて、工場内の主たる工程排水を採水し、原因究明に努めた。
  3. その結果、東レ第3工場のカプロラクタム製造工程の付属工程である脱水工程に汚染の主たる原因があることが判明した。
  4. 東レは、汚染原因の究明及び汚染防止対策実施のための社内体制を整備し、汚染防止対策を検討した結果、ダイオキシン類の除去対策として活性炭処理及び凝集沈殿処理を行うこととし、9月6日までにこれらの対策を完了した。
  5. 本市は、9月14日、東レに対してさらなる汚染防止対策の徹底と再発防止などを求めるため、改善勧告を行う。
  6. 本市は、今後、勧告に基づく措置の履行状況について監視を行うとともに、排水口からの排出水及び大江川の水質についてモニタリングを実施する。

1 これまでの経緯

  1. 本市が南区加福町における最終処分場(以下「加福処分場(仮称)」という)計画を推進するにあたって、周辺の環境の現況を把握し、その施設の設置に伴う影響を予測するための手続き(以下「現況調査」という)の中で、加福処分場(仮称)の浸出水の処理水の放流先である大江川の現況について調査するため2月18日に河川水を採水した。その結果、名鉄常滑線鉄橋付近で環境基準(1pg-TEQ/L以下)を大幅に上回る23pg-TEQ/Lのダイオキシン類が検出された。
  2. このため、本市は再度、大江川の同一地点で4月14日に採水し分析したところ再び、21pg-TEQ/Lのダイオキシン類が検出された。
  3. この間、港及び南保健所は大江川流域のダイオキシン類対策特別措置法及び水質汚濁防止法に基づく特定事業場などの13事業場に対して、5月中旬に立入検査を実施し、特定施設及び処理施設の稼働状況や排水経路の確認等を行った。
  4. また、大江川の汚染状況を詳細に把握し、原因を究明するため、大江川詳細調査を6月2日に、事業場排出水調査を6月7日に実施した。
  5. その結果、東レ第3工場総合排水口で排出水に120pg-TEQ/L、当該排水口下流の名古屋臨海鉄道鉄橋付近で河川水に25pg-TEQ/Lのダイオキシン類が検出されたことから、東レが汚染原因者であることが判明した。
  6. このため、本市は、7月25日、東レに立入検査を実施し、早急に汚染原因を究明すると共に速やかに汚染防止対策を検討し実施するよう指導した。これを受けて東レから7月27日、報告書が提出された。
  7. 本市は、汚染原因を究明するため、7月31日、ダイオキシン類の発生の可能性の高い工程の排水3か所の採水を行った。また、第3工場総合排水口で再度採水を行った。
  8. この結果、第3工場総合排水口で170pg-TEQ/L(速報値)、カプロラクタム製造工程の付属工程である脱水工程で2,600pg-TEQ/L(速報値)、塩酸洗浄工程で74pg-TEQ/L(速報値)、中和工程で740pg-TEQ/L(速報値)のダイオキシン類が含有されていることが判明した。この結果から脱水工程が主たる発生源であることが、明確になった。
  9. この間、東レは除去対策を検討し、先行して活性炭処理及び凝集沈殿処理を実施することとし、9月6日までにそれらの工事は完了した。
  10. 東レが実施した対策の効果を確認するため、第3工場総合排水口で、近く採水する予定です。
  11. 本市は、9月14日、東レに対して、さらなる汚染防止対策の徹底と再発防止などを求めるため、勧告を行う。

2 調査結果

この件に関する各種調査結果は次のとおりである。

(1)加福処分場(仮称)計画に係るダイオキシン類の現況調査結果

表1のとおり

(2)大江川詳細調査結果

表2、図1のとおり

(3)事業場排出水調査結果

表3、図2のとおり

(4)東レ工程排水等調査結果(速報値)

表4、図3のとおり

3 調査結果の評価

(1)大江川河川水

 大江川は名鉄常滑線鉄橋付近から名古屋臨海鉄道鉄橋付近に至る約500mの区間でダイオキシン類が20数pg-TEQ/L含有されており、環境基準(1pg-TEQ/L以下)を20数倍上回る汚染が継続している。これは、環境庁が平成10、11年度に実施した公共用水域等のダイオキシン類調査(以下「全国調査」という)結果と比べると高いレベルである。

(2)東レの排出水

 東レの第3工場総合排水口からの排出水には120及び170(速報値)pg-TEQ/Lのダイオキシン類が含有されていた。ダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質排出基準は、既設事業場については平成13年1月14日までは基準の適用が猶予されており、現時点においては、東レに対して排出基準の違反を問うことはできない。しかし、平成13年1月15日から適用される排出基準50pg-TEQ/L、平成15年1月15日から適用される10pg-TEQ/Lを上回っている。

(3)東レの主な工程の排水

 工程排水3か所の採水の速報値で、カプロラクタム製造工程中の付属工程である脱水工程で2,600pg-TEQ/L(速報値)、塩酸洗浄工程で74pg-TEQ/L(速報値)、中和工程で740pg-TEQ/L(速報値)のダイオキシン類が含有されていた。脱水工程は約110m3/hの排水量があり、第3工場総合排水はダイオキシン類濃度が170pg-TEQ/L(速報値)、排水量が約2,150m3/hのため、最終放流水のダイオキシン類排出量に占める脱水工程排水の寄与率は約80%と相当高いため脱水工程が主たる発生源であることが明らかになった。なお、塩酸洗浄工程の排水量は約2.3m3/h、中和工程の排水量は約7m3/hであることから寄与割合は低い。

(4)名古屋港への影響

 名古屋港内の水質、底質、魚類のダイオキシン類の汚染状況については、環境調査の一環として平成11年8月に調査を実施している。水質中の濃度は0.16~0.33pg-TEQ/Lと測定した3地点のすべてで環境基準を下回っており、大江川からの影響はほとんどないと思われる。底質中のダイオキシン類の濃度は5.3~57pg-TEQ/L、魚類については0.71pg-TEQ/gであり、いずれも「全国調査」結果の範囲内であり、特に高いレベルではなかった。

(5)健康影響に対するリスク

 大江川の水質は環境基準を上回っているが、この河川の水は飲料水や農業用水としての利用実態がなく、また、名古屋港内を含めて漁業も営まれていない。このため、飲料水及び名古屋港内に生息する魚類の摂取を通じたダイオキシン類の地域住民の摂取量の増加はないものと考えている。

4 東レに対する行政指導

  1. 東レはダイオキシン類対策特別措置法に基づく特定施設である廃棄物焼却炉2基(大気基準適用施設)及び廃棄物焼却炉から発生するガスを処理する廃ガス洗浄施設2施設(水質基準対象施設)を第1工場および第2工場に設置しており、ダイオキシン類対策特別措置法の特定事業場となる。従って、第3工場総合排水口からの排出水には当該施設からの排水は含まれていないが、この排出水にも水質排出基準が適用される。ただし、既設事業場であることから施行後1年間は水質排出基準の適用が猶予されている。
  2. 7月25日、同法に基づく立入検査を実施し、第3工場における製造工程、各種プラント及び処理施設、排水経路等について詳細にチェックを行うと共に、東レに対して早急に汚染原因を究明すると共に速やかに汚染防止対策を検討し実施するよう指導した。
  3. 対策の実施にあたっては、水質排出基準を前倒しして遵守するよう、汚染原因の究明と並行して除去施設を設置するよう指導した。
  4. 原因究明の方法及び対策の検討内容などについて、速やかに報告するよう指示した。これを受け、7月27日、東レから報告書が提出された。

5 東レの製造工程等

  1. 東レは昭和26年、合成繊維ナイロンの原料工場として操業を開始した。その後、昭和38年に第3工場が完成し、この工場がカプロラクタムの主生産工場となり現在に至っている。なお第3工場のプラントの配置は、図4「第3工場配置図」のとおりである。
  2. カプロラクタムはナイロンの中間原料で、主原料のシクロへキサンに塩化ニトロシルを反応させ製造している。
  3. 現在、第3工場は約2,150m3/hの工業用水の供給を受けており、その約80%は冷却水として使用している。その他の各工程で使用された排水は、それぞれの工程に応じて、中和処理槽又は活性汚泥処理装置を経由して、第3工場総合排水口から大江川に排出している。

6 汚染の原因等

  1. 大江川におけるダイオキシン類汚染の直接的な原因は、第3工場総合排水口からの排出水であることから、第3工場の各工程毎に採水し原因を究明した。本市が実施した工程排水調査からは、特に、脱水工程からの排水にダイオキシン類を多く含むことが明らかになった。
  2. この脱水工程は、塩化ニトロシルを生成させるためのカプロラクタム合成前工程の付属工程で、塩酸、硫酸中に含まれる水を除去するための工程であり、水蒸気を凝縮するために大量の水(約110m3/h)を使用しており、排水が発生する。この排水中にダイオキシン類が本市の測定で2,600pg-TEQ/L含有されていることが明らかになった。
  3. この工程で非意図的にダイオキシン類が生成されているものと思われるが、生成機構については明らかでない。
  4. 中和工程などのその他の付属工程排水からもダイオキシン類が検出されているが、第3工場総合排水への寄与割合は低い。

7 対策等の実施

東レは、この問題に適切に対応するため社内体制を整備すると共に、ダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質排出基準を前倒しして遵守するため、次の対策を実施した。

(1)社内体制の整備

 汚染原因の究明と汚染防止対策実施のために、「名古屋事業場ダイオキシン特別対策体制」を敷き、原因究明グループ及び応急対策・恒久対策グループを設置した。

(2)汚染防止対策の実施(図5 活性炭処理及び凝集沈殿に係るフロー図)

ア 活性炭処理による除去

 主たる発生源である脱水工程排水のダイオキシン類を除去するため、活性炭処理槽(60m3)を設置した。(9月6日完成)

イ 凝集沈殿処理による除去

 中和処理槽からの排水(約250m3/h)中のダイオキシン類を除去するため、活性汚泥処理施設の遊休槽(500m3槽×4槽)を改造して凝集沈殿槽を設置した。(9月2日完成)

ウ 廃棄物の適正処理

 活性炭処理槽で発生する使用済み活性炭及び凝集沈殿槽で発生する汚泥の適正な処理方法について検討し、実施する。

8 関係機関等との協議・連携

本市はこの問題に適切に対応するため、庁内関係局等で構成する「ダイオキシン類等環境ホルモン連絡会議」を開催した他、環境庁および愛知県とも協議をして進めてきた。また調査の適切性、測定値の精度管理、測定結果の評価および対策の妥当性など科学的技術的な面については学識経験者の指導・助言を受けた。

9 東レに対する行政措置

この問題については、東レは、本市の指導を受け、発生原因の究明及び汚染防止対策等の実施など積極的に対応したものの、ダイオキシン類を含む排出水により、大江川を汚染してきたことに鑑み、ダイオキシン類対策特別措置法の法的義務の範囲にとどまることなく、さらなる汚染防止対策の徹底と再発防止を求めるため、本市は、次の事項について、9月14日に改善勧告を行う。

ダイオキシン類対策特別措置法の水質排出基準を確実に遵守するよう、速やかに対策を実施すること。
排水処理施設の適正な維持管理及び発生する汚泥等の廃棄物を適正に処理すること。
排水の管理体制を抜本的に見直し、改善・強化すること。
最終放流水及び主たる工程ごとの排水のダイオキシン類濃度を測定し、その結果を報告すること。
なお、これまでの対応と今後の計画について平成12年9月29日までに文書で報告を求める。

10 今後の行政対応

本市は、前述の勧告に基づく措置の履行状況について監視を行うと共に、第3工場総合排水口からの排出水及び大江川の水質についてモニタリングを実施する。その結果によってはさらなる汚染対策について検討し、必要な指導を行う。また、ダイオキシン類等環境ホルモン連絡会議を定期的に開催し、関係機関との協議・調整にあたる。

関連リンク

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