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BCP策定に関するQ&A
よくある疑問をQ&A形式で掲載しましたので、 BCP策定にあたっての考え方として参考にしてください。
Q1 BCPのひな形はありますか。
Q2 ガイドラインはどのように使用すればいいですか。
Q3 どのような災害を想定して策定すればいいですか。
Q4 災害の種類ごとに策定する必要がありますか。
Q5 事業所ごとに策定する必要がありますか。
Q6 業務の優先順位が決められないのですがどうしたらいいですか。
Q7 現状では事業の早期復旧は困難なのですがどうしたらいいですか。
Q8 安否確認はどうしたらいいですか。
Q9 社員の協力を引き出すにはどうしたらいいですか。
Q10 代表者に積極的に取り組んでもらうにはどうしたらいいですか。
Q1 BCPのひな形はありますか。
国や地方自治体が様々なBCPガイドラインを公開しています。その中でも、中小企業が取り組みやすいものを例として紹介します。
「中小企業BCP策定運用指針」は、中小企業庁が中小企業でも取り組みやすいように、BCPの基本をわかりやすく解説しています。豊富な基本フォーマットが用意されているので、自社の実態に合うものを組み合わせてして使うことができます。「入門編」「初級編」「中級編」「上級編」と習熟度に応じて選べるのが特徴です。
「あいちBCPモデル」は、愛知県が県下の中小零細企業向けに公開しているガイドラインです。図やイラストが豊富に使われており、空欄に必要事項を記入していけば、一通りのBCPが策定できるようになっています。愛知県の地域特性を踏まえて、東海東南海地震を想定した内容になっています。「製造業向け」「小売・サービス業向け」に分かれ、それぞれ「標準版」と「コンパクト版」が用意されています。
公開されているガイドラインは、それぞれのウェブサイトからダウンロードし、自由に利用することができます。
Q2 ガイドラインはどのように使用すればいいですか。
Q1でご紹介したガイドラインは、初心者でも決められた流れに沿って必要事項を記入していけば、BCPが策定できるようになっています。まずは、ガイドラインに沿って自社の情報を記入します。最初から完璧なBCPを策定することは困難ですので、はじめは、正確さよりも最後まで一通り作り上げることを優先し、基本となるBCPを策定してください。
それを基に、対策の甘いところや準備が足りないところなどの様々な課題を把握し、その課題を一つずつ解決していくことにより、必要な項目を掘り下げていきます。
一度に完成形を目指すのではなく、何度も見直しをかけながら完成度を上げていくことが重要です。
Q3 どのような災害を想定して策定すればいいですか。
BCPの策定は、突発的に企業経営を脅かすような事象が起きたときに、いかに事業を継続するか、が目的であり、特定の災害に対応することを目的とするものではありません。経営を脅かすような事象は、自然災害、集団感染症、大規模停電、広域テロなど様々なケースが考えられます。何が起きたとしても、対応できるようにすることがBCPの理想です。
しかし、こう考えると、想定しなければならないケースがあまりにも多くなり、難しくなってしまいます。そのため、日本においては、まずは巨大地震を想定してBCPを作り始めるのが一般的になっています。
日本で地震を想定してBCPを策定する理由としては、
- 地震リスクは、日本に所在するどのような企業でも避けられないこと。
- 自然災害の中でも、地震災害は企業経営に最も深刻なダメージをもたらし、その対応が最も難しいことが想定されること。
- 地震であれば、誰でも災害をイメージしやすく、具体的な対策を立てやすいこと。
などがあります。
名古屋市に所在する企業であれば、まずは「南海トラフ巨大地震」を想定して、BCPを策定してみてはいかがでしょうか。
Q4 災害の種類ごとにBCPを策定する必要がありますか。
日本においては、まず地震災害を想定してBCPを策定するのが一般的になっていますが、突発的に企業経営を脅かすような事象が起きたときのための備えをするのがBCPであるため、風水害、集団感染症、大規模停電、広域テロなどあらゆる原因に対応できなければなりません。
しかし、発生する原因ごとにBCPを策定する必要はありません。例えば、地震と風水害は違う災害ですが、BCPの内容が全く異なったものになるわけではありません。初動の動きや細かい対応手順が変わってくることはありますが、本質のところは変わらないからです。そのため、地震に対応したBCPが策定できれば、それを応用展開することで、風水害にも集団感染症にも対応できるBCPに発展させることは比較的簡単にできます。
地震や風水害など、原因となる災害の種類を特定して策定するBCPは、「原因対応型」と言うことができます。それに対して、どんな原因であれ、発生した事象に応じて対応できるように策定するBCPは「結果対応型」と言えるでしょう。「結果対応型」というのは、例えば、「社員が出社できなくなったらどうするか」「物流がストップしたらどうするか」というように、起きた事象ごとに対応策を用意する方法です。どのような事象が起きているかを確認し、「今回は、これとこれで対応する」というように、準備した対応策の中から必要なものを選択して実行します。
地震対応を想定してBCPを作り始めた場合でも、最終目標は「結果対応型」のBCPであることを意識するようにしましょう。
Q5 事業所ごとに策定する必要がありますか。
いくつかの事業所が存在する場合、BCPを事業所ごとに策定するのかどうかという問題があります。最終的には個別の事業所ごとの対応方法を決めておく必要がありますが、まずは、全社のBCPを策定し、それにあわせて事業所ごとのBCPを策定していくのが良いでしょう。BCPとは企業が生き残るために策定するものなので、まずは企業本体が生き残る対策を立てないことには、個別事業所の対策も立てられないからです。
全社のBCPを作るときのポイントは、すべての事業所を守ることを前提とせず、重要度に応じて事業所に優先順位をつけ、どの事業所から復旧するのかを決めることです。
最優先の事業所が決まったら、その事業所のBCPを策定します。一事業所のBCPができたら、それを他の事業所にも応用展開して、最終的にすべての事業所でBCPを策定する、というように、段階的にBCPを発展させるのが良いでしょう。
Q6 業務の優先順位が決められないのですがどうしたらいいですか。
BCPでは、自社の重要業務を決定するプロセスがあります。ここでは、地震などが発生したとき、優先的に復旧する重要な業務を特定します。
ところが、実際にBCPの策定に取り組むと、この重要業務を決められない場合があります。企業には様々な業務がありますが、どれも重要な業務ばかりで、どれが欠けても経営に影響を及ぼすからです。そのため、守るべき重要業務を1つに決められずに、様々な業務をいくつも列挙してしまうことがあります。
しかし、この重要業務を決定するプロセスでは、重要業務を1つに絞り込まなくてはいけません。企業の存続を脅かすような事態におちいったとき、すべての業務を守るというのは困難であり、復旧を最優先する業務について厳しい選別を迫られます。そのため、最悪の事態を想定して、最低でもこれだけは守るという業務をあらかじめ決めなくてはいけないのです。
業務の優先順位がなかなか決められないときは、第三者の視点で考えてみるのも良いでしょう。たとえば、取引先にとって自社の存在価値はどこにあるのか、という視点で業務を捉え直てみましょう。
Q7 現状では事業の早期復旧は困難なのですがどうしたらいいですか。
BCPでは、はじめに目標復旧時間を決定します。これは、地震などが発生した後、どのくらいの時間で復旧するのかという目標を決めるものですが、実際にどのような被害を受けるかわからないため、目標復旧時間を決められないことがあります。
しかし、この目標復旧時間とは、あくまでも目標であり、どのくらいで復旧できそうかという予想を立てることではありません。ここは、「どのくらいで復旧できそうか」ではなく、「どのくらいで復旧しなければいけないか」という考え方で決めるようにしてください。
設定した目標について、現状では達成不可能である場合など、目標と現状との間にギャップがあれば、そのギャップを埋めるのが今後の課題ということになります。すべての問題が解決してからBCPを策定しようとしたら、BCPはなかなか完成しません。取り組みの過程で解決すべき課題を明確にし、その課題解決に向けて次への行動計画を立てるのもBCPの策定には必要です。
ただし、目標があまりにも現実離れしている場合は、やむを得ず、目標の方を少し現実に沿うように修正して、対応しやすいレベルに調整することも検討してください。Q8 安否確認はどうしたらいいですか。
地震発生後にまず行わなければならないのが、社員の安否確認です。しかし、この安否確認は最も重要でありながら、最も難しい対策の1つです。地震発生時は、あらゆる通信手段が途絶するために、安否確認の方法が極めて限られます。時には、通信手段がすべて失われてしまう場合もあります。そのようなときでも、安否確認ができるようにしなければなりません。
結論としては、これさえ準備しておけば安心と言えるような絶対確実な方法はありません。あらゆる方法を用意しておいて、状況に応じて使い分けられるようにしておくしかないでしょう。「携帯電話」、「携帯メール」、「伝言ダイヤル」、「フェイスブック」などというように、優先順位を決めておいて、その時に使える手段で安否確認を行うようにします。
東日本大震災では、安否確認に利用された通信手段で多かったのが「携帯メール」と「携帯電話」と言われています。メールは遅延が起きて届きにくくなっていましたし、携帯電話は基地局が停止したり通信制限がかけられたりして、なかなか通じませんでした。それでも、携帯電話は誰もが最も使い慣れた通信手段であり、また、通じにくいながらも何度も試すうちに通じることがあり、結果として安否確認に最も利用された通信手段となったようです。
なお、震災直後でも利用できる可能性の高い通信手段としては、衛星電話とMCA無線があります。これらは維持費がかかるので、非常用の通信手段としては、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
Q9 社員の協力を引き出すにはどうしたらいいですか。
BCPの担当者がセミナーを受講して意義や手法を学んでも、他の社員に伝えていく段階で協力が得られない場合があります。BCPは、「余分な仕事」と受け止められる傾向があり、そのため、一般社員にとってはできるだけ関わりたくないものというようなイメージを持たれることがあります。また、経営幹部の方が「防災対策のようなものは現場の社員たちが取り組むものである」と考えている場合もあります。
BCPの策定を順調に進めるためには、全社員がBCPの重要性を理解し、積極的に関与できる雰囲気作りが求められます。そのためには、スタートの段階で、代表者が自らの言葉でBCPに本気で取り組むことを意思表明したり、社員全員が同じ認識を持てるように、社内で定期的に勉強会を開催したり、外部のセミナーにBCPの担当者以外の社員を出席させたりするなど、社内でのBCPの位置づけを明確にすることが必要です。つまり、BCPは決して「余分な仕事」ではなく、確実に進めていかなくてはならない「重要な課題」という位置づけにするということです。
このようにして、社内の健全な危機意識を向上させ、BCPに取り組みやすい雰囲気作りを行います。
Q10 代表者に積極的に取り組んでもらうにはどうしたらいいですか。
社員全員にBCPの重要性を認識してもらうのは大変なことですが、企業によっては代表者の理解を得るのに苦労することがあります。
代表者は、他に経営上の課題が山積しており日々の業務が多忙なため、どうしてもBCPは社内の防災担当者に任せっきりということになりかねません。担当者は、代表者の支援も一般社員の協力も得られず、ひとりで奮闘しているというケースも珍しくありません。
ところが、BCPは、単に防災マニュアルを作るという程度の単純作業で終わる内容ではありません。経営戦略レベルの意思決定が求められる場合が多く、その時は代表者の関与が欠かせません。また、一般社員の協力を得るためには代表者の後ろ盾が必要です。
そのため、以下のようなポイントを代表者に理解してもらうことが必要です。
- 震災リスクはどんな企業でもその影響を避けられず、企業の存続と社員の安全確保は経営者の責務であること。
- BCPは単なる防災対策に終わらず、企業のあらゆる危機対応力を向上につながること。
- BCPを策定する企業が増えており、策定しない場合は、企業の信用にも影響を及ぼす可能性があること。
そして、BCPへの理解が得られたら、代表者が率先して取り組む姿勢を社内に示してもらうことです。
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