記事:名城大学 森川明香、鳥巣加奈絵
本当のボランティアとは
「初めての試みだけど、どれだけ人が集まるかなー」
矢田小学校で令和元年10月25日に行われた「矢田防災祭り2019」の開催の直前、矢田学区連絡協議会の梅本会長は少しワクワクした様子で話してくれました。昨年までは、学区で企画・運営していた防災訓練を、「本当のボランティアとは何か」という問いを軸に、町内会の垣根を越え、それぞれが自発的に企画・実施する今年のスタイル。各ブースの企画参加者は、消防団や婦人消防クラブ、防災しよっと、小中学校のPTAのOBや小学校の校長先生まで幅広く集まり、8つの防災ブースが設置されました。
楽しさ×学び=?
「何か一つでも覚えて帰ってくれたら」
優しい表情で話す高田さんのブースにはたくさんの子どもたち。ここで開催されるのはなんと、あのテレビでお馴染みの「逃走中」。運動場に散らばった防災グッズを集めて校長先生を救うというストーリーです。ハンターには俊足自慢の矢田中学校生徒や名城大学学生など強者揃い。始まる前から参加する子供たちはワクワクする気持ちを抑えられずにいる様子。いざ始まればその気持ちは加速し、走り回る子どもも、応援する大人も、声を出して大盛り上がり。「楽しさ×学び」は、他のイベントにも活かせるテーマであると感じました。
一鍋クッキング
そんな逃走中の傍らで漂う良い匂い。地元の方が実演していたのは災害時に役立つ一鍋クッキングです。野菜や缶詰めなど普段食べ慣れた食材をポリ袋に入れ、袋の口を結び、あとは鍋で煮るだけで完成。この調理では、袋の中で真空状態になり、材料の本来の甘みや水分でとっても美味しく出来上がります。野菜ジュースで炊いたお米は、想像以上に美味しく驚きました。災害時は電気やガスも止まりますが、カセットコンロがあれば、普段の食事を続けることができます。まずは食材を1週間分用意してください。使っては、買うというローリングストック法で被災後も食べることに困らないための準備をしましょう。温かく栄養のあるご飯とおかずが鍋一つで作れる。覚えないという選択肢はありません。
人から人へ 災害に負けない人の知恵
体育館では沢山の有志で集まった方々が、災害に活きる知恵を伝授しています。避難所でも動ける毛布の着方、布が二枚あればリュックサックになる技、ずっと温かいタオル、そんな知恵を披露していたのは婦人消防クラブの皆さん。実は矢田学区にしかない団体で年に一回の研修や消防団とのタイアップなど防災への意識はピカイチ。動ける毛布はとても暖かく動きやすいため、災害時にはそのまま外へ物資を取りに行くこともできる程機能性バッチリ。「このような活動を通して、もっとみんなが意識をもって自分の命を守るために防災に取り組めたら」婦人消防クラブの方々は口をそろえておっしゃいます。その一歩として知恵の習得を日々の生活から始めてみましょう。
編集後記
今回これまでと趣向を変えて実施した矢田防災まつり2019。大切なことを人から人へ伝えていく、そんな活気にあふれるイベントでした。どのブースにもそれぞれの企画者の方の想いや、それを感じられる体験と学びがありました。
矢田川から近い矢田学区は長い歴史の中で埋めたてられた地域。そのため災害時には浸水や液状化の危険性が挙げられています。全国各地での地震や大雨による災害は、この先いつ私たちのところで起こるか分かりません。そんな時試されるのが日頃からの備え。備えあれば憂いなし、少しでも減災できるように皆さんで一度考えてみではいかがでしょうか。
東区 学生記者
森川明香(もりかわ ひろか)(写真右)
名城大学外国語学部国際英語学科3年
大学では英語に加え、ゼミでは「インスタ映え」が人々や環境に与える影響について研究している。趣味は野球観戦で、沖縄まで春季キャンプを見に行く大のドラゴンズファン。
鳥巣加奈絵(とりす かなえ)(写真左)
名城大学外国語学部国際英語学科3年
大学では、英語のほかスペイン語、タイ語も学ぶ。商店街の中にあるゲストハウスで、アルバイトとして、頑張る人と関わる楽しさを感じながら元気に働いている。