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「こころのバリアフリー宣言」

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このページを印刷する最終更新日:2005年4月4日

ページID:9650

ページの概要:「こころのバリアフリー宣言」について

〜精神疾患を正しく理解し、新しい一歩を踏み出すための指針〜

この指針は、心の健康問題の正しい理解のための普及啓発検討会(厚生労働省が設置)によって、平成16年3月に報告書としてまとめられたものです。

あなたは絶対に自信がありますか、心の健康に?

第1章:精神疾患を自分の問題として考えていますか?

  • 精神疾患は、糖尿病や高血圧と同じで誰でもかかる可能性があります。
  • 2人に1人は過去1ヶ月間にストレスを感じていて、生涯を通じて5人に1人は精神疾患にかかるといわれています。

 精神疾患は、国際的に認められた疾患分類(ICD−10)では、痴呆などの器質精神障害、アルコールや薬物など精神作用物質使用による精神や行動の障害、統合失調症、うつ病などの気分障害、神経症性障害、行動症候群など10項目に分類されています。
 わが国において精神疾患で医療機関を受診している人は、平成14年では国民の約45人に1人にあたる260万人にものぼります。実際には精神疾患があっても受診されていない方もいますので、地域調査をすると、国民(成人)の2人に1人は過去1ヶ月間にストレスを感じており、生涯を通じて5人に1人が精神疾患と診断されうるという結果が出ています。
 精神疾患は、その人の生まれ持った素質、生まれてからの能力・ストレスへの対応力、ストレスを引き起こすような環境要件などが絡み合って発症します。つまり、精神疾患は誰でもかかりうる病気で、ストレスコントロールなどで防ぎ得る場合もあり、また、発症しても適切な治療で多くは短期間で改善するものです。これらの特徴は糖尿病や高血圧のような生活習慣病と共通したものであり、精神疾患も生活習慣病といっても良いと思います。
 自分だけは絶対大丈夫と過信していませんか?まずは、自分自身の問題として捉えた上で、精神疾患を正しく理解しましょう。

第2章:無理しないで、心も身体も

  • ストレスにうまく対処し、ストレスをできるだけ減らす生活を心がけましょう。
  • 自分のストレスの要因を見極め、自分なりのストレス対処方法を身につけましょう。
  • サポートが得られるような人間関係づくりにつとめましょう。

 精神疾患の発症を予防するためには、ライフスタイルを変えたり、ストレスに対処する方法を見つけたり、また具体的にストレスを減らす対策を実践に移すことが大切です。それがうまくできれば、発症せずにすむことも少なくありません。ストレスの要因を取り去ることと、ストレスの対処方法を身につけることが必要なことですが、そのためには、まず自分のストレスの要因を冷静に見つめてみることが重要です。また、家庭や職場でも本人へのストレスを少なくする工夫や適切なサポートも大切です。もちろん、何をストレスと感じるかは人によって様々ですので、それぞれの感じるストレスに応じた対処が必要となってくるわけです。
 たとえ、精神疾患を発症しても、早期の回復や再発の予防のためには、ストレスに耐える力の弱さを補うために薬が必要である場合もあります。また、その力を強めるためにはSST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)、精神療法やカウンセリング等が有効な場合もあります。

第3章:気づいていますか、心の不調

  • 早い段階での気づきが重要です。
  • 早期発見、早期治療が回復への近道です。
  • 不眠や不安が主な最初のサイン。おかしいと思ったら、気軽に相談を。

 精神疾患は、多くの場合、最初は誰でも経験するような軽い症状から始まります。心配事があるときに生じるような、例えば眠れない、食欲がない(反対に、過眠、過食の場合も)などといった症状です。それが進行すると、うつ病や統合失調症にまで発展することがあります。
そこで、軽いうちに、ストレスを解消する工夫をしたり、生活を点検したりすることが大事です。それでも解決できないときは、早めの相談が重要です。他人に話を聞いてもらうだけでも不安が解消してしまうことがあります。不眠が続くような場合は専門家への相談や受診がよいかもしれません。誰でもかかりうる病気です。とまどったり、恥ずかしがる必要はありません。早期発見、早期治療は精神疾患についても鉄則なのです。

第4章:知っていますか、精神疾患への正しい対応

  • 病気を正しく理解し、焦らず時間をかけて克服していきましょう。
  • 休養が大事、自分のリズムをとりもどそう。急がばまわれも大切です。
  • 家族が周囲の過干渉、非難は回復を遅らせることも知ってください。

 精神疾患にかかったとしても、多くの場合、薬物治療やカウンセリングで回復します。最近では治療法の進歩、とりわけ効果的で副作用も比較的少ない薬物が開発されたおかげで、治療が容易になっています。かつての精神疾患は入院医療が主体でしたが、今では多くが外来治療で対処できます。入院治療を必要とする場合でも、半数は3ヶ月以内に、8割強は1年で退院可能です。
 ただし、病気の発見や治療開始が遅れると、それだけ回復に時間がかかります。本人や周囲が社会復帰を焦ったり、無理をしたりすると、回復が遅れたり、症状が悪化したり、再発しやすくなります。かかったら、焦らずじっくりと治そうという気持ちを持つことが大切です。それまで溜めこまれた大きな氷山のようなストレスを時間をかけてゆっくり溶かすのだと思い定めることが賢明です。

社会の支援が大事、共生の社会を目指して

第5章:自分で心のバリアを作らない

  • 先入観に基づくかたくなな態度をとらないで。
  • 精神疾患や精神障害者に対する誤解や偏見は、古くからの慣習や風評、不正確な事件報道や情報等により、正しい知識が伝わっていないことから生じる単なる先入観です。
  • 誤解や偏見に基づく拒否的態度は、その人を深く傷つけ病状をも悪化させることさえあります。

 「精神障害者」という表現を、「たまたま精神疾患にかかり、その症状のために生活のしづらさ等の障害を持った『人』」と言い換えると、もう少し私たちの理解が広がるかもしれません。「精神障害者」とは、言うまでもなく、その人の人格を表すものではありません。仮に、「精神障害者は何をするか分からない」という誤った認識が浸透しているとすると、精神障害者に対する私たちの態度は当然かたくなになり、地域社会から排除しようとする力が働きます。
 しかし、少し冷静に考えればわかることですが、精神障害者も一人ひとりが豊かな個性を持っているのです。隣人を排除することの愚かさは、過去の何千何万という事例からも明らかです。
身体障害を持つ人にとって、道路の段差などの物理的な障壁(バリア)がそうであるように、精神障害者にとっては、周囲の人々の誤解や偏見に基づく先入観(心のバリア)が生活のしづらさにつながっているのです。

第6章:認め合おう、自分らしく生きている姿を

  • 誰もが自分の暮らしている地域(街)で幸せに生きることが自然な姿。
  • 誰もが他者から受け入れられることにより、自らの力をより発揮できます。

 精神障害者のうち、精神疾患のために入院している人は約34万人(このうち、精神科病院に入院している人は約32万人)いますが、このうち5年以上長期にわたり入院している人が5割近く、10年以上の人は3割ほどで実に約10万人に達しています。入院している人の中で、地域社会での受入れ基盤がないために入院している人は約7万人といわれています。
 国や地方自治体、関係機関は、これらの人々を含めた精神障害者が地域で安心して暮らせるための基盤整備を進めています。そのため、就労の場や生活訓練・職業訓練の場の拡充、グループホームや住居の確保、ホームヘルプサービス等の充実が急がれています。また、各方面からの様々な支援が受けやすくなるよう、精神障害者保健福祉手帳制度が設けられており、手帳所持者については税制上の優遇措置のほか、自治体によっては公共交通機関の運賃割引等が受けられるようになっています。
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)では、国民一人ひとりが「精神障害者に対する理解を深め、及び精神障害者がその障害を克服して社会復帰をし、自立と社会経済活動への参加をしようとする努力に対し、協力するように努めなければならない」と定めています。法律に決められていなくても、こうしたことを自然に行うことは、人間として当然のことです。
 多くの精神障害者が、いろいろな形で社会に貢献しています。障害のあるなしにかかわらず、他者から受け入れられることにより、だれもが自らの力をより発揮し、自分らしく生きていくことができる、それを認め合うことが自然な姿ではないでしょうか。

第7章:出会いは理解の第一歩

  • 理解を深める体験の機会を活かそう。
  • 人との多くの出会いの機会を持つことがお互いの理解の第一歩となるはずです。
  • 身近な交流の中で自らを語り合えることが大切です。

 精神障害者が地域で暮らしている中で、よく出会うのが回覧板を持って来てくれるお隣の人だったり、町内会費を集めに来てくれる近所の人だったり、買い物をする商店やスーパーマーケットの人だったりします。また、近くに食事に行く店や行きつけの店等があれば、出会いは広がります。出会いの中から心のバリアは消えていきます。
 そうして出会った人々との身近な交流の中で他の病気と同じように「精神科に行っている」とか「精神科に行っていた」と気兼ねなく言える環境がとても大事です。これを聞いた人も「私も○○の持病があるのよ」などと話が弾めば、状況は大きく変わります。日常の暮らしで人々との交流が豊かになれば、安心して暮らしていけます。
 誤解や偏見は正しい知識によらない単なる先入観であり、日常的に交流する機会を活かしきれていないことから生じる場合もあります。生活の中の身近な交流こそは、先入観を打破し真の理解を深める第一歩となります。

第8章:互いに支えあう社会づくり

  • 人格と個性を尊重して互いに支えあう共生社会を共に作り上げよう。
  • 精神障害者も社会の一員として誇りを持って積極的に参画することが大切です。

 国連は、1981年の国際障害者年の行動計画の中で、「ある社会からその構成員のいくらかの人々を締め出す場合、それは弱くてもろい社会である」と表明しています。わが国には、残念ながら現在もなお、精神障害者のための地域の施設等社会資源を作る際に反対運動が起こる地域もあります。こうした地域社会は、この行動計画が示す「弱くてもろい社会である」と言わざるを得ません。
 このことを踏まえ、たとえどんな障害があっても、誰もが社会の一員として共に暮らせる社会の実現、つまり、精神障害者も権利と責任を持つ住民の一人として尊重され、当たり前に暮らすことのできる、成熟したよりよい社会の創生を目指していくことが大切です。