1ページ 参考資料2 〇公の施設の利用許可等判断について 1 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」に係る参考情報(その1) 【抜すい】 ※「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」の施行を踏まえた参考情報として、法務省人権擁護局内「ヘイトスピーチ対策プロジェクトチーム」において作成し、関係地方公共団体に提供されたもの 《ここから資料》 (9)地方公共団体にとって、本法律との関係で問題となり得ることの一つとして、住民等から公の施設の使用許可申請等がされた場合においてその使用時にヘイトスピーチが行われることが予想されるようなとき、その許否をどのように判断すべきかということがあると考えられる。本法律の国会審議において、《ここから下線》どのような表現内容が許される内容なのかを行政機関が判断することは憲法上問題がある《下線ここまで》とされ、また、本法律によって直ちにヘイトスピーチのデモを禁止するということにはならないとされていること(注8)に留意しておく必要がある。 このことからすれば、公の施設の使用許可申請等がされた場合にその使用時にヘイトスピーチが行われることが予想されるようなときでも、本法律の直接的な効果として、許可権限を有する行政機関が直ちに不許可とすることはできないものと思われる。他方で、本法律が本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないと宣言したことは、他の法令の解釈の指針となり得るともされており、このような観点から、公の施設の使用許可申請等とヘイトスピーチの問題を考えていく必要があろう。 (中略) ただし、《ここから下線》ヘイトスピーチを理由に公の施設の使用を不許可等とする場合は、公権力による表現行為の事前規制としての側面を有する《下線ここまで》ことなどから、表現の自由や集会の自由を保障した憲法第21条等との関係が問題となる。表現行為の事前規制に関しては、例えば、最高裁判例では、「事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、《ここから下線》表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうる《下線ここまで》ものといわなければならない」(昭和61年6月11日北方ジャーナル事件最高裁判決)(注10)とされているところである。 (中略) このような判例の趣旨も踏まえれば、一般に、行政機関としては、公の施設の使用許可等の判断に当たって、憲法上保障された表現の自由、集会の自由に十分留意して、恣意的な運用をしてはならないことはもとより、《ここから下線》正当な表現行為を萎縮させるようなことがないよう留意すべき《下線ここまで》こともいうまでもなく、公の施設の使用許可等とヘイトスピーチの問題についても、地方公共団体においては、例えば、具体的にどのような内容であると予測されれば使用許可が制限され得るのか、許否に当たりどのような手続を経て判断するのか等の点について、住民等にとって明確となるような《ここから下線》要件及び手続を検討して公表することも一案《下線ここまで》として考えられよう。 《資料ここまで》 2ページ 2 他自治体の人権に関する条例における公の施設利用に関する規定 《以下の表に関する注》 ※1 東京都、川崎市、相模原市の基準では、不当な差別的言動が行われるおそれだけでなく、管理上の支障なども要件としている。 ※2 京都府及び京都市は、条例上の位置づけによらず、公の施設等の使用手続きに関するガイドラインを定めている。 〇区分 愛知県 〇内容 (公の施設に関する指針) 第9条 知事は、県が設置する公の施設において本邦外出身者に対する不当な差別的言動が行われることを防止するための《下線ここから》指針を定めるものとする。《下線ここまで》 〇区分 東京都 〇内容 (公の施設の利用制限) 第11条 知事は、公の施設において不当な差別的言動が行われることを防止するため、公の施設の利用制限について《下線ここから》基準を定めるものとする。《下線ここまで》 〇区分 川崎市 〇内容 (公の施設の利用許可等の基準) 第16条 市長は、公の施設(市が設置するものに限る。以下同じ。)において、本邦外出身者に対する不当な差別的言動が行われるおそれがある場合における公の施設の利用許可及びその取消しの基準その他《下線ここから》必要な事項を定めるものとする。《下線ここまで》 〇区分 相模原市 〇内容 (本邦外出身者に対する不当な差別的言動に係る公の施設の利用の承認等の基準等) 第19条 市長は、市が設置する公の施設(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条第1項に規定する公の施設をいう。以下同じ。)において、本邦外出身者に対する不当な差別的言動が行われるおそれがある場合における公の施設の利用の承認及びその取消しの基準《下線ここから》その他必要な事項(以下「基準等」という。)を定めるものとする。《下線ここまで》 2(略) 《表区切り》 〇区分 三重県 〇内容 (県の責務) 第五条(略) 3 県は、県が設置する公の施設(地方自治法(第22年法律第67号)第244条第1項に規定する公の施設をいう。)における《下線ここから》人権侵害行為の防止に努めるものとする。《下線ここまで》 【逐条解説】 事前の公の施設の利用制限には課題があると考えられることを踏まえ、直接的に公の施設の利用制限につながる規制的な措置は想定しておらず、利用に当たっての申込書類等において「不当な差別その他の人権侵害行為を行わないことを利用条件として設定することなどを想定したものです。 《表区切り》 〇区分 大阪市 〇内容 なし 【大阪市人権施策推進審議会答申(平成27年2月)による考え方】 ・表現内容がヘイトスピーチに該当するかどうかはその内容を確認しなければ判断できないこと ・「集会の目的や集会を主催する団体の性格そのものを理由として、使用を許可せず、あるいは不当に差別的に取り扱うことは許されない」こと(最高裁判例) ⇒ヘイトスピーチが行われることが想定されることだけをもって、事前に公の施設の利用を拒否することは極めて困難(管理上の支障など客観的・具体的な予測が必要)