参考資料4 〇ヘイトスピーチ対処に関する条例の合憲性に関する判例について ― 表現の自由と不当な差別的言動の関係 ― 最高裁判例 (令和3年(行ツ)第54号 公金支出無効確認等請求事件 令和4年2月15日 第三小法廷判決) 【経緯】 大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例において、当該条例で定めるヘイトスピーチに当たるかどうか等について調査・審議等をする審査会を置くことなど定めていたところ、大阪市の住民が、表現の自由を保障した憲法21条1項等に違反して無効であるため、審査会の委員の報酬等の支出は違法として訴えた事案 【判決の要旨】 憲法21条1項により保障される表現の自由は,立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって,民主主義社会を基礎付ける重要な権利であるものの,無制限に保障されるものではなく,(ここから下線)公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがある(下線終わり)というべきである。そして,本件において,本件各規定による表現の自由に対する制限が上記限度のものとして是認されるかどうかは,(ここから下線)本件各規定の目的のために(ここから網掛けです)制限が必要とされる程度と,制限される自由の内容及び性質,これに加えられる具体的な制限の態様及び程度等(網掛け終わり)を較量して決めるのが相当(下線終わり)である(最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁等参照)。 本件各規定は,拡散防止措置等を通じて,表現の自由を一定の範囲で制約するものといえるところ,その目的は,その文理等に照らし,条例ヘイトスピーチの抑止を図ることにあると解される。そして,条例ヘイトスピーチに該当する表現活動のうち,特定の個人を対象とする表現活動のように民事上又は刑事上の責任が発生し得るものについて,これを抑止する必要性が高いことはもとより,民族全体等の不特定かつ多数の人々を対象とする表現活動のように,直ちに上記責任が発生するとはいえないものについても,前記1【事務局注:条例の各規定の趣旨】で説示したところに照らせば,(ここから下線)人種又は民族に係る特定の属性を理由として特定人等を社会から排除すること等の(ここから網掛け)不当な目的をもって公然と行われる(網掛け終わり)ものであって,その(ここから網掛け)内容又は態様(網掛け終わり)において,殊更に当該人種若しくは民族に属する者に対する差別の意識,憎悪等を誘発し若しくは助長するようなものであるか,又はその者の生命,身体等に危害を加えるといった犯罪行為を扇動するようなものであるといえるから,これを抑止する(ここから網掛け)必要性が高い(下線終わり、網掛け終わり)ことに変わりはないというべきである。加えて,市内においては,(ここから下線と網掛け)実際に上記のような過激で悪質性の高い差別的言動を伴う街宣活動等が頻繁に行われていた(下線と網掛け終わり)ことがうかがわれること等をも勘案すると,(ここから下線)本件各規定の(ここから網掛け)目的は合理的であり正当(下線と網掛け終わり)なものということができる。また,本件各規定により制限される表現活動の内容及び性質は,上記のような(ここから下線と網掛け)過激で悪質性の高い差別的言動を伴うものに限られる(下線と網掛け終わり)上,(ここから下線)その(ここから網掛け)制限の態様及び程度(網掛け終わり)においても,事後的に市長による拡散防止措置等の対象となるにとどまる。(下線終わり)そして,拡散防止措置については,市長は,看板,掲示物等の撤去要請や,インターネット上の表現についての削除要請等を行うことができると解されるものの,(ここから下線と網掛け)当該要請等に応じないものに対する制裁はなく,(網掛け終わり)認識等公表についても,表現活動をしたものの氏名又は名称を(ここから網掛け)特定するための法的強制力を伴う手段は存在しない。(網掛け終わり、下線終わり)そうすると,(ここから下線と網掛け)本件各規定による表現の自由の制限は,合理的で必要やむを得ない限度(網掛け終わり)にとどまる(下線終わり)ものというべきである。