表紙 2023(令和5)年度名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」活動報告書 ≪キャラクターイラスト掲載≫マスコットキャラクター「なごもん」 名古屋市子どもの権利擁護委員 2024(令和6)年7月 ≪音声コード掲載≫ 表紙裏 この活動報告書は、名古屋市子どもの権利擁護委員条例(以下、「擁護委員条例」という。)第19条に基づき、名古屋市子どもの権利擁護委員(以下、「擁護委員」という。)の2023(令和5)年度の活動について報告するものです。 改ページ はじめに 名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」は、名古屋市子どもの権利擁護委員が子どもの権利侵害に関する相談に応じるため、2019(令和元)年度末(2020(令和2)年1月14日)に開設した相談室です。開設から丸4年が経過し、この活動報告書が5冊目になります。 今回は、子どもから申立てがあり、この間、時間をかけて取り組んできた申立事案において、子どもの権利侵害が回復されて終結した報告があります。 また、2023(令和5)年度も418件の初回相談を受け付けることができました。相談を受けて行った関係機関(学校・教育委員会、児童相談所等)との調整活動は延べ575件になりましたが、連絡したときに「なごもっかさんですね」とスムーズに受け入れてもらえることが増えたように感じています。 学校での授業や研修会等に擁護委員が出向いて行う子どもの権利学習は52件を実施しました。学校等に行ったときに「なごもっかのことを知っているよ」と笑顔で手を挙げてくれる子どもたちも増えました。学校のみならず、子どもに関わる活動をしている方々からも、子どもの権利学習の申し込みをたくさんもらっています。 加えて2023(令和5)年度は、子どもの権利が守られる文化・社会を作るための「なごもっか」の活動について、子どもたちに参画してもらう「てつなぎなごもんず」の活動を本格始動しました。子どもの権利や「なごもっか」について知ってもらうためにはどのような方法が有効かを、子どもたちから提案してもらいました。 子どもたちは守られるだけの存在ではなく、自ら権利を持ち、行使する主体であり、どの子どももその力を持っています。私たち大人の役割は、子どもたちの力を信じ、自ら権利行使できる力を伸ばすことができるよう支援することだと、日々の相談活動や普及啓発活動を通じ、再認識しています。子どもの権利のことや「なごもっか」のことを広く知ってもらうことで、権利が守られていない子どもたちがSOSを出しやすくなります。これからも個別相談対応はもちろんのこと普及啓発活動も、子どもの権利擁護のための両輪として大切にしていきます。 このように子どもの権利が少しずつ浸透している一方で、開設当初から多くの相談が寄せられているのが、「教職員による不適切指導」や「特別支援教育」についてです。これらをはじめ、子どもの権利が守られない背景には、構造的な問題もあり、社会で取り組んでいくべき課題があります。そこで、私たちから問題提起することが必要であると考え、2023(令和5)年度は、国のこども大綱の策定に向けた中間整理に対する意見書、中央教育審議会会長宛に「子どもの権利を保障できる教員配置が可能となるような制度設計」の検討を求める意見書、名古屋市教育委員会が策定を進めていた「第4期名古屋市教育振興基 改ページ 本計画(案)」に対するパブリックコメントを提出しました。このような制度改善に向けた積極的な意見表明は、他自治体の子どもの権利擁護機関には見られない名古屋市ならではの活動です。本活動報告書でも、これらの意見書等と共に、「W 相談から見えてきた課題」で相談の実情を掲載していますので、ご覧ください。 2024(令和6)年は子どもの権利条約批准30周年です。子どもの権利があたりまえのものとして守られるよう、擁護委員・調査相談員一同、活動してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。 名古屋市子どもの権利擁護委員 代表委員 粕田陽子 改ページ 目次 はじめに 代表委員 粕田陽子 T 子どもの権利擁護委員制度 1 U なごや子どもの権利条例 10 V 相談・調査・調整等の状況 12 W 相談から見えてきた課題 コラム「匿名」での調整を希望する相談 25 X 勧告・要請及び制度改善のための提言等 33 Y 広報・啓発活動 48 Z シンポジウム・研修 62 [ 「なごもっか」の紹介〜相談員から子どものみなさんへ〜 64 \ 資料編 72 ・「なごもっか」の沿革 ・なごや子どもの権利条例 ・名古屋市子どもの権利擁護委員条例 ・名古屋市子どもの権利擁護委員条例施行細則 改ページ 白紙 1ページ T 子どもの権利擁護委員制度 1 子どもの権利条約と子どもの権利擁護機関 1989(平成元)年、子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)が採択され、日本は1994(平成6)年に批准しました。子どもの権利条約は、子どもが幸せに生きるための世界共通の基準で、子どもは保護の客体であるだけではなく、大人と別の人格を持つ独立した権利の主体であることを明確に示しました。子どもの権利条約における子どもは、「未来を生きる存在」だけではなく「今を生きる存在」であり、社会の構成員として参加する存在とされています。 国連子どもの権利委員会は、子どもの権利を保障していくために特に大切な4つの一般原則を明らかにしています。差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益の保障(第3条)、生 命・生存・発達の権利の保障(第6条)、そして子どもの意見表明権の保障(第12条)です(一般的意見5号)。大人は、その子どもに関わることすべてにおいて、「子どもの最善の利益」(子どもにとって一番良いこと)は何かを第一に考えることが必要であり、それは、大人が勝手に考える最善の利益であってはならないものです。子どもは権利の主体であるため、子どもの意見を聞き、それを尊重しつつ、子どもとともに最善の利益を考えることが重要です。 子どもが自らの権利を行使するためには、国・社会・大人の支えが必要です。子どもの権利条約があるだけで、子どもの権利が守られるわけではありません。そこで、国連子どもの権利委員会は、子どもの権利擁護機関(オンブズパーソン、子どもの権利擁護委員などといいます)を作ることが必要だと指摘をしています(一般的意見2号)。 子どもの権利擁護機関のあり方については、日本の「第4回・第5回統合定期報告書」に対し、国連子どもの権利委員会から次のような指摘もあわせてなされています(2019(平成31)年3月5日 日本の第4回・第5回統合定期報告書に関する総括所見パラグラフ12)。 地方レベルで33の子どものためのオンブズパーソンが設置されていることには留意しながらも、これらの機関は財政面および人事面の独立性ならびに救済機構を欠いているとされる。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもによる苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応することのできる、子どもの権利を監視するための具体的機構を含んだ、人権を監視するための独立した機構を迅速に設置するための措置。 (b)人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)の全面的遵守が確保されるよう、資金、任務および免責との関連も含めてこのような監視機関の独立を確保するための措置。 「ARC 平野裕二の子どもの権利・国際情報サイト」より引用 2ページ 子どもの権利擁護機関は、行政から独立した立場で、子どもの権利が守られているか監視する役割を果たすために、公的第三者機関として独立性が確保されていることが重要です。日本型の子どもの権利擁護機関の多くは、個別の相談を受け、子どもの権利の回復のために調整活動を行うとともに、申立てを受けて調査を行い、必要があれば制度改善の勧告等を行う権限を持っています。また、子どもからの相談等を通じて、子どもの権利が侵害されていないかモニタリングし、申立てがなくとも調査を開始し、制度改善の勧告等をする機能(自己発意)や子どもの権利について周知する機能なども有しています。 2 国内の子どもの権利擁護委員制度の歴史 日本で初めての子どもの権利擁護機関は、1999(平成11)年に設置された兵庫県の「川西市子どもの人権オンブズパーソン」です。日本が子どもの権利条約を批准した1994(平成6)年は、西尾市立中学2年生の男子生徒がいじめによる自死をした年で、社会的にいじめの問題が注目されるとともに、学校内での解決の困難性が浮き彫りになっていた頃でした。そのような中、いち早く川西市は、子どもの人権を守るオンブズマン制度の検討を開始しました。1999(平成11)年に川西市子どもの人権オンブズパーソンができたのを皮切りに、2002(平成14)年に川崎市人権オンブズパーソンが設置され、その後、東海地区では2004(平成16)年に多治見市子どもの権利擁護委員制度、2008(平成20)年に豊田市子どもの権利擁護委員制度が開始しました。2024(令和6)年5月現在、名古屋市も含め全国で50の自治体が子どもの権利擁護機関を設置しているとされています(設置準備中も含む。出典:子どもの権利条例総合研究所ウェブサイト)。子どもの権利条例の中に設置根拠の位置づけをしている自治体が多いですが、名古屋市のように子どもの権利条例と別の条例(名古屋市の場合は擁護委員条例)が設置根拠である自治体もあります。ただし、50の自治体すべてが独立性を確保した子どもの権利擁護機関となっているわけではありません。 全国にある子どもの権利擁護機関は様々な名称・制度・機能で稼働していますが、共通点は子どもの権利条約の理念に基づき、子どもの意見表明権を大切にしながら、子どもの最善の利益を目指す機関であるということです。また、これらの子どもの権利擁護機関は、年に1度行われる「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム及び関係者会議で情報交換を行い、よりよい機関になるよう研鑽を積んでいます。 3 名古屋市の子どもの権利擁護委員制度 名古屋市は、擁護委員条例に基づき、擁護委員を設置し、名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」を運営しています。 3ページ (1)設置までの経緯 @ 背景 名古屋市では、子どもの権利及びその権利を保障するための市等の責務を明らかにするとともに、子どもの権利を保障し、子どもの健やかな育ちを社会全体で支援するため、「なごや子ども条例」を制定し、2008(平成20)年4月に施行しました。 一方、国においては、全ての児童が権利の主体として、適切な養育を受け、健やかな成長・発達や自立等を保障される権利を有することを明確化した改正児童福祉法が、2016(平成28)年に施行されました。 これらのことを背景として、2018(平成30)年度に、本市における子どもの権利保障を図る第三者機関の設置に向けて、なごや子ども・子育て支援協議会(以下本項では「支援協議会」という。)に「子どもの権利擁護機関検討部会」(以下本項では「部会」という。)を設置し、検討を行うこととなりました。 A 部会 部会では、名古屋市における子どもの権利擁護機関のあり方について議論が行われ、意見書「『名古屋市における子どもの権利擁護機関のあり方』について」として、2018(平成30)年10月31日に支援協議会への報告がなされました。 ◎「『名古屋市における子どもの権利擁護機関のあり方』について」の概要 ●区分 基本的な考え方 ●内容 ○ 子どもの権利擁護に係る委員(以下「権利擁護委員」という。)は、「子どもの最善の利益の確保」及び「子どもの権利の擁護」のための機関である。 ●区分 組織・体制等 ●内容 ○ 権利擁護委員は、名古屋市の都市規模を踏まえ、遅滞なく権利擁護の活動を行いうるよう、適切な人数を設置することが必要である。 ●区分 機能 ●内容 権利擁護委員の職務及び責務 ○ 権利擁護委員は、子どもの権利侵害の早期発見、予防を図るための活動を行うべきである。 ○ 権利擁護委員は、独立性を堅持しつつも、市の機関等と信頼関係を形成し、協力・連携を図ることが必要である。 相談、申立て調査及び勧告等 ○ 子ども等からの相談や申立てを受け、権利擁護のために問題解決を図る「個別救済」機能が必要である。 ○ 子どもの権利擁護のために「制度改善」を要請する機能が必要である。 ○ 申立てがなくても、権利侵害の内容が子ども全体に関わるものである場合等に、権利擁護委員が自ら権利救済や制度改善等を求める「自己発意」の機能が必要である。 ○ 子ども等の「申立て」に基づき、「調査・調整」、「是正等の勧告」等及び「公表」を行うプロセスを条例で規定することが必要である。 4ページ ○ 市の機関以外のものに対しても、権利擁護委員の活動への協力に努めることを条例で規定することが適当である。 B 市民意見の聴取 部会からの意見書を受けて作成した「名古屋市における子どもの権利擁護機関の基本的なあり方」について、2018(平成30)年12月から2019(平成31)年1月にかけて市民の皆さんのご意見を募集(意見提出者数:24人)し、制度構築に反映しました。 C 条例の制定と「なごもっか」の開設 部会での検討内容を基に、市民意見を反映した「名古屋市子どもの権利擁護委員条例(案)」を2019(平成31)年2月開催の名古屋市会に上程し、可決されたことにより、同年3月27日「名古屋市子どもの権利擁護委員条例」として公布しました。 その後、条例に基づく子どもの権利擁護機関の開設準備を進め、2020(令和2)年1月14日に、名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」を開設しました。 (2)名古屋市の子どもの権利擁護委員制度の主な特徴 @ 条例における特徴 ア 子どもの権利を守る名古屋の実現 「子どもの権利を守る文化及び社会」をつくることを目的のひとつとし、その手段として、擁護委員の職務のひとつに「子どもの権利に関する普及啓発」を位置づけました。市も子どもの権利の普及を図るための広報活動を行うこととしており、相乗効果が期待されます(なごや子どもの権利条例第19条の2)。 また、子どもの権利侵害の予防及び早期発見も擁護委員の責務とされ、救済だけではなく予防の観点も重視しています。 〇 第1条(設置) 「子どもの権利を守る文化及び社会をつくり、子どもの最善の利益を確保するため、本市に市長の附属機関として、名古屋市子どもの権利擁護委員を置く。」 〇 第3条(所掌事務)第4号 「子どもの権利に関する普及啓発を行うこと。」 〇 第9条(委員の責務)第1項 「委員は、職務を行うに当たっては、子どもの権利侵害の予防及び早期発見に努めなければならない。」 イ 独立性の確保と、子どもの権利侵害からの回復及び子どもの権利の保障のための 強い権限 子どもの権利擁護機関の独立性を確保するとともに、すべての人に協力をする責務を課し、勧告・要請の尊重義務を明記するのみならず、再調査、再勧告・再要請の制度も設けました。再勧告または再要請をしたときは、その内容を公表する義務が擁 5ページ 護委員に課せられています。子どもの権利を守る文化及び社会をつくり、子どもの最 善の利益を確保できるよう、強い権限が与えられています。 〇 第4条(所掌事務)第2項 「委員は、人格が高潔で、子どもの権利に関し優れた識見を有し、かつ、第三者として独立性を保持し得る者のうちから、市長が委嘱する。」 〇 第10条(市の機関の責務) 「市の機関は、委員の職務の遂行に関し、独立性を尊重するとともに、積極的に協力し、及び援助しなければならない。」 〇 第11条(全ての者の責務)第1項 「何人も、委員の職務の遂行に関し、積極的に協力しなければならない。」 〇 第12条(相談及び申立て)第1項 「何人も、全ての子どもの権利侵害に関する事項について、委員に対し、相談及び申立てを行うことができる。」 〇 第15条(勧告又は要請)第3項 「勧告又は前項の要請を受けた者は、これを尊重しなければならない。」 〇 第16条(報告)第1項 「委員は、前条第1項の勧告をしたときは、当該市の機関に対し、是正等の措置又は制度の改善の状況について報告を求めるものとする。」 〇 第17条(再調査等及び再勧告等)第1項〜第3項 「委員は、前条第2項又は第4項(第4項において準用する場合を含む。)の規定による報告の内容等を踏まえ、必要があると認めるときは、改めて調査又は調整(以下「再調査等」という。)を行うことができる。」 「委員は、再調査等の結果、必要があると認めるときは、市の機関に対し、改めて是正等の措置を講じ、又は制度の改善を行うよう勧告(以下「再勧告」という。)をすることができる。」 「委員は、再調査等の結果、必要があると認めるときは、市の機関以外のものに対し、改めて是正等の措置を講ずるよう要請(以下「再要請」という。)をすることができる。」 〇 第18条(公表)第2項 「委員は、再勧告若しくは再要請をしたとき又は前条第4項において準用する第16条第2項若しくは第4項の規定による報告があったときは、その内容を公表しなければならない。」 A 独立性を担保するための仕組み 擁護委員の独立性については、@に掲げたとおり、擁護委員条例第4条第2項や第10条において規定されているところです。 6ページ 一方、擁護委員条例の制定に至るまでに市民の皆さんからお寄せいただいたご意見や、市議会での議論においては、擁護委員のみならず事務局も含めた独立性のあり方についても、多くのご意見をいただきました。 こうしたことを踏まえ、擁護委員の独立性を担保し、子どもの権利擁護機関の適正な運用を図るため、擁護委員に対する事務局の関与のあり方について監督する「子どもの権利擁護機関参与」を2020(令和2)年4月より配置することとなり、参与は、半田勝久氏(日本体育大学准教授、小金井市子どもオンブズパーソンほか)が務めています。 4 名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」 (1)体制 @ 子どもの権利擁護委員(5名) ※2024(令和6)年5月31日時点 ●氏名 粕田 陽子(代表委員) ●所属等 弁護士 愛知県弁護士会子どもの権利委員会委員 ●氏名 川口 洋誉(代表委員代理) ●所属等 愛知工業大学基礎教育センター 准教授(教育学) ●氏名 谷口 由希子 ●所属等 名古屋市立大学大学院人間文化研究科 准教授(社会福祉学) ●氏名 間宮 静香 ●所属等 弁護士 日本弁護士連合会子どもの権利委員会副委員長 ●氏名 吉住 隆弘 ●所属等 中京大学心理学部 教授(臨床心理学) A子どもの権利擁護調査相談員(15名)※2024(令和6)年5月31日時点 擁護委員の職務の遂行を補助し、相談対応や関係機関等への調査・調整、子どもの権利についての普及啓発を行います。 社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、臨床心理士、保健師等の心理・福祉に関する業務に従事するための資格を有する者、相談援助業務に一定期間従事した経験のあること等を採用のための要件としています。 B子どもの権利擁護機関参与 擁護委員の独立性を担保し、子どもの権利擁護機関の適正な運用を図るため、擁護委員と事務局のいずれからも独立した立場から、擁護委員に対する事務局の関与のあり方に係る監督、事務局の企画立案に対する指導・助言を行います。 7ページ ●氏名 半田 勝久 ●所属等 日本体育大学体育学部 準教授(教育学) C 子どもの権利擁護機関専門調査員(7名)※2024(令和6)年5月31日時点 擁護委員の指示のもと、関係法規や制度、社会環境等について専門的な視点から情報収集や分析等の作業を行うため、2022(令和4)年度から新たに非常勤特別職の「専門調査員」を配置しています。主に研究者や弁護士が担っています。 D 子どもの権利擁護機関事務局(3名) 子どもの権利相談室に係る事務のほか、子どもの権利に関する普及啓発を、擁護委員、調査相談員と協力しながら行います。 相談や調査・調整、勧告・要請等には、事務局は関与しません。 (2)相談 @ 相談受付方法 「なごもっか」における相談では、子どもを権利の主体として位置付け、子どもが安心して率直に意見を述べられることと、個別の問題の背景に子どもの権利に関する問題があれば、それを慎重に探っていくことが必要です。そのため、可能な限り直接子ども自身と会って、その声をじっくり聴くことが必要であると考え、電話・面談などの相談方法を中心としています。 ●電話 子ども専用フリーダイヤル 0120−874−994(はなし きくよ) 大人用電話番号 052−211−8640 ※ 子どもの権利に関わることであれば、大人も相談できます。 ●FAX 052−211−8072 ●面談、手紙 〒461-0005 東区東桜一丁目13番3号 NHK 名古屋放送センタービル6階 ※初めて相談する子どもからの面談予約はLINEからもできます。 ≪LINEのアイコン・二次元コード掲載≫友だち追加はこちらから! A相談できる曜日と時間 ※2024(令和6)年5月31日時点 月曜日 午前11時から午後7時 (受付は午後6時30分まで) 火曜、木曜、金曜日 午前11時から午後9時 (受付は午後8時30分まで) 土曜日 午前11時から午後5時 (受付は午後4時30分まで) ※祝日、年末年始(12月29日から1月3日)を除きます。 ※2024(令和6)年2月に、相談時間を変更するとともに、LINEによる面談予約を始めました。詳しくは19頁を参照ください。 8ページ B相談を受けてからの流れ ●例えば、こんなとき 〇学校で ・友達が嫌がらせする。 ・先生に相談しにくい。 ・部活の指導が厳しい。体罰された。 〇家で ・家にいたくない。 ・自分の時間がない。 ・きょうだいや家族の面倒をみないといけない。 〇他にも ・人に言えないイヤなことがある。 ・このルールおかしくない? ・みんなと違うのはダメなの? など ↓ ●相談 お話を聴きます。 相談にお金はかかりません。 電話で、ファックスで、会って、手紙で LINEから面談予約もできるよ。 友だち追加はこちらから↓ ≪LINEアイコン、二次元コード掲載≫ 秘密は守ります。 あなたの同意がなければ、「なごもっか」以外の人(保護者、学校、その他)には相談内容を伝えません。 ↓ ●あなたの気持ちを一番に一緒に考えます ・どうしたいかな ・どんなことができるかな ↓ ●調査・調整 ・擁護委員が、関係する人たちに話を聴いたり、協力をお願いしたりします。 ・擁護委員が、あなたの代わりに気持ちや意見を伝えることもできます。 ↓ ●勧告・要請 もっとよくしていくために、他の機関に対して対応や制度の改善を求めることもできます。 ↓ ●解決・権利の回復 ≪「●あなたの気持ちを一番に一緒に考えます」、「調査・調整」の後に「●解決・権利の回復」に繋がる事例もある≫ あなたの気持ちを尊重して問題の解決をめざします。 ・安心した。・元気になった。・どうすればいいか、わかった。など 9ページ (3)「なごもっか」における子どもの参画 「なごもっか」では、運営や広報活動に関して子どもの参加する権利を保障するため、「なごもっか」と一緒に活動する子どものチームを創設することにし、市内在住又は在勤、在学の18歳未満の方を対象に、2022(令和4)年7月に募集したところ、78名の方から応募があり、2024(令和6)年3月31日時点では112名が登録しています。 また、名称は、登録してくれた子どもたちからチームの正式名称を募集し、投票してもらった結果、「てつなぎなごもんず」に決まりました。2023(令和5)年度は、8月3日に「あつまれ!てつなぎなごもんず!!第1回会議やるよー!」を開催し、「子どもの権利」や「なごもっか」のことを広めるためのアイデアをみんなで考えました。参加したメンバーからは、 「なごもんのアニメを作る」「CM を流す」「子ども用ホームページを作る」などたくさんのアイデアが出され、2024(令和6)年度もその実現に向けて取り組んでいく予定です。 「てつなぎなごもんず」の登録状況 (2024(令和6)年3月31日現在) 〇区分 未就学 〇年齢 5歳 〇人数 1人 〇合計 1人 〇区分 小学生 〇年齢 6歳 〇人数 1人 〇年齢 7歳 〇人数 17人 〇年齢 8歳 〇人数 21人 〇年齢 9歳 〇人数 14人 〇年齢 10歳 〇人数 16人 〇年齢 11歳 〇人数 7人 〇年齢 12歳 〇人数 8人 〇合計 84人 〇区分 中学生 〇年齢 13歳 〇人数 7人 〇年齢 14歳 〇人数 4人 〇年齢 15歳 〇人数 5人 〇合計 16人 〇区分 高校生 〇年齢 16歳 〇人数 6人 〇年齢 17歳 〇人数 4人 〇年齢 18歳 〇人数 1人 〇合計 11人 〇合計≪表全体の合計≫ 112人 10ページ U なごや子どもの権利条例 名古屋市では、子どもの権利を保障するとともに、子どもの健やかな育ちを社会全体で支援するまちの実現を目指し、子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)を基本とした子どもの権利について掲げた「なごや子ども条例」を、2008(平成20)年4月に施行しました。その後、2019(平成31)年3 月の「名古屋市子どもの権利擁護委員条例」の制定、2020(令和2 )年1月の「子どもの権利擁護機関」の設置の流れを踏まえ、子どもは権利の主体であり、子どもの権利を根幹に据えるという観点から「なごや子ども条例」について見直し、2020(令和2)年4月に「なごや子どもの権利条例」として改正を行いました。 なごや子どもの権利条例マスコットキャラクター「なごっち」 1 なごや子どもの権利条例の概要 <基本理念> 子どもが権利の主体であることを明らかにし、子どもの権利条約を基本として子どもにとって大切な権利を掲げ、その権利を保障するため、市、保護者、地域住民等、学校等関係者、事業者の責務を明らかにするとともに、市の基本施策等を定め、子どもの権利を保障し、子どもの健やかな育ちを社会全体で支援するまちの実現を目指します。 <条例に掲げる子どもの権利> ● 安全に安心して生きる権利 命が守られること、虐待・体罰・いじめ等あらゆる暴力や犯罪から守られること、あらゆる差別を受けないことなど ● 一人一人が尊重される権利 個人の価値が尊重されること、自分の考えを自由に持ち、及び表現することができることなど ● のびのびと豊かに育つ権利 学ぶこと、遊ぶこと、休息すること、自然とふれあうことなど ● 主体的に参加する権利 意見を表明する機会が尊重されること、自分たちの意見が尊重されることなど <子どもの権利を保障する大人の責務> ● 共通の責務 市、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者は子どもの権利を保障するため、連携し、協働するとともに、下記の支援を行う @子どもが他者の権利を尊重することができるようになるために必要な支援 A保護者が子どもの養育及び発達に関する第一義的な責任を果たすために必要な支援 11ページ 市の責務 子どもの権利を保障するため、子どもに関する施策を実施するなど ● 保護者の責務 子どもの養育及び発達に家庭が果たす役割を理解し、子どもにとっての最善の方法を考えるなど ● 地域住民等の責務 子どもが地域社会の一員であることを認識し、子どもの健やかな育ちを支援したり、安全で安心な地域づくりに努めたりするなど ● 学校等関係者の責務 子どもが主体的に学び育つために必要な支援や、子どもが子どもの権利について理解し、意見表明することができるよう支援するなど 2 これからの取組み (1)なごや子ども・子育てわくわくプラン2024 名古屋市では、子ども・若者・子育て家庭に関する施策を総合的かつ計画的に実施していくため、名古屋市子どもに関する総合計画を策定しています。 2020(令和2)〜2024(令和6)年度を計画期間とする「なごや子ども・子育てわくわくプラン2024」では、子どもの権利を守り生かすことへの支援として、なごや子どもの権利条例を普及啓発していくことや、子ども会議の設置などにより子どもの社会参画を推進していくことを掲げています。 (2)子どもの社会参画の推進 なごや子どもの権利条例では、子どもの権利のひとつとして「主体的に参加する権利」を掲げており、子どもは意見を表明する機会が与えられていることや、自分たちの意見が尊重されること、そして意見を表明するために、必要な情報の提供その他必要な支援を受けられることが保障されなければならないとしています。 子どもの権利である「主体的に参加する権利」を保障する観点から、子どもの社会参画が推進されるよう、有識者・実践者らを委員とする懇談会を開催するとともに、子どもたちへのヒアリングを実施しながら、2022(令和4)年5月、市職員を対象とした「子どもの社会参画のよりどころとなる指針」をとりまとめ、市職員による継続的な子どもの社会参画の取組の推進を目指しています。 (市公式ウェブサイト「子どもの社会参画のよりどころとなる指針」ページ) <https://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/page/0000169327.html> ≪二次元コード掲載≫ 12ページ V 相談・調査・調整等の状況 1 相談・調査・調整等活動の状況 2023(令和5)年4月1日から2024(令和6)年3月31日までの相談・調査・調整等活動の状況です。 ※1 子どもの権利侵害に関する相談でないものや無言電話等は件数から除外しています。 ※2 「相談」・「延べ件数」の中には申立てを受けて行った調査・調整活動、情報収集のための調査活動の回数も含みます。 ※3 「相談者」は実際に相談をした人、「相談対象」は相談事案において権利侵害をされているおそれのある人(子ども)を表します。 ※4 延べ件数の中には、2022(令和4)年度までに初回相談を受け、引き続き相談が継続しているものを含みます。 (1)月別相談件数(初回/延べ) 月別の相談件数を初回件数と延べ件数とに分けて示しました。相談者からの電話や面談のほか、相談等を受けて関係者・関係機関への情報収集等のやり取りを行った件数も合わせたものを「延べ件数」としています。 〇区分 令和5年度初回件数(令和4年度) 4月 28(21) 5月 25(38) 6月 71(64) 7月 40(39) 8月 31(28) 9月 32(31) 10月 27(55) 11月 38(32) 12月 25(21) 1月 24(29) 2月 38(60) 3月 39(42) 計 418(460) 〇区分 令和5年度延べ件数(令和4年度) 4月 195(145) 5月 205(134) 6月 264(214) 7月 286(153) 8月 246(117) 9月 220(137) 10月 226(175) 11月 206(182) 12月 275(161) 1月 242(161) 2月 257(259) 3月 300(229) 計 2,922(2,067) 13ページ 初回件数は計418件、延べ件数は計2,922件でした。2022(令和4)年度と比較して、 初回件数は約9%減、延べ件数は約41%増となりました。「なごもっか」開設以来、初回件数が初めて減少しましたので、今後も動向を注視していきたいと考えています。一方、延べ件数は増加しており、1つの相談に対する対応件数が増えています。 例年通り、「なごもっか通信」(2023(令和5)年度は6月下旬、11月下旬、2月中旬)・ 携帯用カード(5月末)等の広報物の配付以降に初回相談が多くなる傾向が見られました。 (2)相談者別件数(子ども/大人)(初回) 初回相談における相談者別(子ども/大人)の相談件数及びその割合を示しました。なお相談者が大人の場合、その後子ども本人と話すことができた件数と、子ども本人と話すことができなかった件数についても示しました。 〇2022(令和4)年度 相談者別件数 n=415 子ども 212(51.1%) 大人 203(48.9%) ≪大人内訳≫ ・子ども本人と話すことができた32(7.7%) ・子ども本人と話すことができなかった171(41.2%) 〇2023(令和5年度) 相談者別件数 子ども 180(46.2%) 大人 210(53.8%) ≪大人内訳≫ ・子ども本人と話すことができた28(7.2%) ・子ども本人と話すことができなかった162(46.7%) 初回の相談者は子どもが180件、大人が210件、不明が28件でした。2022(令和4)年度と比較して、初回における子どもからの相談件数は約15%減、大人からの相談件数は3%増となりました。大人210件のうち、その後子ども本人と話すことができたのは28件でした。よって全相談のうち不明を除く390件中、208件(約53%)で子ども本人から話を聞くことができました。 (3)相談者が子どもの場合の当該子どもの年代(初回) 初回相談者が子どもの場合における、当該子どもの年代ごとの相談件数を示しました。 n=180 〇未就学 0 〇小学校低学年 39 〇小学校高学年 49 〇小学校(学年不明) 4 〇中学校1年〜3年 1年 6 2年 6 3年 20 学年不明 2 〇高校1年〜3年 1年 18 2年 14 3年 5 学年不明 1 〇高校等に在籍していない子ども 1 〇高校生年齢(学年、所属不明) 10 〇18歳以上の子ども 0 〇子ども(年齢不明) 5 14ページ 小学校低学年(1〜3年生)が39件、小学校高学年(4〜6年生)が49件、小学校の学年不明が4件、中学校1〜3年生が32件、中学校の学年不明が2件、高校1〜3年生が37件、高校の学年不明が1件ありました。年齢にかかわらず子どもたちが「なごもっか」に相談をしてくれていることがわかります。このほか、高校等に在籍していない子どもが1件、高校生の年齢で、学年や在籍する学校等が不明の方から10件相談がありました。 幅広い年齢層からの相談がある一方で、学校を通じて配付する「なごもっか通信」や携帯用カードが届かない、学校等に在籍していない子どもからの声について、まだまだキャッチできていない状況があります。 (4)相談対象の子どもの年代(初回) 初回件数において、相談対象とされた子どもの年代ごとの件数を示しました。 n=384 〇未就学 28 〇小学校低学年 77 〇小学校高学年 90 〇小学校(学年不明) 4 〇中学校1年〜3年 1年 22 2年 27 3年 34 学年不明 2 〇高校1年〜3年 1年 31 2年 22 3年 17 学年不明 4 〇高校等に在籍していない子ども 1 〇高校生年齢(学年、所属不明) 12 〇18歳以上の子ども 1 〇子ども(年齢不明) 12 相談対象とされた子どもは、小学生が多く、全体の半数近くを占め、中学生、高校生と続きました。件数は、それぞれ小学生171件、中学生85件、高校生74件でした。 (5)相談の継続回数 2023(令和5)年度中に開始した相談について、2024(令和6)年3月31日までに初回を含めて相談が継続した回数を示しました。 n=418 〇1回 264件 63% 〇2〜4回 85件 20% 〇5〜10回 33件 8% 〇11〜15回 13件 3% 〇16回以上 23件 6% 15ページ 期間中、相談が1回だったものは264件(約63%)と半分以上の割合を占め、2〜4回のものは85件(約20%)、5〜10回のものは33件(約8%)、11〜15回のものは13件(約3%)、16回以上のものは23件(約6%)でした。 (6)相談の主訴(初回) 初回相談時における主訴別の件数を、相談者が子どもの場合と大人の場合とに分けて示しました。なお複数の悩みや心配事などがあった場合は、最も中心となっているものを主訴としました。 〇主訴 いじめ 子ども:17 大人:20 不明:0 計:37 〇主訴 不登校 子ども:2 大人:9 不明:0 計:11 〇主訴 校則 子ども:0 大人:2 不明:0 計:2 〇主訴 学級崩壊 子ども:0 大人:2 不明:0 計:2 〇主訴 教職員の対応 子ども:15 大人:67 不明:0 計:82 〇主訴 進路 子ども:0 大人:1 不明:0 計:1 〇主訴 学校等の事故 子ども:0 大人:3 不明:0 計:3 〇主訴 心身の悩み 子ども:18 大人:3 不明:1 計:22 〇主訴 性の悩み 子ども:27 大人:0 不明:0 計:27 〇主訴 暴力 子ども:1 大人:0 不明:0 計:1 〇主訴 対人関係 子ども:51 大人:14 不明:4 計:69 〇主訴 非行 子ども:0 大人:1 不明:0 計:1 〇主訴 ハラスメント 子ども:1 大人:0 不明:0 計:1 〇主訴 体罰 子ども:0 大人:1 不明:0 計:1 〇主訴 犯罪被害 子ども:0 大人:3 不明:0 計:3 〇主訴 ネット被害 子ども:0 大人:0 不明:0 計:0 〇主訴 行政施策 子ども:0 大人:0 不明:0 計:0 〇主訴 行政機関対応 子ども:1 大人:1 不明:0 計:2 〇主訴 関係機関対応 子ども:0 大人:8 不明:0 計:8 〇主訴 家族関係 子ども:22 大人:17 不明:1 計:40 〇主訴 虐待 子ども:5 大人:2 不明:0 計:7 〇主訴 子育ての悩み 子ども:0 大人:34 不明:0 計:34 〇主訴 施設生活 子ども:4 大人:5 不明:0 計:9 〇主訴 その他 子ども:16 大人:17 不明:22 計:55 〇主訴 計 子ども:180 大人:210 不明:28 計:418 多かった主訴は、全体で順に「教職員の対応」(82件)「対人関係」(69件)、「家族関係」(40件)でした。そのうち子どもから多かったのは「対人関係」(51件)、「性の悩み」(27件)、「家族関係」(22件)で、大人から多かったのは「教職員の対応」(67件)、「子育ての悩み」(34件)、「いじめ」(20件)でした。 16ページ (7)曜日別件数(初回/延べ) 初回件数および延べ件数を曜日別に示しました。 〇初回件数 子ども 月:27 火:41 水:2 木:56 金:35 土:19 計:180 大人 月:36 火:48 水:0 木:59 金:49 土:18 計:210 不明 月:3 火:2 水:0 木:12 金:9 土:2 計:28 〇延べ件数 月:496 火:632 水:36 木:847 金:639 土:272 計:2,922 相談日は、月、火、木、金、土曜日の5日間です。水曜日は相談を行っていませんが、手紙やFAXによる相談の受付や関係機関への電話連絡等があり、その件数を計上しました。 また、2023(令和5)年度は、木曜日については相談時間が22時まで(2月1日以降は21時まで。後記3参照。)としており、他の曜日と比べて相談時間が長かったことや、前日の水曜日に相談を行っていないこと等により、前年度に引き続き、初回件数、延べ件数とも、曜日別では木曜日が最も多くなっています。 17ページ (8)時間帯別相談件数(初回/延べ) 初回件数および延べ件数を、時間帯別に示しました。初回件数については、相談者が子 どもの場合と大人の場合とに分けて示しました。 〇初回件数 子ども 〜11時:1 11時〜:15 12時〜:14 13時〜:17 14時〜:20 15時〜:24 16時〜:28 17時〜:26 18時〜:18 19時〜19時30分:6 19時30分〜20時:4 20時〜:5 21時〜:2 計:180 大人 〜11時:0 11時〜:56 12時〜:23 13時〜:28 14時〜:28 15時〜:26 16時〜:22 17時〜:11 18時〜:10 19時〜19時30分:1 19時30分〜20時:1 20時〜:3 21時〜:1 計:210 不明 〜11時:0 11時〜:2 12時〜:0 13時〜:4 14時〜:3 15時〜:5 16時〜:10 17時〜:2 18時〜:2 19時〜19時30分:0 19時30分〜20時:0 20時〜:0 21時〜:0 計:28 〇延べ件数 〜11時:60 11時〜:461 12時〜:209 13時〜:314 14時〜:347 15時〜:404 16時〜:437 17時〜:336 18時〜:204 19時〜19時30分:47 19時30分〜20時:40 20時〜:51 21時〜:12 計:2,922 初回件数は、相談が多い順に、11時台、16時台、15時台となりました。このうち、子どもからの相談は16時台が最も多く、学校からの帰宅時間と関係しているのではないかと考えられます。一方、大人からの相談は11時台が多く、子どもが学校などで在宅していない等の理由により、この時間帯に相談する場合が多いのではないかと考えられます。一方、延べ件数は、相談が多い順に、11時台、16時台、15時台、17時台となりました。 18ページ (9)相談の所要時間 @初回 初回相談における所要時間を、相談者が子どもの場合と大人の場合とに分けて示しました。 〇0-15分 子ども:86 大人:65 不明:28 計:179 〇16-30分 子ども:51 大人:64 不明:0 計:115 〇31-45分 子ども:23 大人:39 不明:0 計:62 〇46-60分 子ども:9 大人:26 不明:0 計:35 〇61-90分 子ども:10 大人:11 不明:0 計:21 〇91-120分 子ども:1 大人:5 不明:0 計:6 〇121分以上 子ども:0 大人:0 不明:0 計:0 〇計 子ども:180 大人:210 不明:28 計:418 60分以内に終了する場合が多く(約94%)、なかでも「0‐15分」の件数が最も多くなっています(約43%)。60分を超えた相談は27件で、子どもが11件、大人が16件ありました。 A 2回目以降 2回目以降の相談における所要時間を、相談者が子どもの場合と大人の場合とに分けて示しました。 〇0-15分 子ども:429 大人:1,073 不明:6 計:1,508 〇16-30分 子ども:144 大人:224 不明:0 計:368 〇31-45分 子ども:60 大人:93 不明:0 計:153 〇46-60分 子ども:70 大人:98 不明:0 計:168 〇61-90分 子ども:89 大人:109 不明:0 計:198 〇91-120分 子ども:37 大人:50 不明:0 計:87 〇121分以上 子ども:5 大人:17 不明:0 計:22 〇計 子ども:834 大人:1,664 不明:6 計:2,504 2回目以降の相談についても、「0‐15分」の件数が多くなっています(約60%)。これは相談に関する連絡・調整等の件数を含むためと思われます。一方、60分を超える相談も、子どもで131件、大人で176件ありました。 19ページ (10)相談方法(初回) 初回相談における相談方法は、電話が403件で全418件のうち約96%を占めました。 電話以外の方法は、面談が10件、手紙が4件、LINEでの面談予約が1件でした。 (11)関係機関からの情報収集等 申立て、自己の発意による調査・調整に関する活動を除き、相談を受け、今後の方針等を検討するための関係機関(学校・教育委員会、児童相談所等)からの情報収集等の調整活動を延べ575件行いました。 2 申立て・自己の発意の状況 2023(令和5)年度は、自己の発意(擁護委員条例第13条第2項)による調査を行うために必要となる、事実関係を把握するための情報収集等(発意前情報収集等)を2件開始しました。 また、申立てや発意はありませんでしたが、2023(令和5)年度以前に受理した申立てや発意については、引き続き調査・調整活動を行うとともに、2022(令和4)年度に行った要請についても、当該機関の対応状況を確認しました。なお、要請の内容については、「なごもっか活動報告書2022(令和4)年度版」に掲載しています。 3 より相談しやすくするための変更 (1)相談時間の変更 部活動や塾等で遅い時間まで忙しい子どもが、「なごもっか」へ相談しやすいように、2022(令和4)年7月から、相談時間を一部変更し、木曜日の相談時間を20時までから22時までとしました(「なごもっか活動報告書2022(令和4)年度版」21頁参照)。変更後の相談件数の実績を見ると、19時30分から21時までの時間帯では一定の相談件数がありましたが、21時以降の相談は多くなかったことを踏まえ、(前記1(8)時間帯別相談件数参照)、さらに相談しやすくなるよう、2024(令和6)年2月から、比較的相談の多い火曜・木曜・金曜の相談時間を、19時までから21時までに変更しました。 曜日 〜2024(令和6)年1月31日 2024(令和6)年2月1日〜 月 11時〜19時 【時間変更なし】 火 11時〜19時 11時〜21時 木 11時〜22時 11時〜21時 金 11時〜19時 11時〜21時 土 11時〜17時 【時間変更なし】 ※受付は相談時間終了の30分前まで 20ページ (2)LINEによる面談予約受付 子どもがはじめて電話などで相談する際、自分の悩みや気持ちを言語化して見ず知らずの人に話さなければいけないという高いハードルを下げるため、(1)の相談時間の変更と同じ2024(令和6)年2月から、LINEによる面談予約の受付を開始しました。 2023(令和5)年度は、LINEによる予約受付から面談に至った件数は0件でした。なお、2024(令和6)年3月末時点で、68名の方がLINEの友だち登録をしています。 これらの変更にかかる広報については、広報なごや2月号や市公式ウェブサイト、市内の全保育園、幼稚園、学校等を通じて全児童生徒に配付する「なごもっか通信」臨時増刊号(2月発行)などにより周知を行いました。 引き続き、相談時間変更後の相談実績やニーズ等を踏まえ、子どもがより相談しやすい相談体制を検討していきます。 4 申立てに基づく調整活動の結果 2023(令和5)年度には、高校生からの子どもの権利侵害に関する申立てに基づき、調査、調整を行った結果、権利侵害の状況が解消されたため、終了したケース1件、終了の見込みが立ったケース1件がありました。 (1)出席認定に関するルールについての申立て 2020(令和2)年6月に申立てのあったケースは、高等学校における出席認定に関するルール(遅延証明書があっても欠席や遅刻になる)がおかしいのではないかという相談から始まり、子どもや保護者が学校や教育委員会に話をしても改善の見込みが立たなかったため、子どもの権利を守る規則にしてほしいと、子どもが申立てをしたものでした。 「なごもっか」では、子どもと面談し、不合理だと考えた内容や理由を確認して、学校への調査、調整活動に入りました。 調査、調整活動では、校長、教頭との面談や電話、文書のやり取りで、問題となったルールが設けられた理由、それが変えられない理由等を調査するとともに、子どもの権利の観点から問題となる点 (注1 子どもの最善の利益(条約第3条第1項、条例前文) 生徒の意見・考えを聞く(条約第12条第1項、条例第7条) 生徒への信頼を基礎に(条約第28条第2項、条例前文、同第5条(3)) 社会との適切な関わりを学ぶ機会(条例前文) 他校の生徒、公共交通機関を利用しない生徒との不公平感(条例第4条(5)) 大きな不利益(条約第28条第1項(e)、条例第4条(5)、同第6条(1)) 一人一人の発達段階に応じ、子どもが主体的に学び及び育つことができるよう必要な支援に努める学校関係者の責務(条約第3条第1項、条例前文、同第4条(6)、第5条(3)、第12条)等) を伝えました。いろいろな立場の教員に擁護委員の考えを伝えるとともに、意見交換をするため、同校の学校運営委員会とも面談を行いました。擁護委員が学校を計8回訪問しました。また、近隣の同種学校での対応や、公共交通機関の遅延の発生状況や遅延証明の発行について調査もしました。 当該学校では、子どもの意見を聞くことの大切さについて理解され、校長が生徒会と協議し、生徒会が生徒に遅延証明に関するアンケートを行いました。そして、生徒会がそれを 21ページ 踏まえてディベートを行い、さらにディベート後にもアンケートを実施しました。これらを経て、生徒会が、学校に対し、学校における意見表明と対話の場づくりと遅延証明の扱いの再検討等を求める要望書を提出しました。 学校は生徒の要望を検討し、一定の要件のもと、遅延証明に効果を認めることとし、その後も生徒と教職員が対話する場が持たれるようになりました。 申立てから3年の期間を要しましたが、時間をかけて教職員、生徒のそれぞれに意識の変化がみられるようになり、子どもの権利の侵害状況が解消されました。このことは、一人の生徒が相談と申立てをしてくれたこと、当該学校の生徒会、生徒たちが状況を改善したいと思い、それぞれにできることに取り組んだこと、教職員が子どもの権利、生徒の主体性を尊重するよう再認識したことなどが積み重なった結果だと思います。 この学校に限らず、子どもたちがそれまでの「当たり前」に対して抱いた疑問について勇気をもって声を上げ、大人が子どもの意見を尊重して、共に「子どもにとって最も良いこと」を実現していく教育が行われることを願っています。 (2)学校施設の安全確保に関する申立て 2023(令和5)年1月、名古屋市立の高等学校の生徒である渡辺萌愛さんから、擁護委員に、子どもの権利侵害に関する申立てがなされました。申立ての内容は、同校の老朽化した校舎について、名古屋市教育委員会に対して、「安全に暮らす環境」を確保できるように全面改修を行なってもらいたい、改修や安全点検の際に生徒や教職員の意見を取り入れてほしい、というものでした。あわせて、他の学校も危険な状況であるならば、名古屋市立の学校全体の改修をもっと進めてもらいたいとも付け加えられていました。申立てのきっかけとなったのは、渡辺さんが2022(令和4)年7月、部活動中に同校体育館の窓ガラス1枚が落下し、フロアにガラス片が飛散するという事故に遭遇したことでした。当日は熱中症アラートが出されていたため、部員はコート横でミーティングをしており、幸いにも直接、ガラス片を浴びた生徒はいませんでした。同校の先生からは「窓ガラスが熱膨張し、熱割れした」と伝えられましたが、明確な原因は不明のままでしたので、渡辺さんは同様の事故が再び起きるのではないかと不安な思いを抱きながらその後も体育館を使用しました。 渡辺さんからの申立てを受けて、擁護委員は、同校の生徒が安全・安心に同校で学び、生活ができるように、名古屋市教育委員会や同校への調査・調整を開始しました。主な調査内容は以下のとおりでした。 ・同校の校舎老朽化の状況 ・同校における安全点検の計画・項目・結果、修繕の有無とその内容 ・専門家による同校校舎の安全点検の有無とその結果 ・名古屋市教育委員会の校舎改修計画の立案の方針 ・他の市立学校における校舎老朽化に起因する事故発生の有無とその内容 ・上記に関連する事項 2023(令和5)年3月には、同校を訪問し、渡辺さん、同校事務長、名古屋市教育委員会学校整備課(現教育環境整備課)職員とともに、渡辺さんが危険と感じる箇所を指摘しながら、校内を見学しました。2023(令和5)年2月から2024(令和6)年1月にかけて、教育委員会(学校整備課、学校施設課、教育長)に計4回の訪問、同校に3回の訪問、そのほか電話や文書により、同校やその他名古屋市立学校における安全が確保されるように調査・調整を進めました。2023(令和5)年5月には同校生徒で渡辺さんの友人である翁 22ページ 長来幸さんも加わり、同校の教職員や教育委員会担当課職員との面談にも二人も同席し、自分たちの不安や疑問、要望を伝えてくれました。二人が面談に同席できない場合は、「なごもっか」で事前に考えを聞き、それを同校教職員や担当課職員に伝えました。その後、「なごもっか」で二人にフィードバックを行いました。子どもと「なごもっか」が一緒に進めた調査・調整活動でした。 また、渡辺さん・翁長さんの希望により、2023(令和5)年8月に名古屋市長との面談の機会を持ちました。二人から市長に同校体育館での事故の状況を伝え、今後の安全確保のための改修工事を訴えました。 上記の調査・調整を通じて、同校や教育委員会で確認されたことや実施されたことは下記の通りです。 なお、同校では2022(令和4)年5月に校舎4階部分からコンクリート外壁の一部がはがれ落ち、部活の引率で来ていた他校の教員の肩に当たるという事故があり、2022(令和4)年度末、同校の校舎の改修が実施されることが決まり、2023(令和5)年度予算に同校の校舎改修に係る設計費用が計上されていました。 【同校の学校施設の改修・修繕に関わること】 ・同校の校舎改修に伴う生徒・教職員への意向調査アンケートが実施され、教育環境整備課からの回答を得た(2023(令和5)年)。 ・同校の体育館の窓ガラスの一部について、窓ガラスに飛散防止フィルムを貼り、窓ガラスが一枚のまま落下するのを防ぐため、防護ネットを設置した(2024(令和6)年3月)。 ・同校の体育館の未改修の窓ガラスについて、事故の再発防止のため、夏季にはカーテンを閉めることを徹底するよう依頼し、同校から承諾を得た(2024(令和6)年3月)。 【同校における学校施設の安全点検に関わること】 ・同校における学校保健・安全計画において、定期の安全点検が明記された(2023(令和5)年4月)。 ・同校での安全点検において使用される「安全点検調査票」にて「掃除当番の生徒にも、危険箇所がないか…確認」する旨が明記されていることを確認した(2023(令和5)年6月)。その旨を生徒・教職員に広く周知していただけるよう依頼し、同校から承諾を得た(2023(令和5)年10月)。 ・同校において専門家(建築士や中部電気保安協会など)による定期的な点検が行われていることを確認した(2023(令和5)年)。 【市立学校における改修・修繕に関わる予算の確保】 ・2023(令和5)年度補正予算において学校の改修・修繕に関わる予算が計上された。 ・2024(令和6)年度予算において学校での修繕に充てることができる学校運営費が増額された。 以上の事実を踏まえ、擁護委員は同校での権利侵害の状況が解消される見込みと判断しました。 校舎改修にあたり実施された生徒の意向調査アンケートは渡辺さん・翁長さんが作成し、全校生徒からオンラインで回答を募り、二人が集計・集約も担当しました。生徒のみなさんからは、学校の安全・安心だけでなく、快適さや学びやすさの点からの回答が寄せられました。生徒からの回答に対して、教育環境整備課が「対応可能」、「検討」、「対応不可」を伝え、「対応不可」の場合はその理由を明記し、生徒の声に丁寧に応答しました。これは学びの環境に関する生徒の意見表明の機会を保障する画期的な取り組みでした。名古屋市では「学校施設リフレッシュプラン」に基づき、今後も市立学校において校舎改修が行わ れることになりますが、教育環境整備課には同校での意向調査アンケートの実施をモデルにして同様の取り組みが継続されることを期待します。 渡辺さん・翁長さんと市長の面談の様子≪市長と生徒2名が話し合う様子の写真≫ 24ページ 申立人の渡辺萌愛さんから「なごもっか」にお手紙をいただきました。 なごもっかの皆さんへ 今まで本当にありがとうございました。これまでたくさん支えていただいたので、振り返りながら皆さんへの感謝を伝えたいと思います。 バスケットボール部に入っていた私は、日々部員と練習に励んでいました。高校2年生の夏、老朽化で高校の体育館の窓ガラスが熱割れを起こし、自分たちの練習スペースに落下するという事故が起こりました。幸いその日は別室でミーティングだったので助かりましたが、バスケットコートの半分近くまで飛散しているガラスを見て、命の危険を強く感じました。部員の命を守るため、自校の生徒・職員の命を守るため、何とかしなくてはと思いなごもっかに訪問しました。この老朽化問題を解決するためには、改修工事か建て替えしかありません。流石に規模が大き過ぎて相談範囲外かもしれないと思いましたが、とりあえず見解だけでも聞きたい、という気持ちで向かったのを覚えています。相談内容を打ち明けた時、どんな反応が返ってくるだろうとやや緊張していたのですが、とても熱心に話を聞いてくださったので安心できて話しやすかったです。改修工事をしてほしいという思いを打ち明けると、多くの相談員の方が賛同してくださり、背中を押してもらって申し立てをすることになりました。元々1人で闘うしか道は無いと思っていたので、まさかこんなに協力的で力強い方々と出会えるとは思っていませんでした。 それから何度もなごもっかの元に通い、改修工事をしてもらうためにどのように活動すればいいか、どこに働きかけると効果的か、などたくさんのことを話し合いました。訪問した時はいつも、皆さんが温かい笑顔で迎えてくださって嬉しかったです。 学校との話し合いも、教育委員会との話し合いも、何度もセッティングしてくださって、私の思いを伝える場をいくつも設けていただきました。その中には、名古屋市長とお話しする機会をいただけたこともありました。こんなに私の思いをたくさんの人に届けられたのも、なごもっかの相談員と擁護委員の方々のおかげです。 ほとんど大人に近い高校生といえど、教育委員会や学校側の責任者などの大人と話すとは、とても緊張しますし少し怖いです。ですが、大勢いる大人の中で、「なごもっかだけは絶対にあなたの味方だから安心してね」と言ってくださったことがとても心の支えになりました。 その後、学校の教職員の方々の協力も得られ、ますます解決へと近づいていきました。 私が活動を始めてから1年7ヶ月、ついに校舎と体育館の改修工事が決定しました。不可能だと思っていたことが実現したのは、私の高校生活の半分以上をこの活動に費やせたのは、なごもっかの多大なる協力があったからだと思います。どんなときも私たち子どもの意見を最優先し、適切なアドバイスと悩みにとことん寄り添ってくださる、なごもっか。おかしいと思ったことを打ち明けられる環境が身近にあるのはとても恵まれていると思います。"子どもだから"、"規模が大きすぎる"などと、諦めずにまずなごもっかに足を運んでみたからこそ活路を見出せたのです。自分ではどうしようもできないほどの圧倒的な力を目の前にして、くじけそうになっている子は、是非なごもっかに訪問してみてほしいです。 渡辺萌愛 25ページ W 相談から見えてきた課題 1 教員による不適切と思われる指導 報告書では2021(令和3)年度より、継続して教員による不適切な指導について取り上げてきました。メディア等で取り上げられることも多く、社会的に関心の高いテーマの一つといえます。「なごもっか」にも、子どもや保護者双方から、教職員の対応に関する相談が寄せられますが、その中に不適切と思われる指導も含まれます。以下では、その相談件数や相談内容についてみていきます。なおここでいう不適切な指導とは、子どもや保護者からの声を元にしたものから、「なごもっか」が学校に聞き取り調査を行い、その結果判断したものまでを含んでいます。客観的な事実確認ができていないものも含まれるため、 ここでは不適切と「思われる」指導と呼ぶことにします。まず2023(令和5)年度の相談のうち、初回相談の主訴が「教職員の対応」の82件および「体罰」の1件の計83件の内容を詳しくみてみました。その結果、不適切と思われる指導に該当したのは46件でした。この46件の内訳をみると、41件は保護者からのもので、5件が子ども自身からのものでした。子どもの年代は、未就学児(幼稚園・保育園)が10件、小学生20件(低学年10件、高学年9件、不明1件)、中学生が11件、高校生以上5件と、小学生で多い傾向にあることが分かりました。このうち、「なごもっか」が事実確認や調整を行うために、学校や園に聞き取りに行ったのは9件でした。 相談内容を、「行動の制限」、「叱責・罰」、「傷つける言動」、「理不尽な言動」のカテゴリーに分け、子どもの年代ごとに表にまとめてみました。幼稚園や保育園では、行動の制限が報告され、子どもの年齢があがるにつれ、恐怖心を与える形での叱責・罰、また子どもの自尊心を傷つける言動がみられます。さらに中学生・高校生以上では、傷つける言動に加えて、子どもの目に理不尽と映る言動が特に部活動場面でみられました。 〇子どもの年代 未就学(幼稚園・保育園等) 〇カテゴリー 行動の制限 〇相談内容 ・水筒に水をもらえない ・給食を居残りさせてまで食べさせる 〇子どもの年代 未就学(幼稚園・保育園等) 〇カテゴリー 叱責・罰 〇相談内容 ・誰かが怒られると何人も立たされる ・部屋に鍵をかけられて閉じ込められた 〇子どもの年代 小学校低学年 〇カテゴリー 叱責・罰 〇相談内容 ・注意を聞かないと廊下に出されたり、汚い言葉で脅したりする ・警察に言うと言われて、叩かれた ・忘れ物をすると給食のおかわりはなしと言われる 〇子どもの年代 小学校低学年 〇カテゴリー 傷つける言動 〇相談内容 ・忘れものをした子どもに0点ですと言う ・その子のことは無視してと言われた ・分からないことがあると、皆の前で○○さん、わからないの?とつるし上げられる 26ページ 〇子どもの年代 小学校高学年 〇カテゴリー 叱責・罰 〇相談内容 ・先生が不機嫌ですぐ怒って、放課(休み時間)がなしになる ・胸ぐらをつかんで突き飛ばす ・怒ると睨みつけてくる ・黒板を蹴って説教をする ・忘れ物をしたら、腹が立ったからもう近寄らないでと言われた ・怒鳴られて腕をつかまれて青あざになった ・勉強しないなら邪魔だから、この教室から出てと言われた 〇子どもの年代 小学校高学年 〇カテゴリー 傷つける言動 〇相談内容 ・こんな問題もできないの、バカなの、下の学年でやり直してと言われた 〇子どもの年代 中学生・高校生以上 〇カテゴリー 傷つける言動 〇相談内容 ・授業でこれぐらいわかって当たり前と言われ、言い方が怖い ・幼稚園児みたいな扱いをしてやろうかと言われて皆の前でバカにされた ・他の先生と親しくすると、担任が嫉妬してくるようになり、言葉遣いがひどくなった ・授業中に精神科に行ってこいと暴言を受けた ・名簿をペンで突き刺す 〇子どもの年代 中学生・高校生以上 〇カテゴリー 理不尽な言動 〇相談内容 ・部活の顧問が指導に厳しく、水筒の大きさも制限される ・部活の顧問からハラスメントのような仕打ちを受けている ・指導の仕方が理不尽 ・声が出ていないという理由で試合に出られなかった ・試合に負けたら、一人のせいにされた 「なごもっか」が意識しているのは、一つ一つの相談の背景に、様々な問題や経緯があるということです。先の相談内容を細かくみていくと、特に小学校高学年以上では、「不機嫌」や「睨みつけてくる」といった強い感情表出や、「突き飛ばす」、「黒板を蹴って」、「名簿をペンで突き刺す」といった衝動性が目立つように思います。実際の相談では、主訴を聞いた後、子どもや保護者、時に学校に出向いてより詳細な聞き取りを行いますが、そこで気付かされるのは、先の子どもへの言動の背景に、教員側の精神面の不安定さや、余裕の無さが関係していると思われるケースが含まれることです。 27ページ 文科省は、毎年、教職員の人事管理に関する調査を行っていますが、その中の項目に「教職員の精神疾患による病気休職者等数」があります。2022(令和4)年度の調査で分かったことは、うつ病などの精神疾患で昨年度休職した公立学校の教員は1割余り増えて6,539人と、初めて6,000人を上回り過去最多となったということでした。この傾向は特に20代の若い教員で顕著であり、背景には教員の長時間労働の問題があることが指摘されています。休職までには至らなくても、メンタルヘルスの問題を抱えつつ学校現場に立っている教員の数は、先の数字の何倍にも及ぶと推察されます。 先にあげた「なごもっか」の不適切と思われる指導に関する相談でも、うち3件で、その後の聞き取りの中で、教員の精神的健康に関する言及がありました。例えば、「担任は体調不良で休んでいて、教務主任が代わりに入っている」や「精神的に不安定で、今日から休んでいるので、交代になるかもしれない」という話が聞かれました。指導上の問題との因果関係は不明ですが、精神的な不安定さがあると、自分を抑えきれずに感情的になったり、衝動的な行動をとってしまったりするというのは容易に想像しやすいように思います。教員からは、「自分をコントロールできずにやってしまった」や「教員はやることがいっぱい。私たちの権利はどうなるのか」といった声もしばしば聞かれます。 わたしたちは、子どもの権利を主体に据えた学校づくりは、そこに通う子どもだけでなく、教職員をはじめとした大人、そして社会全体にとってもよりよいものと考えます。教員による不適切と思われる指導を取り上げましたが、これを学校や教員だけの責任と捉えて、一方的に改善を求めるならば、結局、そのしわ寄せは、子どもたちに返ってくるように思います。「なごもっか」としては、学校での子どもの権利に関する研修等を通して、子どもの権利について考えてもらう活動を行っています。その一方で、教職員が、自ら子どもの権利を主体とした学校づくりに子どもと共に取り組めるよう、教育条件整備といった問題にも関心を持って取り組んでいきたいと考えています。 2 特別支援教育 特別支援教育とは、子どもの在籍する学校、学級にかかわらず、障害のある子ども一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、自立と社会参加に向けた取り組みを支援する教育をいいます。 2023(令和5)年度の相談でも、これまでと同様に特別支援教育に関する相談がありました。初回相談のうち特別支援教育に関する内容が含まれる相談の件数は16件で、全体の約3.8%でした。そのうち、特別支援学校又は特別支援学級に在籍している子どもに関する相談は13件(約81%)、通常の学級に在籍している子どもに関する相談は3件(約19%)で、対象となる子どもの年齢は小学生9件(約56%)、中学生4件(約25%)、高校生3件(約19%)でした。 初回相談の16件のうち、「なごもっか」で子どもや保護者と面談を重ね、学校への調整活動を行った件数は3件(約19%)でした。相談のなかには、保護者の方からは「学校 28ページ が子どもの特性を理解した支援を行ってくれない」といった内容も複数ありました。子ども自身からも「教室でパニックを起こしたくて起こしているわけではない」、「○○すれば落ち着く」といった気持ちが聴かれます。「なごもっか」では、子どもや保護者との面談を重ね、子どもが望めば学校に行き子どもの権利が保障されるための調整活動を行います。擁護委員が学校に行き、話を伺ってみると学校の様々な工夫も知ることができます。また、学校としてはできる限り支援・個別対応したいと思っているものの、教員配置がなく対応が難しいといった事情を聴くこともあります。この点は、本報告書にある「3 教員不足問題」に記載したとおりです。 学習指導要領では、特別支援教育が必要な子どもには「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を作成することが学校に求められています。これらは、保護者の意見も聞きながら、子どもにとって必要な教育的支援の目標等が見通しを持った形で示されるものです。「なごもっか」に寄せられた相談のなかには、保護者と学校のコミュニケーションがうまくいかず「個別の教育支援計画」が作成されていなかったり、保護者が存在自体を知らないといったこともありました。学校としては、入学時等に保護者と相談して作成したことがあったとしても、子どもは年齢とともに発達していくので、発達に応じて、また年度末や担任・支援員がかわった場合にも支援内容の見直しが必要です。「個別の教育支援計画」は、子どもに必要な支援を届けられるよう保護者とよく話し合い、合意形成をしながら作成していくことが大切です。その際、子どもが安心して学校生活を送ることができるよう、学校が工夫していることを子どもにも説明することで、子どもの安心が得られると考えます。 教育を受ける権利は、障害の有無にかかわらず全ての子どもに保障されなければなりませんし、すべての子どもが一人一人尊重され、安全に安心して生きる権利が守られなければなりません(なごや子どもの権利条例第4条、第5条、第6条、第12条)。名古屋市では、2023(令和5)年度から、子ども中心の学びを大切にする「ナゴヤ学びのコンパス」がはじまりました。重視したい学びの姿として@自分に合ったペースや方法で学ぶ、A多様な人と学び合う、B夢中で探求するとあります。特別支援教育が必要な子どもはもちろんのこと、多様な子どもがいることを前提としたインクルーシブ教育の推進が求められます。インクルーシブ教育推進には、学校内外における専門性の確保やそれを保障する教員の働き方を含めた環境の整備が必要であると考えます。 29ページ 3 教員不足(注2 文科省は講師等が確保・配置できない事態を「教師不足」と表現しますが、擁護委員は、これに加えて、本務教員が不在となった場合に、教務主任等が本来の業務と兼務して学級担任を持つなど、学校運営、学校運営、授業担当に支障不足がでる事態も含め「教員不足」として問題ととらえています(2022(令和4)年度活動報告書29頁参照)。)問題 「なごもっか」では、先生が休んでいて授業が受けられないという中学生からの相談や、学校の人員不足によって子どもの学ぶ権利が保障できない事例にいくつも遭遇したことから、教員不足問題について発意を行うか否かを判断するために、教育委員会事務局からの聴取などの調査・分析を行い、昨年度の報告書にまとめました(「なごもっか活動報告書2022(令和4)年度版」29頁)。 しかしながら、今年度も教室に入れない子どもが「先生がいない」という理由で別室で 1時間しか勉強をさせてもらえず帰宅させられているという相談や、別室指導になっているが1日1時間から数時間しか勉強を教えてもらえないなど、教員不足を理由とした学ぶ権利の侵害に関する相談が複数件ありました。その他にも「なごもっか」が関わっている相談で、先生が休職して教務主任など本来他の業務がある教員が担任の代わりをしているという話を相談者や学校から聞くことも複数ありました。 教員不足は、子どもの権利保障に大きな影響を及ぼします。学校は子どもの学ぶ権利の保障のための場であるはずですが、上記のように教員が足りないことを理由に事実上登校を制限され、学ぶ機会を奪われている子どもがいるのが現状です。これは、なごや子どもの権利条例第6条第1号学ぶ権利が保障されていないということですし、憲法第26条教育を受ける権利が保障されていないということもできます。文科省によると、2022(令和4)年度の不登校児童生徒は、全国で約30万人にものぼっています。ここで「不登校」とは簡単に言うと年間30日以上の欠席をしていることですので、上述のような1時間だけでも登校できている子どもたちは「不登校」として扱われていません。しかし、学ぶ権利が保障されなくては、どんどん学校から足が遠ざかり不登校になることがあってもおかしくありません。文科省は2023(令和5)年3月に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を取りまとめていますが、これは主に不登校になった後の学ぶ権利の保障が中心となっており、様々な理由で教室に入れない子どもたちの学びの保障はありません。名古屋市が実施している「民間オンライン学習プログラムによる学習支援」も既に不登校であることが前提となっていますし、校内フリースクールに行っているが勉強を教えてもらえないといった相談もあり、学校には行けるものの様々な理由で教室に入れない子どもたちの学習権が教員が足りないことを理由に保障されていない現状があります。 また、教員不足の現状は、子どもたちから「先生が忙しそう」という声となって表れる場合もあります。教員が忙しそうであれば、子どもたちは学校生活の中で困っていることを相談することはできません。教員不足は、いじめやトラブルの早期発見・早期介入を困難にしているともいえます。これは、条例第4条の安全に安心して生きる権利が保障できて 30ページ いないといえるかもしれません。また、名古屋市のいじめ防止対策基本方針では「学級や部活動に限らず、昼休み、清掃時間等、学校生活全ての場において、 児童生徒をきめ細かく見守り、いじめの早期発見を図る。」とされていますが、子どもが相談すら躊躇する現状では、このような対応が十分できているとは考えられません。 教員不足問題は、名古屋市という自治体だけではなく、「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律(義務標準法)」などの法律の問題でもあり、国の施策の問題でもあります。そこで、私たちは33頁にあるように、国に対して、こども大綱の策定に向けた中間整理に対する意見書や子どもの権利を保障できる教員配置が可能となるような制度設計の検討を求める意見書などの中で、子どもの権利を保障できる教員配置を求めてきました。 子どもの権利を保障するためには、子どもの権利を保障する大人の人権を保障することも大切です。名古屋市においても、教員不足やそれによって生じる多忙化を解消し、余裕をもって子どもの権利を保障できる学校の体制となるようなさらなる取組みを実施することを期待します。 31ページ コラム 「匿名」での調整を希望する相談 2020年1月に「なごもっか」を開設して丸4年が経過しました。この間、学校をはじめ様々な皆さんに協力していただき、カードや「なごもっか通信」を配布したり、権利学習を行ったりしてきました。おかげさまで、多くの皆さんに「なごもっか」を知っていただいたと思います。 「なごもっか」を知っていただいたことで増えたと感じる相談が(統計はとっていませんが)、自分では教育委員会や学校に言いにくいので、名前を伏せて「なごもっか」から言ってください、という相談です。 先生や学校が適切に対応していないなどのご相談では、確かに「なごもっか」が学校や教育委員会とお話しした方がよいように思えることがあります。ただ、電話をくれた子どもや保護者は、誰が相談したか分かってしまうと困るから名前を伏せてほしいとお話しされます。 学校という仕組み上、先生は子どもを指導する立場にあり、力の不均衡が生じやすい関係ではありますから、子どもや保護者が、もし先生の意に沿わないことをしてしまったら今以上につらい状態になるのではないかと心配してしまう気持ちはよくわかります。 ただ、よくよくお話を聞いてみると、そのことをまだ一度も先生や学校に伝えたことがない場合もあります。もしかしたら、お話ししてみたら、事態が改善するかもしれません。 子どもには、自分に関わることについて自由に自分の意見を言う権利があり、その意見は発達に応じて十分に考慮されなければなりません(子どもの権利条約第12条:意見表明権、なごや子どもの権利条例第5条:一人一人が尊重される権利、第7条:主体的に参加する権利)。子どもたちは自分の気持ちを伝え、それを大人に受け止めてもらい、反応を返してもらうことでさらに気持ちや意見を形成して、成長していきます。子どもの権利は大人との関係において守られ、子どもの成長には大人との気持ちや意見のやり取りが欠かせないのです。 そこで、ぜひとも子どもたちには、自分の意見を大人に伝えてみることにチャレンジしてほしい、意見を言って状況が良くなることを経験してほしいと思っています(子どもの権利条約第6条:成長発達権の保障)。そのために、「なごもっか」は、気持ちを自分で伝えることの不安を取り除く方法はあるか、どうしたら自分の気持ちを伝えやすいかなど、伝え方についての作戦会議をしたり、必要があればその子どもと一緒に伝えたりします(相手は先生や学校に限りません。保護者や関係機関のこともあります)。 ですから、保護者の方にも、意見を伝えて状況を変えようとする姿を子どもたちに見せてほしい、意見を言って状況を変えることができる社会を大人たちが作っていってほしいと思うのです。「なごもっか」は、保護者の方からのご相談でも、同じように不安を取り除く方法 32ページ や意見を伝える方法について一緒に考えます。 先生や学校も、誰からの相談か分かれば、子どもの状態に配慮しながら事態の改善を目指すことができるものの、分からないままだと手探りの対応となってしまうこともあるようです。 もちろん、ご相談をいただいた時点で状況が良くなく、子どもや保護者が先生や学校にお話ししたらかえって子どもが傷つく事態となることが予想される場合などには、相談者のお名前を伏せて「なごもっか」が先生や学校とお話しすることはありますが、ただ、本当にそのようなケースは限られます。問題が起きて困っている状況になっているので、何かアクションを起こすことについては不安があるかもしれません。でも、もしかしたら、歯車がうまく?み合っていないだけで、先生や学校も、子どもを支援したい、よりよい方法はないだろうか、と考えているかもしれません。まずはお互いのことを理解するように努めて、話し合ってみることが良いケースも多いと感じています。 33ページ X 勧告・要請及び制度改善のための提言等 1 こども大綱の策定に向けた中間整理に対する意見書 2023(令和5)年4月に施行されたこども基本法により、こども施策は子どもの権利条約の一般原則などを基本理念として行わなければならないとされました(第3条)。これは私たち擁護委員が大切にしていることと同じです。第9条に基づき、政府はこども施策を総合的に推進するため、こども施策に関する大綱(こども大綱)を定めなければならないとされているところ、こども家庭庁は「今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等〜こども大綱の策定に向けて〜(中間整理)」を9月に公表し、意見募集を実施しました。そこで、2023(令和5)年10月22日付で意見書を提出しました。 私たちが求めたのは、大きくわけると@子どもが権利の主体であることを基礎としたこども大綱とすべきこと、A子どもコミッショナー制度の創設についての取り組みを明記すべきであること、Bこどもが権利の主体であることを社会全体で共有する施策に取り組むことは評価しつつ、どこに住んでいるかにかかわらず子どもが救済されるよう地方自治体の相談救済機関への予算措置を講じること、子どもの権利に特化した啓発・研修を実施すること、学校教育における子どもの権利保障について留意すべきであること、C虐待やいじめ以外の暴力や不適切指導等こどもに対する不適切なかかわりについての対応をすること、D子どもの権利を保障する公教育を実現すること、E国連・子どもの権利委員会の総括所見および一般的意見を遵守すること、F「児童の権利に関する条約」ではなく、子どもにわかりやすいように「子どもの権利条約」と表記することです。いずれも「なごもっか」の活動の中で直面した課題であり、国が対応しなければ解消できないものです。 2023(令和5)年12月に閣議決定されたこども大綱の中で反映されたものも反映されていないものもありますが、子どもの権利条約の趣旨に則った施策となるよう今後もこども家庭庁の対応には注目をしていきます。 ※本文中では、定義の違いに鑑み、「子ども」と「こども」を使い分けています。 2023年10月22日 こども家庭庁長官官房参事官(総合政策担当)付企画調整係 御中 「今後5年程度を見据えた こども施策の基本的な方針と重要事項等 〜こども大綱の策定に向けて〜 (中間整理)」に対する意見書 名古屋市子どもの権利擁護委員 代表委員 谷口 由希子 名古屋市子どもの権利擁護委員 吉住 隆弘 同 粕田 陽子 34ページ 同 川口 洋誉 同 間宮 静香 私たちは、名古屋市子どもの権利擁護委員条例に基づく名古屋市子どもの権利擁護委員であり、中間試案に記載のある「地方自治体が設置するオンブズパーソン等の相談救済機関」にあたります。年間400件を超える新規相談を受け、子どもの権利保障及び救済のために活動している立場から、中間整理について意見を述べます。 記 1 子どもが権利の主体であることを基礎としたこども大綱とすべきである こども施策の基本的な方針として、こども・若者を権利の主体としたことを大いに評価する。 ただし、中間整理全体として、子どもの権利を基盤として施策を考える記述が少ないように思われる。子どもの権利基盤型社会を作るため、施策は子どもの権利に立ち返り、子どもの権利を出発点とした記述にすべきである。 例えば、子どもの意見表明を重視している点は評価するが、子どもは単に聞かれる立場なのではなく、意見表明権があることを明記し、子どもの権利の実現のために行っていることを大人が意識できる大綱にすることが重要である。また、こどもを「人材」(7ページ10行目)と表すなど、子どもの権利を保障する観点ではなく、大人都合と思われる記載が少なくない。他の項目においても、子どもの権利条約のどの権利に関連するかなど、改めて確認し、明確に記載することを求める。 「第5おわりに」において、「こども・若者に対する優しいまなざしが重要」とされているが、権利の主体であるとしつつ、「優しさ」の対象とするのは矛盾しており、権利の主体として扱うよう記載の変更を求める。 2 子どもコミッショナー制度の創設についての取組を明記すべきである 子どもコミッショナーの創設に関する取組みについて明記することを強く求める。 中間整理では、こどもを中心におくとしながらも、それが守られなかった場合の記載がない。我々地方自治体の相談救済機関においては、多くの子どもの権利侵害の相談があるが、いじめ・不登校・教師による不適切対応・合理的配慮不足・虐待など子どもの権利侵害の背景には、制度的な問題が含まれていることが多い。その制度的な問題が法律や国の指針に基づく場合も少なくなく、条例に基づく権利救済機関では、国に対して勧告や要請を行うことはできず、子どもの権利侵害を救済することは困難である。 子どもコミッショナー制度は、国連・子どもの権利委員会の一般的意見や日本への勧告の中で繰り返し設置を求められているものであり、子どもの権利条約の精神に基づく社会 35ページ の実現に不可欠であることから、子どもコミッショナー創設に向けた取組みを強く求める。 3 こどもが権利の主体であることの社会全体での共有についての評価と留意点 こどもが権利の主体であることを社会全体で共有する施策に取組むことは評価する。ただし、以下の点に留意が必要である。 (1)地方自治体の相談救済機関への予算措置 こどもの権利が侵害された場合の救済機関として、地方自治体が設置するオンブズパーソン等の相談救済機関の実態把握や事例の周知を行い、取組みを後押しすることについては評価する。しかし、条例上相談救済機関の設置が求められていても、予算がなく機能していない自治体も少なくない。日本のどこに住んでいる子どもでも権利侵害から救済されるよう、国が地方の相談救済機関に関し、指針を示すとともに予算措置を講じるべきである。 (2)子どもの権利に特化した啓発・研修の実施 こどもに関わり得る全ての大人を対象に、人権に対する理解を深め、人権尊重の意識を高める人権啓発活動を推進するとあるが、人権の中でも特に子どもの権利が侵害されやすく、救済を求めることが困難な現状に鑑み、一般的な人権啓発活動ではなく、子どもの権利に特化した研修を実施すべきである。また、国連・子どもの権利委員会第2 回総括所見で勧告され、同委員会一般的意見第9 号パラグラフ15に示されているように、対象としてはこども施策を検討する国会議員や地方議員、こどもの権利侵害について判断する裁判官等を含めることを明示すべきである。 また、子育て支援という意味でも、比較的精神的及び時間的余裕のある妊娠期のプレパパママ教室において、子どもの権利に関する研修を受けられるようにすべきである。 (3)学校教育における子どもの権利保障 学校教育において子どもが権利を学び、権利を行使できるようにするには、学校教育の中で子どもの権利が守られ、行使できることが必要不可欠である。そのためには、教員への子どもの権利の理解促進させる取組を継続して行うこと、教職課程コアカリキュラムでの子どもの権利の必修化及び子どもの権利が守られるような教員配置が必要不可欠である。教員配置については、名古屋市子どもの権利擁護委員が子どもの権利保障の観点から、今月中に、中央教育審議会宛に意見書を提出するとともに、加藤内閣府特命担当大臣宛にも参考送付する予定であるので、そちらを参考にこども大綱に反映されたい。 4 こどもに対する不適切な関わりについての対応 中間整理案では、虐待やいじめについて記載があるが、それ以外の暴力や不適切指導や 36ページ 子どもの権利を侵害する関わりについての記載がない。 名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」には、家庭内だけではなく、教員、部活動、学童保育など放課後過ごす場所、幼稚園や保育園、スポーツや塾などの習い事、児童養護施設、一時保護所など、様々な場面において、子どもの権利を侵害する不適切な大人の関わりについての訴えを聞いている。中間整理案の指摘する項目だけでは不十分であり、子どもの権利を侵害しない関わり方を大人が学ぶことを重要項目として位置づけるべきである。 5 子どもの権利を保障する公教育の実現 「こどもが安心して過ごし学ぶことのできる質の高い公教育の再生等」において、こどもの最善の利益の実現を図る観点等から公教育を再生させるとした点については評価する。 ただし、それには少なくとも下記の施策が必要であるため追記すべきである。 @学校全体で子どもの権利が保障されるようにするため、教職課程のコアカリキュラム及び学習指導要領総則において子どもの権利をいれること A教職員の悉皆研修にて子どもの権利研修を入れること。また、あらゆるテーマの研修において子どもの権利の視点を含んだプログラムとすること B不登校特例校の増加が既存の学校教育からの不登校児童・生徒の排除とならないように、不登校特例校での実践で得られた権利保障の知見を、既存の学校教育の改善に活かすこと C子どもの権利を保障することが可能なような教員配置とすること Dスクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラーの安定的な雇用の実現や学校事務職員の増員による子ども・教員のサポート体制の充実を図ること E学校等の子どもが生活・学習する施設の安全性を確保するため、全国の学校等での事故についてのデータベース化とオープンアクセスによって、事故の教訓を共有して事故予防に活かせるようにすること Fこどもの休む権利や遊ぶ権利が保障されるようにすること 6 総括所見及び一般的意見への対応 子どもの権利条約を遵守すること、国連・子どもの権利委員会の総括所見及び一般的意見について適切に対応を検討するとともに国内施策を進めるとした点について評価する。 ただし、一般的意見は子どもの権利条約解釈の指針となるものであり、「必要に応じて」遵守するのではなく、必ず遵守すべきであるから、「必要に応じて」は削除することを強く求める。 7 子どもの権利条約の表記について 「児童の権利に関する条約」を子どもの視点から「こどもの権利条約」と表記したことは 37ページ 大いに評価する。ただし、子どもの権利条約の「子ども」とこども基本法の「こども」の定義は異なるため、混乱を避けるために「子どもの権利条約」とする方が望ましい。 以上 2 中央教育審議会への教員不足等についての意見書 文部科学大臣の諮問をうけ、中央教育審議会は「質の高い教師の確保特別部会」を置き、2023(令和5)年6月から教員の働き方改革や教員確保について審議を進めていました。そこで、10月26日、中央教育審議会会長宛に、擁護委員から「子どもの権利を保障できる教員配置が可能となるような制度設計」の検討を求める意見書を提出しました。それに合わせて、文部科学大臣、内閣府特命担当大臣(こども政策担当)にも、関心をもって中央教育審議会での審議を見守り、子どもの権利を保障できる教員配置の実現に向けて最大限の努力を払うことを求める文書を送りました。また、同分科会で教職員定数の見直しについて取り上げられたのに合わせて、2024(令和6)年1月12日、部会長宛に本意見書を共有いただき、教職員定数の見直しに関わる審議を深めることを求める文書を送りました。 「なごもっか」では2021(令和3)年度に中学生から教員不足に関わる相談を受けました。そのほかの相談でも、教員不足に起因すると思われる子どもの権利侵害の状況に触れてきました。そうした相談の積み重ねが今回の意見書につながりました。全国の子どもの権利擁護機関の中で、教員配置に関して中央教育審議会に意見書を提出するのは初めてのことと思われます。 2023年10月26日 中央教育審議会 会長 荒瀬 克己 殿 名古屋市子どもの権利擁護委員 代表委員 谷口 由希子 代表委員代理 吉住 隆弘 粕田 陽子 川口 洋誉 間宮 静香 意見書 1. 意見の趣旨 わたしたちは子どもの権利擁護・救済に取り組む立場から、中央教育審議会には、教員不足の解決・教員の働き方改革の実現に向けて、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の改正だけでなく、「公立義務教育諸学校の学 38ページ 級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務標準法)の改正などの抜本的な制度改善を検討するとともに、学校においてすべての子どもが権利の主体となり、子どもの権利を保障できる教員配置が可能となるような制度設計をご検討いただくことを強く求めます。 2. 教員不足と子どもの権利 わたしたち名古屋市子どもの権利擁護委員は、などや子どもの権利条例・名古屋市子どもの権利擁護委員条例にもとづき、「子どもの権利を守る文化及び社会をつくり、子どもの最善の利益を確保」する公的第三者機関の子どもの権利擁護機関です。わたしたちは、「子どもの権利相談室なごもっか」を通じて子どもの権利侵害に関する相談に応じ、学校等の関係機関への調査、調整等によって子ども個別の権利侵害の救済に努めています。 「子どもの権利相談室なごもっか」には、教師の多忙化や教員不足に直接・間接に起因すると思われる子どもの権利侵害に関する相談が数多く寄せられてきました。2021年度には、市内中学生から「年度途中で実技教科の常勤講師が病気休暇となり、代替の教員が充てられることなく、授業は自習がしばらく続けられた。このことは学ぶ権利の侵害にあたるのではないか」との相談を受けました。他の相談でも、いじめや特別支援、教員による不適切指導などで、学級に複数の教員の関わりが必要な場合でも、学校には人的余裕がなく難しいと言われます。いじめや問題行動を理由に別室での指導が必要なときに、別室指導を担当できる教員が足らず、子どもの在校時間が制限されるケースもいくつかありました。 また、先生が忙しそうだったので相談できなかったという子どもの声を聞くこともあります。 子どもの権利条約は1989年に国連総会にて全会一致で採択され、1994年に日本も批准しています。同条約第28条で「教育への権利」を規定した上で、第29条は、締約国に子どもの教育について「子どもの人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」、「人権及び基本的自由並びに国連憲章にうたう原則の尊重」などを求めています。また、同条約の精神に則って制定されたなごや子どもの権利条例(2020年改正)では、「子どもにとって特に大切」な権利として、「安全に安心して生きる権利」、「一人一人が尊重される権利」、「のびのびと豊かに育つ権利」、「主体的に参加する権利」を明記しています。子どもの権利は子どもだけでは十分な実現は難しく、大人はサポートをする責務があります。そのため、わたしたちは、学校で子どもと向き合い、子どもを支える教員が不在となることは、学校での子どもの権利保障に関わる重大な問題であると考えます。 その上で、こども基本法は、政府に、日本国憲法・子どもの権利条約の精神にのっとり、全てのこどもの権利擁護が図られ(第1条)、全てのこどもについて、教育基本法の精神にのっとり「教育を受ける機会が等しく与えられる」(第3条)ような政策立案・展開を求めています。中央教育審議会には、そうした政策立案に資する審議を進められることを期待しています。 3. 中央教育審議会での審議の方向性について 39ページ 中央教育審議会におかれましては、文部科学大臣の諮問(2023年5月)を受け、「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策」についての精力的な審議を進められているところかと思います。また、8月には、中央教育審議会初等中等教育分科会から「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」が公表されました。 文部科学省や各自治体は、それぞれ講師のなり手の確保や学校の働き方改革の推進、教職志望者の増加を目指して教職の魅力の発信・教員採用試験の早期実施などに取り組んでいますが、いまだ現場レベルでは教員が働き方の変化を実感できる状況ではないように感じます。 わたしたちが子どもの権利擁護・救済のための調査・調整で関わった学校では、教員(正規教員・臨時的任用教員等)が病気などによる休暇・休職、退職等によって不在となった際、代替の教員の確保(臨時的任用教員等)ができず、教務主任等の教員が本来の業務と兼務して学級担任を持ったり、その他教員が持ちコマ数を増やして授業担当を行ったりするなどの対応に接することが少なくありませんでした。このような対応によって、教員の負担が過剰に増して、学校運営、学級運営、授業担当に支障が生じるだけでなく、教員の心身の健康が害されることも危惧されます。 そこで、中央教育審議会での審議は、教員不足の問題解決・教員の働き方改革の実現を「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)改正による教職調整額の改善だけにフォーカスせず、教員がいきいきと働くことができ、かつ、学校で子どもの権利を保障できるだけの教員の増員を実現する方向での審議を進めていただくことを強く願っております。 名古屋市は市独自の財源によって小学校1・2年での30人学級、中学校1年での35人学級を実現し、その他の学年については国に先んじて順次35人学級を実現しています。しかし、自治体財政に依存した取り組みは、子どもが住む自治体を選ぶことができない点で教育の機会均等の理念に反するものであり、国レベルでの率先した取り組みが必要です。特に以下の点について教員配置に関わる義務標準法等の改正に向けた検討を強く求めます。 ・学級編成の標準(小学校35人、中学校40人)を引き下げることによって、1クラスあたりの児童生徒数を小さくする。 ・教職員定数(基礎定数)の算出に関わる「乗ずる数」を引き上げることによって学校に配置する教員数を増やす。 ・教員が休むこと(病気による休暇・休職や研修)を前提とした余裕のある教員配置を実現し、休暇・休職の教員の代替となるだけでなく、複数担任制を含めて困難を抱える子どものみならずあらゆる子どもへの最適な支援ができるようにする。 ・総額裁量制の改善によって定数崩しを制限し(義務教育費国庫負担法)、非常勤講師の割合の上限を設定することで、教員の職を安定的なものとする。 ・教員のもちコマ数(1週間当たりの担当授業数)に上限を設ける。 ・スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを必置教職員として規定し(学校 40ページ 教育法)、基礎定数化(何人の児童生徒あたりに1人のSC・SSWを配置するか)することで、全国一律に配置し、専門性に見合った安定的な雇用を確保する。 4. 教師の働きやすさと子どもの学びやすさ・居心地のよさ わたしたちは、教員(大人)の権利(安全・安心に働く権利、休む権利、研修権など)を犠牲にして、子どもの権利が実現されればそれでよいとは考えません。教員の権利も子どもの権利もともに尊重されるものであり、教員の働きやすさは子どもそれぞれの学びやすさや居心地の良さに直結します。教員がゆとり・余裕をもっていきいきと働くことができる学校では、教員が子どもの特性や学びの歩幅に合わせて指導できたり、子どもの声に耳を傾け、子どもの思いに寄り添い、子どもと一緒に物事を決めたりすることもできるでしょう。 文部科学省・各自治体教育委員会では教員志望者の確保のために教職の魅力を発信する取り組みが行われています。しかし、子どもたちが生き生きと働く先生たちの様子に触れ、そんな先生たちに大切にされた(学校で子どもの権利が保障された)経験をもてることが、将来の教員志望の原点になるのではないでしょうか。 中央教育審議会には、教員不足の解決・教員の働き方改革の実現に向けて、義務標準法改正などの抜本的な制度改善を検討するとともに、学校においてすべての子どもが権利の主体となり、子どもの権利を保障できる教員配置が可能となるような制度設計をご検討いただくことを強く求めます。 2023年10月26日 文部科学大臣 盛山 正仁 殿 内閣府特命担当大臣 加藤 鮎子 殿 名古屋市子どもの権利擁護委員 代表委員 谷口 由希子 代表委員代理 吉住 隆弘 粕田 陽子 川口 洋誉 間宮 静香 日頃から、子どもの健全育成につきまして格別のご理解を賜り厚くお礼申し上げます。 わたしたちは子どもの権利擁護・救済に取り組む立場から、本日、中央教育審議会会長宛に、教員不足の解決・教員の働き方改革の実現に向けて、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の改正だけでなく、「公立義務教育ゥ学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務標準法)の改正などの抜本的な制度改善を検討するとともに、学校においてすべての子どもが権利の主体となり、子どもの権利を保障できる教員配置が可能となるような制度設計についての検討を強く求める 41ページ 意見書を提出いたしました。 盛山文部科学大臣及び加藤内閣府特命担当大臣におかれましては、関心をもって中央教育審議会での審議を見守っていただくとともに、教員不足の解決・教員の働き方改革の実現ならびに学校における子どもの権利保障を可能とする教員配置の実現に向けて最大限の努力を払っていただくことを強く願います。 3 名古屋市教育振興基本計画(案)に対する意見書 名古屋市教育委員会が策定を進めていた「第4期名古屋市教育振興基本計画(案)」に対して、2024(令和6)年2月16日、擁護委員から意見書を提出しました。「教育振興基本計画」は教育基本法第17条に基づいて国が策定する中長期にわたる教育政策の基本方針です。各自治体は、国の教育振興基本計画を「参酌」して地方版の教育振興基本計画を策定する努力義務が課されています。第4期名古屋市教育振興基本計画は2024(令和6)?2028(令和10)年の名古屋市における教育に関わる基本方針を示すものです。 意見書では子どもの権利に関する相談・救済に努める立場から、実際の相談や調整活動から得られた知見を用いて、学校における子どもの権利保障を求めて計画案全般にわたって意見を挙げました。 2024(令和6)年4月、「第4期名古屋市教育振興基本計画」は「コンパスぷらん」の名称で策定されました。そのなかでは、なごや子どもの権利条例や子どもの権利条約、こども基本法に基づき、「さまざまな場面において、子どもの意見を反映していく仕組みを構築していく必要」があることが明記されました。 2024年2月16日 名古屋市教育委員会企画経理課 御中 「第4期名古屋市教育振興基本計画(案)」に対する意見書 名古屋市子どもの権利擁護委員 代表委員 谷口由希子 名古屋市子どもの権利擁護委員 吉住 隆弘 同 川口 洋誉 同 粕田 陽子 同 間宮 静香 (名古屋市東区東桜1丁目13番地3号NHK 名古屋放送センタービル6階 名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」) 私たちは、「名古屋市子どもの権利擁護委員条例」に基づく名古屋市子どもの権利擁護 42ページ 委員である。名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」を通じて、年間400件を超える新規相談を受け、子どもの権利保障及び救済のために活動している立場から、「第4期名古屋市教育振興基本計画(案)」について、意見を述べる。 1.子どもが権利の主体であることを基本とした「名古屋市教育振興基本計画」であること こども基本法の施行(2023年4月)によって、国・自治体は「子どもの権利」を基本原理として、子どもに関わる政策の立案・展開を行うことが求められることになった。また、国の教育基本振興基本計画(2023年6 月閣議決定)では、「児童の権利に関する条約及びこども基本法を踏まえ、?子供の権利利益の擁護を図り、その最善の利益を実現できるよう取り組む」とされる。こうした基本原理を「参酌」(教育基本法第17条)した名古屋市教育振興基本計画であることが求められる。 一方、名古屋市では2020年に「なごや子ども条例」を「なごや子どもの権利条例」に改正している。同条例では、子どもは「児童の権利に関する条約に定められるあらゆる権利の主体」であることを確認し(前文)、子どもにとって大切な権利として「安全に安心して生きる権利」、「一人一人が尊重される権利」、「のびのびと豊かに育つ権利」、「主体的に参加する権利」を規定している(第4?7条)。その上で、名古屋市(名古屋市教育委員会を含む)には、子どもの権利保障のための国・他の地方公共団体・関係機関との連携・協働、必要な財政措置、保護者・学校等への支援の責務が課されている(第9条)。名古屋市教育振興基本計画に包括される名古屋市立の幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校、私立学校において、すべての子どもの「子どもの権利」が尊重されることを目指す「名古屋市教育振興基本計画」であることを強く望む。 2. 子どもの権利の観点からの評価点・留意点 【評価指標について】 現在の評価指標の数値は何を根拠にしているのか明らかでないものがある。根拠が明確でなければ、評価できるかも不明なため、すべての評価指標の数値の根拠を明らかにすべきである。また、評価指標の数値に全国学習・学力状況調査を利用しているものもあるようであるが、そもそも、学校に行けて学力調査を受けている子どもたちが対象となっており、不登校など学校に不適応を起こしている子どもたちの意見は反映されておらず、このような指標を採用すべきでない。特に不登校や障害があるなど困難な状況におかれた子どもに評価指標について意見を求めるなど、実態を反映させるような指標を採用すべきである。 【1−2 少人数教育の推進】 【12−1 学校における働き方改革の推進】 市内中学生から「年度途中で実技教科の常勤講師が病気休暇となり、代替の教員が充 43ページ てられることなく、授業は自習がしばらく続けられた。このことは学ぶ権利の侵害にあたるのではないか」との相談を受けた。2023年度もすでに教員の欠員が生じている市立小学校・中学校・特別支援学校があることが明らかとなっている。 子どもの権利擁護・救済のための調査・調整で関わった学校では、教員が病気などによる休暇・休職、退職等によって不在となった際、代替の教員の確保(臨時的任用教員等)ができず、教務主任等の教員が本来の業務と兼務して学級担任を持ったり、その他教員が持ちコマ数を増やして授業担当を行ったりするなどの対応に接することが少なくなかった。このような対応によって、教員の負担が過剰に増して、学校運営、学級運営、授業担当に支障が生じるだけでなく、教員の心身の健康が害されることも危惧される。 教員の権利(安全・安心に働く権利、休む権利、研修権など)は子どもの権利とともに尊重されるものであり、 教員の働きやすさは子どもそれぞれの学びやすさや居心地の良さに直結する。教員がゆとり・余裕をもっていきいきと働くことができるよう、下記の点について実現に向けた方針を名古屋市振興基本計画に盛り込むことを求める。 ・小学校・中学校・高等学校での全学年での30人学級を実現する。幼稚園・特別支援学校においてもより少人数の学級を実現する。 ・教員が休むこと(病気による休暇・休職や研修)を前提とした余裕のある教員配置を実現し、休暇・休職の教員の代替となるだけでなく、複数担任制を含めて困難を抱える子どものみならず、あらゆる子どもへの最適な支援・指導ができるようにする。 ・「定数崩し」(正規教員の定数を非常勤講師に振り分けること)をせず、教員の採用は正規雇用を原則とする。その上で全教員における非常勤講師の割合の上限を設定し、教員の職を安定的なものとする。 ・教員のもちコマ数(1週間当たりの担当授業数)に上限を設け、教員が余裕のある働き方ができるようにする。 なお、名古屋市子どもの権利擁護委員は、2023年10月に中央教育審議会に対して、子どもの権利保障ができる教員配置を求める「意見書」を提出している。少人数教育・学級の推進、教員不足、教員の働き方改革についてはそちらも参考にされたい。 【1−4 一貫教育の推進】 「子ども中心の学び」を大切にする点で学校種間における系統性・連続性を確保しようとすることは評価できる。 しかし、系統性・連続性を重視するあまりに、現在の学校種での学びや遊び、生活を進学先の学校種のための準備であることが強調される恐れがある。子どもは将来の準備をすることだけでなく、子ども時代の今を楽しむことも大切なことである。特に、幼稚園教育については、小学校教育のために幼児教育があるような直線的な考え方にならないようにする必要がある。発達心理学の最新の知見を踏まえつつ、子どもの発達段階と発達課題に照らして、幼稚園教育の充実を行うことが必要であると考える。とくに、幼少時より習い事などによって常に大人に管理・指導される環境をどう克服するかということこそ課題であるように思われる。 44ページ 【3−1 学校教育における人権教育の推進】 人権教育も必要だが、子ども自身が子ども期にその権利を使えるようになるためには、人権教育ではなく子どもの権利に関する学習が必要である。なごや子どもの権利条例は、子どもの権利についての市の普及義務を定め(19条の2)、学校関係者等には、子どもが子どもの権利について理解し、及び自分の意見を表明することができるよう、必要な支援に努めなければならないとしている(12条3項)。人権の中のひとつとして扱われると子どもの権利は埋没するため、子ども向けの子どもの権利学習の推進及び体系的で反復した教職員に対する子どもの権利学習を実施することを求める。また、子どもは「子どもの権利を通して」子どもの権利を学ぶのであり、子どもの権利がまもられない中でどれだけ子どもの権利学習を実施しても、子どもは権利行使できるようにならない。したがって、十分な教職員配置や教職員研修など子どもの権利が守られる環境整備を実施されたい。 また、道徳と人権はまったく別の概念である。仮に道徳心が育っていなくとも守らなくてはならないのが人権であり、人権を「やさしさ」の問題として矮小化しないよう、項目を分離すべきである。 【3−2 主権者教育の推進】 事業の対象者の主な年齢層から、「幼」「大人」が除かれているが、幼児、大人も必要である。スウェーデンの保育実践のように、子どもは自分の成長発達の段階にあったサイズのコミュニティで話を聞かれ、それが周囲の大人等に尊重、反映されることで、意見を言って状況が変わる経験をし、意見を表明することの重要性や、民主主義を体得していくからである。このように、主権者教育は、日ごろの意見表明権の尊重(意見の表明とそれに対する誠実な応答)の延長線上にあるのであり、日常の中に存在する「主権者意識を高める取り組み」をせず、別途、「主権者教育を推進する」というのはおかしい。 校則見直し活動を活用するのは良いが、それに限らず、日常的に子どもたちが意見を言い、それが反映される学校運営をしていくべきである。学校評議員やコミュニティスクールにおける学校運営協議会への子どもの参加、学校方針・グランドデザインへの生徒会の意見聴取、学校評価アンケートの項目への子どもの意見の反映などが考えられるだろう。 したがって、子どもの意見表明をどう受け止め応答するか、という大人(教員)対象の研修も、主権者教育と併せて必要と思われる。 【3−3 子どもの意見表明機会の確保】 子どもの意見表明機会の確保とあるが、具体的な内容がない。例えば、本計画の成果指標は子どもにとって回答しやすいものとなっているか、子ども全体の意見が反映されるものとなっているかは疑問である。成果指標のための質問や回答の回収方法などについて子どもの意見を取り入れるなどの具体策を示していただきたい。 【3−5 インクルーシブ教育システムの推進】 障害のない子どもと障害のある子どもとを「交流」させることは、分離教育であってインク 45ページ ルーシブ教育でないことは、国連障害者権利委員会から勧告されているものであり、これを「インクルーシブ教育」とすることは誤りである。教育委員会は、学校を差別のないインクルーシブな環境とするために、障害のあるなしに関わらず地域の学校に通うことができるような障害児教育基本方針の策定や人員配置・合理的配慮に関する教員研修等を行う必要がある。 【4−3 子どもの運動・文化活動の振興】 中学校部活動の地域クラブ活動への移行や地域との連携においては、部活動指導者が子どもの権利を尊重し、推進する姿勢が求められる。とりわけスポーツ競技においては、教育機関、指導者、スポーツ団体、保護者においても、ユニセフ「子どもの権利とスポーツの原則(Children’s Rights in Sport Principles)」の10の原則を遵守することが重要である。指導者は、子どものスポーツに関係したリスクから保護するための専門性と指導力の向上の機会を確保されたい。 スポーツに限らず文化系の部活動においても、指導者は子どもが権利の主体者であることを常に意識し、指導者が自身の指導的立場を理解したうえで、子どもの意見表明の機会を尊重されたい。 【5−1 特別な支援が必要な子どもへの指導・支援の充実】 「なごもっか」には、合理的配慮が行われない、個別支援計画が作られないなどの相談が毎年複数寄せられており、今の体制や教職員の理解では不充分であることは明らかである。学校に現状の発達障害対応支援講師の全校配置と常勤化、発達障害対応支援員の大幅な増員と勤務時間の増加、山口県などで既に実施しているような研修動画や、教員がすぐに資料にアクセスできるような取組が必要である。 【5?4 外国にルーツを持つ子ども等への支援の充実】 市の国際化が進む現状を踏まえ、生まれながらにして持っている権利(=人権)を出発点として、違いや多様性を認め合うことや他者の権利を尊重し合うことを学ぶことにつながることを明記したこと(p.6)は評価できる。また、外国につながる子どもの学びを保障することの必要性を認識したこと、しかも、単に地域の学校への円滑な適用を図るのではなく、「多様性を尊重し」「母語や文化の違いに配慮しながら」とした点、担当教員等の個人の対応ではなく学校全体で組織的に取り組むことが大切であるとした点(p.9)も評価できる。 単に言語能力の向上のみならず、外国につながる子ども及びその保護者が「安心して学校生活を送るための支援」を打ち出したことは、子どもの権利保障における保護者の役割も理解したものであり、評価できる。 その上で、多文化共生に関する講座や事業の実施が生涯学習課のおそらくは一般市民向けの事業のみであることには、不足を感じる。学校現場における教職員が、外国につながる子どもや保護者の現状やニーズを知る必要があるので、教職員に対する研修は必要不可欠と思われる。 46ページ なお、「外国にルーツを持つ子ども」よりも、「外国につながる子ども」とすべきと考える。ルーツは日本であっても、保護者の事情により外国での長期にわたる生活を経て日本に転居してくる子どもも、同様の支援が必要だからである。文科省や、国際交流の支援をしている団体等も「外国につながる子ども」と表記しているものがある。 【6−1 なごや子ども応援委員会の運営】 【6−2 教育と福祉の連携による支援の充実】 【8−1 就学援助・奨励の推進】 【8−2 私学助成の推進】 経済的に困窮している世帯の子どもの支援に関し、施策8において就学援助や私学助成等、子どもの進路選択における経済的支援が記されている点は評価できる。しかしながら、経済的に困窮している世帯の子ども抱える困難は、進路選択に留まらず、不登校やいじめ、家庭の問題、友人関係、精神的不安定、学校不適応等多岐にわたる。2013年に成立した子どもの貧困対策の推進に関する法律の大綱では、重点施策の一つとして、学校を包括的な支援を行うためのプラットフォームとするという方針が示されている。ここではスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが、学校の教員と連携・協働しながら、子どもの貧困問題に取り組むことが期待されている。一方、名古屋市では学習支援事業やひとり親家庭のこどもの居場所づくり事業が行われており、地域との連携も重要である。以上より、施策8に経済的に困窮している世帯の子どもの支援として、なごや子ども応援委員会の運営(6-1)、教育と福祉の連携による支援の充実(6-2)を加えて頂きたい。 【7−1 いじめの防止対策推進】 「いじめを許さない風土づくり」とあるが、学校や教員からの過度な「いじめを許さない」とするメッセージは、いじめの隠ぺいやいじめ被害の訴えにくさへとつながる恐れがある。それよりも、いじめは起こるものとして、「いじめが起きない風土づくり」や「いじめを見過ごさない風土づくり」とすることが重要ではないか。 いじめの防止として、予防および早期発見に記述が偏っている印象を持つ。これらは確かに重要だが、いじめが起きた後の学校や教員の対応はさらに重要である。いじめを受けた子ども、いじめに加担してしまった子ども双方が、安心して学校に来られるような対応のあり方や体制づくりについても加えて頂きたい。 【7−2 不登校児童生徒支援の充実】 福祉部局との連携、教育と福祉の連携による支援を実施し、拡充していこうとしていることは評価できる。 一方、別室登校なら登校できるものの教員が足りないから行けないという相談も一定数あることから、校内フリースクールの小学校での設置も必要である。また、校内フリースクールでの学習権の保障がなされていないという相談も複数あり、子どもの教育を受ける権利が保障されるような人員配置が必要である。 47ページ また、そもそも不登校児童生徒が増加している背景には、過度な競争主義を始めとする学校の息苦しさがある。あらゆる点で子どもの権利が保障された学校にするための方針を策定し、研修や人員の確保を実施していただきたい。 【12−1 学校における働き方改革の推進】 働き方改革によって、学校業務の見直し・改善を進めることは重要だが、それに加えて、教員が「心身ともに健康」を維持できるようヘルスケアの推進や、困難や課題を抱えた教員が安心して相談できる体制づくりが必要である。2022年度の名古屋市における長時間労働者(教員)に対する医師の面接指導実施件数は小学校・中学校・特別支援学校・高校・幼稚園を合わせて21件にとどまっている。また文科省の22年度調査では、精神疾患で休職する教員の数が過去最多の6500人に上っている。教員の心身の健康対策について、学校や教員個人に任せるのではなく、市や教育委員会が仕組みを作ることが重要である。 【13−1 学校施設の計画的な改修の推進】 調査・調整を通して、学校から改修の申請がされてから3年を経ても修繕に至らないケースが一定数あることが明らかになっている。教職員・子どもや専門家による定期的・臨時的な安全点検→危険箇所の発見→改修の申請→改修→安全点検→…というサイクルが機能し、確実な危険の除去が求められる。そのために、早期での危険箇所の発見やそれを可能とする安全意識の涵養(子ども・保護者への安全教育、教員への学校安全に関わる研修)、改修に関わる予算(学校で行う改修に関わる予算、市教委に申請して行う改修に関わる予算)の確保などについて、その実現に向けた方針を名古屋市振興基本計画に盛り込むことを求める。 【その他】 ・「児童の権利に関する条約」は子どもの視点から「子どもの権利条約」とすることが望ましい。 ・「なごや子ども条例」は、子どもは権利の主体であり、子どもの権利を根幹に据えるという観点から、2020年に「なごや子どもの権利条例」に改正されている。なごや子どもの権利条例を踏まえて名古屋市教育振興基本計画が策定されるべきであり、特に「施策3」には「なごや子ども条例」ではなく、現行条例である「なごや子どもの権利条例」が取り上げられるべきである。 ・子どもは人格をもち、個人として尊重される。そして権利の主体である。子どもの存在やその学習・教育を経済的価値で捉えるような「人財」・「人材」という言葉は使用されるべきではないと考える。 48ページ Y 広報・啓発活動 擁護委員条例では、子どもの権利を守る文化及び社会を実現するため、擁護委員の所掌事務として第3条第4号に「子どもの権利に関する普及啓発を行うこと」と定めています。 1 配付物等を活用した広報活動 ※資料の縮小版を54項以降に掲載しています。 (1)機関紙「なごもっか通信」 子どもに子どもの権利相談室「なごもっか」のこと、子どもの権利に関することを知ってもらえるよう、幅広く配付しました。 〇配付対象:市内の小学校・中学校・高校・特別支援学校・保育所・幼稚園等 〇配付時期:(第9号)2023(令和5)年6月 (第10号)2023(令和5)年11月 (臨時増刊号)2024(令和6)年2月 (2)カード 子どもが気軽に持ち歩くことができるよう、携帯用のカードを配付しました。 〇配付対象:市内の小学校・中学校・高校・特別支援学校等 〇配付時期:2023(令和5)年5月 (3)リーフレット リーフレットを作成し、配布しています。学年・年齢で区別せず、自分にあったものを選択できるように、ふりがな有り版・ふりがな無し版の2種を作成するとともに、外国語版として、英語・中国語・タガログ語のほかベトナム語・ネパール語・ポルトガル語・韓国語・スペイン語についても用意しています。 〇配布場所:市の関係機関等 (4)「なごもんレター」 子どもが相談しやすいように、「なごもっか」に相談したいことを書いて、折りたたんで糊付けしてそのまま手紙として送ることができます。権利学習などの訪問先で配付しています。 (5)関係機関向けリーフレット 学校や保育所・幼稚園、学童・トワイライトスクールなど、子どもにかかわる大人に「なごもっか」や子どもの権利について理解を深めてもらうためのリーフレットを作成、配付しました。 (6)その他、オリジナル付箋やオリジナル赤ボールペンをはじめとする各種グッズを作製し、 広報・啓発活動に活用しています。 49ページ 2 各種広報媒体を活用した広報活動 (1)子ども向けウェブサイト 「なごもっか」や子どもの権利について、たくさんの人に知ってもらえるように、2024(令和6)年3月に、新たに子ども向けウェブサイトをオープンしました。悩んだときは、「なごもっか」という相談できる場所があることや、子どもの権利について子どもの皆さんに知ってもらうために、わかりやすい表現にしています。 <https://nagomokka.city.nagoya.jp>《二次元コード掲載》 (2)市公式ウェブサイト 「なごもっか」の取組みや相談方法など基本的な情報の他、最新情報や活動等を随時掲載しています。 < https://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/page/0000154568.html>《二次元コード掲載》 (3)公式X 「なごもっか」の活動や子どもの権利についての情報などを配信するため、2020(令和2)年5月に公式X を開設、情報を発信しています。 アカウント名:名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」@NagomokkaNagoya《二次元コード掲載》 (4)名古屋市公式YouTube「まるはっちゅ〜ぶ」 「なごもっか」の活動報告についての動画を掲載しています。 また、あわせて「名古屋市子どもの権利相談室『なごもっか』ってどんなところ?」の動画もご覧いただけます。 ・2021(令和3)年度なごもっか活動報告会<https://www.youtube.com/watch?v=eDevCwkH6GQ>《二次元コード掲載》 ・「なごもっか」ってどんなところ?<https://www.youtube.com/watch?v=1IjIIn1cz6I>《二次元コード掲載》 (5)生涯学習課e-(えー)ねっと*なごや インターネット講座「e-(えー)ねっと*なごや」の「親学のススメ」内で、教育委員会生涯学習部生涯学習課と共同で作成した講座「『子どもの権利』ってなんだろう?」の学習コンテンツ動画をご覧いただけます。 <https://www.youtube.com/watch?v=J1KtIQ84gZs>《二次元コード掲載》 (6)地下鉄広告 〇掲出場所:名古屋市営地下鉄東山線東山公園駅、名城線栄駅、金山駅構内ホーム柵 〇掲出期間:2024(令和6)年3月1日〜31日の31日間 3 講演、活動報告会等 講演会、各種会議、研修会、ワークショップ等の場に擁護委員が出向き、講師として子どもの権利に関する普及啓発を行う取組みを52件実施しました。 2023(令和5)年7月には、子ども向け活動報告会として、第34回愛知サマーセミナー内の講座「主役は子ども!権利は使ってナンボやで。」を、8月には大人向け活動報告会として「子どもの権利セミナー&令和4年度なごもっか活動報告会」を行いました。 〇実施日 4月17日 〇名称 新規事業者各種ガイドライン研修 〇対象者 新設の保育所等の職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 5月18日 〇名称 港区地域子育て応援拠点はみんぐ支援者向け子どもの権利研修 〇対象者 支援者 〇従事委員 粕田委員 〇実施日 5月18日 〇名称 小学校教職員向け研修 〇対象者 教職員 〇従事委員 粕田委員 〇実施日 5月23日 〇名称 名古屋市私立幼稚園協会 〇対象者 設置者・園長 〇従事委員 吉住委員 〇実施日 6月21日 〇名称 トワイライトルーム子ども指導員研修 〇対象者 子ども指導員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 6月29日 〇名称 鳴海中学校教職員向け子どもの権利研修 〇対象者 教職員 〇従事委員 吉住委員 〇実施日 7月3日 〇名称 豊治小学校教職員向け子どもの権利研修 〇対象者 教職員 〇従事委員 川口委員 〇実施日 7月15日 〇名称 社会福祉法人杁中福祉会法人職員向け子どもの権利研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 7月16日 〇名称 第34回愛知サマーセミナー「主役はこども!権利は使ってナンボやで。」 〇対象者 子ども 〇従事委員 全員 〇実施日 7月31日 〇名称 港区地域子育て応援拠点はみんぐ利用者向け子どもの権利研修 〇対象者 利用者 〇従事委員 粕田委員 〇実施日 8月25日 〇名称 幼稚園職員向け研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 8月26日 〇名称 名古屋市子どもの権利セミナー&なごもっか活動報告会 〇対象者 市民 〇従事委員 全員 〇実施日 8月28日 〇名称中央児童相談所一時保護所子どもの権利学習 〇対象者 保護されている子ども 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 8月31日 〇名称生涯学習課・生涯学習センター等人権教育担当者研修 〇対象者 担当者 〇従事委員 間宮委員 〇実施日 9月1日 〇名称 名北小学校教職員向け子どもの権利研修 〇対象者 教職員 〇従事委員 川口委員 〇実施日 9月11日 〇名称 大清水小学校教職員向け子どもの権利研修 〇対象者 教職員 〇従事委員 間宮委員 〇実施日 9月12日 〇名称 高針台中学校1年生向け権利学習 〇対象者 中学1年生 〇従事委員 粕田委員 間宮委員 〇実施日 9月19日 〇名称 社会福祉法人名広愛児園職員向け研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 9月21日 〇名称 社会福祉法人名広愛児園職員向け研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 9月21日 〇名称 中区保育園長会子どもの権利研修 〇対象者 保育園長及び保育士 〇従事委員 吉住委員 51ページ 〇実施日 10月6日 〇名称 スクルドエンジェル保育園ひとつやま園職員向け権利研修 〇対象者 職員 〇従事委員 間宮委員 〇実施日 10月13日 〇名称 千種区保育園連絡会 〇対象者 区内公立及び認可私立保育園・認定こども園長 吉住委員 〇実施日 10月18日 〇名称 天白福祉会職員向け子どもの権利研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 10月19日 〇名称 千種台中学校PTA 家庭教育セミナー 〇対象者 千種台中学校PTA 〇従事委員 粕田委員 〇実施日 11月6日 〇名称 東生涯学習センター人権講座 〇対象者 市民 〇従事委員 粕田委員 〇実施日 11月10日 〇名称 ひとり親家庭応援専門員・母子父子自立支援員合同研修 〇対象者 支援者 〇従事委員 吉住委員 〇実施日 11月13日 〇名称 中央児童相談所一時保護所子どもの権利学習 〇対象者 保護されている子ども 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 11月16日 〇名称 港生涯学習センター人権講座 〇対象者 市民 〇従事委員 間宮委員 〇実施日 11月16日 〇名称 極楽小学校5・6年生、教職員向け権利学習 〇対象者 小学5・6年生、教職員 〇従事委員 吉住委員 粕田委員 〇実施日 11月21日 〇名称 山王中学校全校生徒向け権利学習 〇対象者 全校生徒 〇従事委員 吉住委員 〇実施日 11月27日 〇名称 桜小学校教職員向け子どもの権利研修 〇対象者 教職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 11月27日 〇名称 なごやこどもサポート中川区代表者会議 〇対象者 支援者 〇従事委員 粕田委員 〇実施日 11月30日 〇名称 小学校教職員向け研修 〇対象者 教職員 〇従事委員 吉住委員 〇実施日 11月30日 〇名称 高針小学校5年生向け権利学習 〇対象者 小学5年生 〇従事委員 川口委員 〇実施日 12月4日 〇名称 名北小学校3・4年生向け権利学習 〇対象者 小学3・4年生 〇従事委員 粕田委員 川口委員 〇実施日 12月7日 〇名称 貴船小学校6年生向け権利学習 〇対象者 小学6年生 〇従事委員 吉住委員 〇実施日 12月8 日 〇名称 大森小学校6年生向け権利学習 〇対象者 小学6年生 〇従事委員 川口委員 〇実施日 12月21日 〇名称 くすのき学園職員向け研修 〇対象者 職員 〇従事委員 粕田委員 〇実施日 1月11日 〇名称 公立保育園長会 〇対象者 公立保育園長 〇従事委員 間宮委員 〇実施日 1月18日 〇名称 社会福祉法人みのりの会職員向け研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 1月23日 〇名称 社会福祉法人みその児童福祉会鳴海聖園天使園職員向け研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 2月1日 〇名称 社会的養育施設協議会子どもの権利擁護委員会 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 2月5日 〇名称 中央児童相談所一時保護所子どもの権利学習 〇対象者 保護されている子ども 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 2月6日 〇名称 あけぼの学園重度ブロック職員向け研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 2月7日 〇名称 小学校子ども向け権利学習 〇対象者 子ども 〇従事委員 谷口委員 52ページ 〇実施日 2月9日 〇名称 子育て支援ネットワークてんぱく子どもの権利研修 〇対象者 支援者 〇従事委員 間宮委員 〇実施日 2月20日 〇名称 小学校子ども向け権利学習 〇対象者 子ども 〇従事委員 吉住委員 〇実施日 2月26日 〇名称 あけぼの学園中軽度ブロック職員向け研修 〇対象者 職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 2月26日 〇名称 名幼研天白支部子どもの権利研修 〇対象者 支援者 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 2月29日 〇名称 学校法人和光学園 道徳和光幼稚園教職員向け研修 〇対象者 教職員 〇従事委員 谷口委員 〇実施日 3月16日 〇名称 なごっちサミット なごっちフレンズ×なごもっかコラボ企画「子どもにやさしいまちってどんなまち?」 〇対象者 子ども 〇従事委員 粕田委員 〇実施日 3月25日 〇名称 社会福祉法人名広愛児園子ども向け権利学習 〇対象者 子ども 〇従事委員 谷口委員 ≪学校の教室で子どもに接する権利擁護委員の写真や、研修室で講演を行う権利擁護委員の写真が掲載。また、「子どもにやさしいまちってどんなまち?」のチラシイメージを掲載。≫ 4 児童相談所一時保護所での子どもの権利学習 2021(令和3)年度から、名古屋市中央児童相談所一時保護所において子どもの権利学習を行っています。2023(令和5)年度も、小学校高学年から中学生・高校生等の子どもに「『子どもの権利』ってなあに?」と題して行いました。一時保護所は、子どもの安全を確保し、子どもの環境を含めた状況を把握するために一時的に子どもが生活をする場所です。子どもの中には、虐待やその他の養育上の理由によって権利侵害の危機にあったり、権利が脅かされてきた場合もあります。 子どもの権利条約には、「できる限りその父母によって養育される権利(第7条)」や「その父母の意思に反して分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が(中略)子どもの最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りではない(第9条)」とあります。一時保護中は、家族や学校をはじめ外部との交流等、子どもの安全確保のため権利が制限されることもあります。他にも条約に照らし合わせると、制限されている権利があります。一 53ページ 方で条約では、締約国は父母等からの虐待や搾取等から「児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる(第19条)」とあります。厳しい環境にあった子どもたちにとっては、一時保護所にいることで守られる権利も多くあります。なぜ、制限される権利があるのか、どのような権利が守られているのか、子ども自身には知る権利があります。 「なごもっか」からは、子どもたちに「子どもが幸せになるためのやくそくごと」として、「なごや子どもの権利条例」を伝えました。「安全に安心して生きるけんり」、「一人ひとりが大事にされるけんり」、「のびのびとゆたかに育つけんり」、「自分のきもちでさんかするけんり」を子どもたちとともに具体的な生活場面に置き換えて考える時間を作りました。そして、「あなたやあなたのお友だちの『けんり』は大切にされていますか?」と問いかけました。「けんり」が守られていないと思ったら相談してください、と子どもたちに伝え、「なごもんレター」の紹介をしました。一時保護所退所時には、「なごもんレター」と「なごもっか」のパンフレットを児童相談所の職員から必要に応じて渡すように依頼しています。 引き続き、2024(令和6)年度も定期的に一時保護所における子どもの権利学習を行っていく予定です。 5 守山高等学校生徒会との意見交換 守山高校生徒会のみなさんが、「なごもっか」において、企業アンケートの実施や教員の意見の集約などこれまで実施してきた校則問題の取組みについて発表してくれました。その後、擁護委員や相談員と意見交換を行い、髪型の制限は表現の自由の制限でもあることや、「子どもだから」という抽象的な言葉は子どもの権利を制約する正当な根拠とならないことなどを擁護委員が伝え、改めて校則についてともに考えました。 ≪円形に椅子をならべ、中央を向いて生徒と意見交換をする様子の写真を2枚掲載≫ 「なごもっか」では、子どもの権利の普及啓発として、講演やワークショップ等の活動に力を入れています。 講師の派遣は、費用の負担なく実施できますので、お気軽に「なごもっか」の事務局までお問い合わせください。大人向け、子ども向けのいずれも対応できます。 一緒に子どもの権利について考え、広めていきましょう。 「なごもっか」事務局 子ども青少年局子ども未来企画課(分室)TEL:052−211−8071 54ページ (1)機関紙「なごもっか通信」 第9号(小学生版)≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 第9号(中学生・高校生・保護者版)≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 55ページ 第10号(小学生版)≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 第10号(中学生・高校生・保護者版)≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 56ページ 臨時増刊号(小学生版)≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 臨時増刊号(中学生・高校生・保護者版)≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 57ページ (2)カード≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 58ページ (3)リーフレット @ふりがなあり版≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 59ページ Aふりがななし版≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 60ページ (4)なごもんレター≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 61ページ (5)地下鉄構内ホーム柵≪表面・裏面のイメージを掲載。≫ 62ページ Z シンポジウム・研修 1 シンポジウム (1)『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム 子ども施策のあり方やまち・コミュニティづくりの展望を見出すために、自治体関係者と研究者・専門家・NPO等が連携・協力して、「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム」が2002(平成14)年から毎年開催されています。 2023(令和5)年度は2024(令和6)年2月10日〜2月11日に東京都小金井市で開催され、擁護委員、調査相談員及び事務局が参加し、第1分科会「子どもの相談・救済」において、擁護委員がコーディネーターを務めました。 また、2月12日に開催された「子どもの相談・救済に関する関係者会議」に擁護委員、調査相談員及び事務局が参加し、擁護委員が「なごもっか」による制度改善の取組みについて報告しました。 (2)子どもの権利条約フォーラム2023in とよた 国連「子どもの権利条約」の普及と、子どもの権利について関心を寄せる人々の意見交換、出会い、交流の場として、毎年「子どもの権利条約フォーラム」が開催されています。 2023(令和5)年度は、2023(令和5)年11月25日〜26日に愛知県豊田市で開催され、擁護委員、調査相談員及び事務局が参加しました。分科会34『「もっと知ろう!もっと広めよう!子ども基本法」〜こども基本法と子どもの権利を子どもに関わる活動の軸にするために〜』において、擁護委員が「なごもっか」の取組みを紹介しました。 (3)2023年度東海地区「子ども条例」ネットワーク総会 東海地区「子ども条例」ネットワークは、東海地区において、子どもの権利保障や子ども条例、子ども施策、子どもにやさしいまちづくり等に関わる活動を担い、また、関心をもつ人々や自治体関係者集まり、意見交換等を行うことを目的としています。 2023(令和5)年度は、2023(令和5)年12月16日に愛知県瀬戸市で総会が開催され、擁護委員、調査相談員及び事務局が参加し、擁護委員が基調講演を行いました。 2 外部研修 (1)愛知県名古屋市ヤングケアラー支援関係者研修会 〇日時 2023(令和5)年8月7日(月) 〇主催 愛知県、名古屋市 〇テーマ ヤングケアラー 〇参加者 調査相談員2名 63ページ (2)日本電話相談学会第36回大会(オンライン) 〇日時 2023(令和5)年12月2日(土)〜3日(日) 〇主催 日本電話相談学会 〇テーマ 精神障害と電話相談 〇参加者 2日:調査相談員8名 3日:調査相談員7名 3 内部研修 調査相談員向けの研修は、次のように実施しました。 (1)外部講師による研修(敬称略、講師の所属等は研修実施時点のもの) 〇日程 9月6日 〇講師(所属等) 丸山 洋子(中央児童相談所相談課主査(医学的指導)) 〇内容 心身に不調のある子どもへの相談対応について 〇日程 12月13日 〇講師(所属等) 杉岡 正典(名古屋大学 心の発達支援研究実践センター) 〇内容 ゲートキーパー研修(※健康福祉局所管「ゲートキーパー研修講師派遣事業」を利用) 〇日程 12月20日 〇講師(所属等) 野口 晃菜(一般社団法人UNIVA理事) 〇内容 日本におけるインクルーシブ教育の現状と課題 〇日程 1月24日 〇講師(所属等) 永井 文子(子ども・若者総合相談センターセンター長) 〇内容 子ども・若者総合相談センターについて (2)擁護委員による研修 擁護委員のそれぞれの専門性を活かし、調査相談員に対し、擁護委員が研修を複数回実施しました。 64ページ [ 「なごもっか」の紹介〜相談員から子どものみなさんへ〜 なごもっか こんなところ! ≪なごもっか入口の写真掲載≫ あなたの味方だよ! ≪面談室の写真2枚掲載≫ 秘密は守るよ! 一人一人解決方法がちがうよ。あなたの気持ちを聞いて、あなたにとって一番いいことは何かを一緒に考えます。お話するだけでもいいよ。 名前や学校名は言わなくてもいいよ。 うまく話せなくてもいいよ!! ≪プレイコーナーの写真1枚掲載、プレイコーナーのブロックを組み立てて作ったものの写真2枚掲載、「なごもん」を描いた絵の写真1枚掲載≫ お話しながら書いたり、作ったりしてくれた作品だよ。 相談できる曜日と時間 ・月 11:00〜夜7:00 ・火・木・金 11:00〜夜9:00 ・土 11:00〜夕方5:00 子どもの専用フリーダイヤル 0120-874-997(はなし きくよ) 65ページ よくある質問!? Q:相談したことを親や先生に言わないですか?知られたりしないですか? →A:あなたが「いいよ」と言わないことは、お家の人や先生には勝手に言いません。ただし、あなたの命や安全が確保できないときには、あなたに伝えた上で警察や児童相談所と連携することがあります。それは、あなたの命や安全が一番大切だからです。 Q:どんな相談の方法がありますか? →A:電話で、会って、手紙やなごもんレター、FAXで、あなたがお話ししやすい方法で相談できます。LINEで面談の予約もできます。 Q:一人で話をするのは不安です。なごもっかに、お友だちと一緒に行ってもいいですか? →A:もちろんです。一人でお話するのが心配なら、まずは、一緒にお話を聞きます。でも、考え方や気持ちは一人一人で違うので、慣れてきたら、お友だちと離れて、聞かせてもらえるといいなと思います。 Q:なごもっかはどこにありますか? →A:地下鉄栄駅からオアシス21を通って3分ほどです。NHK名古屋放送センタービル6階にあります。 栄駅・久屋大通駅から、なごもっかへの行き方 地下街から地上に出ないで行けるよ。 どのエレベーターに乗っても6階まで行けるよ。 ≪マップ2点添付。1点は、栄駅および久屋大通駅からオアシス21をとおり、NHK名古屋放送センタービルへ矢印で行き方が示されているもの。2点目は、NHK名古屋放送センタービル6階のフロアマップで、エレベーターからなごもっかへの行き方が矢印で示されているもの。≫ 6階の角になごもっか相談室があります。 66ページ 相談してくれたみんなの声より ・話せたから、心がすーっとしました。 ・うん、話せそう!話してみます。 ・気分が晴れてきました。 ・ちょっとやれそうな気がする。 ・勇気をだして電話してよかった。 ・寝る前に考えすぎてた。楽になった。 ・「話をする」って大事なんですね。 ・今は、電話をかけた時よりだいぶ安心してる。 ・話をして、「これならやってみようかな」と思った。 ※なごもっかに、いじめにかかわる相談がありました。子どもと話をしていく中で、「いじめをなくすために、学校でいじめを学ぶ授業をしてほしい」と提案がありました。相談をしてくれた子どもからの手紙です。 ≪以下、手紙の写真≫ ぼくは、塾に通っていて、その塾でいじめにあい困っていました。そこで、これはおかしいと思い、自ら市長に手紙を出しました。その手紙はなごもっかに送られ、なごもっかの擁護員の方々にいじめをなくす方法について相談することになりました。ぼくは、いじめをなくすためには、いじめについて学ぶことが必要だと思い、いじめをなくすための授業がしたいと提案しました。擁護員の方々はぼくの気持ちを受け止めてくれて、一緒に授業の内容を考えて実現してくれました。 なごもっかに相談したこと、授業をしたことなど、様々なところで自分の気持ちを話すことができてすっきりしました。今後、色々な学校でいじめに関する授業が行われて、いじめで悲しい思いをする人が減るといいなと思います。 またなやみや困ったことがあれば、なごもっかに相談したいです。ありがとうございました。 ≪以上≫ 67ページ ・いつも両親は働いていて、あまり話ができなかった。電話で話ができてよかった。 ・あまり話せなかったけど、ちゃんと聞いてくれて、なんとなく考えがまとまった。 ・また、お話したくなったら電話します。 ・嫌なことをされた。今度されたら、「やめて」って言ってみます。 ・うーん。どうしよう。考えられない。一緒に考えてほしい。 ・大人には言えなくて、ちょっと悩んでいたことが話せた。 ・前に電話したときは「やっぱりいいや」と思って話せなかったけど、今日は話せたよ。 ・すごく、自分の気持ちが言えた。 ◆相談員からのメッセージ◆ 調査相談員は最初にみなさんのお話を聞く人です。 「なんかうまく話せないな」「言い出しにくいな」「こんなこと言ったら何か言われるんじゃないかな」とは、不安になることもあると思います。相談員はまずは「どうやったら安心して話せるかな」、「どんなことを思っているのかな」とお話を聞きます。 お話を聞いて「どうしたいかな」「どんなことができるかな」と一緒に整理します。時には「もう何をやっても解決できない」と思うこともあるかもしれません。そんなときはその思いを教えてください。相談員は「どうしたら納得のいく方法が見つかるだろうか」「もっと何かできるかな」と一生懸命考えます。話がまとまっていなくても大丈夫です。気軽に話しかけてください。 68ページ なごもっかに相談したらどうなるの? ※これは実際の相談ではありません 〇電話 (母)「子どもが学校の友達とうまくいっていないようだ。何が起きているのか、子どもの気持ちがよくわからない。話を聞いてあげてほしい。」 (なごもっか相談員)「お子さんが話をしたいタイミングで、連絡をください。」 ↓ 〇子面談、親面談 〇子面談 (子)「友だちとよく喧嘩になる。最近は声をかけても無視される。先生に相談しても、あまり聞いてもらえない。」 (なごもっか相談員)「学校で安心して過ごすことができること、自分の気持ちを聞いてもらったり、あなたが一人の人として大切にされる権利があるよ。先生以外に話ができる人はいる?」 (子)「話ができる人はいない。喧嘩はしたくないし、無視もされたくない。でもどうしたらいいかわからない。」 〇親面談 (母)「学校に、どう対応してもらえばいいでしょうか。」 (なごもっか相談員)「子どもの権利が守られていない時には、一緒に考えていくことができます。まずはお子さんがどうしていきたいと考えているか、聞いてみましょう。」 ↓ 〇子と親の面談 (子)「友だちとよく喧嘩になって、最近は無視をされる。先生に相談したけどよくならない。」 (母)「話してくれてありがとう。心配していたよ。お母さんからあなたの気持ちを学校に伝えてみようか。」 (子)「お母さんに気持ちを言えてよかった。先生にわかってもらいたい。友だちからも無視されたくない。普通にクラスで過ごしたい。お母さんから学校に言ってほしい。」 (なごもっか相談員)「お互いに気持ちを伝えられてよかったね。学校に何を伝えるのか、お母さんと一緒に考えてみてね。まずはお母さんから学校に伝えてもらうことにしましょう。」 つぎのページへ 69ページ 〇子面談 (子)「自分やお母さんが先生に言ってもあまり変わらなかった。」 (なごもっか相談員)「自分でも勇気を出して伝えてみたんだね。これからどうしよう。」 (子)「なごもっかが学校へ行って、今の気持ちを伝えてほしい。」 (なごもっか相談員)「誰に何を伝えてほしい?担任の先生、それとも校長先生?どうなっていくといいかな?」 (子どもと擁護委員・相談員とで子どもの気持ちや希望を整理) ↓※学校や子どもに関わる機関となごもっかとで話し合うこともあります。 〇学校訪問 (なごもっか相談員)「なごもっかは、子どもを中心にして、子どもの希望や考えを話し合いました。今日はそれを伝えに来ました。学校の状況も聞きたいので教えてほしい。」 (学校)「子どもとクラスの子どもたちが言い合いになってしまうことが多くて困っていた。子どもの気持ちを聞けていなかったかもしれない。子どもの意見を聴いて、子どものために何ができるか考えたい。いろいろな先生やスクールカウンセラーに協力してもらうとか、どんな方法がいいのかも子どもに聞いてみます。」 (なごもっか相談員)「なごもっかでも、子どもが学校で安心して過ごせるようにどうしたらいいか、子どもと話し合ってみます。これからも一緒に考えていきましょう。」 ↓ 〇振り返りの面談(学校と話し合ったことを子どもに伝える) (子)「学校で先生と話をしたよ。いろんな先生やスクールカウンセラーに話を聞いてもらうこともできるとわかった。自分ではうまく言えなかったので、代わりに学校に話しに行ってもらえてよかった。ちょっと安心した。友だちやいろんな先生に自分の気持ちを話してみてもいいと思った。」 (母)「子どものために、こうやって先生以外の人たちも話し合ってくれると思わなかった。力になってくれてありがとうございます。」 (なごもっか相談員)「また、お話をしたくなったらお電話してね。」 70ページ こんな相談方法もあります!! ◆なごもんレターや手紙での相談 ★例えば… なごもっかに手紙が届きました。 (手紙)「おこづかいを増やしてほしい。」 お返事と「なごもんレター」を一緒に送りました。 (なごもっか相談員)「お手紙をありがとう。どうすればあなたの気持ちをわかってもらえるのかな?お話をしたことあるかな?」 後日、「なごもんレター」が届きました。 (手紙)「話をしたよ。でも無理だった…。話は聞いてくれたけど、なんでだめなのか教えてくれなかった。」 (なごもっか相談員)「お手紙ありがとう。がんばったんだね。どうしてだめだったのかな…。」 ※あなたとなごもっかとお手紙でもやりとりできます。 ◆初めての面談はLINEで予約ができます。 「2024年〇月〇日(〇)15:00〜16:00 はち丸 〇〇歳 市内在住、同行者=その他」 ★自動応答 (なごもっか相談員)「はち丸さん、相談予約してくれてありがとう… 希望日時:…」 ★日時が決まったらLINEが届きます (なごもっか相談員)「はち丸さん、相談の予約日時が決まりました。予約日時:…」 ★前日にも確認のLINEが届きます (なごもっか相談員)「はち丸さん、予約日時:…」 ※LINEで相談はできません。 ※LINEアプリからの友だち登録をしてね。 ・右の二次元コードを読み取って友だち登録≪二次元コード掲載≫ ・ID「846npgba」より友だち登録 ◆「なごもんレター」って?? (表)(裏)≪それぞれイメージ添付。裏面は便せんになっている≫ 裏面に書いて、折って、のりづけして、郵便ポストへポン!切手はいらないよ。住所を書いてくれたらお返事を書くよ。 71ページ こんなことも子どもの権利です! [安全に安心して生きる権利] [のびのびと豊かに育つ権利] [一人一人が大切にされる権利] [主体的に参加する権利] みなさんは、カードを4つの権利のどこに置くといいと思う?一緒に考えてみよう!! ≪以下、カード≫ ・暑い日に飲み物を飲む時間をとってもらえなかった ・自分の見た目をからかわれた≪このカードのみ既に「一人一人が大切にされる権利」の場所に貼ってある≫ ・頑張っても認めてもらえない ・自分の意見が言いづらい ・よくわからないルールに納得がいかない 一人一人違うから正解はないよ。考え方や気持ちは違ってあたりまえ!! みなさんは、どこにカードを置いたかな?1つの権利とは限らないよ。 なごもっかができること <申立てによる調査・調整> 子どもの権利侵害があれば、だれでも「申立て」をすることができます。「申立て」があったら、権利擁護委員が調査し、必要であれば調整をします。 ※「申立て」がなくても相談にかかわる情報収集等の調整活動をすることができます。 <発意> 相談や申立てがなくても、子どもの権利侵害があると思われる場合に、権利擁護委員の意思で調査や調整をします。 これを「発意」といいます。 <勧告・要請> 調査や調整の結果、権利侵害があれば、権利を回復するために、他の機関に対して対応や制度の改善を求めます。 72ページ \ 資料編「なごもっか」の沿革 〇1989(平成元年)11月 〇世界・国の動き 子どもの権利条約(児童の権利に関する条約) 採択【毎年11月20日世界こどもの日】 〇1994(平成6年)4月 〇世界・国の動き 子どもの権利条約(児童の権利に関する条約) 日本が批准 〇2006(平成18年)4月 〇本市の動き 次世代育成支援策を総合的かつ機動的に取り組むため、「子ども青少年局」を設置 〇2008(平成20年)4月 〇本市の動き なごや子ども条例 施行 〇2010(平成22年)4月 〇世界・国の動き 子ども・若者育成支援推進法(※1 子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年法律第七十一号)第一章 総則(目的)第一条 この法律は、子ども・若者が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者をめぐる環境が悪化し、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取組(以下「子ども・若者育成支援」という。)について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な子ども・若者育成支援のための施策(以下「子ども・若者育成支援施策」という。)を推進することを目的とする。)施行 〇2014(平成26年)1月 〇世界・国の動き 子どもの貧困対策の推進に関する法律(※2 子どもの貧困対策の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十四号)第一章 総則(目的)第一条 この法律は、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、全ての子どもが心身ともに健やかに育成され、及びその教育の機会均等が保障され、子ども一人一人が夢や希望を持つことができるようにするため、子どもの貧困の解消に向けて、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。)施行 〇2016(平成28年)6月 〇世界・国の動き 児童福祉法等の一部を改正する法律(※3 児童福祉法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第六十三号)第一章 総則 第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。)公布 〇2017(平成29年)2月 〇世界・国の動き 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(※4 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成二十八年法律第百五号)第一章 総則(目的)第一条 この法律は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とする。)施行 〇2018(平成30年)10月 〇本市の動き なごや子ども・子育て支援協議会 子どもの権利擁護機関検討部会から意見書「名古屋市における子どもの権利擁護機関のあり方」受領 〇2019(平成31年)3月 〇本市の動き 名古屋市子どもの権利擁護委員条例 公布 〇2019(令和元年)11月 〇本市の動き なごや子ども・子育て支援協議会なごや子ども条例検討部会から意見書「なごや子ども条例の改正についての考え方」受領 〇2019(令和元年)12月 〇世界・国の動き 成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(※5 成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成三十年法律第百四号)第一章 総則(目的)第一条 この法律は、次代の社会を担う成育過程にある者の個人としての尊厳が重んぜられ、その心身の健やかな成育が確保されることが重要な課題となっていること等に鑑み、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、成育医療等の提供に関する施策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、保護者及び医療関係者等の責務等を明らかにし、並びに成育医療等基本方針の策定について定めるとともに、成育医療等の提供に関する施策の基本となる事項を定めることにより、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦(以下「成育過程にある者等」という。)に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策を総合的に推進することを目的とする。)施行 〇2020(令和2年)4月 〇本市の動き なごや子ども条例をなごや子どもの権利条例に改正 〇2022(令和4年) 〇本市の動き 名古屋市子どもの権利擁護委員条例を一部改正 〇2022(令和4年)5月 〇本市の動き市職員を対象とした「子どもの社会参画のよりどころとなる指針」取りまとめ 〇2022(令和4年)12月 〇世界・国の動き 生徒指導提要改訂版 公表 〇2023(令和5年)4月 〇世界・国の動き こども基本法 施行 こども家庭庁 創設 〇2023(令和5年)12月 〇世界・国の動き こども大綱 閣議決定 73ページ 「なごもっか」の活動 ・名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」開設 ・「なごもっか」のマスコットキャラクター決定 ・「なごもっか」のマスコットキャラクター「なごもん」の名前決定 ・なごや子どもの権利条例 子ども解説ワークショップを実施 ・擁護委員が、文科大臣と生徒指導提要の改訂に関する協力者会議委員宛てに「生徒指導提要の改訂に関する意見書」を提出 ・専門調査員設置 ・相談時間の一部延長を開始(木11時〜22時) ・「てつなぎなごもんず」発足 ・「名古屋市子どもの権利セミナー&なごもっか活動報告会」開催擁護委員が、文部科学大臣宛てに「生徒指導提要改訂版についての所見」を提出 ・「あつまれ!てつなぎなごもんず!!第1回会議やるよー!」開催 ・「名古屋市子どもの権利セミナー&なごもっか活動報告会」開催擁護委員が、こども家庭庁宛てに「今後5年程度を見据えた こども施策の基本的な方針と重要事項等〜こども大綱の策定に向けて〜(中間整理)」に対する意見書を提出 ・擁護委員が、中央教育審議会宛てに教員不足等についての意見書を提出 ・相談時間の変更(火・木・金 11時〜21時) ・擁護委員が、教育委員会宛てに「第4期名古屋市教育振興基本計画(案)」に対する意見書を提出 74ページ ≪72ページの年表にかかる注のみが記載されたページ≫ ※1 子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年法律第七十一号) 第一章 総則 (目的)第一条 この法律は、子ども・若者が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者をめぐる環境が悪化し、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取組(以下「子ども・若者育成支援」という。)について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な子ども・若者育成支援のための施策(以下「子ども・若者育成支援施策」という。)を推進することを目的とする。 ※2 子どもの貧困対策の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十四号) 第一章 総則 (目的)第一条 この法律は、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、全ての子どもが心身ともに健やかに育成され、及びその教育の機会均等が保障され、子ども一人一人が夢や希望を持つことができるようにするため、子どもの貧困の解消に向けて、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。 ※3 児童福祉法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第六十三号) 第一章 総則 第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。 ※4 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成二十八年 法律第百五号) 第一章 総則 (目的)第一条 この法律は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とする。 ※5 成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成三十年法律第百四号) 第一章 総則 (目的)第一条 この法律は、次代の社会を担う成育過程にある者の個人としての尊厳が重んぜられ、その心身の健やかな成育が確保されることが重要な課題となっていること等に鑑み、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、成育医療等の提供に関する施策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、保護者及び医療関係者等の責務等を明らかにし、並びに成育医療等基本方針の策定について定めるとともに、成育医療等の提供に関する施策の基本となる事項を定めることにより、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦(以下「成育過程にある者等」という。)に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策を総合的に推進することを目的とする。 ○なごや子どもの権利条例 平成20年3月27日 条例第24号 改正 平成24年条例第44号 令和2年 条例第24号 目次 前文 第1章 総則(第1条・第2条) 第2章 子どもの権利(第3条―第7条) 第3章 子どもの権利を保障する大人の責務(第8条―第13 条) 第4章 子どもに関する基本的な施策等(第14 条―第19 条の2) 第5章 子どもに関する施策の総合的な推進(第20 条―第28 条) 第6章 雑則(第29 条) 附則 子どもは、児童の権利に関する条約に定められるあらゆる権利の主体です。 子どもは、生まれながらにして一人一人がかけがえのない存在であり、周りの人に大切にされ、愛され、信頼されることによって、自分に自信を持ち、安心して健やかに育つことができます。 子どもは、自分の価値が尊重されることによって、他者の価値を尊重することを知ることができます。 子どもは、子ども同士のふれあいや、様々な人、自然、社会そして文化との適切なかかわりを通じて、他を思いやる心を持ち、ルールを守るなどの社会性を身につけ、豊かな人間性と創造性を備え、他者と共生し、自立することができます。 子どもは、一人一人の発達段階に応じて、物事を考え、意見を言うことができます。 子どもは、自分の権利を信じることや、自分の権利が保障されることで、主体的に生きることができます。 そのために、大人は、子どもの将来を見据えて、子ども一人一人の発達段階に応じた支援をし、子どもが自立した若者に成長するまでを見守ることが必要です。 さらに、大人は、自分の言動が子どもに大きな影響を与えることを認識したうえで、子どもの手本となり、子どもから信頼される存在であることが求められます。 ここに、わたしたちは、児童の権利に関する条約を基本とし、民族、性別、障害などにかかわらず、子どもにとって大切な権利を保障するとともに、子どもの視点に立ち、子どもとともに最善の方法は何かを考え、子どもの健やかな育ちを社会全体で支援するなごやのまちを、市民が一体となってつくることを決意し、この条例を制定します。 第1章 総則 (目的) 第1条 この条例は、子どもの権利及びその権利を保障するための市、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者の責務を明らかにするとともに、子どもに関する施策の基本となる事項等を定めることにより、子どもの権利を保障し、子どもの健やかな育ちを社会全体で支援するまちの実現を目指すことを目的とする。 (定義) 76ページ 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 子ども 18歳未満の者その他これらの者と等しく権利を認めることが適当である者をいう。 (2) 保護者 親及び里親その他親に代わり子どもを養育する者をいう。 (3) 地域住民等 地域の住民及び団体をいう。 (4) 学校等関係者 学校、保育所、児童養護施設その他子どもが学び、又は育つことを目的として通学し、通園し、通所し、又は入所する施設の関係者をいう。 第2章 子どもの権利 (子どもにとって大切な権利) 第3条 この章に定める権利は、子どもにとって特に大切なものとして保障されなければならない。 2 子どもは、一人一人の発達段階に応じ、自分の権利が尊重されるのと同様に他者の権利を尊重することができるようになるために必要な支援を受けることができる。 (安全に安心して生きる権利) 第4条 子どもは、安全に安心して生きるため、次に掲げることを権利として保障されなければならない。 (1) 命が守られること。 (2) かけがえのない存在として、愛情及び理解をもってはぐくまれること。 (3) 健康な生活ができるとともに、適切な医療が提供されること。 (4) 虐待、体罰、いじめ等あらゆる暴力及び犯罪から守られること。 (5) あらゆる差別を受けないこと。 (6) 一人一人の発達段階にふさわしい生活ができること。 (7) 安全に安心して過ごすことができるための居場所があること。 (8) 権利が侵害されたときは、速やかに回復できるよう、適切な支援を受けられること。 (一人一人が尊重される権利) 第5条 子どもは、一人一人が尊重されるため、次に掲げることを権利として保障されなければならない。 (1) 個人の価値が尊重されること。 (2) 自分の考えを自由に持ち、及び表現することができること。 (3) 信頼されるとともに、自分の考えが尊重されること。 (4) プライバシー及び名誉が守られること。 (5) 自分の持っている力を発揮できること。 (のびのびと豊かに育つ権利) 第6条 子どもは、のびのびと豊かに育つため、次に掲げることを権利として保障されなければならない。 (1) 学ぶこと。 (2) 遊ぶこと。 (3) 休息すること。 (4) 様々な人とふれあうこと。 (5) 自然とふれあうこと。 (6) 社会活動に参加すること。 (7) 多彩な文化活動に参加すること。 77ページ (主体的に参加する権利) 第7条 子どもは、自分たちにかかわることについて主体的に参加するため、一人一人の発達段階に応じ、次に掲げることを権利として保障されなければならない。 (1) 意見を表明する機会が与えられること。 (2) 自分たちの意見が尊重されること。 (3) 意見を表明するために、必要な情報の提供その他必要な支援を受けられること。 第3章 子どもの権利を保障する大人の責務 (共通の責務) 第8条 市、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者は、子どもの権利を保障するため、連携し、及び協働するとともに、次に掲げる支援を行うよう努めなければならない。 (1) 子どもが他者の権利を尊重することができるようになるために必要な支援 (2) 保護者が子どもの養育及び発達に関する第一義的な責任を果たすために必要な支援 (市の責務) 第9条 市は、子どもの権利を保障するため、国、他の地方公共団体及び関係機関と連携し、及び協働するとともに、子どもに関する施策を実施しなければならない。 2 市は、子どもに関する施策を実施するため、必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 3 市は、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者がそれぞれの責務を果たすことができるよう、必要な支援を行わなければならない。 (保護者の責務) 第10条 保護者は、子どもの養育及び発達に家庭が果たす役割を理解するとともに、その第一義的な責任は保護者が有することを自覚し、子どもを守り育てなければならない。 2 保護者は、子どもの健やかな育ちのため、子どもにとっての最善の方法を考え、子ども一人一人の発達段階に応じた養育に努めなければならない。 (地域住民等の責務) 第11条 地域住民等は、子どもの豊かな人間性が地域の人、自然、社会及び文化とのかかわりの中ではぐくまれることを認識し、子どもの健やかな育ちを支援するよう努めなければならない。 2 地域住民等は、虐待等あらゆる暴力及び犯罪から子どもを守るため、安全で安心な地域づくりに努めなければならない。 3 地域住民等は、子どもが地域社会の一員であることを認識し、子どもとともに地域活動を行うよう努めなければならない。 (学校等関係者の責務) 第12条 学校等関係者は、子ども一人一人の発達段階に応じ、子どもが主体的に学び、及び育つことができるよう、必要な支援に努めなければならない。 2 学校等関係者は、虐待、体罰、いじめ等から子どもを守るため、その解決に向け、関係機関と連携していくよう努めなければならない。 3 学校等関係者は、子ども一人一人の発達段階に応じ、子どもが子どもの権利について理解し、及び自分の意見を表明することができるよう、必要な支援に努めなければならない。 (事業者の責務) 第13条 事業者は、子どもの健やかな育ちを支援するため、その社会的影響力及び 78ページ 責任を認識した事業活動を行うとともに、社会的自立に向けた就労支援、人材育成及び社会人教育を行うよう努めなければならない。 2 事業者は、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の視点から、子どもを養育する従業員が仕事と子育てとを両立できるよう、職場の環境づくりに努めなければならない。 3 事業者は、仕事と子育てとを両立できる働き方について、従業員の意識の向上を図るとともに、従業員に対し、子ども及び子どもを養育する家庭(以下「子育て家庭」という。)を支援する取組への参加又は協力を促すよう努めなければならない。 第4章 子どもに関する基本的な施策等 (虐待、体罰、いじめ等の救済等) 第14条 市は、保護者、地域住民等、学校等関係者及び関係機関と連携し、及び協働し、虐待、体罰、いじめ等の防止、相談及び救済のために必要な措置を講じなければならない。 (子どもの育ちの支援) 第15条 市は、子どもの健やかな育ちを支援するため、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者と連携し、及び協働し、次に掲げる施策を実施するものとする。 (1)子どもが安全に安心して過ごすことができるための居場所づくり (2)子どもが自然及び地域社会とのかかわりの中で豊かに育つことができるための遊び及び体験の場づくり (3)子どもが社会とのかかわりの中で、他者と共生し、自立していくために必要な支援 (子育て家庭の支援) 第16条 市は、保護者が子どもの養育及び発達に関する第一義的な責任を果たすことにより子どもが安心して生活することができるよう、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者と連携し、及び協働し、子育て家庭を支援するネットワークづくりを進めるなど、子育て家庭の支援を行うものとする。 (子どもの参画の促進) 第17条 市は、前3条に掲げる子どもに関する基本的な施策(以下「基本的施策」という。)を策定するに当たっては、子ども会議を開催するなど、子どもが主体的に参加し、及び意見を表明する機会を設けるとともに、子どもの意見を尊重するよう努めるものとする。 (関連施策との一体的推進) 第18条 市は、基本的施策を推進するに当たっては、若者の自立支援に関する施策その他関連施策と一体的に推進しなければならない。 (調査研究) 第19条 市は、子どもの権利、その権利の保障及び子どもに関する施策に関する調査及び研究を行うものとする。 (広報) 第19条の2 市は、子どもの権利について、市民の関心を高めるとともに、その普及を図るため、広報活動を行うものとする。 第5章 子どもに関する施策の総合的な推進 (総合計画) 第20条 市長は、子どもに関する施策を総合的かつ計画的に実施するため、子どもに関する総合的な計画(以下「総合計画」という。)を策定しなければならない。 2 市長は、総合計画を策定するに当たっては、あらかじめ、なごや子ども・子育て 79ページ 支援協議会の意見を聴かなければならない。 3 市長は、総合計画を策定するに当たっては、子どもを含めた市民の意見を反映することができるように適切な措置を講ずるものとする。 4 市長は、総合計画を策定したときは、速やかに、これを公表しなければならない。 5 前3項の規定は、総合計画の変更について準用する。 (実施状況等の公表等) 第21条 市長は、毎年度、総合計画の実施状況等を公表しなければならない。 2 市長は、前項の総合計画の実施状況等について、なごや子ども・子育て支援協議会の意見を聴くとともに、子どもを含めた市民の意見を聴き、それらの意見を総合計画等に反映させるよう努めるものとする。 (拠点施設) 第22条 市は、子どもに関する施策を実施するとともに、子どもを社会全体で支援するため、総合的な拠点施設を整備するものとする。 (なごや子ども・子育て支援協議会) 第23条 市長の附属機関として、なごや子ども・子育て支援協議会(以下「協議会」という。)を置く。 第24条 協議会は、市長の諮問に応じ、子どもに関する施策に関する重要事項について調査審議し、その結果を市長に答申する。 2 協議会は、子どもに関する施策に関し必要と認める事項について調査審議し、市長に対し、意見を述べることができる。 第25条 協議会は、委員35 人以内をもって組織する。 2 特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、協議会に臨時委員を置くことができる。 3 委員及び臨時委員は、学識経験のある者その他市長が必要と認める者のうちから、市長が委嘱する。 第26条 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。 2 委員は、再任されることができる。 3 臨時委員は、特別の事項に関する調査審議が終了したときに解嘱されるものとする。 第27条 協議会には、必要に応じ、委員(その調査審議事項に係る臨時委員を含む。)の一部をもって部会を置くことができる。 2 協議会は、その定めるところにより、部会の議決をもって協議会の議決とすることができる。 第28条 第23条から前条までに定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。 第6章 雑則 (委任) 第29条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。 附則 (施行期日) 1 この条例は、平成20年4月1日から施行する。ただし、第23条の規定は、規則で定める日から施行する。 (平成20年規則第117号で平成20年9月1日から施行) (経過措置) 80ページ 2 この条例の施行の際現に次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)第8条第1項の規定により策定されている計画は、第20 条第1項の規定により策定された総合計画とみなす。 (名古屋市青少年問題協議会条例の廃止) 3 名古屋市青少年問題協議会条例(昭和33年名古屋市条例第20号)は、廃止する。(名古屋市青少年問題協議会条例の廃止に伴う経過措置) 4 この条例の施行の日の前日において名古屋市青少年問題協議会の委員である者の任期は、前項の規定による廃止前の名古屋市青少年問題協議会条例第4条第1項の規定にかかわらず、その日に満了する。 附則(平成24年条例第44号) 1 この条例は、平成24年4月1日から施行する。 2 この条例の施行の際現になごや子ども・子育て支援協議会の委員に委嘱されている者は、この条例の施行の日にこの条例による改正後のなごや子ども条例(以下「新条例」という。)第25 条第3項の規定により委嘱された委員とみなし、その任期は、新条例第26条第1項の規定にかかわらず、平成24年8月31日までとする。 附則(令和2年条例第24号) (施行期日) 1 この条例は、令和2年4月1日から施行する。 (検討) 2 市長は、この条例の施行後適当な時期において、この条例による改正後のなごや子どもの権利条例(以下この項において「新条例」という。)の施行の状況及び社会情勢の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、新条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。 (名古屋市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例等の一部改正) 3 次に掲げる条例の規定中「なごや子ども条例」を「なごや子どもの権利条例」に改める。 (1) 名古屋市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例(平成26年名古屋市条例第60号)第2条 (2) 名古屋市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例(平成26年名古屋市条例第58号)第2条の表 (3) 名古屋市児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例(平成24年名古屋市条例第100号)第2条の表 (4) 名古屋市幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定の要件を定める条例(平成30年名古屋市条例第8号)第3条 (5) 名古屋市幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準を定める条例(平成26年名古屋市条例第57号)第2条の表 (6) 名古屋市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準を定める条例(平成26年名古屋市条例第59号)第2条 81ページ ○名古屋市子どもの権利擁護委員条例 平成31年3月27日 条例第23号 (設置) 第1条 子どもの権利を守る文化及び社会をつくり、子どもの最善の利益を確保するため、本市に市長の附属機関として、名古屋市子どもの権利擁護委員(以下「委員」という。)を置く。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1)子ども 18歳未満の者その他これらの者と等しく権利を認めることが適当である者をいう。 (2)子どもの権利擁護 子どもの権利侵害からの回復及び子どもの権利の保障のための措置を講ずることをいう。 (3)保護者 親及び里親その他親に代わり子どもを養育する者をいう。 (4)学校等 学校、保育所、児童養護施設その他子どもが学び、又は育つことを目的として通学し、通園し、通所し、又は入所する施設をいう。 (所掌事務) 第3条 委員は、第1 条の目的を達成するために、次の職務を行う。 (1)子どもの権利侵害に関する相談に応じること。 (2)子どもの権利侵害に関する申立て又は自己の発意に基づき、調査、調整、勧告、要請等を行うこと。 (3)勧告、要請等の内容を公表すること。 (4)子どもの権利に関する普及啓発を行うこと。 (委員) 第4条 委員の定数は、5人以内とする。 2 委員は、人格が高潔で、子どもの権利に関し優れた識見を有し、かつ、第三者として独立性を保持し得る者のうちから、市長が委嘱する。 3 委員の任期は2年とし、補欠委員の任期は前任者の残任期間とする。ただし、後任者が委嘱されるまでの間は、その職務を行うものとする。 4 委員は、再任されることができる。 (解嘱) 第5条 市長は、委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認めるとき又は委員に職務上の義務違反その他委員としてふさわしくない非行があると認めるときは、これを解嘱することができる。 (兼職の禁止) 第6条 委員は、衆議院議員、参議院議員若しくは地方公共団体の議会の議員若しくは長又は政党その他の政治団体の役員と兼ねることができない。 2 委員は、前項に定めるもののほか、公平かつ適正な職務の遂行に支障が生ずるおそれがある職と兼ねることができない。 (代表委員) 82ページ 第7条 委員のうちから代表委員1人を置き、委員の互選により定める。 2 代表委員は、委員の会議を主宰し、委員を代表する。 3 代表委員に事故があるとき又は代表委員が欠けたときは、委員のうちから代表委員があらかじめ指名する者がその職務を代理する。 (専門調査員及び調査相談員) 第8条 委員の職務の遂行を補助するため、専門調査員及び調査相談員を置く。 2 次条の規定は、専門調査員及び調査相談員について準用する。(令4条例17・一部改正) (委員の責務) 第9条 委員は、職務を行うに当たっては、子どもの権利侵害の予防及び早期発見に努めなければならない。 2 委員は、公平かつ適正に職務を遂行しなければならない。 3 委員は、関係する市の機関等と連携を図り、職務の円滑な遂行に努めなければならない。 4 委員は、相談又は申立てを行った者に不利益が生じないように、職務を遂行しなければならない。 5 委員は、子どもの権利に関する意識を高めるための取組を積極的に行わなければならない。 6 委員は、その地位を政党又は政治的目的のために利用してはならない。 7 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。 (市の機関の責務) 第10条 市の機関は、委員の職務の遂行に関し、独立性を尊重するとともに、積極的に協力し、及び援助しなければならない。 (全ての者の責務) 第11条 何人も、委員の職務の遂行に関し、積極的に協力しなければならない。 2 何人も、権利が侵害されていると思われる子ども又は子どもの権利を侵害していると思われる者を発見した場合は、速やかに、委員に相談又は申立てを行わなければならない。 (相談及び申立て) 第12条 何人も、全ての子どもの権利侵害に関する事項について、委員に対し、相談及び申立てを行うことができる。 2 委員は、相談又は申立てがあった場合には、相談に応じ、又は申立てを受理しなければならない。 3 委員は、相談又は申立てがあった事項が次の各号のいずれにも該当しないときは、適切な機関等に引き継がなければならない。 (1)市内に住所を有する子どもに係るもの (2)市内に通勤し、又は市内の学校等に通学し、通園し、通所し、若しくは入所する子ども(前号に規定する子どもを除く。)に係るもの(相談及び申立ての原因となった事実が市内で生じたものに限る。) (調査及び調整) 第13条 委員は、申立てがあった事項について、調査を行わなければならない。 2 委員は、子どもの権利が侵害されていると思われるときは、自己の発意に基づき、 83ページ 調査を行わなければならない。 3 委員は、申立てが当該申立てに係る子ども又はその保護者以外の者から行われた場合において調査を行うとき又は自己の発意に基づき調査を行うときは、当該子ども又はその保護者の同意を得なければならない。ただし、当該子どもが置かれている状況を考慮し、委員がその必要がないと認めるときは、この限りではない。 4 委員は、調査のため必要があると認めるときは、市の機関に対し、説明を求め、その保有する文書その他の記録を閲覧し、若しくはその提出を要求し、又は実地に調査することができる。 5 委員は、調査のため必要があると認めるときは、市の機関以外のものに対し、必要な限度において、説明、資料の提出その他の必要な協力を求めることができる。 6 委員は、必要があると認めるときは、専門機関に対し、調査を依頼することができる。この場合において、委員は、依頼した事項の秘密の保持に必要な措置を講じなければならない。 7 委員は、調査の結果、必要があると認めるときは、子どもの権利侵害の是正のための調整を行わなければならない。 (調査の中止) 第14条 委員は、特別の事情があると認めるときを除き、申立てについて、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、調査を中止するものとする。 (1) 判決、裁決等により確定した権利関係に関する事項又は裁判所において係争中の事項若しくは行政庁において不服申立ての審理中の事項に関する申立てであるとき。 (2) 委員の行為に関する申立てであるとき。 (3) 申立ての原因となった事実の生じた日から3年を経過した後にされたとき。 (4) 前条第3項の同意が得られないとき(同項ただし書に該当するときを除く。)。 (5) 前各号のほか、調査することが明らかに適当でないとき。 2 委員は、前項の規定により調査を中止したときは、申立てを行った者に対し、速やかに、理由を付してその旨を通知しなければならない。 (勧告又は要請) 第15条 委員は、調査又は調整の結果、必要があると認めるときは、市の機関に対し、是正等の措置を講じ、又は制度の改善を行うよう勧告をすることができる。 2 委員は、調査又は調整の結果、必要があると認めるときは、市の機関以外のものに対し、是正等の措置を講ずるよう要請をすることができる。 3 第1 項の勧告又は前項の要請を受けた者は、これを尊重しなければならない。 (報告) 第16条 委員は、前条第1 項の勧告をしたときは、当該市の機関に対し、是正等の措置又は制度の改善の状況について報告を求めるものとする。 2 前項の報告を求められた市の機関は、当該報告を求められた日の翌日から起算して60日以内に、委員に対して、是正等の措置又は制度の改善の状況について、理由を付して報告しなければならない。 3 委員は、前条第2項の要請をしたときは、当該市の機関以外のものに対し、是正等の措置の状況について報告を求めるものとする。 4 前項の報告を求められた市の機関以外のものは、当該報告を求められた日の翌日から起算して60日以内に、委員に対して、是正等の措置の状況について、理由を 84ページ 付して報告するよう努めなければならない。 (再調査等及び再勧告等) 第17条 委員は、前条第2項又は第4項(第4項において準用する場合を含む。)の規定による報告の内容等を踏まえ、必要があると認めるときは、改めて調査又は調整(以下「再調査等」という。)を行うことができる。 2 委員は、再調査等の結果、必要があると認めるときは、市の機関に対し、改めて是正等の措置を講じ、又は制度の改善を行うよう勧告(以下「再勧告」という。)をすることができる。 3 委員は、再調査等の結果、必要があると認めるときは、市の機関以外のものに対し、改めて是正等の措置を講ずるよう要請(以下「再要請」という。)をすることができる。 4 前条の規定は、再勧告又は再要請の場合に準用する。 (公表) 第18条 委員は、第15条第1項の勧告若しくは同条第2項の要請をした場合又は第 16 条第2項若しくは第4項の規定による報告があった場合で必要があると認めるときは、その内容を公表することができる。 2 委員は、再勧告若しくは再要請をしたとき又は前条第4項において準用する第16条第2項若しくは第4 項の規定による報告があったときは、その内容を公表しなければならない。 3 前2項の規定による公表をするに当たっては、個人情報等の保護について十分な配慮をしなければならない。 (活動状況の報告) 第19条 委員は、毎年、その活動状況について、市長に報告するとともに、公表するものとする。 (委任) 第20条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。 附則 (施行期日) 1 この条例の施行期日は、規則で定める。 (令和元年規則第25号で第1条から第9条まで及び第20条の規定は、令和元年9月1日から施行) (令和2年規則第1号で第10条から第19条まで及び附則第2項の規定は、令和2年1月14日から施行) (検討) 2 市長は、この条例の施行後適当な時期において、この条例の施行の状況、子どもの権利擁護に関する国の施策の動向及び社会情勢の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。 附則(令和4年条例第17号) この条例は、令和4年4月1日から施行する。 85ページ ○名古屋市子どもの権利擁護委員条例施行細則 令和2年1月10日 規則第2号 (趣旨) 第1条 この規則は、名古屋市子どもの権利擁護委員条例(平成31年名古屋市条例第23号。以下「条例」という。)の施行に関し必要な事項を定めるものとする。 (子どもの権利侵害に関する申立て) 第2条 条例第12条第1項の規定による申立てをしようとする者は、子どもの権利侵害に関する申立書(第1 号様式)を提出しなければならない。ただし、名古屋市子どもの権利擁護委員(以下「委員」という。)が子どもの権利侵害に関する申立書の提出ができない相当の理由があると認めるときは、口頭ですることができる。 2 前項ただし書の規定により口頭で申立てをしようとするときは、子どもの権利侵害に関する申立書に記載すべき事項を陳述しなければならない。この場合において、委員は、その内容を録取するものとする。 (調査) 第3条 委員は、条例第13条第4項又は第5 項の規定により、調査のため必要があると認めるときは、市の機関等に対し、調査実施通知書(第2号様式)を交付するものとする。ただし、委員が相当の理由があると認めるときは、この限りでない。 (勧告等又は要請等) 第4条 条例第15条第1項の規定による勧告は勧告書(第3号様式)により、条例第17条第2項の規定による再勧告は再勧告書(第4号様式)により行うものとする。 2 条例第15条第2項の規定による要請は要請書(第5号様式)により、条例第17条第3項の規定による再要請は再要請書(第6号様式)により行うものとする。 (公表) 第5条 条例第18条第1項又は第2 項の規定による公表は、次に掲げる事項を市役所及び区役所の掲示板に掲示するほか、インターネットの利用その他の適切な方法により行うものとする。 (1)勧告若しくは要請又は再勧告若しくは再要請を受けた者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地) (2)勧告若しくは要請又は再勧告若しくは再要請の概要 (3)報告の概要 附則 この規則は、令和2年1月14日から施行する。 附則(令和2年規則第123号) 86ページ 1 この規則は、令和2年12月1日から施行する。 2 この規則の施行の際現にこの規則による改正前の各規則の規定に基づいて提出されている申請書等は、この規則による改正後の各規則の規定に基づいて提出されたものとみなす。 3 この規則の施行の際現にこの規則による改正前の各規則の規定に基づいて作成されている用紙は、この規則による改正後の各規則の規定にかかわらず、当分の間、修正して使用することができる。 87ページ 第1号様式(第2条関係) 子どもの権利侵害に関する申立書 年 月 日 (宛先)名古屋市子どもの権利擁護委員 申立人 住所、氏名、電話番号 名古屋市子どもの権利擁護委員条例第12条第1項の規定により、次のとおり子どもの権利侵害に関し、申立てを行います。 侵害を受けたとされる者 住所、氏名、生年月日、申立人との関係 侵害をしたとされる者 住所、氏名(法人の場合は、所在地、名称及び代表者氏名) 事案の概要 申立ての内容 その他参考となる事項 備考 用紙の大きさは、日本産業企画A4とする。 第2号様式(第3条関係) 年 月 日 調査実施通知書 住所、氏名(法人の場合は、所在地、名称および代表者氏名) 名古屋市子どもの権利擁護委員 ? 名古屋市子どもの権利擁護委員条例施行細則第3条の規定により、次のとおり通知します。 申立ての概要 調査の内容 備考 備考 用紙の大きさは、日本産業企画A4とする。 88ページ 第3号様式(第4条関係) 第 号 年 月 日 勧告書 所在地、名称、代表者氏名 名古屋市子どもの権利擁護委員 ? 名古屋市子どもの権利擁護委員条例第15条第1項の規定により、次のとおり勧告します。 勧告の内容 勧告の理由 注 条例第18条第1項の規定により、名称その他必要な事項を公表することがあります。 備考 用紙の大きさは、日本産業企画A4とする。 第4号様式(第4条関係) 第 号 年 月 日 再勧告書 所在地、名称、代表者氏名 名古屋市子どもの権利擁護委員 ? 名古屋市子どもの権利擁護委員条例第17条第2項の規定により、次のとおり再勧告します。 再勧告の内容 再勧告の理由 89ページ 第5号様式(第4条関係) 第 号 年 月 日 要請書 住所、氏名(法人の場合は、所在地、名称及び代表者氏名) 名古屋市子どもの権利擁護委員 ? 名古屋市子どもの権利擁護委員条例第15条第2項の規定により、次のとおり要請します。 要請の内容 要請の理由 注 条例第18条第1項の規定により、氏名又は名称その他必要な事項を公表することがあります。 備考 用紙の大きさは、日本産業企画A4とする。 第6号様式(第4条関係) 第 号 年 月 日 再要請書 住所、氏名(法人の場合は、所在地、名称及び代表者氏名) 名古屋市子どもの権利擁護委員 ? 名古屋市子どもの権利擁護委員条例第17条第3項の規定により、次のとおり再要請します。 再要請の内容 再要請の理由 備考 用紙の大きさは、日本産業企画A4とする。 改ページ 【「なごもっか」までのアクセス】 地下鉄東山線・名城線「栄」駅 名鉄瀬戸線「栄町」駅 →オアシス21経由 徒歩3分 駅からの地下を使ったアクセス方法 ・栄駅からオアシス21「銀河の広場」に出ます。 ・広場をはさんで栄駅と反対側の方向に進むと、NHK名古屋放送センタービルにつながる通路があります。 ・通路を通りぬけると、NHK名古屋放送センタービルの地下2階に到着します。 オアシス21を通り、NHK名古屋放送センタービルの地下入口へ。 エレベーターで6階へおあがりください。 ≪久屋大通駅、栄駅周辺の地図添付。栄駅からNHK名古屋放送センタービルへ矢印が伸びており、「地下経由」と表記されている。≫ ≪NHKセンタービル地下2階、6階のフロアアップ添付。地下2階のフロアマップにはオアシス21側の入口からエレベーターへの行き方、6階のフロアマップにはエレベーターからなごもっかからの行き方が矢印で示されている。≫ 【「なごもっか」相談専用電話】 子ども専用フリーダイヤル 0120-874-994(はなし きくよ) 大人用電話番号 052-211-8640 ※子どもの権利に関わることであれば、大人も相談できます。 〇子ども向けウェブサイト≪二次元コード添付≫ 〇公式X @NagomokkaNagoya≪二次元コード添付≫ 2023(令和5)年度 名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」活動報告書 発行:名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」 住所:〒461-0005 名古屋市東区東桜一丁目13番3号 NHK名古屋放送センタービル6階 電話:052-211-8071(事務局) FAX:052-211-8072 改ページ(裏表紙) ≪振り返って手を振る「なごもん」のイラスト≫