1ページ 名古屋市子どもの権利擁護委員の活動を通じた学校における子どもの権利の保障 名古屋市子どもの権利擁護委員/弁護士 間宮静香 2ページ 政府から独立した人権機関(IHRI)とは ?政府から独立した対場で人権基準の遵守促進のために一定の任務を与えられて活動する機関 ?1992年国連人権委員会 国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)採択 ?2014年5月時点 Aランク71、Bランク25、Cランク10 Aランク内訳:アジア・太平洋15、アフリカ18、ヨーロッパ22、南北アメリカ大陸16 3ページ 世界の子どもの人権救済機関 ?主な機能 @個別救済機能 A意見表明、助言、勧告などの制度改善機能 B広報啓発機能 ?国に設置+地方に設置 国は個別救済を行わず、地方から情報収集し、国への制度改善に繋げる方式もある 4ページ 名古屋市子どもの権利擁護委員条例(2019年) ・目的:≪ここから赤字、下線≫子どもの権利を守る文化と社会をつくり、子どもの最善の利益を確保する≪赤字、下線ここまで≫ ・独立性を有する市長の附属機関 【子どもの権利擁護委員の職務】 @相談(個別救済) A申立・発意 B勧告・要請と公表 C子どもの権利に関する普及啓発 5ページ 「なごもっか」体制 ?子どもの権利擁護委員を補助するため2020年開設 ?子どもの権利擁護委員5名(大学教員3名 弁護士2名) ?調査相談員15名(社会福祉士、公認心理師、保育士、相談業務経験者など) ?事務局3名(子ども青少年局所属) ?参与1名(独立性の監視) ?専門調査員(他自治体の調査等を請負う) ?てつなぎなごもんず(当事者である子どもの運営参加) 6ページ なごもっか相談方法 場所:NHKなごや放送センタービル6階 相談方法:電話(子ども用フリーダイヤル/大人用電話)/FAX/手紙/面談(LINE相談受付あり) 開設日時 月 午前11時〜午後7時 火木金 午前11時〜午後9時 土 午前11時〜午後5時 子どもが電話をかけられる時間・曜日に開設 行政とは離れた場所に設置(独立性) 7ページ 「なごもっか」での相談の主な流れ 初回相談 ↓子どもの意見表明権/子どもの最善の利益を重視 ケース検討会議 ↓↑≪相互の矢印≫ 相談・対応 ↓ 解決 ≪相談・対応から枝分かれ≫ 相談・対応 ↓必要に応じ関係機関から情報収集 申立て 発意(※発意とは…申立てがないが子どもの権利侵害が認められる場合に、子どもの権利擁護委員の意思で調査や調整を開始する制度) ↓ 調査・調整 ↓ 是正措置・制度改善の勧告/要請 ≪調査・調整から枝わかれ≫ ↓ 解決 8ページ 個別救済 ≪以下、順に緊急性・重大性が低いものから高いものへ並んでいる≫ 傾聴→整理 エンパワメント→子どもと作戦をたてる 面談(親子分離) 情報収集/調査・調整≪補足内容:意見表明権・プライバシー権の保障・知る権利の保障などを重視≫ 勧告・要請 9ページ 子どもからの相談から制度改善へ(活動報告書より) @高校生による出席認定に関するルールについての申立(活動報告書20〜21ページ) ※個別救済はできなかったが、予防に繋がった A高校生による学校施設の安全確保に関する申立(同21〜24ページ)→発意へ ※個別救済はできたが、全体の予防については発意へ ※2024年度:読み書き障害のある中学生の高校入試での合理的配慮 10ページ 子どもの相談からの発展(教員の多忙化・不足) ≪活動報告書・中教審への意見書のイメージ掲載≫ 11ページ ●毎年、一定数の相談あり ●活動報告書に毎年態様を掲載→教育委員会・学校の自発的な制度改善を期待 ●制度指導提要改訂版への意見書を中教審に提出(一部反映) ●学校側の構造的な問題(人員不足・専門知識の取得時間のなさ)の把握 ●子どもの声に基づく自己発意・調査中 相談→モニタリング→普及啓発→制度改善(※発意があることで申立てがなくても子どもの権利を守る社会の構築に繋がる) 12ページ 子どもの権利に関する意識啓発(P.37〜) ?子どもの権利の普及啓発(3条4号) ?2023年度52件実施(子ども、教員、保育園園長、幼稚園園長、保育士、児童養護施設職員、PTA、子育て支援者、一時保護所入所児童など)※無料で提供 ?子ども向け活動報告会/一般向け活動報告会 ?子ども向けウェブサイトの開設 ?公式XやYouTubeでの発信 ?高校生との動画作成 ?地下鉄広告など 意識啓発が相談に繋がる 13ページ 子どもの権利の意識啓発(国への意見表明) 国に対する権限はないが、法律や国の施策によって子どもの権利が保障されていない状況 ・生徒指導提要改訂に関する意見書(対中教審) ・こども大綱の策定に向けた中間整理に対する意見書(対こども家庭庁) ・教員不足等についての意見書(対中教審) 14ページ 子どもの権利救済機関の活動・機能 ≪以下、4つの指標で「子どもの権利救済機関の活動・機能」の分布を示している。上下で個別と全体、左右で事後的救済と予防を分布している。≫ ≪個別・事後的救済≫ アドボカシー的 ・相談 ・調整活動 ・申立→勧告 ≪個別・予防≫ ・当該学校等での権利学習 ≪全体・事後的救済≫ モニタリング ≪全体・予防≫ アドボカシー的 ・課題の提示 ・権利学習 ・広報啓発 ・意見表明 ≪個別・全体・事後的救済・予防の中心≫ 発意→勧告 ≪活動・機能のうち以下が矢印で結ばれている≫ 〇相談→〇モニタリング→〇発意→勧告 〇相談→〇モニタリング→〇課題の提示 〇相談→〇モニタリング→〇意見表明 15ページ 行政の穴を埋める例:私立学校への対応 ?懲戒、生徒指導、入試の合理的配慮などの相談が多い ?教育委員会や自治体の保育課にあたる相談先がない「泣き寝入り」状態 ?特に高校では一方的に自主退学を求められる相談が相次ぐ →個別案件での対応から発意へ(入試の合理的配慮も含め、7月下旬発行2024年度活動報告書参照) 懲戒規定の変更・公表 いじめ防止対策基本方針の変更 職員の権限・管理体制の変更 ?自治体では対応できないが、救済機関なら可能 行政以外にも効果がある条文が必要 16ページ 子どもの権利擁護委員の勤務体制 ?毎週水曜16日は原則一日方針決定をするケース会議に出席し、原則全件方針確認 ?その他、対外的に介入していく場合などに、子どもや保護者との面談、学校や施設、教育委員会等と面談 ?子どもの権利学習・研修 人権の中に様々な課題があるので、その専門家をそろえられるか、その専門家が時間を確保できるかが課題 17ページ 10年間の擁護委員生活を通じて感じている成果 ?協力義務・調査・勧告・発意等の条例の裏付けによって子どもの権利救済が実現できる→条文が重要 ?制度を変えることで目の前の子どもだけではなく、権利侵害の予防にも繋がる ?差別している側は差別に気付かない→第三者の目が入る意義は大きい 18ページ 条例検討の際に必要なこと ●独立性の具体的な確保(委員の選任・事務局含め) ●相談によるモニタリングの結果の公表とそれへの対応 ●普及啓発をどのように具体的に行うか(リーフレットをつくる程度では届かない) ●申立てがない場合にも、モニタリングの結果等から、制度的に差別禁止を求める勧告や議会・市長等への意見提出ができること ●協力義務の明記 ●子どもの権利擁護委員制度との連携 19ページ 「子どもに」ではなく「子どもと」