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第11回「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会 議事録

令和6年9月18日(水) 
午後3時15分~午後3時40分


《事務局には◎、外部有識者の委員には●、それ以外の委員及び会長には○をつけ区別しています。》

○杉野会長
それでは、本日はお忙しい中、ご出席いただきありがとうございます。
定刻となりましたので、ただいまから第11回名古屋城バリアフリーに関する市民討論会における差別事案に係る検証委員会を始めさせていただきまず。
まずはじめに、本件審議会の公開・非公開についてです。本検証委員会は、要綱第4条第3項に基づき、すべて公開といたしますので、よろしくお願いいたします。なお、傍聴等に際しましては、受付でお渡しいたしました注意事項の遵守をお願いいたします。
それでは早速、議事に入ります。
議題(1)最終報告についてです。
田中検証委員長から、最終報告の概要につきましてご説明をいただきたいと存じます。田中委員長、よろしくお願いいたします。

●田中検証委員長
本日は最終報告書の決定について審議を進めます。
前回までの議論におきまして、最終報告書案が検討されまして、本日完成ということになります。
それで皆さまお手元には、資料としまして、中間報告書からの加筆・修正部分の一覧表、これを配布しているかと思います。
今回の最終報告書は、中間報告書に加筆・修正をする形で、ひとつの文書として提出をいたします。
したがいまして、どこが加筆され、どこが修正されたかというものをわかりやすくするために、一覧表を配付させていただいております。
それから最終報告書が資料としてお手元にあろうかと思います。私から報告をさせていただきますのは、最終報告書で主に加筆した部分です。報告書を見ていただきますと、「第5.事案における問題点の検証」というところがございます。数字の1・2・3、ここは中間報告書と同一の記載。一部、表現を修正したところはありますが、内容としては同一のものになっております。
最終報告書で追記しましたところが、数字の4。「市が差別事案に対して適切な対応ができなかった背景・遠因等」というところです。この点につきまして大きく4つの項目を取り上げました。
「史実に忠実な復元の解釈等の不一致」というところが1つ目です。それから2つ目が「市としての方針を正確に理解してもらうための情報提供


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の不十分性」、3番目が「職員の苦悩や葛藤」、そして4番目が「公募選定後に無作為抽出によって市民討論会を開催する際の進め方」、という4つの項目を追記しました。
まず最初、1つ目ですけれども「史実に忠実な復元の解釈等の不一致」というところです。ここは主には、市長と副市長及び職員の方の解釈がしっかり一致してなかったという点を指摘しています。
やはり市長としては、消失前の名古屋城を復元するという大きい方針のもとに、防災上、安全を確保するために必要な設備の設置を原則とすると、そういう方針でした。しかし、副市長及び職員の皆さまは、この防災上、安全を確保するためのために必要な設備の設置に加えまして、バリアフリーに必要な設備も含めた施設管理上、必要な設備すべてを設置すると、こういう方針です。ここに、十分なすり合わせができていなかったことから様々な問題が出てきたと。そういう背景になったというふうに検証委員会としては考えております。
この解釈の不一致が2つ目、「市としての方針を正確に理解してもらうための情報提供の不十分性」というところに繋がっております。ここにつきましては、当初、令和3年11月時点では市長としましても、市議会において、より上層階の設置を目指すと。こういう発言をされていました。一方で、公募を終えた後の最優秀案の決定した後、令和4年12月の定例記者会見の場では、垂直昇降技術は1階または2階までと、こういう発言をされております。一方で市の職員の方々は、最優秀案の選定が終わった後も、その選定に基づきまして、より上層階への設置を目指すという説明をされていたというところです。
一方で市民討論会に向けたアンケートにつきましては、選択肢の中に、垂直昇降技術を「設置しない」という選択肢も含まれていたところです。こういう情報発信になりますと、これを受け取る市民の側としましては、垂直昇降技術を上層階まで設置するのか、1階、2階までなのか、あるいは、今までの公募選定の結果はさておいて、もう一度、ゼロから検討するのかと、こういう様々な理解が可能となってしまいました。その結果、市民討論会においてはあらゆる意見を受け入れると。そういう前提で討論会が開催されたと。こういう理解になったのではないかと考えております。それが激しい意見対立を容認する素地を作ったと。したがって、差別発言を生む素地を作ったのではないか。このように検証委員会は評価をいたしました。
それから「職員の苦悩や葛藤」というところですけれども、この点も、一番最初に述べました、史実に忠実な復元の解釈が、市長と副市長及び職員の皆さまの間で一致していなかったところが、遠因となっていると考えられます。この新技術の公募というものは市議会で議決され、予算をつけて実


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施されたものであります。そして適切に評価員が評価をして、最優秀案が決定された。このような手続きを踏んで、決定されたものですから、この結果は十分に尊重されなければなりません。そしてこの公募要件の加点要求水準には、より上層階までの設置というものが含まれております。したがいまして、どの階まで設置をするのかという点については、今後の技術提案に関する十分な検討が行われてからでなければ結論が出ないところであります。
そのような中で、市長が定例会見で、垂直昇降技術は1階、あるいは2階までという発言をされたことによって、この公募要件とのズレが生じてしまいました。その結果、この事業を進めていた職員の中に苦悩と葛藤が生じたと。これまで障害者団体の皆さまに説明していた説明を、市長の発言を受けてどのように維持していくのか、という辺りの説明が苦悩を抱えることになったと思います。このような苦悩が、結果として、市民討論会において適切に対応ができなかった背景にあると。このように検証委員会としては考えております。
それから「公募選定後に無作為抽出によって市民討論会を開催する際の進め方」について、この点についても問題点があったと考えております。公募選定結果というものは、先ほど申し上げましたように、市議会の議決を経て予算をつけて進められた市の事業であります。その結果は市長であっても、十分に尊重しなければなりません。そのような選定が行われた後に開催する市民討論会につきましては、最優秀案が決定されたことが前提でなければなりません。したがって、どのような目的でこの討論会が実施されるのかということについては、垂直昇降技術が最優秀案として選定されていること。したがって、設置しないということは有り得ないのであって、何階まで設置するかということについて、市民の皆さまの意見を聞くと。こういう説明が市から明確になされなければならなかったと考えております。
しかし、これまで述べましたように、職員の皆さまの中に苦悩や葛藤があったこと、あるいは市からの情報発信が幾つもの解釈が可能な形で市民の皆さまに発信されたこと等々がありまして、この討論会がどういう目的で実施されたのかという点について非常に不明確なものになったと。その結果、激しい意見対立がそのまま持ち込まれることとなり、差別発言を生じる素地を作ったと、このように検証委員会は判断しております。以上が、背景と遠因部分になります。
それから、最終報告書に追記したところは、「第6.再発防止に向けて取り組むべき事項」の、数字の2番。「市民からより一層信頼を得るための提言」というところになります。ここは2つ項目を取り上げました。
1つは、名古屋市における差別解消推進条例の改正。そして2つ目は、


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人権条例の制定というところを取り上げております。
差別解消条例の改正につきましては、これまで市を相手方とする相談を受け付ける形になっておりませんでしたので、事業者のみならず市を相手方として相談を実施することができるという形に改正するというところが大きな点であります。人権条例につきましては、市から独立した機関が調査を行い、提言するというところが大きなところになりますが、詳細につきましてはこの後、小林委員の方からご報告をしていただきたいと、このように思います。また全体につきまして浅田委員の方からも、コメントをお願いできればと思います。
私からは以上です。では、小林委員、お願いいたします。

●小林委員
今回の最終報告書の再発防止に向けた提言で、最も重要なもののひとつとして、やはり人権条例の制定があると考えております。これまでも人権の個別の分野については様々な条例がありましたが、人権課題の多様化、複合化を考えますと、それらを補完する包括的な人権条例が必要になると考えております。また、特に今回の事案では、市職員、市民の人権意識、社会構造的な差別の問題もございますので、それらの問題の改善に向けた実効性のある条例が必要だと考えております。
提案している人権条例では、社会構造的差別を含むあらゆる差別の根絶と、人権文化の確立の2つを目的とし、それによって、全国の人権施策をリードする、先導する「人権施策先導都市ナゴヤ」を目指せるようなものを考えております。それによって市民からの信頼を回復し、さらにより一層信頼される名古屋市の実現に資することができると考えますし、シビックプライドの向上にも繋がっていくと考えております。提案している条例では、単に人権問題の相談を聞くだけではなく、その解決のために必要に応じて調査し、提言できる、一定の独立性を持った機関の設置を求めています。そのためには、それなりにそれを担う人材と予算が必要になりますので、名古屋市としても、単に条例を作るだけではなくて、きっちり覚悟を持って挑んでいただきたいと考えております。せっかくそうした条例を作ったとしても何も変わらないとか、あるいは条例に基づいて相談を受け付けたとしても結局、たらい回しにされて解決に至らないということになれば、かえって市民からの信頼を失うことになりかねません。市民から相談を受け付けるということは、そこが人権問題に関する最前線になるというわけですから、それに関わる職員等の能力が非常に重要になりますし、そのために必要な人権に関する研修、あるいは外部に委託するにしても、その費用など様々なものが必要になりますので、その辺りも含めて、きちんと提言を踏まえてご検討いただきたいと考えております。差し当たり、以上です。


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●浅田委員
田中委員長、小林委員は、法律や人権の専門家でございますが、私は教育の立場として、そして市民としての目線を意識するように心掛けて、検証に携わってまいりました。市の主催する討論会で、市民の人権を侵害する差別事案が発生したことで、当事者の方はもとより、心が傷つき、憤りを覚えた市民の方々の思いを深く受けとめ、二度とこのようなことがあってはならないと考えてまいりました。
本事業で、市が差別発言を生み出しやすい状況を作り出しており、差別発言が起きた際に、適切に対応ができなかった原因や背景などの問題を指摘してまいりました。
これまで、名古屋城に関わる、名古屋市から市民への情報発信が、先ほど委員長から報告がございましたように、市長さんからの会見であるとか、名古屋城の担当者からの情報であるとか、そうした情報が必ずしも一致した説明として十分にできていなかったということから、市民にとってわかりにくいものになっていたと感じました。
今後、組織が行う正確な情報発信において、まずは組織内での適切で十分なコミュニケーションが大切であると考えます。
そうした視点から、今回の検証が、今後の名古屋市の人権文化の向上に、少しでも生かせるものにしていただきたいと思っています。以上です。

●田中検証委員長
小林委員、浅田委員、ありがとうございました。
昨年の8月30日に第1回の検証委員会をスタートさせまして、概ね1年という時間を要することとなりました。少し時間が長くかかり過ぎているのではないかというご意見もあろうかと思いますが、検証委員会としましては、様々な資料を検討いたしまして、ヒアリングの方も多数行って参りました。最終報告書として、市民の皆さまにわかりやすい、そして納得していただけるようなものを作ろうということで、努力をしてきたところです。お読みいただきましてご理解をいただければ、本当にありがたいと、そのように思います。
そしてこの最終報告書を受けまして、市長をはじめ市の体制として、この提言に盛り込みました事項をそれぞれ着実に実行していただく。そして本当に違いを認め合う、本当に多様性のある、名古屋市を将来に向かって、一歩一歩作っていただきたい。そのために、市長以下、市全体として進んで行っていただきたいと、そのように思っております。
それでは、これで最終報告書として決定をしたいと思います。

○杉野会長
田中委員長、ありがとうございました。
田中委員長、小林委員、浅田委員から、今、それぞれの概要説明と、詳細な説明、思いもお話をいただきました。これで、田中委員長からご提案あ


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りましたように、最終報告の案として決定をしてよろしいでしょうか。

(委員全員、異議なし)

ありがとうございました。それでは、本書を最終報告として決定し、この後、河村市長に提出したいと存じます。

各委員の皆さま方には本、当に熱心にご議論をいただき、検証に向けてまとめていただいたことに、本当に感謝を申し上げます。1年以上という長きにわたってのご尽力と、すべての心血を注いで、ここまで議論を尽くしていただいたというふうに考えております。
私、会長を務めさせていただきましたが、今回の報告書の中には、今、田中委員長から背景・遠因のところでもご指摘をいただきましたが、検証委員会としては、これまで事業に実際の実施に関わった市長、副市長をはじめとした関係者の人権感覚の希薄さが、差別事案の根源的な背景・遠因となっていると指摘をいただいておりますし、今回、第7として「おわりに」を付け加えていただいておりまして、ここに外部委員、第三者委員の皆さま方の思いが凝縮されているというふうに感じております。
このメッセージの中で、市としての方針を正確に市民に理解してもらうための十分な情報提供、そして、市長は、行政機関の長として、職員が誤解しないような表現、市民の誤解や分断を生じさせることがないよう、十分意識した事業運営をされるように努められたい、と指摘され、「当事者の意見を真摯に聞くとともに、建設的な対話を通じて、当事者の真意をしっかりととらえながら、人権侵害を生じさせないように事業を実施されたい。」というふうに締めくくっていただいております。
委員として関わった行政の職員も、そして会長としても、名古屋市が市の事業推進の中で生じた差別事案でございましたので、この検証委員会を通じていただいたご提言をしっかりと受け止めて参りたいと思いますし、市長の方にもしっかり伝えて参りたいと存じます。
本当にお力添えをありがとうございました。
また、市民の皆さまには、1年以上にわたっての検証ということで、時間を取る結果にはなりましたが、最終報告、検証を行うにあたり必要な期間でございましたので、報告で終わりというわけではなく、今後の市の姿勢もこの提言を十分踏まえて、確実に推進して参りたいと思います。
これで本日の会議は以上でございます。ありがとうございました。