1ページ目 資料7 非公開 第1.検証委員会の目的と設置の経緯 《囲み開始、囲み内黄色マーカー付》【中間報告の記述を再掲】 ※委員構成、検証委員会の開催経過を更新《囲み終わり、囲み内黄色マーカー終わり》 第2.討論会の開催に至る経緯 《囲み開始、囲み内黄色マーカー付》【中間報告の記述を再掲】《囲み終わり、囲み内黄色マーカー終わり》 第3.討論会後の状況 《囲み開始、囲み内黄色マーカー付》【中間報告の記述を再掲】《囲み終わり、囲み内黄色マーカー終わり》 第4.木造復元事業の推進過程において人権に関する意識に影響を与えた背景や遠因等 上記、第2及び第3では市民討論会に直接的に関わる経緯や状況等について調査したが、本件は名古屋城木造復元事業の整備検討に伴うバリアフリーに関する課題が根幹にあることから、市民討論会から更に過去にさかのぼり、当該事業全体の流れや、事業を進めるにあたって市が説明等を行ってきたことに対する障害者団体の受け止めなどの状況等について調査を行った。 (1)名古屋城天守木造復元事業の主な経緯 名古屋城木造復元事業におけるバリアフリーに関わると思われる主な経緯は以下のとおりであった。 《以下、表形式で年月と事項、概要を記載》 年月:平成26年6月 事項:本会議質問(記憶に残る名所としての名古屋城の観光の魅力向上について) 概要:「文化庁は木造での復元しか認めない」と市長答弁 年月:平成27年12月 事項:プロポーザルによる整備事業者の募集 年月:平成27年12月〜平成28年1月 事項:名古屋城天守閣の整備 タウンミーティング 概要:16区、計2,632人来場 年月:《下波線開始》平成28年3月《下波線終わり》 事項:《下波線開始》プロポーザルで優秀提案として選定された、竹中工務店の提案の公表《下波線終わり》 概要:《下波線開始》大天守地層〜4層に小型エレベーター、4〜5層はチェアリフト設置を検討項目として記載《下波線終わり》 2ページ目 年月:平成28年5月 事項:名古屋城天守閣の整備 市民向け報告会 概要:5回、計876人来場 年月:《下波線開始》平成29年11月《下波線終わり》 事項:《下波線開始》特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議天守閣部会《下波線終わり》 概要:《下波線開始》エレベーターを設置しない市の考えが報道《下波線終わり》 年月:平成30年1月 事項:名古屋城天守閣木造復元 市民向け説明会 概要:5回、346人来場 年月:平成30年1月 事項:名古屋城天守閣木造復元 シンポジウム 概要:1回、313人来場 年月:《下波線開始》平成30年5月《下波線終わり》 事項:《下波線開始》木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針の公表《下波線終わり》 概要:《下波線開始》新技術の開発や可能な限り上層階を目指すことを明記《下波線終わり》 年月:平成30年5月 事項:名古屋城天守閣木造復元 市民向け説明会 概要:5回、計298人来場 年月:平成31年1月 事項:名古屋城天守閣木造復元 シンポジウム 概要:1回、計121人来場 年月:令和元年8月 事項:史跡等における歴史的建造物の復元の在り方に関するワーキンググループ(文化庁) 概要:「天守等の復元の在り方について(取りまとめ)」(以下「文化庁復元WG取りまとめ」という。)を公表 年月:令和元年11月〜12月 事項:名古屋城天守閣木造復元 市民向け説明会 概要:8回、計448人来場 年月:令和2年4月 事項:文化庁が、「史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準」を決定(以下「文化庁復元基準」という。) 概要:平成27年度決定の「史跡等における歴史的建造物の復元に関する基準」を見直し 年月:令和3年1月 事項:名古屋城天守閣木造復元 市民向け説明会 概要:3回、計153人来場 年月:令和4年1月 事項:名古屋城天守閣木造復元 市民向け説明会 概要:3回、計208人来場 年月:令和4年4月 事項:名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募開始 概要:1階までを最低基準とし、より上層階を目指す 年月:《下波線開始》令和4年12月《下波線終わり》 事項:《下波線開始》名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募最優秀提案の公表《下波線終わり》 概要:《下波線開始》昇降技術によりできるだけ上層階までの設置を目指す案の採用《下波線終わり》 年月:令和5年1月 事項:名古屋城天守閣木造復元 市民向け説明会 概要:1回、217人来場 年月:令和5年1月 事項:名古屋城シンポジウム 概要:1回、445人来場 年月:令和5年3月 事項:本会議質問(名古屋城天守閣木造復元について) 概要:「市民意見を聴取する機会を設ける」ことを所管副市長答弁 年月:令和5年4月 事項:名古屋城バリアフリーに関する市民アンケートの実施 概要:回答数1,448 3ページ目 年月:令和5年6月 事項:名古屋城バリアフリーに関する市民討論会 概要:36人来場 差別発言に対して市職員が適切な対応を行うことができなかった。 《表終わり》 (2)木造復元天守内の階層間の移動方法に関する市の方針の変遷 (1)を詳細に調査した結果、木造復元天守におけるバリアフリー対応を、次のア〜ウの3つの段階に大別した。また、それぞれの段階における市民への説明等は以下のとおりであった。 《囲み開始》 ア 木造復元の検討〜エレベーターを設置しない考えが報道されるまで ・竹中工務店による小型エレベーターの設置する提案について、今後、有識者の意見等含め考える。 ↓ ・エレベーターは設置せず、代替手段による合理的配慮を考える。 イ 市エレベーターを設置しない考えであるとの報道〜公募結果の公表まで ・エレベーターを設置せず、新技術の開発を通してバリアフリーに最善の努力をする。 ↓ ・様々な工夫により、可能な限り上層階まで昇ることができるよう目指す。 ・新技術の開発には、国内外から幅広く提案を募る。 ウ 公募結果の公表後 ・国際公募で選定した新技術(昇降技術)の設置について、市民のみなさまのご意見を頂戴し、方針を決める。 ↑上記の方針を決めた背景は次のようであった。 《緑の線で囲み開始》 ・市長は、公募で選定した昇降技術を「エレベーター」であるとして、設置そのものに否定的な見解を名古屋城総合事務所に示した。 ・所管副市長や職員は、行政として適正手続きを経た公募結果であり、市長への説得を続けたが、説得が困難な状況であった。 ・所管副市長や職員は、市長に直接市民の声を聞いてもらい、合理的、理性的な判断をいただこうと考えた。《緑の線の囲み終わり》《囲み終わり》 4ページ目 (3)障害者団体の受け止め等 (2)で挙げたそれぞれの段階において、市は障害者団体等に方針の説明等を行ってきたとのことであったが、そうした市からの説明等に対する障害者団体の受け止め等は次のとおりであった。 《囲み開始》【障害者団体からの回答を受け記述】《囲み終わり》 第5.事案における問題点と検討 《囲み開始。囲み内は黄色マーカー付》【1〜3まで中間報告の記述を再掲】《囲み終わり、囲み内黄色マーカー終わり》 5ページ目 4 差別発言が生じた背景・遠因 多年にわたる名古屋城木造復元事業が、本件事案の発生に何かの影響を与えたことはないか、当該事業全般について背景や遠因と思われる問題について検討を行った。 (1)史実に忠実な復元の解釈の不一致 ア 問題点 《二重線を用いた囲み開始》 ・市長と所管副市長、職員の間で「史実に忠実な復元」に対する概念の認識に相違があった。 ・認識に相違があるまま事業を進めたことで、市民間の対立が深まったのではないか。《二重線を用いた囲み終わり》 イ 検証結果 《囲み開始》 ・市長は、焼失前と同じものを建てることで、過去に建てられて焼失していない歴史的建造物と同じ価値になるとの考えであり、新しい建築物を造るという認識ではない。 ・所管副市長、職員は、将来の文化財を目指して焼失前の状態で建てるとしても、それは、新たな公共建築物という認識でいる。 ・令和元年8月に文化庁復元WG取りまとめが公表され、同取りまとめを元に、令和2年4月に文化庁復元基準が決定された。 ・同取りまとめで、「再現された歴史的建造物は、文化財保護法上直ちに文化財と扱われるわけではなく、文化財に準じた、価値を伝えるための手段(プレゼンテーション)としての複製品(レプリカ)と捉えられると明記された。 ・同取りまとめで、他方、「忠実性を追求し、再現される歴史的建造物の質が確保されるよう、適切に復元された歴史的建造物には、適切な評価を与えることが適当」と明記された。 ・市長は、この文化庁の見解により、可能な限り焼失前の姿とすべきとの思いを強くしていた。 ・市長は、文化庁復元基準において、配慮事項として認められる現代設備は防災上の設備に限られると考えていた。 ・副市長、職員は、同基準は、防災上の設備に限らず管理上必要な設備も含むと考えており、有識者から同様の見解を受けていた。 ・公募型プロポーザル実施に伴う意見聴取会で、市長は、エレベーター設置を提案した場合、史実に忠実ではないとして評価が0点になるのか確認していた。 ・同意見聴取会では、有識者から「現代の活用のために何か加えることはある程度考慮することは認められる」との見解があり、エレベーターも提案としては認めることとなった。 ・市長は、公募型プロポーザルの募集期間に開催されたタウンミーティングで、自身の考えとしてエレベーターに反対を表明していた。 ・同時に、市としては、文化庁の考えとして、防災や管理上必要な設備等を付加する考えも示されているので、エレベーターについても事業者から提案を求めると説明していた。 ・公募型プロポーザルで選定された竹中工務店の提案には、小型エレベーターが検討項目として掲載されていた。 ・市は、竹中工務店の提案選定直後に開催した市民向け報告会で、小型エレベーターについて、史実に忠実な復元として適切かどうか学識経験者等の協議にも委ねられてくると説明していた。 6ページ目 ・文化庁は、名古屋城木造天守の復元に関し、「文化財のバリアフリー化と史跡等の文化財の価値を保存する形での整備につきましては、できる限り両立が図られることが大切」との考えを示していた。(令和2年4月3日第201回国会 衆議院 国土交通委員会) ・文化庁においては、できる限り両立を図るものとしているが、その具体的な基準は定めておらず、自治体ごとで判断している。 ・市長、所管副市長、職員のヒアリングによれば、「史実に忠実な復元」の客観的な定義はないため、市長の考えについて、市長と職員ですり合わせを何度も相当回数行ってきた。 ・「史実に忠実な復元」の解釈に関して、有識者から、主架構となる柱や梁は取らない、取り外しにより元に戻せる可逆性が担保されれば史実性に当たると了解を得ていた。 ・公募における「史実に忠実な復元」の内容については、市長に説明し了承を得ていた。 ・公募要項で、技術例のひとつに「大天守の内部を垂直に昇降する技術」を挙げ、「特定の技術(エレベーター技術を含む)を対象から排除するものではありません」と明記していた。 ・公募の加点要求水準の審査基準に「可能な限り木造天守の外観や内観をそこなわないこと」があり、その観点に「木造天守の雰囲気を損なわない意匠になっているか」とした。 ・市長の昇降技術のイメージとして、特に5階に設置した場合は、フロアの4分の1を占めることになるため、城の本物性が毀損されるとの認識だった。《囲み終わり》 ウ 評価 《囲み開始》 ・市長の認識に立てば、木造復元とは、建築当時の焼失していない状態に戻すことを意味するため、比較対象は焼失していない姫路城や松本城となる。 ・文化庁復元WG取りまとめでは、再現(復元・復元的整備・その他の再現)された歴史的建造物は、史跡等の文化財に準じた複製品(レプリカ)とのことである。 ・再現のうち、忠実性を追求する復元には適切な評価が与えられることになるとしても、文化財に準じた複製品の位置づけが文化財の扱いになるとは明記されていない。 ・文化庁は、できる限り両立が図られることが大切と令和2年の国会で明言していることからすると、文化財であることが直ちにバリアフリーの否定にはなるとは考えられない。 ・名古屋城では、文化財の復元に専門的知見を有する有識者会議を有しており、そうした認識のあり方や市民理解に向けての方策に活用することも考えられた。 ・市長は、竹中工務店提案の小型エレベーター設置に明確に反対を表明していたが、現在ほど問題にされていなかった。 ・これには、当時、学識経験者等の協議など検討することとされ、「史実に忠実な復元」との関係で具体的・合理的な説明がされると考えられていた面もあると思われる。 ・平成28年11月の天守閣部会(学識経験者等で構成)で、具体的・合理的な説明が十分されずエレベーターを設置しない考えが示されたことが、市民の不信感を一気に高め、賛成・反対の対立構造のきっかけとなった。 ・平成30年5月の付加設備の方針において、内部エレベーターが設置できない理由として、柱、梁を傷めず設置するのに必要なかごの大きさを挙げていた。 ・公募要件は、史実に忠実な復元を前提としているため、復元WG取りまとめにおける「忠実性を追求し、再現される歴史的建造物の質が確保」されるものとして設定したものと考えられる。 7ページ目 ・名古屋城総合事務所としては、史実に忠実な復元に関する公募要件について、市長の了解を得ていたため、市長の認識と相違なく進めていけると考えたのも理解できる。 ・一方で、加点要求水準で内観や雰囲気についても定めていたが、この点は、あまり周知されていなかった又は市民に認知されていなかったように思われる。 ・史実に忠実な復元の要素として、内観や雰囲気も含めるのであれば、階ごとに広さや構造が異なりデザインや隠し方も変わり、受け手の個人差もあるので、慎重に幅広い検討を行う必要があった。 ・市長と職員の認識が公募の時点で一旦すり合ったように見えたが、その後に大きな認識のずれが明らかになった。《囲み終わり》 (2)市民への正確な情報提供の不十分性 ア 問題点 《二重線を用いた囲み開始》 ・公募直後には、昇降技術といわゆるエレベーターの相違は認識されていなかった。 ・平成28年の公募型プロポーザルによる竹中工務店の提案以降、バリアフリー整備の考え方について市民説明が正確にされていなかった。 ・市長の積極的な情報発信と名古屋城総合事務所の情報発信で受け取り方に差が生じたことが市民間の意見対立を深めたのではないか。《二重線を用いた囲み終わり》 イ 検証結果 《囲み開始》 ・平成27年の公募型プロポーザルで選定された竹中工務店の提案には、小型エレベーターが検討項目として掲載されていた。 ・市は、小型エレベーターを含む木造復元の提案内容を市民に説明していた。 ・竹中工務店提案の小型エレベーターについて、竹中工務店が予定していたエレベーター業者に確認し実現できないことが判明したが、そうした理由は十分に説明されていなかった。 ・平成28年11月の天守閣部会で、エレベーター設置に対する市の考えが報道される前に、障害者団体などバリアフリーに関係する方々への意見聴取は行っていなかった。 ・天守閣部会の資料には、「合理的配慮」の記述があり、当時の代替案としてチェアリフトが明記されていた。 ・市長は、公募により幅広く提案を募り、より上層階、できれば最上階の5階までバリアフリー対応できる昇降技術を広く求めていくと本会議で答弁していた(令和3年11月30日)。 ・市長は、公募による新技術として、車いすで直接階段を登る技術を想定しており、垂直昇降する技術は想定していなかった。 ・市長は、公募で選定された昇降技術を図面で見て、「エレベーター」であるから、その設置を認めない見解を名古屋城総合事務所に示した。 ・職員ヒアリングによれば、職員は、市長の考えとして、現代設備のうち何がよくて何がいけないかの境界線がわからないとのことだった。 ・市長は、姫路城や松山城などを例に、昇降技術を設置するものではないと考えている。 ・所管副市長は、市長の言う例がある一方、金沢城鼠多門の木造復元ではエレベーターが設置されており、国に明確な基準がない以上、自治体の決定として、市長に判断いただくものと考 8ページ目 えていた。《囲み終わり》 ウ 評価 《囲み開始》 ・平成27年の竹中工務店の提案は、市として公表し説明も行っていたため、小型エレベーターが設置されると考えていた市民も多いと考えられる。 ・エレベーターを設置しない市の考えは、市が情報発信するための記者発表という場ではなく、天守閣部会(有識者会議)の議事内容として報道で明らかになった。 ・小型エレベーターが設置されると考えていた市民にとっては、当該提案を採用しない理由が十分にわからないまま、設置が否定されたことで、意見対立が大きくなった。 ・特に、バリアフリーに関する内容であれば、事前に障害者団体等に説明、意見聴取をすべきであったが、当時、そのような認識が名古屋城総合事務所になかった。 ・障害者差別解消法施行直後である当時、合理的配慮は、当事者との建設的な対話による相互理解を通じて行うという考え方が浸透していなかった。 ・「合理的配慮」に求められる障害当事者との建設的な対話をしないまま、エレベーター不設置の代替案としてチェアリフトが市の考えとして報道されたため、不信感を招くことにつながった。 ・新技術の設置階については、市長の了解のもと決定した付加設備の方針及び公募要項では、「可能な限り上層階」や「より上層階」として情報発信している。 ・「より上層階」と言った場合、技術的に設置可能な階と考える市民は多いと思われる。 ・あわせて、市長は、議会で「より上層階」と答弁していることからすると、選定された結果を見て、事後に考えを改めたと考えざるを得ない。 ・技術的限界とは別に、市民が文化財と感じる内観や雰囲気で設置階の限界を定めるのであれば、「より上層階」の考え方と整合性のとれる説明を事前に十分にすべきであった。 ・防災上の設備以外として、手すりやスロープ、観覧ポイントの照明設備や5階限定の畳敷きが認められて、なぜ昇降技術が認められないのかなど、明確で客観的な説明が求められる。 ・過去からの歴史を感じることができるかについて、明確な基準なく曖昧なまま設置階を抑制する考えを示したことから、対立を深めることにつながった。 ・自治体判断にあたり、市民に意見を求めるのならば、公平で幅広い情報提供が不可欠であり、バリアフリー整備をしていない文化財の例のみではなく、海外を含めたバリアフリー整備がされている文化財の例と両方を示すべきである。 ・一方のみ強調することが意見対立の助長につながった面は否定できない。 ・意見対立は人権侵害のリスク要因であり、市として対立を抑制・解消して市民合意を得る努力が必要であった。 《囲み終わり》 (3)職員の苦悩と葛藤の影響 ア 問題点 《二重線を用いた囲み開始》 ・職員は、付加設備の方針に基づき、市長了解のもと公募を進めてきた。 ・市長から公募結果が採用されない可能性を強く感じ、対外的な説明が困難になった苦悩が、その後の市民アンケートや市民討論会での不十分な準備や説明等を行う職員の心理に影響 9ページ目 したのではないか。《二重線を用いた囲み終わり》 イ 検証結果 《囲み開始》 ・職員ヒアリングによれば、市長は、公募の最優秀者決定後に提案書の断面図を見た段階で「エレベーター」と判断され、それ以降は、新技術に関する説明を聞いてもらうのが難しくなった。 ・市長定例記者会見における「垂直昇降設備の設置は1、2階まで」との市長発言が、「可能な限り上層階まで」と定めた付加設備の方針と異なるため、職員は困惑した。 ・職員は、公募結果に対する賛否の市民意見があることから、市民対話を重ねてバリアフリー方針を策定する必要があると考え、そのためには、約2年が必要と所管副市長へ提案した。【当該提案に関する局としての扱いについて確認中】 ・所管副市長は、公募結果の公表後、バリアフリーの方針を決定するために約2年必要との提案を職員から受けた記憶はないようだった。 ・所管副市長は、約2年必要との提案を受けていたとしても、局長がそれまで表明してきた方針決定時期を守るようまずは努めることが役所のルールであり、そうしたルールを踏まえない提案を職員がしてくることがおかしいとの認識を示した。 ・市長は、昇降技術について、公募を経て選定したので設置せざるを得ないが、本物性を毀損すると考えており、設置すべきでないと考えていた。 ・職員は、可能な限り上層階を目指すという付加設備の方針や公募要項の考え方がある以上、技術開発前から設置階を定めるべきではないと考えていた。 ・所管副市長は、最初は1階に設置し市民理解を得ながら段階的に上層階への設置する時間軸の概念を入れることで、結果的に職員と同様、可能な限り上層階への設置を目指すことを考えた。 ・所管副市長は、市長と職員の間の立場で事業を進めようと、職員を説得したが、職員には受け入れられなかった。 ・職員ヒアリングによれば、市長レクや副市長レクにおける市長や所管副市長からの発言をパワーハラスメントと受け止めた職員がいた。 ・市長ヒアリングによれば、市長は、丁寧な言葉でないが、人格批判や権利侵害のようなことはないとのことだった。 ・所管副市長ヒアリングによれば、所管副市長は、ハラスメント的な発言はしたことがないと思っているが、受け取り方にもよる、とのことだった。 ・所管副市長ヒアリングによれば、所管副市長は、市長レクでの市長の言動が職員の意識に相当、大きい影響があったと感じていた。 ・所管副市長ヒアリングによれば、所管副市長は、昇降技術に対する市長の否定的な意向に職員が苦悩していることを感じており、自ら市長への説得や市長に近しい人へ説得の依頼等行っていたとのことだった。 《囲み終わり》 ウ 評価 《囲み開始》 ・大プロジェクトを進めるなかで、苦悩や葛藤が生じるのは一般的であると考えられる。 ・苦悩や葛藤を抑制・解消する仕組みが重要であり、フォロー体制が十分ではなかった。 10ページ目 ・市長は、名古屋城の木造復元に強い思いがあって、選挙公約で木造復元を掲げて当選しており、一般論としては、行政職員は、民意を受けた市長の思いを実現することが求められる。 ・ただし、公募は、議会の議決を経て公費で行われ、事業者も公募要件を前提に提案し、適正に評価員が審査した結果であって、選定後に否定することは市長であっても認められない。 ・実際、市長は、定例会見など公的な場では、設置階について否定的な見解はあるものの設置そのものは否定していない。 ・所管副市長ヒアリングや職員ヒアリングによれば、所管副市長や職員は、市長が行政の適正手続きの結果を否定する不安を強く感じていた。 ・首長が行政の適正手続きを否定することは通常、考えられないため、職員がそのように考えてしまうほど、市長の強い思いを相当受けたと判断する。 ・結果的に、市長が「設置しない」と判断することを避けることに注力したため、資料や討論会の運営が、設置の是非を聞いていると受け取られるような内容につながっていった。 ・職員は、時間をかけて市民から意見聴取を行い、設置階について市民の理解を得て市長に説明を行うことで、「付加設備の方針」と市長の考え方に差異が生じていたことの苦悩について打開しようとしたと考えた。 ・結果的に、時間をかけずに市民意見を聴取して、バリアフリーの方針を決定しようとしたことから、市民から理解を得ようとする意識は希薄となり、討論会等の実施が目的化していった遠因にもなった。 ・また、公募の昇降技術を説明するたび市長から強く否定されることが、職員の意識に影響して、市長出席の討論会で、市民意見の回答として昇降技術の設置が決定していることを明確にできなかった遠因にもなったと考えられる。 ・パワーハラスメントについては、当委員会の検証対象ではないが、パワーハラスメントと受け止める職員がいること自体、市長以下、関係者間の円滑なコミュニケーションが不足していたと言わざるを得ない。 《囲み終わり》 (4)無作為抽出で方針決定する手法を選択した経緯の疑問点 ア 問題点 《二重線を用いた囲み開始》 ・公募結果が出てバリアフリー方針が決定されるという段階になって、無作為抽出による市民意見で方針決定することとした。 ・公募の経緯が無視され、公募前の状況に戻ってしまうこともあると受け止められた。 イ 検証結果 《囲み開始》 ・副市長ヒアリングによれば、文化庁からは、バリアフリーをどこまで施すか広く市民の合意形成を得て計画を持ってきてほしいと言われていた。 ・アンケートと討論会の実施について、市からの事前の説明を受けた障害者団体と、受けていない団体があった。 11ページ目 ・アンケートと討論会の実施について、市から事前の説明があった障害者団体からは、「公募で決まったものに関してなぜ必要なのか」という疑問や、「これまで進めてきたことを否定する意見が、参加者の中で多数意見となった場合にどうするのか」といった懸念が示されていた。 ・また、討論会の際には、実物大の階段を参加者に利用していただくことや、消防法等現代の法律に即した設備は整えており、木造完全復元との違いも説明してほしいという要望を市に伝えていた障害者団体もあった。 ・アンケートでは、設置しない23.4%、1階まで16.9%、最上階まで47.2%であった。 《囲み終わり》 ウ 評価 《囲み開始》 ・無作為抽出の手法によるアンケートや討論会の結果のみによって方針決定するのではなく、別途、障害当事者から聞いた意見も含めて方針決定するのであれば、施策の手法の一つとして否定されるものではない。 ・付加設備の方針により、新技術の開発を通してバリアフリーに最善の努力をするとし、障害者団体当事者の意見を丁寧に聞きながら公募を進めてきた一方、アンケートと討論会の実施について、障害者団体等当事者への説明が十分に行われたとはいえない。 ・また、障害者団体から伝えられていた懸念や意見に対して、十分な対応がされていなかった。 ・アンケートや討論会によって、相反する市民の意向を明らかにすることで、さらなる分断リスクが高まる可能性は想定できた。 ・市の施策方針決定のために必要としても、相反する意見を明確にした後に、市民の合意形成に向けた準備や検討がされていたとは言い難い。 ・広く市民の合意形成を得るのであれば、市民の分断とならないよう市の方針に理解を十分に求める対応が必要であったが、拙速に進めたことに問題があった。 ・昇降技術の設置に関するアンケートで、最上階が半数近いとの結果が判明した段階で、1階までという方針では、広く市民の合意形成を得ているとは言えない状態である。 ・アンケート結果を市長に報告した令和5年5月の段階で、合意形成に向けた努力の検討がされておらず、文化庁への提出が優先されていたと考えざるを得ない。 ・意見対立をある意味、助長したような状況下で、参加者に多数対少数という人権侵害が起きやすい構図で討論会を実施したことが遠因となった面は否定できない。 《囲み終わり》 第6.検証の総括 《囲み付きの空欄あり》 12ページ目 第7.再発防止に向けて取り組むべき事項 《囲み開始、囲み内黄色マーカー付》 (1)中間報告での提言【中間報告の記述を再掲】 ※その後の検討状況を確認し委員から助言があれば記載《囲み、マーカー終わり》 《囲み開始》 (2)名古屋市の人権に関する市民からの信頼回復に向けた提言 (以下改正案に対して検証委員会として提言) ア 障害者差別解消条例の改正 ・市の責務として、市職員対応要領を定め周知することを追加する。 ・市職員の責務として、市職員対応要領の遵守について追加する。 ・市職員、事業者及び市民の責務として、「意識のバリアフリー行動」を実践することを追加 する。 ・差別事案の当事者が市の場合も、差別相談の対象となることを明記する。 ・市を相手方とする差別相談に係る事案についても、助言又はあっせんの申立ての対象に含まれることを追加する。 イ 人権条例の制定 (資料6での検討結果として、以下に主なものを提言) ・前文で、人権が尊重される社会を構築する市と市民の決意を示すフレーズを明記する。   例:人権施策先導(先進)都市 ・社会構造的差別の解消のための積極的差別解消措置を市として積極的に行うとともに、事業者に推奨する。 ・人権施策に関する市の基本計画の策定を明記する。 ・NPOなど民間の人権擁護団体を育成・支援するとともに、連携・協働して人権擁護活動を行う。 ・市の情報発信のあり方として、市民が誤解し、偏見や差別が助長され人権侵害につながることがないよう、人権の視点で情報の質の保障に配慮する。 例:人権の視点からの情報発信の手引き作成など ・人権侵害に関する総合相談窓口開設と相談者の立場に立った必要な支援体制の整備を市に義務付けする。(複合差別などにも対応できる職員の能力や多様性に配慮) ・人権に関する市の取り組み等に関する調査や、市からの諮問答申、市への施策提言、市民の人権侵害事案に関する認定等を行うための専門的かつ第三者的な機能を確保した機関を設置する。 ・条例の趣旨を実現するために必要な予算の確保と人員体制の整備を義務付ける。 《囲み終わり》 参考資料