(資料9) 愛知県人権尊重の社会づくり条例(令和4年愛知県条例第3号) 目次 前文 第1章総則(第1条第4条) 第2章人権尊重の社会づくりに関する基本的施策等 第1節基本計画等(第5条・第6条) 第2節インターネット上の誹謗中傷等の未然防止及び被害者支援(第7条) 第3節本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進(第8条第13条) 第4節部落差別の解消に向けた取組の推進(第14条) 第5節性的指向及び性自認の多様性についての理解の増進等(第15条) 第3章愛知県人権施策推進審議会(第16条) 附則 全ての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。 これは、世界人権宣言にうたわれている人類普遍の原理であり、基本的人権を侵すことのできない永久の権利として全ての国民に保障している日本国憲法の精神にかなうものである。こうした理念の下に、全ての個人が自律した存在としてそれぞれの幸福を追求することができる社会を実現することは、県民の願いである。 本県は、これまで、人権教育・啓発に関する愛知県行動計画を策定し、人権が尊重され、差別や偏見のない郷土愛知の実現を目指して、人権に関する教育及び啓発を推進するとともに、愛知県男女共同参画推進条例、愛知県子どもを虐待から守る条例、愛知県障害者差別解消推進条例などを制定するほか、人権に関する課題に取り組んできた。 しかしながら、今もなお、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、社会的身分、門地、障害、疾病その他の事由による不当な差別が存在しており、また、インターネットの普及を始めとした情報化の進展、少子高齢化等の地域社会の変化、経済的格差の拡大等の経済社会の構造の変化などによって、人権に関する課題の複雑化及び多様化が進んでいる。 こうした不当な差別を始めとしたあらゆる人権に関する課題を解消していくためには、その解消に向けた取組をより一層推進するとともに、私たち一人一人が相互に人格と個性を尊重し合いながら支え合うことが必要である。 私たちは、このような認識を共有し、多様性を認め合う、誰一人取り残されることのない人権尊重の社会づくりのために、たゆまぬ努力を続けていくことを決意し、ここにこの条例を制定する。 第1章 総則 (目的) 第1条 この条例は、人権尊重の社会づくりについて、県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、人権尊重の社会づくりに関する施策(以下「人権施策」という。)の基本となる事項を定めること等により、人権施策を総合的かつ計画的に推進し、もってあらゆる人権に関する課題の解消を図るとともに、全ての人の人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とする。 (県の責務) 第2条 県は、人権施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 2県は、国及び市町村と連携を図りながら協力して、人権施策の推進に取り組むものとする。 (県民の責務) 第3条 県民は、家庭、地域、学校、職場その他の社会のあらゆる分野において、人権尊重の社会づくりに寄与するよう努めるとともに、県が実施する人権施策に協力するよう努めなければならない。 (事業者の責務) 第4条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、人権尊重の社会づくりに寄与するよう努めるとともに、県が実施する人権施策に協力するよう努めなければならない。 第2章 人権尊重の社会づくりに関する基本的施策等 第1節 基本計画等 (基本計画) 第5条 県は、人権施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権施策に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めるものとする。 2基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。 一人権施策についての基本的な方針 二前号に掲げるもののほか、人権施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 3県は、基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、愛知県人権施策推進審議会(第11条及び第12条において「審議会」という。)の意見を聴くとともに、県民の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする。 4県は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。 5前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。 (相談体制の整備) 第6条 県は、人権に関する相談に的確に応ずることができるよう、人権に関する相談に対応するための窓口の設置その他必要な体制の整備を行うものとする。 第2節 インターネット上の誹謗中傷等の未然防止及び被害者支援 第7条 県は、インターネットを利用して情報を発信する者の表現の自由を不当に侵害しないように留意しつつ、次に掲げる施策を講ずるものとする。 一インターネット上の誹謗中傷等(インターネットを利用した情報の発信で、誹謗中傷、プライバシーの侵害その他の人権を侵害することとなるものをいう。次号において同じ。)を未然に防止するために必要な教育、啓発その他の施策 二インターネット上の誹謗中傷等による被害者の支援を図るために必要な施策 第3節 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進 (啓発等) 第8条 県は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年法律第68号)第2条に規定する本邦外出身者に対する不当な差別的言動をいう。以下同じ。)の解消に向けて、国及び市町村と連携を図りながら協力して、その解消の必要性についての県民及び事業者の理解を深めるために必要な啓発その他の施策を講ずるものとする。 (公の施設に関する指針) 第9条 知事は、県が設置する公の施設において本邦外出身者に対する不当な差別的言動が行われることを防止するための指針を定めるものとする。 (公表) 第10条 知事は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する県民及び事業者の認識を深めることによりその解消を図るため、表現活動(県の区域内の道路、公園、広場その他の公共の場所における行進、示威運動その他の手段による表現行為をいう。以下同じ。)で本邦外出身者に対する不当な差別的言動であるものが行われたと認めるときは、当該本邦外出身者に対する不当な差別的言動の概要を公表するものとする。ただし、公表することにより本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消を阻害すると認められるときその他特別の理由があると認められるときは、公表しないことができる。 2 知事は、前項の規定による公表をするに当たっては、当該本邦外出身者に対する不当な差別的言動の内容が拡散することのないように留意しなければならない。 (審議会からの意見聴取等) 第11条 知事は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動である表現活動が行われた旨の申出があったとき又は行われたおそれがあると認めるときは、次に掲げる事項について、審議会の意見を聴かなければならない。ただし、当該申出に係る表現行為が行われたことその他当該申出に係る表現行為の内容が明らかでないとき又は当該申出に係る表現行為が本邦外出身者に対する不当な差別的言動である表現活動に該当しないと明らかに認められるときは、この限りでない。 一 本邦外出身者に対する不当な差別的言動である表現活動が行われたかどうか。 二 前号の表現活動が行われたと認められる場合にあっては、前条第1項ただし書に規定するときに該当するかどうか。 三 前条第1項ただし書に規定するときに該当しないと認められる場合にあっては、同項の規定による公表の内容 2 知事は、前項ただし書の規定により審議会の意見を聴かないこととしたときは、その旨を審議会に報告しなければならない。この場合において、審議会は、当該報告に係る事項について知事に意見を述べることができる。 (審議会の調査審議の手続) 第12条 審議会は、知事又は前条第一項の規定により調査審議の対象となっている表現行為に係る同項の申出をした者に意見書又は資料の提出を求めること、適当と認める者にその知っている事実を述べさせることその他必要な調査をすることができる。 2 審議会は、前項の表現行為を行った者に対し、相当の期間を定めて、書面により意見を述べる機会を与えることができる。 3 審議会は、必要があると認めるときは、その指名する委員に第1項の規定による調査をさせることができる。 (適用上の注意) 第13条 この節の規定の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由及び権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。 第4節 部落差別の解消に向けた取組の推進 第14条 県は、情報化の進展により部落差別に関する状況に変化が生じていることを踏まえ、部落差別の解消に向けて、国及び市町村と連携を図りながら協力して、地域の実情に応じ、部落差別に関する問題についての県民及び事業者の正しい理解を深めるために必要な教育及び啓発その他の施策を講ずるものとする。 第5節 性的指向及び性自認の多様性についての理解の増進等 第15条 県は、性的指向(自己の恋愛又は性愛の対象となる性別についての指向をいう。次項において同じ。)及び性自認(自己の性別についての認識をいう。同項において同じ。)の多様性についての県民及び事業者の理解を深めるために必要な教育、啓発その他の施策を講ずるものとする。 2 県は、その事務又は事業を行うに当たり、性的指向及び性自認の多様性に配慮するよう努めるものとする。 第3章 愛知県人権施策推進審議会 第16条 この条例の規定によりその権限に属させられた事項を行わせ、及び知事の諮問に応じ人権施策の推進に関する重要事項を調査審議させるため、愛知県人権施策推進審議会(以下「審議会」という。)を置く。 2審議会は、人権施策の推進に関する事項について調査審議し、知事に意見を述べることができる。 3審議会は、委員12人以内で組織する。 4委員は、学識経験のある者のうちから知事が任命する。 5委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 6委員は、再任されることができる。 7第3項から前項までに定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。 附則 (施行期日) 1 この条例は、令和4年4月1日から施行する。ただし、第9条から第12条まで、次項及び附則第4項の規定は、同年10月1日から施行する。 (経過措置) 2 第10条から第12条までの規定は、前項ただし書に規定する規定の施行の日以後に行われた表現行為について適用する。 3 この条例の施行の際現に県が人権施策の総合的かつ計画的な推進を図るため策定している人権施策に関する基本的な計画(人権教育・啓発に関する愛知県行動計画)は、第5条第1項の規定により定められた基本計画とみなす。 (出頭人の費用弁償等に関する条例の一部改正) 4 出頭人の費用弁償等に関する条例(昭和28年愛知県条例第4号)の一部を次のように改正する。 第1条に次の一号を加える。 21 愛知県人権尊重の社会づくり条例(令和4年愛知県条例第3号)第12条第1項の規定により審議会が適当と認めて出頭を求めた者