(資料13) 表紙 (仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について(答申) 令和5年(2023年)3月 相模原市人権施策審議会 1ページ はじめに 相模原市では、相模原市人権施策推進指針において、「一人ひとりが、かけがえのない個人として尊重され、お互いの人権を認め合う共生社会の実現」を基本理念に掲げ、人権施策の推進に取り組んでいる。 相模原市人権施策審議会は、この取組に、より実効性を持たせるよう、相模原市長から「(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について」諮問を受け、令和元年(2019年)11月から様々な課題に対し、多様な意見が出され、長期にわたり慎重に審議を進めてきた。 審議の結果、あらゆる不当な差別の解消を目指すためには、まず、人権尊重の理念の普及や理解を深めるための、人権教育・人権啓発という非規制的な施策をさらに拡充し、特に救済に関して第三者機関を設け、相談・支援と一体として取り組むことが最も重要であるとの共通認識を得た。 また、社会情勢や法整備の状況等を鑑みると、不当な差別的言動への対応として、声明の発出、規制的方法である公の施設の利用制限、拡散防止措置などを取り入れる必要があり、更に、著しい差別的言動及び悪質な犯罪扇動に対して、より厳しい措置を講ずるものとした。 以上の内容を主として、「(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について」を取りまとめたので、ここに答申する。 なお、規制的方法を取り入れる際は、日本国憲法の保障する表現の自由を不当に侵害することのないよう、特に留意されたい。 加えて、令和4年(2022年)の国連障害者権利委員会総括所見は、本市で発生した神奈川県立津久井やまゆり園事件について、優生思想・非障害者優先主義に基づく考え方への対処という観点から本事件を見直し、社会におけるこうした考え方の助長に対する法的責任を確保するよう国に勧告するなど、日本の取組姿勢が問われている状況の中、市長においては、そういった事件が起こった自治体であるからこそ共生社会の実現に向けて着実に前進するよう、本市の実情を鑑み、条例を制定することを要請するものである。 令和5年(2023年)3月 相模原市人権施策審議会 会長 矢嶋 里絵 2ページ 1 条例の名称について 条例の名称について、次のとおり意見があった。 (1)「相模原市差別のない人権尊重と共生のまちづくり推進条例」 (2)「相模原市差別解消推進条例」 (3)「一人の人権も守られる相模原市反差別人権条例」 (4)「相模原市人権尊重のまちづくり条例」 (5)「相模原市差別のない人権尊重のまちづくり条例」 2 前文について 前文は、条例の本条の前に置かれ、条例の制定の趣旨、目的、基本原則などを述べるものであり、本市では、市政全般にわたってその考え方が反映されるべき事項について定める条例などに前文を置く傾向がある。この点、(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例(以下「本条例」という。)は、市政全般にわたってその考え方が反映されるべき事項について定めるものであることから、前文を設けることとし、次のような内容を盛り込むものとする。 (1)世界人権宣言は、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」と謳い、日本国憲法も基本的人権の尊重をその基本原理としていること。 (2)人権は、国家をはじめとした公権力により侵害されてはならないことはもちろんのこと、私人間においても相互に尊重し合う必要があること。 (3)このような中、国際人権規約をはじめとした人権に関連する諸条約の締結や、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年(2001年)法律第31号)、児童虐待の防止等に関する法律(平成12年(2000年)法律第82号)、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年(2005年)法律第124号)、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年(2011年)法律第79号)、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年(2013年)法律第65号)、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年(2016年)法律第68号)、部落差別の解消の推進に関する法律(平成 3ページ 28年(2016年)法律第109号)及びアイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成31年(2019年)法律第16号)の施行など、人権に関連する法令の整備が進んでいること。 (4)しかし、女性、子ども、高齢者、障害者、本邦外出身者をはじめとした外国につながりを持つ者、性的少数者、感染症患者等への不当な差別又は虐待等の人権問題も顕在化していること。 (5)さらには、最近では、インターネット上での人権侵害等、新たな人権問題も発生していること。 (6)平成28年(2016年)に神奈川県立津久井やまゆり園で多くの尊い命が奪われるという、大変痛ましい許しがたい事件が起き、この事件は、障害者に対する不当な差別的思考に基づくヘイトクライムであり、決して容認することはできないものであり、この事件が起きた本市としては、改めてあらゆる人の生命と尊厳が守られ、安全で安心して暮らせる共生社会の実現に向けた取組が求められること。 (7)本条例は、以上を踏まえ、人権尊重の理念が行き渡り、一人ひとりがかけがえのない個人として尊重され、お互いの人権を認め合う共生社会を実現するために制定するものであること。 3 目的・基本理念について 平成14年(2002年)3月に策定し、平成31年(2019年)1月に改定した相模原市人権施策推進指針(以下「推進指針」という。)は、本市の人権施策の基本姿勢を示し、人権施策の全体像を明らかにするとともに、主要な人権分野における具体的施策の方向性を示している。推進指針において、「個人としての尊重とお互いを認め合うこと」とそれによる「共生社会の実現」が目標とされていること、また、関係団体へのヒアリング調査においても「個人として尊重されること」や、「人は皆平等であり、差別などをされないこと」が求められていることから、本条例の目的・基本理念として次のような内容を盛り込むものとする。 4ページ (1)目的 本条例は、基本理念を定め、並びに市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、人権施策の基本となる事項、不当な差別的言動への対応、救済のための機関の設置等について定めることにより、一人ひとりがかけがえのない個人として尊重され、お互いの人権を認め合う共生社会を実現することを目的とすること。 (2)基本理念(人権尊重のまちづくりを進めるための基本的考え方) 人権尊重のまちづくりは、誰もが一人ひとり異なる存在であることから、多様性を認め合い、不当な差別をなくし、お互いの人権を尊重し合うことを旨として実施されなければならないこと。 4 市の責務について 本条例の目的を達成するため、市の責務として次のような内容を盛り込むものとする。 (1)市は、基本理念にのっとり、不当な差別のない人権尊重のまちづくりのために必要な施策を推進し、共生社会の実現を図らなければならないこと。 (2)市は、人種、民族、国籍、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、障害、疾病、出身その他の事由を理由とする不当な差別を解消するための施策を推進しなければならないこと。 (3)市は、あらゆる施策の策定及び実施に当たっては、人権尊重の視点をもって取り組まなければならないこと。 5 市民及び事業者の責務について 共生社会の実現という本条例の目的を達成するためには、市が責務を負い施策を推進するだけでなく、市民及び事業者の取組も必要であることから、市民及び事業者の責務として次のような内容を盛り込むものとする。 (1)市民及び事業者は、市が実施する不当な差別のない人権尊重のまちづくりに関する施策に協力するよう努めなければならないこと。 5ページ 6 不当な差別的取扱いの禁止について 何人も他者の人権を侵害することは許されないことから、誰もが負う責務として次のような内容を盛り込むものとする。 (1)何人も、人種、民族、国籍、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、障害、疾病、出身その他の事由を理由とする不当な差別的取扱い(※)をしてはならないこと。 ※ 「不当な差別的取扱い」について、条約や他市の条例における規定を参考としたうえで、どのような行為がそれに当たるのかについても明らかにすること。 7 推進指針について 推進指針は、本市の人権施策の基本姿勢を示し、人権施策の全体像を明らかにするとともに、主要な人権分野における具体的施策の方向性を示すものである。推進指針の条例上の位置付けを明らかにすることで、推進指針に基づく人権施策がより一層推進されるようにするため、次のような内容を盛り込むものとする。 (1)推進指針は、法的根拠のない任意の指針となっていることから、法的根拠を本条例に設け、推進指針を策定すること及び今後推進指針に基づき人権施策を展開していくことを市の義務とすること。 (2)市は、推進指針にのっとり、人権施策に係る基本計画を策定するなど具体的、計画的に人権施策を実施すること。この場合において、市民意識調査及び実態調査の結果を踏まえること。 (3)推進指針の策定・変更をする際は、相模原市人権施策審議会の意見を聴かなければならないこと。 (4)推進指針の策定・変更をした際は、速やかに公表すること。 8 人権教育・人権啓発について 推進指針においては、その基本姿勢として「人権教育・人権啓発の推進」を掲げ、施策の基本として位置付けている。人権教育及び人権啓発は、人権尊重のまちづくりを進め、共生社会の実現を図る上で最も基本的で重要な施策で 6ページ あることから、次のような内容を盛り込むものとする。 (1)市は、市職員、市民及び事業者への人権教育及び人権啓発を行うこと。 (2)市は、市民がその発達段階に応じて人権についての理解を深めるため、多様な機会を活用して人権教育及び人権啓発を行うこと。 (3)市は、(仮称)人権推進協力団体に認定・登録した市内企業、民間団体、学術団体等と連携・協力するなど、人権教育及び人権啓発がより効果的なものとなるようにすること。 《囲み開始》人権教育=人権尊重の精神を養うことを目的とする教育活動 人権啓発=市民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する市民の理解を深めることを目的とする人権教育以外の広報その他の啓発活動《囲み終わり》 9 相談・支援体制の充実及び救済機関について 人権を侵害されている人の救済に関しては、法務局の人権擁護機関等もあるが、多種多様な相談窓口があった方が被害者にとってより救済を求めやすい。このため、市は、相談・支援・救済を一連の施策として進めるため、相談・支援体制の充実のほか、市民に身近な救済機関の設置について次のような内容を盛り込むものとする。 (1)市は、人権侵害に関する相談・支援体制の充実に取り組むこと。具体的には、市民の相談を受けるため、ワンストップ窓口を設け、当該窓口と各専門窓口が連携し相談に応じる総合的な相談・支援体制を整備し、その周知に努めること。 ア 相談の例 外国人向けの相談、高齢者虐待に関する相談、いじめに関する相談、ドメスティック・バイオレンスに関する相談、性的指向・性自認に関する悩み等の相談、障害の種別等に応じた相談、感染症に関する相談、自殺予防電話相談などの相談に加え、不当な差別的取扱い、不当な差別的言動に関する相談など イ 支援の例 救済機関の紹介、自立支援、情報取得支援、意思疎通支援、就労支援、 7ページ 学習支援、ピアカウンセリングなどのグループカウンセリングの紹介などの支援に加え、裁判支援(訴訟費用の援助を含む。)など (2)相談対応では解決が困難な場合においては、救済を図るため、被害者の申出等(第三者による申出及び職権を含む。)を契機として、救済機関(相模原市人権委員会)において関係者等への調査や調整、加害者への説示などができる仕組みを設けること。 (3)相談に応じる際、その相談者のプライバシーが確保される環境を整えなければならないこと。 (4)人権に関する相談に対応する職員に対し、当該相談に対応するために必要な知識を習得するための研修等を受ける機会を設けるよう努めること。 (5)相談、支援及び救済に要する費用を措置するものとすること。 10 多様な主体と連携した取組について 多様化、複合化する人権課題に対応し、効果的な啓発活動や専門的な相談体制を構築するには、市だけではなく、多様な主体と連携して対応することが重要である。そこで、市は、多様化及び複合化する課題に対応するため、各課題に関連する関係行政機関、市民、事業者、当事者団体、支援団体、関係団体等と連携を図り、効果的な人権啓発及び人権教育並びに包括的な相談・支援となるように次のような取組をするものとする。 (1)不当な差別をなくしていくという市の姿勢について賛同を表明した市内企業、民間団体、学術団体等を(仮称)人権推進協力団体として認定・登録することで、顕在化させ、そのような社会規範を醸成していくこと。 (2)認定・登録制度を作る際は、相模原市人権施策審議会が一定の関与をするようにすること。 (3)市は、認定・登録を推進するためのインセンティブ等についても検討すること。 (4)(仮称)人権推進協力団体は、人権教育・人権啓発をする際のカリキュラム、コンテンツなどの作成及び実施に関与し、活動状況について報告すること。 (5)市は、個々の(仮称)人権推進協力団体から報告をされた活動状況を他の団 8ページ 体と共有すること。 (6)事業者が設置している相談窓口等との連携や、当事者団体、支援団体が行う相談・支援と連携を図ること。 (7)不当な差別を解消するため、必要な場合に、インターネットサービスプロバイダと連携していくこと。 11 相模原市人権委員会について 市は、附属機関として相模原市人権委員会(以下「人権委員会」という。)を設置することとし、次のような内容を盛り込むものとする。 (1)目的 不当な差別的取扱いを受けている人の救済及び不当な差別的言動の解消を図ることにより、人権尊重のまちづくりを推進し、もって本条例の目的を達成すること。 (2)組織 人権委員会の組織は、次のとおりとすること。 ア 委員の定数は、5〜7人以内とすること。 イ 委員は、人権に関する豊かな経験を持ち、中立性及び専門性を有する者とすること。 ウ 委員には、法曹実務家を含むこと。 エ 委員の性別に偏りが生じないようにするなど、多様性の確保に向けた配慮を行うこと。 オ 委員の任期の始期をずらすことによって、任期が完全に重複することがないようにし、委員の知見や経験が引き継がれるよう配慮すること。 カ 委員長を置き、委員長は、人権委員会を統括すること。 キ 委員長は、相模原市人権施策審議会の委員と兼務すること。 ク 独自の事務局を置くこと。 ケ 事務局には、人権について専門性を有する職員を置くこと。 コ 専門相談員及び専門調査員を置くこと。 (3)権能 人権委員会の権能は、次のとおりとすること。 9ページ ア 不当な差別的取扱いを受けている人の申出等(第三者による申出及び職権を含む。)を契機として、救済を行うこと。 イ 不当な差別的取扱い及び不当な差別的言動の解消のため、必要な調査及び審議等を行うこと。 ウ 不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進に関する重要事項について、市長の諮問に応じて調査審議し、その結果を答申すること。 (4)手続 人権委員会がとる手続は、次のとおりとすること。 ア 救済 不当な差別的取扱いを受けている人の申出等(第三者による申出及び職権を含む。)を契機として、関係者等への調査や調整、加害者への説示等を行うこと。 イ 声明 (ア)市民からの情報提供に対して遅滞なく市長に通知すること。 (イ)深刻で不当な差別事案について市長が声明を発出する際、市長の諮問に応じて調査審議し、その結果を答申すること。 (ウ)市長に声明を発出するよう意見を建議すること。 (エ)必要に応じて、情報提供者が意見を述べる機会を設けること。 ウ 公の施設の利用制限 (ア)市民からの情報提供に対して遅滞なく市長に通知すること。 (イ)不当な差別的言動が行われることが見込まれる場合に市長が公の施設の利用制限を行う際、市長の諮問に応じて調査審議し、その結果を答申すること。 (ウ)必要に応じて、情報提供者が意見を述べる機会を設けること。 エ 拡散防止措置 (ア)市民からの情報提供に対して遅滞なく市長に通知すること。 (イ)不当な差別的言動に関する表現活動について、市長が必要な拡散防止措置を講ずる際、市長の諮問に応じて調査審議し、その結果を答申すること。 (ウ)必要に応じて、その不当な差別的言動に関する表現活動を行った者及 10ページ び情報提供者が意見を述べる機会を設けること。 オ 不当な差別的言動の禁止 (ア)市民からの情報提供に対して遅滞なく市長に通知すること。 (イ)市長が、不当な差別的言動を禁止することについての勧告、命令、公表及び罰則を適用する際には、市長の諮問に応じて各々の手続において調査審議し、その結果を答申すること。 (ウ)必要に応じて、その不当な差別的言動に関する表現活動を行った者及び情報提供者が意見を述べる機会を設けること。 (5)その他 ア 活動状況について、毎年度報告書を作成し、公開すること。 イ 市長は、人権委員会の答申等を尊重すること。 ウ 市長は、勧告、命令、公表等の対応について、人権委員会に報告すること。 12 相模原市人権施策審議会について 相模原市人権施策審議会の機能として、新たに次のような内容を盛り込むものとする。 (1)推進指針の策定・変更に関して審議すること。 (2)本条例の見直しに関して審議すること。 (3)本条例の施行に関して意見を建議すること。 (4)(仮称)人権推進協力団体の認定・登録・取消の基準に関して審議すること。 (5)(仮称)人権推進協力団体の認定・登録・取消に関して報告を受けること。 13 不当な差別的言動について [参考:16ページ別図] 不当な差別的言動への対応については、表現の自由に配慮しつつ、次の内容を盛り込むものとする。なお、啓発・教育、相談も講ずべき対策であることはもちろんであるが、この答申においては、別に独立した項目を設けているため、そちらを参照するものとする。 (1)声明 深刻で不当な差別事案が市内で発生した場合において、それが許されな 11ページ いものであるとの立場を市が明確にし、これを無くしていくため、市長は、必要に応じて声明を発出すること。声明を発出する際の手続について、次のとおりとすること。 ア 市長は、人権委員会が受けた市民からの情報提供に対して声明を発出するかの検討を遅滞なく行うこと。 イ 市長は、緊急時を除き、人権委員会に意見を聴くこと。 ウ 人権委員会は、市長から諮問があった場合は、定められた期間内に答申すること。 エ 人権委員会が市長に声明を発出するよう求めることができるようにすること。市長は、その求めに応じない場合は、人権委員会に理由を説明しなければならないこと。 オ 極めて緊急を要する場合は、人権委員会の諮問を経ずに、市長は声明を発出すること。この場合、事後的に人権委員会に報告すること。 カ 人権委員会の判断により、情報提供者に意見を述べる機会を設けることができるようにすること。 (2)公の施設の利用制限 不当な差別的言動が行われることが見込まれる場合の公の施設の利用制限についての基準を定めること。なお、基準を定める場合は、次の点に留意すること。 ア 他都市(京都府、東京都、川崎市)の例や最高裁判例(平成7年(1995年)3月7日最高裁第3小法廷判決、平成8年(1996年)3月15日最高裁第2小法廷判決)を踏まえ定めること。 イ 市長は、人権委員会が受けた市民からの情報提供に対して公の施設の利用制限の実施についての検討を遅滞なく行うこと。 ウ 公の施設の利用制限を行う場合は、人権委員会に意見を聴くこと。 エ 利用制限をする場合は、次のいずれかの場合が考えられる。 (ア)人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身(部落差別に係るものに限る。13において同じ。)を理由とする不当な差別的言動が行われることが客観的な事実に照らし、具体的に明らかに予測される場合 12ページ (イ)人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身を理由とする不当な差別的言動が行われる蓋然性が高いことによる紛争のおそれがあり、施設の管理上支障が生じるとの事態が、客観的な事実に照らし、明らかに予測され、警察の警備等によってもなお混乱を防止できないことが見込まれるなど特別な事情がある場合 オ 人権委員会の判断により、情報提供者に意見を述べる機会を設けることができるようにすること。 (3)拡散防止措置 不当な差別的言動が拡散されることは、共生社会の実現に悪影響を与えることから、次のような措置を講ずること。 ア 対象となる表現活動 対象となる表現活動は、人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身を理由とする不当な差別的言動に関するものとし、東京都の例を参考に、集団行進及び集団示威運動並びにインターネットによる方法その他手段により行う表現活動のうち、次に掲げるものとすること。ただし、「その他」では、表現者の予測可能性を損ない、委縮効果をもたらすことにつながるため、大阪市の例を参考に印刷物、光ディスク等について具体化すること。 (ア)市の区域内で行われた表現活動 (イ)市の区域外で行われた表現活動(市の区域内で行われたことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの a 市民に関するもの b a以外の表現活動で、市の区域内で行われた表現活動の内容を市の区域外から市の区域内に拡散するもの イ 措置・公表など (ア)市長は、人権委員会が受けた市民からの情報提供に対して拡散防止措置を講ずるかの検討を遅滞なく行うこと。 (イ)アの表現活動について、市長は、緊急時を除き、人権委員会の意見を聴いた上で、必要な拡散防止措置を講ずるとともに、当該措置を講じたときは、次に掲げる事項を公表すること。 13ページ a 不当な差別的言動に該当する旨 b 表現活動の概要 c 拡散防止措置の内容と措置を講じた年月日 d その他市長が必要と認める事項 また、人権委員会の判断により、その表現活動を行った者及び情報提供者に意見を述べる機会を設けることができるようにすること。 (4)不当な差別的言動の禁止 不当な差別的言動の禁止について次のとおり規定すること。 ア 対象となる場所・手段・表現内容の類型 対象となる場所・手段・表現内容の類型は次のとおりとすること。なお、(3)拡散防止措置の対象と(4)不当な差別的言動の禁止の対象で重複する部分があるが、これらの措置は、規制の強度の違いから両方を適用することが可能である。 (ア)場所 市の区域内の道路、公園、広場その他の公共の場所とすること。 (イ)手段 @拡声器(携帯用のものを含む。)の使用、A看板、プラカードその他これらに類する物の掲示、Bビラ、パンフレット、その他これらに類する物の配布とすること。 (ウ)表現内容の類型 侮辱、排除、犯罪扇動とすること。 イ 対象範囲・強度 人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身を理由とする不当な差別的言動について公表すること。そのうち、著しい差別的言動及び悪質な犯罪扇動については (ア)秩序罰を科す (イ)秩序罰又は行政刑罰を科す の両論があった。 ※ 罰則については、(ア)と(イ)の両論併記とする。 ※ 罰則の適用は、2〜3年程度凍結することもあり得る。 14ページ ウ 手続 公表、秩序罰又は行政刑罰に先立ち、勧告、命令を順次行うこととし、市長は、人権委員会が受けた市民からの情報提供に対して措置を講ずるかの検討を遅滞なく行うこと。また、勧告、命令及び公表をする際には、人権委員会に意見を聴くこと。この場合、人権委員会の判断により、その表現活動を行った者及び情報提供者に意見を述べる機会を設けることができるようにすること。 14 意識調査・実態調査について 差別や人権侵害の状況は世情により変わり得ることから、市は、人権施策に反映するため調査を行うこととし、次のような内容を盛り込むものとする。 (1)市は、明確な目的を持って、以下の調査を行うこと。 ア 市民の意識を把握し、主として教育・啓発の方向性を決めるために5年を目途に行う意識調査 イ 差別や人権侵害の現況を正確に把握し、救済のための施策の在り方を探るために必要に応じて行う実態調査 (2)各調査の目的を果たすため、調査結果を公表し、施策の改善に反映させ、その結果の要因を分析することで更に施策の充実を図ること。 (3)人権施策の充実を図るため、国内外における先進事例等の情報収集を積極的に行うこと。 15 条例の見直しについて 本条例は、次のように見直すものとする。 (1)見直しに当たっては、人権施策の運用状況、人権課題等を勘案すること。 (2)最初の見直しの検討は、3年を目途に行うこと。 (3)見直しに当たっては、相模原市人権施策審議会の意見を聴くこと。 (4)インターネット上の不当な差別的言動については、国の動向等を見ながら、より実効的な方策を継続して検討すること。 15ページ 16 相模原市人権施策審議会としての要望について 相模原市人権施策審議会として、次の事項を市長に対し要望する。 (1)国に対して、ヘイトクライムに関する法律を制定するよう働きかけを行うこと。 (2)国に対して、差別を禁止するための法律を制定すること及び国内人権機関を設立することに関して働きかけを行うこと。 (3)答申に基づいて施策を着実に確実に進めること。 16ページ 別図 不当な差別的言動への対応について 《以下、フロー図により日常から実施する対応と事案発生時の対応を示す》 《下線始まり》日常から実施《下線終わり》 啓発・教育 認定・登録 声明 意識調査・実施調査 条例の見直し 《下線始まり》事案発生 相談 拡散の防止→(人権委員会への意見聴取・人権委員会による調査)→拡散を防止するための措置及び公表 言動の禁止→(人権委員会への意見聴取・人権委員会による調査)→勧告→(人権委員会への意見聴取・人権委員会による調査・弁明の機会の付与)→命令→(人権委員会への意見聴取・人権委員会による調査)→(意見陳述・証拠提示の機会)→公表 《命令→(人権委員会への意見聴取・人権委員会による調査)から分岐して》→《下線始まり》【著しい差別的言動及び悪質な犯罪扇動の場合】《下線終わり》→(告知・弁明の機会の付与)→秩序罰(過料)または刑事告発/行政刑罰 声明→(人権委員会への意見聴取・人権委員会による調査)→声明 公の施設の利用制限※利用制限を行う場合は、人権委員会へ意見聴取 17ページ 検討経過 《以下、18ページまでかけて表形式で検討経過記載。日程と会議等の名称、議題等について記載あり。》 日程:令和元年度(2019年度)11月13日 会議等:第2回人権施策審議会 議題等: ・諮問 ・(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について 日程:11月20日〜12月11日 会議等:ヒアリング調査 議題等: ・(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例に規定すべき内容等について関係団体にヒアリング調査 日程:1月31日 会議等:第3回人権施策審議会 議題等: ・(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例に関するヒアリング結果について ・(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例に規定すべき内容について 日程:令和2年度(2020年度)8月18日 、2月9日、3月23日 会議等:第1回、第2回、第3回人権施策審議会 議題等: ・(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例に規定すべき内容について 日程:令和3年度(2021年度)5月21日、9月24日、11月21日、1月25日 会議等: 第1回、第2回、第3回、第4回 人権施策審議会 議題等 ・(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例に規定すべき内容について 18ページ 《前ページ続き》 日程:令和3年度(2021年度)3月1日 会議等:第5回 人権施策審議会 議題等 ・(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例に規定すべき内容について ・その他について 日程:令和4年度(2022年度)4月27日、5月25日、6月8日、6月28日、7月15日、7月29日、8月27日、9月24日、10月19日、11月29日、12月21日、1月31日、2月23日 会議等:第1回〜第13回人権施策審議会 議題等 ・(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例に規定すべき内容について 19ページ 《相模原市長から相模原市人権施策審議会会長あての諮問文書添付あり。以下、内容をテキスト化する。》 F0・4 ・ 8 令和元年11月13日 相模原市人権施策審議会 会長 矢嶋里絵 様 相模原市長 本村 賢太郎 印 (仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について(諮問) このことについて、次のとおり諮問します。 1 諮問事項 (仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について 2 理由 本市では、人権尊重のまちづくりを実現するため、平成31年1月に相模原市人権施策推進指針を改定し、「一人ひとりが、かけがえのない個人として尊重され、お互いの人権を認め合う共生社会の実現」を基本理念に掲げ、人権施策の推進に取り組んでいます。 こうした取組に、より実効性を持たせ、偏見や差別のない人権尊重のまちづくりを進めるため、(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について諮問するものです。 3 答申希望時期 令和2年9月 以上《諮問文書終わり》 20ページ 相模原市人権施策審議会 委員名簿 1 任期:令和元年(2019年)6月〜令和3年(2021年)5月 1 氏名:岩永良子 所属等:特定非営利活動法人かながわ女のスペースみずら 2 氏名:片岡加代子 所属:特定非営利活動法人相模原市障害児者福祉団体連絡協議会 3 氏名:金子匡良 所属:法政大学法学部 4 氏名:金愛蓮 所属:さがみはら国際交流ラウンジ運営機構 5 氏名:工藤定次 所属:一般社団法人神奈川人権センター 備考:副会長 6 氏名:齊藤愛 所属:千葉大学法政経学部 7 氏名:鶴田恵美 所属:公募市民 8 氏名:三代宏次 所属:相模原人権擁護委員協議会 9 氏名:矢嶋里絵 所属:東京都立大学人文社会学部 備考:会長 2 任期:令和3年(2021年)6月〜令和5年(2023年)5月 1 氏名:岩永良子 所属等:特定非営利活動法人かながわ女のスペースみずら 2 氏名:大貫薫 所属:相模原人権擁護委員協議会 3 氏名:片岡加代子 所属:特定非営利活動法人相模原市障害児者福祉団体連絡協議会 4 氏名:金子匡良 所属:法政大学法学部 5 氏名:金愛蓮 所属:さがみはら国際交流ラウンジ運営機構 6 氏名:工藤定次 所属:一般社団法人神奈川人権センター 備考:副会長 7 氏名:齊藤愛 所属:千葉大学法政経学部 備考:令和3年(2021年)5月〜令和3年(2021年)8月 8 氏名:竹村優 所属:公募市民 9 氏名:辻雄一郎 所属:明治大学法学部 備考:令和3年(2021年)9月〜令和5年(2023年)5月 10 氏名:矢嶋里絵 所属:東京都立大学人文社会学部 備考:会長