(資料1-5) 表紙 特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画(案) 目次 目 次 本 編 第1章 木造天守復元の概要 (1)計画策定の目的 (2)特別史跡名古屋城跡の概要 (3)特別史跡名古屋城跡保存活用計画 (4)本丸整備基本構想 (5)天守整備基本構想 (6)整備推進体制 第2章 石垣等遺構の保存 (1)天守台の遺構と遺物 (2)御深井丸地下遺構 第3章 現天守閣の記録の保存と記憶の継承 (1)現天守閣の概要 (2)現天守閣の評価 (3)現天守閣の記録の保存と記憶の継承 第4章 復元の根拠資料 (1)復元根拠資料の採用方針 (2)遺構 (3)遺物 (4)古写真 (5)近代実測図 (6)摺本・拓本 (7)古絵図 (8)文献史料 (9)復元根拠資料を用いた復元原案の考え方 第5章 復元時代の設定 (1)復元時代の設定の考え方 第6章 復元原案の考証 (1)復元原案の規模・各部の主な仕様 (2)各部の検討 (3)復元原案図 第7章 現天守閣の解体・木造天守復元時における仮設計画 (1)現天守閣解体と木造天守復元に伴う仮設計画 (2)現天守閣解体方法 (3)仮設物設置による石垣等遺構への影響検証 第8章 復元計画と活用 (1)復元計画 (2)公開活用 図面編 第1章 復元計画 (1)計画概要 (2)透視図 (3)復元計画図 (4)仮設計画図 第2章 現天守閣 (1)概要 (2)現況図 《第1章〜第7章省略》 第8章 1ページ 第8章 復元計画と活用 (1)復元計画 前章までに述べてきた通り、豊富な史資料等に基づき往時の姿が明らかとなった天守を復元する本事業は、特別史跡の本質的価値を高め、さらにその理解促進のための活用を目的としたものであり、その目的達成のためには天守台及び復元した天守内部に観覧者をいれることが必要不可欠である。 そのため、復元においては特別史跡の本質的価値を持つ遺構の保存を前提としつつ、天守台及び天守本来の構造、意匠、機能などの再現に加えて、観覧者の安全対策、バリアフリ−を含めた観覧環境の整備も併せて行う必要があり、第6章で示した復元原案にこれらの対策・整備を付加・反映して実際に復元する天守を復元計画として次の通りまとめた。 @建築計画 ア屋根 イ大天守の金鯱 ウ小天守の鯱 A構造計画 ア基本的な考え方 イ構造性能の検討方法 ウ目標性能 エ構造解析モデルの概要 オ基礎構造の検討 カ構造補強 B防災・避難計画 ア防災・避難計画の基本的な考え方 イ安全な避難経路確保のための避難設備、区画、排煙、防災設備について Dバリアフリ− ア段差解消 イ階段手摺の付加等 ウサイン計画 エスロープ計画 C設備計画 ア概要 イ設備ルート図 ウ照明計画 E完成後の維持保全・修繕計画 ア運営管理の組織体制 イ維持管理の組織体制 ウ修繕計画 第8章 2ページ @建築計画 第6章でまとめた復元原案に基づき、原則として旧来の材料・工法による旧状再現を図るが、建築としての基本性能を高めるために、仕様の付加等を行う項目、現天守閣から継承して利用する項目について以下に示す。 ア屋根 (ア)本瓦葺の葺き方・防水 a葺き方 荷重を軽減し、木下地の腐朽を防ぐことで屋根の耐久性を向上させるために空葺きとする。大天守の1、2階の側柱は、復元原案の軸組検証で明らかになったように通し柱が多用されており、付庇のように外壁に取り付いた構成であるため、屋根荷重の影響は大きく、古写真でも側柱が管柱から通し柱に変わる部分で、屋根面のたわみを確認できる。この対策の一つとしてとして空葺きとすることで荷重を軽減する。また瓦の隙間から侵入した雨水による葺土の湿潤状態が木下地の腐朽の原因の一つであることから空葺きとして屋根の耐久性向上を図る。 b防水 瓦の隙間から雨水が侵入した場合、葺土が無いために屋根下地の表面を流れ落ちやすく、軒先の瓦座裏側に溜り、軒廻り材の内側からの腐朽、 軒先に塗りこめられた漆喰の剥落を招くことが想定される。 そのため屋根内部での確実な防水性能確保のために土居葺を竪板張りと屋根下葺材(ルーフィング)に代 用する。また瓦座裏側に雨水が至る前に排出するために軒平瓦と平瓦の間に捨て銅板を挿入する。 《大天守初重断面図の添付》 (イ)銅瓦葺 銅瓦葺きの下地仕様は、宝暦大修理関連資料「仕様之大法」及び「銅葺野地之図」よりわかり、伝統工法の防水層である土居葺きは設けられず、野地板を2重張りとした上に直接、銅瓦を葺き重ねている。野地板は、ずらしながら張り重ねた流し板張りとして、これを防水層としていたと考えられる。 復元計画では、気候変動により強まる傾向にある降雨強度、また一般的な伝統建築に比べ、かなり高い建物高さによる風圧の影響を考慮する必要がある。その対策として、復元原案の野地板二重張りの下地構成と銅瓦の重ね葺きを踏襲しながら、野地板の上に屋根下葺材(ルーフィング)を付加する。また、銅瓦重ね葺きでの重ね寸法は、復元原案を基に風圧を考慮した雨水進入の実証実験を行い、そのデータをもとに判断する。 《銅瓦葺き断面図の添付》 第8章 3ページ (ウ)仕上の考え方 《大天守外観の変遷(一部推定を含む)について、慶長築城時・宝暦大修理前・宝暦大修理後・経年変化後の4段階について4枚の絵図を用いて図示》 慶長の築城時から宝暦大修理前までについて、初重から4重の本瓦葺、5重の銅瓦葺きを全面的に葺き替えた記録はなく、従って宝暦大修理前の大天守の姿は、初重〜4重の本瓦葺きは経年変化により濃灰、黒色となっており、5重は全面的に緑青が出た状態だったと考えられる。 宝暦大修理後の屋根及び妻壁の修理内容は、5重の銅瓦葺きの仕上以外は、宝暦大修理関連資料『仕様之大法』により詳細に確認ができる。『仕様之大法』では行った改修内容を詳細に記録していることから、従って、記録していないことは行っていないと考え、その場合、5重の銅瓦は緑青が出た状態のままであったこととなる。 また、銅板は手跡等がすぐに酸化、黒変するため素地は好まれず、黒色塗としていたとされる。従って、築城時の5重は黒色塗の銅瓦で、その後、酸化による黒変のムラを露呈させずに次第に緑青に至ったと考えられる。その後に、葺き直し、塗り直しがなされていない事から、緑青は修理・改修すべき対象とは見なされておらず、宝暦大修理でも、5重は緑青のままとされていたと推測した。 これらの考察を総合的に勘案し、宝暦大修理後の5重は緑青が出たままの状態と考えられると判断した。 以上の考え方に基づき、復元計画での屋根仕上を定めるにあたり、復元が完成した時点で緑青が出た状態は不可能であるため、5重屋根は銅板素地として、復元後の一定の時間経過により2重〜4重より先に緑青が出て宝暦大修理後の姿となり、さらに時間が経過することで2重から5重の全てが緑青の状態となる外観意匠とし、エイジングが時間の堆積を可視化することで建築にその歴史を刻む過程を尊重した。 なお、完成時点で緑青の状態とするには人工緑青銅板が方法の一つとして考えられる。その場合、緑青への酸化が進行しづらいはずの軒下、妻壁面で人工緑青色が保持され、黒チャン塗もしくは銅板素地の場合からの自然なエイジング過程の場合の黒色部分、緑青色部分と逆転した不自然な状態となる。また、ある程度の経年後に屋根面の人工緑青が自然な緑青に置き換わった時点でも、本来、緑青まで酸化しづらい軒下、妻面が均一に緑青化している状態となる。これは時間の堆積の可視化として極めて不自然な状態となるために採用しない。 (エ)銅瓦葺(大天守2重〜4重)の仕上 aチャン塗について 宝暦大修理関連資料『仕様之大法』により2重から4重の銅瓦、棟、鬼板、妻壁は黒チャン塗であったことがわかっている。チャン塗は、まだ実施事例が少なく、またその製作方法も試行錯誤を重ねている段階であり事例により様々である。 以下、チャン塗の概要、事例と今回行った促進耐侯試験による経年変化の検証を示す。 ■概要(出典:窪寺茂「伝統的な塗料の再認識−17,18世紀台頭のチャン塗技法研究−」 2012年『建築文化財における塗装材料の調査と修理』東京文化財研究所) ・17世紀中頃から塗装技法の一つとして認識され、その後18世紀を通じて日本全土に普及したと考えられる ・明治以降、西洋文化の流入に伴い、いわゆるペンキが普及していき、チャン塗は途絶 ・成分としては荏油や桐油などの植物性油に松脂を加えたものを溶剤とし、これに顔料を混合したもの ■経年変化の仕方 促進耐侯試験により、銅板に塗ったチャン塗の経年変化を確認した。 ・黒チャン塗の他に伝統的な塗材である黒色油塗(植物性油に顔料を混合したもの)と現代塗料(アクリル樹脂塗装)で10年相当の促進耐侯試験を行い経年による変化の仕方を比較した ・現代の塗料は変化無く進むが、10年相当近くで塗膜表面に細かな亀裂が入った。この後は亀裂面から雨水が入り急速に層状に剥離が進行すると考えられる ・黒チャン塗と黒油塗は極めてゆっくりと粉状劣化し、見え方はそのままで塗膜厚が次第に薄くなっていく 以上より、銅瓦に現代塗料を塗った場合に起こる不具合は、黒チャン塗、黒油塗では起こらず、ゆっくりと塗膜厚が薄くなりながら、ある程度薄くなった段階からはポーラス状の塗膜に侵入した水分により銅瓦の酸化も同時に進行し、やがて緑青に置き換わっていくと考えられる。 第8章 4ページ b黒チャン塗、黒色油塗の実施例 保存修復工事での黒チャン塗、黒油塗の実施事例を以下に示す。 ■銅板への黒チャン塗 ・妻沼聖天山勧喜院(国宝)修復工事[平成15年(2003)〜平成23年(2011)]:銅瓦葺に黒チャン塗 ・出雲大社 平成の大遷宮:御本殿(国宝)の銅板部(棟、鬼板、千木、鰹木、妻飾等)を黒チャン及び緑チャン塗 ■黒色油塗 ・日光山輪王寺 三仏堂(重要文化財) 平成の大修理[平成19年(2007)〜平成30年(2018)]:銅瓦葺に黒油塗 常行堂(重要文化財) 修理工事 [昭和45年(1970)〜昭和50年(1975)]:銅瓦葺に黒油塗 c2重〜4重の仕上 aでの検証と名古屋城大天守の屋根が前述の事例と比べ、その面積において相当大きく必要な数量のチャンを安定的に製作する方法が確立できていないことから、伝統的な塗材であり、比較的大きな面積への塗装実績と経年変化が確認できている黒油塗を、チャン塗の代替として採用する。 以上の内容を経年変化による外観(屋根面)の変遷(想定)を以下に示す。 《4枚のCG図(@ 復元直後→A5重の銅瓦が酸化した状態→B5重の銅瓦に緑青が発生した状態(宝暦大修理後の様子)→C2〜5重の銅瓦に緑青が発生した状態)を添付の上、大天守屋根の経年変化(想定)を示す》 イ 大天守の金鯱 昭和実測図と現天守閣金鯱の図面を重ね合わせ、古写真と3Dスキャンデータの重ね合わせにより、現天守閣の金鯱は高い精度で外観が復元されていることがわかる。また、令和3年に金鯱を降ろした際に行った目視による外観および青銅製下地の目視調査では大きな問題は認められていない。従って戦後の再建にかけた市民等の想いを継いでいくバトン・シンボルとして、現天守閣の金鯱を継承して利用する。 なお、今後、現天守閣解体後に金鯱の詳細な調査を行い、必要な措置を行う 《金シャチの古写真と現天守閣金シャチの下地型3Dスキャンデータの2つを添付した上で、古写真と現天守閣金鯱の下地型3Dスキャンデータを重ね合わせた図も添付》 ウ 小天守の鯱 文献史料より土瓦の鯱であったが、その姿・形は不明である。 古写真、昭和実測図として記録されている鯱は、江戸城より移設された青銅製の鯱である。現小天守閣の鯱は、これを高い精度で復元しているため、大天守の金鯱と同様に現小天守閣の鯱を継承して利用する。 《名古屋城総合事務所所蔵ガラス乾板写真「小天守閣(焼失)棟上銅鯱(西方)}を添付》 《現天守閣再建時設計図「鯱詳細図」の図面を添付》 第8章 5ページ A構造計画 復元する天守は建築基準法と同等の構造安全性を有するものとする。そのために建築基準法第3条を適用し、指定性能評価機関である一般財団法人日本建築センター(BCJ)による構造安全性について性能評価を受ける。 なお、現天守閣解体後に穴蔵石垣の現状を正確に把握するための調査を行い、その調査結果を踏まえ、天守台の具体的な修復・整備方法と合わせた構造計画、基礎構造の手法を改めて検討し、その上で確定していくこととし、ここでは基本的な考え方を示す。 ア基本的な考え方 はじめに復元原案の構造性能を検討する。検討の結果、復元原案の構造性能が不足する場合には、復元原案に付加する形で補強計画を行い復元計画とする。補強をする場合はできる限り復元原案の意匠を損なわない構造補強を図る。 イ構造性能の検討方法 復元する天守は複雑な形状の天守台に支持されているため、天守台の特性を反映させた地震波の作成が必要にとなる。作成した地震波を構造解析モデルに入力することにより構造性能を検討する。(時刻歴応答解析) ウ目標性能 目標とする構造性能を表-8.1.1に示す。復元する天守は伝統的構法を用いた木造であるため、初期剛性は低いが、大変形まで耐力を保有する構造特性を持つ。構造性能の目標値は、参照する基準に基づき、中地震時の最大層間変形角を1/60以下、大地震時の最大層間変形角を1/30以下とする。また、耐風性能ては極めて稀に発生する暴風時での最大層間変形角を1/30以下とする。 《以下、表形式で建築基準法と同等の構造性能について具体的な想定を記載》 1次設計(中地震時)稀に発生する地震(数十年に1度程度) 震度 震度5強程度 最大層間変形角 1/60 土壁 亀裂を生じ、塗り替えが必要となることがある 部材応力 短期許容応力度以下 支持力 短期許容支持力以下 安全性 安全に退避できる 2次設計(大地震時)極めて稀に発生する地震(数百年に1度程度) 震度 震度6強程度 最大層間変形角 1/30 土壁 大きな亀裂を生じる 部材応力 終局強度以下 支持力 極限支持力以下 安全性 生命に重大な影響を及ぼさない 暴風時 極めて稀に発生する暴風(数百年に1度程度) 震度 - 最大層間変形角 1/30 土壁 - 部材応力 終局強度以下 支持力 極限支持力以下 安全性 生命に重大な影響を及ぼさない《表終わり》 ■参照する基準、規準、指針 ・建築基準法、同施行令、国土交通省告示 ・「2020年版建築物の構造関係技術基準解説書」 国土交通省住宅局建築指導課他監修 日本建築センター ・「重要文化財(建造物)耐震診断指針 2012年」 文化庁 ・「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説 2010年」 (社)日本建築学会 ・「木質構造設計規準・同解説 2006年」 (社)日本建築学会 ・「建築基礎構造設計指針・同解説 2001年」 (社)日本建築学会 ・「伝統的な軸組工法を主体とした木造住宅・建築物の耐震性能評価・耐震補強マニュアル(第2版)2014年」 (一社)日本建築構造技術者協会関西支部 エ 構造解析モデルの概要 復元する木造天守は軸部材からなる三次元フレ−ムにモデル化する。各部材は軸方向変形、曲げ変形およびせん断変形を考慮している。主な耐震要素である接合部、外壁土壁については実大試験体による構造実験により把握した耐震性能を以下のようにモデル化する。 ・接合部は、めり込みを考慮した回転剛性を評価する。 ・外壁土壁は剛性と耐力を合わせたブレース置換によりモデル化を行う。 ・側柱通りの竪羽目板壁は、下地に通し貫が2段〜3段配置されており、この通し貫の、めり込みを考慮した回転剛性を評価する。 オ 基礎構造の検討 基礎構造を検討するにあたり、天守台と天守の荷重関係について、その変遷と、木造復元でのあり方・課題を整理し図-8.1.7に示す。 《天守台と天守の荷重関係の変遷と木造復元天守での課題について3枚のイメージ図を添付し説明》 《イメージ図1枚目》 @焼失前 ・昭和20年に焼失するまで存在した木造天守 ・入側部を含めて天守の荷重はすべて天守台にかかっていた 《イメージ図2枚目》 A 現状 ・戦後再建のSRC造 ・焼失前の木造天守に比べてSRC造天守閣の重量が大きいため、石垣に荷重をかけない吊り構造を採用し、その荷重はすべて天守台内に構築したケーソンで支持している 《イメージ図3枚目》 B木造復元天守 【課題】 ・天守内の観覧者の安全確保(人命尊重) ・入側部を含めて木造天守の荷重を天守台で支持しない ⇒木造天守の荷重をすべて既存ケーソンで負担する基礎構造が必要 (ア)基礎構造検討の基本的な考え方 ・文化庁が定める『史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準』を遵守する ・江戸期からの姿を残す文化財である天守台本来の遺構には新たに手を加えないことを原則とし、その上で可能な限り史実に忠実な復元を行う ・熊本地震での熊本城の被災状況を鑑み、人命の安全確保を第一とし、木造天守は大地震時に安全性が担保できない可能性のある天守台で支持しない基礎構造とする 【基礎構造の検討にあたっての留意点】 ■天守台石垣の現況を踏まえ基礎構造の検討を行う ・江戸期から残る石垣、戦後積み替えられた石垣、新補石材により復元された石垣の範囲など、現状を正確に把握する ・往時の姿に復することを検討する ■大地震時における外部石垣及び内部石垣の崩壊に対する観覧者の安全確保を前提とした基礎構造の検討を行う ■観覧者の安全確保のための防火・避難及び耐震対策、観覧環境、景観に配慮した基礎構造の検討を行う (イ)基礎構造の検討側について 上記の「基礎構造検討の基本的な考え方」に基づき、現天守閣解体前であることから穴蔵石垣の詳細な調査ができていない状況での基礎構造の検討例を次頁の表-8.1.2に整理した。 例Aには穴蔵外周部の木造天守復元柱の中間に鉄骨柱を追加設置(付加)、また、例Bには穴蔵外周部の木造天守復元柱に替えて鉄骨柱を設置(置換)することで天守台石垣内に基礎構造を設置せず、天守入側部の荷重を支持する方法の検討例を示した。 例Cには江戸期の石垣等遺構の確実な保存を前提とし、穴蔵石垣内部の戦後改変された範囲内に柱状の鉄筋コンクリ−トの基礎構造を埋設設置し、天守入側部の荷重を支持する方法の検討例を示した。 第8章 6ページ 基礎構造検討例比較表 例A【穴倉外周部鉄骨柱設置(付加)】 基礎構造の概要 ◇既存ケーソン上部にマットスラブ(厚さの大きいRC床板)を設置 ◇天守入側部の荷重を支持する鉄骨柱と鉄骨片持梁をマットスラブに固定 ◇《下線始め》鉄骨柱は、穴倉外周部の復元柱の間に追加設置(付加)《下線終わり》 ◇鉄骨片持梁は、石垣天端から浮かした位置で鉄骨柱に固定 ◇鉄骨柱にはたわみ防止のため水平ワイヤー設置 (RC:鉄筋コンクリート) <共通> ・江戸期の遺構は確実に保存する ・木造天守の荷重は既存ケーソンで支持する ・木造天守入側部分の荷重は、天守台で支持せず、ケーソンに伝達する ・大地震時に万が一石垣が崩れた場合でも木造天守は倒れず、観覧車の安全は確保する イメージ図 《大天守の地階の平面図と大天守断面図を添付。断面図の柱及び梁と石垣接地部分に鉄骨柱及び鉄骨梁を付加する記載あり。》 例B【穴倉外周部鉄骨柱設置(置換)】 基礎構造の概要 ◇既存ケーソン上部にマットスラブ(厚さの大きいRC床板)を設置 ◇天守入側部の荷重を支持する鉄骨柱と鉄骨片持梁をマットスラブに固定 ◇《下線始め》鉄骨柱は、穴倉外周部の復元柱に替えて設置(置換)《下線終わり》 ◇鉄骨片持梁は、石垣天端から浮かした位置で鉄骨柱に固定 ◇鉄骨柱にはたわみ防止のため水平ワイヤー設置 (RC:鉄筋コンクリート) <共通> ・江戸期の遺構は確実に保存する ・木造天守の荷重は既存ケーソンで支持する ・木造天守入側部分の荷重は、天守台で支持せず、ケーソンに伝達する ・大地震時に万が一石垣が崩れた場合でも木造天守は倒れず、観覧車の安全は確保する イメージ図 《大天守の地階の平面図と大天守断面図を添付。断面図の柱及び梁と石垣接地部分に鉄骨柱及び鉄骨梁を置換する記載あり。》 例C【石垣内RC柱設置】 基礎構造の概要 ◇既存ケーソン上部にマットスラブ(厚さの大きいRC床板)を設置 ◇天守入側部の荷重を支持するRC柱とRC片持床版をマットスラブと一体で設置 ◇《下線始め》RC柱は、石垣の戦後に改編された範囲内に埋設接地《下線終わり》 ◇RC片持床版は、石垣天端から浮かした位置でRC柱に固定 (RC:鉄筋コンクリート) <共通> ・江戸期の遺構は確実に保存する ・木造天守の荷重は既存ケーソンで支持する ・木造天守入側部分の荷重は、天守台で支持せず、ケーソンに伝達する ・大地震時に万が一石垣が崩れた場合でも木造天守は倒れず、観覧車の安全は確保する イメージ図 《大天守の地階の平面図と大天守断面図を添付。断面図の柱及び梁と石垣接地部分にRC柱及びRC片持床版を設置する記載があり、また石垣内部に現代工法でRCを埋設する旨の記載あり。》 第8章 7ページ (ウ)木造天守の基礎構造の方針 木造天守の基礎構造の検討については、特別史跡として江戸期からの姿を残す石垣等遺構の確実な保存と、特別史跡としての本質的価値の向上と理解促進にとってより有意義な天守台の修復及び天守の復元とするために、石垣等遺構の残存状況及び安定状況を正確に把握することが必須である。 そのため、第2章の図-2.1.8で示した範囲で発掘調査を実施したところ、根石付近には近世の盛土が残り、本来の姿をとどめているものの、近世期の築石と戦後の積み直し石垣の間に土砂が挟まるなど、積み方に問題がある他、背面も栗石に代わり土砂が見られるなど、状況が悪いことを把握した。 しかしながら、これまで実施してきた現況把握調査は現天守閣が存立する状態での実施となることから、安全性や作業環境の確保の制限などにより限界があり、遺構の残存状況及び石垣の安定状況を把握できた範囲は局所的に留まらざるを得ない状況である。 今回、復元する天守の基礎構造として「木造天守基礎構造の基本的な考え方」に基づき、これまでの現状把握の調査結果を踏まえて、現時点において実現可能と想定できる検討例を整理したが、具体的な基礎構造の手法は、現状を正確に把握するための調査を現天守閣解体後に実施し、その調査結果を踏まえた工学的な検証の上、石垣の安定性、観覧者の安全確保の対策のための具体的な天守台の修復・整備方法と合わせ、改めて検討し、その上で確定するものとする。 (エ)基礎構造の目標性能 上記の方針に基づく基礎構造の検討において目標とする性能を前頁の表-8.1.1に示す。中地震時の部材応力が短期許容応力度以下、大地震時、暴風時の部材応力が終局強度以下であることを確認する。また、基礎に生じる支点反力が短期許容支持力以下または極限支持力以下であることを確認する。 (オ)現天守閣のケーソン基礎 現天守閣はケーソン基礎(図-8.1.9)に支持されているが、石垣等遺構を確実に保存しながら、このケーソン基礎を撤去することは不可能である。従って復元する天守の基礎として引き続き使用することの可否の検討が必要となるが、これまでに実施した調査により以下のことを確認した。 ・地中に埋設されており、コンクリ−トの中性化が進んでいないことから十分な耐用年数が期待できる ・コンクリ−トの強度を確認し、構造上の問題がない ・大天守および小天守の直下で地盤調査を行い、現天守閣の再建当時の設計図書にある地盤調査結果と概ね同等の結果となった。大天守および小天守のケーソンは、柱状図から支持できる地盤に到達しており、安定している 以上より、木造復元天守の重量は現天守閣の重量を超えないことから、ケーソン基礎を引き続き使用して天守の復元を行うことは可能であると判断した。 オ 構造補強 天守に近接する本丸御殿の復元の際に行われた地盤調査結果に基づく模擬地震波により予備解析を行い、復元原案の構造性能を検討した結果、目標とする構造性能(表-8.1.1)を満足していない。 そこで以下に示す補強方法により、目標とする構造性能を満たす対策を行う。なお、基礎構造が確定した後、改めて構造解析を行い、その結果に基づき補強方法を改めて検討し、その上で確定するものとする。 (ア)補強方法 主な補強方法として床板の補強、板壁内でのダンパ−による補強の方針とする。 ■ダンパ−設置位置の考え方 復元原案の見え掛りに影響を与えないよう 粘弾性ダンパ−を板壁の下地部に設置する。設置部のイメ−ジを右図(図-8.1.8)に示す。 《ダンパー設置位置の考え方として、基礎構造の写真と立面図、断面図が添付されている》 《ページ右半分に現天守閣ケーソン基礎平面図・断面図の図面添付。大天守・小天守ともに中央にケーソン基礎躯体部があり、ケーソン内の空洞についても推定含め記載あり。》 第8章 8ページ B防災・避難計画 連立式天守である名古屋城天守は、小天守のみが直接地上に通じる構成であるため、大天守、小天守を一体的にみなした防災・避難計画とし、復元原案への防災・避難設備の付加により、観覧者の安全を確保する 既に第三者機関である一般財団法人日本建築センター(BCJ)及び消防設備安全センタ−の審査を受け、評定書が発行された防災・避難計画の概要を以下に示す。 ア 防災・避難計画の基本的な考え方 復元原案では以下の防災・避難上の課題がある。 ・外部からの火熱には外壁が漆喰塗の大壁、屋根が本瓦及び銅瓦葺きであるため、ある程度の延焼防止・遅延効果が期待できるが、内部の火災による煙の流動抑制、延焼防止効果が弱い。 ・内部及び外部への避難ルートが限られている。大天守からの避難経路は、橋台・小天守地階を経由して、地上へと避難する経路1ヶ所のみとなる。 上記課題に対し次の対策1〜4を講じ、対策の効果を避難計算等により検証し、観覧者が安全に避難できることを確認した。 ■対策1 避難安全性の確保 現存・復元天守には入場する人数に上限を設けることによって安全性を担保している例もあるが、名古屋城天守は規模が大きく多数の入場者も見込まれることもあり、3階から4階の間に階段を1ヶ所付加する。なお、4階から5階へは史実に忠実な意匠を確保するため階段の付加はせず、係員による厳格な入場制限を行い避難可能人数を超えないようにする。ただし、 4階から5階へは表階段1ヶ所のみであることから、5階入側に救助袋式避難ハッチを設置し下階への二方向の避難経路を確保する 。また、小天守も入場制限を行い、避難可能人数を超えないようにする。 ■対策2 出火防止・初期消火 木造天守であるため復元原案のままでは出火すれば火災が制御できないほど大きくなる恐れがある。対策として、大・小天守各所に煙感知器等を配して火災の早期発見に努めるほか、開館時間には、適所に係員と消火器・屋内消火栓を配置し、また夜間や休業日にはITV(監視カメラ)による遠隔からの監視を行い、火災の早期発見に努める。このほか、スプリンクラーや屋内消火栓等を付加して初期消火及び火災の制御を図る。 ■対策3 火災被害拡大防止 姫路城と同程度の対策1、対策2だけでは火災時にスプリンクラーが作動しても、発生する煙が避難や救助に支障を及ぼすことが十分に考えられる。そのため、史実に忠実な意匠に配慮しながら、蓄煙や自然排煙を行う。 ■対策4 安全な避難経路の確保 階段は、火災時に煙の拡散経路にもなることから、大天守北東部にある階段のある部屋と、それ以外の部屋や入側を、板壁や板戸もしくは感知器連動で自動閉鎖する建具を付加することによって、煙に汚染されない避難経路を確保する。 《ページ右半分に「防災・避難設備の付加による対策」として大天守及び小天守の断面図を添付した上で、各対策の実施場所を図示》 対策1 避難安全性の確保 ・3〜4階には、木造階段を1ヶ所付加 (御成階段の延長) ・4〜5階、小天守1・2階は、係員による入場制限 ・5階に救助袋式避難ハッチ設置 対策2 出火防止・初期消火 ・煙感知器、係員および消火器の配置 ・ITV等による遠隔監視 ・スプリンクラー、屋内消火栓等設置 対策3 火災被害拡大防止 ・蓄煙、自然排煙利用 対策4 安全な避難経路の確保 ・遮煙性能を確保した表階段による避難経路の確保 ・遮煙区画による上階への煙の上昇を抑制 第8章 9ページ (ア)出火防止・初期消火 ■徹底した出火(失火、放火)防止策 ・直火を利用する設備の不設置。 ・周囲の壁・柱等の木材への引火温度以下となるよう、展示物等の可燃物量を管理。 ・天守入場者の持ち物検査を行うなどによる、放火への対策。 ・ITVや係員の目視による危険物・可燃物の天守への持ち込み防止や、不審者、不審行動の監視。 ・小天守地階や天守外でも同様の対策による放火・不審火対策の徹底。 ■早期の火災覚知、及び通報対策 ・煙感知器や熱感知器などによる早期の火災感知。 ・感知器はアドレス式、プレアラームとし、火災発生場所を早期に特定。 ・火災感知の情報は非常放送設備に送られる他、防災拠点に火災表示されると同時に、火災通報設備により消防機関に自動通報。 ■屋内火災の初期消火対策 ・各階に消火器・屋内消火栓(大天守)の設置、大・小天守全館にスプリンクラーを設置。 ・開館時に係員が初期消火に対応できるよう、各階に消火器(大・小天守)、屋内消火栓(大天守)は一人で操作可能な広範囲2号消火栓を設置し、容易な消火活動を可能とする。 ・スプリンクラーは非火災作動時の水損被害の抑制と早期の初期消火を両立するため、感知器の火災信号による予作動を組み合わせたシステムとする。 (イ)避難誘導計画・煙制御 ■適切な在館者数の管理 ・入場者数管理により通常観覧時の混雑緩和を図るほか、非常時の避難の混乱を防ぐ。大天守全体の管理の他、 特に5階は4階と一体的に管理・誘導し、階段の上り・下りを切替えての交互昇降をする等の入場者数管理も行う。 ・大天守の最大同時在館人数は2500人を上限とする。大天守各階毎の最大在館者人数は、2500人を「各階同一数」または「各階同在館者密度」で配分した場合の多い数値を超えないこととする。 ・階段で避難することが困難な人の人数は、表階段のある部屋内の待避スペース以下となる管理をする。 ・小天守は通常時、地階のみを大天守への動線通路として開放するなど、適切な入場者数管理を行う。 ・大天守への入場待ちの行列は小天守の外とし、大天守・小天守内での滞留を生じさせない。 ■安全な避難経路の確保 ・大天守からの避難は小天守を経由するが、大天守と小天守とは十分な離隔距離があり、それをつなぐ橋台は屋外に開放されているため、消防法上・建築基準法上は延焼のおそれのない別棟とみなす。 ・大天守3階から4階にいたる階段を1ヶ所付加し、1階から4階まで南・北2ヶ所の階段を確保する。 ・避難動線は[ 各部屋→入側→表階段 ]を基本とした避難誘導を行う。 ・大天守北東角にある表階段を主な避難用階段とし、避難完了までの間、煙の流入を抑えるように固定もしくは感知器連動閉鎖機能を持った板戸等の建具を付加することで遮煙性能を確保し、必要な避難時間を担保する。 ・大天守御成階段および表階段の床開口には、史実としてある摺戸への感知器連動閉鎖機構を付加により上階への煙の流入を防止する。 ・小天守で出火した場合、上階への早期の煙上昇を防ぐために、固定もしくは感知器連動閉鎖機能を持った板戸あるいは摺戸(階段開口部)を一部に付加して遮煙性能を確保し、必要な避難時間を確保する。 ・避難検証では、急勾配・高齢者を想定した実証実験に基づく階段の歩行速度、出口通過時間を採用し、安全性の確認した。階段の不均一な寸法、勾配についても踏み外し防止対策を講じる。 ・外部への避難がしやすいように下足はロッカーに預けず手持ちにて入場するとともに、階段の手すりを握れるよう片手が空く配慮をする。 ・大天守4階表階段内で出火した場合、階段が1ヶ所しかない5階からの二方向避難を考慮し、5階入側床に4階への救助袋を設置する。 ■ 窓開口等の利用による火災時の自然排煙 ・大天守、小天守の外壁窓を火災時の自然排煙窓として利用する。 《表階段の遮煙性能を確保した避難誘導計画として2階を例にした各界の避難誘導ルートの平面図と大天守の断面イメージ図を添付。平面図上、外壁窓を自然排煙口とし建物内から建物外へ煙が流れる旨と二階の入側を通って表階段に避難誘導を行う旨が矢印で示され、断面図上では各階の避難者が区画された表階段を通って地階に降り、橋台へ脱出する旨が矢印で示されている。》 (ウ)消防支援・救助計画 ■消防隊の進入経路を確保 ・はしご車が近寄れるよう、大天守東側にスペースを確保し、大天守東面の窓の竪格子を一部ケンドン式として外部から開放可能にすることで、消防隊の代替進入口とする。 ・5階屋根面にはしご車の架梯に対応する展張式の金属はしごを常設し(通常時は収納)、救助活動時に活用する。 ・近接する小天守と本丸御殿の延焼防止対策として放水銃を設置する。 ■歩行困難者、逃げ遅れ者への対策 ・歩行が困難な人、逃げ遅れた人への対策として、大天守には消防隊の救助まで一時待機が可能な待避スペースを設ける。 ・避難補助具等を各階に常備する。 ■防災拠点の整備 ・天守の内外に防災拠点を整備する。 第8章 10ページ イ 安全な避難経路確保のための避難設備、区画、排煙について 前頁で挙げた対策の内、安全な避難経路確保のために付加する階段、遮煙区画及び排煙について以下に示す。 ■避難経路の付加 ・1階〜4階の2方向避難を確保するため、3階から4階への階段を1ヶ所付加する。 (下図、右図:赤色実線部、詳細は図-8.1.22に示す) ・5階の2方向避難を確保するため、救助袋式避難ハッチを1ヶ所付加する。 (下図、右図:青色塗りつぶし部、納まり詳細は図-8.1.25に示す) ■排煙・遮煙 ・排煙は外壁の窓からの自然排煙とする。 ・復元原案で表階段・御成階段の床開口にある摺戸を感知器連動閉鎖式とし、上階への煙伝搬防止をはかる。 (下図:赤点線部) ・1階〜5階の床は上階への煙伝播防止のため遮煙区画とする。(下図:床 黄色線部、納まり詳細は図-8.1.27に示す) ■表階段(大天守北東部)を遮煙区画化(下図、右図:緑色塗りつぶし部 ) ・大天守北側の表階段を「避難用階段」として使用できるよう、表階段がある部屋を遮煙区画とする。 ・1階〜4階は、板壁、板戸、階段踊り場の竪格子開口に遮煙性能を付加する。(納まり詳細は図-8.1.30に示す) ・表階段がある部屋への出入口を、常開・感知器連動閉鎖の建具とする。(図-8.1.13の 赤三角) 《表階段の遮煙区画(断面図)として大天守断面図を添付。1階〜4階は橋台と反対側の壁面そばの表階段部分が緑色塗りつぶしされ、地階については地階全体が黄色縁取り緑色塗りつぶしされている。》 《表階段の遮煙区画と避難経路確保の付加要素の配置図として、大天守の地階〜1階〜5階までの平面図の計6図を添付。 大天守2階→表階段にあたる北東区画が緑色塗りつぶしされており、当該塗りつぶしそばに常開・感知器連動閉鎖の建具を示す赤三角が1つある。 大天守1階→表階段にあたる北及び北東区画が緑色塗りつぶしされており、当該塗りつぶしそばに常開・感知器連動閉鎖の建具を示す赤三角が一つある。 大天守地階→表階段にあたる北及び北東区画〜橋台までの区画が緑色塗りつぶしされており、当該塗りつぶしそばに常開・感知器連動閉鎖の建具を示す赤三角が五つある。 大天守5階→緑色塗りつぶしなし。北東部に避難はしごの展帳位置(通常は収納)が、西部に救助袋式避難ハッチの設置説明あり。 大天守4階→表階段にあたる北東区画が緑色塗りつぶしされており、当該塗りつぶしそばに常開・感知器連動閉鎖の建具を示す赤三角が一つある。また、南東の区画に付加階段を設置する旨の説明あり。 大天守3階→表階段にあたる北及び北東区画が緑色塗りつぶしされており、当該塗りつぶしそばに常開・感知器連動閉鎖の建具を示す赤三角が一つある。》 第8章 11ページ ■防災・避難計画で付加する機能(床・壁) 前頁までに示した防災・避難計画のために付加(床・壁)する機能を各階平面図に示す。(図-8.1.14〜図-8.1.21) 《地階遮煙区画図として地階の平面図(ドア・扉の位置及び開き方図付)を添付》 第8章 12ページ 《1階遮煙区画図として1階の平面図(ドア・扉の位置及び開き方図付)を添付。屋内消火栓位置、分電盤位置等についても図示。》 第8章 13ページ 《2階遮煙区画図として2階の平面図(ドア・扉の位置及び開き方図付)を添付。屋内消火栓位置、分電盤位置についても図示。》 第8章 14ページ 《3階遮煙区画図として3階の平面図(ドア・扉の位置及び開き方図付)を添付。屋内消火栓位置、分電盤位置についても図示。》 第8章 15ページ 《4階遮煙区画図として4階の平面図(ドア・扉の位置及び開き方図付)を添付。屋内消火栓位置、分電盤位置についても図示。》 第8章 16ページ 《5階遮煙区画図として5階の平面図、屋根伏図を添付。屋内消火栓位置、避難梯子、救助袋設置場所についても図示。》 第8章 17ページ 《小天守地階・1階遮煙区画図として小天守の地階及び1階の平面図(ドア・扉の位置及び開き方図付)を添付。》 第8章 18ページ 《小天守2階遮煙区画図として小天守の2階の平面図、屋根伏図を添付。》 第8章 19ページ ■3階から4階への付加階段 1階〜4階の2方向避難を確保するために3階から4階に1ヶ所付加する階段の詳細を下図に示す。(図-8.1.22) 《3階〜4階 付加階段詳細図として3階と4階の平面図及び階段断面図4図を添付。》 ■付加手摺 階段に付加する手摺の詳細と復元原案にある摺戸(煙感知器連動機能付加)と付加手摺の関係を下図に示す。(図-8.1.23) 《階段付加手摺及び摺戸(水平遮煙区画)として手すりの平面図1図、断面図2図を添付。》 第8章 20ページ ■救助袋(5階) 大天守の4階〜5階は表階段1ヶ所のみであることから、 2方向の避難経路を確保するために設置する救助袋の詳細(図-8.1.24)を下図に示す。 《大天守5階 救助袋として救助袋の収納部の構造及び寸法と大天守5階床から4階床まで救助袋が下りる想定を計4図で図示》 ■消防支援 消防隊進入口の腰壁高さを1100mm以下とするために設置する消防隊進入口窓下踏台(1階〜4階の東面)と5階屋根面へのはしご車の架梯に対応するために設置する避難梯子の収納部詳細(図-8.1.25,図-8.1.26)を下図に示す。 《大天守 消防隊進入口 窓下踏台として避難梯子の収納部詳細を計2図で図示》 《大天守5階 避難梯子収納箱として避難梯子収納部の構造及び寸法と梯子の長さ等について3図で図示》 ■遮煙区画を形成するための納まり 大天守の各階の床及び表階段を含む部屋を遮煙仕様とするための詳細を下図に示す。(図-8.1.27〜30) 《床板での遮煙区画の方法として計3図を用いて床板の継ぎ方を図示》 《間仕切壁での遮煙区画の方法として計2図を用いて壁板の継ぎ方を図示》 《板戸での遮煙区画の方法として、平面図と断面図の計2図を用いて遮断材の位置を図示》 《間仕切壁の竪格子での遮煙区画の方法として図面2図と姿図1図のと計3図を用いて設置場所と寸法を図示》 第8章 21ページ ■吊環 大天守の各重に復元原案で設置されている吊環の配置立面図と消防隊進入及びメンテナンスのために吊環を使用するために必要な強度を確保するための詳細を下図に示す。(図-8.1.31) 《大天守屋根の吊環配置立面図及び吊環詳細図として大天守南面(北面も同じ配置とする)、大天守東面(西面も同じ配置とする)の2図で吊環の配置場所が示され、また吊環の設置部の縦断面図によりその構造も示されている。》 第8章 22ページ ■防災設備機器配置図 各階の見上げに設置する防災設備機器の配置とスプリンクラ−の包含範囲を下図に示す。(図8.1.32〜33) 《各階防災設備機器配置図及びスプリンクラ−包含範囲(1)として、地階平面図と1階平面図によりスプリンクラ−の包含範囲が示されている。地階については橋台を除く部屋すべてが、1階については入側及び部屋が包含範囲となっている。》 第8章 23ページ 《各階防災設備機器配置図及びスプリンクラ−包含範囲(2)として、2階平面図〜5階平面図の計4図によりスプリンクラ−の包含範囲が示されている。いずれの階についても入側及び部屋が包含範囲となっており、3階及び4階については入側から壁面方向にある畳部屋についても包含範囲になっている。》 第8章 24ページ 《囲み開始》「平成3年3月30日建設省住指発第128号 地方公共団体が文化財として指定した伝統建築物に対する防火及び構造安全性評価指針 (3) 伝統建築物の評価指針 3) 近隣への延焼防止 オ 隣接建築物が非常に近接している場合等で、(略)、輻射受熱が10Kw/u以下とすることが相当に困難な場合には、屋外用(屋根、壁、窓、入口)のドレンチャ−設備を設ける。《囲み終わり》 《放水範囲平面図及び立面図の2図により、本丸御殿と隣接する小天守の南西部一帯が放水範囲になる旨を図示》 第8章 25ページ ■避雷設備配置立面図 《避雷設備配置立面図として、東側立面図及び南側立面図の2図を用いて避雷針位置と銅線部、設置極位置等を図示》 第8章 26ページ ■避雷設備配置平面図 《避雷設備配置屋根伏図として、大天守及び小天守の銅線のルートと既設設置極の接続位置を図示》 防災設備 付加する防災設備の機能のフロ−を以下に示す。《防災機能フロー図としてフロー図添付あり。フロー図始まり》 (防災機能の流れ) @火災発生→A感知・通報・警報→B避難・誘導→C避難補助・煙制御→D初期消火→E本格消火 (防災設備) @火災発生の防災設備として避雷設備を設置 A感知・通報・警報時には防災設備のITVと自動火災報知設備(注意表示・火災表示)を設置。なお、通報は消防機関(消防指令センター)にもなされることで、E本格消火につながる。 B避難・誘導には非常放送と非常照明・誘導灯を設置 C避難補助・煙制御には煙感連動遮煙戸と排煙口・遮煙区を設置 D初期消火には消火器、屋内消火栓、スプリンクラー設備を設置《フロー図終わり》 ・防災設備は各階に設置する。(※ 避雷設備は大・小天守の屋根に設置) ・屋内消火栓・スプリンクラー設備:システム評価にあたって名古屋市消防の指導により、大天守には両方設置。小天守はスプリンクラー設備のみ設置 ・隣接する本丸御殿と小天守の延焼防止対策として放水銃を設置。 ・放水銃の作動は防災拠点(24時間)での手動 ・消防機関へ通報する火災報知設備は地階に設置 ・自然排煙口としての各階窓は手動にて開放する ・非常電源は専用受電とする 第8章 27ページ C設備計画(大天守・小天守共通) (ア)電気設備 ■受変電幹線設備 名古屋城第一変電塔から高圧分岐し、内苑売店東側に受変電設備を設置する。以降、必要箇所に低圧にて電力供給する。 ■電灯設備 分電盤は設置位置や仕上げ面について目立たないように配慮する。要所にコンセントを計画する。照明は器具を直接見せない間接照明主体とし、必要に応じてコンセント電源もしくはバッテリー対応の照明器具を計画する。外部にスイッチを計画し、夜間などの閉館時は通電しない運用を可能とし、漏電対策を施す。 ■防災照明・誘導灯 非常照明・誘導灯を設置する。 ■電話・情報設備 電話用アウトレットは小天守監視室に計画する。情報用(LAN)アウトレットは要所に計画する。 ■放送設備 非常放送兼用型アンプを小天守地階監視室に計画する。案内放送が大・小天守全体に可能なように要所にスピーカーを設置する。日本語・英語・中国語・韓国語対応とする。 ■自動火災報知設備 消防法に基づき自動火災報知設備を計画する。受信機は開館時間にスタッフが常駐する小天守地階監視室に計画する。合わせて、内苑警備室、名古屋城総合事務所に発報が確認できる計画とする。 感知器については天井に煙感知器を主体に計画する。 ■監視カメラ設備 混雑状況等の把握や防犯に配慮して要所に監視カメラを設置する。表示モニタは小天守地階監視室、内苑警備室、名古屋城総合事務に計画し映像確認可能とする。 ■避雷設備 JIS A 4201-1992に準拠して計画する。頂部に突針を設置し、雷保護を行う。接地は既存接地極を利用する。 (イ)給排水衛生消火設備 ■衛生設備 トイレをはじめとする水廻りは復元天守に設置しない計画とする。来館者は最寄りの内苑売店に併設されたトイレ等、名古屋城内にある既設のトイレを利用する運用とする。 ■消火設備 初期消火対策を重視して、スプリンクラー設備を大・小天守全館に設置する。合わせて管理者等が消火活動可能なように屋内消火栓(広域2号型)も計画する。 避難器具の設置緩和のシステム評価(日本消防設備安全センター)のため、大天守には補助散水栓もしくは屋内消火栓設備の設置を計画する。 小天守と本丸御殿との間の「延焼の恐れのある範囲」には、放水銃(平成3年3月30日住指発128『「地方公共団体が文化財として指定した伝統建築物に対する防火及び構造安全性評価指針」について』別添3、(3)Bオ、によるドレンチャー設備の代替かつ消防法令による消防用設備等の基準に適合するもの)を設置する。 これら消火設備の水源として、内苑売店東側にタンク式消火水槽(ポンプ室付)を計画する。 (ウ)空調換気設備 来場者の体調不良対応など、一時休憩室を想定して、小天守地階監視室にパッケージ型空調、機械換気設備(3種換気)を計画する。その他のエリアは空調換気設備は設置しない。 天守内温度計測、小天守地階監視室で監視できるように温度監視システムを計画する。 機械排煙設備は計画しない。 第8章 28ページ イ 設備ルート図 (ア)内苑外構 設備ルート図 内苑外構 設備ルートは既設埋設ルートの利用もしくは地上露出とし、新たな掘削は行わない。 《内苑外構設備ルート図として大天守と小天守、その余本丸御殿や守衛室など含めた周辺の平面図を添付し、消火・放水・電気・空調の配置や埋没配管ルートを図示》 第8章 29ページ (イ)内苑外構設備機器および目隠壁詳細図 《以下、「内苑外構設備機器および目隠壁詳細図」として複数図面により各設備機器の詳細を示す。@天守キュービクルについては平面図・断面図・立面図の3図の添付あり。構造と各部の材質記載あり。A放水銃用消火水槽については平面図と断面図の2図の添付あり。Bスプリンクラー用消火水槽については、平面図と断面図の2図の添付あり。C塀については断面図と立面図の2図の添付あり。併せて@〜Cの位置がわかる平面図も添付あり。》 第8章 30ページ (ウ)城内設備ルート図(強電・弱電) 《以下、城内設備ルート図(強電・弱電)として大天守と小天守、本丸御殿とそれを囲む堀を含めた平面図(俯瞰図)を添付し、電気設備のルートと配管位置を記載。》 第8章 31ページ ウ 照明計画 空間の特徴を浮かびあがらせることと、必要な情報(サイン・避難等)を伝達することが一体となった照明計画とす る。照明器具が直接見えない配置とし、調光により往時の空間も体験できる照明計画とする。 《大天守内の照明イメ−ジとして、イメージ図2図を添付。「照明器具を見せない、長押内からの間接照明」との説明文がついたイメージと、「必要に応じて行燈型照明器具を配置」との説明がついた従前イメージに行燈型証明器具を付加したイメージ図あり。》 《可搬式の行灯型照明器具(コンセント式)のイメ−ジとして、イラストあり。人の顔の高さが明るくなる証明と、足元を照らす証明の2パターンあり。》 第8章 32ページ Dバリアフリ− 歴史的建造物の復元である天守は、復元原案で示す通り、現代の建造物に要求されるバリアフリ−の機能を有していない。 復元計画においては移動経路の段差解消をはじめとするバリアフリ−対応を図るものとする。 ア 段差解消 (ア)本丸内苑(地上)〜大天守地階1階 観覧ルートにおける本丸内苑(地上)〜小天守口御門、小天守奥御門〜大天守口御門、大天守口御門〜大天守地階廊下には階段等による段差がありスロ−プを設置することによりバリアフリ−に対応した移動経路の整備を図る。また、スロ−プ外観は景観に配慮し木仕上げとする。 なお、段差の大きさとスロ−プを設置できるスペ−スの関係から、スロ−プの勾配が、外部で1/15、内部で1/12を超える部分が生じるが、移動のための補助者を配置するなど運営面の体制を整えて対応する。 また、復元原案に影響しない範囲で、より実用性のある階段を直接昇降するための可搬式器具等の採用についても、今後、積極的に検討する。 《本丸内苑(地上)から大天守地下1階へのスロ−プ平面図として、平面図(俯瞰図)を添付。本丸御殿と小天守周辺に沿うようにスロープができ、小天守地下につながると共に橋台にもスロープが設置され大天守地階につながる旨記載されている。》 第8章 33ページ 《本丸内苑(地上)から小天守口御門へのスロ−プ立面図として小天守の東面と北面の立面図2図の添付あり。東面の地上からスロープがのび、途中折り返しながら上部へ向かい北面中央から小天守地階に入る旨が図示されている》 第8章 34ページ (イ)大天守内部 大天守内部のバリアフリーを実現するため、「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」(以下「公募」という。)を実施し垂直昇降技術を選定した。今後、駆動装置の小型化や利用者の利便性への配慮など垂直昇降技術の開発を進めていく。公募の最低要求水準である大天守の地下1階から1階までについては、この垂直昇降技術によりバリアフリーに対応した移動経路とする。より上層階については、引き続きバリアフリー対応の検討を進める。 a垂直昇降技術の特徴 ・柱・梁を取り除かずに設置が可能であり、取り外すことで復元原案に戻すことが可能 ・A-ウ構造計画の目標性能(最大層間変形角)に追随する構造とするため、直上階までの昇降 ・定員4名または車いす利用者1名と介助者1名が搭乗可能 b垂直昇降技術の概要 垂直昇降技術の概要を図-8.1.46に示す。垂直昇降技術を支えるフレ−ム(昇降路)は上階の主架構で荷重を支持し、下階部分は上階からの吊り下げ構造とすることで、地震時における天守主架構の変形の影響を小さくする。 《地震による建物の変形に対する垂直昇降技術の概念図としてイラスト添付あり。》 垂直昇降技術は図-8.1.47及び図-8.1.48に示すように主架構を跨いで昇降路を組み、垂直昇降技術の揺れを減衰するシステムを設置する。 上階では垂直昇降技術と床のレベルは同一とし、下階は減衰システム高さ分の段差解消スロ−プを設置する。 《主架構と垂直昇降技術及び昇降路の関係(1階)として昇降機の断面図2図添付あり》 《主架構と垂直昇降技術及び昇降路の関係(1階平面、地階断面)として昇降機の1階平面図と地階断面図の2図添付あり》 《垂直昇降技術配置アイソメ図として地階と1階の図を添付し、垂直昇降技術の設置位置を図示》 《地階平面図として、垂直昇降技術とその周辺の平面図の添付あり。》 第8章 35ページ (ウ)その他の対策等 ■敷居 観覧ルートに合わせて、必要に応じて敷居の段差部には段差解消プレート(置き式)(図-8.1.51)を設置する。 《段差解消プレ−ト図として、プレートの設計図と断面図の2図を添付。材質についても記載あり。》 イ 階段手摺の付加等 階段については足元灯の設置の他、手摺の付加、蹴上寸法の調整等バリアフリーに対応した整備を図る。(B−イ−■付加手摺:図-8.1.23による) ウ サイン計画 名古屋城本丸御殿と共通したサインを用い、城内で統一された、わかりやすい誘導・案内サインとする。 第8章 36ページ エ スロ−プ詳細図 《本丸内苑(地上)から小天守口御門へのスロ−プ詳細として平面図の添付あり。スロープの寸法記載あり。》 第8章 37ページ 《蹴放しを取り外した状態の古写真(焼失前)として写真添付あり》 《蹴放しの取り外し図として図面添付あり》 《橋台のスロ−プ立面図として、小天守と大天守をつなぐ橋台傍のスロープの図面添付あり。》 《橋台及び大天守地下1階へのスロ−プ平面図として図面添付あり。スロープの詳細な寸法記載あり。》 《大天守口御門から地下1階へのスロ−プ立面図として、奥御門から地下1階、枡形から奥御門内側、口御門から枡形の3つの図面添付あり。》