1ページ 2023年6月13日 名古屋市長 河村たかし様 名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会 共同代表 齊藤縣三 小川直人 名古屋城バリアフリー市民討論会における重大な人権侵害の原因究明及び再発防止策検討のための第3者検証委員会設置の申し入れ 6月3日名古屋市主催の名古屋城バリアフリー市民討論会が開催されました。その中で、私たちの仲間である車いす使用の男性が発言したところ、他の参加者から、障害者への差別用語を発し、「平等とわがままと一緒にするな。」「お前が我慢せい」など、バリアフリーとは、関係ない発言をあびせました。 しかも、名古屋市担当職員をはじめ、河村市長もいたにもかかわらず、誰も発言を止めることはなく、討論会閉会のあいさつで、河村市長は、「熱いトークがあって、たいへんよかった」等、障害者差別が目前で起きたことを無視しました。 さらに、名古屋城総合事務所は「3月20日には、名古屋城昇降機は『上からの指示』で1階以上に設置しないと決まっていた」と市議団に説明したことが明らかになりました。このことが事実であれば、市民討論会は結論ありきのアリバイ作りのためのものであり、名古屋市が、参加した障害者の人権を意図的に踏みにじるという、重大な人権侵害事件で卑劣であり絶対に許されない行為です。また、12日の特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議では、「『木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針』は現時点でも有効で、『1階まで昇降機と決定した』は事実と異なる」とし、いったい何が事実なのか、混乱を生んでいます。つきましては、下記を申し入れます。 05.6.13 観光文化交流局総務課 収受 2ページ 記 1.もし「3月20日には、名古屋城昇降機は『上からの指示』で1階以上に設置しないと決まっていた」とするならば、障害者をはじめ、市民や議会さえもあざむく重大な問題である。さらに12日の特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議では、「事実と異なる」とした。市議団への説明との乖離がなぜおきたのか説明いただきたい。 2.障害者当事者および弁護士を含めた第3者検証委員会を設置し、市民討論会の参加者および関係者全員にヒアリング調査し、原因究明および報告、具体的な再発防止策の検討および実施すること。 3.市民を分断し、差別を助長する名古屋城木造天守復元事業を即時中止すること。 4.2018年5月30日に定めた『木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針』では、「5.基本方針 現状よりも天守閣のすばらしさや眺望を楽しめることを保証する。」としているが、どのように保証するのか、具体的にお示しいただきたい。 以上 ※なお、回答については、aju_kurumaisu@aju-cil.comあてにメールでお送りください。 (担当:辻、水野、佐々木) 3ページ 2018/5/30に定めた『木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針』では、「協議会を新たに設置し、障害者団体等当事者の意見を丁寧に聞くことにより、誰もが利用できる付加設備の開発を行う。 木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針 1.基本的な考え方 ・本事業は、歴史時代の建築物等の遺跡に基づき、当時の規模・構造等により再現する「歴史的建造物の復元」を行うものである。 ・名古屋城天守閣は、法隆寺のころから始まった日本の木造建築のひとつの到達点、究極の木造建築とも言われ、豊富な歴史資料をもとに外観の再現に留まらない史実に忠実な完全な復元を行うことの選択を議会、行政における検討や市長選挙での市民の信託を得て推し進めることとしたものである。 ・市民の皆さまの中には、「一旦は焼失しているので復元しても本物の天守閣ではない」との意見もあるが、名古屋城天守閣は城郭として国宝第一号であったものが、大戦中多くの市民の命とともに昭和20年5月14日に空襲で焼失してしまったものの、残された石垣には空襲による傷跡も残っており、焼失中の写真も残されている。 その上で、市民の精神的基柱であり、誇りである名古屋城の天守閣を、悲しい歴史的事実を経て、昭和実測図や金城温古録等、豊富な歴史資料に基づき、戦災で焼失する前の本物の姿に復元すると世界に主張するものである。 したがって、過去の天守閣と今回の木造復元の同一性について、歴史的な分断を感じさせない復元を成し遂げる事が、事業の価値を決定づける大きな要素となる。 ・50〜100年で再度「国宝」になることを目指す。 ・ゆえに、史実に忠実な復元を確保した上で、まず、2022年の完成時期に、その先においても世界の模範とされるべき改善を重ね、観覧、体験、バリアフリー環境を整備するための付加設備とする。 2.現天守閣の現状 ・現天守閣は5階までエレベーターで上がれるが、内部は博物館施設であり、本来の木造天守閣の内観を観覧することはできない。また、展望については、1階の東側及び北側の一部と7階の展望室からに限られているが、7階へは階段でなければ行くことができないため、車いすの方は展望ができない状況である。 3.内部エレベーター ク内部エレベーターについては、柱、梁を傷めないものとして、史実に忠実に復元する天守閣とするためには、乗員が4人程度、かご(乗用部分)の大きさが幅80cm、奥行き100cm程度となり、乗ることができる車いすも小型なものに限定され、よく使用されている幅65cm、長さ100cm程度(電動車いすは幅65cm、長さ105cm程度)のものは利用できない。したがって、バリアフリー法の建築物移動円滑化基準に対応するエレベーターは設置できない。 4.外部エレベーター ク都市景観条例を定めて、すぐれた都市景観の形成を進めている中で、景観計画により名古屋城の眺望景観の保全を図ることとしている。 クその眺望の対象である天守閣の歴史的な外観を損なうことから、外部エレベーターは設置しない。 5.基本方針 ク史実に忠実に復元するためエレベーターを設置せず、新技術の開発などを通してバリアフリーに最善の努力をする。 ク今回、木造復元に伴い、本来の天守閣の内部空間を観覧できるようにする。また、電動か否かによらず、車いすの方が見ることのできる眺望としては、現状1階フロアまでだが、様々な工夫により、可能な限り上層階まで昇ることができるよう目指し、現状よりも天守閣のすばらしさや眺望を楽しめることを保証する。 ク例えば、昇降装置を有する特殊車両を応用し、外部から直接出入りすることや、ロボット技術を活用し、内部階段を昇降することなどが挙げられる。併せてVR技術を活用した体感施設の設置を行う。 ク新技術の開発には、国内外から幅広く提案を募る。 クまた、協議会を新たに設置し、障害者団体等当事者の意見を丁寧に聞くことにより、誰もが利用できる付加設備の開発を行う。 ク姫路城や松本城など現存する木造天守にも転用可能な新技術の開発に努力する。 ク再建後は元来の姿を見ることができるようになり、介助要員、補助具を配置することなどにより、今より、快適に観覧できるようにする。