資料2 非公表 骨子案 検証について(中間報告) 令和○年○月○日 「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における 差別事案に係る検証委員会 目次 第1 検証委員会の目的と設置の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○ 1 検証委員会の設置目的 2 検証委員会の設置経緯 3 委員構成 4 検証委員会の開催 第2 中間報告の位置づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○ 第3 討論会の開催に至る経緯及びその後の名古屋市の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○ 1 開催に至る経緯 2 当日の運営 3 主催者による事後の対応 4 市としての現状の改善 第4 検証委員会の問題意識と検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○ 1 「討論会」とされた経緯 2 事前の準備 3 当日の運営の実施・責任体制 第5 ただちに取り組むべき再発防止の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○ 第6 今後の検証に向けて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○ 1ページ 第1.検証委員会の目的と設置の経緯 令和5年6月3日に名古屋市主催で開催された討論会において、一部の参加者から他の参加者に対して、差別発言があったものの、その場にいた市職員が発言の制止や注意喚起などの適切な対応を行わなかった事案が発生した。 1 検証委員会の設置目的 ・たとえ、市民から自由な意見をうかがう場であっても、差別的言動は決して許されるものではない。 ・討論会で差別発言を受けた方は、たいへん心を痛められたと考えられ、また、主催者の不適切な対応は、他の参加者の方や動画配信を視聴になっていた方、事後に報道でこの事案を知った多くの方にも、不快な思いを抱かせたとともに、本市に対する市民からの信頼を大きく失わせることとなった。 ・そのため、人権の観点から、問題点や課題等を整理・分析したうえで原因を探求して再発防止を図り、もって市民の信頼回復につなげるための検証を行うこととし、令和5年8月に「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会を設置した。 (巻末資料@:設置要綱) 2 検証委員会の設置経緯 ・6月3日 「討論会」開催(主催:観光文化交流局) ・6月5日 障害者団体から市長に対し、抗議及び回答を要求 ・6月6日 名古屋市会経済水道委員会において、「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会での市民の発言に対する当局の対応について」所管事務調査実施  ・6月13日 障害者団体から市長に対し、第3者委員会設置の申入れ ・6月14日 名古屋市会総務環境委員会において、「本市における人権に対する認識等について」所管事務調査実施 ・6月15日 名古屋市会財政福祉委員会において、「障害者差別に関係する法令等の基本的な考え方について」所管事務調査実施 ・6月15日 名古屋市会経済水道委員会において、「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会での市民の発言に対する当局の対応について」所管事務調査実施  ・6月15日 障害者団体から市長に対し、第3者委員会の設置を要求 ・6月21日〜23日 本市の人権施策を所管するスポーツ市民局において、討論会に関係している観光文化交流局の主な管理職職員6名へのヒアリング調査を実施 ・6月29日 名古屋市会総務環境委員会(本市主催討論会に係る人権の観点からの調査について)において、観光文化交流局の主な管理職職員6名へのヒアリング調査を報告、外部有識者を含めた検証チームを設置することを表明 ・6月30日 名古屋市会経済水道委員会において、「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会での市民の発言に対する当局の対応について」所管事務調査実施 ・8月18日 「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会設置 2ページ 3 委員構成 《検討委員会委員を区分、氏名、所属・役職等の順に記載した表》 区分 学識経験者 氏名 浅田 知恵 所属・役職等 愛知教育大学教授 氏名 小林 直三 所属・役職等 名古屋市立大学大学院教授、名古屋市人権施策の推進にかかる有識者懇談会委員 氏名 田中 伸明(検証委員長) 所属・役職等 弁護士、内閣府障害者政策委員会委員、名古屋市障害者差別解消支援会議委員 区分 行政 氏名 杉野 みどり(会長) 所属・役職等 副市長 氏名 鳥羽 義人 所属・役職等 スポーツ市民局長 氏名 平松 修 所属・役職等 健康福祉局長 氏名 杉浦 弘昌 所属・役職等 総務局長 ・会長は会を統括し、議事(調査・検討にかかる議論等を除く。)を進行する。検証委員長は調査・検討にかかる議論等を監理し、議事を進行する。 ・本市主催の催しにおいて発生させてしまった事象であり、本市として真摯に反省しつつ、今後どのようにすべきかを、行政の視点からも責任を持って検証、検討するため、学識経験者に加え、行政である職員で構成 ・行政区分の職員は、討論会を主催した当事者である観光文化交流局とは異なる組織で、人権施策の推進や障害者理解、職員の育成を所管する所管局の職員として、それぞれの専門部署として責任を果たす。 4 検証委員会の開催 《日程、内容等の順に記載した表》 令和5年8月30日 第1回検証委員会 検証委員会の趣旨等、検証委員長の指名、事案の概要等、検証 等 令和5年10月6日 第2回検証委員会 差別事案を受けて市が行った見直し事項等、検証 等 令和5年10月23日〜11月13日 聞き取り調査 関係職員及び受託業者への聞き取り調査 令和5年11月20日 第3回検証委員会 検証(ヒアリング結果) 等 令和5年12月18日 第4回検証委員会 検証(中間報告の骨子) 等 令和6年1月29日 第5回検証委員会 3ページ 第2.中間報告の位置づけ ・検証委員会では、討論会当日での差別事案に係る直接的な原因究明等の検証を行うこととし、その検証の中で誘因や遠因、背景等をさらに深める必要が生じた場合は、引き続きそれらの検証を進めていくこととした。 ・討論会当日に係る検証の結果、本件に関しては、名古屋城のバリアフリーに関連する障害者への差別意識や職員の苦悩、葛藤など、討論会以前から影響を及ぼしている可能性を推測されるに至り、問題の背景などさらに検証する必要があると認識した。 ・それらの検証には、さらに相当な時間を要することが見込まれる。 ・一方、検証の性質上、非公開で調査を行っているが、市民にとっては検証の状況を知る由のない状態であるため、討論会に直接的に関わる検証結果について、中間報告としてまとめて市民に報告することとした。 ・なお、この中間報告を受け、名古屋市として、早急に対応すべき対応策について、効果的な対応に努めてもらいたい。 第3.討論会の開催に至る経緯及びその後の名古屋市の対応 1 開催に至る経緯 (1) 発案・企画 ・令和4年12月2日に、昇降技術の公募における最優秀技術の選定 ・令和4年12月5日の市長定例記者会見後、昇降技術・エレベーターに対する市民等からの意見が届く。(令和4年12月〜令和5年1月 賛成8、反対20)(巻末資料A:第2回検証委員会資料5-2の2/7実施の副市長レク資料「名古屋城木造天守への昇降機設置への賛否まとめ(令和4年12月)」)市長・副市長の元へ多数の設置に反対の意見が寄せられる。 ・市に届く一部の意見のみではなく、実際の市民全体の意向をフラットに知る必要があると考え、名古屋城総合事務所から意見聴取の方策として無作為抽出による市民アンケートと討論会を実施してはどうかと、市長へ提案 ・令和5年3月に「名古屋城木造復元昇降技術に関する市民意見の聴取企画書」として、趣旨・目的のほか手順として市民アンケート、市民ミーティング(最終的に「市民討論会」の名称に変更)の実施企画を副市長以下で確認・決定(巻末資料B:第2回検証委員会資料5-2の3/15実施の副市長レク資料「名古屋城木造復元昇降技術に関する市民意見の聴取 企画書」) (2) 開催に向けた検討 ・3月10日に観光文化交流局長が企画書を確認以降、アンケート及び討論会に関する局長レク、副市長レク、市長レクを合計31回実施 (巻末資料C:第2回検証委員会資料5-2の日付、レク種別、参加者の入った一覧表) (巻末資料D:第2回検証委員会資料5-2の3/28の局長レク資料「アンケートのお願い」) (巻末資料E:第2回検証委員会資料5-2の3/28の局長レク資料「調査票」) (3) 事前準備 ア 「名古屋城バリアフリーに関するアンケート」の実施 4ページ 調査時期:令和5年4月19日〜5月8日 対象:18歳以上の名古屋市に居住する5000人(住民基本台帳上から層化無作為抽出) 回収率:29.0% 送付物:「名古屋城バリアフリーに関するアンケートへのご協力のお願い」「アンケート調査票」「市民討論会に参加を希望される方へ(参加申込書添付)」「名古屋城バリアフリーに関する説明資料【アンケート調査用】」 (巻末資料F:第2回検証委員会資料6-2「報告書」) イ 討論会への参加者の決定 (3)アにおいて、参加申込書を提出した市民56人のうち、市民討論会へ36人が参加 ウ YouTube配信の実施 市民に開かれた会にすべきとの考えのもと、アンケートを送付し希望された方以外にも、速やかにありのままを伝える手段としてライブ配信として実施した。 エ 委託契約 アンケート及び討論会の実施にあたっては、令和5年4月3日付で委託事業者(安井建築設計事務所)と契約を結んでいる。 5ページ (参考)市民意見聴取等までの流れ 区分 令和4年度 内容 3月 市民意見の聴取の準備 ・アンケート調査票の作成 区分 令和5年度 4月6日 無作為抽出(5,000人) 4月9日 市会議員選挙 ↓ 議員説明 バリアフリー検討会議の委員へ説明 市民意見の聴取 ・4月19日 市民アンケート等送付 ・5月中旬 市民アンケート集計・分析 ・6月3日 市民討論会(市長出席) ↓ 6月上旬 バリアフリー検討会議 ・市民意見の聴取の結果の報告及び意見交換 ↓ 6月上旬 市長からの指示・方針決定 6月上旬 所管事務調査 ・バリアフリーを含めた整備基本計画について ↓全体整備検討会議 市民等への説明 ↓ 文化庁へ提出 6ページ 2 当日の状況 (1)市民討論会の進行 □開会 □市長あいさつ □講演 □市からの説明「名古屋城木造天守復元とバリアフリー」 □討論会 ・有識者のコメント ・質問意見用紙の内容紹介と質問に対する回答 ・質問記入者の補足説明 ・希望者による自由発言 □市民アンケート結果の発表 □市長あいさつ □閉会 (2)差別発言に係る状況等 ・司会補助による市民A(車いす利用者)の質問意見用紙の読み上げ ・市民Aによる発言 ・市担当者による回答 ・参加者から質問記入者による補足説明の終了を求める発言 ・司会が希望者による自由発言を求める ・市民Bによる差別発言 ・市民Aと市民Bとの言い合い ・市職員による言い合いの制止要請 ・市民Cによる差別用語を含む差別発言 ・一部市民からの拍手 (巻末資料G:第1回検証委員会の資料5) 3 主催者による事後の対応 ・討論会の終了直後には、何ら対応をしていない。 ・後日、当該参加者を含む討論会参加者へお詫び文を郵送 4 市としての現状の改善 全庁会議等における周知・徹底、職員研修への反映、関係マニュアル等の改訂などを実施 (巻末資料H:第2回検証委員会の資料1※対応要領の「検討中」を削除) (巻末資料I:差別事象マニュアル暫定版) (巻末資料J:改訂後の職員対応要領) 7ページ 第4 検証委員会の問題意識と検証 1 「討論会」とされた経緯 (1)「討論会」の目的−@ ア 問題意識 ・そもそも討論会を開催した目的に疑問がある。 イ 検証結果 ・無作為抽出した市民5000人に送付したアンケートに「今回のアンケートは、復元する木造天守への昇降技術の設置について、市民のみなさまのご意見を頂戴し、名古屋市の方針を決めてまいりたいと考えております。また、希望者のみなさまを対象に市民討論会を行い、ご意見を直接お伺いしたいと考えております。」との記載を確認した。(巻末資料K第2回検証委員会資料5-1) ・当初の企画書における市民意見聴取の趣旨として、「バリアフリーに関する意向を把握するため市民アンケートを実施する。また、市民の生の声を聴くために市民ミーティングを実施する。」との記載を確認した。(※「市民ミーティング」から最終的に「討論会」と変更)(巻末資料B第2回検証委員会資料5-2(令和3月15日副市長レク資料「名古屋城木造復元 昇降技術に関する市民意見の聴取 企画書」)) ・当初の企画書における意見聴取の目的として、「アンケートによる○×だけでなく、希望者によるミーティングも実施し、どうしたら「史実に忠実な復元とバリアフリーの両立」となるのか、いろいろな立場の市民からの意見を募り、その結果を踏まえて市の対応を決定する」との記載を確認した。(巻末資料B第2回検証委員会資料5-2(令和3月15日副市長レク資料「名古屋城木造復元 昇降技術に関する市民意見の聴取 企画書」)) ※討論会については、アンケートと合わせて意見聴取の方法として行われたものであったため、討論会と直接関連する意見聴取やアンケートについても必要な範囲で検証します。 ウ 評価 ・討論会については、アンケートと合わせて意見聴取の方法として行われたものであった。 ※このため、必要に応じ、討論会と直接関連する意見聴取やアンケートについても含めて、以下検証している。 (2)「討論会」の目的−A ア 問題意識 ・市の方針は事前に決まっていたのか。 ・市の方針が事前に決まっていたならば、討論会を開催する理由がない イ 検証結果 ・市の方針を、市長指示書として6月6日に市長が決定するスケジュールが組まれていた。(巻末資料L第2回検証委員会資料5-2(令和6月30日市長レク資料「所管事務調査と文化庁 8ページ 提出までのスケジュール」)) ・昇降技術の設置に対する市長の意向は、資料(巻末資料M第2回検証委員会資料5-1)とヒアリングで確認した。 ・職員は、令和4年度末頃までは市長は昇降技術を設置しない意向が強いと感じていた。令和5年度に入った頃は、市長の意向が変化し設置はするが1階までとなるだろうと感じていた。 ・昇降技術の設置に関して、職員は可能な限り上層階まで、副市長は1階まで(将来的にはより上層階への設置を見込む)、市長は1階まで(将来の上層階は他の技術等)と考えていた。 ・討論会直前の段階でも、市長は1階までと発言しており、1階までの設置となる雰囲気であったと市長は認識していた。(ただし、公募要件(可能な限り上層階をめざす)もあるので、正確に言えば、2階以上は未確定との認識。) ・討論会直前の段階で、副市長及び職員も、市長の考えが変わることはないだろうと考えており、1階までという市長の指示を受ける想定で準備作業を進めていた。(巻末資料N第2回検証委員会資料5-2(令和5月30日市長レク資料「名古屋城木造天守のバリアフリーの方針」)) ウ 評価 ・最終的に討論会での市民意見の聴取結果を方針決定の検討にどう活かしていくのか、討論会後、市の方針についての検討は中断しているためこの点はわからない。 (3)「討論会」の目的−B ア 問題意識 ・可能な限り上層階まで昇降できる技術を公募し、選定された昇降技術であるため、可能な限り上層階まで設置するものと考えられる。 ・可能な限り上層階に設置するのであれば、どこまで設置するかを聞くための討論会を開催する理由がないのではないか。 イ 検証結果 ・昇降技術の公募要項において、「募集する技術は、大天守地階又は地上から可能な限り上層階まで昇降できる技術とします」との記載を確認した。(巻末資料O公募要項16頁「2-1 募集する技術) ・市長は、可能な限り上層階まで昇ることができるよう目指すという認識であるが、昇降技術を設置する階は決まっていないという認識であった。 ・市長は、可能な限り上層階まで昇ることができるよう目指す手段としては、必ずしも公募で選定された昇降技術に限らず、車いすの技術進歩など他の技術を模索したい認識であった。 ウ 評価 ・付加設備の方針(巻末資料P木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針)により、公募で可能な限り上層階まで昇降できる技術として選定しているため、可能な限り上層階まで設置することが決定されており、意見聴取の必要がないとも考えられる。 ・一方、市長は、付加設備の方針どおり、可能な限り上層階まで昇ることができるよう目指す認識であるものの、その手段として、他の技術を模索していたことがうかがわれる。 9ページ ・付加設備の方針の解釈は、行政主体において行うものであり、当検証委員会が行うものではないが、市民が付加設備の方針と公募要項(巻末資料O公募要項2頁「1-2目的」6頁「2-1 募集する技術)を見れば、昇降技術は、可能な限り上層階まで設置すると考えるのが通常である。 ・市民に正確な情報提供を行うということができていなかった面は否めない。 (4)「討論会」の目的−C ア 問題意識 ・アンケートの選択肢として、昇降技術を「設置しない」との選択肢を記載することは極めて疑問である。 ・このような選択肢がアンケートに記載されたことは、名古屋市が公募を行った後においても、いまだ昇降技術を「設置しない」可能性を残しているとのメッセージを市民に対して発したことになっていると考えられる。 ・そのことが、討論会における意見交換の場において、主催者である名古屋市が昇降技術を設置しない立場の発言を容認する姿勢を示したと受け取られた結果、従前の意見対立の構図を本市民討論会にそのまま持ち込むことにつながったと考えられる。 ・名古屋市の姿勢が、差別発言を生じた土壌を形成しているとも考えられることから、昇降技術を「設置しない」との選択肢が記載された経緯について、検証を行うこととした。 イ 検証結果 ・アンケートについて、「公募により選定された最優秀者の昇降技術の設置について、あなたの考え方は以下のうちどれですか」という設問の選択肢に「設置しない」という選択肢があった。(巻末資料Q第2回検証委員会資料6-1「アンケート調査票」問4) ・職員は、昇降技術設置に反対の意見も多く届いていたので、反対も含めてフラットに聞く必要があると考えていたとのことであった。 【ヒアリングでは事業者提案、資料では市提案のため事実確認中】 ・アンケート項目・選択肢の原案は、受託業者から市に提案した。 ・意見聴取の前提として、昇降技術の設置が決定していることは市側から受託業者へ明確には伝えていなかった。 ・受託業者においては設置しない可能性が排除されている認識はなく、目的が正確に共有されていなかった。 ・当初のアンケート案では、昇降技術の設置にどう思うかとして、「設置に賛成」「設置に反対」「どちらでもない」の3択を用意し、さらに「設置に賛成」と回答した人に対し、「1階」「2階」「3階」「4階」「5階」「わからない・その他」として各階の選択肢があったが、市長レクを踏まえて、結果的に「設置しない」「1階」「5階」となった。 ・市長によれば、昇降技術が実際の図面上ではどうなるかわからないので市民が誤解するような各階の図面は示してはいけないという指示をしていた。 ・例年8月に開催される文化庁の復元検討委員会を目標に意見聴取することとしたため、技術 10ページ 開発の時間がなく、可能な限り上層階がどの階かを市民に示せなかったとのことであった。 ・討論会当日の市民の質問や表明意見、終了後の感想記入用紙を見るかぎり、多くの参加者は昇降技術の設置が決定していると認識していない。 ・昇降技術の公募は、令和2年4月3日衆議院国土交通委員会、5月12日参議院国土交通委員会における「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」の趣旨を踏まえたものである。(巻末資料O公募要項2頁「1-3.基本方針) ・同附帯決議では、障害者権利条約に則り、歴史的建造物を再現(復元を含む)する場合等のバリアフリーの在り方を定めている。(巻末資料O公募要項4頁図表2) ・昇降技術の公募は、平成30年から障害者団体や有識者会議の意見を聞きながら進め、同附帯決議の趣旨に従い、高齢者、障害者等の参画の下検討を行ってきた経緯がある。(巻末資料R第4回検証委員会資料●) ウ 評価 ・昇降技術をどこまで設置するのかを聞く意図であったとすれば、可能性がない選択肢(設置しない)を置くことで市民を誤解させた。 ・設置階についても、1階又は5階のいずれかのみだとの誤解を市民に与えてしまうと思われ不適切と考えられる。 ・実際に昇降技術でどの階まで設置できるかわからない状態で意見聴取をしたのは、文化庁への提出スケジュールを優先したためとのことであった。 【ヒアリングでは事業者提案、資料では市提案のため事実確認中】 ・昇降技術の設置が前提であることを聞かされていない受託業者の認識からすれば、昇降技術を設置しない選択肢を加えて提案したことは不合理ではない。 ・本来であれば、職員の側で、受託業者から提案のあったアンケート項目を十分に精査しなければならなかった。 ・ある意味、受託業者を信頼して、十分な精査をしなかったものと推察されるが、受託業者と目的について正しく共有できていなかったことが討論会の準備や運営にも影響した。 ・昇降技術の設置に反対する市民からすれば、昇降技術を設置しないという判断を市長に求めアピールするため議論が先鋭化したと考えられる。 ・昇降技術について「設置しない」という選択肢を含めて市の方針を決定するのであれば、公募までの経緯を無視するものであり、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」の趣旨に沿わないおそれがある。 ・なお、意見聴取を行うきっかけが、昇降技術の設置に多くの反対意見が届いたことによるものであり、そのことが、昇降技術の設置に反対する考えも含めて聞く選択肢に反映され、市民に討論会の開催目的を誤認させることにつながり、市民意見の分断を招くことにつながっていると考える。 (5)「討論会」の目的−D 11ページ ア 問題意識 ・市民意見の聴取が目的であれば、対象者5000人のアンケートのみでよいとも考えられる。 ・討論会参加者はアンケート回答者でもあり、再度、討論会を開催し定員100名の意見を聞くのはなぜか。 イ 検証結果 ・公募による昇降技術の選定後、昇降技術の設置に対する意見が届く(令和4年12月〜令和5年1月賛成8、反対20。比率約3:7)(巻末資料A:第2回検証委員会資料5-2の2/8実施の副市長レク資料「名古屋城木造天守への昇降機設置への賛否まとめ(令和4年12月)」) ・市長・副市長のもとには、多数の昇降技術設置に反対の声が届いていたとのことである。 ・職員としては、市長に対し、直接、市民の生の意見を聞いていただきたかった。 ・無作為抽出のアンケートを実施し、広く市民の意見を聴き、加えて、それを補うために、アンケート回答者から討論会参加希望者を募って、さらに意見を聴こうとする試みであった。 ウ 評価 ・市長のもとに直接届く市民の声が昇降技術の設置に反対ばかりであれば、市長にフラットな意見を直接聞いてもらい、公平に市の方針を判断してもらうため、無作為抽出により参加者を募って討論会を設定したという趣旨自体は理解できるが、障害者に関わる施策判断のための企画という点では疑問が残る。 (6)「討論会」の目的−E ア 問題意識 ・バリアフリーに関する市民討論会という名称であったが、実態は昇降技術に関する討論会ではなかったか。 ・参加市民の認識と食い違いがあったのではないか。 イ 検証結果 ・アンケート項目では、「現在の園路等を含む名古屋城全体のバリアフリー」も聞いているが、職員の認識としては、目的は昇降技術の設置についてであった。 ・討論会参加申込書と同封のアンケート協力お願い文には、「昇降技術の設置について」聞くことが明記され、同封の資料やアンケートも昇降技術に関する内容であった。 ・討論会終了後の感想記入用紙(巻末資料S第2回検証委員会資料7)を見る限り、エレベーターまたは昇降技術に関する内容と受け止めていた方が多いと思われるが、バリアフリー全般のご意見をいただいている方もいた。 ウ 評価 ・アンケートや討論会資料でも、昇降技術に関する内容が中心で他のバリアフリーに関する内容がほとんどなかったため、バリアフリーに関する市民討論会との名称は、内容と不一致であったと言える。 ・討論会参加者は、アンケートに回答した市民のみであり、前提として、昇降技術に関する資料提供を受け、その考えを聞かれたうえで、直接、意見を述べることを希望する市民が参加する形になっていたため、昇降技術に関する議題の認識でいた可能性は高いと思われる。 12ページ ・市民にとっては、まずタイトルを見て興味を持ち、内容等を見て参加を判断すると思われるため、本来、タイトルと内容が不一致であることは不適切であると考える。 (7)「討論会」の目的−F ア 問題意識 ・昇降技術を公募したということは、少なくとも一階以上には昇降技術を設置する前提で職員は進めてきたはずである。 ・しかし、そうならない雰囲気が市長の意識の中から見えてきたことが、何らか開催の目的に影響したのではないか。 イ 検証結果 ・市民の意見聴取を行うことは、直接、市長から指示があったものではなかった。 ・公募による昇降技術の選定後、昇降技術の設置に対する意見が届いていた。(令和4年12月〜令和5年1月賛成8、反対20)(巻末資料A:第2回検証委員会資料5-2の2/8実施の副市長レク資料「名古屋城木造天守への昇降機設置への賛否まとめ(令和4年12月)」) ・市長・副市長のもとには、多数の昇降技術設置に反対の声が届いていた。 ・実際に、市民全体の意向は数字でわからなかったため、フラットな市民の意見を確認する必要があると考えた。 ・市民意見の聴取として、アンケート・討論会を行うことについては、名古屋城総合事務所側から副市長・市長へ提案した。 ・理由としては、最終的には市長の判断になるが、議会への説明には、客観性の説明も必要と考えた。 ・意見聴取結果は、当時設置しない意向を示していた市長へ、市民も設置が必要と考えていることを説明する根拠になると思った。 ・当初、副市長においては、改めて市民に意見聴取することに反対の考え、局長においては、アンケートだけでよいのではないかとの考えであったことから、名古屋城総合事務所としては、直接、市長に市民の生の声を聴いていただきたい強い思いがあったと推認された。 ・市長の意向の変化を確認した。(巻末資料M第2回検証委員会資料5-1) ・副市長から「設置しない」又は「1階まで」で整備基本計画をまとめる指示があったことを受け、名古屋城総合事務所はリスク評価を行い、副市長以下で「大天守1階までのバリアフリー案」「市民対話を通じバリアフリー案を策定」「大天守最上階までのバリアフリー案」の3案を確認した。(巻末資料?第2回検証委員会資料5-2(令和5年2月7日副市長レク資料「特別史跡・・・バリアフリーの方針について」) ・名古屋城総合事務所としては、大天守1階までのバリアフリー案では、今まで外部に説明してきたこととの齟齬が生じるので、苦悩していた点がうかがわれた。 ・副市長の考えが、「より上層階」から「1階まで」に変化したことにより、年末には、一時的に副市長と名古屋城総合事務所職員の関係が悪化し、意思疎通が困難となるような状況もあったとのことである。(3月には回復) ウ 評価 13ページ ・名古屋城総合事務所が討論会を含む市民への意見聴取を提案した背景には、市長判断のみで方針決定することは、対外的に客観的な説明ができないと考えていたことによる。 ・市長が、公募で選定された昇降技術で可能な限り上層階を目指す意向にぶれがなければ、従前から対外的に説明してきたことと一致するため、討論会が開催されなかった可能性も考えられる。 ・市長の判断について対外的に客観的な説明ができないということ自体が問題であるため、時間をかけてでも市長と職員の間でしっかりとした意思統一が図られるべきであった。 ・市長と職員の意向に大きな相違があるなか、副市長が両者の立場に立って十分な調整ができず、市長寄りの意見を推し進めたことが、職員へのプレッシャーとなり、モチベーションにも影響したと考えられる。 ・なお、意見聴取のきっかけは、昇降技術を設置する・設置しないという対立する市民意見が元であったが、意見聴取の目的としては、昇降技術を設置することは決定しており、どの階まで設置するかという論点であった。 ・そのずれが、のちのち討論会の企画運営に影響(アンケート選択肢、討論会での職員の説明等)して、参加市民に討論会の目的を誤認させ、意見対立を深めたことが、引いては差別事案の発生につながった可能性がある。 (8) 「討論会」の名称 ア 問題意識 ・討論をしていただくつもりがないのに、討論会という名称で実施したのはなぜか。 ・討論会という名称であったことが、参加者の意識に影響し、対立が深まる要因にもなったのではないか。 ・討論をしないことを認識していたならば、名称を修正すべきではなかったか。 イ 検証結果 ・討論会の企画検討においては、令和5年5月13日開催の木曽川水系連絡導水路意見交換会(令和5年4月10日に公表)を参照することとしていた。 ・理由としては、同じ副市長が所管する事業であり、市民意見の対立構造があって市の方針決定のための意見聴取を行うという点で共通するとの認識であった。 ・企画当初、木曽川水系連絡導水路事業に関する名称は未確定であったため、過去に行った同種の会(平成21年8月2日開催の木曽川水系連絡導水路事業公開討論会)の名称をもとに、「討論会」にしたものと推察された。 ・木曽川導水路事業に関する名称は、最終的には「意見交換会」となった。 ・職員の多くは、討論を行わないのに「討論会」という名称であることに疑問をもっていたが、変更するには至らなかった。 ・「討論会」という名称を変更しなかった理由としては、すでにアンケート書面などに明記し外部に周知していたため修正しなかったものと推察された。 ・参加申込書の参加動機欄には、「討論内容に関心があるため」「…バリアフリー設置案に反対するため」といった記述がみられ、参加者が“討論”の場を意識していたことが伺えた。 14ページ ウ 評価 ・討論会という名称が、参加者の意識に影響し必要以上に意見の対立を生み、本件差別発言の行われる契機になった。 ・討論会としたことで、相手の意見に対し強い主張を行う展開を招いた。 ・討論する場でないと認識しながら、「討論会」の名称で実施することは、市民を誤認させてもやむをえないということであり、極めて不適切で、一旦公表した後であっても修正すべきであった。 ・木曽川水系連絡導水路事業を随時参照していたことから、同事業に合わせて「意見交換会」など名称変更することは可能であった。 ・外部に公表していたことは、修正できないようなやむを得ない理由には当たらず、名称の事業に及ぼす影響について意識が薄かったと言わざるを得ない。 ・名古屋城では、エレベーター設置に関する意見の対立構造の解決・両立に向けて、昇降技術を公募し選定しており、その設置は決定済みであるため、木曽川導水路事業と同様の意見聴取にはなりえないはずである。 ・木曽川水系連絡導水路事業と同様の認識で意見聴取の企画・運営を考えていた事実からすると、副市長以下において、意見聴取の目的として、昇降技術の設置に賛成・反対の意見を聞くものという認識が一時的にでもあり、それが目的に合わないアンケートの選択肢などに影響を及ぼし、市民が目的を正しく認識できなかったことにつながったのではないかとの疑念が残る。 15ページ 2 事前の準備 (1)無作為抽出でのアンケートによる参加者決定方法 ア 問題意識 ・昇降技術をどこまで設置するかというバリアフリーに関する議論において、障害者などバリアフリーを必要とする市民が選ばれない可能性についてどう考えていたか。 イ 検証結果 ・毎年実施している市民向け説明会では、毎回同じグループの参加者がきて、賛成あるいは反対の両極端の意見を述べていた。 ・市長以下職員も事業者も、偏りがない意見をお持ちの市民の参加を期待していた。 ・参加者決定を行う際、バリアフリーの当事者である障害者に対する意識はあまりなかった。 ・これまでいろいろな機会で障害者団体から聞いていた考えもあわせて、市長に報告することを想定していた職員もいた。 ・討論会の前提となるアンケートは、無作為抽出であるが、回答者の属性として障害の有無、障害種別、就学前のお子さんの有無を聞いており、集計結果としてもバリアフリーに関係する当事者の意見がわかるようになっていた。(巻末資料F第2回検証委員会資料6-2) ウ 評価 ・アンケートでは、回答者の属性として、障害者及び子育て世代を聞いており、高齢者(年齢別)も含めて、バリアフリーに関係する当事者意見がわかる形式となっていた。 ・バリアフリーの議題であるにもかかわらず、当事者の比率が低くなるおそれや定員100名程度の討論会では参加希望がない可能性もあるため、そうした場合には、バリアフリーに関係する当事者意見を取り入れる方法も考えておく必要があったのではないかと考える。 (2) 従前の市民説明会とは異なる特殊性 ア 問題意識 ・通常とは異なる試みをしていたにもかかわらず、通常と同じような意識で事前準備をしていたのではないか。 イ 検証結果 ・無作為抽出によりアンケートを送付し参加者を決定する方法は、名古屋市では、通常、実施してない運営方法であった。 ・毎年実施している市民向け説明会は、希望者による自由参加であったため、参加者の傾向が異なると考えられた。 ・再受託業者においては、名古屋市の事業において、平成25年度に無作為抽出でアンケートを送付し市民ミーティングを実施した経験があった。 (巻末資料B第2回検証委員会資料5-2(3月15日副市長レク資料「名古屋城木造復元 昇降技術に関する市民意見の聴取 企画書」(参考)過去の事例)) (巻末資料?第4回検証委員会資料●みちまちミーティング) ・市から市民へ説明を行う市民向け説明会は毎年実施しているが、その際は、市民へ説明し市民から質問を受ける形式であって、意見聴取という方式は実施したことがなく、準備段階 16ページ から受託業者に依存する状況であった。 ・毎年実施している市民向け説明会と同様の意識で準備を行っていた。 ・1月に実施した市民向け説明会において、質疑応答の際に一方的な雰囲気になっていなかったことから、今回もそのような雰囲気にならないと考えていた。 ・市民意見の対立によるトラブルを想定した準備はされていなかった。 ウ 評価 ・毎年の市民向け説明会等で司会進行に慣れている受託業者への信用から、責任の所在が揺らぎ、場のコントロール・進行のチェックに甘さ・慣れ・油断が生じていたと思われる。 ・トラブルに関する名古屋市の運営体制や役割分担は、不十分かつ不明確なものであったと考えられる。 ・これまで実施していない運営方法であったため、トラブル対応等も含めて、これまで以上に事前準備等で注意する必要があった。 ・特に、市民が自由に発言するということであれば、あらゆる可能性を想定すべきであった。 ・職員は、スケジュールの厳しさや業務負担感を非常に感じており、事前準備において、さまざまな想定ができない状態になっていたと思われる。 (3)運営体制−@ ア 問題意識 ・本件事案の性質からすれば、市民から対立する意見が表明される可能性は十分に予見できたはずで、必要な事前準備はできていたのか。 ・参加申込書では、「参加動機」の記入を求めていた。(巻末資料?第2回検証委員会資料6-3) ・意見対立のあるテーマであるため、参加者の強い主張や考え方が表明される可能性も十分考えられるが、その記載内容を精査し関係者で共有できていたのか。 ・討論会の進行上の対策を検討していたのか。 イ 検証結果 ・対立する強い意見は想定していたものの、過去の市民向け説明会での経験上、厳しい意見は市に対して行われるものと想定し市民同士の意見対立は、想定していなかった。 ・過去にも厳しい意見を市職員は何度も受けているため、職員は十分対応できると認識し特別な対応の想定はしていなかった。 ・参加申込書の「参加動機」欄の記述(巻末資料?第2回検証委員会資料6-3)の中には、「障害者に配慮する、その考え方に疑問を持ったから。・・・(中略)・・・障害者が権利を主張するのでしょう。そもそも木造の天守は現在の建確(建築基準法第6条1項)に当てはめられない建物のはず。名古屋市がどちらにしたいかはっきりしないからこういう事になる。」というような一定のリスク発生を想起しうる記述もあった。(56名の参加申込者のうち参加者は36名のため当該意見提出者が参加したかどうかは不明) ・職員は、参加動機欄に目は通していたが、特別な意識や情報共有をすることなく、参加申込書の他の欄(主催者に配慮してほしいこと)のほうに意識が向いていた。 17ページ ウ 評価 ・討論会との名称である以上、論じ合うことは十分予見できたと考えられる。 ・市民にとっては、「討論会」という名称であれば、対立する意見同士で討論するものと認識するのは自然なことであり、市が討論しないことを前提としながら名称を変更しなかったことの影響は大きい。 ・参加動機の記載内容を精査し関係者間で共有できていたならば、討論会実施にあたってのリスク管理の検討や準備ができた可能性もあったものと考えられる。 ・討論会に関する主体的なリスク管理の中で、人権の面での意識が低かった。 ・結果として、討論会の進行上の対策を検討することもなく、差別発言の抑制や、差別発言後に何ら対応できないことにつながった。 (4)運営体制−A ア 問題意識 ・討論会の準備は、令和4年度から令和5年度にまたがる期間に準備が本格化している。 ・この時期は、人事異動により新旧担当者間で業務の引継ぎが行われるとともに、令和5年4月9日には、名古屋市市議会議員選挙が行われたこともあり、相当厳しい時間的制約の中で行われたことが予想される。 ・この時期特有の事情も踏まえてスケジュールの検討がなされたか。 ・討論会の開催時期は、例年8月に開催される文化庁の復元検討委員会に間に合うようなスケジュールで設定したようであるが、討論会の準備期間として十分であったのか。 イ 検証結果 ・副市長から「設置しない」又は「1階まで」で整備基本計画をまとめる指示があったことを受け、名古屋城総合事務所はリスク評価を行い、副市長以下で「大天守1階までのバリアフリー案」「市民対話を通じバリアフリー案を策定」「大天守最上階までのバリアフリー案」の3案を確認した。(巻末資料?第2回検証委員会資料5-2(令和5年2月7日副市長レク資料「特別史跡・・・バリアフリーの方針について」) ・リスク評価として、「市民対話を通じバリアフリー案を策定」する場合については、「令和5年度に基本計画を提出できない」とされ、方針決定には約2年かかる見込みであった。 ・令和5年3月上旬に企画した際、討論会の実施時期は7月下旬に設定したが、その後、文化庁の復元検討委員会が例年開催される8月を目標に逆算して5月下旬に前倒しされている。(最終的に6月3日となった。)(巻末資料?第2回検証委員会資料5-2(令和3月10日局長レク資料「名古屋城木造復元 昇降技術に関する市民意見の聴取 企画書」のスケジュール部分抜粋)) ・名古屋市総合事務所からはスケジュールが厳しいことの認識を局長や副市長に示していた。 ・局内の検討で、本討論会の特殊性を十分に認識することなく、これまでの一般的な市民向け説明会の経験を根拠に、8月に向けた結論ありきで、各時期に具体的スケジュールを組んで進めることとした。 ・無作為抽出によりアンケートを送付し、参加者を決定する方法は、名古屋市では、通常、実施 18ページ してない運営方法であった。 ・毎年実施している市民向け説明会の経験を活かしていることは確認できたが、参加者の傾向や市民からの意見聴取を行う点など従来の市民向け説明会とは異なる点の想定や検討は確認できなかった。 ウ 評価 ・局長・副市長としては、本件討論会の特殊性を十分に認識しないまま、過去の市民向け説明会での経験からスケジュール的に十分であると判断していた。 ・一旦、文化庁への申請に合わせたスケジュールが定められた以上、名古屋城総合事務所からすれば、たとえ無理であったとしても、そのスケジュールに合わせようとするものと考えられる。 ・その結果、討論会の実施そのものが目的化し、ある意味、作業的に準備を進めるだけになり、前述の特殊性を踏まえた検討作業を十分にできなかったものと推察される。 ・スケジュールを短縮するのであれば、それに見合う意見聴取方法の見直しや一時的にでも職員の応援体制を実施するなどの対応も考えられたのではないか。 ・スケジュールの短縮が、討論会の特殊性を踏まえた十分な検討や準備を行うことができなかった要因となったことは否定できない。 (5)運営体制−B ア 問題意識 ・受託業者との間で、討論会の目的、参加動機の共有、意見対立が生じた場合の対応策を含めた当日の進行等、十分な連携が図られる必要があるが、受託事業者との打ち合わせは十分に行われていたのか。 イ 検証結果 ・毎年実施している市民向け説明会を実施してきた受託業者への信頼がうかがえた。 ・週一回程度、直接会って打ち合わせを行っていた。 ・参加者の傾向が異なることや、市民への説明ではなく、市民から意見を聞くという形式という点で毎年の市民向け説明会と異なる運営や想定が求められるところ、新たに必要となる対応について十分な打合せや検討は行われていなかった。 ・討論会の目的に関連して、昇降技術を設置すること自体は決まっていることは、打合せする中で受託業者も理解しているだろうとの認識で、明確には伝えていなかった。 ・受託業者は、昇降技術の設置が決まっているという認識はなかった。 ・無作為抽出によるアンケートで参加者を募って討論会を実施する方法は、職員側に経験がないため、基本的には、事業者の提案を受けながら進めていた。 ・事業者からは、討論会での市民発言について、「司会が質問票を読み上げ、書いた人をあてて補足をしてもらう。」する形式で提案していたが、市側から挙手制とするよう指示していた。 ・様々な意見が出る可能性は織り込み済みと事業者へ連絡しており、事業者は一定のリスクを感じており、市側はそのリスクに対応する意向を示していたことがうかがえる。 19ページ (巻末資料?第4回検証委員会資料●4月20日メール) ・再受託業者においては、名古屋市の事業において、平成25年度に無作為抽出でアンケートを送付し市民ミーティングを実施した経験があった。 ・受託業者が提案した当初の企画段階では、「市民ミーティング」として、ワークショップ形式で市民が意見を出し合い相互理解を深め結論を出していく方法であったが、最終的には、市が意見を聞くという形式になった。 (巻末資料B第2回検証委員会資料5-2(3月15日副市長レク資料「名古屋城木造復元 昇降技術に関する市民意見の聴取 企画書」(参考)過去の事例)) (巻末資料?第4回検証委員会資料●みちまちミーティング) ウ 評価 ・運営上、予定されている事項の検討中心となり、いわゆる不測の事態の想定に考えが及んでいなかった。 ・一般的なリスク管理や対応は市側が指示すべきであった。 ・受託業者の企画当初のイメージとは、異なる形式となったため、より綿密な打ち合わせや意識のすり合わせが必要であったが、それが十分にできていなかった。 ・討論会について、受託業者は市民が異なる意見を知ることで相互理解を深めることという認識であり、市側は市長に直接の生の市民の声を聞いていただくことという点でずれており、各検討の詰めや運営の方向性、各種判断に影響したと考えられる。 (6)運営体制−C ア 問題意識 ・名古屋城総合事務所の担当職員に過大な負担がかかっていなかったか。 イ 検証結果 ・昇降技術担当主幹の超過勤務は、4月に62.25時間、5月に81.5時間 ・保存整備室所属の他の課長級職員4名は、超過勤務ほとんどなし ・係長級職員は、育児により、可能な限り超過勤務がないよう配慮を受けていた。 ・担当職員のうち1名は4月に52時間、45時間、他1名は4月に17時間、2時間 ウ 評価 ・本討論会に直接的な影響があったかどうか判断し難いところではあるが、職員の体制として、一部の職員の残業時間が多いことが確認されており、改善すべき点であると思われる。 ・課長級職員の業務量のアンバランスが顕著であり、一時的、部分的にでも所内の連携・協力体制を図ることで事業の検討等をより慎重にできた可能性もあるのではないか。 (7)運営体制−D ア 問題意識 ・YouTubeでライブ配信を行ったが、ライブ配信する以上は、殊更、不測の事態に備え、十分な検討と準備が不可欠であるが、そのような意識があったか。 イ 検証結果 20ページ ・YouTubeでのライブ配信は、1か月前になって名古屋市から受託業者に求めたことが確認されている。 ・個人が特定されないようにといったプライバシーについては注意していたが、不測の事態は想定していなかった。 ウ 評価 ・受託業者からすれば、名古屋市に求められた以上、実施せざるを得ず、それに伴うリスク管理を含む検討等の責任の多くは、名古屋市にあるものと認められる。 ・情報が世界に発信されることへの影響について職員の意識はなかった。全体としてリスク管理意識が低いと言わざるを得ない。 (8)運営体制−E ア 問題意識 ・差別事案が発生した際の対応マニュアルに関して、十分に周知・徹底されていたのか。 イ 検証結果 ・差別事象マニュアルに対する職員の認識が薄い。 ・差別事象マニュアルはあるものの咄嗟のときに使えるものではない。 ウ 評価 ・差別事象マニュアルの内容は不十分である。 ・ある程度の汎用性は必要だとしても、実際の現場で、いざ職員が目の前にして判断して使えるか疑問である。具体的な想定事例や実例など実用性を高めておくべき。 ・その周知の不徹底さは非常に大きな問題である。 ・適切なマニュアルがあり十分に認識されていれば、討論会実施にあたってのリスク管理の検討や準備ができた可能性もあったものと考えられる。 21ページ 3 当日の運営の実施・責任体制 (1)市長の出席 ア 問題意識 ・市長の日頃の発言を踏まえると、市長が討論会に出席することで、参加者の発言や雰囲気に影響を与える可能性があり中立性の点で問題はなかったか。 イ 検証結果 ・討論会実施のきっかけは、直接、市長に市民の生の意見を聞いていただくことであった。 ・市長自身は、名古屋城の最終責任者として、市民の意見を聞く立場であるので、当然出席するものと認識していた。 ・市長の冒頭あいさつは短時間であり、フラットな意見、思いの丈をお話しいただきたいという趣旨が中心であり、市長の昇降技術に対する意向は表明されていない。 ウ 評価 ・討論会を実施するという前提においては、そのきっかけが、直接、市長に市民の生の意見を聞いていただくことであったため、市長の出席は必然であった。 ・市長の冒頭あいさつは、短時間であり、内容も公平性を欠くものとまでは言えないと考えられる。(巻末資料?第1回検証委員会資料4 市長あいさつ抜粋) ・ただし、市長が参加することにより、市長の意向に賛成の人も反対の人も市長に自己の主張をアピールしようといった意識が働いてしまう可能性は否定できない。 ・本討論会での差別発言が市長出席の影響を受けたかどうかは、客観的な根拠がなく判断できない。 (参考) ・討論会後のアンケート結果で、36名中8名の方が参加前後で考え方の意見を変えている。(巻末資料S第2回検証委員会資料7) ・当日参加者の考えに影響を与えたと思われる昇降技術に関する新たな情報は、有識者や説明資料、他の参加者の意見であり、市長からは昇降技術に対する意向表明がなかった。 ・市長の影響があったと裏付ける根拠は見つけられなかった。 《討論会後のアンケートにおいて、討論会参加前後での意見がどう変化したかを示す表》 区分、討論会前後の考え方、人数の順に記載 区分 変化なし(28名) 変化なし 28名 区分 不明(2名) わからない・その他⇒1階 1名 1階まで⇒わからない・その他 1名 区分 上の階へ変化(2名) 設置しない⇒最上階(5階)まで 1名 1階まで⇒最上階(5階)まで 1名 区分 下の階へ変化(4名) 1階まで⇒設置しない 2名 最上階(5階)まで⇒設置しない 1名 最上階(5階)まで⇒わからない・その他 1名 22ページ (2) 運営・進行 ア 問題意識 ・討論会の目的を市民が理解し、当日の運営・進行が適切に行われていたか。 イ 検証結果 ・討論会の中で「エレベーターの設置は決定しているのですか」という市民の質問に対して、「市民の皆様からのご意見をまずはお伺いしたい・・・エレベーターの設置については、そこからまたご意見を聞いて考えてまいりたい」(主幹)と回答していた。(巻末資料?第1回検証委員会資料4 17ページ) ・討論会の中で「本討論会で意見対立しているのでしょうか、この問題設定がよくわかりません」という市民の質問に対して、「最終的にこれどういうふうに昇降技術を活かしていくのか、活かさないのか、そういったことについての我々としてしっかり市民の皆様のご意見を参考にさせていただきたい」(所長)と回答していた。(巻末資料?第1回検証委員会資料4 20ページ) ・討論会の中で「外付けのエレベーターは計画していませんか」という市民の質問に対して、過去からの検討結果として外付けのエレベーターは付けないこととした経緯を説明したのち、昇降技術について「ご意見をいただきながら、しっかり考えさせていただきたい」(主幹)と回答していた。(巻末資料?第1回検証委員会資料4 24ページ) ・実際に討論会での市民の意見としては、エレベーターあるいは昇降技術について、設置するか、設置しないかの議論となっており、設置を前提にどの階まで設置するかの視点での意見はなく、市からの回答にもそうした補足説明はなかった。 ・討論会参加申込書と同封のアンケート協力お願い文書に記載の意見聴取の目的について、当初は、「昇降技術をどこまで設置するのか」(巻末資料D第2回検証委員会資料5-2 3月28日局長レク資料アンケート協力お願い文)と明記されていたものが、市長レクでの意見をもとに「昇降技術の設置について」(巻末資料K第2回検証委員会資料6-1 アンケート協力お願い文)と変更されていた。(議論の詳細は記録がなく不明) ・討論会での意見やアンケート等をみると、昇降技術とエレベーターの違いについて、市民は十分に理解されていなかった。 ウ 評価 ・討論会当日の市民の質問や表明意見、終了後の感想記入用紙を見るかぎり、多くの参加者は昇降技術の設置が確定していると認識していないと考えられる。 ・アンケートの協力お願い文に記載した意見聴取の目的や、アンケートの選択肢、討論会当日の職員説明は、市民にとっては、昇降技術を設置しないことも含めて意見聴取していると認識する内容であり、その誤解が差別発言を誘発することにつながったと考えられる。 ・昇降技術をどこまで設置するのかを聞くのであれば、誤解のないよう昇降技術の設置は決定していることを表明してから議論していれば問題が発生しなかった可能性も考えられる。 ・外付けエレベーターを求める市民に対し、市の方針として外付けエレベーターを設置しないことを決定している説明をしたが、逆に、バリアフリーは不要との意見に対しても、同様に市の方針として昇降技術の設置は決定していると説明をすべきであり、公平性の点で疑問が 23ページ ある。 ・市の方針に反対の市民も当然いるので、市民の忌憚のない意見を聴くということで、意見聴取の目的に合わない意見であってもそのまま受け止めるという運営も考えられるが、今回は、対立する意見の一方のみ聞き、一方は否定しており、公平性の点で疑問がある。 ・公募で選定された昇降技術については、エレベーターを希望する市民と焼失前の姿を希望する市民の対立する意見がある中で、その両立を市が求めた結果であるが、その経緯が理解されていない。 ・意見聴取のきっかけは、昇降技術の設置に賛成・反対という論点から始まっており、意見聴取の目的としては、昇降技術の設置は前提としてどの階まで設置するかという論点であり、そのずれが、討論会の企画運営に影響(アンケート選択肢、討論会での説明)して、参加市民に討論会の趣旨を誤認させ、引いては差別事案の発生につながった可能性がある。 (3) 差別発言への対応−@ ア 問題意識 ・差別発言を含んだ意見に対して起きた拍手で、会場の雰囲気が差別的な発言を容認する雰囲気になっていたのではないか。 イ 検証結果 ・相手を貶める発言や差別発言を含んだ意見に対して、会場で拍手が起きた。 ・他の賛成・反対意見を聞く議論においても、自分たちを大きく見せようとして拍手が起きることはあるとのことだった。 ・参加者全体が責める雰囲気になったと感じる職員、違和感や嫌悪感を感じた参加者もいたと感じた職員、受け取りはさまざまであった。 ・相手を貶める発言や差別発言を含む意見に拍手が起きたが、そのまま運営が続行され、終了した。 ウ 評価 ・拍手によって、意見全体の賛同が一定数あると感じ、会場の雰囲気が差別的な発言を容認する雰囲気になっていたのではないかと考えられる。 ・参加者全体から責められている感じを受けることがないよう、参加するすべての市民が相互に尊重し合い、安心して議論することができるように参加者の協力を求めるアナウンスを伝え、主催者の意思を明確に届ける必要があった。 (4) 差別発言への対応−A ア 問題意識 ・職員がなぜ止められなかったのか。差別発言や拍手があった後や、会議終了時に何らかおわび等のアナウンスができなかったのか。 ・差別発言を含んだ市民の意見は、昇降技術をしない主張だったことから、市長の意に沿った発言と受け止め、市職員がそれを止めることに躊躇する気持ちが働いたのではないか。 イ 検証結果 24ページ ・一人目の方の時は言い合いになって、職員が止めに入って一旦おさまった。 ・2名の差別発言があったが、その直後で最後に発言した参加者が対立意見をうまくまとめて収まって安心したとの認識もあった。 ・差別発言をした方の発言には、「河村市長が造りたいと言ってるのは、エレベーターも電気もない時代に造られたものを再構築するって話なんです」「家康が造ったそのものを作る。(中略)エレベーターは必要ない」という、市長を明示した発言や日頃の市長発言を意識した表現も見られた。 ・事前のシミュレーションができていなかった。 ・いわゆる差別用語については、これまで一度も聞いたことがないため知らなかった職員が複数いた。 ・受託業者は当日の運営・進行全般の役割を果たすことに注力しており、討論会当日の差別発言があまり聞こえておらず、翌日の報道で詳細を知った。 ・司会の受託業者は、2人目の差別発言は聞こえていなかった。1人目の言い合い(具体的差別発言は認識できず)では、市民が思いを持って参加し発言しているのを、主催者の市ではなく司会の権限で止めてよいのか戸惑いがあった。 ・討論会終了後に参加者が会場から退室する際、差別発言を受けた方へ職員は誰も声掛けをしていない。 ・市長や職員・受託業者の誰もが、本件討論会の意義として、無作為抽出で普段、意見表明をされない市民が参加し自由に発言するということに非常に高い価値を認めていた。 ・検討の段階でも、参加希望者が定員100名に満たなかったことに対し、広く市民の意見を求めるのであれば追加募集も考えられたが、無作為抽出の参加者の発言であることの有意性を優先し追加募集は行わなかった経緯があった。 ・毎年実施している市民向け説明会では、賛成・反対の両極端の参加者ばかりであったため、市長以下、偏りのない意見の参加者を期待していた。 ・障害者差別解消の担当職員が出席していたが、名古屋城総合事務所が要請したわけではなく、情報提供した結果、傍聴として参加していた。 ウ 評価 ・動けなかった理由のひとつには、事前の想定、シミュレーションができておらず、身体がうごかなかったということがあげられる。 ・その場で、差別発言がおさまっても、差別発言があった事実が消えるわけではないという認識がなく、市職員として差別に対する問題意識が欠如していた。 ・主催者である市が差別を容認したと受け取られないよう、できるだけ早く市の姿勢を毅然と示すことが必要であった。 ・対立する意見の参加者間での言い合いがまずいとの認識はあったが、差別発言含まれていた認識が職員にどれほど当日あったのか、討論会終了後に差別発言を受けた方へ駆け寄ることもなかったという言動の不一致の点からもから疑問が残る。 ・受託業者が、無作為抽出による市民が自由に発言することに意義がある会議で、市民の発言を制止・注意することに躊躇する場合は、市に相談すべきであった。 ・受託業者は、タイムスケジュールの中で討論会の運営を考えながら進めており、同時並行で 25ページ 対応策を考えるのは難しい面もあるため、想定外の事案発生については、会全体を監理する市職員が直接対応し、あるいは、受託業者に指示すべきである。 ・差別用語については、ある意味、障害者理解が進み日常生活で見聞きする機会がなくなって、若い職員ほど知らないという状況はあるので、差別用語の認知度への対策をどうするか考える必要がある。 ・名古屋城のバリアフリーについては、過去から障害者に対する差別的言動が激しいことがわかっている。市民への障害者理解を進めるためにも、健康福祉局も関わることが今後の差別事案防止・障害理解の点でも有用であると考える。 ・主催者として出席要請はしていなかったため障害者差別解消の担当職員には正式な役割はなかったが、討論会は参加市民が限定されていたことからすると、職員の立場で出席したと考えられるため、その職責からある程度の助言や対応をいただくことも可能ではなかったかと考える。 ・市民に自由な発言を求めるにあたり、自由な発言がしやすい環境を整えることは重要であると考えるが、自由な発言を求めることと発言を制止することは相反するため、特に事前のアナウンスが重要になる。 ・市民の自由な発言であっても差別発言は許されるものではないため、自由な発言を促す場合であっても、対立する意見もお互い尊重して意見しましょうという事前アナウンスをするなど対策をとることは十分可能である。 ・差別発言を受けた方へ討論会終了後にでも駆け寄ることができなかったのは、極めて職員としての意識が低く問題である。 【別紙によりご議論ください】 (5) 差別発言への対応−B ア 問題意識 ・市長は発言の制止や注意をすべきではなかったか。 ・「熱いトークもあってよかった」との発言は、差別を容認したと市民に受け取られないか。 イ 検証結果 ・毎年実施している名古屋城の説明会では、毎回特定の意見の方が参加し毎回同じ発言をしていたことから、今回、通常実施したことがない無作為抽出で選ばれた参加者が自由に発言する運営方法に市長は強い思いを持っていた。 ・参加申込書(巻末資料?第2回検証委員会資料6-3)によると、ほとんどの参加者が市民参加型の会議の出席がはじめてであった。 ・市長の国会議員時代の経験上、自由参加の市民集会では、特定のグループが参加し「やらせ」がありうるものと認識していた。 26ページ ・市長は、差別発言が出たのは想定外だったが、無作為抽出で参加してくれた方が自由に発言してくれることに非常に喜びを感じていた。 ・市長は、差別発言はいけないが、それよりも、無作為抽出で参加してくれた方が発言してくれたことがよかったという思いが強かった。 ・よかったと言ったのは、差別発言した参加者以外の発言とのことであった。 ・市長は、討論会後、会議の冒頭で、自由な発言であっても相手を尊重すべきなど注意喚起をすべきであったと考えるようになったものの、市民の自由な発言を尊重することに強い思いがある。 ウ 評価 ・無作為抽出での運営方法や参加市民が自由に発言することについて、市長が高く評価するのは市長の政治スタンスにも関わることである。 ・一方で、差別はいかなる場合でも許されるものではなく、仮に当日に発言全体が正確に聞き取れていなかったとしても、直後の記者会見等で、差別は許されないという市のスタンスを明確にすべきであった。 ・差別発言が聞こえていたのであれば、仮にその場で動けなかったとしても、会議終了までに職員は何らかの手段で市長に進言すべきであったが、その意識が全くなかった。 ・市長の閉会あいさつを聞いている市民としては、市長が、差別発言を不適切と指摘していないことから、すべての発言を「よかった」と指していると認識した可能性が高いと思われる。 ・むしろ「熱い」という表現からは、過激で強い口調だった発言を評価したとさえとらえられかねないため、後日であっても、差別発言に対して積極的に問題提起すべきであった。 ・市長の立場として、市民の自由な発言を尊重するのは理解できるが、公職者として、差別発言には、敏感になってほしい。 第5 ただちに取り組むべき再発防止の対応 ・YouTube配信の危険性に対する基本的な情報管理上のルールづくり ・差別用語自体を知らない若手職員への対応検討 ・トラブルを想定した実践的なマニュアル・ガイドラインの検討 27ページ 第6 今後の検証に向けて ・討論会当日に関わる直接的な原因究明の結果は、以上に述べてきたとおりである。 ・本事例では、名古屋城バリアフリー整備に関する過去からのさまざまな状況が影響を及ぼしていると類推された。 ・したがって、本事例の全体像を明らかにするためにも、そうした状況として、名古屋城のバリアフリーに関連する障害者への差別意識や職員の苦悩、葛藤といった点など、討論会以前からの遠因と考えられることについて、さらなる検証を行う。 改ページ 【参考資料】 資料1 「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会設置要綱 資料2 名古屋城木造天守への昇降機設置への賛否まとめ 資料3 令和5年3月15日副市長レク 令和5年度市民意見の聴取 企画書 資料4 市民討論会の開催に関するレクについて(第2回検証委員会資料5-2) 資料5 令和5年3月28日局長レク アンケートお願い文 資料6 令和5年3月28日局長レク アンケート調査票 資料7 名古屋城バリアフリーに関するアンケート報告書(第2回検証委員会資料6-2) 資料8 差別発言部分【一部非公開箇所あり】(第1回検証委員会資料5) 資料9 当面の対応について(第2回検証委員会資料1) 資料10 差別事象への対応について(対応マニュアル)(第1回検証委員会資料14) 資料11 障害を理由とする差別の解消の推進に関する名古屋市職員対応要領(令和5年12月) 資料12 名古屋城バリアフリーに関するアンケートへのご協力のお願い(第2回検証委員会資料6-1・抜すい) 資料13 文化庁提出までのスケジュール(令和5年6月2日局長レク資料) 資料14 名古屋城バリアフリーに関する市民討論会開催までの経緯(第1回検証委員会資料5-1) 資料15 令和5年5月26日局長レク 名古屋城木造天守のバリアフリーの方針(案) 資料16 名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募 公募要項(抜粋) 資料17 木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針 資料18 アンケート調査票(第2回検証委員会資料6-1・抜すい) 資料19 名古屋城バリアフリーに関するこれまでの経緯 資料20 感想記入用紙【一部非公開箇所あり】(第2回検証委員会資料7) 資料21 令和5年2月7日副市長レク 特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画に取りまとめるバリアフリーの方針について 資料22 みちまち市民ミーティングの開催 資料23 討論会参加申込書(抜粋)(第2回検証委員会資料6-1)  資料24 市民討論会参加申込書の項目(抜すい)(第2回検証委員会資料6-3) 資料25 全体スケジュール(案) 資料26 市民討論会会議録(抜すい・市長発言)(第1回検証委員会資料4) 資料27 名古屋城整備事務所から委託業者へのメール(抜すい)(第4回検証委員会資料1別添) 資料28 市民討論会会議録(抜すい・職員発言)(第1回検証委員会資料6-3) 改ページ (資料2 P.25 別紙) 〇意見@ ・本討論会の当日の運営の中心である名古屋城総合事務所の市職員は、1階以上にも昇降装置を設置することに積極的であったことも確認されていることから、市長の意に沿った発言と受け止めたために、市職員が対応に躊躇した可能性は低いものと判断している。 〇意見A ・市長の意に沿った発言がされたという印象を受けたことから、名古屋市職員が発言を止めることに躊躇したおそれがあると考える。 〇意見B ・一方で、無作為抽出で選ばれた市民に自由に発言いただくことについて、検討段階から市長が非常に重き価値を置いた発言をしており、職員も委託業者も、過去の市民向け説明会の経験から、皆、同様の認識でいた。 ・そうした市長や職員が非常に重視する市民の自由な発言であったことから、制止や注意することに対して躊躇した面もあるかと思われた。