資料3 非公開 〇検証委員会の問題意識と検証 1 「討論会」とされた経緯 (1)問題意識 ・〔「討論会」の目的と内容の不一致〕昇降機設置を前提として、それを何階まで付けるかどうか。その判断材料として、市民の意見を聞く。ただし、5000人アンケート等を見た場合、必ずしも、そうした目的と一致していない。 ・〔市民討論会の目的について〕「公募で選定した昇降設備の設置について意見を伺うことを目的」(観光文化交流局)。公募の技術の搭乗・設置イメージを示し、意見を伺うこととした。(第2回検証委員会 資料10回答より) ・〔「討論会」という名称の問題〕当初はミーティングであったものが、途中から討論会に代わり、疑問を持ちながらも修正に至らなかった。討論会の目的と内容の不一致と合わさって、必要以上に意見の対立を生み、本件差別発言の行われる契機になった。上下水道局のことも踏まえれば、名称修正の可能性はあったはず。 ・〔「討論会」の名称について〕参加した市民の発言から“議論”の場として意識していたことが伺える。「討論会」の名称であったことが、参加者の意識に影響していたのではないか。 (2)検証結果  本検証委員会では、前記問題点を検証するため、本討論会の開催に関係する名古屋市職員にヒアリングを行い、以下のような結果を得た。 (3)評価 2 事前の準備 (1)問題意識 ・無作為抽出の5000人アンケートから希望者を募ることで、偏りのない市民の意見を聞こうとする試みそのものは、多様な方法で市民の意見を聞こうとするもので否定されるものではないが、これまで名古屋市が行ってきた方法では異なる方法であるため、トラブル対応等も含めて、これまで以上に事前準備等にも注意が必要であった。 ・通常とは異なる試みをしていたにもかかわらず、通常と同じ感じで事前準備をしていたのではないか。 ・本件事案の性質からも、市民から対立する意見が表明される可能性は、十分に想定できたはずであり、そのことを踏まえれば、十分な準備がなされていたとは考え難い。 ・〔市民一般を対象とした事業について〕公募結果の公表後、市長や副市長、観光文化交流局等に、直接多数の市民から意見が寄せられていたが、無作為抽出によって広く市民の意見を聞くこととなった。そのため、5000人アンケートを4/19に発送するに至ったが、名古屋城のバリアフリーについて市民の意見を聴取する初めての機会となった。 ・〔5000人アンケートについて〕アンケート調査票において、「「史実に忠実な復元」に最大限配慮しながら、バリアフリーに対応するため、昨年度に「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」を実施し、最優秀者を決定したところです。復元する木造天守への昇降技術の設置について、市民のみなさまのご意見を頂戴し、名古屋市の方針を決めてまいりたいと考えております。」と書かれている。昇降技術の設置について意見を求めており、しかもこの時点で市長が「1階までは昇降技術をつける」方針が示されていたのであれば、「設置しない」「1階まで」「最上階(5階)まで」のうち「設置しない」を含めず、バリアフリーの範囲を問うものとすることとなり、意見の対立を抑えることができたのではないか。 ・〔5000人アンケートについて〕アンケート調査票において、「参加動機」の回答を求めていたが、記載されていた内容を事前に共有していなかった。「参加動機」に書かれていた内容を共有していたら、問題発生のリスクを感じることができたのではないか。 ・YouTubeへの配信そのものも、本件討論会の内容を広く市民に共有する試みとして否定されるものではないが、そうした試みを予定していたのであれば、なおのこと事前準備が重要となる。 ・〔YouTube配信について〕いつ、だれの指示で生配信という方法となったのか。リスク管理に不安を感じなかったか。 ・(通常のものであれば、大丈夫であったのかもしれないが)新しい試みであったにもかかわらず、十分な検討をする時間的余裕はない。 ・〔市民一般を対象とした事業について〕市民を対象(市民対象にこだわった)としていた。市民に広く意見を求めるという姿勢であったことから、様々な意見が出されることが予想されていたにも関わらず、準備に余裕がなかった。 ・〔準備不足の背景について〕時期(開催時期・発案時期)から実施までの日程が短期間 ・〔5000人アンケートについて〕職員の異動時期、選挙などの時期等を考慮した場合に、スケジュール的にかなりタイトであった。スケジュール的に難しい場合には変更可能といっても、担当機関からすれば、強行せざるを得ない心理状況にあることは、想像に難くない。 ・〔準備不足の背景について〕年度をまたぐ事業のため、主担当者の人事異動(経緯・事業の理解と慣れない現場などの負担) ・〔準備不足の背景について〕局長をはじめとした人事異動・職員体制など ・残業時間などを考えた場合、一部の職員に業務が偏っており、その点でも不適切 ・〔準備不足の背景について〕5000人アンケートと市民討論会、それぞれの企画・実施・準備 ・〔準備不足の背景について〕局長・副市長・市長との調整レクが頻繁に予定され、提案の修正・再提案 ・〔準備不足の背景について〕5000人アンケート・市民討論会を行うことに向けてのモチベーション ・〔本市としてのバリアフリーの方向性にかかわる問題〕市長の意向、副市長、観光文化交流局、名古屋城総合事務所、それぞれの思い。共有の難しさ、バリアフリー方針の不明確さ、どこに向かっていくのか。そもそもバリアフリー方針を明確にできなかった背景。 ・委託業者に依存し過ぎている。 ・委託業者等との意思疎通の不十分さ(目的や趣旨に関する認識の不一致)。 ・委託業者との打ち合わせ(10回程度?) ・トラブル対応を想定できていないため、責任体制も不明確 ・対応マニュアルの不備と不徹底 (2)検証結果 (3)評価 3 当日の運営の実施・責任体制 (1)問題意識 ・〔これまでに実施してきた事業〕1月に実施した「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会」において、質疑応答の際に一方的な雰囲気になっていなかったことから、今回もそのような雰囲気にならないと考えていた。(第2回検証委員会資料10 回答より) ⇒今回の「市民討論会」は、これまでの説明会に参加していない市民対象を想定していたにもかかわらず、過去に実施した事業のイメージで運営を想定していたのではないか。 ・〔当日の進行〕シナリオにない形での運営…「質問・意見用紙」に記載された意見を紹介する際に、記入者へ補足説明を求めることが事前に説明されておらず、司会者から参加者へ補足説明を促していた。(第2回検証委員会資料10 回答より) ⇒あらかじめ設定していない運営がされていたこと、これまでの市民説明会等で司会進行に慣れている委託業者への信用から、責任の所在が揺らぎ、場のコントロール・進行のチェックに甘さ・慣れ・油断は生じていなかったか。 ・〔会場の雰囲気について〕意見を求める二例目で、「質問・意見用紙」から「人間生まれてから死ぬまで平等なことなんて一度だってないんですから、境遇を享受してできる範囲で生きていきたいし、そうしてほしいです」という意見を読み上げていたが、この意見は「昇降機をつけない派」として紹介されたかと思われるが、この後の差別発言の伏線になっていないだろうか。 ・〔会場の雰囲気について〕「我慢せよ」と発言した意見と、差別発言を含んだ意見に対して拍手が起きた。このことによって、会場の雰囲気が差別的な発言を容認する雰囲気になっていたのではないか。 ・〔会場の雰囲気について〕差別発言を含んだ市民の意見は、昇降装置を付けない派だったことから、市長の意に沿った(忖度した)発言と受け止め、名古屋市職員がそれを止めることに躊躇する気持ちが働いたのではないか。 ・〔運営に関するマニュアルの整備について〕一般市民を対象とした事業の運営においてのマニュアルの整備が必要ではないか。自由な発言を期待する会において、市民が相互に尊重し安心して議論できる運営が必要ではないか。 ・職員がなぜ止めに入れなかったのか。 ・会議終了時に何らかおわび等のアナウンスができなかったのか。 (2)検証結果  本検証委員会では、前記問題点を検証するため、本討論会の開催に関係する名古屋市職員にヒアリングを行い、以下のような結果を得た。 (3)評価 4 事後対応 (1)問題意識 ・事後対応にもマニュアルがいるはずだが、不備 ・責任体制の不明確さも関連する。 ・問題意識の低さ。 ・差別発言を受けた方へ市としてすべき対応はできていたのか。 (2)検証結果  本検証委員会では、前記問題点を検証するため、本討論会の開催に関係する名古屋市職員にヒアリングを行い、以下のような結果を得た。 (3)評価 5 問題の背景  (1)問題意識 ・整備に関する方針の揺れによるモチベーションの低下 ・市役所内部でのコミュニケーション不足 ・〔名古屋城整備に対する市職員の意識〕意識が高いからこそ対立も生じる一方で、困難な事案であるが故に敬遠されたり、協力を求めることに躊躇する意識もある。 ・新しい試みがなされることを踏まえた場合の人員配置の不十分性 ・作業的に処理していた。 ・種々のマニュアルの不備 ・市側から市民への情報発信の不十分・不正確性 ・市職員および市民の人権意識 ・職員の人権意識 ・名古屋市の人権施策