名古屋市スポーツ戦略 スポーツで名古屋の未来を照らす 目 次 I.策定の趣旨 1.趣旨 2.位置づけ 3.計画期間 4.SDGs(持続可能な開発目標)との関係 II.名古屋市のスポーツを取り巻く現状と課題 1.日本のスポーツをめぐる現状 2.名古屋市スポーツ推進計画の評価 III.基本理念 IV.名古屋スポーツコミッション(仮称)による新たな取り組み 1.スポーツコミッションの必要性 2.名古屋スポーツコミッション(仮称)の機能等 V.戦略の柱と個別施策 1.戦略1 地域スポーツ振興戦略 (1)地域の活性化 (2)子どものスポーツの充実 (3)アクティブライフの推進・健康増進 2.戦略2 スポーツを活かした都市活性化戦略 (1)官民連携の推進 (2)第20回アジア競技大会の大会モデルの構築・継承 3.戦略3 アスリート・指導者等育成戦略 (1)アスリートへの支援 (2)指導者等の育成 4.戦略4 市民にやさしいスポーツ環境整備戦略 (1)障害者スポーツ等の振興 (2)第20回アジア競技大会及びその後の活用を見据えた施設環境整備 5.戦略5 情報発信戦略 (1)利用しやすい情報発信 (2)効果的な情報発信 VI.数値目標 1.1世帯当たりのスポーツ関連消費額 2.名古屋市に「スポーツが盛んである」という都市イメージを持つ市民の割合 3.スポーツセンター等における障害者の利用人数 4.ウェブサイト年間アクセス件数 VII.参考資料 1.スポーツコミッションに係る調査結果 2.名古屋市スポーツ戦略有識者懇談会 3.庁内会議 VIII.用語解説 名古屋市スポーツ戦略 概要 Ⅰ.策定の趣旨 本市においては、これまで年齢、性別、障害の有無等に関わらず、誰もが安心・安全・快適にスポーツに親しむことができることを目標として、「名古屋市スポーツ推進計画」を策定し、運動・スポーツを「する」「みる」「ささえる」ことで市民のスポーツ実施率向上を目指したスポーツ振興を行ってきました。 こうした中、令和 8(2026)年に開催予定の第 20 回アジア競技大会(2026/ 愛知・名古屋)を一過性のスポーツイベントで終わらせるのではなく、スポーツの持つ幅広い価値を、本市を取り巻く課題の解決に活用する契機としたいと考えています。「2026 アジア競技大会 NAGOYA ビジョン」の示す 4 つのまちの姿(① 健康・地域活力、②魅力・誇り、③国際交流・多様性、④イノベーション・持続可能性)の実現に向けた取り組みを進めるとともに、スポーツにより地域の活性化や都市ブランドの向上を図ることで、にぎわいあふれ、市民が誇りを持てる都市を目指すため、「名古屋市スポーツ戦略」を策定することとしました。 市民のスポーツ実施率の向上を目指す「名古屋市スポーツ推進計画」と、スポーツを活かして都市ブランドの向上と地域の活性化を目指す「名古屋市スポーツ戦略」により、本市のスポーツ振興を図ります。 Ⅱ.計画期間 第 20 回アジア競技大会の開催及びその後を見据え、令和 3(2021)年度から令和 12(2030)年度までの 10 年間を計画期間とします。 Ⅲ.基本理念 スポーツで名古屋の未来を照らす 人を惹きつける力、熱中させる力のあるスポーツを活かし、名古屋の明るい未来を描きます。スポーツにより地域の活性化や都市ブランドの向上を目指すことにより、にぎわいあふれ市民が誇りを持てる都市、活力ある都市を実現します。 Ⅳ.名古屋スポーツコミッション(仮称)による新たな取り組み 名古屋市の特色を活かしたスポーツによる地域の活性化、都市ブランドの向上 スポーツ戦略を推進していくエンジンとしての役割を果たすスポーツコミッションの設立を目指します。スポーツコミッションは、大規模大会の誘致・開催支援やスポーツと文化・観光を掛け合わせ、新たな付加価値を創出するスポーツツーリズムの推進等を通じて、スポーツによる地域の活性化、都市ブランドの向上を目指します。 Ⅴ.戦略の柱 戦略1 地域スポーツ振興戦略 (1)地域の活性化 ①スポーツを活用した地域力の強化 ②地元アスリートの区役所等での紹介 ③スポーツ指導者の発掘・育成 ④スポーツボランティア制度の充実 ⑤アーバンスポーツの振興 (2)子どものスポーツの充実 ①ジュニアスポーツの交流促進 ②トップアスリートOB派遣の仕組みの構築 (3)アクティブライフの推進・健康増進 ①名古屋市発祥の生涯スポーツの振興 ②企業の健康経営 ® の促進 戦略2 スポーツを活かした都市活性化戦略 (1)官民連携の推進 ①スポーツツーリズムの推進 ②トップスポーツチームの地域貢献及び拠点の盛り上げ (2)第 20 回アジア競技大会の大会モデルの構築・継承 ①大規模競技大会、スポーツイベントの誘致・開催 ②大規模競技大会、スポーツイベントをきっかけとした MICE の推進 ③大規模競技大会モデルの構築 ④国際大会や海外チームの合宿・キャンプを通じた交流促進 ⑤テクノロジーを活用した環境整備 ⑥新技術のスポーツへの活用(DX の促進) 戦略3 アスリート・指導者等育成戦略 (1)アスリートへの支援 ①市民がアスリートを支援する機運の醸成 ②有望選手の競技転向支援 ③アスリート支援による都市ブランドの向上 ④ジュニアアスリートサポートの充実 (2)指導者等の育成 ①スポーツ指導者の発掘・育成(再) ②障がい者スポーツ指導員の育成 ③スポーツボランティア制度の充実(再) 戦略4 市民にやさしいスポーツ環境整備戦略 (1)障害者スポーツ等の振興 ①障害者スポーツ等の理解促進・普及振興 ②障がい者スポーツ指導員の育成(再) ③障害者が身近な場所でスポーツに親しむ機会の提供 ④アスリートもパラアスリートもパフォーマンスを発揮できる環境づくり ⑤障害者スポーツセンターのあり方検討 (2)第 20 回アジア競技大会及びその後の活用を見据えた施設環境整備 ①大規模競技大会に向けた施設改修 ②瑞穂公園の整備 ③トップアスリートを身近に感じられる陸上競技場の整備 戦略5 情報発信戦略 (1)利用しやすい情報発信 ①スポーツ関連ウェブサイトの集約 ②市内開催大会等の情報発信 ③スポーツレクリエーション情報システムの運用 (2)効果的な情報発信 ①プロスポーツチームと連携した情報発信 ②学生と連携したスポーツ魅力発信 ③大規模スポーツイベントを通じた機運醸成 ④スポーツ情報センター・スポーツ資料展示室の充実 ↓実現に資する 2026アジア競技大会NAGOYAビジョン まちの姿1 健康・地域活力 まちの姿2 魅力・誇り まちの姿3 国際交流・多様性 まちの姿4 イノベーション・持続可能性 Ⅵ.数値目標 (1)1 世帯当たりのスポーツ関連消費額 41,737 円(2019 年)→55,000 円(2030 年) (2)名古屋市に「スポーツが盛んである」という都市イメージを持つ市民の割合 37.7%(2020 年度)→60.0%(2030 年度) (3)スポーツセンター等における障害者の利用人数(延べ人数) 268,945 人(2019 年度)→350,000 人(2030 年度) (4)ウェブサイト年間アクセス件数 13,073 件(2019 年度)→200,000 件(2030 年度)(ウェブサイト構築後見直し) Ⅰ 策定の趣旨 1 趣旨 国においては、スポーツを通じ国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むことができるスポーツ立国の実現を目指し、平成 27(2015)年 10 月にスポーツ庁が設置されました。また、スポーツに関連する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、地方公共団体やスポーツ団体、国等が一体となってスポーツ立国を実現するための指針として平成 29(2017)年 3 月に「第 2 期スポーツ基本計画」が策定されました。 本市においては、スポーツを通じた健康増進、共生社会の実現を推進する国の基本計画を踏まえて、年齢、性別、障害の有無等に関わらず、誰もが安心・安全・快適にスポーツに親しむことができることを目標として、平成 30(2018)年 2 月に「第 2 期名古屋市スポーツ推進計画」を策定し、運動・スポーツを「する」「みる」「ささえる」ことで市民のスポーツ実施率向上を目指したスポーツ振興を行ってきました。 一方、国のスポーツ基本計画ではスポーツを通じて経済・地域の活性化を推進していることに加え、他の政令指定都市においては、スポーツ行政を教育委員会から市長部局へ移管し、スポーツを通じたまちづくりを行っています。本市においてもスポーツ行政を地域振興等の関連行政と一元的に所掌することで、スポーツを通じて地域の活性化を推進するとともに、スポーツにより都市ブランドが確立することで、にぎわいあふれ市民が誇りを持てる都市を目指すため、令和 2(2020)年 4 月にスポーツ市民局を新たに設置いたしました。 このようなスポーツを取り巻く環境の変化及び局設置の経緯や目的を踏まえ、また令和 8(2026)年には本市がこれまで経験したことのない規模の国際総合スポーツ大会である第 20 回アジア競技大会(2026/ 愛知・名古屋)(以下「第 20 回アジア競技大会」という。)の開催が予定されていることから、この大会を一過性のスポーツイベントで終わらせるのではなく、スポーツコミッション ¹ の設置やスポーツツーリズム ² の推進による地域の活性化等の、既存のスポーツ推進計画とは異なる視点により、スポーツの持つ幅広い価値を、本市を取り巻く課題の解決に活用する契機としたいと考えています。 また、第 20 回アジア競技大会終了後の令和 12(2030)年頃を見据え「2026 アジア競技大会 NAGOYA ビジョン」で示された 4 つのまちの姿(①健康・地域活力、②魅力・誇り、③国際交流・多様性、④イノベーション・持続可能性)の実現に向けた取り組みを進めるとともに、スポーツにより地域の活性化や都市ブランドの向上を図ることで、にぎわいあふれ、市民が誇りを持てる都市を目指すため、基本理念や戦略ごとの効果的な手法(施策)を明確にした「名古屋市スポーツ戦略」を策定することとしました。 市民のスポーツ実施率の向上を目指す「名古屋市スポーツ推進計画」とスポーツを活かして地域の活性化や都市ブランドの向上を目指す「名古屋市スポーツ戦略」により本市のスポーツ振興を図ります。 2 位置づけ 本戦略は、国の「スポーツ基本計画」を参酌し、本市がスポーツを戦略的に活用するための方向性を示したスポーツ分野の個別計画として策定しました。既存計画である「名古屋市総合計画2023」や「2026 アジア競技大会 NAGOYA ビジョン」等との整合を図りつつ、市民のスポーツ実施率向上を目指す「第 2 期名古屋市スポーツ推進計画」とともに、本市のスポーツ施策体系を構築するものです(図表1参照)。 図表1 スポーツ戦略の位置づけ 名古屋市観光戦略 世界中の人が行き交う交流都市・名古屋へ 2026アジア競技大会NAGOYAビジョン まちの姿1 健康・地域活力 まちの姿2 魅力・誇り まちの姿3 国際交流・多様性 まちの姿4 イノベーション・持続可能性 ↑整合↓ スポーツ戦略 第 2 期スポーツ推進計画 ↑整合↓ 名古屋市総合計画2023 (国)スポーツ基本計画 ↓参酌 スポーツ戦略 第 2 期スポーツ推進計画 3 計画期間 第 20 回アジア競技大会の開催及びその後を見据え、令和 3(2021)年度から令和 12(2030)年度までの10年間を計画期間とします。 4 SDGs(持続可能な開発目標)との関係 平成 27(2015)年 9 月の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標(SDGs:Sustain-able Development Goals)を含む「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」が採択されました。SDGs とは、世界共通の目標として健康や教育、経済成長 、気候変動など多岐にわたる 17 の持続可能な開発目標と 169 のターゲットが設定されており、いずれも令和 12(2030)年までの達成を目指すものです。すべての関係者(先進国、途上国、民間企業、NGO、有識者等)の役割を重視し、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指し、経済・社会・環境をめぐる広範な課題に統合的に取り組むものとされています(図表 2 参照)。 また、平成 28(2016)年 12 月に国の持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が決定した「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」では、自治体の各種計画や戦略、方針の策定や改訂にあたっては SDGs の要素を最大限反映することを奨励しており、SDGs は国際社会全体の普遍的な目標であり、地域の持続的な発展にとって重要な目標です。 本市としては、名古屋市総合計画 2023 において、まちづくりの方針の一つとして「SDGs 未来都市として、持続可能な未来を切り開く」を掲げ、計画の施策推進を通じて目標の達成に取り組むこととしています。本戦略においても、SDGs との関係では、スポーツを通じて貢献が期待されているゴール 3「すべての人に健康と福祉を」やゴール 4「質の高い教育をみんなに」に加え、スポーツを活かした都市活性化や市民にやさしいスポーツ環境の整備、国際総合スポーツ大会である第 20 回アジア競技大会の開催等を通じて、ゴール 8「働きがいも経済成長も」、ゴール 9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、ゴール10「人や国の不平等をなくそう」、ゴール 11「住み続けられるまちづくりを」、ゴール 13「気候変動に具体的な対策を」、ゴール 17「パートナーシップで目標を達成しよう」に特に配慮した取り組みを進めます。 SDGs(エスディージーズ)とは SDGs とは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。社会が抱える問題を解決し、世界全体で令和 12(2030)年を目指して明るい未来を作るための 17 のゴールと169 のターゲットで構成されています。 図表 2 SDGs 17 のゴール 出典 : 環境省「すべての企業が持続的に発展するために」(令和 2(2020)年 3 月) Ⅱ 名古屋市のスポーツを取り巻く現状と課題 1 日本のスポーツをめぐる現状 (1)日本のスポーツの潮流 ① 国の動向 a)国の計画動向 国においては、新たなスポーツ文化の確立を目指し、平成 22(2010)年 8 月に「スポーツ立国戦略」が策定されました。当該戦略では、スポーツをする人、みる人、ささえる人の重視や連携・協働の推進が基本的な考え方として掲げられています。平成 23(2011)年 8 月には「スポーツ基本法」が施行され、続いて平成 24(2012)年 3 月には、スポーツを通じてすべての人々が幸福で豊かな生活を営むことができる社会の創出を目指す「スポーツ基本計画」が策定されました。 平成 23(2011)年 6 月には観光庁と関連省庁、関連団体により「スポーツツーリズム推進基本方針」が策定され、スポーツとツーリズムの融合という未来志向の発想が示されました。平成 29(2017)年 3 月策定の「第 2 期スポーツ基本計画」ではスポーツを通じた地域活性化に向けた施策目標として、スポーツ目的の訪日外国人旅行者数 250 万人達成、スポーツツーリズム関連消費額の 3,800 億円到達、地域スポーツコミッションの設置数を 170 とすること等が掲げられています。 「成長戦略フォローアップ」(令和 2(2020)年 7 月 17 日閣議決定)では、新型コロナウイルス感染症 ³ の影響によりスポーツ活動の急激な縮小が余儀なくされているものの、今後感染予防に最善を尽くしつつ、段階的にスポーツ活動を再開・本格化させていくとともに、地域スポーツコミッション等が行うスポーツツーリズムの取り組みを着実に推進することとされています。 こうしたことから、新たな生活様式のもと、スポーツ活動を本格化するための取り組みの一つとして、官民連携組織であるスポーツコミッションの設立やスポーツツーリズムをはじめとした地域の特色を活かした取り組みを国としても進めています。 b)スポーツを通じたまちづくり 文部科学省において平成 29(2017)年 3 月に策定された「第 2 期スポーツ基本計画」には、スポーツを資源と捉え、地域の魅力づくりやまちづくりの核として地域経済の活性化に活かす考え方が明記されています。 スポーツ推進にあたり、これまで取り組まれてきた施策は、スポーツそのものに焦点を当て、スポーツへの参画人口を増やすためのスポーツ活動を推進する取り組みでした。現在では、スポーツを地域の魅力あるコンテンツと捉えてまちづくりに活用することで、域外に訴求する施策の取り組みが進んでいます。具体的には、スポーツと観光を掛け合わせたスポーツツーリズムや、スポーツツーリズムの一種として、その土地らしさが滲み出る武道と観光を組み合わせた武道ツーリズム ⁴ を推進する動き等が挙げられます。 また、令和 7(2025)年開催予定の「2025 年日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)」に合わせて舞洲のスポーツをPRする等の大規模イベントとスポーツを掛け合わせたスポーツ振興も行われています。 こうしたことから、地方公共団体とスポーツ団体、観光産業等の民間企業が一体となって組織し、スポーツを通じた地域活性化を目指す地域スポーツコミッションの立ち上げ等も盛んに行われ、国全体の動きとして、新たなスポーツの活用方法が脚光を浴びつつあります。 ② 日本のスポーツ市場の動向 a)スポーツ産業の経済規模 国のスポーツ基本計画では、スポーツ市場規模を平成 24(2012)年の 5.5 兆円から令和 7(2025)年までに 15 兆円に拡大することを目指しています。スポーツ基本計画で引用されている国内のスポーツ産業とは、株式会社日本政策投資銀行の発表による小売分野、スポーツ施設業の分野、興業・放送等の分野(旅行、放送・新聞、書籍・雑誌、ゲーム・ビデオ、賃貸等)を指しています(図表 3 参照)。 図表3 スポーツ産業の経済規模 付加価値 スポーツ部門 平成 26(2014)年50,347億円、平成 27(2015)年51,564億円、平成 28(2016)年52,592億円、平成 29(2017)年57,168億円 付加価値 流通部門 平成 26(2014)年10,354億円、平成 27(2015)年10,799億円、平成 28(2016)年10,705億円、平成 29(2017)年11,759億円 付加価値 投入部門 平成 26(2014)年11,355億円、平成 27(2015)年11,829億円、平成 28(2016)年12,301億円、平成 29(2017)年14,965億円 スポーツ GDP 合計 平成 26(2014)年72,056億円、平成 27(2015)年74,193億円、平成 28(2016)年75,598億円、平成 29(2017)年83,892億円 国内総生産(GDP) 平成 26(2014)年5,099,271億円、平成 27(2015)年5,289,589億円、平成 28(2016)年5,282,198億円、平成 29(2017)年5,425,374億円 スポーツ GDP/ 国内総生産(GDP) 平成 26(2014)年1.41%、平成 27(2015)年1.40%、平成 28(2016)年1.43%、平成 29(2017)年1.55% スポーツ GDP 対前年増減率 平成 26(2014)年―、平成 27(2015)年2.97%、平成 28(2016)年1.89%、平成 29(2017)年10.97% 出典 : スポーツ庁及び経済産業省監修 株式会社日本政策投資銀行・株式会社日本経済研究所、同志社大学「わが国スポーツ産業の経済規模推計~日本版スポーツサテライトアカウント 2018~2014,2015,2016 年推計」(令和元(2019)年 9月) 「わが国スポーツ産業の経済規模推計~日本版スポーツサテライトアカウント 2019~2017 年推計」(令和 2(2020)年 3月) b)スポーツ関連消費額の動向 総務省「家計調査」を基にした分析において、令和元(2019)年のスポーツ関連消費額の全国平均(周辺産業は除く。)は、1 世帯当たり 41,570 円 / 年であり、年々増加していることから、スポーツ関連への消費が高まっていることがわかります。特に「3. スポーツ観覧料」の増加は、ラグビーワールドカップ 2019™日本大会の開催が影響していると考えられ、大規模スポーツ大会の誘致が消費を促進し、スポーツ市場拡大に寄与しているといえます(図表 4 参照)。 本市のスポーツ関連の消費額も増加傾向にありましたが、平成 30(2018)年から令和元(2019)年において、大きく消費額が減少しました。主な要因は、「1. 運動用具類」「4. 施設の利用等」の消費額が、平成 30(2018)年度に対し 3,000 ~ 5,000 円程度減少したためです。平成 28(2016)年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの影響により高まったスポーツ消費が落ち着いたと推察されます。 一方、令和元(2019)年の「3. スポーツ観覧料」は前年に対し 3.7 倍程度増加したことは、全国平均と同様にラグビーワールドカップ 2019™日本大会が影響していることに加え、人気の高いプロ野球やプロサッカーにおいても、中日ドラゴンズ・名古屋グランパスの観客動員数が増加しつつあることが要因と考えられます。令和元(2019)年の観客動員数はNPB(一般社団法人日本野球機構)・J リーグ(公益社団法人日本プロサッカーリーグ)それぞれで第 4 位であり、本市における「みる」スポーツへの関心は高まっています(図表 5 参照)。 このような消費の観点から、大規模スポーツ大会の誘致は家庭の消費を促進させ、地域経済の活性化につながっていることがわかりました。特に、「みる」スポーツへの関心が高まっている本市で、大規模スポーツ大会の誘致やプロスポーツの盛り上げは大きな経済効果を生むと考えられます。 図表4 1 世帯当たりのスポーツ関連の消費額 スポーツ関連の消費額 平成 26(2014)年 全国平均36,676円、東京都区部38,295円、横浜市44,448円、名古屋市41,752円、大阪市30,557円、政令指定都市平均37,731円 平成 27(2015)年 全国平均38,355円、東京都区部53,714円、横浜市63,951円、名古屋市41,785円、大阪市51,286円、政令指定都市平均36,349円 平成 28(2016)年 全国平均38,147円、東京都区部56,141円、横浜市53,584円、名古屋市48,408円、大阪市34,128円、政令指定都市平均37,017円 平成 29(2017)年 全国平均36,810円、東京都区部49,118円、横浜市48,948円、名古屋市49,338円、大阪市29,260円、政令指定都市平均35,037円 平成 30(2018)年 全国平均38,148円、東京都区部47,034円、横浜市46,933円、名古屋市49,657円、大阪市27,217円、政令指定都市平均36,582円 令和元(2019)年 全国平均41,570円、東京都区部58,534円、横浜市37,070円、名古屋市41,737円、大阪市47,822円、政令指定都市平均40,983円 1. 運動用具類 平成 26(2014)年 全国平均13,119円、東京都区部12,327円、横浜市13,419円、名古屋市13,135円、大阪市11,037円、政令指定都市平均12,503円 平成 27(2015)年 全国平均13,320円、東京都区部15,979円、横浜市15,257円、名古屋市13,439円、大阪市10,056円、政令指定都市平均11,270円 平成 28(2016)年 全国平均12,949円、東京都区部12,116円、横浜市14,879円、名古屋市15,068円、大阪市11,240円、政令指定都市平均12,833円 平成 29(2017)年 全国平均12,536円、東京都区部49,118円、横浜市14,493円、名古屋市17,526円、大阪市8,364円、政令指定都市平均11,482円 平成 30(2018)年 全国平均13,698円、東京都区部12,939円、横浜市11,370円、名古屋市16,904円、大阪市10,267円、政令指定都市平均2,484円 令和元(2019)年 全国平均14,051円、東京都区部11,869円、横浜市11,419円、名古屋市13,078円、大阪市12,007円、政令指定都市平均12,804円 2. スポーツ月謝 平成 26(2014)年 全国平均9,099円、東京都区部11,554円、横浜市12,321円、名古屋市10,275円、大阪市9,248円、政令指定都市平均9,482円 平成 27(2015)年 全国平均9,394円、東京都区部12,251円、横浜市16,053円、名古屋市6,292円、大阪市27,384円、政令指定都市平均9,647円 平成 28(2016)年 全国平均9,194円、東京都区部20,309円、横浜市12,728円、名古屋市6,917円、大阪市8,348円、政令指定都市平均8,146円 平成 29(2017)年 全国平均8,837円、東京都区部12,400円、横浜市15,309円、名古屋市9,148円、大阪市7,514円、政令指定都市平均7,719円 平成 30(2018)年 全国平均9,214円、東京都区部13,558円、横浜市10,682円、名古屋市10,917円、大阪市6,844円、政令指定都市平均8,777円 令和元(2019)年 全国平均9,454円、東京都区部13,717円、横浜市8,971円、名古屋市9,534円、大阪市11,703円、政令指定都市平均9,367円 3. スポーツ観覧料 平成 26(2014)年 全国平均614円、東京都区部473円、横浜市529円、名古屋市568円、大阪市248円、政令指定都市平均922円 平成 27(2015)年 全国平均576円、東京都区部515円、横浜市1,468円、名古屋市193円、大阪市338円、政令指定都市平均666円 平成 28(2016)年 全国平均750円、東京都区部1,090円、横浜市376円、名古屋市394円、大阪市375円、政令指定都市平均792円 平成 29(2017)年 全国平均774円、東京都区部2,685円、横浜市365円、名古屋市1,355円、大阪市545円、政令指定都市平均779円 平成 30(2018)年 全国平均776円、東京都区部560円、横浜市2,286円、名古屋市730円、大阪市365円、政令指定都市平均816円 令和元(2019)年 全国平均1,088円、東京都区部2,136円、横浜市802円、名古屋市2,693円、大阪市1,852円、政令指定都市平均1,220円 4. 施設の利用等 平成 26(2014)年 全国平均13,844円、東京都区部13,941円、横浜市18,179円、名古屋市17,774円、大阪市10,024円、政令指定都市平均14,824円 平成 27(2015)年 全国平均15,065円、東京都区部24,969円、横浜市31,173円、名古屋市21,861円、大阪市13,508円、政令指定都市平均14,766円 平成 28(2016)年 全国平均15,254円、東京都区部22,626円、横浜市25,601円、名古屋市26,029円、大阪市14,165円、政令指定都市平均15,246円 平成 29(2017)年 全国平均14,663円、東京都区部20,977円、横浜市18,781円、名古屋市21,309円、大阪市12,837円、政令指定都市平均15,057円 平成 30(2018)年 全国平均14,460円、東京都区部19,977円、横浜市22,595円、名古屋市21,106円、大阪市9,741円、政令指定都市平均14,506円 令和元(2019)年 全国平均16,977円、東京都区部30,812円、横浜市15,878円、名古屋市16,432円、大阪市22,260円、政令指定都市平均17,592円 出典:総務省「家計調査」(平成 26~令和元(2014~2019)年度)の数値を元に作成 図表5 NPB・Jリーグの観客動員数上位5チーム NPB 平成 28(2016)年 1 阪神タイガース2,910,562人、2 読売ジャイアンツ3,004,108人、3 福岡ソフトバンクホークス2,492,983人、4 中日ドラゴンズ2,058,381人、5 横浜DeNAベイスターズ1,939,146人 平成 29(2017)年 1 阪神タイガース3,034,626人、2 読売ジャイアンツ2,958,890人、3 福岡ソフトバンクホークス2,526,792人、4 中日ドラゴンズ2,010,772人、5 横浜DeNAベイスターズ1,979,446人 平成 30(2018)年 1 阪神タイガース2,898,976人、2 読売ジャイアンツ3,002,347人、3 福岡ソフトバンクホークス2,566,554人、4 中日ドラゴンズ2,146,406人、5 横浜DeNAベイスターズ2,027,922人 令和元(2019)年 1 阪神タイガース3,091,335人、2 読売ジャイアンツ3,027,682人、3 福岡ソフトバンクホークス2,656,182人、4 中日ドラゴンズ2,285,333人、5 横浜DeNAベイスターズ2,283,524人 出典:NPB(日本野球機構)HP「セ・パ公式戦 入場者数」の数値を元に作成 J リーグ 平成 28(2016)年 1 浦和レッズ627,898人、2 FC 東京408,623人、3 ガンバ大阪430,806人、4 名古屋グランパス301,396人、5 横浜 F・マリノス408,072人 平成 29(2017)年 1 浦和レッズ570,215人、2 FC 東京450,331人、3 ガンバ大阪412,710人、4 名古屋グランパス―人、5 横浜 F・マリノス421,028人 平成 30(2018)年 1 浦和レッズ603,534人、2 FC 東京449,338人、3 ガンバ大阪399,242人、4 名古屋グランパス419,218人、5 横浜 F・マリノス370,401人 令和元(2019)年 1 浦和レッズ581,135人、2 FC 東京536,187人、3 ガンバ大阪471,034人、4 名古屋グランパス469,397人、5 横浜 F・マリノス459,168人 出典:J リーグ(公益社団法人日本プロサッカーリーグ)HP「入場者数記録」の数値を元に作成 ③ 大規模国際競技大会の近年の実績・予定 日本国内において、ラグビーワールドカップ 2019™日本大会が開催され、今後、東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会(令和 3(2021)年開催)、ワールドマスターズゲームズ 2021 関西(令和 4(2022)年開催)の開催が予定されています。国際的な大規模競技大会が連続で開催されることは、日本はもとより世界でも類を見ないもので、ゴールデン・スポーツイヤーズと呼ばれています。また、令和 8(2026)年には本市において第 20 回アジア競技大会の開催も予定されています。 ④ 新たな注目コンテンツ 近年、注目度が高く、従来のスポーツの枠に収まらないものとしてアーバンスポ ーツ ⁵やモータースポーツ、e スポーツ ⁶ が盛り上がりを見せています。 a)アーバンスポーツ 若い世代を中心に盛り上がりを見せているアーバンスポーツは、東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会に 4 競技 12 種目 ⁷ が選定されました。都市の特徴を活かしたアーバンスポーツは、近年、注目を高めています。 大型の施設無しに新たな経済効果を生み出せるアーバンスポーツは、都市開発の手段としても関心が向けられています。 b)モータースポーツ F1 日本グランプリをはじめとしたモータースポーツと日本にある 7 つのサーキットを観光資源と捉え、スポーツツーリズム推進のため、平成 24(2012)年には観光庁の呼びかけにより「モータースポーツ観光活性化全国協議会」が立ち上がりました。 愛知県内では、新城市において愛知県を代表するラリーである「新城ラリー」が開催されています。平成 16(2004)年に新城市が民間団体と連携し、地域再生計画の一環として開始されたイベントであり、現在では新城市のスポーツツーリズム事業部が活動を推進しています。また、令和 3(2021)年には、FIA 世界ラリー選手権(WRC)⁸ 日本ラウンド「Rally Japan」が愛知、岐阜両県で開催される予定です。 その他、各地の自治体での取り組みとしては、島根県の江津市で日本初となる公道・市街地レースとなる「A1 市街地グランプリ江津大会”GOTSU 2020”」が令和 2(2020)年 9 月に開催され、各地のモータースポーツの機運は盛り上がりを見せています。 c)e スポーツ 日本における e スポーツの市場規模は拡大傾向にあり、令和元(2019)年の日本 e スポーツ市場規模は前年比 127%の 61 億円となっており、令和 2(2020)年から令和 5(2023)年までの年間平均成長率は約 26%と予測されています(図表 6 参照)。 また、令和元(2019)年の日本の e スポーツファンの数は前年比 126%の 483 万人となっており、ファン数はさらに拡大されることが予想されます(図表 7 参照)。 図表6 日本eスポーツ市場規模 平成 30(2018)年4,831百万円、令和元(2019)年6,118百万円、令和 2(2020)年7,625百万円、令和 3(2021)年9,171百万円、令和 4(2022)年12,215百万円、令和 5(2023)年15,334百万円 ※2020 年以降の数値は 2020 年 2月時点における予測 出典:KADOKAWA Game Linkage「日本国内 e スポーツ市場動向」(令和元(2020)年 2月) 図表7 日本eスポーツファン数(試合観戦・ 動画視聴) 平成 30(2018)年3,826千人、令和元(2019)年4,829千人、令和 2(2020)年6,024千人、令和 3(2021)年7,250千人、令和 4(2022)年9,667千人、令和 5(2023)年12,148千人 ※2020 年以降の数値は 2020 年 2月時点における予測 出典:KADOKAWA Game Linkage「日本国内 e スポーツ市場動向」(令和元(2020)年 2月) 各種大会に注目すると、平成31(2019)年2月15日から3日間にわたって行われた「EVO Japan 2019(福岡市)」では、前年度の東京大会を上回る延べ動員数約13,000人、インターネット総視聴者数は約60,000人を達成し、新たなコンテンツとしての存在感を示しています。 令和元(2019)年に開催された「いきいき茨城ゆめ国体」では、文化プログラムの一環として「全国都道府県対抗 e スポーツ選手権2019IBARAKI」が行われました。国体史上初の都道府県対抗による e スポーツ大会であり、取材には約130社のプレス関係者が詰め掛け、注目度の高さがうかがえます。 地方自治体においても様々な取り組みが進んでいます。前述の大会「EVO Japan 2019」を全面的にバックアップした福岡市はゲーム産業都市を目指し、全国に先駆けて産学官連携でゲーム関連産業の振興に取り組んでいます。 また、横須賀市では「Yokosuka e-Sports Project」を立ち上げ、民間企業との連携のもと、市内高校の情報処理系部活動へのハイスペックパソコン無償貸与等を通じて次世代の育成に乗り出しています。 e スポーツは、ゲーム依存を引き起こす可能性など解決すべき課題があることも指摘されておりますが、一方で、新型コロナウイルス感染症による社会環境の変化を踏まえると、場所や時間の制約が少なく、障害種別によっては健常者と障害者が同じ土俵で競技できるなど、誰もが参加可能であり、e スポーツに秘められた可能性は大きいと推察されます。 (2)名古屋市のスポーツを取り巻く情勢 ① 既存の計画、戦略について 本市では、前述した「第2期名古屋市スポーツ推進計画」のほか、「名古屋市観光戦略」において~文化・芸術・スポーツ「芸どころ名古屋」~のキャッチフレーズのもと、スポーツを新たな観光コンテンツとみなしたスポーツツーリズムの取り組みを進めています。 令和8(2026)年には第20回アジア競技大会の開催が予定されていることから、この大会を一過性のスポーツイベントで終わらせるのではなく、大会の開催効果をさまざまな分野につなげていくため、大会の開催を契機として本市が目指すまちの姿を明らかにした「2026アジア競技大会NAGOYAビジョン」を策定しました。 ② スポーツの実施状況……「する」の視点からの整理 令和 2(2020)年 4 月に本市が実施した住民アンケート結果によると、名古屋市民のうち、週に 1 回以上運動・スポーツを実施する 20 歳以上の成人の割合は 55.8%と全国平均 53.6%(スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」令和元(2019)年度)を2.2%上回っており、運動に対する意識は比較的高いと考えられます。 令和元(2019)年 4 月の住民アンケートによると、1 年間に行った運動・スポーツの内訳はウォーキングが最も多く、次いで自転車・ジョギング、体操が続き、競技的スポーツの実施順位は第 4 位となっており、通勤時・通学時に気軽に楽しめる運動・スポーツの人気が高いことが分かります。 ③ スポーツの観戦状況……「みる」の視点からの整理 令和 2(2020)年 4 月に本市が実施した住民アンケート結果によると、名古屋市民のうち、年 1 回以上競技場等で直接プロスポーツ等を観戦した市民の割合は 28.0%と全国平均 21.8%(令和元(2019)年)を上回っています。 直接観戦したスポーツの内訳は、野球が最も多く、次いでサッカーが続き、プロチームを有するスポーツへの関心が高いことが分かります(図表 8 参照)。 図表8 本市で過去1年間にスポーツ大会、イベント観戦経験のある人の割合と内訳 全国平均 21.8%、ある31.8%、ない68.2% 直接観戦したスポーツの内訳 1位野球、2位サッカー、3位マラソン・駅伝 出典:令和 2 年度第 2 回市政アンケート(名古屋市) ※全国平均値は三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングとマクロミルによる共同調査 「スポーツマーケティング基礎調査『2019 年スポーツマーケティング基礎調査』」 ④ スポーツを支援する土壌づくり……「ささえる」の視点からの整理 「名古屋市スポーツ推進計画」では、「ささえる」視点の施策にも取り組んでいます。 地域のスポーツ推進を支える人材の質的向上を図るため、スポーツ推進委員に対する研修を充実させるとともに、スポーツイベントボランティアの育成も進めています。また、小中高生の部活動の充実・活性化を図るため、部活動外部顧問や部活動外部指導者の派遣に取り組んでいます。さらには、スポーツイベントへの参画や部活動への協力等、地域の大学との連携も進めています。 障害者スポーツの分野では、学校における障害者のスポーツ環境の整備、施設管理者に対する障害者スポーツへの理解の啓発、障害者スポーツへの理解の促進、障害者スポーツボランティア、指導者の育成にも取り組んでいます。 ⑤ 名古屋市における大規模大会 a)過去の誘致・開催実績 本市では、平成 27(2015)年度に開催された「リオ・オリンピックハンドボール競技女子アジア予選大会」や平成 29(2017)年度に開かれた「ISU グランプリファイナル国際フィギュアスケート競技大会愛知・名古屋 2017」など多くの大規模スポーツ大会を誘致してきました(図表 9 参照)。 図表9 本市における大規模大会の過去の誘致 ・ 開催実績及び今後の予定 平成 27(2015)年度リオ・オリンピック ハンドボール競技女子アジア予選大会 平成 28(2016)年度第 100 回日本陸上競技選手権大会 平成 29(2017)年度第 93 回日本選手権水泳競技大会 競泳競技、ISU グランプリファイナル国際フィギュアスケート競技大会愛知・名古屋 2017 平成 30(2018)年度第 35 回日本マスターズ水泳選手権大会兼第 1 回アジアマスターズ水泳選手権大会、第 7 回スペシャルオリンピックス日本 夏季ナショナルゲーム・愛知、2018 女子バレーボール世界選手権名古屋大会 令和元(2019)年度ラグビーワールドカップ 2019™日本大会(公認チームキャンプ) 令和 2(2020)年度第 76 回国民体育大会冬季大会スケート競技会(ショートトラック・フィギュア) 令和 3(2021)年度東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会(事前キャンプ、予定) 令和 8(2026)年度第 20 回アジア競技大会 出典:名古屋市 その中でも、とりわけ記憶に新しい大会が令和元(2019)年度に開催された「ラグビーワールドカップ 2019™日本大会」であり、愛知県内での試合は他市(豊田市)で行われたものの、本市はジョージア代表・サモア代表の公認チームキャンプ地として選定され、地域の中学生との交流イベント等が行われるなど新たな風を吹き込む大会となりました。 EY JAPAN が作成した「ラグビーワールドカップ 2019™日本大会 開催後経済効果分析レポート」によると、ラグビーワールドカップ 2019™日本大会による愛知県全体の経済波及効果は 120 億円、直接効果(GDP)は 68 億円と推計されています。愛知県内の試合のチケットのうち、県内の購入者が全体の 48.2%に対し、日本国内(開催都道府県以外)の購入者は同 38.3%、海外の購入者は同 13.4%にのぼり、愛知県内における観戦者の半数が愛知県外からの来訪者が占めていたと推測されます。 また、例年 3 月上旬ごろに開催されているマラソンフェスティバル ナゴヤ・愛知においては、国際的にも有名な女子マラソン大会である名古屋ウィメンズマラソンが開かれており、トップランナーから市民ランナーまで幅広く参加する大規模な大会となっています。 2012 年大会は、大規模な市民マラソンとしてリニューアルされた記念すべき第一回大会であり、ロンドンオリンピックの日本代表選手選考競技会を兼ねていました。また、世界最大の女子マラソン大会として「ギネス世界記録」に認定され、令和元(2019)年には世界の主要なマラソンを格付けするラベリング制度において最高位となる「プラチナラベル」を取得しました。2020 年大会は東京 2020 オリンピック日本代表選手選考競技会を兼ねた大会であったことに加え、新型コロナウイルス感染症対策のために名古屋ウィメンズマラソン一般の部や名古屋シティマラソンがオンラインマラソンとして開催されたことで、全国でも注目される大会となりました。 株式会社 OKB 総研が 2015 年大会の実績を基に経済波及効果を算出した結果、大会出場者とその家族、観戦者の消費支出や大会運営組織の支出等の直接効果に波及効果を加えると愛知県内への経済効果は約 101 億円であり、地域経済にも大きな恩恵をもたらしている大会といえます。 b)今後の開催予定 令和 8(2026)年には、本市が今まで経験したことのない規模の第 20 回アジア競技大会の開催が予定され、期間中に選手、監督及びコーチ等の大会関係者約 1.5 万人と観客約 150 万人の来訪が見込まれています。また、大会開催に伴う経済波及効果は、前提条件を投資支出 850 億円、消費支出(宿泊・飲食代)に関わる大会観客が約 150 万人と仮定した場合、愛知県内において約 1,625 億円になると試算されています。 本市においては、アジア競技大会を一過性のスポーツイベントではなく、今後のスポーツ振興、交流人口拡大、国際交流の促進、共生社会の実現、国際競争力等のさまざまな分野につなげ、将来に向けたレガシーを残す大会とすることが必要であると考えています。 ⑥ 名古屋市のスポーツ環境分析 本市が持つ大きな特徴は、本拠地を置くトップスポーツチーム数が多いことです。サッカー、バスケットボール、野球など他都市と比べて多くの団体を有し、ハイレベルなスポーツを身近に感じられる環境にあり、プロスポーツチームの観客動員数は上位を占めています。平成 25(2013)年から本市と 13 のトップスポーツチームで「名古屋トップ・スポーツチーム連絡協議会(愛称「でらスポ名古屋」)」を立ち上げ、スポーツ振興等の活動に取り組むなどスポーツへの関心や理解を深め、さらには支援する土壌が培われてきたことが、スポーツ実施率が比較的高い要因だと推察され、本市の強みであるといえます(図表 10 参照)。 名古屋ウィメンズマラソン等の大規模スポーツ大会も毎年開催しており、地域内外から多くのアスリートや指導者、観客が訪れる環境であるため、関連団体やスポンサーとの調整、交通網・宿泊施設の確保など開催ノウハウを有することも強みです。 一方、都市ブランド・イメージ調査において本市は「友人・知人への推奨度」が低く、リニア中央新幹線の開業に伴う移動時間短縮により、人口・経済活動が東京都等の都心に吸い取られるストロー現象の懸念も生じています。これまでスポーツを活かしたツーリズムや交流人口増加への取り組みが積極的に実施できておらず、スポーツの可能性を活用できていない点が弱みとなっています。 本市の障害者のスポーツ実施率は 36.7%であり、運動を実施しない要因として「時間や体力がない」、「スポーツ情報が得られない」、「一緒に運動する人に迷惑をかけると思っている」などが挙げられています。特に「一緒に運動する人に迷惑をかけると思っている」との回答は、スポーツをする意欲が伺えるものであり、運動をサポートできる人材の育成など課題を解決することが障害者のスポーツ実施率を高めることに繋がります。今後は障害者スポーツの普及・振興に、より一層積極的に取り組むことが重要であると考えられます(図表 11 参照)。 本市では、世界最大の女子フルマラソンである名古屋ウィメンズマラソンを毎年開催していることに加え、令和 8(2026)年には第 20 回アジア競技大会の開催が予定されています。国内や世界から注目されるこうした大規模競技大会の開催は、市民のスポーツ機運の盛り上げや本市の魅力発信の絶好の機会となります。 なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、スポーツにおいても密集を避けるための定員の削減や検温・消毒等の徹底が求められ、スポーツの普及・振興に大きな脅威となっていることに加え、大規模競技大会等開催時には、南海トラフ地震をはじめとした自然災害への備えも重要となります。 図表10 本市のスポーツ環境分析 名古屋市スポーツ環境、強み 本市に本拠地を構えるトップスポーツチーム数が多く、プロスポーツに触れる機会が多い プロスポーツへの観客動員数は上位に位置しており、スポーツチームの人気が高い スポーツ実施率が全国平均を上回っており、スポーツ活動への関心が比較的高い 新規スポーツコミッションの設立を検討しており、積極的に民間と連携したスポーツ振興を図っている 大規模大会の開催実績やノウハウの蓄積がある 市民が利用する身近な施設から大規模大会を開催できる施設を有している 大学数及び学生数が多い 名古屋市スポーツ環境、弱み 都市ブランド・イメージ調査においても本市は「友人・知人への推奨度」が低く、都市ブランドが高いとは言えない 時間や体力がない、スポーツ情報が得られない、一緒に運動する人に迷惑をかけると思っている等の理由でスポーツをしない障害者が多い 既設のスポーツセンター等について老朽化が進んでいる 名古屋のスポーツと聞いて、イメージできるスポーツがあまりない 大規模大会が開催できる規模のスポーツ施設と宿泊施設が分散してしまっている 名古屋市スポーツ環境、機会 令和 8(2026)年に「第 20 回アジア競技大会」が開催されることが決まっている トップスポーツチームが多く 1 年を通じて試合がある 世界最大の女子フルマラソンである名古屋ウィメンズマラソンを毎年開催している リニア中央新幹線の全線開業により、名古屋市を起点に 2 時間以内で到着できるエリアの人口は約 6,400 万人(平成 30 年は 1,135 万人)と全国最大になる 名古屋市スポーツ環境、脅威 リニア中央新幹線開業による移動時間短縮によって、人口・経済活動が東京や大阪に吸い取られる(=ストロー現象)懸念がある 人口減少や少子高齢化に伴い、スポーツ人口が中長期的には減少している 新型コロナウイルス感染症により、接触型や屋内のスポーツは感染症対策の徹底が必要となり、今後のスポーツ普及に甚大な影響を及ぼしている 大規模競技大会開催時には、南海トラフ地震をはじめとした自然災害への備えが重要である 他地域における大規模スポーツイベントの開催など、都市間競争が激しくなっている 図表11 障害者の「スポーツをしない要因」 体力がない27.7% やりたいと思わない12.4% 金銭的な余裕がない10.7% 時間がない10.3% 障害に適した運動・スポーツがない10.2% 仲間がいない9.8% 交通手段・移動手段がない7.8% 一緒に運動・スポーツをする人に迷惑をかけるのではないかと心配である7.1% 家族の負担が大きい6.8% 指導者がいない6.7% 運動・スポーツについての情報が得られない6.3% 介助者がいない5.7% 運動・スポーツできる場所がない、施設がバリアフリーでない5.6% 人の目が気になる4.8% その他7.3% 特にない22.8% 無回答13.3% 出典:名古屋市 2 名古屋市スポーツ推進計画の評価 (1)名古屋市の施策の進捗状況 ① 成人の状況 本市のスポーツ推進計画では、数値目標として週に 1 回以上運動・スポーツを実施する 20 歳以上の成人の割合を令和 5(2023)年までに 65.0%以上とすることとしています。 令和 2(2020)年の現状値は 55.8%であり、目標にこそ到達していないものの、前年度調査からは 3.0%上昇しており目標への歩みを進めています。 ② 子どもの状況 「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果では、本市の児童生徒について、一週間の総運動時間が 60 分未満の子どもの割合は、平成 25(2013)年度は 21.3%だったものが、令和元(2019)年度には 14.5%と減少しています。特に女子の運動時間の伸びが顕著で、小学 5 年生女子は平成 25(2013)年度 22.5% に対し、令和元(2019)年度には14.8%、中学 2 年生女子は平成 25(2013)年度 36.0% に対し、令和元(2019)年度22.6%となっており、全体的に改善傾向にあります。 (2)市民の運動・スポーツ実施率 本市の週に 1 回以上運動・スポーツを実施する 20 歳以上の成人の割合は令和 2(2020)年 4 月時点では 55.8%であり、全国平均 53.6%(スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」令和元(2019)年度)を 2.2%上回っています。調査年度等の違いから単純比較はできませんが、目安として、他の政令指定都市と比較した場合は 20 都市のうち、上から 8 番目で、比較的高いと言えます(図表 12 参照)。 また、横浜市では令和元(2019)年度から令和 2(2020)年度にかけてスポーツ実施率が8.7%増加しており「新型コロナウイルス感染症により外出が制限されていたために、運動の必要性に対する認識が従来よりも高まり、かえって、ウォーキングや散歩などの軽い運動も含んだスポーツを積極的に行おうとする人が増えたということが考えられる。」と考察されています(令和 2 年度横浜市民スポーツ意識調査報告書)。 図表12 週に1回以上運動・ スポーツを行う成人の割合(他都市との比較)(単位:%) 広島市71.9% 千葉市65.5% 横浜市64.5% さいたま市64.1% 相模原市61.4% 札幌市58.6% 静岡市56.7% 名古屋市55.8% 福岡市55.4% 熊本市52.9% 全国平均 53.6% 出典:各政令指定都市のスポーツ実施率:各都市へのアンケート又はヒアリングした数値を基に上位10都市を記載 ※全国平均値はスポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和元(2019)年度) (3)「でらスポ名古屋」の活動実績 本市を拠点に活動しているトップスポーツチームのうち、NPB(一般社団法人日本野球機構)、J リーグ(公益社団法人日本プロサッカーリーグ)、一般社団法人日本トップリーグ連携機構のいずれかに加盟するチームが、令和 2(2020)年 6 月時点で 13 チーム存在しています。また主要なスポーツ種目はほぼ網羅されており、女子スポーツチームの活動も活発であることから、トップスポーツチームの活動が盛んな土壌があると考えられます。 平成 25(2013)年 11 月、本市を拠点とする 13 のトップスポーツチームと名古屋市、名古屋市教育委員会、公益財団法人名古屋市教育スポーツ協会が「名古屋トップ・スポーツチーム連絡協議会」を設立しました。「でらスポ名古屋」の愛称で親しまれており、小学生対象のスポーツ体験イベントや選手の学校訪問等を通じて市民のスポーツ振興や青少年育成等を行うとともに、加盟チームの広報等に取り組むことで、本市のスポーツ振興の一翼を担っています(図表 13 参照)。 図表13 でらスポ名古屋の加盟団体及び競技種目 加盟団体の名称、競技 HC 名古屋、ハンドボール NGU ラブリッジ名古屋、サッカー 大同特殊鋼フェニックス、ハンドボール 大同特殊鋼レッドスター、バレーボール 中日ドラゴンズ、野球 トヨタ自動車アンテロープス、バスケットボール ファイティングイーグルス名古屋、バスケットボール 名古屋オーシャンズ、フットサル 名古屋グランパス、サッカー 名古屋サイクロンズ、アメリカンフットボール 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、バスケットボール 表示灯フラーテルホッケーチーム、ホッケー 三菱電機コアラーズ、バスケットボール 出典:名古屋市(令和 2(2020)年 9 月時点) 令和元(2019)年度に 8 回にわたり行われた小中学生向けのスポーツ体験事業では、「でらスポ名古屋」加盟チーム等のコーチや選手による指導や練習、ゲーム等のイベントが行われ、延べ 387 名の小中学生が参加し、スポーツに対する興味を深めました(図表 14参照)。 図表14 小中学生向けスポーツ体験教室・ イベント事業の開催実績(令和元(2019)年度) 開催年月日、イベント名称、協力団体、参加者(小・ 中学生) 令和元(2019)年5月12日、小学生ふれあい野球教室・ティーボール野球体験教室、中日ドラゴンズ、53 名 令和元(2019)年6月22日、でらスポ☆アリーナ、でらスポ名古屋加盟チーム、261 名 令和元(2019)年8月20日、小学生ふれあいビートダンス教室、三代舞踊団、42 名 令和元(2019)年9月14日、中学生男子ふれあいバレーボール教室大同特殊鋼レッドスター、43 名 令和元(2019)年11月2日、小学生ふれあいフットサル教室、名古屋オーシャンズ、30 名 令和元(2019)年11月23日、でらスポ☆スタジアム、でらスポ名古屋加盟チーム、158 名 令和元(2019)年12月22日、中学生ふれあいソフトボール教室、デンソー女子ソフトボール部ブライトペガサス、94 名 令和2(2020)年1月4日、小中学生ふれあいフィギュアスケート教室、愛知県スケート連盟、40 名 令和2(2020)年1月25日、小学生ふれあいハンドボール教室、HC 名古屋、49 名 令和2(2020)年2月9日、小学生ふれあいバスケットボール教室、ファイティングイーグルス名古屋、36 名 出典:名古屋市 ※複数回答あり (4)その他の施策について スポーツに親しむきっかけづくりのため、従来のスポーツの日を中心とした秋季にスポーティブライフ月間を設け、スポーツへの関心を高めるための広報、スポーツ施設をはじめとする公共施設等においてきっかけづくりとなる事業の実施、さらには月間の中央行事であるスポーティブ・ライフin瑞穂を開催しています。また、スポーツ推進体制を充実させるため、地域ジュニアスポーツクラブや部活動外部顧問の充実も図っており、気軽にスポーツに親しむ場を提供するために、体育館やトレーニング室を備えたスポーツセンターを 13 館設置しています。 この他、市民の皆さんが身近で気軽にスポーツやレクリエーション活動ができるよう、市立中学校全校(111 校)で学校施設の開放事業である地域スポーツセンターを実施しています。 Ⅲ 基本理念 スポーツで名古屋の未来を照らす 〜人を惹きつける力、熱中させる力のあるスポーツを活かし、名古屋の明るい未来を描きます。スポーツにより地域の活性化と都市ブランドの向上を目指すことにより、にぎわいあふれ市民が誇りを持てる都市、活力ある都市を実現します。〜 スポーツには人を惹きつける力、人を熱中させる力といった様々な力があります。また、スポーツを「みる」ことで選手の姿に感動し、人生に活力が得られ、「ささえる」ことにより多くの人々が交わり共感し合うことで社会の絆が強くなる等幅広い価値もあります。 本戦略では、令和 8(2026)年に開催を予定している第 20 回アジア競技大会やその後を見据えて、こうしたスポーツが持つ様々な力、幅広い価値を活かし、地域の活性化や都市の活性化を目指すことにより、名古屋の明るい未来を実現します。併せて、「2026 アジア競技大会 NAGOYA ビジョン」で掲げた「まちの姿」に基づき、活力のある都市を実現させる施策に取り組みます。 また、日頃の練習の成果を発揮し、優秀な実績を残した選手をたたえることで選手のモチベーションを高め、更なる活躍を応援できるよう、選手に光が当たる未来を実現します。 こうしたスポーツで名古屋の未来を照らす施策を進めることで、スポーツにより都市ブランドが確立するとともに、名古屋の魅力が国内外に発信されることで、にぎわいあふれ市民が誇りをもてる都市の実現及び、スポーツにより市民が健康に暮らし、地域の活動が盛んになることで、活力のある都市の実現を目指します。 なお、現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、スポーツを取り巻く環境が大きく変化してきています。新型コロナウイルス感染症に対する取り組みは、他の感染症予防にもつながることから、安心してスポーツを楽しめるよう、今後の感染症対策を進めます。 Ⅳ 名古屋スポーツコミッション(仮称)による新たな取り組み 1 スポーツコミッションの必要性 (1)スポーツコミッションの必要性 文部科学省が平成 29(2017)年 3 月に策定した「第 2 期スポーツ基本計画」では、社会の課題解決にスポーツを通じたアプローチが有効であることを踏まえ、スポーツを通じた共生社会の実現、経済・地域の活性化、国際貢献に積極的に取り組むことを掲げています。 スポーツ庁は、スポーツツーリズムの推進、持続性のあるスポーツイベントの開催や大会・合宿等の誘致により、交流人口の拡大と地域コミュニティの形成・強化を図るため、地方公共団体とスポーツ団体、観光産業等の民間事業者が一体となったスポーツコミッションの設置を推進しています(図表 15 参照)。令和元(2019)年 10 月時点で、全国に118 のスポーツコミッションが存在し、スポーツ庁は、令和 3(2021)年度末までに、全国のスポーツコミッションの設置数を 170 までに拡大することを目標として掲げています。 本市においても、豊富なトップスポーツチームや大規模大会の開催が可能な施設を有するという強みを、スポーツ振興のみならず、地域課題の解決や交流人口の増加、さらには、都市イメージの向上へつなげていく必要があります。また、令和 8(2026)年には第20 回アジア競技大会の開催を予定しており、スポーツの機運が盛り上がることから、この機会を捉え、官民連携の組織として「名古屋スポーツコミッション(仮称)」を設置することで、様々な事業にチャレンジしていく必要があります。 (2)スポーツ戦略と名古屋スポーツコミッション(仮称)の位置づけ 本スポーツ戦略を推進するにあたって、官民が連携して取り組むことが効果的である事業については、名古屋スポーツコミッション(仮称)がその役割を果たし、事業推進のエンジンとしての機能を担います。 図表15 平成 29 年度スポーツ庁事業「地域スポーツコミッションへの活動支援」 スポーツ庁 ↓地方自治体に対し支援 スポーツによる地域活性化の推進役:「地域スポーツコミッション」 地域スポーツの窓口と責任体制をワンストップ化 地方自治体、体育協会、スポーツ指導者、レクリエーション協会、観光産業、企業、大学、スポーツ産業、地域スポーツクラブ、メディア 地域スポーツコミッション ※関係機関の連絡・調整を行う ↑ワンストップ窓口機能 交流人口の拡大等 ↓誘致・支援等 国際競技大会、全国大会、スポーツキャンプ、スポーツコンベンション・・・ 地方自治体、スポーツ団体・企業(スポーツ産業、観光産業)等が一体となり、「する」「観る」「支える(育てる)」スポーツや、スポーツを観光資源としたツーリズム等による地域活性化に取り組む組織。 出典:首相官邸観光戦略実行推進タスクフォース(第 12 回)「資料 4-1: スポーツ庁資料」(平成 29(2017)年度) 2 名古屋スポーツコミッション(仮称)の機能等 (1)名古屋スポーツコミッション(仮称)の機能・事業 スポーツコミッションにより本市が抱える課題の解決を目指し、本市の特色を活かしたスポーツによる地域課題の解決、交流人口の増加、地域活性化、さらには都市ブランドの向上という好循環を生み出していく必要があります。現在、スポーツ振興には、地域のスポーツ環境を充実させ、住民のスポーツ参加機会を促進する「インナー政策 ⁹」に加え、スポーツを活用して、地域や経済の活性化を目指す「アウター政策 ¹⁰」が必要とされています。スポーツ庁は、平成 28(2016)年に、スポーツによる地域活性化を担う事業体についての検討会を開き、自立した事業体である、スポーツによる地域活性を担うハイブリッド型事業体 ¹¹ の必要性を述べています。(原田宗彦著「スポーツ地域マネジメント」学芸出版社 参照) これらを踏まえ、名古屋スポーツコミッション(仮称)には 4 つの機能を期待しています。 1つ目は「大会・イベント誘致と開催支援」、2 つ目は「スポーツツーリズムの推進」です。この 2 つの機能により地域外からの誘客を実現し、交流人口や地域内消費の増加、地域の魅力発信を効果的に実施することができます。機能の 3 つ目は「地域活動の活性化」です。スポーツと地域を結びつけることで、シビックプライドの醸成や地域コミュニティの活性化を効果的に実施することができます。機能の 4 つ目は「事業の創出」です。スポーツ産業と他産業をマッチングさせることで、新たな付加価値を生み出すことができます。こうした 4つの機能を果たすため、「コーディネート」「人材育成・派遣」「調査・研究」「情報発信」の 4 つの事業を基幹事業として実施するスポーツコミッションの設置を目指します(図表16 参照)。 なお、スポーツコミッションに求める機能として地域の民間企業からは、地域外からの誘客を促すブランディングを意識した魅力ある大会の誘致・開催や子どものスポーツ体験の機会創出、高齢者の健康寿命を延ばすきっかけ作りのほか、都市の優位性を活用した都市型スポーツ(アーバンスポーツ)の振興を期待する声があがっています。 図表16 スポーツコミッションの機能 ・ 事業 名古屋スポーツコミッション(仮称) 機能:大会・イベント 誘致と開催支援、スポーツツーリズムの推進、地域活動の活性化、事業の創出 事業:「コーディネート」大規模大会・スポーツイベントやスポーツツーリズムにおいて、地域と団体・企業・トップスポーツチーム等をコーディネートし、円滑な大会誘致やイベント開催等を支援します。 「人材育成・派遣」アスリート等の派遣を支援し、地域内外の人材を結びつけることで、地域活性化を促進させます。 「調査・研究」誘致開催やスポーツツーリズム企画におけるマーケティングを実施します。また、産学官のハブ機能として、先進的な取り組みへの支援を実現すべく事業創出のパイロット事業も実施します。新たな付加価値を創造する際の試金石として、本スポーツコミッションの活用が期待されます。 「情報発信」多岐にわたる情報を整理し、適時適切な情報発信ができる環境を整えます。本市のスポーツに関する誘致やツーリズム・地域活動などの情報について、どこからアクセスしても分かりやすく、使い勝手がよい環境を整えることが求められます。 機能①「大会・イベント誘致と開催支援」 スポーツを活用したまちづくりや地域活性化における取り組みの一つに、大会やイベント・合宿の誘致が挙げられます。大会やイベント・合宿の誘致により地域外からの誘客を実現することで、交流人口や地域内消費の増加、訪れることで伝わる地域魅力の発信が効果として期待されます。実際に、本市で毎年開催されている名古屋ウィメンズマラソンの経済波及効果は愛知県内で 101 億円(平成 27(2015)年)、令和元(2019)年に開催されたラグビーワールドカップ 2019™日本大会の経済効果は愛知県内で 120 億円と試算されており、大きな大会開催効果が生じていることがわかりました。そのため、大規模又は注目度の高い大会やイベント・合宿の誘致は、高い経済効果を生みだし、地域の活性化や都市ブランドの向上に大きく寄与すると考えられます。 大規模大会やスポーツイベント・合宿を実施するために、スポーツ施設の確保のみならず、案内看板の設置やキッチンカーの配置等施設の使用に係る調整、宿泊場所や交通手段の確保など様々な調整が必要になります。これまでは、スポーツ施設の確保に向けた調整をしながら、別途宿泊場所や交通手段の調整を図る必要があり、主催者側の負担が大きい状況となっていました。こうした調整を官民連携の本スポーツコミッションがワンストップで支援し、調整窓口となるサービスを提供することで、大会・イベントを側面支援します(図表 17 参照)。その結果、主催者の負担を軽減し、競技・内容の充実に注力できる環境を作ることで、大会・イベントの誘致を効果的に進めることができます。 図表17 「ワンストップサービス窓口」のイメージ ↓↑市内のスポーツ施設、交通手段、宿泊施設 【コミッション】ワンストップサービスの窓口 機能②「スポーツツーリズムの推進」 スポーツツーリズムにより各地域の資源とスポーツを掛け合わせることで、魅力的なコンテンツを創出し、地域外からの誘客を目指し、交流人口や地域内消費の増加による地域の活性化を実現します。また、本市特有の資源とスポーツを掛け合わせ、魅力あるコンテンツを創出・発信することで、都市ブランドの向上につなげていきます。 既に豊富なトップスポーツチームとの連携はもちろん、都市間競争を勝ち抜くためには、本市の資源を的確に把握し、育てていく必要があります。例えば、近年では、国内外から武道ツーリズムへの関心が高まっており、スポーツ庁も武道ツーリズムの推進を掲げています。本市は「弓道」の歴史と深い繋がりがあり、競技人口や施設数が全国トップクラスを誇るため、魅力的な資源となる可能性があります。また、日本舞踊五大流派の一つと呼ばれる「西川流」発祥の地であり、日本最大級のダンスイベント「にっぽんど真ん中祭り」も毎年開催していることから、「踊り」文化とも深いつながりがあると考えられます。このような本市独自の資源を活用したコンテンツを企画し、魅力あるスポーツツーリズムの創出を目指します。 【コラム】各地のスポーツツーリズム 沖縄県国頭村では、豊かな自然環境という特有の資源とランニングを掛け合わせた「国頭トレイルランニング」を開催し、国頭村の魅力をスポーツを通じて発信しています。この大会は、国頭村にとって移住定住促進施策としても位置付けており、スポーツツーリズムによって魅力あるコンテンツを発信しています。 また、静岡県伊豆市はトレイルランニング大会を開催しており、第 6 回大会(平成 30(2018)年)は約2 億 2,000 万円の経済波及効果が試算され、地域活性化の一助となっています。愛媛県今治市や広島県尾道市では観光資源とサイクリング、徳島県三好市は河川とウォータースポーツ、石川県金沢市は伝統芸能と武道・スポーツを掛け合わせたスポーツツーリズムが各地で企画されています。 【沖縄県国頭村 国頭トレイルランニング大会】出典:株式会社アプロードが運営するHP「SPORTS ENTRY」より抜粋 【国際弓道セミナー】出典:「月刊弓道」より抜粋 機能③「地域活動の活性化」 少子高齢化による人口減少や生活様式の変化により、地域での住民同士のつながりが薄れてきていることが地域課題となっています。一方で、市民アンケートでは、名古屋を拠点に活動をしているスポーツチームを応援していると回答した市民のうち、約 9 割が「地元だから」ということを応援する理由に掲げるなど地元愛が強いと言えます。地元トップアスリートや地元プロスポーツ選手が祭り等の地域行事に参加したり、食育や交通安全等の啓発活動を行うことで、行事が盛り上がり、地域住民の関係構築に効果的な取り組みとなることに加え、チームにとっても市民がスポーツに興味関心を持つ契機となるとともに、チームへの愛着が深まることにもつながり、相乗効果が期待できます(図表18 参照)。 本スポーツコミッションでは、上記のような取り組みを促進すべく、地域とトップスポーツチームを結び付け、本市の強みである数多くあるトップスポーツチームやアスリートとの交流の場として、スポーツイベント開催支援や、地域イベントへのアスリート等の派遣の仕組み構築を目指します。 なお、こうしたトップスポーツチームの選手等を身近に感じられる取り組みでは、メディアへの露出が少ない競技の選手とも触れ合える機会を作ることで、新たなファン層の拡大につながり、将来の競技人口の増加にも寄与することが期待できます。 図表18 スポーツチームを応援している理由の約 9 割が「地元だから」 名古屋を拠点に活動しているスポーツチームで、応援しているチームはありますか。 ある41.9%、ない55.8%、無回答2.2% 「ある」と回答した方が、応援している理由 約 9 割の回答者「地元だから」 出典:令和 2 年度第 2 回市政アンケート(名古屋市) 【スポーツ選手とのイベント】【地域活性化の取り組み】 機能④「事業の創出」 産業が成長を続けるためには、新たな付加価値を創造し続けることが求められており、本市の様々な産業で先端技術を活用したイノベーション ¹² の検討がなされています。スポーツ産業も同様の動きがあり、スポーツ庁では「スポーツオープンイノベーションの推進」を掲げ、スポーツと他業界との連携によりスポーツの可能性を広げることを推進しています。スポーツや技術との親和性が高い大学や民間企業を巻き込んだ産学官連携による、新たな付加価値の創出が今後重要になると考えています(図表 19 参照)。 本スポーツコミッションが行政や大学、民間企業、トップスポーツチームを繋ぐハブ機能を果たし、産学官連携による先進事例の社会実験を支援します。大学やベンチャー等の民間企業が持つ技術をスポーツ分野と掛け合わせることで、新しい事業の創出を目指し、対象分野の調査・研究から社会実験のコーディネートのほか、関連情報の発信等事業化に向けたプロモーション等を支援します。 スポーツの可能性を広げ、新たな付加価値を見出すことで、本市におけるスポーツ市場の拡大が期待されます。新たな付加価値を生む事業が創出されれば、それは特有の資源となり、スポーツツーリズム等のコンテンツとしても用いることが出来ると考えています。 このように新たな事業を生み出し、それがスポーツツーリズム等のコンテンツとなるという循環を実現させることを目指します。 図表19 産学官連携によるオープンイノベーション ↓データ・権利・施設等(競技団体等スポーツ団体)、事業・人材等(企業、金融等)、技術・ノウハウ等(大学・研究機関、ベンチャー含む企業)、知識・検証等(大学・研究機関等) Sports Open Innovation Platform (SOIP) ↓(スポーツの価値が社会に貢献する新たな財・サービスの創出を促進する場) AR/VR活用、Fintech、IoT/ウェアラブル活用、映像コンテンツ活用、医療/健康、データ/AI活用 出典:スポーツ庁「Sports Open Innovation Platform(SOIP)」(平成 30(2018)12 月) (2)名古屋スポーツコミッション(仮称)の体制 現在、多くの地方自治体が設立しているスポーツコミッションは「行政」主導であり、担当部署の人員が兼務(又は出向)で運営を担っています。しかし、行政との結びつきが強すぎると、柔軟な事業展開・収益確保や迅速な意思決定が難しくなることもあるため、本市におけるスポーツコミッションは、将来的に独立した組織となるよう、民間主体による独立した運営を検討します。スポーツコミッションの持つ機能を活用した事業収入を得ることにより、行政負担収入以外の財源確保を目指します。 組織体制としては、公益的事業の実施に必要な「組織の公共性」は行政内組織が最も高い一方、組織の意思決定や柔軟性等の「機動性」については、営利組織の方が優れています。 ただし、営利組織は主に獲得した利益だけが財源となることから、利益を生み出せない事業は縮小・廃止となる傾向があります。本市におけるスポーツコミッションは、公益性に加え迅速な意思決定、安定した財源確保が求められるため、いずれも満たす非営利組織が適していると考えています(図表 20 参照)。 図表20 各組織体系の特徴 公益的事業【機能③】地域活動の活性化、【機能④】事業の創出 収益的事業【機能①】大会・イベント誘致と開催支援、【機能②】スポーツツーリズム 行政内組織(公益性:高)、組織形態:実行委員会、組織の公共性:◎、機動性:△、財源の安定性:◎ 非営利組織、組織形態:一般社団法人・一般財団法人・NPO 法人、組織の公共性:〇、機動性:〇、財源の安定性:〇 営利組織(公益性:低)、組織形態:株式会社・合同会社、組織の公共性:△、機動性:◎、財源の安定性:△ Ⅴ 戦略の柱と個別施策 1 戦略1 地域スポーツ振興戦略 本市では、スポーツ行政を地域振興等の関連行政と一元的に所掌することで、スポーツの持つ幅広い価値を本市を取り巻く課題の解決に活用していくことを一つのねらいとして、令和 2(2020)年 4 月にスポーツ行政を教育委員会から移管し、新たにスポーツ市民局を設置しました。スポーツを通じて人々がつながり、スポーツの価値を共有することができ、人々の意識や行動が変わることで、大きな力となって社会の課題解決につながると考えられます。持続可能な開発と平和等スポーツが社会の課題解決に貢献することは、国際連合やユネスコ等でもうたわれており、スポーツの価値を高める投資が社会の健全な発展に有効であるとの考え方は国際的な潮流でもあります。 地域スポーツを振興することでスポーツを活かした地域課題解決への一助とするとともに、地域の活性化を目指します。 1 地域の活性化 ①スポーツを活用した地域力の強化(スポーツ市民局、 区役所) スポーツには人を惹きつける力、熱中させる力があることから、スポーツを通じて地域の人々がつながることが大きな力となり、地域の課題解決にもつながります。競技性の高いスポーツだけでなく、誰でも手軽に楽しめるスポーツや、幅広い層に受け入れられるようなスポーツも取り入れ、スポーツによる地域活動の活性化を図り、地域力の強化につなげます。 ② 地元アスリートの区役所等での紹介(スポーツ市民局、 区役所) 市内では様々な競技種目において、世界的、全国的な活躍が期待されるアスリートが活動をされています。地元選手の活躍は市民の誇りであり、本市の都市ブランドの向上にもつながることから、活躍が期待されるアスリートを区役所やスポーツセンター等において紹介する等、市民が地元のアスリートを身近に感じ、市・区を挙げて応援する意識を高める取り組みを進めます。 ③ スポーツ指導者の発掘・育成(スポーツ市民局) 地域の子ども達を地域の大人が指導する地域ジュニアスポーツクラブをはじめとした地域スポーツの振興を図るため、関係機関等と連携し、その担い手となるスポーツ指導者の発掘を推進するとともに、知識や技能取得を支援し、スポーツを「安全に、正しく、楽しく」指導し、スポーツの楽しさ、素晴らしさを伝えられる指導者を育成します。 ④ スポーツボランティア制度の充実(スポーツ市民局) 多くのスポーツボランティアに支えられて本市のスポーツイベントやスポーツ大会が開催されています。スポーツボランティアに参加すると、スポーツに関わる楽しさ、スポーツを支えるやりがいや、地域の一体感を感じることができます。こうしたスポーツイベントやスポーツ大会におけるスポーツボランティアの重要性を鑑み、大学等との連携やスポーツボランティアを養成するプログラム、奨励制度の検討等活動が活性化する仕組みづくりを進めます。また、市民がスポーツイベント等の運営を支える機会を設けることで参画意識を高め、地域の活性化につなげます。 ⑤ アーバンスポーツの振興(スポーツ市民局) 各スポーツ施設へのアクセスのしやすさや都市部で大会を開催することによる集客性等、都市の優位性を最大限活かすことができるよう、東京 2020 オリンピックの正式種目とされたスポーツクライミング(ボルダリング)や BMX(自転車競技)、スケートボードといった都市型スポーツの振興を図り、若い世代のスポーツ機運を盛り上げます。 【コラム】日本舞踊のエクササイズ 一般社団法人 日本舞踊スポーツ科学協会(NOSS【Nihon Odori Sports Science】協会) NOSS(にほん・おどり・スポーツ・サイエンス)は、日本舞踊が持つ「和」の動きをもとに、スポーツ科学を取り入れて創案された、動きで見せる”新しいエクササイズです。 名古屋市発祥の日本舞踊「西川流」総師と中京大学名誉教授の共同研究によって創案され、体に優しい運動として、日本舞踊各流派・医学界・フィットネス界からも賛同注目されています。 出典 : 一般社団法人 日本舞踊スポーツ科学協会 2 子どものスポーツの充実 ① ジュニアスポーツの交流促進(スポーツ市民局) 区役所が中心となって小学校区・中学校区ごとに地域の子ども達を地域の大人が指導する仕組みとして、地域ジュニアスポーツクラブの設立支援を行っています。また、市内には子ども達を対象としたスポーツ少年団やクラブチーム等多くのスポーツチーム、団体が活動しています。参加を希望する方々が自分の好みに合ったチーム・団体を探すことができるよう支援をすると共に、競技種目ごとに練習試合や合同練習等の交流を促進するためのマッチングを行うウェブサイトを創設する等、こうしたチーム・団体の活動を更に活性化させます。 ② トップアスリート OB 派遣の仕組みの構築(スポーツ市民局) 本市では、多くのトップスポーツチームが拠点として活動しており、また、各競技において優秀な実績のある選手も多数輩出しています。市民やチームからの依頼に応じて臨時指導者としてトップアスリート OB を派遣する仕組みの構築を目指し、トップアスリートの知識や経験を次の世代に伝えるとともに、憧れの選手を身近に感じることでスポーツへの意欲を更に高められる取り組みを進めます。 【トップアスリート OB によるスポーツ指導】【ジュニアスポーツの交流促進】 3 アクティブライフの推進・健康増進 ① 名古屋市発祥の生涯スポーツの振興(スポーツ市民局、 区役所) 名古屋市が発祥のレクリエーションバレーボールやレクリエーションインディアカは、競技としての楽しさを持ちつつ、誰でも気軽に楽しめるよう工夫された生涯スポーツです。レクリエーションバレーボールとレクリエーションインディアカを生涯スポーツとして推奨し、競技人口の拡大と交流人口の拡大を目指します。 ② 企業の健康経営 ® の促進(健康福祉局) 企業の従業員の健康管理を経営的な視点で考え、従業員への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらします。協会けんぽ愛知支部と協働して「健康宣言」を行った事業所の中で、従業員の健康維持を考えた取り組みを、より積極的に推進し、他の模範となる事業所を「なごや健康宣言優良事業所」として表彰し、企業における従業員のアクティブライフの実現等による健康維持促進を目指します。 【レクリエーションバレーボール大会】【レクリエーションインディアカ大会】【令和元年度なごや健康宣言優良事業所表彰式】 2 戦略2 スポーツを活かした都市活性化戦略 本市には集客性の高いトップスポーツチームが多く活動していることから、他都市と比較して 1 世帯あたりのスポーツ観覧料が高い傾向にあります。トップスポーツチームと市民との距離を縮めて親しみを持ってもらい、応援する機運が高まることによって交流人口が増え、都市の活性化につながるため、本市を拠点とするトップスポーツチームが多いという強みを活かした取り組みを進めます。 また、スポーツは観光やテクノロジーとの融合により新たなスポーツ市場の創出や経済価値を生むポテンシャルが大きいといえます。令和 8(2026)年には本市がこれまで経験したことがない規模の国際総合スポーツ大会である第 20 回アジア競技大会が開催されることから、これまでのスポーツを「する」「みる」「ささえる」ことに加え、新たな価値を「つくる」ことを意識した取り組みを進めることが重要です。新たに発足する名古屋スポーツコミッション(仮称)を活用し、官民が連携して大規模競技大会やスポーツイベントの誘致・開催、スポーツ資源と他の観光資源を組み合わせたスポーツツーリズム・武道ツーリズムの推進、スポーツプロモーション ¹³ の取り組みを進めるとともに、テクノロジーやDX(デジタルトランスフォーメーション ¹⁴)によるスポーツを活かした都市の活性化を目指します。 1 官民連携の推進 ①スポーツツーリズムの推進(スポーツ市民局、観光文化交流局) 本市は野球、サッカー、バスケットボール、フットサル等のプロチームの拠点があり、さらには約 40,000 人が参加するマラソンの祭典であるマラソンフェスティバル ナゴヤ・愛知など全国でも有数のスポーツコンテンツが集約された都市です。令和 8(2026)年には第 20 回アジア競技大会の開催も控えていることから、スポーツ観戦の機会の提供及びスポーツイベント参加者に対して名古屋の魅力発信を行い、スポーツをコンテンツとしたスポーツツーリズムを推進します。特に海外でも愛好者の多い武道は、新たな誘客が期待できることから、本市の特色を活かし、旅行者が気軽に武道を体験できる、武道を核とした武道ツーリズムを創出します。 ②トップスポーツチームの地域貢献及び拠点の盛り上げ(スポーツ市民局) トップスポーツチームの試合には、高い集客性があることから、本市を活動拠点として活動しているトップスポーツチームの地域貢献を推奨し、市民がチームに愛着を持てる取り組みを進めることで拠点を盛り上げ、観戦人口の拡大と交流人口の拡大を目指します。 【マラソンフェスティバル ナゴヤ ・ 愛知】【トップスポーツチームの地域貢献】 2 第20回アジア競技大会の大会モデルの構築・継承 ①大規模競技大会、スポーツイベントの誘致・開催(スポーツ市民局、観光文化交流局) 全国的な注目を集める大規模競技大会やスポーツイベントを誘致・開催することで、開催都市となる本市のスポーツが盛んな都市としてのブランド力が向上するとともに、市民が間近でトップレベルの競技を観戦できる機会が生まれます。フィギュアスケート等の市民の関心が高い競技や、陸上といった大規模競技大会に向けた施設改修を行う施設で開催できる競技など、本市での開催が効果的であると見込まれる大規模競技大会を積極的に誘致し、開催に向けた支援を行います。 また、誘致・開催の際には、市内の関係団体と連携して、レセプション等開催時のユニークべニュー¹⁵ 会場の紹介等を行います。 ②大規模競技大会、スポーツイベントをきっかけとした MICE の推進(観光文化交流局、スポーツ市民局) 大規模競技大会やスポーツイベントの開催決定による世界的、全国的な注目度とMICE¹⁶ デスティネーション ¹⁷ としての関心の高まりを活かし、MICE 誘致を推進します。 ③大規模競技大会モデルの構築(総務局・スポーツ市民局) 大規模競技大会の運営ノウハウ等を蓄積することで、第 20 回アジア競技大会に向けた質素・簡素・機能的・合理的な大会運営を目指すとともに、競技運営をはじめ交通輸送や安全対策、環境への配慮等において絶え間なくイノベーションし続ける先端技術を取り入れることにより、名古屋らしさを打ち出した来場者にやさしく、安心できる大会モデルを構築し、今後の大規模競技大会等に活かします。 ④国際大会や海外チームの合宿・キャンプを通じた交流促進(スポーツ市民局、観光文化交流局) 第 20 回アジア競技大会等を契機として、本市がスポーツ環境の整った都市であることが認知されることから、アジア選手権等の国際大会や各国代表チーム等の合宿、キャンプを誘致し、スポーツを活かして海外から人を呼び込む取り組みを進めます。これにより、過去にアジア競技大会を開催した都市やアジアをはじめとする諸外国との都市間ネットワークを強め、世界に開かれた都市「NAGOYA」を目指します。 ⑤ テクノロジーを活用した環境整備(スポーツ市民局、経済局) アスリートが大会で最高のパフォーマンスを発揮するためには、自らの体の状態を把握し、効果的な練習が行える環境を整えることが重要です。大規模な施設や高価な機材に頼ることなくこうした環境を整えられるスポーツ科学やテクノロジーを用いた測定や練習環境の整備を進めます。 ⑥ 新技術のスポーツへの活用(DX の促進)(スポーツ市民局、経済局) 産業分野においては、AI(人工知能)や VR¹⁸(バーチャルリアリティ)、AR¹⁹(拡張現実)技術が様々な場面で応用される技術革新が進められています。第 20 回アジア競技大会において取り入れられた新技術をスポーツへ活用することで、アスリートのサポートにつなげるとともに、市民のスポーツへの関心を高められる取り組みを進め、絶え間ないイノベーションの創出を促進します。 【大規模スポーツ大会の誘致】【国際大会を通じた、海外選手との交流】(写真は車いすバスケットボールカナダ代表) 3 戦略3 アスリート・指導者等育成戦略 本市からは、これまで国際競技大会や国内競技大会といった大規模競技大会等において優秀な実績を残し、全国的にも注目される選手を多数輩出してきました。スポーツを通して名古屋市の都市名が紹介されたり、活躍した選手が同郷であることがわかった際には誇らしい気持ちが芽生えます。 こうした市民の気持ちはシビックプライドと呼ばれ、市民が名古屋市をより深く愛し、市のために行動したいという気持ちを育みます。また、大規模競技大会等において、地元選手が活躍することで大会の盛り上がりや、競技への関心が高まるとともに、本市はスポーツが盛んな都市であるという、都市としてのブランド力を向上させることが期待できます。 今後の活躍が期待されるジュニアアスリートの成長をサポートするとともに、選手の良さを引き出し、適切な指導が行えるよう指導者の育成を進めます。 1 アスリートへの支援 ①市民がアスリートを支援する機運の醸成(スポーツ市民局) 市民がスポーツ大会に関心を持ち、主体的に観戦、応援する機運を高めるためには、アスリートを身近に感じ、応援できる環境を整えることが重要です。地元選手の情報を得やすくするとともに、将来トップアスリートとなり得るジュニア選手を市民が支援できる機運の醸成を目指します。 ② 有望選手の競技転向支援(スポーツ市民局) 身体能力等の高い選手の新たなチャレンジを応援するため、各競技において一定の実績を持った能力の高いアスリートが、より能力を活かすことができる他競技へ転向する際に必要となる用具の購入を支援するなど競技転向支援の仕組みを整えます。 ③ アスリート支援による都市ブランドの向上(スポーツ市民局) フィギュアスケートにおいて、1980 年代後半から世界選手権やオリンピック、ISU グランプリファイナル等の世界大会で地元選手が常に優秀な成績を収めてきていることから、フィギュアスケートと言えば「名古屋」といった都市ブランドが確立しています。地元選手が大規模競技大会等において継続して優秀な成績を残すことができるスケート競技の練習環境をレインボーアイスアリーナで整えます。 ④ ジュニアアスリートサポートの充実(スポーツ市民局) アジア競技大会をはじめとする大規模競技大会等で地元選手が活躍することにより、市民の大会への関心が高まるとともに、スポーツへの関心の高まりも期待されます。また、地元選手の活躍を通してスポーツが盛んな都市としての本市のブランド力を高める効果も期待されることから、ジュニア選手の競技力強化に加え、負担軽減及びスポーツ障害防止に向けたサポートを、関係団体と連携して実施します。 【メディカルチェック】【超音波による離断性骨軟骨炎の評価】 出典 : 名古屋市立大学整形外科 同門会誌「和」 2 指導者等の育成 ①スポーツ指導者の発掘・育成(再掲)(スポーツ市民局) 地域の子ども達を地域の大人が指導する地域ジュニアスポーツクラブをはじめとした地域スポーツの振興を図るため、関係機関等と連携し、その担い手となるスポーツ指導者の発掘を推進するとともに、知識や技能取得を支援し、スポーツを「安全に、正しく、楽しく」指導し、スポーツの楽しさ、素晴らしさを伝えられる指導者を育成します。 ②障がい者スポーツ指導員の育成(スポーツ市民局) 障害のある方がスポーツに関心を持つ機会やスポーツをするきっかけを妨げない社会づくりを進めていくことが必要です。障害のある方がスポーツを試しにやってみようとする時や、やり方や道具に工夫を加えた指導を受けようとする時に、積極的な支援ができるよう、障害者スポーツに知見を有する障がい者スポーツ指導員の育成を進めます。 ③スポーツボランティア制度の充実(再掲)(スポーツ市民局) 多くのスポーツボランティアに支えられて本市のスポーツイベントやスポーツ大会が開催されています。スポーツボランティアに参加すると、スポーツに関わる楽しさ、スポーツを支えるやりがいや、地域の一体感を感じることができます。こうしたスポーツイベントやスポーツ大会におけるスポーツボランティアの重要性を鑑み、大学等との連携やスポーツボランティアを養成するプログラム、奨励制度の検討等活動が活性化する仕組みづくりを進めます。また、市民がスポーツイベント等の運営を支える機会を設けることで参画意識を高め、地域の活性化につなげます。 【地域のジュニアスポーツクラブ】【スポーツボランティア】 4 戦略4 市民にやさしいスポーツ環境整備戦略 本市では、これまで誰もが気軽にスポーツに親しむことができる機会を提供してきました。こうした取り組みを契機としてスポーツに関心を持っていただいた方が、実際にスポーツをしたり、観戦したりする環境を整えることは、よりスポーツを広め、活性化することにつながります。 一方、障害のある方へのアンケートでは、スポーツ情報が得られなかったり、一緒に運動する人に迷惑をかけると思っている等の理由でスポーツをしない方が多いという結果もあります。すべての市民にやさしいスポーツ環境をハード面とソフト面の両方で整え、障害の有無や性別、年齢、国籍等に関わらずスポーツを「する」ことを楽しみ、「観戦」を楽しむことができる共生社会の実現を目指します。 1 障害者スポーツ等の振興 ①障害者スポーツ等の理解促進・普及振興(スポーツ市民局) でらスポ名古屋に加盟しているトップスポーツチーム等と連携し、試合会場での障害者スポーツの紹介等を行い、障害者スポーツと障害のある方への市民の理解を促進します。また、障害の有無、高齢者や子どもといった年代、性別、国籍、スポーツの得意不得意等に関わらず、市民の誰もが一緒に楽しく競い合えるユニバーサルスポーツ²⁰ の一つとして、障害者スポーツを普及振興します。 さらに、2022年に杭州で開催のアジア競技大会では、eスポーツが公式プログラムになったことを踏まえ、eスポーツの良さを活かしながら、障害の有無等に関わらずスポーツを「する」楽しさを広めてまいります。 ②障がい者スポーツ指導員の育成(再掲)(スポーツ市民局) 障害のある方がスポーツに関心を持つ機会やスポーツをするきっかけを妨げない社会づくりを進めていくことが必要です。障害のある方がスポーツを試しにやってみようとする時や、やり方や道具に工夫を加えた指導を受けようとする時に、積極的な支援ができるよう、障害者スポーツに知見を有する障がい者スポーツ指導員の育成を進めます。 ③障害者が身近な場所でスポーツに親しむ機会の提供(スポーツ市民局) 障害のある方が各区のスポーツセンターを安全に安心して利用いただくため、各スポーツセンターにおいて障害の内容や程度ごとに対応方法をまとめたマニュアルによる職員への研修や利用される市民への理解促進等の環境整備を進めます。 また、障害のある人も無い人も安心して一緒にスポーツを楽しめる環境となるよう、相互理解を促進させ、心のバリアフリーの実現に向けた取り組みを進めます。 ④アスリートもパラアスリートもパフォーマンスを発揮できる環境づくり(スポーツ市民局) 瑞穂公園北陸上競技場の一般開放日には、アスリートとパラアスリートの使用レーンを区分するなどアスリートとパラアスリートが一緒に安全利用できる環境を整えます。相互に意識し高め合える練習を通して、アスリートとパラアスリートの双方がパフォーマンスを発揮できる環境をつくります。 ⑤障害者スポーツセンターは、ハード・ソフト両面において市内唯一の障害者スポーツ振興の拠点です。障害者スポーツへの関心が高まる中、先を見据え、時代のニーズに応じた役割を果たしていけるよう、施設の機能等、そのあり方を検討します。 【車いすバスケットボール体験】【障害者スポーツの理解促進・普及振興】 2 第20回アジア競技大会及びその後の活用を見据えた施設環境整備 ①大規模競技大会に向けた施設改修(スポーツ市民局、総務局) 第20回アジア競技大会等に向け、選手がより高いパフォーマンスを発揮し、多くの観戦者が快適に競技を楽しむことができる競技会場となるよう、市有施設の改修を行います。その際には、競技施設の維持管理技術を継承し利用環境の向上に努めます。また、第20回アジア競技大会以降も改修した施設をにぎわいの拠点とするため、ネットワークを活かしてアジア選手権などの大規模競技大会の誘致を進めます。 ②瑞穂公園の整備(スポーツ市民局) 第20回アジア競技大会後も各種のスポーツ施設を備えた総合運動公園である瑞穂公園を本市のスポーツ振興の拠点とするため、陸上競技場を中心とした施設整備を進め、スポーツによるにぎわいの創出を方向性の一つとした公園全体の整備を推進します。 ③トップアスリートを身近に感じられる陸上競技場の整備(スポーツ市民局) 国際大会や全国大会等の観戦による本格的な競技を体感できる機会やトップアスリートが刻む歴史的価値を感じる機会の提供を可能とする市民に愛される瑞穂公園陸上競技場の建て替えを行います。 瑞穂公園マスタープランに基づく公園整備の概要 瑞穂公園のもつ多面的価値を高め、市民生活の充実に寄与する公園のあり方と、それを実現していくための公園全体の整備・運営にかかる基本的な方針を定めた瑞穂公園マスタープランを令和 2 年 7 月に策定しました。これに基づいて、瑞穂公園陸上競技場整備等事業(PFI 事業)を進めています。 ・瑞穂公園整備の方向性 「スポーツによるにぎわいの創出」名古屋におけるスポーツの聖地としての整備とともに、市民の健康づくりにも資する整備を目指す。 「市民の交流・憩いの場」市民とともに、居心地のよい安全な空間づくりに取り組み、まちづくりを見据えた整備を目指す。 「自然環境の保全と活用」都市の貴重な緑の拠点を保全するだけでなく、自然環境に関心を持ってもらえる整備を目指す。 「名古屋の歴史のはじまりに触れる」遺跡の特徴や魅力を顕在化させ、遺跡の大切さや保存の必要性を市民に感じてもらえる整備を目指す。 ・新陸上競技場のイメージ 「施設整備のコンセプト」 ❶ 競技者と観客の一体感を創出することで、アスリートが最高の力を発揮でき、また、観客が本格的なスポーツを体感できる、夢と感動の空間となる競技場 ❷ 年齢や障害の有無などに関わらず、誰もが安全・安心で快適に利用できる競技場 ❸ 緑と水のうるおいある自然、史跡・古墳等歴史資源に恵まれた環境と調和した競技場 ❹ モノづくり名古屋の最先端の技術を結集した競技場 5 戦略5 情報発信戦略 インターネットやスマートフォンの普及により、必要な情報があればキーワード検索等で、瞬時に情報を入手できる環境が構築されています。この環境を最大限活かすため、スポーツに関する様々な情報を集約した情報発信が重要です。 また、こうしたウェブサイトによる情報発信を、より楽しく実用的に充実させることに加え、発信力の強いプロスポーツとの連携や、学生が多いという本市の強みを活かしたSNS²¹ の活用等により、伝えたい情報を効果的に伝える積極的な情報発信も重要です。 日々多くの情報が発信されている中で、本市の発信する情報が多くの方に選択され、その情報がスポーツに関わる行動につながる契機となる情報の見せ方や伝え方を工夫します。 1 利用しやすい情報発信 ①スポーツ関連ウェブサイトの集約(スポーツ市民局) スポーツに関心のある方々が、市内のスポーツに関連する情報を効率的に入手できるようにするため、大会・イベント情報やスポーツ施設の予約、イベントへの参加申込、アスリートへの支援、スポーツチーム・サークルの紹介、練習場所の情報などスポーツに関連する情報の集約化を図ります。ウェブサイトを閲覧された方が他のスポーツ関連情報も確認したくなる楽しくワクワクするスポーツ関連ウェブサイトの構築を目指します。 ②市内開催大会等の情報発信(スポーツ市民局) 市内では毎週様々なスポーツ大会が各所で開催されています。本市が主催、共催する大会や地域のスポーツ大会についての情報を発信することで、気軽に参加、観戦できる環境を整えます。また、成績優秀者をたたえる大会結果を合わせて発信することでスポーツ機運を醸成します。 ③スポーツレクリエーション情報システムの運用(スポーツ市民局、緑政土木局) 本市が管理するスポーツ施設の最新情報の入手や利用申込がインターネットから簡単にできるスポーツレクリエーション情報システムについて、利用者の皆様が使いやすい利用者目線に立ったシステムを運用します。 2 効果的な情報発信 ①プロスポーツチームと連携した情報発信(スポーツ市民局) 市内を活動拠点とするプロスポーツチームが多数あり、毎年多数の試合を大勢の観客の応援のもと開催されています。集客力のあるプロスポーツチームの活動が活性化することで、市内の交流人口とスポーツ選手に憧れる子ども達やスポーツ関連消費額の増加が期待できます。 また、プロスポーツチームが好成績をおさめることができれば、更なるファン層の拡大でホームタウンである本市の都市ブランド向上への好循環が生まれます。そのため、プロスポーツチームに市民が愛着を持っていただくとともに、知名度のあるプロスポーツチームと連携することによる効果的な情報発信を行います。 ②学生と連携したスポーツ魅力発信(スポーツ市民局) 本市は政令指定都市の中でも大学・短大の学生数が第2 位、学校数が第3 位を誇る大学・学生のまちである強みがあります。また、情報発信の重要な手段の一つとなっているSNS といったソーシャルメディアを日常的に活用している学生と連携することで、より効果的につながりを生むことが期待できます。本市の強みである多くの学生とのつながり、その学生を通した更なるつながりの輪を広げることを目指し、学生と連携したスポーツ魅力の発信を行います。 ③大規模スポーツイベントを通じた機運醸成(スポーツ市民局、総務局) 本市が誘致・開催する大規模スポーツイベントの情報を効果的に発信し、第 20 回アジア競技大会に向けて市民のスポーツ機運の醸成を図るとともに、大規模スポーツイベントの活用でアジア競技大会後は高まった機運を地域の活性化につなげます。 ④ スポーツ情報センター・スポーツ資料展示室の充実(スポーツ市民局) 中日ドラゴンズや名古屋グランパス等の地元に関わりの深いスポーツに関する情報や、個人・団体の所有する貴重な資料の展示、スポーツに関する映像や図書を所蔵しているスポーツ振興会館内のスポーツ情報センター、スポーツ資料展示室へ多くの方に来館いただける展示の工夫・充実を図ります。 【大会情報の発信】【イベントによるスポーツ機運醸成】 Ⅵ 数値目標 計画期間中における目標達成の度合いを判断するため、4 つの指標により、2030(令和12)年の数値目標を設定しました。 1 1世帯当たりのスポーツ関連消費額 オリンピックの開催等スポーツの注目度の高まりに合わせて市民のスポーツ機運が高まり、市民のスポーツに関連した消費が高まる傾向があります。こうしたことから、スポーツにより市民の活動を活性化させ、地域における交流人口を増やすとともに、大規模競技大会やスポーツイベントの開催により市民のスポーツ機運を高めることで、地域経済の活性化を図り、地域の活性化につなげます。地域経済活性化の指標として、1 世帯あたりのスポーツ関連消費額の増加を目指します。 項目 1世帯当たりのスポーツ関連消費額、現状値2019年41,737円、目標値2030年55,000円、比較2030年/2019年1.3倍 出典:総務省「家計調査」令和元年(2019)年度(名古屋市抜粋) 2 名古屋市に「スポーツが盛んである」という都市イメージを持つ市民の割合 本市には本拠地を置くトップスポーツチーム数が多く、ハイレベルなスポーツを身近に感じられる環境があります。また、「マラソンフェスティバル ナゴヤ・愛知」など世界中から注目される大規模スポーツ大会も毎年開催しています。こうした優れたスポーツコンテンツに磨きをかけ、積極的なプロモーションを行うことで、都市ブランドの向上を図り、市民が誇りを持てる都市を目指します。都市ブランド向上の指標として、「スポーツが盛んである」という都市イメージを持つ市民の割合増加を目指します。 項目 名古屋市に「スポーツが盛んである」という都市イメージを持つ市民の割合、現状値2020年度37.7%、目標値2030年度60.0%、比較2030年度/2020年度1.6 倍 出典:令和2年度 第 2 回市政アンケート(名古屋市) 3 スポーツセンター等における障害者の利用人数 障害の有無に関わらず、すべての人がスポーツを気軽に楽しむことができる環境の整備は、スポーツを「する」人口や「みる」人口を増やします。施設のバリアフリー等のハード整備に加え、心のバリアフリー等のソフト面の取り組みを進め、特にスポーツ実施率の低い障害者のスポーツ振興を図ることで、スポーツに関わる人口を増やし、都市の活性化につなげます。障害者スポーツ振興の指標として、身近なスポーツセンター等における障害者の利用人数(延べ人数)の増加を目指します。 項目 スポーツセンター等における障害者の利用人数(延べ人数)※障害者スポーツセンターは団体利用を含む、現状値2019年度268,945人、目標値2030年度350,000人、比較2030年度/2019年度1.3 倍 出典:名古屋市 4 ウェブサイト年間アクセス件数 多くの方に市内のスポーツに関する様々な情報を提供し、気軽にスポーツに親しむことができる機会や場を増やすとともに、スポーツへの興味・関心を高められる取り組みを進めます。利用者目線で求められている情報の見せ方や伝え方を工夫することで、スポーツ情報のハブ機能を果たす魅力的なウェブサイトの構築でスポーツの活性化につなげます。どれだけ多くの方にスポーツ情報を届けられたかを図る指標として、ウェブサイト年間アクセス件数の増加を目指します。 項目 ウェブサイト年間アクセス件数、現状値2019年度13,073件、目標値2030年度200,000件(ウェブサイト構築後見直し)、比較2030年度/2019年度15倍 出典:「名古屋市公式ウェブサイト>暮らしの情報>生涯学習とスポーツ」のアクセス件数 Ⅶ 参考資料 1 スポーツコミッションに係る調査結果 (1)スポーツコミッションの役割 スポーツ庁は、以下の 4 要件に合致した活動を行っている組織を、スポーツコミッション推進組織としています。 《要件 1》常設の組織であり、年間を通じて活動を行っている。(時限の組織を除く) 《要件 2》スポーツツーリズムの推進、イベントの開催、大会や合宿・キャンプの誘致などスポーツと地域資源を掛け合わせたまちづくり・地域活性化を主要な活動の一つとしている 《要件 3》地方自治体、スポーツ団体、民間企業(観光産業、スポーツ産業)等が一体となり組織を形成、または協働して活動を行っている 《要件 4》特定の大会・イベントの開催及びその付帯事業に特化せず、スポーツによる地域活性化に向けた幅広い活動を行っている (2)政令指定都市におけるスポーツコミッションの取組状況 政令指定都市 19 団体(本市除く)に対し、スポーツコミッションを含むスポーツ振興の取組状況をアンケート調査(令和 2(2020)年現在の状況を調査)し、「ヒト」「モノ」「カネ」の観点で整理いたしました。 ① スポーツコミッションの現況 政令指定都市 19 団体(本市除く)のうち、スポーツコミッションを設置している都市は7 都市でした。多くのスポーツコミッションは、スポーツ交流や地域ブランディングを目的とし、幅広い活動を実施していますが、さいたま市の「SSC」では「さいたまクリテリウム」のような大規模大会を企画・運営しています。また、大阪市の「舞洲スポーツ振興事業推進協議会(略称「舞洲プロジェクト」)」のようなプロスポーツチームと連携したイベントの企画・運営を実施しているコミッションも存在しています。 スポーツコミッションにおいてスポーツツーリズムの実施経験がある都市は、札幌市・新潟市の 2 都市であり、全体の 3 割程度でした。 スポーツコミッションは、平成 23(2011)年 10 月に日本で初めて設立された「SSC」(さいたま市)(設立当初は「公益財団法人さいたま観光国際協会」の中に事務局を設置)以後6団体(本市除く)が組成されていますが、事業規模(決算額)は様々で、「SSC」(さいたま市)の約 8 億円から「おかやまスポーツプロモーション機構」(岡山市)の約 150 万円と差があります。 ②「ヒト」の視点からの整理 スポーツコミッションは 4 ~ 23 名程度の職員で構成されており、主に県又は市の関係者が兼務にて運営を実施しています。「さっぽろグローバルスポーツコミッション(以下、「SGSC」という。)」(札幌市)や「新潟市文化・スポーツコミッション」(新潟市)等は市職員とスポーツ協会職員の兼務により構成されています。一方「SSC」(さいたま市)は、団体固有の人員採用を実施しています。 また、多くのコミッションは、主に市長が代表(又は会長)を担っており、官の影響・負担が大きい運営形態となっているといえます。一方、「SSC」(さいたま市)は横浜 DeNAベイスターズ初代代表取締役社長、「おかやまスポーツプロモーション機構」(岡山市)は岡山トヨタ自動車㈱社長が担っており、民の活用を積極的に実施しています。 スポーツコミッションの運営にあたり、官民連携に加え官民バランスが重要になります。官の比率が高ければ、安定的に様々なサービスが提供できる代わりに、意思決定のスピードが遅くなる傾向があります。一方、官から分離した組織(民の比率が高い組織)として運営することで、意思決定が迅速化し、サービスの企画・開発が効率的になると考えられます。そのため、スポーツコミッションにおける「ヒト」の構成は、将来的な運営環境を見据えて、検討することが重要になります。 ③「モノ」の視点からの整理 スポーツコミッションが提供するサービスを「モノ」と捉えた場合、12 のサービスがあると考えられます(笹川スポーツ財団 2018 年度調査報告書「新たな地域スポーツプラットフォーム形成に向けた実践研究」令和元(2019)年度を参照)。 12 のサービスとは「誘致、誘客イベント、開催支援、ツーリズム、地域産業の活性化、事業の創出、住民向け事業、施設管理、人材育成・派遣、セミナー・研修、調査・研究、その他事業」です。 全スポーツコミッションが「誘致・誘客」(スポーツイベント)をサービスとして提供しており、スポーツを通じた交流を促進しています。また、地域のスポーツイベントにおける開催支援を実施しているスポーツコミッションも多く、各市でスポーツ振興の中心的役割を担っていると考えられます。 一方で、スポーツコミッションを活用したスポーツツーリズムを実施している団体は「新潟市文化・スポーツコミッション」(新潟市)、「SGSC」(札幌市)であり、地域の観光資源等を用いた地域活性化にフォーカスして活動しているスポーツコミッションは少ない傾向にあります。 「アウター政策」と「インナー政策」の観点からは、多くのスポーツコミッションは「アウター政策」に比重を置いている傾向がうかがえます。今後は「アウター政策」と「インナー政策」を合わせた「ハイブリッド型事業体」を目指すことが求められています。 また、「ハイブリッド型事業体」を目指すために、新たな産業・付加価値を創出する必要があると考えられます。スポーツツーリズムでは「スポーツ」と「観光(資源)」を掛け合わせたことで、これまでにはなかったスポーツの可能性を見出しました。このように「スポーツ」と他の分野を掛け合わせることで、地域の活性化の実現につながると考えられています。 ④「カネ」の視点からの整理 スポーツコミッションの運営は財源(「カネ」)の確保が最も重要になります。多くのスポーツコミッションは収入のほとんどを県又は市からの補助金・負担金で賄っています。そのため、県又は市からの収入を中心に運営しているスポーツコミッションは官の比率が高く、自立性が乏しいと推察されます。 一方「SSC」(さいたま市)については、自主事業で約 4 割程度の財源を確保できており、正・賛助会員からの会費、参画企業からの協賛金、グッズ販売等で自主事業収入を構成しています。県又は市からの補助金・負担金は大規模大会(さいたまクリテリウム)に関する財源であるため、当該大会を除くとほぼ独立採算を実現しており、自立性の高い組織となっています。 また、「スポーツコミッション関西」(大阪市)は民間企業主体で構成され、会費収入を中心とした運営を実現した自立性の高い組織です。 (3)スポーツコミッションの体制 スポーツコミッションは学校や地域コミュニティ等に対してスポーツ振興やシビックプライド醸成等を推進する公益的事業を担う機能を有しており、組織の公共性が求められます。組織の公共性確保は、所轄官庁の監督や事業活動報告など一定のモニタリングを受けることが重要です。NPO 法人は一般社団法人や一般財団法人と比べ報告内容が多く、組織の公共性が高いと考えられます。 また、「民間」主導の組織体制は、設立当初から民間団体・民間関係者を巻き込み、行政財源以外の財源確保を目指す必要があります。設立時に必要な人数が多いNPO 法人は、その他の法人(一般社団法人・一般財団法人)よりも、事業の巻き込み力が強いと考えられます。 その他、NPO 法人は法人登記の登録免許税が非課税、収益事業を行っていなければ法人住民税均等割が申請により免除されるなど設立にかかる費用等の優遇があり、所轄官庁の認定で寄附者への税制優遇が生じ、寄附金を集めやすいというメリットがあります(図表 21 参照)。 図表21 非営利組織に分類される各法人の特徴 NPO 法人 組織の公共性◎、事業の巻込み力◎、設立にかかる費用◎ 一般社団法人 組織の公共性〇、事業の巻込み力△、設立にかかる費用〇 一般財団法人 組織の公共性〇、事業の巻込み力〇、設立にかかる費用△ (4)海外におけるスポーツコミッションの取組状況 ① 取組事例調査のポイント 日本ではまだ歴史が浅いスポーツコミッションですが、海外においては多くにみられる組織形態です。欧米や一部のアジア諸国ではスポーツの振興に以前から着目しており、日本と同様に成長産業として位置付けています。特に、スポーツコミッションの活動で重要な財源確保は、行政中心に様々な支援を行っています。 ② 先進的な取組事例 取組事例 米国 : フロリダ州 アラチュア郡の「ベッド税」 フロリダ州アラチュア郡は、1930 年代頃からボランティア主体の「ゲインズビルスポーツ企画組織」がスポーツイベント誘致等の活動をしており、1988 年に、スポーツツーリズムを活用した地域経済・住民 QOL²² 向上のため、非営利民間組織である「ゲインズビルスポーツコミッション(以下、「GSC」という。)」を設立しました。 スポーツイベント誘致による交流人口増加が 4 億円程度の「ベッド税(観光客からホテルの宿泊料に上乗せして支払う税金)」増加に貢献していることが把握されたため、アラチュア郡は GSC とパートナーシップを結び、貢献した増加収入の一部を補助金として還元しています。これにより、GSC は年間 $110,000(約 1,200 万円)を「スポーツイベント誘致費(ビッドプール)」としてアラチュア郡から受け取り、35 ~ 45 のスポーツイベントの誘致や運営費補助に充てる財源としています(図表 22 参照)。 本事例では、スポーツコミッションの経済的インパクトと、行政との関係性を紐づけることで、新たな財源確保手段としていますが、日本のスポーツコミッションは、自主事業収益や市からの委託業務収入、負担金・補助金、寄附等が主な財源となっています。地域に還元した経済的な便益を数値化することで、新たな財源確保の一つとして検討することができると考えられます。(笹川スポーツ財団(平成 26(2014)年)アメリカ合衆国におけるスポーツコミッション: フロリダ州ゲインズビルの事例 参照) ただし、税制措置、寄附文化を含め、海外と日本の内外環境、制度の相違点を踏まえた場合、日本の市町村単位で新たな大規模財源の確保は難しく、米国、ドイツ、韓国のように、国策としてスポーツを推進する施策の必要性など長期的な課題は多く存在します。 図表22 「ベッド税」の分配イメージ図 アラチュア郡内のホテル ベッド税4億円 ↓ アラチュア郡行政<ベッド税使途> 20%(8,000万円)建設修繕費積み立て 20%(8,000万円)新規観光施設建設積み立て 60%(2億4,000万円)ビジットゲインズビルへ資金提供 ↓ ビジットゲインズビル 1 億6,000万円団体運営費・出張費 8,000万円観光関連施設・団体へ補助→6,800万円補助金(公募)→補助事業公募 ↓1,200万円随意契約(ビッドプール) ゲインズビルスポーツコミッション <随意契約理由>スポーツイベントの集客力がほかの観光関連団体の集客力を圧倒し、ベッド税収入への貢献で突出している ↓応募 補助事業公募 <評価基準>①ベッド税収入に貢献できるか、②州・郡外からお金を運んで来ることができるか、③ゲインズビルの都市イメージの向上に貢献できるか 2 名古屋市スポーツ戦略有識者懇談会 (1)会議開催日程 開催日第1回、策定経過 日時:令和 2 年 8月5日(水)午後 2 時~3 時、場所:名古屋市公館、主な議題:スポーツ戦略の概要について・策定スケジュールについて 開催日第2回、策定経過 日時:令和 2 年 9月29日(火)午後 2 時~3 時、場所:有限責任監査法人トーマツ 37 階 D-forum、主な議題:スポーツ戦略(中間案)について 開催日第3回、策定経過 日時:令和 2 年 12月8日(火)午後 2 時~3 時、場所:有限責任監査法人トーマツ 37 階 D-forum、主な議題:スポーツコミッションによる新たな取り組みについて・個別施策と数値目標について 開催日第4回、策定経過 日時:令和 3 年 2月18日(木)午後 3 時~4 時、場所:有限責任監査法人トーマツ 37 階 D-forum、主な議題:スポーツ戦略(素案)について ※全てオンライン会議にて開催 (2)委員名簿(敬称略:五十音順) 氏名 石川 勉、所属等 (一社)日本旅行業協会中部事務局長 氏名 宇佐美 義光、所属等 名古屋市体育協会会長 氏名 大槻 洋也、所属等 至学館大学健康科学部 健康スポーツ科学科教授 氏名 恩田 美栄、所属等 フィギュアスケートインストラクター 氏名 田中 照代、所属等 オフィスTI-R 氏名 中田 有紀、所属等 名古屋市スポーツ推進審議会会長 氏名 原田 宗彦(座長)、所属等 早稲田大学 スポーツ科学学術院教授 氏名 三浦 哲司、所属等 名古屋市立大学 人間文化研究科准教授 氏名 山﨑 武司、所属等 野球解説者 氏名 湯浅 景元、中京大学名誉教授 (3)名古屋市スポーツ戦略有識者懇談会設置要綱 (目的) 第 1 条 名古屋市スポーツ戦略(以下「戦略」という。)の策定に向けて、専門的な見地からの幅広い意見を反映させるため、各分野の有識者で構成する「スポーツ戦略有識者懇談会(以下「懇談会」という。)」を設置する。 (所掌事務) 第 2 条 懇談会は、次に掲げる事項について意見を聴取する。 (1) 戦略の策定に関すること。 (2) その他、戦略に関すること。 (組織) 第 3 条 懇談会は、別表に掲げる委員をもって構成する。 2 懇談会に座長を置く。 3 座長は、委員の互選によりこれを定める。 4 座長は、懇談会の議事を進行する。 (懇談会) 第 4 条 懇談会は、必要の都度、スポーツ市民局長が招集する。 2 座長は、必要に応じて、委員以外の者に会議への出席及び助言を求めることができる。 3 懇談会は公開するものとする。ただし、次に掲げる場合にあって、懇談会で非公開を決定したときは、この限りでない。 (1) 名古屋市情報公開条例(平成 12 年条例第 65 号)第 7 条各号に掲げる非公開情報が含まれる事項を取り扱う場合 (2) 懇談会を公開することにより、懇談会の適正な運営に著しい支障が生ずると認められる場合 4 懇談会の傍聴に係る手続き及び傍聴する者が遵守すべき事項については、スポーツ市民局長が別に定めるものとする。 (委員の任期) 第 5 条 委員の任期は、令和 3 年 3 月 31 日までとする。 2 欠員が生じた場合の後任者についても同様とする。 (謝金) 第 6 条 委員には、懇談会出席に係る謝金及び交通費を支払うことができる。謝金の額は 1 日につき 12,600 円とする。 2 前項の規定により支給する交通費の額は、実費とする。 (事務局) 第 7 条 懇談会の事務を処理させるため、スポーツ市民局スポーツ推進部スポーツ戦略室に事務局を置く。 (その他) 第 8 条 この要綱に定めるもののほか、懇談会の運営に関し必要な事項は、スポーツ市民局長が定める。 附 則 この要綱は、令和 2 年 8 月 5 日から施行する。 附 則 この要綱は、令和 2 年 10 月 9 日から施行する。 3 庁内会議 (1)会議開催日程 策定経過 令和 2 年 6月11日、「スポーツ戦略会議に向けた課長級ワーキング」スポーツ戦略の目的について・スポーツ戦略会議の構成について 策定経過 令和 2 年 7月6日、「第 1 回名古屋市スポーツ戦略会議」スポーツ戦略の策定について 策定経過 令和 2 年 9月 1日、「第 1 回名古屋市スポーツ戦略会議幹事会」スポーツ戦略の概要について 策定経過 令和 2 年 11月12日、「第 2 回名古屋市スポーツ戦略会議幹事会」各局意見への対応について・個別施策と数値目標について・スポーツコミッションによる新たな取り組みについて 策定経過 令和 2 年 12月21日、「第 2 回名古屋市スポーツ戦略会議」スポーツ戦略(中間案)について 策定経過 令和 3 年 1月21日(書面開催)、「第 3 回名古屋市スポーツ戦略会議幹事会」スポーツ戦略(素案)について 策定経過 令和 3 年 3月29日、「第 3 回名古屋市スポーツ戦略会議」スポーツ戦略(案)について 策定経過 令和 3 年 7月29日、「第 4 回名古屋市スポーツ戦略会議幹事会」・名古屋市スポーツ戦略(案)にかかる所管事務調査、市民意見への対応について・名古屋市スポーツ戦略(案)に対する市民意見の内容及び市の考え方について・名古屋市スポーツ戦略会議設置要綱を廃止する要綱(案)について・今後のスケジュール 策定経過 令和 3 年 8月2日、「第 4 回名古屋市スポーツ戦略会議」・名古屋市スポーツ戦略(案)にかかる所管事務調査、市民意見への対応について・名古屋市スポーツ戦略(案)に対する市民意見の内容及び市の考え方について・名古屋市スポーツ戦略会議設置要綱を廃止する要綱(案)について・今後のスケジュール (2)名古屋市スポーツ戦略会議設置要綱 (目的) 第1条 都市ブランドの向上及び地域の活性化を目指してスポーツを活用する戦略体系の検討を行うため、名古屋市スポーツ戦略会議(以下「スポーツ戦略会議」という。)を設置する。 (所掌事務) 第 2 条 スポーツ戦略会議は、次に掲げる事項を処理する。 (1) スポーツを活用した都市ブランドの向上に関すること。 (2) スポーツを活用した地域の活性化に関すること。 (3) スポーツ戦略の検討及び策定に関すること。 (構成) 第 3 条 スポーツ戦略会議に会長、副会長及び委員を置く。 2 会長はスポーツ市民局所管副市長とし、副会長はスポーツ市民局長とする。 3 委員は、次に掲げる者をもって充てる。 (1) 別表 1 に掲げる職にある者 (2) その他会長が指定する職にある者 (会長等) 第 4 条 会長は、スポーツ戦略会議の事務を総理し、会議の議長となる。 2 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。 (会議) 第 5 条 スポーツ戦略会議は、必要の都度会長が招集する。 2 会長は、必要があると認めるときは、スポーツ戦略会議に関係者の出席を求め、説明又は意見を聴くことができる。 (幹事会) 第 6 条 スポーツ戦略会議の所掌事務について企画立案等を行うため、幹事会を置く。 2 幹事会に、幹事長及び幹事を置く。 3 幹事長はスポーツ市民局スポーツ推進部長とし、副幹事長はスポーツ市民局スポーツ推進部スポーツ戦略室長とする。また、幹事は別表 2 に掲げる者及び幹事長が指定する職にある者をもって充てる。 4 幹事会は、必要に応じて幹事長が招集し、幹事長は議長となる。 5 幹事長は、議題に関係すると判断する幹事のみで幹事会を開催することができる。 6 幹事長は、必要があると認めるときは、幹事会に関係者の出席を求め、説明又は意見を聴くことができる。 (ワーキンググループ) 第 7 条 幹事会の機能を補佐し、幹事会からの指示事項を調査・研究するため、幹事会は必要に応じてワーキンググループを置くことができる。 2 ワーキンググループの構成員は、調査・研究する事項に応じて、幹事長が指名する。 3 ワーキンググループに関する事項は、別に定める。 (庶務) 第 8 条 スポーツ戦略会議の庶務は、スポーツ市民局スポーツ推進部スポーツ戦略室において処理する。 (委任) 第 9 条 この要綱に定めるもののほか、スポーツ戦略会議の運営その他必要な事項は会長が別に定める。 附 則 この要綱は、令和 2 年 7 月 6 日から施行する。 附 則 この要綱は、令和 2 年 11 月 13 日から施行する。 附 則 この要綱は、令和 3年 4 月 1 日から施行する。 別表 1 会 長 スポーツ市民局を所管する副市長、副会長 スポーツ市民局長、委員 市長室長、委員 総務局長、委員 総務局企画調整監、委員 財政局長、委員 経済局長、委員 観光文化交流局長、委員 健康福祉局長、委員 住宅都市局長、委員 緑政土木局長、委員 教育長、委員 名東区長、委員 天白区長 別表 2 幹事長 スポーツ市民局スポーツ推進部長、副幹事長 スポーツ市民局スポーツ推進部スポーツ戦略室長、幹事 市長室次長、幹事 総務局企画部企画課長、幹事 総務局総合調整部アジア競技大会推進室長、幹事 財政局財政部財政課長、幹事 スポーツ市民局スポーツ推進部スポーツ振興室長、幹事 スポーツ市民局スポーツ推進部スポーツ施設室長、幹事 経済局産業労働部産業企画課長、幹事 観光文化交流局総務課長、幹事 健康福祉局総務課長、幹事 住宅都市局主幹(企画調整)、幹事 緑政土木局主幹(企画)、幹事 教育委員会部活動振興室長、幹事 名東区役所区政部地域力推進室長、幹事 天白区役所区政部地域力推進室長 Ⅷ 用語解説 1 スポーツコミッション 地方公共団体とスポーツ団体、観光産業等の民間事業者が一体となり、スポーツツーリズムの推進、持続性のあるスポーツイベントの開催や大会・合宿の誘致等により、交流人口の拡大と地域コミュニティの形成・強化を目指す活動を行う組織。 2 スポーツツーリズム スポーツを「みる」「する」ための旅行そのものや周辺地域観光に加え、スポーツを「ささえる」人々との交流など、複合的で豊かな旅行スタイルの創造を目指すもの。 3 新型コロナウイルス感染症 「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」はコロナウイルスのひとつ。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や 2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれる。 4 武道ツーリズム 日本発祥の武道を活用したツーリズムスタイル。スポーツ庁は、世界の関心が高い日本発祥の「武道」を活かした、希少性の高い「武道ツーリズム」を提唱している。 5 アーバンスポーツ 広い場所を必要としない、個人が気軽に始められるなどの理由で、都市住民が参加しやすいスポーツ。都市型スポーツ。 6 e スポーツ 主に対戦型のコンピューターゲームで行われる競技。 7 4競技12種目 バスケットボール(2 種目 :3×3(男 / 女)、自転車競技(4 種目 :BMX フリースタイル(男 / 女)、BMX レーシング(男 / 女)、スケートボード(4 種目 : パーク(男 / 女)、ストリート(男 / 女))、スポーツクライミング(2 種目: ボルダリング・リード・スピード複合(男 / 女))。 8 FIA 世界ラリー選手権(WRC) フォーミュラワン(F1)や、ル・マン 24 時間耐久レースを含む世界耐久選手権(WEC)と並ぶ国際自動車連盟(FIA)が制定している世界選手権の一つ。一般公道を舞台とした世界最高峰のラリー選手権。 9 インナー政策 地域内のマーケットを対象としたスポーツ振興において、住民の健康づくりや地域スポーツの振興、そして学校の部活動や公共スポーツ施設の管理運営といった、スポーツによって住民の健康と幸せを最大化すること(原田宗彦 著「スポーツ地域マネジメント」学芸出版社 参照)。 10 アウター政策 地域外のマーケットを対象にして、スポーツイベントや合宿誘致する等で域外からビジターを呼び込み、地域を活性化すること(原田宗彦 著「スポーツ地域マネジメント」学芸出版社 参照)。 11 ハイブリッド型事業体 「アウター政策」と「インナー政策」を同時展開する等して、地域内外から収入を得て、稼ぐ力を内包した事業体(原田宗彦 著「スポーツ地域マネジメント」学芸出版社 参照)。 12 イノベーション 従来の考え方にとらわれない自由な発想で、新たな価値を生み出し、人々の生活に劇的な変化をもたらすこと。 13 スポーツプロモーション スポーツの普及・促進、発展を意味する言葉。 14 DX(デジタルトランスフォーメーション) 経済産業省の「「DX 推進指標」とそのガイダンス」で 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。IT が「人々の生活をあらゆる面でより豊かに変化させる」という概念。 15 ユニークべニュー 博物館や美術館、歴史的建造物、城郭、屋外空間等で会議やレセプションを開くことで、特別感や地域の特性を演出できる会場。 16 MICE 企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字。多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。 17 デスティネーション 観光やビジネス等における旅行目的地、旅行先のこと。 18 VR(バーチャルリアリティ) 仮想現実の略で、映像などにより疑似的な体験が出来る仕組み。 19 AR(拡張現実) 拡張現実(Augmented Reality)の略で、実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ね、風景を「仮想的に拡張する」もの。 20 ユニバーサルスポーツ 障害の有無や年齢、性別、国籍、スポーツの得意不得意等に関わらず、市民の誰もが一緒に楽しく競い合えるスポーツ。 21 SNS Social Networking Service(Site)の略。インターネット上で友人を紹介しあって、個人間の交流を支援するサービス(サイト)。 22 QOL(クオリティ・オブ・ライフ) 一般にひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた『生活の質』のことを指す。 【発行・編集(お問い合わせ先)】 名古屋市スポーツ市民局スポーツ推進部スポーツ戦略室 〒460-8508 名古屋市中区三の丸三丁目 1 番 1 号 電話 0 5 2 - 9 7 2 - 3 2 9 4 FAX 0 5 2 - 9 7 2 - 4 4 1 7 発行年月 令和3(2021)年8月 この冊子は、古紙パルプを含む再生紙を使用しています。