73ページ 第4章 めざす都市像の実現に向けた取り組み 1 市政の変革と基盤強化 ここでは、「めざす都市像」の実現に向けて施策・事業を推進していくための市政運営にあたり、その基本的な考え方や、行政を取り巻く潮流や課題を踏まえ、取り組みの方向性を示します。 行政運営における基本的な考え方 あらゆる行政サービスは、人権尊重の理念のもと、常に公正・公平に提供されなければなりません。そのため、職員は、市民から信頼される職員となるよう倫理意識の高揚に努め、民主的で透明性の高い市政の運営にあたらなければなりません。また、行政運営にあたり、常に組織及び運営の合理化に努め、最少の経費で最大の効果を挙げることは、地方自治法に定められた地方公共団体の責務です。 近年では、ライフプラン、ライフスタイル、価値観の変化・多様化やSDGsの認知拡大等に伴い、多様性(ダイバーシティ)や包摂性(インクルージョン)に対する要請がこれまで以上に強まっており、本市には、SDGs未来都市として、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現を先導していくことが求められています。 そのため、職員は常に人権を尊重し、性別や年齢、障害の有無、国籍などに関わらず、多様性・包摂性に対する十分な認識のもと、全体の奉仕者として公正・公平な判断と誠実な職務の遂行に努めます。とりわけ、名古屋城バリアフリーに関する市民討論会における差別発言への本市の対応やその背景の検証を踏まえ、さらなる人権感覚の向上や障害者差別の解消に取り組まなければなりません。 また、市民の多様な意見を市政に反映する機会を積極的に設け、特に、「子どもは権利の主体」「子どもは社会の構成員」という観点から、子どもが直接関わる事項に限定せず、子どもの社会参画の機会を積極的に確保していくことで、大人のみでは気が付くことができない新しい視点・発想による意見を取り入れていきます。 このように、誰一人取り残さない社会の実現に向け、“人”中心の行政サービスの提供に取り組んでいくことが必要となります。 そして、市政に関する情報を市民にとってわかりやすく提供し、情報公開を進めることで透明性の高い市政を推進するとともに、本市が保有する個人情報を適正に取り扱うことで、市民に信頼される市政を推進します。 脚注 SDGs未来都市:SDGs の達成に向けた優れた取り組みを提案する都市として国が選定するものであり、本市は令和元(2019)年7月に選定を受けた。(令和5(2023)年5月現在、182都市が選定) 74ページ 行政を取り巻く潮流 本市は、今後本格的な人口減少局面を迎えますが、生産年齢人口については、平成4(1992)年をピークとして既に約1割減少しています。今後も生産年齢人口は減少していくものと考えられ、行政運営においてもさらなる労働者不足が懸念されています。 そのような中、高齢者人口は今後さらに増加が見込まれていることなどから、扶助費の増加に伴う厳しい財政状況が懸念される一方で、大規模災害や重大な感染症等のリスクへの備えが必要となるほか、既存の社会インフラや施設の老朽化対応に伴う公共投資についても引き続き必要になるものと考えられます。 さらに、国際的な都市間競争が激化する中、名古屋大都市圏における経済・社会・文化の中枢都市である本市は、アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線の開業を本市や圏域、ひいては日本全体の成長につなげていくための投資についても、時期を逸することなく積極的に行う必要があります。 市政運営にあたっては、これまでも市民サービスの向上や業務の効率化を目的にデジタル化が進められてきましたが、コロナ禍を契機にデジタル化の必要性はさらに高まり、国は、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」をビジョンに掲げ、デジタル庁の設置やデジタル社会形成基本法の成立等、デジタル社会の実現に向けた動きを加速しています。 また、行政課題が多様化・複雑化する中、民間の創意工夫やイノベーションをいかした公民連携による行政課題等の解決への期待が高まっており、民間においても、SDGsの認知拡大等により「社会貢献活動(CSR)」や社会価値と経済価値とを両立させる「公と民による共有価値の創造(CSV)」を推進する企業等が増加するなど、行政と民間とが「公共」をともに担う時代へと転換しつつあります。 こうした考え方や行政を取り巻く潮流を踏まえて、以下の5つの観点から市政を変革するとともに、人材・組織・財政など市政運営の基盤強化を図ります。 (1)人権と多様性(ダイバーシティ)の尊重 (2)新たな価値の創造や多様な主体との連携 (3)市民の満足度を高める市政運営 (4)持続可能な自治体経営 (5)名古屋市がめざす大都市制度 脚注 重大な感染症:本計画では、生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症のことをいう。 名古屋大都市圏:名古屋市を中心におおむね30から50キロメートルの範囲で、産業、観光、防災など分野ごとに柔軟に捉えたエリア。 75ページ (1)人権と多様性(ダイバーシティ)の尊重 (ア)人権の尊重と人権感覚の向上 名古屋市基本構想に掲げる「人間性豊かなまち」とは、個人の尊厳と男女平等の原則に基づき、一人ひとりの市民が自信と希望にあふれ、その能力を十分に発揮し、真に生きがいのある生活の営めるまちです。 本市は、市民一人ひとりの人権が尊重され、差別や偏見がない人権感覚にすぐれた「人間性豊かなまち・名古屋」の実現をめざして、たゆむことなく努力を続けていく必要があります。 取り組みの方向性 ①一人ひとりの人を大切にする施策の推進 市政のあらゆる施策の実施において、人権尊重の理念を柱にすえた行政運営につとめ、多様性を尊重し、一人ひとりの人を大切にするという視点から施策を推進します。 ②市民が主体となる施策の推進 市民一人ひとりが人権について日常生活の中で主体的に考え、学び、行動することを尊重し、家庭、地域、学校、職場などあらゆる場における主体的な市民活動や社会参加を支援していきます。 ③総合的な施策の推進 人権に関わる課題は、女性をはじめ、子ども、高齢者、障害者、部落差別(同和問題)、外国人、その他さまざまな分野にわたっています。それぞれの人権課題が複雑化・多様化する中で、各分野にまたがった人権課題に対しても施策の効果的な連携を図るなど、市政全般にわたって人権という視点から施策を総合的に推進していきます。 76ページ (イ)多様性(ダイバーシティ)の理解と尊重 少子化・高齢化、グローバル化に伴う国際的な交流の増加、情報化等を背景に、人々の価値観や社会の多様性・複雑性は増しています。 行政サービスの提供にあたっては、利用者の立場に立ったサービス提供が必要であることから、職員には、行政サービスを受ける市民等の一人ひとりが異なる価値観を持ち、異なる背景を持っていることを常に意識しながら、多様性(ダイバーシティ)を尊重し、包摂(インクルージョン)する姿勢が求められます。 また、行政サービスを提供する職員についても、育児や介護をしながら働くなど時間に制約のある職員や障害のある職員など、一定の配慮が必要な職員は今後一層増加すると考えられることから、誰もが働きやすい職場環境が求められています。 取り組みの方向性 ①多様性(ダイバーシティ)を包摂(インクルージョン)する意識の向上 本市には多様な人々が暮らし、働き、訪れており、職員もまた多様な人々の一員です。職員は、多様性(ダイバーシティ)を自分ごととして捉えて包摂(インクルージョン)し、誰一人取り残さないという意識のもとで職務遂行に努めます。 ②多様な価値観・背景に配慮したサービス提供 行政サービスは利用者にとって利用しやすいものでなければならないことから、サービスの構築にあたっては、市民等の一人ひとりが異なる価値観を持ち、異なる背景を持っていることを常に意識しながら、構築段階から利用者との対話に努めるなど、利用者の多様な要望や期待に沿ったわかりやすいサービスの提供に努めます。 ③多様性を尊重した働き方改革 働き方に対するニーズも多様化する中で、職員の誰もがその能力を最大限に発揮し、高い意欲を持って職務に取り組めるよう、仕事と私生活、育児や介護等との両立を図るとともに、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進による業務改善に取り組むなど、やりがいと業務の効率性をともに高められる働き方改革の推進や、多様で柔軟な働き方を実現するための環境整備に努めます。 とりわけ、さまざまな事情で配慮が必要な職員がいることを前提として、組織内で協力する意識を醸成します。 性別や年齢、ライフステージにとらわれない職務分担や幅広い職域における柔軟な人事配置、障害者雇用の促進等、職員がそれぞれの個性と能力を活かし、安心して働くことができる職場環境の整備、意識・風土の醸成に努めます。 77ページから80ページ (2)新たな価値の創造や多様な主体との連携 (ア)デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進 本市においては、市政各分野において多様化・複雑化するさまざまな課題に的確に対応していくため、平成31(2019)年3月に策定した「名古屋市ICT活用に関する基本方針」のもと市民サービスや市役所の業務の「改善」に取り組んできましたが、新型コロナウイルス感染症への対応において、医療や雇用、産業、市民生活など、あらゆる面でデジタル化をめぐるさまざまな課題が顕在化しました。 一方、国においては、令和3(2021)年5月に、「デジタル社会形成基本法」をはじめとするデジタル改革関連法が制定され、同年9月、デジタル社会実現の司令塔としてデジタル庁が発足するなど、社会全体のデジタル化に向けた取り組みを加速してきました。 このような背景や、人材や財源等の行政資源に限りがある中で、デジタルの可能性を最大限に引き出し、効果的に活用していくことは、これまでの課題解決に留まらず、今後の市民の幸福な生活の実現や、地域経済の活性化の上でも不可欠といえます。 そのためには、市政におけるすべての分野においてデジタルの力を活用することを前提に、あらゆる市民サービスや市役所の業務を「変革」し、市民一人ひとりにより適した市民サービスを提供することが必要です。 また、誰もが安心・安全にデジタル技術を活用できるよう、セキュリティを確保するとともに、年齢や障害の有無、国籍、経済的な状況などによる情報格差(デジタルデバイド)の是正を図り、誰一人取り残されない、人にやさしいデジタル社会を実現することが必要です。 脚注 デジタルデバイド:パソコンやインターネットなどの情報技術を利用する能力や、情報技術にアクセスする機会の有無によって生じる情報格差。 取り組みの方向性 デジタル技術が日常生活や社会活動に浸透・定着する本格的なデジタル社会の到来を見据え、「名古屋市ICT活用に関する基本方針」の考え方を継承し、市民サービスや職員の働き方、業務等のDXを推進する「市役所DX」と、市民の暮らし・産業分野のDXを推進する「都市DX」を、一体的・加速度的に推進し、市民の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)の向上や地域経済の活性化、新たな付加価値の創出につなげていきます。 取り組みにあたっては、行政と民間それぞれが収集・蓄積したノウハウやデータの提供・共有をはじめとした持続可能な協業関係の構築を推進するとともに、市民のデジタルリテラシーの向上や、企業における専門人材の育成など、デジタル人材の底上げと専門性の向上を図ります。 また、デジタル技術の活用が進められる一方で懸念されるサイバー攻撃の脅威や個人情報の漏えいなどのリスクに対応するため、セキュリティ対策及び適切な情報管理を徹底します。 脚注 デジタルリテラシー:デジタル技術を理解して適切に活用するスキル。 ①市役所DXの推進 原則としてすべての行政手続きのオンライン化を進め、時間や場所を選ばず、スマートフォンやパソコンなどから手続きを完結できるようにするなど、デジタルを活用し、市民一人ひとりにより適した市民サービスの提供をめざします。 市民サービスの変革とあわせて、業務のペーパーレス化の推進や迅速かつ柔軟な働き方の推進、AI等の先端技術を活用した業務の自動化・効率化を図るなど、市役所内部の変革を一丸となって推進します。 ②都市DXの推進 健康・医療・介護、教育、防災、子ども、モビリティ、インフラ、まちのにぎわいづくり等の市民の暮らしに密着した分野、中小企業支援等をはじめとする産業分野において、デジタル技術を積極導入し、課題解決やデータ集積を推進します。 あわせて、まちなかのあらゆる場所において先進技術の実証実験等を積極的に受け入れるとともに社会実装を推進します。 ③情報格差(デジタルデバイド)対策の推進 年齢や障害の有無、国籍、経済的な状況などに関わらず、誰一人取り残されることなく、安心・安全にデジタルを活用できるよう、セキュリティ対策をはじめとした環境づくりやデジタルリテラシーの向上に向けた取り組みを推進します。 ④データ利活用の推進 本市が保有する公共データについて、国が公開を推奨するデータ群などを取りまとめた自治体標準オープンデータセットをはじめ、民間の利用ニーズの高い分野を中心にオープンデータのさらなる公開拡充を進めるとともに、データの検索性が高い専用サイトを構築するなど市民の利便性を高めることで、地域課題の解決や活性化などにつなげます。 公的統計をはじめとしたデータを政策課題や効果を把握するための客観的な証拠(エビデンス)として積極的に活用するEBPM(証拠に基づく政策立案)を推進するとともに、個々の分野で、デジタルの活用やデータの集積を進め、分野横断的な利活用につなげられるよう、統計をはじめとしたデータに関するリテラシーの向上に努めます。 また、データサイエンス学部を有する名古屋市立大学をはじめとした大学や企業等と連携し、本市が保有するデータを活用した共同研究やAIなどの情報科学を駆使した分析、行政課題等の解決、デジタル人材育成を推進します。 脚注 EBPM:Evidence-based Policy Makingの略。証拠に基づく政策立案。 81ページから82ページ (イ)公民連携の推進 本市では、行政と民間の役割分担の観点や費用対効果・効率性の観点から、民間活力の積極的な導入を進めてきています。 公共施設の整備・運営等に関しても、民間のノウハウを活用し経費の削減を図るなどの効率的・効果的な実施や、新たな事業機会の創出・民間投資の喚起による経済成長に資するような民間活力の活用は重要であることから、指定管理者制度やPFI手法の導入など、PPP/PFIの活用や民営化などの取り組みを引き続き推進していく必要があります。 一方で、コロナ禍や少子化・高齢化の進行、大規模災害への懸念など、近年、本市を取り巻く状況が大きく変化する中で、社会課題等も多様化・複雑化しており、質の高い公共サービスを継続的に提供していくためには、市政の幅広い分野において、より一層、民間の創意工夫を活かした課題解決が重要となっています。 行政との連携にも前向きな企業等が増加している潮流を踏まえ、公共サービスに民間のアイデアやノウハウ等を組み合わせ、より質の高い公共サービスの提供につなげるためには、本市が事業内容をあらかじめ詳細に設定し、実行主体となる民間事業者を募集することのみでなく、民間との対話を積極的に行い、事業の構想段階から民間の提案を受け入れていくことが必要です。 行政と民間とが「公共」をともに担い、公共サービスの質の向上や新たな事業機会の創出、地域経済の活性化など、新たな価値をともにつくり上げていくためには、これまでの取り組みに加え、社会課題等の解決につながる民間提案が活発になされるように促すとともに、本市の市政各分野においても、より積極的に公民連携を推進していくように取り組むことが必要です。 脚注 指定管理者制度:地方公共団体が公の施設の維持管理・運営等を、管理者として指定した民間事業者等に包括的に実施させる手法。 PPP/PFI:PPPはPFIや指定管理者制度、Park-PFIなど公共施設の整備・運営等の公民連携手法の総称。PFIは公共施設の整備・運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法。 取り組みの方向性 ①公民の対話と共創の推進 行政課題等の解決に向けた民間提案に関する一元的な窓口・相談機能(コンシェルジュ機能)や提案実現に向けた伴走機能(コーディネート機能)を有する「公民連携窓口」を活用し、本市の抱える課題やニーズを積極的に公開してそれに対する提案を募集するなど、民間提案の活性化に向けて取り組んでいきます。 また、本市と企業、大学、NPOなどにより構成する「公民交流フィールド」を活用し、多様な主体との相互理解を深め、協働・連携意識の醸成やネットワーク構築を推進するとともに、行政課題等の解決に向けた公民対話の機会等を通じて、新たな連携の創出につなげていきます。 効率的・効果的・継続的に公民連携を実施していくために、本市における公民連携の基本的なルールやプロセスの周知を行うとともに、効果的な先行事例やノウハウを蓄積し、本市全体で共有することにより、本市の各部署における主体的な公民連携の実施に向けた理解の促進を図ります。 さらに、中長期的な視点から、特に公民連携によることが有効と考えられる社会課題等の解決に向けた取り組みをリーディングプロジェクトとして位置づけ、課題認識やめざす取り組みの方向性について、関係する民間事業者と積極的に共有し、民間からの効果的な提案を促すなど、公民連携の機運醸成につながる連携事業の創出に向けて取り組みます。 ②PPP/PFIのさらなる活用 公共施設の整備・運営等のPPP/PFIについて、民間事業者の創意工夫を活かすことにより、低廉で良質なサービスを提供できるよう、引き続き市として積極的な導入を推進します。また、これまで本市がPPP/PFIを活用してきた事例やその成果を周知することにより、PPP/PFIの導入に関する機運醸成を図るとともに、今後、本市が事業化を検討している案件を広く周知するなど、民間事業者が公募に参加しやすい環境を整備し、民間活力のさらなる活用を進めます。 PFI法に基づく民間提案を行った事業者へインセンティブを付与するなど、民間事業者による事業提案が積極的に活用されるよう環境整備を進めます。 一方で、急激な物価上昇や自然災害・感染症等の外部要因によりPPP/PFI手法で実施する事業に大きな影響があった場合に備え、市と事業者で適切なリスク分担を行うことで、民間事業者に過度のリスクを負担させることがないよう配慮します。 83ページから84ページ (ウ)シティプロモーションの推進 本市は、圏域における世界レベルの産業技術を背景に商業・サービス業の集積や大都市ならではの経済力がある一方で、大都市でありながら空間的・時間的なゆとりがある都市です。また、高等教育機関の集積や豊かな文化を有し、スポーツも楽しめます。さらに、鉄道・高速道路・空港・港の広域的な交流ネットワークの中心であり、拠点性も有しています。こうした強みを活かしながら、本市では、各分野においてさまざまな施策・事業に取り組んでいます。 令和5年度の市政世論調査では、本市を住みやすいと答えた市民は9割を超えるなど、住んでいる人の満足度は高くなっている一方で、市外在住者に対しては、その魅力を十分に伝えきれておらず、他の大都市に比べてブランドイメージが確立しているとは言い難い状況です。 そのため、今後、本格的な人口減少社会が到来し、都市間競争も加速していく中、本市が将来にわたり持続的に発展・成長するためには、引き続き効果的な施策・事業に取り組むことで、すべての分野において高水準で調和のとれた都市の実現に努めるとともに、そうした施策・事業により育まれる都市としての幅広い魅力を、本市や圏域が有する強みとあわせて、市民のみならず国内外にわかりやすくプロモーションすることが必要です。それにより、本市の魅力をより多くの方に知っていただき、「住みやすい」、「働きやすい」、「訪れたくなる」、「投資したくなる」というブランドを確立し、国内外の人や企業から選ばれる「魅力あふれる名古屋」となることで、住んでいる人の誇りにつなげていくことが必要です。 取り組みの方向性 ①全庁的な方針の確立 都市の総合的なプロモーション力強化に向け、中長期的な視点を持って基本的な考え方や取り組みの方向性等を整理したプロモーション基本方針を策定するとともに、社会経済情勢の変化等を踏まえつつ、柔軟かつ時宜を得たプロモーションを展開するため、年度ごとにプロモーション推進方針をとりまとめます。また、本市のプロモーションに関する方針やブランディングの重要性について職員一人ひとりの理解を深めるとともに、戦略的・効果的なプロモーションを実施するためのスキル向上を図ります。 ②都市のブランディング 都市としての総合的な魅力・価値を分析し、それらを簡潔な言語やストーリーにすることでブランドの具現化・可視化を図るとともに、ブランドを発信するツールを作成し、国内外へのブランドの浸透・定着を図ります。 ③戦略的なプロモーションの展開 市民、企業、大学、NPOなどとの連携のもと、ターゲットを明確にした上で、さまざまな媒体を活用して積極的に発信します。 85ページ (3)市民の満足度を高める市政運営 (ア)市民サービスの質の向上 社会状況の変化に伴い、市民ニーズの多様化・複雑化が進んでいる一方で、今後は、生産年齢人口の減少により、行政運営においてもさらなる労働者不足が懸念されています。 そのような中でも、市民が快適かつ迅速に行政手続きを行うことができるよう努めるとともに、市民の多様な意見に耳を傾け、施策に反映させるなど市民一人ひとりのニーズに応じた誰一人取り残さない市民サービスを提供することが求められています。 また、本市の中でも、外国人住民が増加している地域や高齢化が進む地域が出てくるなど、地域ごとの特性が顕著となっており、行政による画一的な施策では対応が困難な状況が生じてきています。 そのため、市民と直接関わる行政の最前線である区役所では、自主性・主体性を発揮し、区の特性に応じたまちづくりを推進することが必要となっています。 取り組みの方向性 ①市民満足度(CS)の向上 多様な市民のニーズに応えるため、幅広い方法で行政サービスを提供するとともに、職員の接遇向上を一層図ることでCSの向上を図ります。 また、時代に即したさまざまな手法を取り入れた広聴活動や、市民による市政参加の機会を通じて、職員一人ひとりが市民ニーズを的確に把握するとともに、市政運営への適切な反映に努めます。加えて、市民の利便性を高めるため、効率的かつ効果的なコールセンターの設置・運営に取り組みます。 ②区行政の推進 多様化・複雑化する地域課題を解決するため、市民と直接関わる行政の最前線である区役所の企画調整機能を強化するとともに、市民生活のさまざまな分野を所管する局室・区内公所等との連携を強化し、区における総合行政を推進します。 そのため、各区において、めざすべき区の姿を明らかにし、中長期の取り組みを体系化した区将来ビジョンの実現に向け、企画調整能力を高め、協働や連携を進める人材の育成に取り組むとともに、区長の権限において、予算・組織の両面から区が自主性・主体性を発揮できるよう引き続き取り組みます。 また、区民とともに地域の課題解決に取り組むため、区民が区政へ参画する場である区民会議の議論を踏まえ、区の特性に応じたまちづくり事業を各区において推進します。 86ページ (イ)伝わる広報 「広報」とは、本市と市民や事業者、在勤・在学の方、本市を訪問される方(以下「市民等」という。)との間に良好な関係を築き、維持し、さらなる信頼関係を築くための活動です。そのため、本市広報においては、市民等の性別や年齢、障害の有無、国籍、生活環境などに関わらず、必要な行政情報を市民等に対して確実に届けることや、市民等が自ら必要とする行政情報をいつでも得られるようにすることが求められています。また、これらを実践するにあたっては、事業目的に即した市民等の行動変容につながる「伝わる広報」であることが重要となります。 行政情報を届けるための広報媒体について、以前は新聞やテレビ・ラジオなどの媒体が中心となっていました。しかしながら、デジタル化の急速な進展に伴い、スマートフォンやタブレット端末が普及し、あわせてSNSやインターネット動画などの新たな媒体が台頭してきたことにより、広報媒体の多様化が進んでいます。 このように広報を取り巻く環境が著しく変化している中で、本市が時代に即した「伝わる広報」を展開していくためには、ただ単に広く市民等に情報発信をするだけではなく、事業目的などから当該情報を届けたいターゲット層やそれに適した広報媒体を意識した、きめ細かな情報発信をしていくことが必要となります。 また、広報には、広報媒体を使った広報活動のほかにも、窓口での市民等とのコミュニケーションや、職員が地域に出向いて施策に関する説明を行うことなども含まれます。その点を踏まえると、広報の主体はすべての職員であるといえることから、職員一人ひとりが広報の意味と重要性を認識し、広報に関する知識や技術、ノウハウを向上させることも「伝わる広報」には必要となります。 取り組みの方向性 ①戦略的な広報の推進 市民等の行動の段階を「認知、興味・関心、検討、行動」に区分し、広報を行う時点において、市民等のどういった段階の行動を喚起する目的なのかを意識しながら、適宜適切なタイミングで、それぞれの段階に適した媒体を使い分けて、戦略的な広報活動を展開します。 具体的には、本市広報の大きな柱の一つであり、毎月全戸に配布を行う「広報なごや」については、事業のターゲットや重要度に応じて、すべての段階の喚起を目的として使用するほか、本市が意図したタイミングで市民に情報を発信できる新聞やテレビ・ラジオ、SNSなどの広報媒体については、主に「認知、興味・関心」の喚起を目的に使用し、事業のターゲットや重要度に応じて適した媒体を組み合わせ、市公式ウェブサイトに誘導する役割として活用します。 一方、市民等が能動的に情報を取得することができる広報媒体である市公式ウェブサイトは、掲載できる情報量が多く、詳細な情報まで案内できることから、主に「検討、行動」の喚起を目的に使用します。 また、市公式ウェブサイトについては、今後、本市広報のプラットフォームとしての機能を高め、市役所DX推進の一環としてオンライン申請手続きが円滑に行えるよう、検索性や見やすさなど利便性のさらなる改善を図るとともに、関係部署や他の広報媒体・ウェブサイトとの連携等を推進します。 さらに、広報資材の制作やSNSの活用などにあたっては、専門性の高い外部人材の活用により、デザイン性やアピール力の向上を図るとともに、アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線の開業を見据え、市民等の関心の高い分野、理解を深めて関心を喚起したい分野を的確に把握し、効果的な広報活動を実施するなど、時機を捉えた広報をより一層推進します。とりわけ、アジア・アジアパラ競技大会に向けて、スポーツ行政に関する情報発信を強化します。 こうした広報活動が事業目的の達成に確実につながるよう、多様化する市民ニーズや広報を取り巻く環境の変化を絶えず注視するとともに、実施した広報活動について、申込者数や視聴率、視聴回数などの定量的数値やアンケート調査の結果、意見などを基に評価・改善を行うことで次の広報活動につなげていくほか、研修や庁内会議を通して「伝わる広報」の重要性について、職員の意識啓発に取り組みます。 88ページから89ページ (4)持続可能な自治体経営 (ア)行政改革の推進 地方公共団体においては、最少の経費で最大の効果を挙げる責務があり、本市ではこれまで、行政評価制度の導入や計画的な定員管理の実施、外郭団体改革、指定管理者制度・PPP/PFIによる民間活力の活用など、さまざまな行政改革に取り組んできました。 今後も生産年齢人口が減少し、高齢者人口のさらなる増加が見込まれ、福祉や医療などの義務的な経費の伸びに伴う厳しい財政状況が引き続き想定される中においても、多様化・複雑化する行政課題に的確に対応し、持続可能な自治体経営を行っていくためには、限られた行政資源を有効かつ効率的に活用するとともに、コスト削減や収入増によって生み出した財源を市民サービスのさらなる向上につなげていく必要があります。 そのためには、業務の自動化・省力化につながる技術を積極的に活用するなど、時代に即した手法を取り入れ、職員が注力すべき業務に集中するとともに、多様な主体との連携に努めて事業効果の最大化を図るなど、不断の行政改革に取り組んでいくことが必要です。 また、職員のライフデザインが多様化し、今後、より柔軟な働き方が求められる中でも、将来にわたって自治体として本来担うべき機能が発揮できるよう、中長期的な観点からの最適な執行体制について検討していく必要があります。 取り組みの方向性 ①行政資源の有効活用 限られた行政資源の中において、行政事務のデジタル化や民間活力の活用など、従来の業務の進め方から脱却した取り組みを進めることにより、業務の効率化を進めるとともに、政策立案業務や相談業務といった職員が真に注力すべき業務に集中できる環境を整備していくことが必要です。そのため、時代に即した手法の導入に向けた取り組みとして、全庁的に業務フローの可視化及び業務の分析を行うなど、市役所業務の変革に取り組みます。 また、人による目視での確認や書面での掲示などといった、社会全体のデジタル化を妨げるおそれのあるアナログ的な規制や手続きについて、国の取り組みを踏まえつつ、業務のあり方を見直すとともに、デジタル技術による業務の自動化・省力化を進めます。 また、民間提案の活性化やPPP/PFIの積極的な導入をめざすなど、さらなる公民連携を推進することで、業務の一層の効率化・効果の最大化を図るほか、市内での都市開発やその需要を生み出す経済活動の活性化に向けて、適切な民間投資を継続的に促すため、古くからあり十分な見直しがされていない規制について、時代にそぐわないものになっていないか点検を進めます。 公の施設については、社会経済情勢の変化を踏まえつつ、引き続き、民間活力の活用を推進するとともに、市の関与の必要性が低下した場合には、必要な見直しを進めます。外郭団体への関与についても、引き続き、「外郭団体のあり方」を踏まえた適切な指導を行います。 ②行政改革に向けた職員の意識改革 行政改革を進めていくためには、本市の職員一人ひとりが常に時代の流れを的確に把握するとともに、コスト意識と市民感覚を持ち自分ごととして捉え、主体的に市政を変革する意識を持って業務を遂行することが不可欠です。そのため、職員の行動規範となるよう、内部管理事務や事務事業等の見直しを検討する際の着眼点とそれに対応する見直しの方向性を示し、職員一人ひとりへの定着を図ります。 また、行政改革に積極的に挑戦する組織風土の醸成を図るため、職員の挑戦が評価される仕組みを検討します。 ③組織及び定員の最適化 本計画の重点戦略に掲げた取り組みなどを推進していくために必要な組織を整備・強化するとともに、定員再配分を積極的に行うことにより、必要度・重要度の高い事務事業に重点的に職員を配置します。 そのために、時代に即した手法を取り入れ、職員が注力すべき業務に集中できる環境づくりに資する取り組みなどに対しては、機を逸することなく推進できるよう、積極的かつ柔軟に職員を配置するなど、必要な人的投資を行います。また、業務の集約化・効率化や施設の見直し、委託化などの事務事業の見直しに対しては、定員管理の観点からも推進できるように取り組みます。さらに、業務の繁閑の平準化や臨時的・突発的な課題等に対応できる柔軟な組織体制となるように努めます。 加えて、育児休業等による長期不在者や部分休業等の取得者が所属する職場におけるフォロー体制の整備により、市民サービスの維持や円滑な業務執行に資するよう、職員を支える職場環境のさらなる整備に取り組みます。 90ページから91ページ (イ)組織力向上に向けた多様な人材の確保・育成・活用 本市を取り巻く社会情勢は、新型コロナウイルスなどの感染症や大規模災害などのリスクの増大、ライフプランや価値観、市民ニーズの多様化など、大きく変化しており、行政課題は複雑化・高度化しています。 一方で、人材確保における競争は激化しており、少子化・高齢化の進行による生産年齢人口の減少は、今後、職員数の確保に対しても一層大きな影響を及ぼすことから、行政サービスを安定的・継続的に提供していくためには、人材確保を強化するとともに、職員一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮し、組織力を向上させることが重要となります。 行政経営という観点から、人材を財産と捉えて投資することでその価値を最大限に引き出し、組織目標を達成するためには、これまでの業務の進め方を見直し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進などによる業務改善に取り組み、業務の効率性を向上させる体制づくりが不可欠であり、そのための人材の確保・育成・活用に一体的に取り組んでいく必要があります。 取り組みの方向性 ①多様な人材の確保・育成・活用 戦略的な人材の確保 さまざまな経験や知識・技能を持った多様な人材を継続的に確保するため、公務の魅力や、名古屋市役所が働きがいのある魅力的な職場であることの発信により、「選ばれる市役所」をめざします。また、デジタルを活用した試験手法の工夫などに取り組むことで、受験者層の拡大を図ります。 あわせて、デジタル化を推進する人材など、確保・育成が難しい専門人材については、民間の副業人材を活用するなど、必要な人材を補完する取り組みにより、行政サービスの質の向上を図ります。 人材の育成・活用 職員が、個々の特性に応じて主体的に能力を伸ばし、必要なスキルを身につけられるよう、中長期的な視点に立って人材育成を行うとともに、成果の適正評価、ポストにふさわしい人材の最適配置、能力・実績に応じた適正処遇を戦略的に実施する人材マネジメントの考え方により、職員の成長が組織力の向上につながるよう努めます。 定年引上げに伴い、60歳以降も働き続ける職員が増加することが見込まれる中で、高齢期職員の豊富な知識、技術、経験等を最大限活用するとともに、次世代への継承に努めます。 変化する社会情勢に柔軟に対応するため、新しい知識やスキルを学ぶリスキリングの機会の提供のほか、民間企業をはじめ多様な主体との交流機会の充実等を通じて、変革することをおそれない自律的な人材の育成に取り組みます。 ②組織力向上のための職場環境づくり 働き方に対するニーズも多様化する中で、職員の誰もがその能力を最大限に発揮し、高い意欲を持って職務に取り組めるよう、仕事と私生活、育児や介護等との両立の支援を推進するとともに、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進による業務改善に取り組むなど、やりがいと業務の効率性をともに高められる働き方改革の推進や、多様で柔軟な働き方を実現するための環境整備に努めます。 性別や年齢、ライフステージにとらわれない職務分担や幅広い職域における柔軟な人事配置、障害者雇用の促進等、職員がそれぞれの個性と能力を活かし、安心して働くことができる職場環境の整備、意識・風土の醸成に努めます。 脚注 副業人材:本業の活動時間外で別の仕事を請け負っている人材。 高齢期職員:本計画では、60歳以上の職員のことをいう。 リスキリング:新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得するまたはさせること。 92ページから93ページ (ウ)持続可能な財政運営の推進 本市の財政状況を見渡すと、歳入の根幹である市税は、令和3(2021)年度に新型コロナウイルス感染症への対応に関する税制上の措置の影響などにより落ち込んだものの、令和4(2022)年度からは6,000億円を超えています。 また、公共施設の整備などの財源である市債については、近年、投資的経費の増加に伴い増加していますが、後年度に償還する必要があることから、将来世代に過度な負担を残さないよう努めています。 ※歳入予算の推移のグラフを掲載 歳出予算の過去10年間の推移では、義務的経費が大きく増加しており、令和6年度予算では、8,344億円となりました。これは福祉や医療などの扶助費の増加が主な要因です。また、投資的経費は、アジア・アジアパラ競技大会施設の整備など、市の将来も見据えた積極的な投資に取り組んでいるため近年増加しています。 ※歳出予算の推移のグラフを掲載 本市の財政状況は、義務的経費割合は56.2%(令和6年度当初予算)、経常収支比率は97.8%(令和4年度決算)となるなど硬直的な状態ですが、歳入に占める自主財源の割合が57.1%(令和6年度当初予算)と指定都市の中で比較的高く、法律に基づいて算定する健全化判断比率についても実質公債費比率が6.8%、将来負担比率が88.6%(令和4年度決算)と基準値の範囲内にあることなどから、一定の健全性を維持しているものといえます。 こうした中、本市は近い将来、本格的な人口減少局面を迎えるとともに、少子化・高齢化のさらなる進行に伴う生産年齢人口の減少が見込まれ、歳入の根幹である市税は大きな伸びを期待することが難しい一方で、扶助費などの義務的経費はさらなる伸びが避けられないものと想定されます。 そのような状況でも、防災・減災、国土強靱化等に資する公共投資のほか、当地域のさらなる発展のための原動力となる成長分野への投資を着実に進める必要があります。 取り組みの方向性 ①戦略的・計画的な財政運営の推進 効果の薄い事業は見直し、より効果の高い事業に振り向け、全体として市民サービスを確保するという考え方のもと行財政改革に取り組むとともに、税源のかん養という視点を取り入れながら戦略的に施策を展開し、市税収入の拡大を図ります。 また、この計画に掲げた本市がめざす5つの都市像の実現に向けて施策などを安定的に推進していくためには、それを下支えする財政が引き続き健全性を維持することが重要であることから、将来世代に過度な負担を残さないよう、世代間の負担の公平にも配慮した計画的な財政運営に努めます。 94ページから96ページ (エ)アセットマネジメントの推進 庁舎や市民利用施設・学校・市営住宅などの市設建築物、道路・河川・公園などの公共土木施設、浄水場・水処理センターや配水管・下水管などの上下水道施設、地下鉄トンネルや地下鉄駅・バス営業所などの交通事業施設といった本市の保有する公共施設は、その多くが昭和40年代から60年代を中心に整備されており、多くの施設が更新の時期を迎えます。 これらの施設が今後更新等の時期を迎えるため、整備費が大きく増加することが見込まれるものの、継続的かつ持続可能なコスト管理のもと、安心・安全な公共施設の維持管理・更新を推進し、社会的ニーズに対応した公共サービスを提供していくために、施設の長寿命化を進めるとともに、施設の再編整備、保有資産の有効活用に取り組み、経費の抑制と平準化や財源確保を図る必要があります。また、公共施設の維持管理・更新等にあたっては、今後の人口減少や人口構造の変化に伴い時代とともに変化する社会的ニーズに加え、SDGsの達成、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進、感染症対策の観点などの新たな社会的ニーズを的確に捉えながら、将来のまちづくり、耐震対策をはじめとする防災・減災対策、バリアフリー・ユニバーサルデザイン、環境配慮についても対応する必要があります。 ※市設建築物の保有資産量の推移のグラフを掲載 取り組みの方向性 ①施設の長寿命化 市設建築物や公共土木施設、上下水道施設、交通事業施設といった本市の保有する公共施設が、本来の機能を十分かつ長期に発揮できる状態を保つことができるよう、施設の長寿命化を図ります。 市設建築物については、これまで本市が行った構造体耐久性調査の結果から、市設建築物の大部分を占める鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の構造体に関しては、4割程度はおおむね築80年以上、6割程度はおおむね築60年以上の使用が期待できることがわかっていることから、点検・診断等の結果を踏まえた上で、適切に維持管理するとともに、社会的ニーズに応じた機能向上を図ることができるよう、原則としておおむね80年使用することを目標に計画的かつ効率的な改修等に取り組みます。 公共土木施設などについては、施設類型ごとの特性に応じた改修・更新等に取り組みます。 ②施設の再編整備 特定の施設を対象とした個別最適ではなく、市全体を俯瞰した全体最適の実現をめざし、財政状況に配慮しながら、将来にわたって持続可能なサービスの提供が可能となるよう、施設の再編整備に取り組みます。 再編整備にあたっては、施設の現状や事業施策の観点も踏まえつつ、類似・重複した機能を統合する「機能重視」の視点に立って長期的な視点から必要なサービスを整理し、将来のまちづくりを見据え、施設の規模の見直しや、機能の統合、集約化・複合化、用途転用、廃止等により、施設の再編・再配置を図ります。 これにより、「安心・安全な公共施設等の維持管理・更新」、「社会的ニーズに対応した公共サービスの提供」、「継続的かつ持続可能なコスト管理」の三つのバランスが長期的に取れており、安心・安全で適切なサービスを継続的に提供できている状態を「適正な保有資産量」と位置づけ、この状態をめざして取り組みます。 保有資産量の適正化にあたっては、人口動向や財政状況等を踏まえて令和4(2024)年5月において見込まれる令和32(2050)年度時点の適正な保有資産量の水準に向けて取り組んでいきます。なお、今後の人口動向や財政状況等により、適正な水準は変動し得ることから、必要に応じて適正な保有資産量の見込みを更新しながら進めていきます。 このほか、施設の運営や維持管理・更新にあたり、PPP/PFIの積極的な活用を進めます。 ※保有資産量の見込みを、一般施設、学校施設、市営住宅等に区分した表を掲載 ③保有資産の有効活用 保有する資産のうち、余剰となった資産については、売却を進めることを原則としますが、将来的な活用見込等を踏まえ、一定の土地については保有したうえで貸し付け等により活用を図ることで、財源確保や維持管理費の削減を図ります。 また、市有施設などでの広告事業・ネーミングライツの導入を進めるとともに、行政と民間が共同し、保有する資産を活用した新たな事業機会の創出などに取り組むことで、さらなる有効活用を推進します。 97ページから98ページ (オ)危機事象への対応 平成27(2015)年に水防法が改正され、発生頻度は低いものの過去の災害を上回る、想定し得る最大規模の風水害への対応が求められるようになりました。また、南海トラフ地震の発生確率が今後30年以内で70~80%(40年以内で90%程度)と切迫度が高まるなど、地震への懸念も依然として高くなっています。 また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、市民生活や事業活動は深刻な影響を受けただけでなく、一時的に緑区役所の業務が全面停止するなど、危機発生時の業務の継続についても課題が顕在化しました。 加えて、ミサイル攻撃をはじめとした武力攻撃、大規模テロや長期間に及ぶ停電などのさまざまな事象にも備えておくことが必要です。 ひとたび大規模災害や重大な感染症等が発生すれば、市民の生命・身体・財産の保護や都市機能の維持・早期回復を図るため、すべての職員が総力を挙げて、速やかに対応する必要があります。 そのため、平常時から研修や訓練を通して職員の危機意識を醸成するとともに、あらゆる危機に対応できる体制を整えていくことが求められています。 取り組みの方向性 ①平常時からの備え 危機に備え、事前の準備、体制、基本的方針等を定めるほか、非常時の業務に即座に対応できるよう業務マニュアルを整備するとともに、職員の職階に応じた研修及び行政・市民・関係機関等が一体となった訓練等を実施します。 また、大規模災害や重大な感染症等の発生時に速やかに対応できるよう、平常時から組織全体で危機感を共有し、職員一人ひとりが日々の職務と同様の高い使命感を持って、非常時への対策に努めます。 そして、非常時においても行政機能が停止しないよう、最低限継続しなければならない行政機能を明確化するとともに、災害や感染症の規模や特性に応じた適用段階の細分化を行い、円滑な行政運営ができるよう努めます。 加えて、大規模災害発生時に防災拠点となる施設については、応急災害対策活動を迅速かつ的確に実施するため、それぞれの活動の拠点となる施設の役割と機能を踏まえ、必要な対策を講じます。 大規模災害や重大な感染症等の発生に備え、デジタル技術をフル活用するとともに民間とも連携をしながら効果的な対策を推進していきます。 ②危機発生時の対応 大規模災害発生時には、住民の生命を守るため、職員各自が「自分が何をすべきか」を認識して行動するとともに、防災拠点の機能確保や災害情報の迅速な把握、消火・救助体制の確保、医療機能の確保等、迅速な対応により、被害が拡大しないよう努めます。 また、被災後においては、被災地域の速やかな復旧・復興に向けて、ステージに応じた、被災者への切れ目のない支援を継続的に実施するとともに、住まいの再建や生活に密着したインフラの復旧とあわせて産業・社会経済活動の再生に努めます。 重大な感染症の発生時には感染拡大の起点となっている場所や活動を迅速に調査して効果的な対策を講じるとともに、適切な保健・医療体制を確保し、感染症による市民・企業等への影響を考慮した支援策を講じます。 そして、大規模災害発生時や重大な感染症のまん延時等には、市民の方の混乱を招かないようリアルタイムで正確な情報発信を行い、被害最小化を図ります。 さらに、武力攻撃や大規模テロといった想定外の事象に対しては、関係機関等が連携して迅速かつ効果的に対処して被害の軽減を図るとともに、発生事象及び対応に関する正確な情報を速やかに市民に提供して混乱の防止に努めます。 99ページ (5)名古屋市がめざす大都市制度 (ア)「特別市」制度の創設 本市は、市民に最も身近な基礎自治体として、質の高い行政サービスを提供するだけでなく、生活圏・経済圏が拡大し、住民ニーズが多様化・複雑化する中で、圏域の中枢都市として、大都市特有の行政需要への的確な対応が求められています。 一方で、現行の指定都市制度は、幅広い行政サービスを提供する大都市への事務配分の特例等がありながら、税財政制度に関して、税制上の措置が不十分であり、道府県と指定都市間の役割分担も不明確であるなどの課題があります。 そのような中、基礎自治体としての「現場力」と高度な行政能力を持つ大都市としての「総合力」により複雑多様な行政課題に対応するためには、その能力・役割に見合った権限と税財源を十分に持ち、将来にわたり効率的かつ機動的な大都市経営を可能とする、実態に即した新たな大都市制度を創設することが必要です。 取り組みの方向性 ①新たな大都市制度の創設に向けたはたらきかけの強化 特別区設置制度に並ぶ新たな大都市制度として、市域内において地方が行うべき事務を、「現場力」と「総合力」をあわせ持つ基礎的自治体である大都市が一元的に担い、県から行財政面で自主・自立した「特別市」制度の創設を他の指定都市と連携して国等に強くはたらきかけます。 ②現行制度における改革の推進 現行制度においても、自主的・自立的な行財政運営が可能となるよう、国・県からの権限・税財源のさらなる移譲に向けた取り組みを進めます。 また、区役所の機能強化、地域活動の支援など、住民自治の充実に向けた取り組みを進めます。 脚注 指定都市制度:政令で指定された人口50万人以上の大都市に対し、道府県の事務の一部を、法に基づき移譲する制度。 特別区設置制度:大都市地域における特別区の設置に関する法律に基づき、道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設ける制度。 特別市:指定都市が共通して使用している「特別自治市」の通称。 100ページ (イ)圏域における自治体連携の推進 名古屋大都市圏は、市町村の境界を越えて市街地が連なるとともに、人口や高度な都市機能が集積し、経済・社会・文化の面で一体的な圏域を形成しており、圏域内では多くの企業、人々が行政区域を越えて活動しているため、既存の行政区域にとらわれることなく、広域的な視点から圏域内の行政課題を考える必要があります。 その際には、本市と近隣市町村のそれぞれが有する強みを活かし、それぞれの持つ情報を共有し、資源を融通し合うなど、地域の枠を越えて連携し、役割分担を柔軟に見直す視点が重要となります。 取り組みの方向性 ①圏域における自治体連携の推進 本市は圏域の自治体との連携をこれまで以上に積極的に推進し、強い大都市圏の形成をめざします。特に、日常生活・都市活動において密接な関係にある近隣市町村とは、「広域的な運命共同体」との認識のもと、連携・協力関係をより一層強化し、圏域における自治体連携をリードします。 101ページ 2 重点戦略 ここでは「めざす都市像」の実現に向けて、「名古屋を取り巻く状況」を踏まえ計画期間内において優先的に取り組む戦略を、選択と集中の観点から、「重点戦略」として設定します。重点戦略はめざす都市像に対して横断的な視点も踏まえ、戦略それぞれが連携し関わり合いながら推進していく必要があります。今後、重点戦略に位置づけられた取り組みに対して、行政資源を優先的に集中して配分することにより計画全体を着実に推進していきます。 また、重点戦略の展開にあたり前提とすべき考え方である「多様性(ダイバーシティ)」について、重点戦略に位置づけられた取り組みを中心に関連する取り組みを整理します。 さらに、将来にわたり名古屋大都市圏の活力を維持し、さらなる地域の発展に向けた好循環につなげていくため、重点戦略のうち特に未来につながる先行投資の要素が強い分野を「成長の原動力」として設定します。これを本市の将来の成長に向けて必要な投資をする際の視点として掲げ、推進していきます。 102ページ 重点戦略の体系を示した図を掲載 103ページ 重点戦略の考え方 本市は今、激動する時代の大きな転換点を迎え、今後本格化する人口減少や少子化・高齢化に伴う人口構造の変化、デジタル化・脱炭素化への世界的な動きの加速による産業構造の変化など、かつて経験したことのない社会経済情勢の変化に直面しています。こうした中で、SDGs未来都市として、「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念のもと、これまで歴史の中で先人たちが築き上げてきた名古屋の強みを活(い)かし、より強く活力あふれる新たな名古屋を創造していく必要があります。 そのため、アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線の開業を起爆剤として、“人中心”“住みやすさ”“強い経済力”“にぎわい”“持続可能性”を兼ね備えた「リニアがつなぐ巨大交流圏の中心で躍動する世界都市、誰もが幸せと希望を感じられる名古屋」を実現するため、未来につながる好循環を生み出す投資を積極的かつ戦略的に行います。 特に、国全体、そして本市においても進行している少子化への早急な対応が不可欠です。少子化は、将来にわたり都市活力を低下させ、地域社会のさまざまな基盤の維持を困難とするなど、子どもから高齢者、さらにはこれから生まれてくる将来世代を含めた全世代の日常生活や人生設計(ライフデザイン)に深刻な影響を及ぼしかねません。少子化への対応を中長期的な最重要課題に位置づけ、誰もが将来に希望を持ち、望むライフデザインを実現できる社会をめざします。そして、その効果を地域や経済の活性化や、よりよい行政サービスにつなげていくことで、将来世代に希望をつなげていけるよう、全力で取り組んでいきます。 戦略1 若い世代が将来に明るい展望を持ち、結婚・子育ての希望をかなえられるよう、社会全体で応援します 戦略2 誰一人取り残すことなく、子ども・若者の希望や夢を社会全体で応援します 戦略3 一人ひとりに応じたやさしい福祉を実現し、ともに支え合い活躍できるまちづくりを進めます 戦略4 災害や感染症から市民の命と産業を守り、安心・安全な暮らしを確保します 戦略5 独自の魅力で世界から多様な人が集い交流する、環境と経済の 好循環で成長する都市をつくります 104ページ 105ページから146ページにかけて掲載する重点戦略ページ(重点戦略および成長の原動力)の見方を掲載 105ページ 戦略1 若い世代が将来に明るい展望を持ち、結婚・子育ての希望をかなえられるよう、社会全体で応援します 少子化の進行が加速する中、人々が希望している子どもの数などのライフデザインと現状は乖離しており、個々人の結婚や妊娠・出産、子育てに対する希望がかなっていない状況があります。 その要因はさまざまなものが複雑に絡み合っていますが、若い世代が将来に明るい展望を持てるよう、雇用環境の整備や結婚の希望の実現に向けた支援、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備、地域・社会による子育て支援、子育てや教育、住まいに関する費用の負担軽減など、あらゆる分野において出会いや結婚、出産、子育ての希望を阻害する要因の解消に向けて取り組んでいく必要があります。 「子どもどまんなか」の考え方のもとでは、今を生きている子ども、これから生まれてくる子どもとともに、結婚や子育ての当事者となる世代をまんなかに据えて取り組んでいくことが求められます。 そのため、個々人の多様な価値観・考え方を尊重するとの大前提のもとに、若い世代が結婚や妊娠・出産、子育てに希望を見いだせるとともに、互いの多様な生き方を尊重しつつ、希望どおり結婚し、希望する誰もが安心して子どもを生み、育てられる社会をつくり、未来の世代につなげていかなければなりません。 106ページから108ページ 戦略の柱と推進する取り組み (1)若い世代が希望を持って暮らし、安心して結婚し、子どもを生み、育てられる環境づくり 達成に寄与するSDGsのゴール:1,2,3,4,5,8,10,11,12 ① 出会いや結婚の希望をかなえる支援 若い世代が、結婚や妊娠・出産、子育て、仕事を含めて自らの将来を見通し希望を抱くことができるよう支援に取り組みます。また、出会いや結婚を希望する若い世代を支援するとともに、自分らしく生きることができるよう社会全体で応援する機運の醸成に取り組みます。 主な事業 事業122 出会いや結婚の希望をかなえる支援 ② 妊娠前から子育て期にわたる医療・相談・育児支援 妊娠・出産に関する希望がかない、誰もが安心して子どもを生み、育てられるよう、妊娠前から子育て期にわたり切れ目なく医療支援や相談支援、育児支援に取り組むことで、不安や負担を軽減します。 主な事業 事業123 妊娠前から子育て期における相談・育児等支援 事業124 子育て学び支援事業 事業128 地域における子育て支援事業の実施 ③ 就学前の子どもの育ちの支援 よりよい保育の実現のため、保育の質の向上に取り組むとともに、多様な保育のニーズに対応するため、さまざまな形で保育の充実を図り、あらゆる家庭における子どもの育ちを支援します。また、引き続き、保育所等利用待機児童が発生しないよう取り組みます。 主な事業 事業127 市立幼稚園における幼児教育の質向上 事業137 保育所等利用待機児童対策等の推進 事業138 保育所等における多様な保育サービスの提供 ④ 放課後等の子どもの居場所づくりの支援 共働き家庭などの「小1の壁」や放課後児童クラブの待機児童を解消するとともに、すべての子どもが放課後等を安全・安心に過ごせるよう、居場所づくりに取り組みます。 主な事業 事業151 トワイライトスクール 事業152 トワイライトルーム 事業153 留守家庭児童健全育成事業助成 事業154 児童館等における青少年の育成 脚注 小1の壁:小学校に入学した途端に放課後の預け先がなくなるなど、小学校低学年時に仕事と子育ての両立が困難になる問題。 ⑤ 社会全体での子育てしやすい環境づくり 社会全体で子育てを応援する機運を醸成し、子育て世代の支援を進めるため、地域での子育て応援、男女がともに仕事と子育てを両立できる環境整備と家事・育児に参加する意識の醸成、子育て世帯にとって安心・快適な空間形成や子育てや教育、住まいなどに関する経済的負担の軽減など、行政だけでなく地域や企業とも連携した支援に取り組みます。 主な事業 事業133 子ども医療費の助成 事業134 就学援助・奨励の推進 事業136 地下鉄における子ども・子育てサポート事業 事業142 子育て支援企業認定・表彰制度 事業344 なごや子ども住まいるプロジェクトの推進 ⑥ 若者の自立支援と雇用環境の整備 若い世代が自らの希望するライフデザインを実現し、結婚や妊娠・出産、子育ての希望の実現にもつながるよう、社会全体で若者の自立を支援するとともに、雇用の安定に取り組みます。 主な事業 事業114 なごやジョブマッチング事業 事業215 子ども・若者の自立支援 事業216 ナゴヤ型若者の就労支援 ⑦ 働き方改革及びワーク・ライフ・バランスの推進 育児・家事、趣味などの時間を確保するとともに、出会いや結婚の希望の実現にもつながるよう、働き方改革やワーク・ライフ・バランスの推進など多様性(ダイバーシティ)のある働きやすい職場環境の整備に取り組みます。 主な事業 事業009 雇用等における女性の活躍推進 事業113 ワーク・ライフ・バランス推進事業 少子化の主な要因(国の少子化社会対策大綱より) ①結婚に関する事項(未婚化・晩婚化) 少子化の主な要因のうち、特に未婚化・晩婚化の影響が大きい。 若い世代の多くは「いずれ結婚する」ことを希望しているが、「適当な相手にめぐり会わない」、「資金が足りない」との声がある。また、「一生結婚するつもりはない」という若者も微増傾向。 ②子育てに関する項目(有配偶出生率の低下) 未婚者・既婚者ともに平均して2人程度の子どもを持ちたいとの希望があるが、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」、「これ以上、育児の負担に耐えられない」、「仕事に差し支える」といった声があり、夫婦の平均理想子ども数、平均予定子ども数は低下傾向。 109ページから110ページ ライフサイクル・背景別の課題と取り組み 本計画掲載事業のうち少子化への対応につながる事業を、ライフサイクル・背景別にまとめて掲載。 111ページ 戦略2 誰一人取り残すことなく、子ども・若者の希望や夢を社会全体で応援します 子どもは生まれながらにして一人ひとりがかけがえのない存在であり、子どもの権利を保障するとともに、子どもの健やかな育ちを社会全体で支援しなければなりません。また、将来の予測がより困難となっている時代において、子ども一人ひとりが個性や能力を活かしながら、未来に向けて自らの将来を切りひらく力の育成が必要です。 また、子どもが抱える悩みや困難は、子どもや家庭を取り巻くさまざまな要因により、多様化・複雑化しています。子ども自身も周囲も気づきにくい問題を含むさまざまな課題の解決に向けて、子どもが安全で安心できる居場所を持ち、主体性や想像力を発揮することができるよう、地域や学校などと連携した切れ目のない積極的な支援が特に必要です。 112ページから114ページ 戦略の柱と推進する取り組み (1)すべての子ども・若者の可能性を引き出し、未来をつくる力を生み出す学びの推進 達成に寄与するSDGsのゴール:4,8,9,10,11,17 ① 子どもの個性や能力を伸ばし、自ら学ぶ力を育てる学びの推進 すべての子どもたちの可能性を引き出すよう、子ども一人一人の興味・関心や能力、進度に応じた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図るとともに、主体的に社会の形成に参画できる力を育成します。 また、子どもが自分の将来について、職業だけでなく社会の中での自分の役割を考え、自分らしい生き方を実現していけるよう、発達段階に応じた支援などに取り組みます。 主な事業 事業145 子どもの体験活動の推進 事業180 ナゴヤ・スクール・イノベーション事業の推進 事業181 一貫教育の推進 事業182 キャリア教育の推進 事業193 インクルーシブ教育システムの推進 ② 豊かな心身の育成の推進 子どもたちに豊かな人間性と社会性を育み、体力の向上を図るため、スポーツ、文化活動、自然体験等、さまざまな活動を通じて豊かな心身の育成を推進します。 主な事業 事業194 子どもの運動・文化活動の振興 ③ 社会の発展を生み出す力を育成する学びの推進 子どもや若者の将来の可能性をひろげ、社会で活躍できる力を育成するため、グローバル化やデジタル化の進展をはじめとした成長を続ける社会で活躍できる人材の育成を進めます。 また、日本有数の大学の集積地であることを活かし、学生の自発的な活動の推進など、若者が学び活躍できる環境づくりや大学と連携したまちづくりを進めます。 主な事業 事業187 市立大学における社会のニーズに応える多様な高等教育・実習プログラムの展開 事業191 グローバル人材育成の推進 事業209 ICTを活用した教育の推進 事業501 市立大学におけるデータサイエンス研究科(仮称)の設置による高度専門人材の育成 (2)学校・地域と連携した子ども・若者や家庭への切れ目のない支援の推進 達成に寄与するSDGsのゴール:1,3,4,8,10,16 ① 誰一人取り残さない子ども・若者や家庭に対する切れ⽬のない包括的⽀援 さまざまな困難を抱える子ども・若者や家庭に対して、教育や福祉、保健、医療などの面で連携した切れ目のない支援を行い、子どもが安全・安心で健やかに成長できるよう支援します。 主な事業 事業215 子ども・若者の自立支援 事業216 ナゴヤ型若者の就労支援 ② 支援を必要とする子ども・若者や家庭への支援 いじめや不登校、虐待、貧困などの子ども・若者に関するさまざまな課題を早期発見し、迅速に対応するため、子どもたちの居場所・セーフティネットとして身体的・精神的な健康を支えるという学校の福祉的役割をより一層発揮するなどして、子ども・若者や家庭へ支援を確実に届けるアウトリーチ型も含めた支援に取り組みます。 また、医療的ケアが必要な子どもを含む障害のある子どもが、安心して生活を送ることができるよう、身近な地域や学校等での寄り添った支援に取り組みます。 主な事業 事業147 なごや子ども応援委員会の運営 事業158 ヤングケアラー支援事業 事業169 医療的ケア児の支援に関する連携の推進 事業176 いじめ防止対策の推進 事業177 不登校児童生徒支援の充実 115ページ 戦略3 一人ひとりに応じたやさしい福祉を実現し、ともに支え合い活躍できるまちづくりを進めます 価値観やライフスタイルなどが多様化する中で、性別や年齢、障害の有無、国籍などに関わらず、地域や職場などで自分らしく活躍し、人と人、人と社会がつながり、助け合いながら暮らしていくことができる共生社会の実現をより一層進め、人権が尊重され、多様性(ダイバーシティ)を包摂するまちづくりを進めていくことが求められています。 また、超高齢社会を迎えた本市においては、健康寿命を延伸するための予防医療の充実や地域包括ケアシステムの深化・推進を図るとともに、救急医療等を充実させ、当地域全体の医療・介護の充実・発展を図る必要があります。そのため、名古屋市立大学の機能を最大限活用しながら、さまざまな医療機関や介護事業者などと連携し、医療と介護を切れ目なく複合的に提供する体制を構築するとともに、救急医療体制等の充実を図り、市民一人ひとりに適切な医療・介護を提供していくことが重要です。 さらに、地域を取り巻く環境の変化により地域活動の担い手不足がますます深刻化している中でも、地域の身近な課題に取り組む市民を支援することで、住みやすく愛着の持てる地域、魅力ある地域をつくる必要があります。 脚注 救急医療体制:(第一次体制)風邪や急な発熱といった軽症患者に対応、(第二次体制)入院や緊急手術が必要な重症患者に対応、(第三次体制)高度な治療を要する重篤患者に対応。 116ページから118ページ 戦略の柱と推進する取り組み (1)人権が尊重され、多様性(ダイバーシティ)を包摂するまちづくり 達成に寄与するSDGsのゴール:3,4,5,8,9,10,11,16,17 ① 誰もが尊重される社会の推進 一人ひとりの人権が尊重され、誰もがお互いの生き方や価値観の違いを認め合い、互いに多様性を尊重し支え合うまちづくりを推進します。 主な事業 事業001 人権擁護・啓発活動の推進 事業007 多様な生き方への理解促進 事業008 男女平等参画の意識啓発の実施 事業092 障害者差別解消の推進 ② バリアフリー・ユニバーサルデザインのまちづくり 誰もが安全で快適に生活できるバリアフリー・ユニバーサルデザインのまちづくりを推進するため、アジア・アジアパラ競技大会の開催も契機としながら、都市施設などのハード面の整備や広報・啓発を通じた「意識のバリアフリー」を一層推進します。 主な事業 事業011 バリアフリーのまちづくりの推進 事業016 地下鉄駅のエレベーターの整備 事業020 障害と障害者理解の推進 ③ 一人ひとりが自分らしく暮らし活躍できる地域づくり すべての人がそれぞれの持つ個性や能力を最大限発揮し活躍できるよう、高齢者や障害者、外国人市民※への支援や女性の活躍推進などに取り組むとともに、誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、健康で豊かな生活ができるよう、ワーク・ライフ・バランスの推進や働き方改革に取り組みます。 主な事業 事業009 雇用等における女性の活躍推進 事業090 障害福祉人材の確保・育成等の推進 事業099 市立大学と連携した発達障害児者への支援 事業108 日本語学習支援の推進 事業113 ワーク・ライフ・バランス推進事業 脚注 外国人市民:市内に住所を有する外国籍の人のほか、日本国籍を取得した人や国際結婚によって生まれた子どもなど、外国の文化を背景に持つ人や、外国にルーツを持つ人。 ④ 困難な状況にある人への支援 地域での切れ目のない支援体制を構築し、誰もが望まない孤独や孤立に陥らず、人と人とがつながり支え合う地域共生社会づくりを推進するため、複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な相談支援体制を構築します。また、女性が直面する問題の解決を図るため、女性のための総合的な相談・支援を実施します。このような取り組みをはじめ、さまざまな要因により困難な状況にある人を誰一人取り残さない支援を進めます。 主な事業 事業005 女性のための総合相談 事業049 重層的支援体制整備事業の推進 (2)健康で安心して暮らせる健康長寿のまちづくり 達成に寄与するSDGsのゴール:3,4,8,10,17 ① 予防医療・健康づくりの推進、先進的な研究の推進 生涯にわたり健康で心豊かな生活を送ることができるよう、世代に応じた健康づくりや予防医療を推進するとともに、社会的に関心の高い先進的な研究を推進します。 主な事業 事業028 健康増進事業及び受動喫煙対策の推進 事業031 がん対策の推進 事業035 こころの健康づくりの推進 事業043 市立大学医学部附属病院群における先進的な臨床研究・治験の推進 ② 救急医療体制等の充実 休日・夜間などでも適切な医療サービスが受けられるよう、救急医療体制等の充実に取り組みます。 主な事業 事業037 救急医療体制の確保 事業038 市立大学医学部附属病院群における救急医療体制の充実 ③ 地域包括ケアシステムの深化・推進 高齢者が孤立することなく、住み慣れた地域で自立して安心して暮らし続けられるよう、フレイル対策の推進や医療・介護を切れ目なく受けられる環境づくり、認知症予防及び認知症の人やその家族に対する支援の充実などを推進します。 主な事業 事業062 在宅医療・介護連携推進事業 事業064 市立大学医学部附属病院群における地域の医療機関・介護施設等との機能分担・連携推進 事業065 介護予防・認知症予防の推進 事業073 認知症地域支援ネットワークの構築 事業085 介護人材の確保・育成等の推進 脚注 フレイル:加齢による虚弱。心身の活力が低下し、要介護などにつながる危険性が高く、健康な状態と要介護状態の中間的な段階であるが、早期に適切な介入・支援を行うことにより生活機能の維持・改善が可能な状態。 (3)持続可能で活力のある地域づくり 達成に寄与するSDGsのゴール:4,11,12,17 ① 地域活動の推進 まちの活力が維持・向上し続けるよう、地域活動の担い手不足の解消に向け、企業や大学など地域の多様な活動主体と連携し、地域コミュニティの活性化に取り組むとともに、NPOやボランティアなど地域の多様な活動の担い手の育成・支援に取り組みます。 主な事業 事業021 地域コミュニティ活性化の推進 事業026 さまざまな団体との連携による地域活動の促進 事業388 SDGsまちづくりの推進 119ページ 戦略4 災害や感染症から市民の命と産業を守り、安心・安全な暮らしを確保します 大規模災害の発生が懸念される中、南海トラフ地震や想定し得る最大規模の風水害に備えた災害対応の強化が求められており、特にハード・ソフトが一体となった事前防災対策の強化を加速させていかなければなりません。その中で、能登半島地震における被災地支援活動で見えてきた課題等を踏まえた検証を行い、本市の大規模地震に向けた備えの強化につなげていく必要があります。 また、新型コロナウイルス感染症への対応から得た有事における健康危機への対応力を、平常時から継承・強化し、市民一人ひとりの命と健康を守ることができるよう備えておかなければなりません。 さらに、高齢化が一層進行し、地域のつながりも希薄化する中で、市民の安心・安全な暮らしを守るため、これまで以上に地域ぐるみで犯罪抑止や交通安全対策に取り組む必要があります。 120ページから122ページ 戦略の柱と推進する取り組み (1)あらゆる災害から命と暮らしを守る対策の強化 達成に寄与するSDGsのゴール:4,6,9,11,13,17 ① 逃げ遅れゼロをめざす防災対策の強化 南海トラフ地震や想定し得る最大規模の風水害に備えすべての市民の命を守るため、住民避難を軸としたさらなる避難対策の強化に取り組むほか、行政・民間の枠組みを超え、また市町村間での連携した防災対策に取り組みます。 主な事業 事業242 避難行動要支援者の個別避難計画作成 事業251 民間建築物の耐震化 事業262 国及び自治体間の相互連携推進 ② 防災人材育成の推進 市民や事業者それぞれが災害を「自分事」として捉え、日頃から防災・減災を意識して行動し、協力してお互いに助け合うことができる関係を構築できるよう、防災知識の習得やスキル向上、訓練などの支援を通じて地域防災力の向上につなげていきます。 主な事業 事業240 地域防災マネジメント事業における自助力向上の啓発・支援 事業241 地域防災マネジメント事業における自主防災組織の活動支援 事業245 戦略的な防災人材育成事業の推進 事業247 学校における防災教育の推進 ③ 災害対応力の強化 災害時に市民の命を守り、その後の被害拡大を防ぎ、さらに社会活動を早期に再開させるため、防災拠点の機能強化、受援体制の確立、物資等供給体制の充実、指定避難所等における良好な生活環境の確保などによる災害対応力の強化に取り組みます。 主な事業 事業254 市本部・区本部運営等に関する研修・訓練の実施 事業256 災害時における広報・広聴活動の推進 事業258 大規模風水害時における業務継続体制の確保 事業272 指定避難所における良好な生活環境の確保 脚注 受援体制:災害時に、他の地方公共団体や指定行政機関、指定公共機関、民間企業、NPOやボランティアなどの各種団体から、人的・物的資源などの支援・提供を受け、効果的に活用するための体制。 ④ 都市防災機能の強化 災害時にも一定の都市機能が確保できるよう、都市基盤施設の耐震化や浸水対策など都市防災機能の強化と適切な管理に取り組みます。 主な事業 事業218 橋りょうの耐震化 事業226 電線類の地中化 事業229 河川の整備 事業231 下水道による浸水対策事業 事業234 名古屋港の防災機能強化 (2)新興・再興感染症への健康危機管理対応力の強化 達成に寄与するSDGsのゴール:3 ① 重大な感染症の発生を見据えた健康危機への対応力強化 今後の重大な感染症の発生を見据えて、平常時からの備えとして、市保健所や保健センター等の機能強化、職員の人材育成や動員体制の構築、市立大学医学部附属病院群や市内医療機関との連携による感染者増加に対応可能な保健医療提供体制の確保、必要な物資・医療資機材の備蓄・更新、市民・事業者の感染症対応力の向上など、健康危機への対応力強化を図ります。 主な事業 事業275 新興・再興感染症対策の推進 事業277 東部医療センターにおける感染症病床の確保・維持 脚注 市立大学医学部附属病院群:名古屋市立大学病院、東部医療センター、西部医療センター、みどり市民病院及びみらい光生病院をいう。 (3)犯罪や交通事故のない安心・安全な地域づくり 達成に寄与するSDGsのゴール:3,11,16 ① 犯罪の抑止・交通安全対策の強化 地域の防犯力の向上や子どもの命を守る交通事故対策、高齢者が関わる交通事故への対策など、ハード・ソフト両面の相乗効果による犯罪抑止・交通安全に行政・地域が一体となって取り組みます。 主な事業 事業289 生活安全活動の推進 事業295 通学路等安全対策の実施 事業299 空家等対策の推進 123ページ 戦略5 独自の魅力で世界から多様な人が集い交流する、環境と経済の好循環で成長する都市をつくります この圏域は、アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線の開業といった、国際的な都市間競争力を高め、さらなる飛躍を遂げるための大きな機会を迎えようとしています。特に、リニア中央新幹線(品川-名古屋間)開業から大阪へ延伸されるまでの期間は、名古屋駅が西の終着駅となるため、名古屋がより一層飛躍するための貴重な期間になります。これらの千載一遇のチャンスを活かし、業務機能や商業・娯楽・芸術文化施設等のさらなる集積など国内外から人や企業が集い活躍できる都市機能の充実と、訪れたくなる魅力的なまちづくりを一体的に進めることにより、相乗効果を生み出し、圏域の成長をけん引する新たなまちづくりを進めていく必要があります。 また、この機会に都市の内外から活力を引き出すため、公共交通を中心とした持続可能な交通体系の実現とともに、さらなる技術の活用による快適でスマートな移動環境を実現し、居心地が良く歩きたくなるまちなかを形成し、まちづくりと交通が連携した取り組みを強化することが重要となります。 さらに、気候変動の影響で社会を取り巻く環境は変化しており、本市の持続的な発展や良好な環境を次世代に引き継ぐためにも、令和32(2050)年までの脱炭素社会の実現に向けて市民・事業者・行政が一体となって取り組む必要があります。 脚注 脱炭素社会:人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれた社会。 124ページから128ページ 戦略の柱と推進する取り組み (1)スマートで居心地が良く、交流を呼び込む都市機能の充実 達成に寄与するSDGsのゴール:4,6,8,9,10,11,12,13,14,17 ① 都市機能を支える基盤・ネットワークの強化 リニア開業の効果を最大化し、名古屋大都市圏の中枢都市として圏域の発展を支えるとともに、国際的・広域的な拠点機能や物流機能を高めるため、名古屋駅周辺地区・栄地区・金山地区などの都市機能強化や、中部国際空港第二滑走路の整備など、圏域の産業・経済を支える広域交通ネットワークの強化などを進めます。 主な事業 事業412 名古屋駅ターミナル機能の強化 事業413 リニア駅周辺の面的整備 事業416 栄地区まちづくりプロジェクトの推進 事業417 金山駅周辺まちづくりの推進 事業420 三の丸地区まちづくりの推進 事業422 中部国際空港の機能強化及び利用促進 事業424 名古屋高速道路の利便性の向上 ② 先進技術の活用による快適な移動環境の実現 誰もが快適に移動できる環境の実現と都市の回遊性の向上を図るため、ICTや自動運転技術などの先進技術の活用により、基幹的公共交通の機能強化や公共交通の利便性向上、地域のニーズに応じた移動環境の形成などを進めます。 主な事業 事業335 地域公共交通計画の推進 事業336 新たな路面公共交通システム(SRT)の導入 事業338 交通支援制度の実施 ③ ウォーカブルなまちづくり 官民が連携し、多様な交流・にぎわいと快適なまちの回遊を創出するため、名古屋の特徴である豊かな道路空間などの官民のパブリック空間を活用し、ウォーカブルな空間を形成します。 主な事業 事業339 居心地が良く歩きたくなるウォーカブルなまちなかの形成 事業431 うるおいと活気のある堀川・新堀川の再生 事業432 中川運河の再生 (2)脱炭素型・循環型・自然共生まちづくり 達成に寄与するSDGsのゴール:3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15 ① 脱炭素社会の実現に向けた取り組みの推進 将来の世代も安心して暮らせる持続可能な社会をつくるため、市民・事業者・行政が一体となり、あらゆる場面で徹底した省エネを進め、エネルギーの地産地消にもつながる再生可能エネルギーの導入や脱炭素社会の鍵となる水素エネルギーの利活用の推進などを図るとともに、脱炭素化をイノベーション創出や事業成長につなげるなど環境と経済を両立させ、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進します。 主な事業 事業383 環境保全・省エネルギー設備資金融資 事業384 自動車環境対策の推進 事業390 住宅等の脱炭素化促進 事業397 水素エネルギーの利活用の推進 事業400 脱炭素社会の実現を担う人材育成の推進 事業491 グリーン・イノベーションの促進 ② 循環経済への移行の加速化 大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会からの転換のため、これまでの廃棄物・環境対策としての3Rに加え、資源循環とビジネスが融合した社会の形成を図り、循環経済への移行の加速化に取り組みます。 主な事業 事業395 下水汚泥の固形燃料化 事業404 リデュース・リユースの推進 事業406 事業系ごみの減量・資源化の推進 事業407 資源循環とビジネスが融合した社会の形成 脚注 3R:「Reduce=リデュース(発生抑制)」、「Reuse=リユース(再使用)」、「Recycle=リサイクル(再生利用)」の3つの頭文字をとった言葉で、ごみ減量のために必要な取り組みを表す。 ③ グリーンインフラの取り組みによる自然共生社会の実現 豊かな自然環境や生物多様性を保全し、将来にわたって自然と共生する社会を実現するため、あらゆる分野・場面においてグリーンインフラの取り組みを推進し、持続可能で魅力的な地域づくりに取り組みます。 主な事業 事業364 地域に身近な公園の再生 事業371 水循環機能を活かしたまちづくりの推進 事業378 生物多様性に配慮したまちづくりの推進 脚注 グリーンインフラ:自然環境が有する多様な機能(生きものの生息・生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制など)を積極的に活用して、さまざまな効果を得ようとする取り組み。 (3)新たな挑戦を後押しし、激化する都市間競争に打ち勝つ産業力強化 達成に寄与するSDGsのゴール:4,8,9,10,11,13,17 ① イノベーションの創出による経済活性化 近年、社会情勢や産業構造が著しく変化する中においても、この圏域が持続的な成長を遂げていくため、スタートアップ・エコシステムの形成を通じてスタートアップを創出するとともに、オープンイノベーションを促進し、あわせてイノベーションの担い手となる人材を育成します。 主な事業 事業484 イノベーションを起こす環境の整備 事業485 イノベーション人材の育成 事業487 社会実証・オープンイノベーションの促進 脚注 オープンイノベーション:新技術・新製品の開発に際して、組織の枠組みを越え、広く知識・技術の結集を図ること。一例として、産学官連携プロジェクトや異業種交流プロジェクト、大企業とベンチャー企業による共同開発などが挙げられる。 ② 中小企業の経営基盤強化 本市の経済や市民の雇用・暮らしを支える中小企業の技術力・販売力・サービス向上力を強化するため、想定外のリスクや、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、グリーン・トランスフォーメーション(GX)などの新たな課題へ柔軟かつ機動的にチャレンジする中小企業の取り組みを支援します。 主な事業 事業489 デジタル化(DX)の推進 事業497 資金調達の円滑化支援 脚注 グリーン・トランスフォーメーション:産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換すること。 ③ 地域商業の活性化 名古屋大都市圏の中枢都市として、域内経済の活性化・持続的な発展に向け商店街の魅力向上など、地域商業の活性化に取り組みます。 主な事業 事業503 地域商業地の活性化・整備促進 (4)名古屋らしさで世界を魅了する、何度でも訪れたくなるまちづくり 達成に寄与するSDGsのゴール:4,6,8,9,10,11,12,13,15,17 ① 名古屋ならではのストーリーで世界を魅了する国際観光MICE都市の実現 コロナ禍で落ち込んだ観光需要の回復・拡大に向け、本市の強みである歴史、文化・芸術、産業、食文化をはじめとした観光コンテンツの磨き上げや、さらなる情報発信を通じた観光客誘致を推進するとともに、アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線の開業を見据え、新たなターゲットを見極めた戦略的な観光プロモーションやPR、ソフト・ハード両面での受け入れ環境の整備、MICEを推進します。 主な事業 事業418 名城エリアにおける観光推進 事業451 文化芸術活動支援の充実 事業460 東山動植物園の再生 事業462 観光プロモーションの推進 事業471 MICEの誘致推進 脚注 MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字。多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。 ② スポーツの力による都市活力の強化 アジア・アジアパラ競技大会の開催を契機としてスポーツによる都市ブランドの向上と都市活性化を図るため、スポーツ施設などの整備、大会後の継続的な大規模競技大会などの誘致・開催、誰もが気軽にスポーツを楽しむことができる機会や場の提供、アーバンスポーツ・eスポーツといった新たなスポーツの推進、官民が連携したスポーツツーリズムの推進などに取り組みます。 主な事業 事業477 瑞穂公園の整備 事業478 スポーツ実施機会の提供 事業480 障害者スポーツの振興 事業481 スポーツプロモーションの実施 脚注 アーバンスポーツ:広い場所を必要としない、個人が気軽に始められるなどの理由で、都市住民が参加しやすいスポーツ。都市型スポーツ。 eスポーツ:「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。 スポーツツーリズム:スポーツを「みる」「する」ための旅行そのものや周辺地域観光に加え、スポーツを「ささえる」人々との交流など、複合的で豊かな旅行スタイルの創造をめざすもの。 129ページから130ページ ダイバーシティ都市・名古屋の実現をめざして すべての重点戦略の展開にあたり前提とすべき考え方が「多様性(ダイバーシティ)」です。多様性(ダイバーシティ)は、住民福祉の増進を担う基礎自治体が、誰一人取り残さない社会を構築する上で、必要不可欠な要素です。また、圏域の中枢を担う大都市としても、多くの人や企業に選ばれ、将来にわたり成長を続ける上で、重要です。 とりわけ本市には、アジア・アジアパラ競技大会の開催も契機としながら、多様性を認め合い、性別や年齢、障害の有無、国籍などに関わらず、誰もが自分らしく暮らすことのできる社会を実現することが一層求められています。 そのため、以下の観点から取り組みを進めることで、「多様性」が共生し、「多様性」が成長を導く、「ダイバーシティ都市・名古屋」を実現します。   ①誰一人取り残さない多様性を包摂する社会(安心して共生する) 基礎自治体である本市は、性別や年齢、障害の有無、国籍などの多様性を包摂するとともに、悩みや不安、あらゆる分野での生きづらさを抱える人や配慮を要する人を取り残さない社会を実現しなければなりません。そのため、本市は、住む・訪れる・学ぶ・働くなど、あらゆる場面で、ソフト・ハード両面における多様性が前提となった、すべての人が安心して共生できる名古屋をめざします。 ②多様な選択肢を有する寛容性の高い都市(付加価値を生み出す) 今後も本市が大都市として成長を続けていくためには、多様性を包摂する社会の実現を前提として、多様な人々や価値観が交流し、絶えず新しい価値を生み出す都市の実現が求められます。そのため、本市は、多様な人材を育てるとともに、多様性に寛容な環境を整え、文化を醸成することで、国内外からの多様な人材による多様な交流を促進し、イノベーションの創出、ひいては成長を続ける名古屋をめざします。 ③ダイバーシティ都市の実現を支える多様性を尊重した行政運営(市政の変革と基盤強化) 多様性を包摂する社会、多様な選択肢を有する寛容性の高い都市の実現を推進する上では、各種施策・事業を担う市役所においても多様性を尊重していくことが重要となります。そのため、人材、組織などあらゆる面で意識改革を進め、浸透を図ります。 以上の観点に基づき、「ダイバーシティ都市・名古屋」の実現に資する主な事業を、重点戦略に位置づける取り組みを中心に示します。 131ページから132ページ ダイバーシティ都市・名古屋の実現に向けた施策・事業を体系的に掲載 133ページ 成長の原動力の考え方 人口減少や少子化・高齢化に伴う人口構造の変化などをはじめとした喫緊の課題へ対応する一方で、本市を飛躍的に成長させ、名古屋大都市圏の中枢都市として将来にわたり名古屋大都市圏の活力を維持し、さらにはリニアがつなぐ巨大交流圏の中心都市として日本全体の成長のエンジンの役割を果たすべく、さらなる地域の発展に向けた好循環につなげていく投資を進める必要があります。 中でも、特に未来につながる先行投資を推進するための視点として、「アジア・アジアパラ競技大会の開催とリニア中央新幹線の開業を起爆剤とした都市全体のさらなる発展・躍進に向けた取り組み」、「世界的な潮流であるデジタル技術の活用により、暮らし・産業における新たな価値の創出」、「脱炭素への対応を成長の機会と捉えた産業競争力の強化」、そして、「これらを推進し新たな名古屋をつくる人材の育成」の4つを「成長の原動力」とし、本市を飛躍的な成長に導く投資を推進します。 原動力1 アジア・アジアパラ競技大会のレガシー形成とリニア時代を見据えた投資 原動力2 最先端のデジタル都市の実現に向けた投資 原動力3 新たなエネルギーによる産業活性化に向けた投資 原動力4 未来を支える人材を育む「人」への投資 134ページ 原動力1 アジア・アジアパラ競技大会のレガシー形成とリニア時代を見据えた投資 アジア・アジアパラ競技大会の開催とリニア中央新幹線の開業は、本市の今後のまちづくりに大きな影響を与えるプロジェクトです。 アジア・アジアパラ競技大会については、その開催効果を一過性のスポーツイベントに終わらせるのではなく、大会のレガシーをさまざまな分野における都市の発展に活(い)かし、リニア中央新幹線開業に向けたまちづくりへとつなげていくことが重要です。さらには、リニア中央新幹線全線開業時の巨大交流圏の中心都市として、日本の成長をけん引できるよう、ソフト・ハード双方の投資を積極的に行い、国際的な都市間競争力を一層高めていくことが重要です。 135ページ 成長の原動力の柱と推進する取り組み (1)アジア・アジアパラ競技大会の開催とレガシーの形成 達成に寄与するSDGsのゴール:4,8,10,11,13,17 大会を成功に導き、その開催効果をスポーツの振興をはじめ、交流人口の拡大や国際交流の促進、共生社会の実現、国際競争力の強化など市民の豊かな生活につなげるため、競技会場などでの先端技術の活用や、大会の開催に向けた都市基盤整備、大会後の活用を見据えた施設整備、大会を契機としたアジア各国への戦略的な観光プロモーションや魅力発信、多様性への理解促進などさまざまな分野にわたるレガシー形成に取り組みます。 主な事業 事業018 アジア・アジアパラ競技大会に向けたバリアフリー整備 事業474 アジア・アジアパラ競技大会の推進 事業475 アジア・アジアパラ競技大会に向けた機運醸成等に関する本市の取り組み 事業476 アジア・アジアパラ競技大会会場施設の整備 事業480 障害者スポーツの振興 事業483 新たなスポーツの振興 アジア・アジアパラ競技大会の概要 ①第20回アジア競技大会 大会期間:令和8(2026)年9月19日(土)~10月4日(日) 参加国数:アジア45の国と地域 実施競技:41競技 メイン会場:名古屋市瑞穂公園陸上競技場 ②第5回アジアパラ競技大会 大会期間:令和8(2026)年10月18日(日)~10月24日(土) 参加国数:アジア45の国と地域 実施競技:18競技 メイン会場:名古屋市瑞穂公園陸上競技場 136ページ (2)多様な主体が交わり新たな価値を創造する都市の実現 達成に寄与するSDGsのゴール:4,5,8,9,10,11,13,17 リニア中央新幹線の開業による交流人口増加の効果を最大限に引き出し、さまざまな分野で活躍するグローバルなクリエイティブ人材・企業など、多様な主体の交流を通じた新たな価値を創出するため、名古屋駅周辺のまちづくりをはじめとした都心部の魅力向上や、スタートアップ創出・成長支援、イノベーションの創出、イノベーションの基盤となる企業の集積、利便性の向上につながる次世代モビリティサービスの推進、偶然の出会いや交流、新たな気づきにつながるウォーカブルなまちづくりに取り組みます。 主な事業 事業336 新たな路面公共交通システム(SRT)の導入 事業412 名古屋駅ターミナル機能の強化 事業413 リニア駅周辺の面的整備 事業416 栄地区まちづくりプロジェクトの推進 事業484 イノベーションを起こす環境の整備 事業493 イノベーションの基盤となる企業等の集積促進 (3)多様な個性と魅力で成長と活力を生み続ける都市の実現 達成に寄与するSDGsのゴール:6,8,9,10,11,12,14,17 アジア・アジアパラ競技大会の開催を契機に、スポーツにより都市の活性化や都市ブランドを向上させるため、継続的な大規模スポーツ大会の誘致・開催などのスポーツを活かした魅力の創出・発信を行います。また、アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線開業により新たな来訪者の増加へつながるよう、名古屋が有する魅力資源のさらなる磨き上げや、国内外への戦略的な観光プロモーション、国際的な大規模MICEの誘致、すべての人が快適に滞在でき、大規模イベントにも対応可能な受け入れ環境の整備を進めます。 主な事業 事業431 うるおいと活気のある堀川・新堀川の再生 事業432 中川運河の再生 事業438 名古屋城の整備 事業442 熱田神宮周辺まちづくりの推進 事業472 国際展示場の運営・整備 137ページ 第20回アジア競技大会・第5回アジアパラ競技大会の開催 1 アジア・アジアパラ競技大会を開催する意義・目的 (1)スポーツの公平な競争を通じて、スポーツや文化、教育、国際的な尊敬、友情、平和など、さまざまな分野の振興・促進に寄与 (2)アジア最大の国際スポーツ・パラスポーツ大会 (3)大会期間中、多くの観客や大会関係者がこの地域を来訪 2 大会を取り巻く状況の変化 (1)2020東京オリンピック・パラリンピックの開催 (2)開催決定後における国際情勢の変化、物価の高騰 3 1及び2を踏まえて (1)大会の質を保ちつつ経費の抑制を図り、簡素で合理的・機能的な大会に (2)両大会を一過性のスポーツイベントで終わらせるのではなく、大会の開催効果を、スポーツの振興をはじめ、交流人口の拡大、国際交流の促進、共生社会の実現、国際競争力の強化など、さまざまな分野にレガシーとしてつなげていくことが必要 「2026アジア・アジアパラ競技大会NAGOYAビジョン」~大会を契機としてめざすまちの姿~ 健康・地域活力、魅力・誇り、国際交流・多様性、イノベーション・持続可能性といったさまざまな分野にわたるレガシー形成を通じて、本市をあらゆる面でバージョンアップし、市民のより豊かな生活の実現につなげる 138ページ アジア・アジアパラ競技大会に関連する主な事業 1 開催に必要な事業 事業474 アジア・アジアパラ競技大会の推進(組織委員会運営等) 事業476 アジア・アジアパラ競技大会会場施設の整備 事業477 瑞穂公園の整備 2 開催に向けて重要な事業 事業012 重点整備地区のバリアフリー化の推進 事業018 アジア・アジアパラ競技大会に向けたバリアフリー整備 事業475 アジア・アジアパラ競技大会に向けた機運醸成等に関する本市の取り組み(機運醸成、会場周辺整備等) 3 大会を契機に加速する事業 (1)スポーツの振興 事業478 スポーツ実施機会の提供 事業480 障害者スポーツの振興 事業481 スポーツプロモーションの実施 事業482 大規模競技大会等の誘致・開催 事業483 新たなスポーツの振興 (2)交流人口の拡大 事業462 観光プロモーションの推進 (3)国際交流の促進 事業112 市立大学における多文化共生・国際化の推進に向けた人材育成 事業425 外国諸都市との交流推進 (4)共生社会の実現 事業011 バリアフリーのまちづくりの推進 事業013 民間鉄道駅舎のバリアフリー化の推進 事業017 ユニバーサルデザインタクシーの導入補助 事業020 障害と障害者理解の推進 事業092 障害者差別解消の推進 (5)国際競争力の強化 事業484 イノベーションを起こす環境の整備 事業492 産業交流の場づくり 事業493 イノベーションの基盤となる企業等の集積促進 など 139ページ 名古屋駅のスーパーターミナル化 これからの名古屋駅には、リニアがつなぐ巨大交流圏の交通拠点、快適な乗り換え空間、ターミナル駅にふさわしい空間づくりを進めていくことが求められています。整備にあたっては、スーパーターミナル駅にふさわしい高い機能性の発揮と、世界の目的地となる名古屋の新しい顔づくりを基本コンセプトに検討を進めています。 ※整備の基本的な考え方のイメージ図を掲載 140ページ 名古屋駅駅前広場周辺の再整備 1 東側駅前広場  ロータリー交差点を改良し、「飛翔」の位置まで広場を広げ、まちにつながる歩行者空間、乗り換え空間の拡充を図ります。 2 西側駅前広場 (1)リニア中央新幹線開業時の姿 アジア・アジアパラ競技大会の開催時及びリニア中央新幹線開業に向け、来訪者を温かく迎えるために必要な交通機能の確保と空間形成を図ります。 (2)西側エリアのめざす姿 リニア中央新幹線開業後、できる限り早期に、駅前広場の地下や上空等も活用し、交通結節機能の立体的な配置や、新たな都市機能を導入する等、民間事業者と連携して、スーパーターミナル駅にふさわしい魅力的な拠点の形成をめざします。 141ページ 原動力2 最先端のデジタル都市の実現に向けた投資 本市においては、市政各分野において多様化・複雑化するさまざまな課題に的確に対応していくため、平成31(2019)年3月に策定した「名古屋市ICT活用に関する基本方針」のもとサービスや業務の改善に取り組んできましたが、コロナ禍において、医療、雇用、産業、市民生活など、あらゆる側面でデジタル化をめぐるさまざまな課題が顕在化しました。 ロボットやAI、IoT、ビッグデータなどを活用した技術革新である第4次産業革命の進展は、経済活動に加え、健康、医療、公共サービスなどの幅広い分野に影響を与えると考えられます。このような中で、労働生産性を高め、産業競争力を維持・強化していくことや、一人ひとりがライフステージに合った最適なサービスを選択することができる社会を実現するためには、デジタル技術やデータの利活用などを推進していく必要があります。 142ページ 成長の原動力の柱と推進する取り組み (1)デジタル“実感”都市の実現 達成に寄与するSDGsのゴール:3,4,8,9,10,11,13,16,17 世界においては、コロナ禍以前から、民間部門において、データを効果的に生成・収集・利活用する企業が生まれ、急激な成長・技術革新を遂げています。 デジタルサービスの多くは民間部門における新しいアイデアから生み出されていることから、先進技術社会実証支援「Hatch Technology NAGOYA」などをはじめ先進技術に関するアイデアを民間部門より積極的に募り、都市全体をイノベーション・フィールドとした社会実装を支援するとともに、健康・医療、福祉、子ども、教育、防災、モビリティ、インフラなどの市民生活に密着している分野、まちのにぎわいづくりや観光の分野において、率先導入を進めます。 あわせて、中小企業へのデジタル技術の導入による経営基盤強化やビジネスモデルの変革など圏域の産業競争力の維持・強化を支援します。 主な事業 事業085 介護人材の確保・育成等の推進 事業210 教育データ利活用とEBPMの推進 事業319 インフラ分野のDX推進 事業487 社会実証・オープンイノベーションの促進 (2)デジタルスタンダードな暮らしの実現 達成に寄与するSDGsのゴール:4,9,11,13 デジタル技術を暮らしの標準的な手段として実装し、市民一人ひとりにより適したサービスをめざすため、行政手続きのオンライン化や、区役所におけるスマート窓口の推進、AIなどの先端技術の活用・実証実験などに取り組み実装を進めます。 主な事業 事業023 区行政の推進 事業120 図書館の魅力向上  事業228 世界座標データと道路台帳平面図を統合するデジタルデータの公開 143ページ 原動力3 新たなエネルギーによる産業活性化に向けた投資 脱炭素への対応を経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも成長の機会と捉える時代に突入したことで、自動車産業をはじめとする製造業を中心としたこの圏域の産業は、100年に一度と言われる産業構造の変化に直面しています。 国全体では、令和12(2030)年度までの新たな目標として、平成25(2013)年度から温室効果ガスを46%削減することをめざすとされており、令和32(2050)年までの脱炭素社会の実現と、産業競争力の維持・強化を両立していくためには、産業構造に変革をもたらし次なる大きな成長が見込まれるエネルギー分野における投資を進めていく必要があります。 とりわけ、産業、輸送など幅広い分野での活用が期待され、脱炭素化へのキーテクノロジーとされる水素や産業から家庭まで幅広く活用されている再生可能エネルギーの利活用促進と、自動車の電動化に関連した業態転換支援への先行的・集中的な投資を進め、エネルギーの安定供給への貢献や、令和32(2050)年までの脱炭素社会の実現に向けた「環境と経済の好循環」を達成し、将来へ向け成長志向の産業構造を構築していくことが重要です。 144ページ 成長の原動力の柱と推進する取り組み (1)水素でつくる新たな暮らし・産業 達成に寄与するSDGsのゴール:3,7,8,9,11,13 水素の利活用促進においては、本市は人口・産業・都市機能が集積する大都市として、水素の需要創出・利活用促進をけん引するため、公的部門における燃料電池車両の率先導入など、圏域全体をリードする取り組みを進めるとともに、産業部門における社会実装へ向けた取り組みを支援します。 あわせて、産学官・周辺自治体で連携し、水素等実装の拠点整備や環境整備、規制緩和などを推進し、新たなサプライチェーン構築を進めるとともに、都市全体での水素利活用の取り組みを進めます。 主な事業 事業397 水素エネルギーの利活用の推進 事業398 脱炭素先行地域づくり事業の推進 事業399 名古屋港におけるカーボンニュートラルポート形成 事業491 グリーン・イノベーションの促進 (2)再生可能エネルギーの利活用拡大と業態転換支援 達成に寄与するSDGsのゴール:7,9,11,12,13 再生可能エネルギーの利活用促進として、事業者への導入支援や、公的部門での率先導入、市民・事業者への電動車の導入支援をするとともに、自動車の電動化に関連した業態転換支援として、事業者の新たな領域への挑戦や多角化への支援などを進めます。 主な事業 事業389 市施設の脱炭素化の推進 事業390 住宅等の脱炭素化促進 145ページ 原動力4 未来を支える人材を育む「人」への投資 現代は将来の予測が困難な時代であり、不確実性が高く変化の激しい社会においてさまざまな課題に向き合いながら豊かな未来を切りひらいていくためには、社会の中での自分の役割を考えながら自分らしい生き方を実現していく力や、柔軟な知を育んでいく必要があります。 また、少子化やデジタル化の急速な進展をはじめとする潮流は、これまでの産業構造を抜本的に変革するだけではなく、労働需要のあり方にも根源的な変化をもたらすことが予想されます。そのためには、急激な社会環境の変化を受容し、新たな価値を生み出していく力や、一人ひとりのスキルの向上・習得により生産性を向上させていく必要があります。 創造性を発揮して付加価値を生み出していく原動力は「人」であることから、教育・人材育成といった人への投資を成長の源泉と捉え、未来を支える人材を育む取り組みを支援・推進することが重要です。 146ページ 成長の原動力の柱と推進する取り組み (1)持続可能な社会の発展を生み出す人材育成 達成に寄与するSDGsのゴール:4,8,9,10,11 すべての子どもたちの可能性を最大限引き出し、持続可能な社会の発展を生み出す人材の基礎を育成するため、初等中等教育において、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、課題発見・解決能力などを育む学習の充実を進めるとともに、キャリア教育、グローバル人材の育成などに取り組みます。 主な事業 事業145 子どもの体験活動の推進 事業180 ナゴヤ・スクール・イノベーション事業の推進 事業182 キャリア教育の推進 事業191 グローバル人材育成の推進 事業213 市立大学における都市の諸課題の解決に向けた研究及び人材育成 (2)新たな時代の産業を支える人材育成 達成に寄与するSDGsのゴール:4,8,9,10,13 デジタル化をはじめとする大きな産業構造の変化の中においても、産業全体をレベルアップし、産業競争力を維持・強化していくため、起業家精神を持った次世代の人材育成やイノベーション人材の育成、産業を支える人材の能力をアップデートするリカレント教育を実施するとともに、リスキリングを実施します。 主な事業 事業485 イノベーション人材の育成 事業488 グローバル化支援 事業502 市立大学における学びなおし講座の提供 脚注 リカレント教育:学校教育を修了した後、社会人が再び学校等で受ける教育。 147ページから148ページ 3 施策・事業の全体像 (1)施策・事業数 本計画では、前計画からの継続性を考慮しつつ、令和6(2024)年度から令和10(2028)年度の5年間における「めざす都市像」の実現に向けた取り組みを42の施策として体系化しています。また、各施策を推進する上で重要な事業を掲載しています。 都市像1 施策数12 事業数121 都市像2 施策数5 事業数95 都市像3 施策数7 事業数98 都市像4 施策数9 事業数96 都市像5 施策数9 事業数93 合計 施策数42 事業数503 (2)計画事業費 本計画の掲載事業の実施に要する事業費は、5年間の計画期間を通して概算で  約2兆6,973億円を見込んでいます。なお、計画事業費については計画策定時における概算です。 都市像1 約3,487億円 都市像2 約5,634億円 都市像3 約6,730億円 都市像4 約4,703億円 都市像5 約6,420億円 合計 約2兆6,973億円 149ページから150ページ 4 計画の進行管理 本計画の推進にあたっては、次のとおり実施状況の把握と重点戦略に基づく予算の重点化を図ることにより、進行管理を実施し、PDCAサイクルを徹底します。 (1)実施状況の把握 施策の進ちょく状況を把握するため、施策ごとに成果指標とその目標値を設け、毎年度、その成果指標の状況を把握し公表します。 また、掲載事業には、現況と計画目標を掲載した上で、毎年度、掲載事業の実施状況を把握し公表します。なお、本計画の期間終了後は、成果指標の目標値や掲載事業の計画目標の達成状況を評価・検証することにより、本計画を総括し、その後の市政運営に反映します。 (2)予算の重点化 毎年度の予算編成においては、本計画の重点戦略に基づき、実施状況を踏まえ予算の重点化を図ります。 ※めざす都市像の実現に向けた、計画期間内の進行管理イメージ(PDCAサイクル)の図を掲載 151ページから152ページ 5 施策・事業 (1)施策体系 「めざす都市像」を実現するために、42の施策に取り組みます。 都市像1 人権が尊重され、誰もがいきいきと暮らし、活躍できる都市 1 人権が尊重され差別や偏見がない社会をつくります 2 ジェンダー平等を総合的に進めます 3 バリアフリー・ユニバーサルデザインのまちづくりを総合的に進めます 4 地域のつながりを深めることや地域活動を総合的に支援します 5 生涯にわたる心身両面の健康づくりを支援します 6 適切な医療を受けられる体制を整えます 7 生活課題を抱え支援が必要な人を誰一人取り残さないよう支援します 8 高齢者が個々の状況に応じて自分らしく安心して暮らせるよう支援します 9 障害者が自立して安心して暮らせるよう支援します 10 多文化共生を進めます 11 誰もが意欲を持って働けるよう、就労支援を進めます 12 生涯にわたる学びを通した生きがいづくりを支援します 都市像2 安心して子育てができ、子どもや若者が豊かに育つ都市 13 出会いや結婚に対する希望がかない、安心して子どもを生み、育てられる環境をつくります 14 子どもが健やかに育つよう、子ども・家庭を支援します 15 虐待やいじめから子どもを守り、不登校児童生徒への支援を進めます 16 子どもの確かな学力や豊かな心、健やかな体を育み、社会で活躍する力を伸ばします 17 若い世代が学び育ち、活躍できるまちをつくります 都市像3 人が支え合い、災害に強く安心・安全に暮らせる都市 18 災害に強い都市基盤の整備を進めます 19 防災・減災対策を進めるとともに、地域防災力の向上を支援します 20 感染症対策の充実と衛生的な環境の確保を図ります 21 市民の命を守る消防体制の充実を図ります 22 犯罪や交通事故のない、安心・安全な地域づくりを進めます 23 安心・安全でおいしい水道水を安定供給します 24 消費生活の安定・向上と、食の安全・安心を確保します 都市像4 快適な都市環境と自然が調和した都市 25 良好な都市基盤が整った生活しやすいまちづくりを進めます 26 持続可能な公共交通の実現と、ウォーカブルなまちづくりを進めます 27 歩行者や自転車にとって安全で快適な道路環境を確保します 28 多様なニーズに対応した安心・ゆとりある住生活の実現・継承を図ります 29 大気や水質などが良好に保たれた快適な生活環境を確保します 30 身近な自然や農にふれあえる環境をつくります 31 市民・事業者の環境に配慮した活動を促進します 32 脱炭素社会の実現に向けたまちづくりを進めます 33 循環型都市づくりを進めます 都市像5 魅力と活力にあふれ、世界から人や企業をひきつける、開かれた都市 34 世界に誇れる都市としてふさわしい都心機能・交流機能を高めます 35 国際的に開かれたまちづくりを進めます 36 港・水辺の魅力向上を図ります 37 魅力的な都市景観の形成を進めます 38 歴史・文化に根ざした魅力向上を図ります 39 観光・MICEの推進と情報発信により交流を促進します 40 スポーツを活かしたまちづくりを進めます 41 イノベーションの創出を促進するとともに、産業交流を促進します 42 地域の産業と人材を育成・支援します 153ページから154ページ 施策ページの見方を掲載 155ページから156ページ 事業ページの見方を掲載