1ページから2ページ 第1章 計画策定の考え方 1 策定のねらい 本市の人口は、我が国が約15年前に人口減少社会に突入した後も緩やかに増加していましたが、いよいよ本格的な減少局面に転じようとしています。 また、少子化・高齢化の進行に伴う人口構造の変化、南海トラフ地震をはじめとする巨大な自然災害リスクの対応が引き続き求められるほか、新型コロナウイルス感染症の長期化・深刻化がもたらした人々の暮らし・働き方・価値観の変化、感染症の脅威に対する強い危機意識の高まり、デジタル化や脱炭素化に向けた世界的な動きの加速など、多様化・複雑化するさまざまな課題への対応が求められています。 こうした中、令和8(2026)年には、アジア最大のスポーツの祭典である第20回アジア競技大会及び第5回アジアパラ競技大会(以下、「アジア・アジアパラ競技大会」という。)の開催、その先には、品川-名古屋間におけるリニア中央新幹線の開業が予定されており、この圏域にとっての大きなターニングポイントを迎えることとなります。さらに、リニア中央新幹線が大阪まで延伸されると、東京-名古屋-大阪の三大都市圏が約1時間で結ばれ、世界最大の人口を有する巨大交流圏が誕生し、産業や人々の生活において大きな変化が想定されます。 一方、我が国全体を見渡すと、不確実性が増す国際情勢への対応、急速に進む人口減少や少子化・高齢化への対応、1990年代初頭のバブル経済崩壊から続く「失われた30年」と呼ばれる長期に及ぶ経済の停滞からの脱却、かつて世界の上位を占めた一人あたりGDP(国内総生産)や国際競争力を基盤とした国際的な影響力の回復、経済安全保障の確保など、国内外、そして短期長期を問わず、課題が山積しています。さらには、南海トラフ地震など、切迫する巨大地震・津波により、名古屋大都市圏を含む、太平洋側において、広域にわたる甚大な人的・経済的被害がもたらされ、国難とも言うべき事態が危惧されています。加えて、首都直下地震が切迫する中で、東京に集中する中枢管理機能のバックアップ体制の強化が求められています。 国においては、「誰一人取り残さない」持続可能でよりよい社会の実現をめざす持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みが進められているとともに、持続可能で包摂的な社会をつくっていく上で、子ども・子育て政策を最重要政策と位置づけ、異次元の少子化対策に取り組むとしています。さらには、デジタルの力を活用して社会課題の解決や魅力向上を図り、地方活性化を加速する「デジタル田園都市国家構想」や、令和32(2050)年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現が掲げられています。加えて、こうした大きな変革の中、創造性を発揮し、「失われた30年」を乗り越えて、次なる成長の機会を生み出すための「人」への投資の拡大が求められています。 このように激動する時代の大きな転換点を迎えている状況において、誰もが幸せと希望を感じられる豊かな社会を実現するとともに、アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線の開業という機会を活かしながら、本格的な人口減少局面を迎える中でも持続可能な成長を実現し、国際的な都市間競争力を一層高めることにより、名古屋大都市圏の中枢都市、成長エンジンとして、圏域ひいては国の発展をけん引していくことが求められています。 そのため、市政運営にあたっては、本市を取り巻く社会経済情勢、市民ニーズ、名古屋の強みを的確に捉え、市民、企業、大学、NPOなど多様な主体と方向性を共有し、連携しながら、中長期的な視点を持って戦略的にまちづくりを進めていくことが必要です。 以上を踏まえ、本計画は、「人間としての真の幸せを願い、憲法の精神に基づき、ひとりひとりの基本的人権がまもられ、健康で文化的な生活のいとなめる個性豊かなまち、名古屋の建設をめざす」ことを基本理念に掲げる名古屋市基本構想(昭和52年12月20日議決)のもと、長期的展望に立った上で、本市のめざす都市像を描くとともに、その都市像の実現に向けて取り組む施策等を明示することにより、市政を総合的かつ計画的に運営していくことを目的に策定します。 この計画を着実に推進することにより、性別や年齢、障害の有無、国籍などに関わらず(ダイバーシティ)、誰もが自分らしくいきいきと暮らしていくことができ、「住みやすい」「働きやすい」「訪れたくなる」「投資したくなる」といった、すべての分野において高水準で調和のとれた、市民が誇りに思う都市を実現し、都市の総合的な魅力として発信(シティプロモーション)することで、国内はもとより世界中の人々をひきつける「魅力あふれる名古屋」をめざします。あわせて、東西交通の要衝であり、かつ、東京圏との同時被災の可能性が低いという立地上の特性や「強い経済力」「高度な都市機能・業務中枢機能の集積」「都市の強靱性」を兼ね備えた大都市ならではの強みを活かして、東京一極集中是正の受け皿になるとともに、非常時には、東京に集中している中枢管理機能を強力にバックアップする「頼れる名古屋」をめざします。 脚注 名古屋大都市圏:名古屋市を中心におおむね30~50kmの範囲で、産業、観光、防災など分野ごとに柔軟に捉えたエリア。 3ページ 2 計画の全体像 (1)位置づけ 本計画は、市政運営の指導理念である「名古屋市基本構想」のもと、本市がめざす都市像などを「長期的展望に立ったまちづくり」として示し、その実現に向けた取り組みを総合的・体系的に取りまとめています。 本市の各分野の個別計画は、本計画との整合を図ります。また、毎年度の予算は、本計画を踏まえ、編成していきます。 なお、本計画は、まち・ひと・しごと創生法に基づく本市の地方版総合戦略を兼ねるものとします。 (2)計画期間 計画期間は、令和6(2024)年度から令和10(2028)年度までの5年間です。「長期的展望に立ったまちづくり」には、リニア中央新幹線の開業や全国の高齢者人口がピークを迎える時期を念頭に置き、令和22(2040)年頃を見据え、名古屋を取り巻く状況や市民ニーズを分析した上で「基本方針」を示し、「めざす都市像」を描きます。「めざす都市像の実現に向けた取り組み」には、「めざす都市像」を実現するため、計画期間内において優先的に取り組む分野横断的な「重点戦略」を描くとともに、推進する施策と関連する事業を掲載します。 ①令和10(2028)年度までの主な出来事 令和7(2025)年度 団塊の世代が後期高齢者に、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催 令和8(2026)年度 アジア・アジアパラ競技大会の開催 令和9(2027)年度 中部国際空港代替滑走路整備、2027年国際園芸博覧会の開催 ②令和22(2040)年頃に念頭におくべき事柄 リニア中央新幹線の開業、中部国際空港第二滑走路整備、全国的な高齢者人口のピーク 4ページ (3)構成 計画の構成を体系的まとめた図を掲載 5ページ~6ページ 目標実現に向けた推進イメージの体系図を掲載