37ページ 第3章 長期的展望に立ったまちづくり 1 基本方針 「リニアがつなぐ巨大交流圏の中心で躍動する世界都市、誰もが幸せと希望を感じられる名古屋」 ここでは、指導理念である「名古屋市基本構想」及び「名古屋を取り巻く状況」等を踏まえ、本市が令和22(2040)年頃を見据えて「長期的展望に立ったまちづくり」を進める上での基本方針を示します。 この基本方針を、市民、企業、大学、NPOなど多様な主体と共有し、連携しながら、まちづくりを進めていきます。 38ページ 【人の視点】 (1)子どもどまんなか 子どもをどまんなかに据えた“人”中心の社会を実現する (2)人口減少への対応 人口減少の抑制も念頭に置きつつ、名古屋で「住む」「学ぶ」「働く」「結婚する」「子育てする」という希望をかなえられる社会を実現する (3)超高齢社会への対応 超高齢社会に対応し、世代を超えて安心・安全に暮らすことができる社会を実現する (4)多様性&包摂性 性別や年齢、障害の有無、国籍などの多様性(ダイバーシティ)を認め合い、すべての人を包摂(インクルージョン)し、幸せを実感できる社会を実現する 【都市の視点】 (5)都市の強靱(きょうじん)化 切迫度が増す南海トラフ地震をはじめとするあらゆる危機に、力強く、しなやかに対応できる強靱(きょうじん)な都市を実現する (6)絶えずイノベーションを生み出すクリエイティブな都市 リニアがつなぐ巨大交流圏の中心で、多様な人々や価値観が交流し、絶えずイノベーションを生み出すクリエイティブな都市を実現する (7)地球規模の環境問題への対応と成長の両立 当圏域の産業集積の強みを活(い)かしつつ、グリーン・トランスフォーメーションによって地球規模の環境問題への対応と成長を両立し、国の発展をけん引する (8)文化・歴史が成長と活力を生み続ける交流拠点都市 文化・歴史資源が持つ価値が好循環し、成長と活力を生み続ける交流拠点都市を実現する 【人と都市を支える視点】 (9)協働&共創 市民、企業、大学、NPOなどと協働する持続可能な都市、共創でよりよいサービスを生み出す都市を実現する 【社会全体の共通目標】 (10)SDGsの達成 SDGs未来都市として持続可能な未来社会を切りひらく 39ページから46ページ ①子どもをどまんなかに据えた“人”中心の社会を実現する まちづくりの主役は人であり、すべての施策は人を中心に据えて考えなければなりません。その中でも、今を生きている子ども、これから生まれてくる子どもをまんなかに据えることが大切です。本市は、子ども一人ひとりの権利を守って、子どもがまちづくりに主体的に参画する機会を確保するとともに、社会全体で権利の主体である子どもの健やかな育ちを支援し、好きなことの発見から実現までを応援する都市をめざします。そして、若者をはじめすべての人の生涯を通した学びを支援します。 また、新型コロナウイルス感染症を契機に、働く場所、身体を動かす場所、癒やしを得られる場所などとして身近な緑や水辺、オープンスペースの重要性が再認識されるとともに、ゆとりのある居心地の良い都市空間へのニーズは一層高まりました。本市は、人々が憩いや癒やしを得られるとともに、多様な人が多様な用途で活用でき、偶然の出会いや交流、新たな気づきをもたらす、暮らす人にも訪れる人にもオンラインでは代替できない経験を提供できる“人”中心の都市空間を形成します。 ②人口減少の抑制も念頭に置きつつ、名古屋で「住む」「学ぶ」「働く」「結婚する」「子育てする」という希望をかなえられる社会を実現する 名古屋大都市圏の人口が減少を続ける中、圏域の中枢都市である本市は、進学や就職の受け皿となって、東京圏への人口流出を防ぐダム機能を果たしてきました。そのため本市の人口は、自然減が拡大する中でも、それを上回る社会増によって支えられてきましたが、いよいよ本格的な人口減少局面を迎えようとしています。 今後、少子化・高齢化の全国的な進行に伴って、転入超過の減少と死亡数の一層の増加、出生数のさらなる減少が見込まれます。しかし、人口の減少、とりわけ生産年齢人口の減少は、子どもから高齢者、さらにはこれから生まれてくる将来世代を含めた全世代の日常生活や人生設計に深刻な影響を及ぼしかねないことから、本市はこの流れを少しでも抑制しなければなりません。 本市は進学期、就職期の若年層の転入超過が大きいにも関わらず、子育て世代は転出超過となっています。また、この数年は合計特殊出生率と希望出生率の乖離が拡大していることから、国の動きに呼応しながら、本市としてもこれまでの延長線上にない新たな対策を講じることが求められています。 そのため、個々人の多様な価値観・考え方を尊重するとの大前提のもとで、結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくるとともに、出会い・結婚、妊娠・出産、子育ての希望をかなえられる社会の実現をめざし、結果として、子育て世代の転出抑制と転入促進、出生数の増加につなげます。 また、圏域の中枢都市として、東京圏への人口流出を防ぐダム機能を果たすため、便利で快適でありながら東京圏に比して住宅価格や家賃が比較的低廉であるなどの住みやすさ、産業技術の集積による強い経済力や安定した雇用、広域的な交流ネットワークの中心という名古屋の強みを活かし、現在名古屋に住んでいる方には引き続き住んでいただき、圏域外の方には、「住む場所」として選んでいただけるよう、都市の総合的な魅力向上・発信(シティプロモーション)に取り組みます。特に、働く世代を中心に東京圏へ転出超過となっている現状を踏まえ、名古屋が若い世代にとって「働く場所」として魅力的な都市となるよう、本市の地域特性を活かした産業の活性化やイノベーションの基盤となる企業の集積、雇用の創出、多様性(ダイバーシティ)のある働きやすい職場環境の整備に取り組みます。 脚注 名古屋大都市圏:名古屋市を中心におおむね30~50キロメートルの範囲で、産業、観光、防災など分野ごとに柔軟に捉えたエリア。 希望出生率:若い世代における結婚、妊娠・出産、子育ての希望がかなうとした場合に想定される出生率。 ③超高齢社会に対応し、世代を超えて安心・安全に暮らすことができる社会を実現する 国においては、いわゆる団塊の世代が令和7(2025)年までに75歳以上となり、令和22(2040)年頃には高齢者人口(65歳以上)がピークを迎えると見込まれています。本市においても、75歳以上の人口は令和10(2028)年頃にかけて大きく増加し、高齢者人口については令和22(2040)年以降も増加を続けると推計しています。 少子化・高齢化に伴う人口構造の変化のもとでは、社会の支え手の負担の増加や経済活力の低下が懸念されます。超高齢社会を迎えた本市は、現役世代から高齢者まで誰もが将来にわたって健康で互いに支え合いながら、安心・安全に過ごすことができる地域社会をつくることで、誰もがいきいきと暮らせる都市を実現します。 ④性別や年齢、障害の有無、国籍などの多様性(ダイバーシティ)を認め合い、すべての人を包摂(インクルージョン)し、幸せを実感できる社会を実現する 性別や年齢、障害の有無、国籍などに関わらず、誰もが自分らしくいきいきと暮らしていくためには、多様性を認め合うことが必要です。また、令和8(2026)年にアジア・アジアパラ競技大会を開催するにあたっては、さまざまな国籍の方や障害のある方が開催都市である本市を訪れることとなることから、多様性を包摂するまちづくりへの期待が一層高まっています。本市は、バリアフリー・ユニバーサルデザインを推進するとともに、配慮が必要な人や生きづらさを抱える人を社会全体で応援することなどにより、多様性があり、社会的弱者を含め誰一人取り残さない包摂社会を実現します。 また、新型コロナウイルス感染症は、人とのつながりのあり方や、地域や家族などの重要性について考えるきっかけとなりました。さらに、令和3(2021)年に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)においては、人々の幸せを中心に捉えるウェルビーイングの再考が提言され、我が国においても関心が高まっています。 本市は、アジア・アジアパラ競技大会の開催も契機としながら、多様性を包摂し、誰もがより幸せを実感できる社会の実現に向けた取り組みを一層推進します。 ⑤切迫度が増す南海トラフ地震をはじめとするあらゆる危機に、力強く、しなやかに対応できる強靱な都市を実現する 南海トラフを震源とする大規模な地震の発生確率が今後30年以内で70~80%(40年以内で90%程度)と切迫度を増し、本市を含む太平洋側の人口・産業の集積地域において、甚大な被害が想定されています。また、記録的な大雨による災害が全国各地で多発する中、想定し得る最大規模の風水害への備えも求められています。老朽化が急速に進行するインフラの計画的な維持管理に加え、施設の耐震化や市民・事業者の活動支援など行政による「公助」の取り組みを進めるとともに、一人ひとりが自ら取り組む「自助」、地域や身近にいる人同士が助け合って取り組む「共助」 を一層強化することが重要です。 さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、感染症に対する懸念が高まっています。今回の経験を踏まえ、感染症に対する備えを強化することが必要です。 本市は、大規模災害や重大な感染症をはじめとしたあらゆる危機に備えるとともに、危機が発生した場合でもしなやかに力強く対応できる社会を構築します。 脚注 重大な感染症:本計画では、生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症のことをいう。 ⑥リニアがつなぐ巨大交流圏の中心で、多様な人々や価値観が交流し、絶えずイノベーションを生み出すクリエイティブな都市を実現する 本市は三大都市圏の一角である名古屋大都市圏の中枢都市として、ヒト、モノ、カネ、情報をひきつけ、交流を促すことで、成長を続けてきました。このように都市の持つ集積や交流の機能は我が国の経済をけん引してきた一方で、コロナ禍においては感染拡大の要因ともなりました。 コロナ禍を契機として、デジタル技術は一層の発展を遂げ、さまざまな活動から時間・場所・規模の制約は取り払われつつあります。しかし、現在も続く都市部への人口流入は、都市の集積のメリットが依然として大きいことを物語っています。また、コロナ禍における移動制限とそれに伴う経済の停滞は、交流の価値や交流の中心となる都市の役割を再認識させました。 今後我が国の人口減少が加速し、グローバル化の一層の進展や国際的な都市間競争の激化が見込まれる中、本市が世界中の企業や人々をひきつけ、選ばれる「世界都市」として我が国に活力をもたらし続けるためには、あらゆる分野でデジタル・トランスフォーメーション(DX)を進め、最先端テクノロジーをいち早く都市に実装するとともに、バーチャルを含む都市空間に背景の異なる人を積極的に呼び込んで多様性の高い集積を生み出し、人々の交流を促すことで、新しい価値を生み出すイノベーションを継続的に創出する基盤をつくることが求められています。そうすることで、名古屋が有する地理的・経済的・歴史的な強みを活かしながら、時代を捉えた新たな魅力を創造・発信し、名古屋の拠点性をより高めるとともに、名古屋大都市圏としての特長も発揮していきます。 そして本市は、リニア中央新幹線の全線開業を契機に東京圏、大阪圏との連携をより深め、世界最大の人口を有する巨大交流圏の中心都市として我が国全体の国際競争力強化につなげていきます。 ⑦当圏域の産業集積の強みを活かしつつ、グリーン・トランスフォーメーションによって地球規模の環境問題への対応と成長を両立し、国の発展をけん引する 気候変動をはじめとした地球規模の環境問題への対応が求められる中、世界では脱炭素化の動きが加速し、脱炭素を経済成長の制約やコストとしてではなく、成長の機会と捉える時代に突入しました。また、当圏域の強みである自動車産業が100年に一度の大変革期を迎えるなど、企業を取り巻く環境は大きく変化しようとしています。こうした中、日本のものづくり産業の中核となっている当圏域は、脱炭素化やグリーン・トランスフォーメーション(GX)を契機に産業構造を抜本的に転換し、地球規模の環境問題への対応と次なる成長を両立させなければなりません。名古屋大都市圏の中枢都市である本市は、脱炭素化へのキーテクノロジーとされる水素や再生可能エネルギーの利用、企業の業態転換を支援することで圏域の脱炭素化を促進し、圏域ひいては国の発展をけん引します。 脚注 グリーン・トランスフォーメーション:産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換すること。 ⑧文化・歴史資源が持つ価値が好循環し、成長と活力を生み続ける交流拠点都市を実現する 名古屋は、古くから連綿と続く歴史と恵まれた地理的要件を背景に、豊富な文化・歴史資源を有しています。特に江戸時代には、武家文化や町民文化が垣根を越えて広まり、「芸どころ名古屋」の気風が培われました。今もなお日常に溶け込み、多くの市民に親しまれる文化芸術は、人々の豊かな心を育む固有の価値を有するとともに、日々の創造性を刺激し、新たな価値を生み出す源となることで、現代に続く名古屋のものづくり文化の繁栄を支えてきました。 今後も市民の創造性を高め、本市にさらなる魅力と活力を持続的にもたらすためには、本質的価値に裏打ちされた文化・歴史資源をさらに磨き上げるだけでなく、観光、MICE、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業などさまざまな分野と連携し、その社会的・経済的価値の他分野への活用を推し進めることにより、それらの価値を好循環させることが不可欠です。 とりわけ観光分野においては、一層の活用が期待できることから、世界に誇れる近世城郭・名古屋城を核としながら、歴史的文化遺産や独自の文化芸術、ものづくり文化等をはじめとした名古屋ならではの個性と魅力をより一層磨き上げ、その魅力を国内外に発信することで、名古屋を拠点とした圏域全体への誘客や回遊を促し、圏域に交流と消費を呼び込みます。あわせて、本市に高い経済波及効果をもたらし、本市のブランド力向上にも資する国際会議やビジネスイベントなどを誘致することにより、観光とMICEの相乗効果による新たな交流需要を創出し、新型コロナウイルス感染症による危機的な状況からの反転攻勢・復活を確かなものとするとともに、今後、本格的な人口減少局面を迎える中でも成長と活力を生み続けます。 脚注 MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字。多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。 ⑨市民、企業、大学、NPOなどと協働する持続可能な都市、共創でよりよいサービスを生み出す都市を実現する 防災、福祉など共助の重要な担い手である町内会などの地縁組織は、少子化・高齢化の進行やライフスタイルの多様化等地域を取り巻く環境の急激な変化により、担い手不足や役員の固定化が進み、持続可能性が懸念される状況となっています。また、社会経済情勢の変化が激しく、社会課題が一層多様化・複雑化する中、行政のみで課題の解決を図ることはますます困難になっており、行政が抱える社会課題をあらかじめ提示して広くアイデアや技術、担い手を募り、対話をしながら新しい価値を創出(共創)し、イノベーションの創出や変革につなげていく(オープンイノベーション)ことが求められています。 そのため、本市は、地域活動の担い手の確保に努めるとともに、市民、企業、大学、NPOなどのさまざまな主体と協働し、長所を発揮し合いながら社会全体で公共を担います。さらに、課題の解決に向けて、さまざまな担い手の主体的な参画を促すとともに、多様性と集合知を活かして、よりよいサービスをデザインする都市を実現します。 脚注 オープンイノベーション:新技術・新製品の開発に際して、組織の枠組みを越え、広く知識・技術の結集を図ること。一例として、産官学連携プロジェクトや異業種交流プロジェクト、大企業とベンチャー企業による共同研究などが挙げられる。 ⑩SDGs未来都市として持続可能な未来社会を切りひらく 平成27(2015)年の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標(SDGs)を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。SDGsは、「誰一人取り残さない」持続可能でよりよい社会の実現をめざす世界共通の目標(17の目標)であり、地域の持続的な発展にとっても大変重要な目標です。SDGsは令和12(2030)年までの達成をめざすものですが、その重要性はその後も変わるものではありません。そのため、本市が長期的展望に立ったまちづくりを進める上では、あらゆる施策をSDGsの理念を踏まえながら推進します。また、令和元(2019)年に国からSDGs未来都市に選定された本市は、誰一人取り残さない、経済・社会・環境が調和した持続可能で強靱な都市の実現に向け、旗振り役となって市民、企業、大学、NPOなど多様な主体を巻き込みながら、社会全体で取り組みを進めていきます。 脚注 SDGs未来都市:SDGs の達成に向けた優れた取り組みを提案する都市として国が選定するものであり、本市は令和元(2019)年7月に選定を受けた。(令和5(2023)年5月現在、182都市が選定) SDGsの17の目標 ゴール1 貧困をなくそう あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる ゴール2 飢餓をゼロに 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する ゴール3 すべての人に健康と福祉を あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する ゴール4 質の高い教育をみんなに すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する ゴール5 ジェンダー平等を実現しよう ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う ゴール6 安全な水とトイレを世界中に すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する ゴール7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する ゴール8 働きがいも経済成長も 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する ゴール9 産業と技術革新の基盤をつくろう 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る ゴール10 人や国の不平等をなくそう 各国内及び各国間の不平等を是正する ゴール11 住み続けられるまちづくりを 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する ゴール12 つくる責任つかう責任 持続可能な生産消費形態を確保する ゴール13 気候変動に具体的な対策を 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる ゴール14 海の豊かさを守ろう 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する ゴール15 陸の豊かさも守ろう 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する ゴール16 平和と公正をすべての人に 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する ゴール17 パートナーシップで目標を達成しよう 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する 47ページから48ページ 基本方針のまとめ リニアがつなぐ巨大交流圏の中心で躍動する世界都市、誰もが幸せと希望を感じられる名古屋へ 本市はこれまで、強い経済力と人口増によって発展を続けてきました。しかし、本市は人口減少というこれまでに経験したことのない転換期を迎えようとしています。また、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行及び長期化・深刻化は、私たちの暮らしや働き方、価値観、地域コミュニティ、企業活動など、あらゆる分野に大きな影響を及ぼしました。そのような中でも、本市は価値観が多様化する市民一人ひとりがより幸せと希望を感じられる都市をつくり、次の世代に引き継いでいかなければなりません。 そのため、本市は、人権尊重の理念のもと、誰もが幸せと希望を感じながら暮らすことができ、現在本市で暮らしている人だけでなく、将来の世代にも愛着を持って選ばれるような、多様性と包摂性のある“人”中心の都市をめざします。 そして、本格的な人口減少局面を迎える中、個々人の多様な価値観・考え方を尊重するとの大前提のもと、結婚・子育て世代の希望をかなえることで人口減少を少しでも抑制できるよう全力で取り組みつつ、従来からの人口増加を前提としたまちづくりからの転換を図る一方で、人口が減少する中でも持続可能な成長を実現し、名古屋大都市圏の中枢都市として存在感を発揮するとともに、リニアがつなぐ巨大交流圏の中心都市として、ポストコロナ時代における日本全体の成長のエンジンとしての役割を果たします。本市は、アジア・アジアパラ競技大会の開催やリニア中央新幹線の開業を起爆剤として将来の成長につなげられるよう、ハード・ソフト両面における必要な投資を加速し、世界的な都市間競争に打ち勝っていきます。 以上のことから、「リニアがつなぐ巨大交流圏の中心で躍動する世界都市、誰もが幸せと希望を感じられる名古屋」を基本方針、そして、ポストコロナ時代の名古屋の未来を切りひらくための羅針盤として、「めざす都市像」を掲げ、その実現に向けて施策・事業を推進します。 49ページ 2 めざす都市像(2040年頃の名古屋の姿) 「基本方針」に基づき、令和22(2040)年頃を見据え、本市が実現をめざす将来のまちの姿を、5つの都市像として示します。5つの都市像は、市民、企業、大学、NPOなど名古屋に関係する多様な主体と共有する「未来の名古屋・ありたい姿」として活用するとともに、市政における施策体系の柱とします。 また、「めざす都市像」について、都市全体を俯瞰した上で「めざす都市空間」として空間的に捉えなおし、その考え方や将来の都市構造、都市空間の展開を示します。 都市像1 人権が尊重され、誰もがいきいきと暮らし、活躍できる都市 都市像2 安心して子育てができ、子どもや若者が豊かに育つ都市 都市像3 人が支え合い、災害に強く安心・安全に暮らせる都市 都市像4 快適な都市環境と自然が調和した都市 都市像5 魅力と活力にあふれ、世界から人や企業をひきつける、 開かれた都市 50ページ 都市像1 人権が尊重され、誰もがいきいきと暮らし、活躍できる都市 (1)人権が尊重され、互いにつながり支え合って暮らせる都市 一人ひとりの人権が尊重され、誰もが差別や偏見を受けることなく、自分らしく生活しています。 また、よりよい地域づくりのため、市民が地域でつながり支え合うとともに、多様なコミュニティを形成し、それぞれの力を発揮し活動しています。 (2)高齢者や障害者をはじめ誰もが不安なく、自立して生活できる都市 経済状況や家庭環境などに関わらず、誰もが適切な医療・サービスを受けられるとともに、誰一人取り残されず、地域社会の中で互いに支え合い、人と人とのつながりを感じながら心身ともに健やかに安定した生活を送っています。 また、介護を必要とする高齢者や障害者など支援を必要とする人々が、住み慣れた地域で適切なサービスを受けながら、安心して自分らしく暮らしています。 (3)多様な人々が自分らしく活躍し、生きがいを持って生活できる都市 市民一人ひとりが健康づくりに取り組むことで健康寿命を延ばすとともに、高齢者が意欲や能力に応じて、豊富な技能・経験を仕事や地域活動に活かしています。 また、性別や年齢、障害の有無、国籍などに関わらず誰もがその能力を十分に発揮して社会の中で活躍し安心・安全に暮らしているとともに、すべての人が利用しやすいバリアフリー・ユニバーサルデザインの環境が整っています。 そして、誰もが意欲を持って働き、ワーク・ライフ・バランスを実現しているとともに、生涯にわたる学習や趣味などの活動、仲間づくりを通じて、生きる喜びを感じながら生活しています。 51ページ 都市像2 安心して子育てができ、子どもや若者が豊かに育つ都市 (1)安心して子どもを生み、育てることができる都市 地域や企業など社会全体で子育て家庭を支援しているとともに、働きながら子育てできる環境が整っています。さらには、個々人の多様な価値観・考え方を尊重するとの大前提のもと、出会いや結婚に対する希望がかない、妊娠や出産、子育てに悩みや不安を抱える市民を支える仕組みが充実していることで、希望する誰もが安心して子どもを生み、育てることができています。 (2)子どもの権利が守られ、健やかに成長できる笑顔あふれる都市 子どもが人とのふれあいや交流、遊びやスポーツ、社会活動などを通してさまざまな体験をしながら、一人ひとりの発達段階に応じた社会性、豊かな人間性や創造性を身につけています。 また、虐待やいじめがなく、子どもの笑顔があふれているとともに、子どもの意見が尊重され、主体的に社会に参加することができます。 そして、生まれ育った環境や障害の有無などに関わらず、すべての子どもが未来への夢を抱いて学び、健やかに成長しています。 (3)若者が明るい未来を思い描き、いきいきと活躍できる都市 若者が明るい未来を思い描きながら、社会的に自立した個人として豊かに成長するとともに、地域や企業、大学など多様な主体との協働のもと、それぞれの個性を活かしていきいきと活躍しています。 52ページ 都市像3 人が支え合い、災害に強く安心・安全に暮らせる都市 (1)地震や豪雨などの災害に強い都市 災害に強い都市基盤とともに、火災や救助・救急要請に対応するための消防力など、災害から市民を守る体制が整っています。 また、市民一人ひとりや企業などが日頃から防災・減災を意識し高い自助力を備えているとともに、地域を主体とした防災コミュニティなど防災の担い手が育ち、地域の助け合いが充実しています。 (2)火災や犯罪、交通事故が起こりにくい都市 地域の人が支え合い、一体となって安心・安全の確保に取り組んでいるとともに、道路など公共空間の安全対策が充実していることで、火災や犯罪、交通事故が未然に防止されています。 (3)安心・安全な市民生活が守られている都市 感染症から市民の安全が守られているなど、衛生的な環境が確保されているとともに、保健医療体制の確保など、新興・再興感染症といった新たな脅威にも対応できる体制が整っています。さらには、水道水の安定供給や食の安全・安心が確保されているなど、市民の安心・安全な生活が守られています。 53ページ 都市像4 快適な都市環境と自然が調和した都市 (1)快適な都市環境の中で暮らせる都市 道路、河川、公園などの都市基盤や安全・安心かつ便利な交通手段が充実しています。また、居心地が良く歩きたくなるウォーカブルなまちがつくられています。 そして、空気や水が良好に保たれた、衛生的で暮らしやすい生活環境や安心でゆとりある居住環境が確保されています。 (2)自然が身近に感じられる潤いのある都市 健全な水循環が確保され、自然が本来持つ水や気温を調節する機能が回復しています。また、身近に感じ、ふれあうことができる緑があり、緑に包まれた快適な暮らしとともに、多様な生物と生態系に支えられた豊かな暮らしが営まれているなど、人と自然が共生しています。 (3)脱炭素社会と循環型社会の実現に向けた環境にやさしい都市 環境に配慮したライフスタイル・ビジネススタイルの定着により、脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー化などが進み快適な生活が営まれているとともに、水素エネルギーの利活用をはじめとした最新技術の活用に向けた取り組みが進められています。また、ごみの発生抑制や無駄のない資源の利活用が進み、環境への負荷が最小限に抑えられています。 脚注 脱炭素社会:人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれた社会。 54ページ 都市像5 魅力と活力にあふれ、世界から人や企業をひきつける、開かれた都市 (1)地域の個性と魅力が磨き上げられ、活力にあふれる都市 良好かつ地域の特色を活かした都市景観や港・水辺、地域に根ざした歴史・文化・芸術などをはじめとした地域の個性や魅力が磨き上げられているとともに、アジア・アジアパラ競技大会の開催を契機として、「する」「みる」「ささえる」ことを通じたスポーツ文化が醸成され、幅広くまちづくりに活かされるとともにその魅力が広く発信されています。 (2)世界から人や企業をひきつける、開かれた都市 圏域の高い国際競争力につながる都心機能・交流機能を有し、国際的に開かれた都市としてさらに発展しており、国内のみならず世界中から目的地として人々が訪れています。 また、良好な都市のイメージや魅力が広く発信されているとともに、仕事や観光で訪れる旅行者に対するおもてなしが充実しています。そして、国内外との産業交流が活発に行われるとともに、国際会議、展示会、芸術祭などが数多く開催されています。 (3)地域の産業が活性化し、高い産業競争力を有する都市 圏域の強みであるものづくり産業や大都市ならではの商業・サービス業など、多様な産業が育ち発展しています。また、先端技術が産業や社会生活に普及しており、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、グリーン・トランスフォーメーション(GX)が進んでいます。 そして、企業と大学・研究機関や金融機関など、多様な主体が従来の産業や地域の枠を超えて交流・連携し、それぞれが得意とする技術やアイデアなどの経営資源を結びつけることで、絶え間ないイノベーションを創出し、高い産業競争力を有しています。 55ページから58ページ めざす都市空間 (1)都市空間の考え方 ①リニアがつなぐ巨大交流圏の中心都市として 本市の強みを発揮しながら、新しい技術やアイデアが実装されたスマートで、かつ防災・減災力を備えた強靱な都市の実現をめざす リニア中央新幹線は、東京・名古屋・大阪の三大都市圏を約1時間で結び、7,000 万人規模の世界最大の人口を有する巨大交流圏を形成します。これにより、東京・大阪それぞれに人口、経済活動が吸い取られるストロー現象に陥る懸念がある一方、交流機会の増加に伴う新たなイノベーションの創出、時間と場所からの解放による働き方や暮らし方の多様化、海外からの人や投資の呼び込み、交通ネットワークの多重性・代替性強化や東京に集中する人口及び企業の中枢機能等の分散による災害リスク低減などの効果が期待されています。 また、令和5(2023)年7月に閣議決定された第三次国土形成計画(全国計画)においても、東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏は、それぞれの特徴を活(い)かした産業の集積により、我が国の経済成長をけん引するとともに、リニア駅を交通結節の核とする新幹線・高規格道路ネットワークの形成により、世界に類を見ない魅力的な経済集積圏域が形成されることとなるとされています。 その中では、国土・地域が直面する諸課題に対応していく上で共通する国土づくりの戦略的視点として、「民の力を最大限発揮する官民連携」、「デジタルの徹底活用」、「生活者・利用者の利便の最適化」、「縦割りの打破(分野の垣根を越える横串の発想)」が掲げられました。 リニアがつなぐ巨大交流圏の中心都市となる本市は、このような考え方を踏まえ、国や関係自治体、企業、大学、NPOなどと連携を図りながら、リニア中央新幹線の開業に伴うインパクトを本市及び名古屋大都市圏が成長を続けるための絶好の機会としていかなければなりません。 そのため、広域交通の中心という地理的優位性や、商業・サービス業の集積、ものづくり産業を中核とする名古屋大都市圏の中枢機能を有するなどの本市の強みを引き続き最大限発揮することが必要です。また、継続的にイノベーションを生み出すため、都市全体を最先端モビリティをはじめとした最先端テクノロジー実装に向けた実証実験のフィールドとし、新しい技術やアイデアの社会実装を推進することで、人々の生活の利便性や快適性を向上させる「スマート」な都市へと進化させていく必要があります。さらに、ものづくり産業の脱炭素化に向けた産業構造の変革を促進し、引き続き日本をリードしていくことが求められます。加えて、防災・減災力を備えた強靱な名古屋大都市圏を形成することにより、圏域全体の産業競争力の向上を図るとともに、非常時には東京に集中している中枢管理機能のバックアップを担うことで、我が国全体の強靱化にも寄与することが期待されています。 以上のことを踏まえ、リニアがつなぐ巨大交流圏の中心都市として、スマートで強靱な都市の実現をめざします。 ②“人”中心の基礎自治体として 多様な都市機能が適切に配置・連携された集約連携型都市構造の実現をめざすとともに、多様な人々の交流を促すウォーカブルなまちづくりを進める 今後、本市の人口減少が本格化し、少子化・高齢化のさらなる進行や社会の多様化が見込まれる中、高齢者や子連れの方、障害者、外国人などを包摂し、誰もが安心して便利に移動し活動することができるよう、バリアフリー・ユニバーサルデザインを一層推進するとともに、多様な人々に多様な活躍の場を提供し、魅力的な交流を促進する“人”中心のまちづくりを進め、都市の活力の維持向上を図る必要があります。 さらに、全国で大規模な自然災害が相次いでおり、南海トラフ地震や想定し得る最大規模の風水害への対応も求められる中、引き続き河川や橋りょう、上下水道施設などの都市基盤の整備を進めていくとともに、命を守るための住民避難対策などのソフト施策を組み合わせながら、安心して暮らせる生活圏を形成しなければなりません。 あわせて、気候変動や生物多様性の損失など、地球規模の環境問題への対応が求められる中、都市活動がもたらす環境負荷を省エネルギー対策やグリーンインフラの取り組みなどにより抑制していくことが必要であり、これらの取り組みにより、自然と調和した都市を形成していきます。また、これまでのまちづくりで形成されてきた道路・公園などの都市基盤や都市施設等については、都市の持続的な経営の観点から、着実な維持・更新を推進しながら、そのポテンシャルを活かして価値を向上させ、新たなにぎわい・魅力の創出につなげていくことが求められます。 そのため、バリアフリー・ユニバーサルデザインをはじめ、上記の考え方を前提にしつつ、駅を中心とした歩いて暮らせる圏域に、商業、業務、住宅、サービスなどの多様な都市機能が適切に配置・連携され、さらに、交通、防災、環境、歴史・文化等に配慮された、魅力的で安全な空間づくりがなされている集約連携型都市構造の実現をめざします。また、官民連携の取り組みにより、官民のパブリック空間などの既存ストックを新たな魅力や価値を生み出す地域資源として活用し、回遊性やにぎわいを面的に広げることで、多様な人々の交流を促す居心地が良く歩きたくなるウォーカブルなまちづくりを進めていきます。 脚注 グリーンインフラ:自然環境が有する多様な機能(生きものの生息・生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制など)を積極的に活用して、さまざまな効果を得ようとする取り組み。 ③日本全体の成長をけん引する都市へ このような都市空間の構築に向け、目前に迫ったアジア・アジアパラ競技大会の開催をマイルストーンとし、さらにはリニア中央新幹線の開業や中部国際空港第二滑走路の整備を視野に入れて、行政として積極的な投資を行うとともに、民間投資や多様な人材の活躍、業務中枢機能(本社等)の集積を促します。そうすることで、誰もが幸せと希望を感じられる豊かな社会と本市や名古屋大都市圏の持続可能な成長を実現し、ひいてはダイバーシティ都市・名古屋として、日本全体の成長をけん引していきます。 59ページ (2)将来の都市構造 「都市空間の考え方」を踏まえた将来都市構造図を示します。 都心ゾーンにおいては、名古屋駅地区と栄地区が連携した「横軸のまちづくり」を進めていくとともに、名古屋の歴史・文化や水辺空間などの地域資源に根ざした、名城・三の丸地区、金山地区、熱田地区、名古屋港・きんじょうふとう地区などの拠点を結ぶ「縦軸のまちづくり」にも注力することにより、拠点間の連携を強化し、広域的な連携と高次な都市機能の集積をさらに図ります。 また、市内各地のさまざまなつながりを通じて、都市の魅力やにぎわいを、都心から広げていきます。 60ページから62ページ (3)都市空間の展開 「都市空間の考え方」と「将来の都市構造」を踏まえ、令和22(2040)年頃における都市像の実現に向けた都市空間の展開について、今後持つべき視点等を整理して示します。 まちづくりを進めるにあたっては、ハードとソフトの融合が必要であり、市民や企業、大学、NPOなど多様な主体が分野の垣根を越えて連携していき、イノベーションを促進させる「“人”がつなぐ共創の輪」を形成していくことが重要です。 そのため、今後、都市空間の展開にあたり、多様な主体が共有すべき視点について、リニアがつなぐ巨大交流圏の中心都市として成長をけん引するための都市活力の側面と、それを支える都市基盤の側面から整理しました。そして、両側面に共通するキーワードとして、市域全体を実証実験フィールドとし、新しい技術やアイデアの社会実装を推進することで人々の生活の利便性や快適性を向上させる「スマート」と、官民のパブリック空間をはじめとした既存ストックの再構築や利活用により、人々が集い、憩い、多様な活動を繰り広げられる場へとしていく「ウォーカブル」を掲げました。 これらの視点を持って都市空間を形成することで、創造性や持続可能性、エンターテインメント性、包摂性、利便性、安全性、快適性などを生み出す“人”中心のまちづくりを推進し、住みやすい都市、働きやすい都市、訪れたくなる都市、投資したくなる都市とすることで、住んでいる人が誇りに思う、すべての分野において高水準で調和のとれた都市としての都市ブランドを形成し、向上させていきます。 今後、この都市空間の展開を念頭においてまちづくりを進めるとともに、民間投資を誘導していきます。 63ページから64ページ 都市空間の展開にあたっての視点 成長をけん引する都市活力 (1)名古屋駅地区、栄地区を中心とした世界に誇れる都心部のまちづくり (2)新たな路面公共交通システム(SRT)を軸とした都心部の回遊性向上・にぎわいの拡大 (3)金山地区における、都心ゾーンの第3の拠点にふさわしい都市機能の集積と広域的な連携の強化 (4)名城・三の丸地区、熱田地区を中心とした歴史遺産等を活用した名古屋独自の魅力づくり(歴史・文化魅力軸の形成) (5)まちづくりと産業発展を支えてきた場所の観光・にぎわい資源としての活用(まちづくり・ものづくり魅力軸の形成) (6)名古屋三川(堀川・新堀川・中川運河)の再生・活用による魅力ある水辺空間の形成(水辺連携軸の形成) (7)緑が持つ多面的な効果を最大限に活用した新たな都市魅力の創出 (8)名古屋が誇る文化芸術・観光資源の情報発信と新たな交流の創出 (9)名古屋を広域観光のハブとした圏域全体への誘客や回遊の促進 (10)各地区におけるエリアマネジメントの推進による地域の活性化 (11)アジア・アジアパラ競技大会関連施設の整備と大会後の活用 (12)スポーツを通じた交流の拡大、都市ブランド向上による都市の活性化 (13)スタートアップ・エコシステムの構築や企業等の集積促進によるイノベーションの創出・波及 (14)多様な人材が集い交流する国際観光MICE都市の実現 脚注 SRT:Smart Roadway Transitの略。技術の先進性による快適な乗り心地やスムーズな乗降、洗練されたデザインなどのスマート(Smart)さを備え、路面(Roadway)を走ることでまちの回遊性やにぎわいを生み出す、今までにない新しい移動手段(Transit)の呼称。 65ページから66ページ 視点を踏まえたプロジェクト(都市活力) 都市空間の展開にあたっての視点を踏まえ、本計画を契機に加速させるプロジェクトを掲載します。 1 金山駅周辺まちづくり 金山地区は、多方面から来訪者が訪れる交通結節点となっています。そのポテンシャルを活かし、「人・文化・芸術とともに育つまち」をコンセプトとし、劇場(市民会館)のリニューアル、ウォーカブルなまちの形成、商業やオフィス機能の集積などを進め、名古屋駅地区、栄地区に続く第3の拠点をつくります。 2 名城エリアの歴史観光・文化・スポーツ拠点化 名古屋城と名城公園を抱える名城エリアは、今後複数の大型事業が予定されており、来往者の大幅な増加が見込まれるエリアです。名古屋第一級の歴史観光・文化・スポーツの拠点にするため、各施策が連携し一体的に事業を進めていきます。 3 三の丸地区まちづくり 官庁街である名古屋城三の丸地区は、名古屋城と都心部をつなぐ重要なエリアです。恵まれた立地条件や地域資源を活かし、機運醸成を図りながら、多様な主体が連携し、行政機能と新たな機能が両立した魅力的で強靱なまちづくりを戦略的に進めていきます。 4 熱田神宮周辺まちづくり 熱田地区は年間700万人が来訪する熱田神宮をはじめ、豊富な観光資源を有しています。周辺再開発、地域資源、活動団体等と連携しながら、地域全体での魅力向上を図ることで、世界の目的地となる「あつた」をめざしたまちづくりを進めます。 5 名古屋三川の再生・活用 名古屋三川(堀川・新堀川・中川運河)は、都市の中の貴重な水辺空間です。水質浄化や沿川資源を活用したイベントの実施等により水辺空間の再生・にぎわいづくりを推進するとともに、水上交通の活性化や環境整備を実施し、魅力あふれる水辺をめざします。 6 広域観光の推進 インバウンドを含む観光誘客に向け、旧尾張藩などの広域連携を進めるとともに、中部圏の玄関口である名古屋駅を中心に観光案内機能等の強化を進めることで、広域観光ハブ機能の強化を含めた観光交流拠点化を図り、圏域一帯での広域観光を推進します。 67ページから68ページ 都市活力を支える都市基盤 (1)デジタル・トランスフォーメーション(DX) ①デジタルの活用による都市や地域の機能やサービスの効率化・高度化 ②市域全体の実証実験フィールド化によるデジタルなどの新しい技術やアイデアの社会実装 ③産学官におけるデジタル人材の育成 (2)モビリティ ①既存ストックと先進技術の活用による誰もが快適に移動できる最先端モビリティ都市の実現 ②空港・港湾の機能強化による国際交流の促進 ③名古屋圏道路ネットワークの強化によるアクセス性の向上 (3)カーボンニュートラル ①脱炭素先行地域から広がる脱炭素型まちづくり ②カーボンニュートラルポート(水素等の受入環境等)の形成を通した脱炭素の圏域への波及 ③グリーンインフラの取り組みによる自然環境と調和した快適な都市空間の形成 (4)安全・安心 ①アジア・アジアパラ競技大会の開催を契機としたバリアフリー・ユニバーサルデザインの一層の推進 ②ハード・ソフトを組み合わせた想定最大規模の災害対策の推進 ③さまざまな医療機関や介護事業者などの連携による適切な医療・介護提供体制の強化 脚注 脱炭素先行地域:2050年の脱炭素社会の実現に向け、2030年度までに民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出を実質ゼロにするとともに、地域の課題を解決し、地域の魅力と住民の暮らしの質を向上させる地域創生に取り組む地域。 カーボンニュートラルポート:産業や港湾の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、脱炭素化に配慮した機能の高度化や水素等の受入環境の整備等を図る港湾。 69ページから70ページ 視点を踏まえたプロジェクト(都市基盤) 都市空間の展開にあたっての視点を踏まえ、本計画を契機に加速させるプロジェクトを掲載します。 1 世界の実証実験都市なごやの構築 「世界の実証実験都市なごや」をめざし、まちなかの至る所で社会実証が行われる環境を構築するほか、イノベーション拠点を核とした共創促進などにより、スタートアップやイノベーター等に開かれたまちを実現し、新たな価値の創出や新しいサービス・技術の実装につなげていきます。 2 最先端モビリティ都市の実現 本市はガイドウェイバスをはじめ、モビリティに関する先進的な取り組みを進めてきました。今後も、先進技術を積極的に活用し、新たな移動手段・仕組みの導入、交通需要の最適化、自動運転技術の実装に向けた取り組みなどを推進し、誰もが快適に移動できる都市の実現を図ります。 3 水素の社会実装に向けた取り組み 脱炭素社会実現に向け、水素エネルギーに大きな期待が寄せられています。脱炭素型まちづくりをはじめ、水素モビリティ導入や普及啓発、水素サプライチェーン構築の推進、名古屋港におけるカーボンニュートラルポート形成促進など、水素の社会実装に向けた取り組みを進めます。 4 グリーンインフラまちづくりの推進 自然環境の持つ多様な機能を、生物多様性保全や気候変動対策、防災、にぎわい創出等のさまざまな課題解決に活用する「グリーンインフラ」の考え方が注目されています。生物多様性緑化や雨庭等をまちづくりに導入することで、グリーンインフラの実装を加速化します。 5 想定最大規模の災害対策の実施 想定最大規模の地震や風水害に対応するためには、ハード対策だけでなく、ソフト対策をより一層進める必要があります。昨今、激甚化・頻発化している風水害に対しては、新たに対応方針を定め、避難対策の強化などを進めることで、地震にも風水害にも強い減災都市名古屋をめざします。 6 バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進 年齢や障害の有無、国籍、性別などに関わらず、すべての人にやさしい環境整備を行うことが重要です。アジア・アジアパラ競技大会に伴う瑞穂公園陸上競技場地区の整備等を契機としながら、全市においてバリアフリー・ユニバーサルデザインをソフト・ハードの両面からより一層推進します。 脚注 雨庭:地上に降った雨水を下水道に直接放流することなく一時的に貯留し、ゆっくりと地中に浸透させる構造を持った植栽空間。 71ページから72ページ 本市人口の将来展望 平成26(2014)年に制定されたまち・ひと・しごと創生法を受けて、地方公共団体は人口の将来展望を提示することとされています。 ここでは、個人の多様な価値観・考え方の尊重を前提に、出生率が向上し、東京圏への転出超過が解消された場合の本市の将来人口シミュレーションを行います。 本市が実施したアンケート結果から、市内の既婚者(40%)の「夫婦の予定子ども数」は1.80人、また市内の未婚者(60%)のうち「結婚を希望する割合」は71%であり、「理想の子ども数」は2.15人との数値が得られました。これらに基づき、国と同様の方法により算出した本市の希望出生率は1.6程度でした。 国においては、令和元(2019)年12月にまち・ひと・しごと創生長期ビジョンを改訂し、令和12(2030)年までに国民希望出生率が達成され、その後、出生が人口置換水準と同程度の値である2.07まで向上した場合、令和42(2060)年に総人口1億人程度が確保されると見込んでいます。 結婚や出産はあくまでも個人の自由な決定に基づくものであり、個人の意思を尊重していくものですが、ここでは令和22(2040)年に、本市の希望出生率である1.6が達成された場合の本市の人口展望を示します。 シミュレーション条件 ケース① 出生率・社会移動が現状程度で推移する場合 出生率 現状程度で推移すると仮定 純移動率 平成26(2014)年から令和5(2023)年の平均移動率を採用 ケース② 若い世代の希望が実現し、東京圏への転出超過が解消される場合 出生率 令和22(2040)年には本市における希望出生率1.6まで向上すると仮定 純移動率 平成26(2014)年から令和5(2023)年の平均移動率を採用、ただし令和22(2040)年にかけて東京圏への転出超過が解消されると仮定 出生率・社会移動が現状程度で推移すると仮定したケース①では、令和47(2065)年には210万人程度になると推計されますが、若い世代の希望が実現し、東京圏への転出超過が解消されるケース②では、243万人程度になると推計されます。 ※人口の将来展望のグラフを掲載 高齢化率は、ケース①では、令和47(2065)年頃に34%程度となり、高止まりします。一方、ケース②では、30%程度に抑制されます。 ※高齢化率の将来見通しのグラフを掲載 脚注 東京圏への転出超過:現在、本市から東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)に毎年4,000~6,000人程度の転出超過となっている。 人口置換水準:人口が将来にわたって増減せず、親の世代と同数で置き換わるための大きさを表す指標。 高齢化率:65歳以上人口の総人口に占める割合。ここでは本市の高齢化率を指す。