第20回アジア競技大会選手村後利用基本構想 概要版 令和2(2020)年3月  愛知県・名古屋市 p1 1 基本構想策定の趣旨  令和4(2022)年に弥富市に移転予定の名古屋競馬場(名古屋市港区泰明町1-1)の敷地を、令和8(2026)年に開催する第20回アジア競技大会のメイン選手村として利用することが予定されています。  メイン選手村の検討に際しては、大会時の選手村を計画するだけでなく、大会後もレガシー(遺産)として有効活用されるよう、大会を契機としたまちづくりも合わせて進めることが重要です。このような背景を踏まえ、将来のまちづくりの方向性を示すために、愛知県及び名古屋市が本構想を策定するものです。 ※選手村の計画・整備は、大会の準備・運営の実施主体である、一般財団法人愛知・名古屋アジア競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)が実施   SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS  SDGsでは、世界共通の目標として、健康や教育、経済成長、気候変動に関するものなど、多岐に渡る17の持続可能な開発目標と、169のターゲットが設定されており、いずれも令和12(2030)年までの達成を目指すものです。SDGsは国際社会全体の普遍的な目標であり、地域の持続的な発展にとっても大変重要な目標です。 2 現状と課題の整理  現状と課題及び後利用事業の前提条件を踏まえると、つぎのような機能の導入が、後利用のまちに求められていると考えます。    現状と課題 1.少子化・高齢化に伴う人口構造の変化 2.価値観・ライフスタイルの多様化 3.自然災害に対する懸念 4.環境の持続可能性に対する懸念 5.リニア中央新幹線の開業に伴う変化 6.交流人口の増加 7.産業を取り巻く環境の変化 後利用事業の前提条件 ●アジア競技大会前、大会時、大会後のステップを意識したまちづくりの検討 ●都市基盤等の整備を県市が主導し、地域イメージの転換を図る民間開発を誘導 ●愛知県競馬組合による場外馬券売場を計画予定地に設置 → 後利用のまちに求められる方向性 「健康・安心」  ●高齢者が安心して暮らせること ●子育てしやすいこと 「国際交流・共生」  ●世帯や年代、性別、障害の有無などの違いを互いに理解し認め合うこと ●外国人と日本人が共生できること 「環境」 ●様々な災害への備えがあり、安心・安全に暮らせること ●環境負荷が小さく、自然環境の機能の活用により持続可能なこと 「賑わい・魅力」  ●リニア開業による地域の強みを活かすこと ●人々の交流が活発となり、魅力的であること 「先端技術・イノベーション」  ●AIなどの先端技術の導入などにより、新たな価値が創出されること p2 3 開発コンセプト ●前章で整理した後利用事業の前提条件、及び現状と課題から求められるまちの方向性を踏まえ、開発のコンセプトと目指すべきまちの姿(5つの夢(ACTIVE、ASIA、GREEN、FUN、FUTURE))を示します。これらは、今後の社会経済情勢や民間開発の展開に対する柔軟性を持ちながら、引き継がれていくものとします。 ●目指すべきまちの姿は、開発コンセプトが実現できるような5つの夢を設定しました。これらの夢を実現するまちづくりを目指します。 ●開発コンセプトは、5つの夢を構成する要素をキーワードに用い、健康・安心、防災・減災、環境などの観点から「安心」、元気、国際交流・共生、賑わい・魅力などの観点から「交流」、新しい技術やエコな暮らしが実現されることや、5つの夢が実現することで次の世代につながるという観点から「次世代」という言葉で表現していま す。  「開発コンセプト」  安心と交流を生み出す次世代拠点  〜新しいライフスタイルがはじまる、スマートビレッジ〜 目指すべきまちの姿(5つの夢) GO ACTIVE スポーツにより健康に暮らし、元気になるまち ●子どもから高齢者まで、誰もが楽しみながら身体活動や運動に親しみ健康に暮らせるまち ●快適な環境のもと、スポーツやアウトドア活動が楽しめるまち ●スポーツ大会やトップアスリートとの交流を通じ活力に満ちたまち GO ASIA 多様な人々が国内外から集い、グローバルに成長できるまち ●年齢、性別、障害の有無、国籍などを超えた交流により、多様性への理解が進む、開かれたまち ●将来を担う国内外の若者たちが学び、世界で活躍する人材が育ち・集うまち ●アジアをはじめとする文化が体験でき、愛知・名古屋の文化を発信するまち GO GREEN 憩いやつどいの場があり、安全・安心でエコな暮らしが実現するまち ●緑豊かな公園や広場などの憩いの場があり、潤いのある生活が実現できるまち ●地震や風水害などの災害に強く安心して暮らせるまち ●再生可能エネルギーなどが導入され、低炭素で循環型の環境に配慮されたまち GO FUN にぎわいがうまれ都市の魅力が高まり、国内外に誇れる楽しいまち ●最先端のライブエンターテイメントが体験できるまち ●集う楽しみが体験できる、地域イベントに参画できるまち ●個々の趣味とつながる様々なコミュニティが集まるまち GO FUTURE 未来を身近に感じ、イノベーションが創出されるまち ●先端技術が導入され、誰もが暮らしやすいまち(スマートシティ) ●多様な主体が従来の産業や地域の枠を超えて交流・連携し、イノベーションが創出されるまち ●愛知・名古屋のものづくり技術を世界へ発信するまち p3 4 土地利用の考え方  開発コンセプトを実現する機能や施設を誘導する上では、約20haという広大な競馬場跡地に立地する様々な機能や施設が有機的に結びついた一体的なまちづくりが求められます。  導入機能や施設の配置にあたり、以下のような土地利用に共通する基本的な考えを想定します。 ●パブリックスペースの創出・活用 ●計画的な土地利用 ●交通動線の考え方 1.導入機能 (1)誘導する機能・施設のイメージ  開発コンセプトとして設定した5つの目指すべきまちを具体化するために、計画予定地への誘導や整備を想定する機能として、「賑わい」「学び」「憩い」「住まい」の4つを設定し、それぞれの機能には、次のような施設の導入を期待します。 ●賑わい機能として、特に「GO ACTIVE」「GO FUN」を実現するため、商業施設、体育館・アリーナ、場外馬券売場などを導入し、地域の賑わいを創出します。 ●学び機能では、特に「GO ASIA」「GO FUTURE」を実現するため、学校施設、留学生宿舎、研修・合宿施設などを導入し、多様な人々が国内外から集い、イノベーションが起こるような環境を創出します。 ●憩い機能では、特に「GO ACTIVE」「GO GREEN」「GO FUN」を実現するため、公園、広場・緑地、ジョギング・ウォーキングコースなどを導入し、健康づくりや憩いの場となる緑豊かな環境創出します。 ●住まい機能では、特に「GO GREEN」「GO FUTURE」を実現するため、先端技術が導入された住宅を導入し、未来を身近に感じ、エコな暮らしが実現する良好な住環境を創出します。 p4 (2)骨格的な道路の配置とネットワーク整備  計画予定地への民間開発の誘導、及び開発に伴い発生する交通を処理するために東海通と環状線に接続する骨格的な道路を配置します。  また、計画予定地の東西を結ぶ、緑や歩行空間のネットワークを配置します。 (3)憩いの空間や防災機能の導入  計画予定地の中心には公園を配置するなど、憩いの空間及び災害時の防災機能を兼ね備えたオープンスペースを効果的に配置します。 (4)雨水貯留施設の設置  豪雨時の周辺の浸水被害状況を踏まえて、地域の状況に応じた雨水貯留施設を設置します。具体的には、既存公共下水施設の配置や処理能力を考慮し、計画予定地内に設置する公共空間の下に施設を配置します。 2.施設の配置イメージ 「安心と交流を生み出す次世代拠点」の実現にむけて、導入を期待する機能のゾーニング案を以下の通り想定します。また、ゾーニングの設定にあたっては、計画予定地周辺の既成市街地との親和性も考慮します。 ※ イメージ図は省略 p5 3 街のイメージ (1)賑わいゾーン  GO ACTIVE・ GO FUN  子どもから高齢者まで幅広い世代の方が買い物や食事を楽しむ空間が生まれ、雇用創出や来街者の増加による賑わいの創出が期待されます。  また、気軽にスポーツができる公園と一体となったイベントスペースや体育館といった機能の導入や、これらの施設を活用した賑わいを創出するエンターテイメントの誘致なども考えられます。  これらにより、子どもから高齢者、障害がある人も誰もがスポーツを楽しみ交流できるようになるほか、最先端のスポーツを体感できるような活気あるまちとなることが期待されます。 (2)学びゾーン  GO ASIA・GO FUTURE  海外の有能な人材を獲得・育成するため、大学等と連携し、留学生宿舎を整備することが考えられます。さらに、グローバル社員教育を重視する企業と連携し、若手社員の社宅とすることも考えられます。  このほか、研修・宿泊施設が整備されることで、宿泊を伴う様々な研修や体験イベントの実施、スポーツ合宿での利用が考えられるほか、地域住民や留学生、社宅に暮らす方々の交流や生涯学習の場としての活用などが考えられます。  また、私立の学校施設等が整備され、計画予定地内の関連施設と連携して独自性のある教育環境が整うことで、未来を担う人材が育成されることが期待されます。例えば、学生が企画したイベントが公園や商業施設等で開催されるなどの利用も考えられます。 p6 (3)憩いゾーン  GO ACTIVE・GO GREEN・GO FUN  来訪者や住む人の憩いの場となる公園や広場などの整備により、にぎわいと新たな地域ブランドの創出に向けた活用や、緑が本来持つさまざまな機能(ヒートアイランド現象の緩和など)が期待されます。  また、隣接する土古公園も含めたジョギングコースなどの設置や、バーベキューやデイキャンプ、アスレチック等ができる場として整備・運営することも考えられます。 さらに、整備される公園や広場を、災害時の避難場所等としても活用できるようにするほか、消防団や住民等が連携し、防災に関するイベントなどが定期的に開催される場となることも考えられます。 (4)住まいゾーン  GO GRREEN・GO FUTURE  最先端の環境技術や情報技術が導入された質の高い住宅(スマートハウス)が導入されることで、誰もが安心していきいきと過ごし、多世代が交流する、良質な住環境の形成が期待されます。  またその結果、新しいライフスタイルの実現や、エネルギー効率が高く環境に配慮した暮らしが実現することで、関係するSDGsの目標の達成に貢献することも期待されます。 p7 5 事業化に向けて  本構想を実現していくためには、官民が連携して様々な取組を進めること、選手村整備事業と連携すること、さらに周辺のまちづくりと連携していくことが求められます。 1.官民連携による開発の推進 (1)都市計画制度の活用  民間のノウハウを活かし、基本構想で描く機能の誘致を進めるためには、用途や形態など現行の規制の見直しが必要となる場合があります。例えば、地区の課題や特徴を踏まえ、官民が連携しながら、地区の目指すべき将来像を設定し、地区計画制度の活用など、その実現に向けて取り組んでいくことも考えられます。 (2)都市基盤整備との連携  県市による都市基盤整備と民間開発の間で、各事業の計画・設計から工事・供用段階まで、協議・調整を行い、一体的なまちづくりを進めます。 (3)エリアマネジメントの推進  エリアマネジメント推進組織の設置やパークマネジメントにより、開発コンセプトに基づいたまちづくりが継続的に行われ、地域のブランド価値を高めていくことが期待されます。  エリアマネジメント推進組織の設置  民間事業者・地権者、地域住民、NPO等の様々な主体で構成されるエリアマネジメント推進組織が設置、運営され、地域の価値を高めるための活動の取組を想定します。  エリアマネジメント推進組織によるソフト的な取組例として、次のような活動(グリーン保全活動、賑わい創出活動)が想定されます。  ※ イメージ図・写真は省略 p8 2.選手村整備事業との連携 (1)選手村に必要となる施設 メイン選手村に必要な主な機能として、以下の内容を想定しています。  ●選手・チーム役員約1万人を収容できる宿泊機能  ●その他、選手の滞在を支援する施設、選手や物資の輸送に関する施設など今後、組織委員会において、選手村に必要となる機能を整理します。 (2)選手村整備のイメージ  後利用施設について、選手村施設としてそのまま活用する、部分的に活用する、選手村施設として活用せずに大会後に整備するという3種類の施設が考えられます。  例えば、選手村施設として活用できる、集合住宅(分譲、賃貸)、商業施設、学校施設などを、組織委員会が民間事業者から借りることなどが考えられます。  また、大会時に使用された仮設建築物を大会後に再利用することも考えられます。 (1)後利用計画 ●事業者:後利用施設を計画 (2)選手村計画  選手村−仮設施設計画、選手村仕様追加工事計画 ●組織委員会:選手村施設を計画 (3)アジア競技大会前 後利用整備  選手村−スケルトン整備 ●事業者:選手村として活用する施設を整備、一部はスケルトン整備(建物を骨格は整備し、内装等は未整備) (4)選手村整備  選手村−仮設施設、選手村仕様追加工事 ●組織委員会:選手村仕様追加工事、一部の選手村機能を仮設整備 <アジア競技大会> (5)アジア競技大会 直後 選手村−撤去 事業者追加工事 ●組織委員会:選手村施設を撤去 ●事業者:新たに施設を整備し運営 (6)後利用(まちびらき)  ※ イメージ図・写真は省略 p9 3.まち全体での取組 (1)防災・減災の取組  南海トラフ巨大地震や計画規模をはるかに超える豪雨などの大規模災害が発生した場合に備え、県市が担うハード面の整備だけでなく、日頃から災害に備え、発災時に対応できるよう、防災啓発活動や地域特性に応じた防災対策の推進などを通じて「自助・共助」による地域防災力の向上が期待されます。 ア.防災・減災に資する施設の整備  ●雨水貯留施設の設置  ●広域避難場所となるオープンスペースの配置  ●整備される施設の活用 イ.防災意識や災害対応力の向上  防災意識向上をはかり、災害に対する備えを促進するため、事業者や地域住民などによる防災事業の実施が期待されます。 (2)景観形成の取組  地域のブランド価値を高めるために、良好な景観形成を図ります。 ア.都市景観(街並み形成)の目標設定  ●計画予定地のスケールを活かしたシンボリックな景観形成  ●周辺地域や環境との調和、景観の連続性、空間の開放性、機能の複合性  ●緑豊かな空間形成 イ.統一感のある外観デザイン  計画予定地での新たなシンボリックな景観形成と調和し、統一感のある建物等の外観デザインを形成します。 p10 (3)先端技術の積極導入によるSDGsの実現に向けた取組  スマートシティの概念を踏襲し、先端技術の積極導入などにより、SDGsに掲げる社会課題の解決に貢献することが期待されます。  ※ イメージ図 省略 (4)開発スケジュール  後利用事業、及び選手村整備事業について、以下のようなスケジュールを予定しています。 ア.大会後のまちづくり  大会前…計画検討(後利用基本構想)、開発事業者の公募、事業者との協議等、設計・建築工事  大会期間…アジア競技大会開催(選手村として活用)  大会後…大会後に整備予定の施設・都市基盤の工事等 イ.都市基盤の整備等  大会前…事業計画検討、各種関係機関との調整・許認可手続き等、整備工事等  大会期間…アジア競技大会開催(選手村として活用)  大会後…大会後に整備予定の施設・都市基盤の工事等 ウ.選手村整備等(参考)  大会前…計画検討、設計・協議等、建築工事等  大会期間…アジア競技大会開催(選手村として活用) エ.地域との関わり  後利用基本構想案についての市民意見の聴取、後利用・都市基盤整備・選手村整備の事業内容・工事にかかる地域への説明等  構想の市民への周知、エリアマネジメントの検討・実施    ●計画予定地について ※ 地図 省略 所在地 名古屋市港区泰明町1−1(名古屋競馬場) 敷地面積 約20.7ha 都市計画  用途地域 第2種住居地域、第1種住居地域(約0.2ha)  容積率 200%  建蔽率 60%  その他 準防火地域、31m高度地区、緑化地域 その他 臨海部防災区域(第3種区域)     都市機能誘導区域内、居住誘導区域内     津波災害警戒区域 第20回アジア競技大会選手村後利用基本構想 策定  令和2年3月 提出・問い合わせ先 愛知県スポーツ局アジア競技大会推進課(愛知県庁西庁舎8階) 住所 名古屋市中区三の丸3丁目1番2号 電話番号 052−954−6862 FAX番号 052−951−1006 電子メール ag@pref.aichi.lg.jp 名古屋市総務局総合調整部アジア競技大会推進室(名古屋市役所本庁舎4階) 住所 名古屋市中区三の丸3丁目1番1号 電話番号 052−972−2222 FAX番号 052−972−4205 電子メール a2231@somu.city.nagoya.lg.jp 第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)大会スローガン IMAGINE ONE ASIA ここで、ひとつに。