表紙 不登校児童生徒の多様な学びの保障に向けた支援方策(案) なごやハートプラン 名古屋市教育委員会 (注)文中のグラフ、写真、イメージ図等は省略します。 1ページ 「HEART」の名に込めた想い Heartwarming Environment for Authentic Relationships and Thriving 不登校児童生徒を含めた全ての子どもたちの 『自分らしさを大切にするつながりと成長のための心温まる環境』 を整えていきたいという想いを込めています。 つながる つなげる 不登校は問題行動ではありません。「学校に行きたくてもどうしても行けない」ということは、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得ることです。また、不登校は、本人の「甘え」や「怠け」でも「弱いから」でもありません。 心のエネルギーが不足している状態の児童生徒にとって、不登校が休養や自分を見つめ直す機会となるなどの積極的な意味をもつことがあります。保護者や学校の先生、スクールカウンセラーなどが児童生徒の気持ちに寄り添い、心の声に耳を傾けるなど、まずは身近な大人が支援者として児童生徒と「つながる」ことが大切です。 身近な支援者とつながったことにより安心感を得た児童生徒は、今の状態から一歩踏み出そうとするときが来ます。そのとき児童生徒を多様な学びやそのための場、他の人々との関わり等に「つなげる」のが支援者の役割だと考えます。 名古屋市では、不登校児童生徒が「学校に登校する」という結果のみを目標とするのではなく、自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指し、児童生徒が学校へ行く・行かないにかかわらず、誰一人取り残されない学びの保障に向けた支援を行っていきます。 この度、この冊子をご覧いただいた皆様に心から感謝申し上げます。様々な立場からお読みいただき、児童生徒への支援や支援者同士の連携や協力などに役立てていただけることを願っています。全ての子どもたちの未来のために。 2ページ 名古屋市における不登校児童生徒の現状 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」より ・近年の不登校児童生徒数については、全国的に増加傾向にあり、本市も同様の傾向となっています。令和5年度の本市の不登校児童生徒数は小学校2,480人、中学校3,408人、高等学校422人でした。 ・近年は、小学生の増加率が高くなっています。また、不登校の状態が継続している児童生徒の割合は増えており、低年齢化・長期化の傾向にあります。 ・令和5年度の小・中学校の不登校児童生徒5,888人のうち、学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない児童生徒は2,574人(43.7%)でした。 また、このうち、教職員から継続的な相談・指導等を受けていた実人数は2,071人でした。 ・小・中・高等学校ともに、「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった。」が最も多くなっています。一方で、いじめや教職員との関係に不安を抱えている児童生徒も一定数います。 原因を取り除くとともに、気持ちに寄り添う支援を根気よく続けるなど、一人一人異なる状況を適切に把握した上で支援を実施することが求められています。 3ページ プラン策定の経緯 名古屋市の取組 名古屋市教育委員会は、令和4年3月に「不登校未然防止及び不登校児童生徒支援の方策」を策定し、「不登校児童生徒数が減少すること」と「不登校児童生徒が自らの進路を選択し、卒業後の未来を開くことができること」の実現に向けて取組を進めてきました。 教育支援センターの施設拡充(大曽根サテライトの整備)や、中学校での校内の教室以外の居場所づくり事業の推進など、好ましい変化に結び付いた事例は多くあるものの、名古屋市の不登校児童生徒数は全国と同様に依然として増加傾向にあります。 国の動向 全国的に不登校児童生徒が増加し続けている中、令和5年3月に文部科学省から「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」が示され、不登校によって学びにアクセスできない子供をゼロにすることを目指し、社会全体で取組を進めていくことが掲げられました。 また、同年4月には、「こども基本法」が施行され、全てのこどもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、こども施策を総合的に推進することを目的に、こども施策に関する基本理念が定められました。 さらに、同年10月には文部科学省から「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」として、「COCOLOプランを前倒しして取り組むなど、『誰一人取り残されない学びの保障』に向けた取組の緊急強化が必要であること」などが示されました。 (注)COCOLOプランについては、21ページを参照 増加する不登校児童生徒への支援の方向性も変化している中、名古屋市でもこれまでの不登校の方策に基づく取組を継続しつつ、誰一人取り残されない学びの保障を図るため、支援方策について、再検討する必要があると考えました。 そこで名古屋市教育委員会では、令和6年に設置した「今後の不登校施策に関する有識者等会議」の意見を踏まえ、支援方策(Nagoya HEART Plan)を策定しました。 4ページ 不登校児童生徒の多様な学びの保障に向けた支援方策 Nagoya HEART Plan(なごやハートプラン) 目標 ・児童生徒一人一人の思いや願いを尊重し、全ての児童生徒に多様な学びの場を確保すること ・児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立できるようにすること T 子どもたちが行きたくなる学校づくり  不登校及び不登校傾向の児童生徒を生じにくくさせるうえでも、全ての児童生徒にとって学校が楽しく、安心して学習・生活できるような「行きたくなる学校づくり」を目指すことは非常に重要です。 01 魅力ある学校づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5ページ 02 教職員の意識改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7ページ U 多様な教育機会の確保  不登校の要因や背景、家庭環境、現在の心のエネルギーの状態などは児童生徒によって異なります。多様な教育機会の確保は、社会的自立に向けたその子にとっての最初の一歩を踏み出すことや切れ目のない支援につながります。 03 なごや子ども応援委員会・学校と専門機関等との連携・・・・・・9ページ 04 校内の教室以外の居場所づくり・・・・・・・・・・・・・・・10ページ 05 訪問相談、対面指導、アウトリーチ支援・・・・・・・・・・・11ページ 06 教育支援センターの機能拡充・・・・・・・・・・・・・・・・12ページ 07 ICTを活用した学習支援・・・・・・・・・・・・・・・・・13ページ 08 高等学校等の生徒を含めた支援・・・・・・・・・・・・・・・14ページ <今後の検討事項> ●学びの多様化学校の設置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15ページ ●夜間中学における不登校学齢生徒の受入れ・・・・・・・・・・・・16ページ V 保護者支援・学校外の専門機関等との連携  児童生徒の支援者、支援団体、支援機関がつながることが大切だと考えます。その前提として、児童生徒を中心に据え、抱えている悩みや不安、困り感など、児童生徒一人一人の気持ちに寄り添うことが何より大事です。 09 保護者への支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17ページ 10 教育と福祉の連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18ページ 11 民間団体(施設)との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・19ページ <今後の検討事項> ●民間団体(施設)や保護者への経済的支援 資料編・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20ページ 5ページ T 子どもたちが行きたくなる学校づくり  不登校及び不登校傾向の児童生徒を生じにくくさせるうえでも、全ての児童生徒にとって学校が楽しく、安心して学習・生活できるような「行きたくなる学校づくり」を目指すことは非常に重要です。 01 魅力ある学校づくり ○「ナゴヤ学びのコンパス」が目指す「子ども中心の学び」や重視したい学びの姿の実現を図ります。 ○ナゴヤ・スクール・イノベーション事業を推進し、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図る授業改善を進めます。 ・全ての子どもが自分らしく幸せに生きていくために、多様な個性や特性、背景を有する児童生徒一人一人を包摂した「子ども中心」の学びを実現します。 ・児童生徒が、ゆるやかな協働性の中で自律して学び続けることができるよう、「自分に合ったペースや方法で学ぶ」「多様な人と学び合う」「夢中で探究する」の三つの学びの姿を重視します。 ・ナゴヤ・スクール・イノベーション事業により、児童生徒一人一人の興味・関心や能力、進度に応じた「個別最適な学び」と「協働的な学び」を全校でより一層推進します。児童生徒一人一人が主体的に学びに向かい、楽しく充実した学校生活を過ごすことができるように授業改善を進めます。 【ナゴヤ学びのコンパス】 子どもたちが学びを通して自分らしく、幸せに生きていくことができるよう、名古屋市の学びの基本的な考えを示したものです。 【ナゴヤ・スクール・イノベーション事業】 ゆるやかな協働性の中で自律して学び続ける子どもを育むため、大人が子どもに伴走し、「子ども中心の学び」を進める学校づくりを推進しています。 6ページ 本市が実施している事業等 【豊かな心を育む学校づくり】 ・夢と命の絆づくり推進事業 幼児児童生徒がお互いのつながりを大切にした主体的な活動を通じて、友情を深め合ったり、豊かな心を育んだりすることをねらった事業です。 仲間との絆を深めたり、命の大切さを学んだりする活動等、学校園が立案した企画の実施に必要な予算を配分しています。(令和6年度:幼稚園、小・中・高・特別支援学校115校園に配分) 【キャリア教育の推進】 ・キャリアナビゲーター 子ども一人一人の自分らしい生き方を実現する力を育てるため、中学校、高等学校及び特別支援学校に「キャリアナビゲーター」を配置し、キャリア教育を推進しています。 (注)キャリアナビゲーターとは、キャリアコンサルタントの資格を有する専門家です。キャリアタイムの企画・実施や児童生徒の個別相談等、キャリア形成支援に係る取組を進めています。 ・キャリアタイム 社会で活躍する本物のヒト・モノ・コトとの出あいや日ごろの授業等を通じて、自分の「好き」や「できる」を大切にしながら、自分らしい生き方を実現する力を身に付ける時間です。 【学習及び不登校対応の支援】 ・子どもの未来応援講師 基礎的な学習から発展的な学習まで幅広く学習指導を支援したり、悩みを抱える児童生徒の支援をしたりして、教育活動の充実を図るための担当教員を配置しています。(R6年度:小・中・特別支援学校152校に配置) ・不登校対応支援講師 不登校児童生徒の実態に合った具体的な取組をするための担当教員を配置しています。(令和6年度:小・中・特別支援学校69校に配置) 【いじめをしない、させない、許さない学校づくり】 ・なごやINGキャンペーン ING(いじめをしない、させない、許さない学校づくり)に向け、児童生徒一人一人が自らいじめを許さない意識の高揚と継続を図る取組です。 市立学校では、キャンペーン期間中の全市一斉の取組だけではなく、年間を通した取組と家庭や地域と連携した取組等を実施し、いじめの早期発見・迅速な対応を行っています。 ・いじめ問題への対応 いじめ問題の対応にあたっては、命や安全を守ることを最優先に、教育的配慮の下、毅然とした態度で指導・対応をしていきます。事柄によっては、警察等に適切な援助を求めます。 【発達障害の可能性のある児童生徒への支援】 ・発達障害対応支援講師 発達障害の可能性のある児童生徒に対する個別指導を一層推進し、学校生活の充実を図るために講師を配置しています。(令和6年度:小学校・中学校128校に配置) ・発達障害対応支援員 発達障害の可能性のある幼児児童生徒に対し、学校園生活での介助等を行うために支援員を配置しています。(令和6年度:全幼稚園・小学校・中学校に配置) ・発達障害通級指導教室 小・中学校の通常の学級に在籍している児童生徒に対して、一部障害に応じた特別の指導を特別な場(通級指導教室)で行っています。 7ページ 02 教職員の意識改革 ○「ナゴヤ学びのコンパス」が目指す教育の実現のために大人が大切にしたいことを浸透させ、教職員研修の充実を図ります。 ○チーム学校による教育的、心理的、福祉的取組で組織的支援を進めます。 ・「子ども一人一人の思いや願いを尊重する」「子どもと対話する」「子どもの自分なりのチャレンジを大事にする」を、どの学校園でも大人が大切にします。 ・教育機会確保法をはじめ、関連する法律・通知等を踏まえた不登校児童生徒支援について理解を深める教職員研修の充実を図ります。 ・不登校の要因や背景が多様化・複雑化し、教員だけでの支援が困難になる中、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等によるアセスメントも踏まえて、チームとして組織的・計画的な支援を実施します。 (注1)教育機会確保法とは、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年12月14日公布) (注2)スクールカウンセラーとは、公認心理師・臨床心理士等の専門的知識・経験を活かし、心理教育等の観点に基づいた学校生活全般に対する支援を行う職員です。 (注3)スクールソーシャルワーカーとは、社会福祉士等の福祉の専門的知識・経験を活かし、子どもたちが置かれた環境への働きかけや関係機関との連携を図る職員です。 8ページ 本市が実施している事業等 【学校の風土の「見える化」を通した安心して学べる学校へ】 ・ウェブ版学校生活アンケート タブレット端末を活用して、児童生徒一人一人が学校生活に関わるアンケートに入力します。教員は回答結果から児童生徒の学級に対する満足度等を把握し、スクールカウンセラー等の専門職とも連携しながら、支援が必要な児童生徒への早期支援につなげていきます。 【学校への支援】 ・学校コンサルテーション 発達障害を含めた問題を抱える子どもへの支援や保護者への関わり方、支援に向けた校内体制等、具体的な支援について、関係する教職員と指導主事が一緒に考え、学校を支援します。 【特別支援教育の充実】 ・特別支援教育のための専門家チーム 通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある幼児児童生徒への対応を充実するために、教育機関、医療機関、療育機関の専門家によって構成する専門家チームを派遣し、学校を支援します。 【教育相談体制の充実】 ・スクールカウンセラー等による小4・中1全員面談 今、悩みや心配事を抱えているかどうかに関わらず、スクールカウンセラー等による小4・中1の全ての子どもたちを対象にした「全員面談」を行っています。 少しでも子どもたちにとってスクールカウンセラー等が身近な存在であることを感じてもらい、悩みを抱えたときに気軽に相談できるようにすることを目指しています。 【校種を越えた情報連携】 ・学校間連携 不登校児童生徒への支援は、多職種連携とともに、学校間連携も重要です。 不登校児童生徒への支援は、校種を越えて続く場合があります。また、進学を機に「新たにやり直したい」とリセットの機会と考えている児童生徒もいます。 学校は、支援ニーズや支援内容等の情報を、児童生徒本人と保護者の意向を尊重しながら引き継ぐことで、切れ目のない組織的な支援を行っていきます。 小学校及び中学校学習指導要領(平成29年改訂) 平成29年(2017年)3月31日に改訂された小学校及び中学校の学習指導要領には、初めて「不登校児童生徒への配慮」の記載がされました。また同解説(総則編)には、不登校について以下のように示されています。 ● 取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得る ● 多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっている ● その行為を「問題行動」として判断してはならない ● 不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭する ● 学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢をもつことが、児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要 <参考資料> 学習指導要領(平成29年告示)解説総則編小学校 中学校  【文部科学省】 9ページ U 多様な教育機会の確保  不登校の要因や背景、家庭環境、現在の心のエネルギーの状態などは児童生徒によって異なります。多様な教育機会の確保は、社会的自立に向けたその子にとっての最初の一歩を踏み出すことや切れ目のない支援につながります。 03 なごや子ども応援委員会・学校と専門機関等との連携 ○なごや子ども応援委員会は、学校と専門機関等をつなぐコーディネーターとして、学校と協働しながら、子ども一人一人の状況や関係者の状況に応じた適切な支援を行います。 ○低年齢の子どもや外国にルーツをもつ子ども等への支援の充実を図ります。 ・不登校が低年齢化・長期化している傾向も踏まえ、小学校段階で早期に介入できるように、支援体制整備を進めます。 ・名古屋市においては、日本語指導が必要な子どもの学校在籍者数は多く、外国にルーツをもつ子ども等への支援の充実も重要な課題となっています。外国にルーツをもつ子ども等を含め、特に低年齢の子どもへの働きかけや将来を見据えた関わり等について支援の充実を図ります。 【なごや子ども応援委員会】 さまざまな悩みや心配を抱える子どもや親を総合的に支援するため、常勤の専門職を学校現場に配置しており、支援が必要なケースを児童相談所、区役所・支所、医療機関、子ども・若者総合相談センター等の専門機関や子ども青少年局による事業等に適切につなぐ役割を担っています。 【日本語教育の充実】 ・初期日本語集中教室 初歩的な日本語(日常会話等)を学習するための教室です。日本の学校生活(授業の受け方等)についても学びます。 ・日本語通級指導教室・日本語指導講師 教科学習に必要な日本語を学習するための教室です。隔週の水曜日(2時間程度)、教室のある場所に通います。また、個別指導を一層推進し、学校生活への適応指導の充実を図るため、担当教員として日本語指導講師を配置しています。令和6年度、市立小中学校16校で実施しています。 10ページ 04 校内の教室以外の居場所づくり(校内教育支援センター) ○教室へ入れない児童生徒が安心して過ごせる校内の教室以外の居場所づくりを進めます。 ・登校はできるが、学級の教室へは入れない生徒や、一時的に教室から離れて過ごしたい生徒が安心して学ぶことができる校内の教室以外の居場所づくりを進めていきます。(令和6年度現在、中学校110校中87校で実施) ・小学校での不登校児童の増加を受けて、中学校での取組の成果を活かしつつ、小学校段階の特徴を踏まえた支援のあり方や方向性を検討していきます。 ・研修等により担当者の資質向上に努めるとともに、居場所の役割や活動内容等に対する教職員やなごや子ども応援委員会の共通理解を促進し、学校が運営ガイドラインに基づき組織的に運営していきます。 【不登校児童生徒の出席及び評価】 様々な事情で登校できなかったり、登校しても教室に入れなかったりする児童生徒に対して、学習の計画・内容が学校の教育課程に照らし適切と認められること等、文部科学大臣が定める要件の下、各学校は指導要録上出席扱いとしたり、学習の成果を評価に反映したりしています。 (注)校内教育支援センターとは、学校には行けるけれど、自分の教室には入れない時や、少し気持ちを落ち着かせてリラックスしたいときに利用できる、学校内の空き教室等を活用した部屋のことです。児童生徒のペースに合わせて担当者が相談に乗ったり、学習のサポートをしたりします。 11ページ 05 訪問相談、対面指導、アウトリーチ支援 ○教員・なごや子ども応援委員会専門職・ハートフレンドなごや相談員による訪問相談、対面指導を行います。 ○自宅から外へ出ることが難しい児童生徒に対して、なごや子ども応援委員会と学校が協働し、様々な機関が実施するアウトリーチ支援につなげます。 ・教員による家庭訪問、なごや子ども応援委員会の専門職による家庭訪問、ハートフレンドなごやの相談員による訪問相談を継続実施します。 ・学校となごや子ども応援委員会が丁寧にアセスメントすることで、子ども青少年局や健康福祉局が実施する施策も踏まえて、子どもや家庭の状況に適したアウトリーチ支援につなげていきます。 【ハートフレンドなごや】 名古屋市にお住まいの幼児から高校生年齢までの子ども本人、その保護者等から、子どもの教育、養育上の問題に関するあらゆる内容について相談に応じている相談機関です。 【子ども青少年局、健康福祉局が実施するアウトリーチ支援】 ・名古屋市家庭訪問型相談支援事業(子ども青少年局) 不登校、ひきこもり、いじめ、発達障害、成績等の悩みを抱える子ども・親を対象としたアウトリーチ支援 ・名古屋市重層的支援体制整備事業(健康福祉局) 複合的な生活課題を抱えた世帯等に対し、多機関による協働の支援、アウトリーチ等を通じた継続的支援、社会参加に向けた支援や地域づくりを一体的に実施 12ページ 06 教育支援センターの機能拡充 ○ICT・通信環境の整備を進め、児童生徒の社会的自立に資する支援の充実を図ります。 ○関係機関等との相互連携により、不登校児童生徒や保護者への切れ目のない組織的な支援を進めます。 ・教育支援センター「なごやフレンドリーナウ」では、これまで大切にしてきた「丁寧なインテークやアセスメント」「対面での関わり」を土台にしつつ、ICT・通信環境の整備により、「集団生活への適応」「情緒の安定」「基礎学力の補充」「基本的生活習慣の改善」について支援の充実を図ります。 ・学校内外の関係者や専門機関、多様な学びの場とのつながりを大事にしながら、不登校児童生徒の状況を把握し、知見を活かした切れ目のない支援を進めます。 【名古屋市教育支援センター(なごやフレンドリーナウ)】 心理的な理由によって登校していない児童生徒を対象に市内4カ所(浄心、笠寺、鶴舞、大曽根)において、通所による教育支援を行っています。 13ページ 07 ICTを活用した学習支援 ○自宅や校内の教室以外の居場所におけるオンライン学習プログラムによる学習支援を継続します。 ○教育用メタバースを活用した支援を行います。 ・児童生徒の個々の実態に応じた支援の充実を図るため、自宅や校内の教室以外の居場所においてICTを活用した学習を希望する児童生徒に対して、オンライン学習プログラムによる学習支援を継続実施します。 ・学校外の機関や学校内で、専門的な相談・指導等を受けていない不登校児童生徒等を対象とした、メタバースによる支援の実証を踏まえ、双方向のオンライン授業などの活用により、将来の社会的自立につなげます。 ・仮想世界と現実世界をつなぐ取組や、現実世界での対人関係の構築につながる取組について研究していきます。 (注)メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間のことです。ユーザーはアバターと呼ばれる自分の分身を通じて仮想空間に入り、現実世界に近い体験をすることができます。 14ページ 08 高等学校等の生徒を含めた支援 ○生徒が自らの学びを選択し、継続することができるよう、柔軟で質の高い学びの保障を進めます。 ・生徒が学びを継続できるよう、市立高等学校において、教員と不登校生徒をWeb会議システムでつないで同時双方向型の遠隔授業を行い、生徒が単位修得できる取組を実施します。 ・生徒が主体的に進路選択し、将来の社会的自立につなげていくことができるよう、ICT機器やオンラインを活用するなどして、在籍する学校の枠を越え、全市立高等学校が一体となって、専門性の高い授業や特色ある授業を共有し、単位修得できる環境を整備します。 ・単位制・無学年制の市立中央高等学校昼間定時制の実績等を踏まえて、市立高等学校の生徒一人一人が自分のペースで柔軟な学び方ができるシステムを研究します。 ・高等学校等への進学に関して、中学校の不登校生徒や保護者に対し、欠席日数が多い生徒が公立高等学校受検をする際の配慮に関する情報を含め、進路に関する様々な選択肢を示す等、丁寧な進路指導を継続していきます。 (注)配慮に関する情報:愛知県公式ウェブサイト(愛知県公立高等学校入学者選抜)「欠席に関する自己申告」、「長期欠席者等選抜申請」参照  【高等学校の不登校の特徴】 高等学校の不登校についても、小・中学校と同様に増加傾向にあります。義務教育ではない高等学校では、欠席や欠課が原級留置(留年)や退学、その後の進路やキャリアに直結しやすいという特徴があります。 【キャリア・カウンセリング】 中学校、高等学校及び特別支援学校に配置されているキャリアナビゲーターによる生徒の進路や生き方に関わる相談活動を行っています。児童生徒自身の自己決定を促し、生徒が主体的に自分の進路や生き方を決めていくように導く活動です。不登校児童生徒の相談機会の充実も含め、生徒に寄り添った支援を行っていきます。 15ページ <今後の検討事項> ●学びの多様化学校の設置 ・不登校及び不登校傾向の児童生徒が将来、社会的に自立できるよう、多様な背景をもつ児童生徒一人一人のその時々の思いや願いを尊重し、きめ細かな学びの場・学びの機会を提供するため、「市立学びの多様化学校」の設置を検討していきます。  「市立学びの多様化学校」では、弾力的で柔軟な教育課程の編成等により、全ての市立学校園と同様に「ナゴヤ学びのコンパス」が目指す「子ども中心の学び」を進めます。 【学びの多様化学校】  不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施する学校です。国は早期に全ての都道府県・政令指定都市に将来的には希望する児童生徒が居住地によらず通えるよう、分教室型も含め全国300校の設置を目指しています。 16ページ ●夜間中学における不登校学齢生徒の受入れ ・不登校学齢生徒の多様な学びの場の一つとして、夜間中学を活用していくことについては、全国的に学齢期の生徒の受入れを行っている夜間中学の成果と課題などの情報収集を進めるとともに、名古屋市立の夜間中学である「なごやか中学校」開校後、夜間中学の運営状況も踏まえて、検討していきます。 ・夜間中学に配置された教職員は、多様な生徒への対応を支援の実体験を通して学んでいきます。そうした経験をした教職員が異動し、学んだことが広がっていくことで、他の学校への大きな波及効果につながると考えます。 【夜間中学】  様々な理由により義務教育を修了できなかった人や本国で義務教育を修了していない外国籍の人などを対象とした特別の教育課程の編成が認められた中学校です。  令和7年4月に名古屋市立笹島小中学校敷地内に「なごやか中学校」として開校し、学齢期を過ぎた方を入学対象としています。 17ページ V 保護者支援・学校外の専門機関等との連携  児童生徒の支援者、支援団体、支援機関がつながることが大切だと考えます。その前提として、児童生徒を中心に据え、抱えている悩みや不安、困り感など、児童生徒一人一人の気持ちに寄り添うことが何より大事です。 09 保護者への支援 ○保護者がより相談しやすい総合相談窓口の機能強化を行います。 ○保護者同士が交流する場づくりを進めます。 ・子どもの教育・養育上の問題に関する内容についての相談に応じている「ハートフレンドなごや」が本市の総合相談窓口としての機能を果たし、より保護者に寄り添えるよう、総合相談窓口としての位置づけを明確に発信します。支援施策や関係機関等についてより分かりやすく、丁寧に情報提供するとともに、子ども一人一人の状況に応じた適切な案内を行います。 ・不登校児童生徒支援サイト(名古屋市公式ウェブサイト)において、不登校にかかる相談の流れや支援施策、民間団体等の情報を一元的に発信します。 ・保護者同士が情報交換を行ったり、不安や悩みを共有したりすることができる場づくりを行い、児童生徒にとって最も身近な支援者である保護者をサポートします。 (注1)ハートフレンドなごやの詳細については「05訪問相談、対面指導、アウトリーチ支援」を参照 (注2)名古屋市不登校児童生徒支援サイトについては、22ページを参照 18ページ 10 教育と福祉の連携 ○教育委員会、子ども青少年局、健康福祉局など部局を越えた連携を進めます。 ・児童生徒だけでなく、保護者や家庭が抱える悩みや問題を解消していくため、各部局が実施している支援について、学校が理解を深めるとともに、教育と福祉の連携により、児童生徒や保護者に必要な支援が届くように努めます。 【スクールソーシャルワーカーの併任配置】 生きづらさを抱える学齢期の子どもを早期に発見し、支援していくため、なごや子ども応援委員会のスクールソーシャルワーカーが区役所・支所の職員を併任するなど、区役所等関係機関との情報共有を迅速化し、教育・福祉の連携強化を進めています。 19ページ 11 民間団体(施設)との連携 ○民間団体(施設)と教育委員会及び学校との連携を進めます。 ・誰一人取り残すことなく、一人一人の児童生徒が社会的自立に向けて成長していけるようにするために、民間団体(施設)と教育委員会及び学校とが相互理解を進めるとともに、連携をより深めていきます。 ・連携の具体的な内容について、児童生徒、保護者、学校、市民、関係機関等に示します。また、本市の児童生徒が指導を受けたり相談したりした実績のある民間団体(施設)の情報を、必要とする児童生徒、保護者へ提供します。 <今後の検討事項> ●民間団体(施設)や保護者への経済的支援 民間団体(施設)や、民間団体(施設)に通う子どもの保護者に対する経済的支援については、他都市の状況等、引き続き情報を集め、あり方を検討していきます。教育委員会としては、公的施設の充実や市立学校における多様な教育機会の確保により、引き続き保護者の経済的負担の軽減を図ります。 20ページ 資料編 ○不登校の呼称の変遷  日本の社会で不登校が話題になったのは、1950年代の終わり頃と言われています。当時は人数が少なかったこともあり、心の病気と扱われ、「学校恐怖症」と呼ばれていました。  その後、不登校の数がどんどん増えていくことに伴い、心の病気から教育問題と扱いを変え、名称も「登校拒否」へと変わっていきました。当時の不登校の中核は、朝学校に行く時間になると「お腹が痛い」「頭が痛い」など葛藤を抱える神経症的なものだと言われています。  1990年代に入ると、学校に行けない理由は多種多様であり、子どもは登校することを必ずしも拒否しているわけではないことから、登校していない又はできない状況を表す「不登校」という言葉が使われるようになりました。 <参考資料>教職ブラッシュアップ編「不登校」【NITS独立行政法人教職員支援機構】 ○不登校の定義  平成4年(1992年)、文部省(現:文部科学省)の「学校不適応対策調査研究協力者会議」において、次のように定義されました。  何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的理由によるものを除く)をいう。  また、文部科学省の「学校基本調査」では、年度内に30日以上欠席した児童生徒を「長期欠席者」としており、その欠席理由によって「病気」「経済的理由」「不登校」「その他」に区分しています。 ○不登校児童生徒数の増加とその背景  文部科学省が令和6年(2024年)10月31日に公表した「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、小・中学校における不登校児童生徒数は346,482人(前年度299,048人)であり、11年連続で増加し、過去最多となりました。また、増加の背景については以下のように示されています。  児童生徒の休養の必要性を明示した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」の趣旨の浸透等による保護者の学校に対する意識の変化、コロナ禍の影響による登校意欲の低下、特別な配慮を必要とする児童生徒に対する早期からの適切な指導や必要な支援に課題があったことなどが考えられる。 <参考資料>令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果【文部科学省】 21ページ ○「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策 (COCOLOプラン)」(令和5年3月31日 文部科学省)   全国的に不登校児童生徒の増加が続いている状況を踏まえて、COCOLOプランでは、不登校により学びにアクセスできない子供たちをゼロにすることを目指し、「不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える」、「心の小さなSOSを見逃さず、『チーム学校』で支援する」、「学校の風土の『見える化』を通して、学校を『みんなが安心して学べる』場所にする」ことにより、誰一人取り残されない学びの保障を社会全体で実現していくことが示されています。 <参考資料>COCOLOプラン【文部科学省】 ○社会的自立について(令和4年12月改訂「生徒指導提要」より) <第10章 不登校 10.1.4 支援の目標>より抜粋   不登校児童生徒への支援の目標は、将来、児童生徒が精神的にも経済的にも自立し、豊かな人生を送れるような社会的自立を果たすことです。(中略)  人が社会で充実した人生を歩んでいくためには、自分と関わる人たちとの関係性を保ちながら、自らの意志と判断で主体的に社会に参画していくことができるようになることが重要です。そのため、ここでいう社会的自立は、依存しないことや支援を受けないということではなく、適切に他者に依存したり、自らが必要な支援を求めたりしながら、社会の中で自己実現していくという意味であると捉えることができます。  したがって、不登校で苦しんでいる児童生徒への支援の第一歩は、将来の社会的自立に向けて、現在の生活の中で、「傷ついた自己肯定感を回復する」、「コミュニケーション力やソーシャルスキルを身に付ける」、「人に上手にSOSを出せる」ようになることを身近で支えることに他なりません。その上で、社会的自立に至る多様な過程を個々の状況に応じてたどることができるように支援することが、次の目標になると考えられます。(中略)  このように、個々の児童生徒に求められる自立の姿は実に多様であるため、学校復帰や転学等に際して、形だけを整えるのではなく、個に応じた多様な社会的自立に向けて目標の幅を広げた支援を行うことが必要になります。 <参考資料>生徒指導提要【文部科学省】 22ページ 不登校に関する相談先 学校  相談先として担任の先生や学年の先生以外にも、名古屋市立の学校には「なごや子ども応援委員会」の専門職(スクールカウンセラー等)が配置されており、様々な悩みや心配を抱える子どもや保護者の方へ総合的な支援を行っています。 ・スクールカウンセラー  公認心理師・臨床心理士等の専門的知識・経験を活かし、心理教育等の観点に基づいた学校生活全般に対する支援を行います。 ・スクールソーシャルワーカー  社会福祉士等の福祉の専門的知識・経験を活かし、子どもたちが置かれた環境への働きかけや関係機関との連携を図ります。 公的機関 ・ハートフレンドなごや(総合相談窓口)  名古屋市にお住まいの幼児から高校生年齢までの子ども本人、その保護者等から、子どもの教育・養育上の問題に関するあらゆる内容について相談に応じています。  総合相談ダイヤル052-683-8222  月曜から金曜日 9時30分〜19時00分 土曜日 9時30分〜12時00分 (注)祝日、年末年始を除く 不登校児童生徒支援サイト  名古屋市では、不登校の子どもたちが「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、自らの進路を主体的に捉えて「社会的に自立する」ことを目指して、様々な支援を行っています。「なごや子ども応援委員会」や「ハートフレンドなごや」「なごやフレンドリーナウ」などへのリンク先や、「民間オンライン学習プログラム」「不登校児童生徒を支援する民間団体(施設)連絡会及び連絡会に参加した団体(施設)の一覧」などを掲載しています。 Nagoya HEART Plan(なごやハートプラン) 発 行 ・ 編 集 名古屋市教育委員会 お問い合わせ 名古屋市教育委員会新しい学校づくり推進課 名古屋市東区泉一丁目一番四号 電 話 (052)253−7937 ファクシミリ(052)253−7972 裏表紙 Nagoya HEART Plan(なごやハートプラン) 自分らしさを大切にするつながりと成長のための心温まる環境 名古屋市教育委員会