名古屋市立夜間中学設置基本計画(案) 名古屋市教育委員会 (注)文中のグラフ、写真、イメージ図等は省略します。 名古屋市立夜間中学設置 基本計画 目 次 T 名古屋市における市立夜間中学の設置について 1 夜間中学設置促進の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1 2 名古屋市における現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1 3 入学対象となる方の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P2 4 名古屋市の不登校者数の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P3 U 公立夜間中学とは 1 公立夜間中学の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P4 2 全国の設置状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P4 3 全国の公立夜間中学の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P5 V 市立夜間中学に対するニーズについて(市立夜間中学アンケート調査結果) 1 アンケートの方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P8 2 アンケートの結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P8 W 名古屋市における市立夜間中学の設置の枠組 1 開校年次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P12 2 設置場所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P12 3 設置形態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P12 4 入学対象・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P12 5 学校規模・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P12 6 修業年限・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P13 7 入学時期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P13 8 編入学対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P13 9 不登校になっている学齢生徒への支援・・・・・・・・・・・・・・・P13 X 名古屋市における市立夜間中学の学びの方向性 1 名古屋市が設置する市立夜間中学がめざす姿・・・・・・・・・・・・P14 2 市立夜間中学の学校づくりの視点・・・・・・・・・・・・・・・・・P15 Y めざす姿の実現に向けた学校づくり 1 多様性を尊重した学校づくりのための取組・・・・・・・・・・・・・P16 2 安心して学べる学校教育の環境整備のための取組・・・・・・・・・・P18 3 設置・運営上の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P19 4 その他の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P20 1ページ T 名古屋市における市立夜間中学の設置について 1 夜間中学設置促進の経緯 ・平成28年12月に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が公布。地方公共団体に、夜間中学における就学の機会の提供等を義務付け(同法§14) ・令和3年1月、衆議院予算委員会で当時総理大臣が「今後 5 年間で全ての都道府県・指定都市に夜間中学が少なくとも1つ設置される、このことを目指し、全国知事会や指定都市市長会の協力を得て取り組んでいきたい」と答弁 ・文部科学省から各都道府県・政令指定都市あて「夜間中学の設置・充実に向けた取組の一層の推進について」依頼文を発出(R3.2.16 付及び R4.6.1 付) 2 名古屋市における現状 ・本市の夜間中学は、昭和27年4月に天神山中学校及び東港中学校に開設されたが、昭42年3月には東港中学校の、昭和44年3月には天神山中学校の夜間中学がそれぞれ閉鎖 ・昭和48年10月に愛知県の補助事業として、愛知県教育・スポーツ振興財団が「中学夜間学級」を開校。現在、愛知県教育会館にて運営が続いており、同学級の卒業生には、市立北山中学校の卒業証書授与 ○愛知県中学夜間学級(愛知県教育・スポーツ振興財団) 所在地 名古屋市中区新栄 1-49-10 設置数  1カ所 対象者 ・中学校を卒業していないこと ・義務教育修了年齢を超えていること ・県内に在住していること ※ 募集人員に余裕がある場合は、義務教育修了者でも、不登校などの理由で実質的に義務教育を十分に受けていないため、学び直しがしたい方も対象 定 員 各学年 20人程度 年 限 2年(北山中学校に籍を置き、北山中学校の卒業証書を授与) 授業日 週3日(月・水・金)18時〜20時30分 施 設 県教育会館内の教室を使用 保健体育、音楽、技術・家庭は北山中学校の体育館、特別教室を使用 その他 愛知県の運営補助、名古屋市の教員派遣 授業料:無料、教科書:無償支給 在籍者 31人(令和5年4月1日現在) ・日本国籍11人、外国籍20人(中国、韓国、ブラジル、フィリピン、ベトナム、ネパール、スリランカ) ・通学地域:名古屋市内17人、名古屋市外14人  令和5年度までの入学生総数1,010人 2ページ ・名古屋市会令和5年2月定例会の本会議において、有識者等会議での検討を経て、令和5年度中に策定する設置方針に基づき、教育課程の編成等を進め、令和7年4月に設置できるよう取り組むと方針を公表 ・市立夜間中学の設置に関する有識者等会議を4回開催。夜間中学の設置運営に識見を有する学識経験者、保護者代表、教員代表等で構成する当会議において、市立夜間中学がめざす姿とその実現に向けた学校づくりに関して検討 ○市立夜間中学の設置に関する有識者等会議 第1回 令和5年3月30日(木) 1. 会議の概要 2. 公立夜間中学の現状 3. 今後の検討項目の確認 4. その他 第2回 令和5年4月27日(木) ・「市立夜間中学アンケート」の結果について ・自主夜間中学「はじめの一歩教室」の現状報告 1. 名古屋市が設置する市立夜間中学のめざす姿 2. その他 第3回 令和5年6月7日(水) 1. 第2回会議の確認 2. めざす姿の実現に向けた学校づくり 3. その他 第4回 令和5年7月19日(水) 1. 会議のまとめ 2. その他 3 入学対象となる方の現状  全国の夜間中学の状況から、夜間中学への主な入学対象者は、 1.様々な理由により、義務教育を修了できなかった方 2.本国で義務教育を修了していない外国籍の方 3.不登校などの事情により、義務教育が十分に受けられなかった方 が想定される。  本市においても、対象となりうる方がいるものと考えられる。 (1)様々な理由により、義務教育を修了できなかった方 令和2年度の国勢調査では、本市における未就学者(小学校を卒業していない方)は 2,045人、最終卒業学校が小学校の方(小学校のみ卒業した方、又は中学校を中退した方)は8,523 人いることが分かっている。 (2)本国で義務教育を修了していない外国籍の方 後述する「3 全国の公立夜間中学の状況」の「U 夜間中学生徒数の実態」(6ページ)のとおり、令和4年5月1日現在、全国の夜間中学に通う生徒の 66.7%(1,558人のうち、1,039人)が日本国籍を有しない者となっている。 令和 4 年末現在における本市の外国人住民数は86,120人で、全国の20政令市の中で大阪市、横浜市に次いで 3番目に多く、全国の夜間中学の在籍者の傾向から、夜間中学での学びを必要とする外国籍の方がいると考えられる。 (3)不登校などの事情により、義務教育が十分に受けられなかった方 名古屋市立中学校3年生における不登校生徒数は、平成25年からの10年間で合計7,113人いる。   平成25年 548人 平成26年 583人 平成27年 605人 平成28年 661人 平成29年 635人   平成30年 666人 令和元年 761人 令和2年 709人 令和3年 885人 令和4年 1,060人        全国には、通えなかった期間の中学校における学びを取り戻したいと考え、夜間中学に入学している方もいる。  このような状況を踏まえると、本市においても不登校などの事情により義務教育が十分に受けられず、学び直しを希望する方がいると考えられる。 3ページ 4 名古屋市の不登校者数の推移  本市における不登校児童生徒数は増加傾向が続いている。令和4年度における不登校児童生徒数は、小学校で1,845人(全体の1.67%)、中学校で3,108人(全体の6.15%)であり、平成25年度と比べると、小学校が 3.51倍、中学校が 2.18倍となっている。  本市の1,000人当たりの不登校児童生徒数は、令和4年度30.8人、令和 3年度24.5人、令和 2 年度20.0人であり、全国平均とほぼ同じ水準で増加している。 4ページ U 公立夜間中学とは 1 公立夜間中学の概要 項目 授業日 内容 ◯ 昼間の中学校と同じく平日週5日 ◯ 夏季休業、冬季休業も昼間の中学校と同じ時期 項目 教員  内容 ◯ 教員免許を持った公立中学校教諭 項目 学ぶ教科 内容 ◯ 昼間の中学校と同じく9教科 項目 卒業認定 内容 ◯ 公立夜間中学の課程を修了すれば中学校卒業となる 項目 授業時間 内容 ◯ 教育課程の特例を活用(注1)   <授業時間、始業、終業時刻の例>   ・1コマ40分の4時間授業 ・始業時刻は17時30分頃、終業時刻は21時00分頃 注1:学齢経過者を夜間中学において教育する場合には、特別の教育課程の編成が認められている。(授業時間の縮減等が可能) 項目 入学対象 内容 〇様々な理由により、義務教育を修了できなかった人    〇本国で義務教育を修了していない外国籍の人    〇不登校などの事情により、義務教育が十分に受けられなかった人 等 2 全国の設置状況 ・現在、公立夜間中学は、17都道府県に 44校設置(令和5年4月時点) 5ページ 3 全国の公立夜間中学の状況 【令和 4 年度夜間中学等に関する実態調査(令和4年5月1日現在)文部科学省調査を基に作成】 T 学校規模・体制 ◆学校別生徒数(調査回答:40校) 1校あたり平均:39.0人 ◆教職員数 校長or教頭1名、教諭8名、養護教諭1名、非常勤講師4名、事務職員1名 (専任教職員数を40校で割った数字(専任職員平均)を切り上げた数) 6ページ U 夜間中学生徒数の実態 ◆生徒数(夜間中学に通う生徒1,558人) 日本国籍を有しない者:66.7% ・夜間中学への入学理由 中学校程度の学力の習得 359人 23.0% 日本語会話能力の習得 299人 19.2% 高等学校入学 272人 17.5% 読み書きの習得 231人 14.8% 中学校教育の修了 152人 9.8% 職業資格の取得 19人 1.2% 日本の文化理解 16人 1.0% その他(※入学理由不明含む) 210人 13.5% 合計 1,558人 100.0% ≪内訳≫ ・日本国籍を有する生徒(33.3%)の年代区分等 日本国籍を有する生徒の38%が60歳以上 ・日本国籍を有しない生徒(66.7%)の年代区分等 日本国籍を有しない生徒の54%が16歳〜39歳 7ページ V 夜間中学卒業後の状況(令和3年度卒業生) ◆令和3年度に夜間中学を卒業した生徒数:264人 卒業生の57%が高等学校進学又は就職 8ページ V 市立夜間中学に対するニーズについて (市立夜間中学アンケート調査結果) 1 アンケートの方法 (1)期 間:令和5年3月17日から4月17日まで (2)回答方法:インターネット、はがき付きアンケート用紙 (3)用紙配布:各区役所・支所、図書館、市内社会福祉協議会、各生涯学習センター、(公財)愛知県国際交流協会、(公財)名古屋国際センター、(公財)名古屋YMCA、ユースクエア(青少年交流プラザ)、   名古屋市教育センター(ハートフレンドなごや)、名古屋市教育館、子ども・若者総合相談センター、子ども適応相談センター(サテライト)、名古屋市博物館・美術館・科学館、愛知県生涯学習推進センター、   市民情報センター、日本語教育相談センター、愛知県夜間学級、自主夜間中学、地域日本語教室、NPO法人 等 2 アンケートの結果   有効回答数:91件(インターネット 32件、はがき付きアンケート 59件)   ※以下、世代によりニーズが異なるため、一部の結果について59歳以下と60歳以上に分けて表示しています。 [質問] あなたの国籍を教えてください。     日本国籍 44人 外国籍 46人 無回答 1人 [外国籍の方の内訳]     ネパール 12人 フィリピン 10人 韓国 7人 スリランカ 2人 ブラジル 2人 ペルー 2人 コロンビア 1人 中国 1人 モンゴル 1人 無国籍(難民) 1人 無回答 7人 9ページ [質問] あなたは何歳ですか。    19歳以下 39人(内日本国籍8人、外国籍31人)     20〜39歳 11人(内日本国籍6人、外国籍4人、無回答1人)     40〜59歳 20人(内日本国籍14人、外国籍6人)     60歳以上 20人(内日本国籍16人、外国籍4人)     無回答 1人 [質問] あなたは中学校を卒業していますか。     卒業している 60人     卒業していない 10人     卒業はしたが、十分に通えなかった 16人     現在、中学生である 3人     無回答 2人 10ページ [「卒業していない」又は「卒業はしたが、十分に通えなかった」方の内訳 ] 「卒業していない方」は外国籍の方が、「卒業はしたが、十分に通えなかった方」は日本国籍の方が多いという結果となっています。 [質問] 夜間中学で学んでみたいと思いますか。または、夜間中学のことを知らせたいと思う人があなたのまわりにいますか。(いくつでも回答可)    「まわりにいない。自分も勉強したいと思わない」は24人となっており、全体の回答数が91人のため、差し引き67人、およそ74%の方は夜間中学で学びたい(人がいる)ということが読み取れます。 [質問] あなたは、なぜ夜間中学で勉強したいのですか。(いくつでも回答可) ] 高校などへの進学や就職をしたいから 32人     中学校の勉強をしたいから 26人     外国にルーツをもつ方で日本語を学びたいから 25人     読み書きを覚えたいから 12人 中学校の卒業証書が欲しいから 9人     その他 9人 11ページ [夜間中学で勉強したい「その他」の理由として寄せられた主なご意見] ※一部表現を編集・補足しています。 ○ 中学1年生からグレてまともに学校に行かなかったから。1からまたやり直したい。 ○ 今の中学校もサポートしてくれますが、もっと少ない人数で勉強できたら気楽なのになぁと娘が感じている様子です。 ○ 今まで学校に通ったことがない外国人の知り合いがいる。 ○ 学校という学びの場を経験できなかった人にとって、教科だけを学ぶというよりは仲間と共に学ぶという学校というものを体験することが必要である。夜間は、働きながらでも学ぶ時間が取れ、同じような立場の人がコミュニティをつくりながら、 お互いを支え合い、「生きる」ことの学びにつながっていく。 ○ わたしのまわりに日本での中学卒業資格を持たない外国につながる子どもがおり、その先(高校進学など)に進むことが難しいと感じています。そういう若者が学べる場、次の選択肢(高校や就職等)につながれる場が必要だと思います。 ○ 私自身ではないが夜間中学校で学ぶことで日本の中学生として学ぶ知識や技能を身に付けたい人がいるから。 12ページ W 名古屋市における市立夜間中学の設置の枠組 1 開校年次:令和7年4月 2 設置場所:名古屋市立笹島小中学校内に設置 市内全域からのアクセスが便利であること、既存の学校施設を有効に活用することなどから、名古屋市立笹島小中学校内に設置し、校舎の一部を活用して開校する。 3 設置形態:単独校として開設 設置形態については、既存の中学校に開設する「二部学級」又は公立夜間中学を一つの学校として設置する「単独校」という形態が想定されるが、本市では夜間中学における教育活動の充実を重視し、 単独校として設置して夜間専任の学校長による学校運営体制をとる。 4 入学対象 学齢期(満15歳に達した日以降の最初の3月31日まで)を過ぎた方で、以下のいずれかの要件を満たす方を入学対象とする。   ・様々な理由により、義務教育を修了できなかった方   ・本国で義務教育を修了していない外国籍の方   ・不登校などの事情により、義務教育が十分に受けられなかった方   なお、原則、名古屋市内に在住の方とするが、他市町村からの受入については、愛知県教育委員会事務局との連携のもと、入学を希望する方の居住地区の市町村と費用負担などについて調整を行う。 5 学校規模:1学年1学級 全国の夜間中学における在籍者数の平均が3学年で 39.0人(令和4年5月1日時点)であり、愛知県教育・スポーツ振興財団が運営する中学夜間学級の直近3か年の入学者数の平均が 15.7 人である実績を考慮し、1学年1学級を想定する。 13ページ 6 修業年限:3年(最長6年) 通常の中学校と同様に3年間で中学校の教育課程を修了することとするが、3年間で中学校の教育課程を修了することが困難となることも想定されるため、個々の状況に応じて最長6年まで在籍を可能とする。  さらに、校長が特に必要と認めた場合は、この限りではない。 7 入学時期:4月を基本とする 1 年間の教育課程を踏まえて 4月入学を基本とするが、年度途中の入学希望者について、個々の状況に応じて年度途中での入学も可能とする。 8 編入学対応:中学2年、中学3年からの編入学も可能とする 中学校の教育課程を修了するために必要な学びの期間は、入学時の習熟度や学習習得状況を踏まえて設定する必要があり、適切な学びの期間を設定するため、中途学年の2年、3年からの編入学も可能とする。   なお、夜間中学の開校時においても入学希望者の学習習得状況を確認して、すべての学年への入学を可能とする。 9 不登校になっている学齢生徒への支援 学級定員の範囲内において、名古屋市内に在住する中学生を対象とし、夜間中学で学ぶことについて検討する。 なお、受入の際は、在籍校に籍を残したままとし、在籍校で指導要録上の出席扱いとする。 参考 <学齢生徒の受入をする際に留意すること> @ 名古屋市立中学校に対して、受入の趣旨について十分説明を行うようにする。 A 当該生徒の受入体制を整えるとともに、在籍校における支援体制について確認した上で実施するようにする。 B 受入の際は、授業見学や本人及び保護者の面談を行うようにする。 C 当該生徒の在籍校との連携を十分に図るようにする。 14ページ X 名古屋市における市立夜間中学の学びの方向性  本市で設置する市立夜間中学については、本市教育委員会が行った「市立夜間中学ニーズ調査アンケート」や「市立夜間中学の設置に関する有識者等会議」での意見を踏まえて、以下のような取組を進める。 1 名古屋市が設置する市立夜間中学がめざす姿  多様性を尊重しながら、一人一人を大切にし、誰もが安心して学ぶことができる生徒が主役の学校  本市においては、「様々な理由により、義務教育を修了できなかった方」、「本国で義務教育を修了していない外国籍の方」、「不登校などの事情により、義務教育が十分に受けられなかった方」がいるものと考えられる。  あわせて、前述のニーズ調査アンケートによって、「高校などへの進学や就職をしたい方」、「中学校の勉強をしたい方」、「外国にルーツをもつ方で日本語を学びたい方」について入学ニーズがあることが分かっており、それぞれの回答者の年齢や国籍から、夜間中学には多様な属性の生徒が入学することが想定される。 ○入学ニーズの上位 3項目(複数回答可) 順位 1 位 ニーズ(回答者数) 高校などへの進学や就職をしたい(32人) 順位 2 位 ニーズ(回答者数) 中学校の勉強をしたい(26人) 順位 3 位 ニーズ(回答者数) 外国にルーツをもつ方で日本語を学びたい(25人)  さらに、有識者等会議において、夜間中学に必要な視点として「互いの違いを認め合える雰囲気づくり」「外国にルーツがある生徒が安心して学べる環境づくり」「一人一人を大切にしていく学び」「個別最適な学びの展開」「学校行事や学級活動など、生徒が主体となる学校づくり」などの意見が上がった。  以上のことから、本市の夜間中学は、様々な背景を抱える生徒に対して、「多様性を尊重しながら、一人一人を大切にし、誰もが安心して学ぶことができる生徒が主役の学校づくり」を進める。 15ページ 2 市立夜間中学の学校づくりの視点   市立夜間中学がめざす姿の実現に向けて、入学ニーズをもつ方々の誰もが安心して学べるように、次の7つの視点を取り入れる。 @ 日本語や日本文化への不安に配慮   外国にルーツのある生徒等に対し、日本語指導の教材や映像などを活用した学習を積極的に取り入れ、生徒の理解度に応じた授業を展開する。あわせて、日本の学校生活に関する相談等について、母語学習協力員をはじめ適宜通訳等による支援を検討する。 A 生徒が継続して学校生活を送ることのできる環境に配慮 通常使用する教室を 1 階に設置する等、バリアフリーを意識した施設・設備となるよう進める。あわせて、経済的事情で学校生活を断念することがないよう、学校行事や教材を工夫するなど、生徒の費用負担を軽減するよう配慮する。 B 教育相談体制の充実 きめ細かな教育相談に対応できるよう、子ども応援委員会と連携し、スクールカウンセラーの配置やスクールソーシャルワーカーの派遣など、専門家による支援を検討する。 C 少人数指導の充実 学習する教科や内容に応じ、教科担当だけでなく複数の教員等により、一つのクラスで個別指導や少人数による指導の実施を検討する。   また、外国にルーツのある生徒等に対し、個々の日本語能力に応じて取り出し指導の実施を検討する。 D 学習支援体制の充実 個に応じたきめ細かな学習支援体制づくりのため、学習支援講師等の配置を検討する。   また、外国にルーツのある生徒等が授業を理解できるよう、授業中における通訳等による支援を検討する。 E ICTの活用 ICTを活用した多様な学びの実現をめざすため、教室のICT環境の整備や全生徒への一人1台タブレット端末の配付を検討する。 F キャリア教育の充実   学ぶことと自己の将来とのつながりを意識しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう支援する。 16ページ Y めざす姿の実現に向けた学校づくり 「X 名古屋市における市立夜間中学の学びの方向性」で示した学校づくりにおける7つの視点を 1 多様性を尊重した学校づくりのための取組 2 安心して学べる学校教育の環境整備のための取組 に分類・整理するとともに、教職員の配置及び勤務態勢や関係機関との連携、教職員・市民への広報などについて 3 設置・運営上の取組 4 その他の取組 として、めざす姿の実現に向けた学校づくりを以下のようにまとめた。 1 多様性を尊重した学校づくりのための取組 【該当する7つの視点:@CDF】 [7つの視点@] 日本語や日本文化への不安に配慮 外国にルーツのある生徒等に対し、日本語指導の教材や映像などを活用した学習を積極的に取り入れ、生徒の理解度に応じた授業を展開する。あわせて、日本の学校生活に関する相談等について、母語学習協力員をはじめ適宜通訳等による支援を検討する。 関連する取組 ・外国にルーツのある生徒等が、日本語での教科指導や学校生活に適応できるよう、日本語指導講師や母語学習協力員などの適切な配置を検討する。 ・国際センターや地域日本語教室、日本語学校、NPO法人などと連携し、できるだけ多くの人材を確保し、複数体制での日本語指導を検討する。 ・外国にルーツのある生徒等に対し、必要に応じ始業前の時間等を利用して日本語指導を行うような支援体制づくりを検討する。 [7つの視点C] 少人数指導の充実 学習する教科や内容に応じ、教科担当だけでなく複数の教員等により、一つのクラスで個別指導や少人数による指導の実施を検討する。 また、外国にルーツのある生徒等に対し、個々の日本語能力に応じて取り出し指導の実施を検討する。  関連する取組  ・一人一人の習熟の度合いや理解の進度を考慮し、必要に応じて下位の学年の学習内容の学び直しに対応する。 17ページ [7つの視点D] 学習支援体制の充実  個に応じたきめ細かな学習支援体制づくりのため、学習支援講師等の適切な配置を検討する。  また、外国にルーツのある生徒等が授業内容を適切に理解できるよう、授業中における通訳等による支援を検討する。  関連する取組  ・日本語指導講師や発達障害対応支援講師などの学習支援講師の適切な配置を検討する。 ・母語学習協力員や発達障害対応支援員などの適切な配置を検討する。 ・個別に学習のサポートができるような支援体制づくりのため、支援団体等のボランティアを活用する。 [7つの視点F] キャリア教育の充実 学ぶことと自己の将来とのつながりを意識しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう支援する。  関連する取組 ・学校行事を大切にするとともに、卒業後すぐに社会参画できること等を意識した学習や、ソーシャル・スキル・トレーニングの手法を用いた学習など体験的な学習を取り入れ、社会性を育成する。 ・学ぶ意欲とともに基礎的・基本的な知識及び技能を確実に身に付け、実社会で生きる「確かな学力」(注 2)を育成するため、ICTをはじめとした様々な学習教材の活用を検討する。 ・卒業後の進路はもとより、学ぶことと自分自身の将来とのつながりを意識し、自らの将来を設計できる能力を身に付ける等、自分らしい生き方を実現できるよう支援するため、キャリアナビゲーターの配置を検討する。 ・生徒の可能性を信じ、学習評価については学習による伸びを積極的に認めるとともに、授業や学校行事においては言語活動や芸術活動などの自己表現の機会を大切にし、生徒自身が自己の成長を実感することで、学ぶ喜びと自信につながるよう支援する。 注 2:確かな学力…知識や技能に加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力など 18ページ 2 安心して学べる学校教育の環境整備のための取組 【該当する7つの視点:ABE】 [7つの視点A] 生徒が継続して学校生活を送ることのできる環境に配慮 通常使用する教室を 1 階に設置する等、バリアフリーを意識した施設・設備となるよう進める。あわせて、経済的事情で学校生活を断念することがないよう、学校行事や教材を工夫するなど、生徒の費用負担を軽減するよう配慮する。 関連する取組 ・経済的事情により就学が困難である生徒に対し、就学援助に類する経済的支援の実施について検討する。 ・昼間の中学校スクールランチ方式を参考にしながら、給食を希望する生徒への給食の提供及び費用負担のあり方について検討する。 ・体調面における相談や体調不良などが発生した場合に速やかに対応ができるようにするよう、養護教諭の配置を検討する。 [7つの視点B] 教育相談体制の充実 きめ細かな教育相談に対応できるよう、子ども応援委員会と連携し、スクールカウンセラーの配置やスクールソーシャルワーカーの派遣など、専門家による支援を検討する。 関連する取組 ・社会福祉にかかる社会的支援が必要な生徒のため、区役所等の関係機関と連携する。 [7つの視点E] ICTの活用 ICTを活用した多様な学びの実現をめざすため、教室のICT環境の整備や全生徒への一人1台タブレット端末の配付を検討する。 関連する取組 ・タブレットを利用した授業を円滑に進められるよう、ICT支援員の配置を検討する。 ・授業を行う教室以外の場所で履修することが可能となるよう、オンライン授業が配信できる環境の整備を検討する。 19ページ 3 設置・運営上の取組 1 教職員の配置及び勤務体制等 (1)校長、教頭、教諭、養護教諭及び学校事務職員や、学校用務業務員、教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)、学校医など、適切な教職員体制を検討する。 (2)教職員定数や勤務時間などについて、市立高等学校の定時制や夜間中学を設置している他の自治体を参考に検討する。 2 教職員の研修体制等 (1)市立夜間中学に勤務する教員に対して、夜間中学特有の支援や課題などについての研修を充実し、他自治体の夜間中学への視察を実施する等、さらなる教育内容の充実を図る。 (2)他の市立学校教員への夜間中学での研修機会の提供や、人事交流を進めることなどにより、夜間中学の理念の普及や教員の資質の向上に努める。 3 愛知県教育委員会との連携 夜間中学の状況や生徒募集などの情報を共有するとともに、生徒を受け入れる就学の仕組み及び教育活動の円滑な推進に向けて対応を協議する等、連携を図る。 4 愛知県内の他市町村からの受入 名古屋市外在住の方が名古屋市の夜間中学に入学を希望した際は、就学及び費用負担などに関する協定書を各市町村と締結した上で入学を受け入れることを検討する。   なお、他市町村からの受入に関する協定内容や協定書の締結までの仕組みづくりなどについては、今後、他市町村や愛知県とも十分に協議した上で決めていく。 20ページ 4 その他の取組 1 関係機関・支援団体との連携 (1)自主夜間中学等との連携 県内の自主夜間中学や子ども・若者総合相談センター、国際センター、地域日本語教室などと連携し、協力の輪を広げていく。 あわせて、外国にルーツのある生徒等への日本語指導の充実のため、日本語指導のボランティア等を活用する。 (2)他の自治体の夜間中学との連携   愛知県をはじめ他の自治体の夜間中学について、現状や課題などの調査研究を行うとともに、相互の情報共有及び視察などにより連携を図る。 2 継続的な改善への取組 市立夜間中学は、名古屋市として初めて設置する学校であり、主役である生徒のニーズを踏まえ、常に変化し続ける必要がある。 夜間中学では、適宜改善に向けた取り組みを進めていくため、開校後も学識経験者や地域の方及び外国籍の方に対する支援をしている方など、より広範な関係者の意見を聞きながら、継続的に学校の運営状況を把握する。 3 教職員・市民への広報 (1)教職員への広報    教職員が夜間中学について、教育活動や勤務体制を具体的に理解できるよう、夜間中学の概要や目標、教育課程などを周知していく。 (2)市民への広報 入学対象となる方やその周りの方々に届く情報提供を進め、市民に夜間中学を広く理解していただくため、関係機関と連携した適切な時期における説明会の開催、外国語版パンフレットの作成などを検討する。