(15ページ) 第2部 障害者基本計画(第5次)                        第1章 目標とする地域社会  「障害のある人もない人もお互いに人格と個性を尊重し合いながら共に生きる地域社会」 第2章 目標とする地域社会を実現するための施策展開における視点  1 地域での主体的な行動を促すための環境整備  2 インクルーシブな社会の推進  3 生涯を通じて切れ目のない支援の提供 第3章 重点的に取り組むべき施策  1 障害を理由とする差別の解消を進めるとともに、権利擁護の推進を図ります。  2 社会のあらゆる場面でのアクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実を図ります。  3 子どもの早期発達支援体制を拡充するなど障害児支援の強化を図るほか、インクルーシブ教育システムの構築を推進します。  4 生涯を通じて安定した地域生活がおくれるよう、当事者主体の総合的な支援を進めます。  5 雇用・就業に関する支援を拡充します。  6 障害者を支援する人材の育成や確保を図ります。  7 地域における防災・防犯等の対策を推進します。 第4章 分野別施策の基本的方向  第1 安全・安心な生活環境の整備  第2 情報アクセシビリティの向上と意思疎通支援の充実  第3 差別の解消、虐待防止及び権利擁護の推進  第4 自立した生活の支援・意思決定支援の推進  第5 保健・医療の推進  第6 雇用・就業の支援  第7 教育・発達支援の充実  第8 防災・防犯などの推進 (16ページ) 白紙 (17ページ) 第1章 目標とする地域社会 「障害のある人もない人もお互いに人格と個性を尊重し合いながら共に生きる地域社会」 ○すべての障害者が社会の一員としてあらゆる活動に参加できる地域社会 ○すべての障害者が希望する生活を選択できる地域社会 ○すべての障害者がそれぞれの障害特性及び程度に応じた意思疎通手段を選択でき、情報の取得や利用手段を選択できる地域社会 ○社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮がなされ、障害を理由とする差別のない地域社会 平成19(2007)年に我が国が署名した「障害者権利条約」では、「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」を目的とし、社会モデル※9や合理的配慮の概念を採用しています。この概念は、条約の批准に当たって整備された改正「障害者基本法」をはじめとする国内法において反映され、障害者が必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体として、地域で共生することができる社会の実現に向けた取り組みが進められてきました。 (18ページ) 一方で、障害や障害者に対する理解の普及啓発、障害者本人やその家族のこれまで経験したことのないような高齢化への対応、地域療育センターにおける初診待機期間の長期化、障害福祉サービス事業所などの質の向上などが課題となっています。一人ひとりの人権が尊重され、地域社会の中で、差別や偏見を受けることなく自分らしく生きることができるよう、常に直面する課題を把握し、障害者やその家族を始めとした関係者の意見を踏まえ、解決に向けた施策の展開に努めます。 また、「障害のある人もない人もお互いに人格と個性を尊重し合いながら共に生きる地域社会」の実現は、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念とも軌を一にするものであり、社会を構成する全ての人がお互いを思いやる気持ちを持ち、それぞれの役割と責任を自覚して主体的に取り組むことによって達成されるものです。障害者が日常生活又は社会生活で受ける制限は、社会が作り出していることから、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという障害の社会モデルの考え方を踏まえ、本市が求められる公的役割を果たすとともに、引き続き市民の皆様と協働してインクルーシブな社会の実現をめざしていきます。 (19ページ) 第2章 目標とする地域社会を実現するための施策展開における視点 1 地域での主体的な行動を促すための環境整備 障害者が地域で安心・安全に生活をおくるためには、障害者の社会参加を制約している社会的障壁の除去を進め、技術の進歩の動向を踏まえた取組や社会のバリアフリー化を推進するとともに社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティ※10の向上を図ることが重要です。障害者に対する差別の禁止や虐待の防止をはじめとした権利擁護を推進するとともに、全ての市民に対して障害や障害者に関する正しい理解の促進を図り、障害者が誰一人取り残されることなく自立した生活を送り、自らの選択と決定に基づき地域社会の一員として共に暮らしていくための環境整備に努めます。 2 インクルーシブな社会の推進 本市の各分野における施策において、年齢、性別、国籍とともに障害の有無により分け隔てない取組を推進します。特に事業の企画などに当たっては、多様な主体を想定したものとなるよう、障害者や家族を始めとした関係者の意見を反映するよう努めます。 3 生涯を通じて切れ目のない支援の提供 年齢、性別、障害の種別及び程度、特性、生活の実態などを踏まえ、障害者の生活に関わる保健・医療・障害福祉・介護・教育・労働などの各分野の関係機関が連携を図りながら、生涯を通じて総合的かつ横断的な支援を提供します。 また、そのための体制づくりに必要となる障害者を支援する人材の確保と質の向上のための施策を進めます。 (20ページ) 白紙 (21ページ) 第3章 重点的に取り組むべき施策 1 障害を理由とする差別の解消を進めるとともに、権利擁護の推進を図ります。 〇「障害者差別解消法」や同法に基づく基本方針、「障害者差別解消推進条例」などを踏まえ、障害を理由とする差別の解消を推進し、障害のある人もない人も互いに尊重し、共に生きる地域社会づくりを進めます。 〇障害者の日常生活や社会生活を制限しているソフト・ハードの両面にわたる社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮がなされるよう、必要な施策を推進します。 〇障害者虐待について、市民に対する広報・啓発をより一層進めます。 また、虐待の防止や早期発見につながるよう障害特性の理解促進や関係機関との連携を図り、養護者に対する支援を進めるほか、障害福祉サービス事業所等に従事する職員を対象とした研修の充実及び事業者に対して適切な運営に係る指導に努めます。 2 社会のあらゆる場面でのアクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実を図ります。 〇「福祉都市環境整備指針」に基づく建築物や交通などのバリアフリーとともに、人的支援体制の整備などソフト面のバリアフリーを推進し、合理的配慮の的確な実施のための必要な環境の整備に努めます。 〇障害者が自らの意思を自ら発信し、また、必要な情報を自ら望む手段で円滑に取得できるよう、意思疎通支援のための支援、情報アクセシビリティの向上を図ります。 (22ページ) 3 子どもの早期発達支援体制を拡充するなど障害児支援の強化を図るほか、インクルーシブ教育システムの構築を推進します。 〇子どもたちの社会性や豊かな人間性を育成するため、可能な限り障害のある子どもとない子どもとの交流及び共同学習を進めるとともに、インクルーシブ教育システムの構築を推進します。 〇障害児や発達に遅れなどのある子どもと家族が、身近な地域で早期に発達支援を受けることができるよう、地域療育センターを増設します。 〇地域療育センターに地域支援・調整部門を設置することにより、早期子ども発達支援と子ども・子育て支援を一体的に実施し、インクルージョンの推進を図ります。 〇日常生活を営むため医療を要する状態にある障害児(以下「医療的ケア児」という。)等が安心して日常生活を送ることができるよう、医療・保健・福祉・教育・保育等に関する業務を行う各関係機関の連携を促進するほか、支援体制の充実に努めます。 4 生涯を通じて安定した地域生活がおくれるよう、当事者主体の総合的な支援を進めます。 〇自ら意思を決定することに困難を抱える障害者が、自らの意思が反映された生活を送ることができるよう支援に努めます。 〇障害の重度化・障害者の高齢化(以下「障害者の重度化・高齢化」という。)や家族など養護者の高齢化に伴う必要な支援を実施するとともに、高齢障害者に対して、障害福祉サービスなどの障害者福祉施策及び介護保険制度などの高齢者福祉施策との連携のもと、その障害特性や実態に応じた支援の実施に努めます。 (23ページ) 〇全ての障害者を対象とした身近な相談窓口である障害者基幹相談支援センターの体制強化及び重層的支援体制整備事業や関係機関との連携を一層図ることにより、適切な支援に繋がるように努めます。 〇自立した生活の実現に向け、医療・心理・社会・教育・職業などの総合的なリハビリテーションの提供に努めます。 〇障害者に対する個別の支援を充実させ、本人の意向を尊重した上、入所施設から地域生活への移行を促進するとともに、精神科病院からの退院の促進や、地域の一員として安心して自分らしい暮らしができるよう、保健・医療・福祉等が連携して精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構築します。 〇障害者が住み慣れた地域で安心して自らが望む生活を営めるよう住宅の環境整備に関する相談・支援を推進するとともに、グループホームの拡充など生活の場の確保や質の確保・向上を図ります。 〇障害者が安心して気軽にスポーツを楽しむことができる環境づくりを行うため、新たな障害者スポーツセンターの整備を行うなど障害者スポーツの振興に努めるとともに、文化芸術活動なども含めて生涯学習の振興に努めます。 5 雇用・就業に関する支援を拡充します。 〇本市の障害者雇用について、全市において障害者の理解を進めつつ、重度障害者を含む計画的な雇用機会の拡大に努めます。 〇「障害者優先調達推進法」を踏まえ、障害者の雇用・就労機会の拡充と賃金・工賃水準の引き上げにつながる支援を推進します。 〇市内4か所に設置されている障害者就労などの相談支援機関を中心に就労やそれに伴う日常生活上の相談に応じるとともに、関係機関と連携を図りながら就業の確保や就労定着支援を推進し、就労の安定を図ります。 (24ページ) 6 障害者を支援する人材の育成や確保を図ります。 〇障害福祉サービスや保健・医療、教育、意思疎通支援など、様々な分野において、障害者支援に必要な人材の育成・確保に努めます。 〇障害者を支援する人材の資質向上を図るとともに、より働き甲斐のある職場環境と人材定着のための施策を推進します。 7 地域における防災・防犯等の対策を推進します。 ○避難行動に支援が必要な方の個別避難計画作成や地域における助け合いの取り組みを進めるとともに、要配慮者自身への防災啓発を図ります。 〇小学校などの指定避難所において要配慮者のための空間となる福祉避難スペースの確保を進めるとともに、一般の指定避難所や福祉避難スペースでの生活が困難な要配慮者を対象とした福祉避難所についてか所数の増加を図ります。 〇犯罪及び消費者トラブルによる被害や火災による死傷者の発生などを防止するため、防犯や防火などに関する情報の周知・啓発活動に努めます。 (25ページ) 図3:障害者基本計画における基本的な考え方 【目標とする地域社会】 障害のある人もない人もお互いに人格と個性を尊重し合いながら共に生きる地域社会 ↓ 施策展開の3つの視点 〇地域での主体的な行動を促すための環境整備 〇インクルーシブな社会の推進 〇生涯を通じて切れ目のない支援の提供 ↓ 重点的に取り組むべき7つの施策  1 障害を理由とする差別の解消を進めるとともに、権利擁護の推進  2 社会のあらゆる場面でのアクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実  3 子どもの早期発達支援体制を拡充するなど障害児支援の強化を図るほか、インクルーシブ教育システムの構築を推進  4 生涯を通じて安定した地域生活がおくれるよう、当事者主体の総合的な支援  5 雇用・就業に関する支援を拡充  6 障害者を支援する人材の育成や確保  7 地域における防災・防犯等の対策を推進 ↓  8つの分野別施策  1 安全・安心な生活環境の整備   2 情報アクセシビリティの向上と意思疎通支援の充実   3 差別の解消、虐待防止及び権利擁護の推進   4 自立した生活の支援・意思決定支援の推進   5 保健・医療の推進   6 雇用・就業の支援   7 教育・発達支援の充実   8 防災・防犯などの推進 (26ページ) 白紙 (27ページ) 第4章 分野別施策の基本的方向 第1 安全・安心な生活環境の整備 現状と課題 全ての人が安全、安心に、共に暮らしていくことができるまちづくりを進めるためには、生活を営む上でのそれぞれの方にとっての障壁(バリア)を取り除き、バリアフリー化を進めることが重要です。 本市では、誰もが安全で快適に都市施設を利用できるよう、「福祉都市環境整備指針」に基づき、公共的建築物はじめ公共交通機関、道路、公園などの都市環境のバリアフリー化を推進しています。 また、「バリアフリー法」に基づく本市の道路や公園の整備に関する条例や愛知県の「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」及び国の「移動等円滑化の促進に関する基本方針」など、バリアフリーに関する法制度が整備され、生活環境におけるバリアフリー化も進んできています。さらに、「バリアフリー法」に基づき金山駅地区、名古屋駅地区、栄・久屋大通駅地区及び大曽根駅地区を「重点整備地区」とした基本構想を策定し、バリアフリー整備を順次進めてきました。 加えて、令和8(2026)年に開催される第20回アジア競技大会・第5回アジアパラ競技大会のメイン会場である瑞穂公園陸上競技場の周辺地区を重点整備地区に選定し、令和4(2022)年11月に基本構想を策定して、バリアフリー整備を進めています。 しかしながら、建築物や道路などのハード面や、周囲の理解が得られていないことによるソフト面におけるバリアは依然として存在している現状があります。 国において、バリアフリー化を一層推進するために、「バリアフリー法」が改正されるなど更なる法整備が進んでいます。本市としても、障害者の社会参加の促進に伴う多様なニーズに対応するため、当事者が参加し、当事者の意見を活用して共に決めていく過程を経ながら、持続的・段階的・継続的にバリアフリー化を発展させていくことが必要です。 (28ページ)  また、「障害者差別解消法」及び「障害者差別解消推進条例」の趣旨に基づき、ハード面だけでなく、人的支援体制の整備に向けた人材育成などのソフト面も含んだ環境整備を推進していく必要があります。 障害者が地域の中で希望する暮らしを自分で選び、安心した生活を営むためには、地域において生活ができる多様な暮らしの場の確保は極めて重要な課題です。 また、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(以下「住宅セーフティネット法」という。)」の趣旨に基づき、公的賃貸住宅だけでなく、民間賃貸住宅を活用した重層的な住宅セーフティネット機能の強化が求められる中、障害者が入所施設や精神科病院から地域生活への移行を進めていくため、民間賃貸住宅への入居に必要な調整などの支援を引き続き行うとともに、より円滑に入居できる仕組みづくりも必要です。 選挙は、民主主義の根幹を成すものであり、有権者が政治に参加することのできる最も重要かつ基本的な機会です。有権者は、候補者・政党などの政策や公約などを見極め、積極的に投票に参加し、自らの意思を政治に反映させることができます。 公職の選挙においては、有権者の方々の投票に資するため、「公職選挙法」に基づく選挙公報や政見放送の制度により、候補者・政党などに関する情報が提供されています。選挙公報については、市長選挙及び市議会議員選挙とも選挙公報全文を内容とした点字・音声による候補者情報を作成して希望者及び視覚障害者団体に配付しています。候補者の数が多い場合でも、できる限り早く配付できるよう努めていく必要があります。 さらに、他の障害者団体や障害者施設に対しても配付できるよう検討する必要があります。投票所においては、障害特性に配慮した投票環境の整備や人的介助を行っていますが、今後も、誰もが投票しやすい投票所となるよう努める必要があります。 (29ページ) 施策の基本的方向 1 福祉環境整備の促進 (1)全ての人が利用しやすい都市環境整備の促進 ア 建築物・道路・公園などの福祉環境整備 本市が整備及び設置する建築物・道路・公園などの整備にあたっては、福祉都市環境整備指針に基づいて、障害の特性などに配慮するとともに、当事者の意見を活用するなどにより、全ての人が利用しやすいユニバーサルデザインの視点で整備を進めます。 また、民間建築物などについても、指針の理念などについて周知啓発を図ります。 イ 公共交通機関におけるバリアフリー化の推進 地下鉄駅におけるエレベーターや可動式ホーム柵の設置、市バス車両(全車両ノンステップバス)の更新などを進めます。併せて、民間鉄道駅舎のバリアフリー化や、ユニバーサルデザインタクシーの導入など、本市の「福祉都市環境整備指針」及び国の「移動等円滑化の促進に関する基本方針」に基づいて、バリアフリー化を推進します。 また、市営交通機関の旅客施設及び車両内において、障害特性に配慮した案内表示やトラブルや災害などの緊急時の情報提供の充実を図ります。 ウ バリアフリーの理念の推進 福祉都市環境整備指針の理念や技術的基準について、啓発を行うとともに、人にやさしいまちづくりへの市民、NPOなど各層の積極的な参加と協力を求め、バリアフリーの理念の啓発に努めます。 エ 使いやすさ向上のための整備の推進 様々な障害特性に応じた公共的建築物の施設・設備の使いやすさや、案内情報の分かりやすさの向上に向け、名古屋市歩行者案内サインマニュアルなどを参考に統一化された案内用図記号などの使用の普及や啓発に努めます。 また、名古屋市内の施設等のバリアフリー情報を発信する市ウェブサイトにおいて、障害者の利用に配慮された施設等を周知し、その内容の啓発に努めます。 (30ページ) (2)人的支援によるバリアフリーの充実 ハード整備だけでなく、人による援助の充実を図るため、障害者の多様なニーズ及び特性に応じた適切な対応がなされるよう、障害や障害者に対する理解を深めるための広報・啓発の実施や、人材の育成による人的支援体制づくりを推進します。 また、職員対応要領に基づく職員研修などを通じた人的支援体制づくりを進めることにより、本市が実施する事業などにおけるバリアフリー化を推進します。 (3)移動円滑化のための面的な整備の推進 行政だけではなく、当事者や事業者なども共に参加し、地域全体における面的なバリアフリーを促進します。 ア バリアフリー基本構想重点整備地区のバリアフリーの推進 関係事業者、高齢者、障害者、地元市民などと連携して策定したバリアフリー基本構想に基づき、重点整備地区における面的なバリアフリーを促進します。 イ バリアフリーのまちづくりに向けた取組強化 「バリアフリー法」に基づき、市町村全体のバリアフリー化の方向性を示す移動等円滑化促進方針である「マスタープラン」及び地区単位での基本構想の検討を進めます。 ウ 福祉施設など周辺の面的なバリアフリーの推進 福祉施設や公共性の高い施設など周辺の一定地区内をユニバーサルゾーンとして設定し、施設関係者、地域住民、障害者、警察、事業者などが協議し、歩行者優先の発想による歩道空間であるセイフティライブロード事業の整備の推進や障害者福祉の啓発を重点的に実施することにより、面的なバリアフリーを推進します。 (31ページ) 2 住宅・住環境の整備の推進 (1)グループホームの充実 障害者が、世話人の援助を受けながら、地域の中で安心して共同生活をおくるグループホームの充実を図るとともに、地域生活支援拠点等※11における機能の充実を図ります。 (2)市営住宅における住宅の確保など 市営住宅における住宅の確保や福祉環境整備の推進により、公的賃貸住宅における住まいや生活の場の確保を図ります。 ア 市営住宅における住宅の確保などの推進 市営住宅の福祉向募集における障害者入居枠を確保します。さらに、車いす利用者向市営住宅の住戸内の仕様の一部を、入居予定者の障害の状況に応じた仕様で供給する方式を推進します。 また、市営住宅のグループホーム利用を引き続き図ります。 イ 市営住宅における福祉環境整備の推進 市営住宅の建替事業におけるバリアフリー化された住宅の供給や、既設市営住宅への手すり・スロープ・エレベーターなどの設置を推進します。 (3)民間賃貸住宅への入居支援 地域での自立した生活が可能となるためには、公的賃貸住宅のほか、民間賃貸住宅への入居も進めていく必要があり、「住宅セーフティネット法」の趣旨に基づき、民間賃貸住宅へ円滑に入居できるよう、不動産事業者や各種相談機関及び居住支援法人等との連絡調整や大家からの入居者に関する相談対応等を行います。 また、不動産団体や福祉団体、居住支援団体などが参加する住宅確保要配慮者居住支援協議会の活動を通じて、障害者基幹相談支援センターや関係団体のネットワークづくりに取り組むことにより、これらの機関・団体による居住支援の促進などを図ります。 (4)住宅の環境整備の支援 住み慣れた住宅環境の改善により、日常生活の安全性の確保や利便性の向上を図るため、障害者の住宅の環境整備に関する相談・支援を実施します。 (32ページ) 3 選挙における配慮 (1)候補者情報の充実 市長選挙及び市議会議員選挙の選挙公報全文を内容とした点字・音声による候補者情報をできる限り早く作成して希望者及び視覚障害者団体に配付するよう努めます。 また、他の障害者団体や障害者施設に対しても配付できるよう検討します。 (2)投票環境の向上 投票所の設備や代理投票など、障害者にも投票しやすい環境づくりに努めます。 ア 円滑な投票確保 投票所内の掲示や備品を準備する際には、障害特性に配慮した設備の充実に努めます。 また、投票所を設置した施設の敷地の入口から投票を記載する場所までの間に段差がある場合は、スロープを設置するほか、設置が困難なときには、適切な人的介助を行い、円滑な投票の確保に努めます。 イ 代理投票における応対 障害などにより自ら投票用紙に記載できない場合における代理投票においては、選挙人の意思確認にあたっては選挙人の状況に応じて、きめ細かく適切に応対するよう努めます。 ウ 投票に関する支援の周知 「投票支援カード」の導入やコミュニケーションボードの設置等、投票に関する支援について市公式ウェブサイトへの掲載等により周知します。 (3)障害(者)理解の向上 投票所に従事する職員の理解と意識を高め、障害特性に応じた適切な対応ができるよう努めます。 (33ページ) 第2 情報アクセシビリティの向上と意思疎通支援の充実 現状と課題 障害者が自立した日常生活及び社会生活を営むために、情報アクセシビリティの向上や意思疎通支援は非常に重要です。 令和4(2022)年度に施行された、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」においては、障害者が、障害特性に合った適切な方法で、障害者でない者が取得する情報と同一内容を同一時点に取得することができるようにすることなどが理念として掲げられました。このような状況のなか、パソコンや携帯情報端末などの情報通信機器やインターネット、スマートフォンアプリなどによる情報伝達技術の進歩により、あらゆる障害特性に応じた情報の収集や意思疎通の手段は多様化し、障害者の社会参加の促進に大きく寄与しています。 このように多様化するICTを取り巻く状況において、情報通信機器のマッチングや利用方法の習得などに関する支援が重要となる一方、情報通信機器の利用が難しい障害特性がある人達のためには、人の手による意思疎通支援が不可欠であり、意思疎通支援を担う人材の育成・確保やサービスの円滑な利用の促進も重要です。 また、例えば、視覚障害者のために点字資料やテキストデータなどが用意されていないことや、知的障害者などにとって難しい語句が使われていることがあるなど、情報の受け手側への配慮が十分とは言えない場合が依然としてあり、情報の取得を困難にしています。 こうした課題を解消するためにも、今後は情報を提供する側を始め、情報の伝達や意思疎通に携わる全ての人たちの意識を高めるなど、一人ひとりの障害特性に配慮したよりきめ細かい情報環境の整備が必要です。 (34ページ) 施策の基本的方向 1 情報のバリアフリー化の推進 (1)市政情報のバリアフリーの推進 市政に関する情報について、障害の有無にかかわらず取得できるよう、ウェブアクセシビリティの推進をはじめとした情報バリアフリーを推進します。 ア ウェブアクセシビリティの推進 市公式ウェブサイトやウェルネットなごやなどで提供する情報のアクセシビリティを推進することにより、ウェブサイトで提供される情報の取得や福祉サービスの利用について、障害特性に配慮するよう努めます。 イ 広報誌などの情報バリアフリーの推進 市が発行するパンフレットなどの紙による広報媒体について印刷物ガイドラインに基づき、点字版や録音版の発行のほか、分かりやすい表現に心がけ、漢字へのふりがな表記や問い合わせ方法の複数表記、音声コードを付けるなど障害特性に配慮するよう努めます。 広報なごやでは、点字版・点字データ・声の広報なごや(デイジー版・音楽CD版)の配布を行うとともに、点字データを市公式ウェブサイト上にて提供します。 ウ 人的支援による情報バリアフリーの推進 窓口などにおいて障害特性に配慮した対応がなされ、必要な情報が取得できるよう、職員への研修などを通じた人的支援体制づくりを進めます。 (2)ICT※12機器利用の促進 情報やコミュニケーションに関する支援機器を必要とする障害者に対して日常生活用具の給付を行います。併せて、ICT機器の操作支援や、地域で活躍するICTボランティアの養成を行うICTサポート推進事業を実施します。さらに、障害者のICT機器の利用機会の拡大やあらゆる障害特性に対応したICT機器を活用したコミュニケーション支援の推進を図ります。 (35ページ) 2 情報・意思疎通の支援の充実 (1)意思疎通支援に関する支援者の養成や活用の推進 意思疎通に関して、障害特性に応じた適切な支援ができるよう、従来の手話通訳者や要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員等の養成・派遣に加えて、知的障害者や発達障害者など意思疎通支援を必要とする障害者への支援について検討します。 ア 意思疎通支援に関する支援者派遣の推進 障害者の日常生活や社会生活を支援するため、意思疎通支援に関する支援者の派遣及び事業の広報啓発に努めます。 イ 意思疎通支援に関する支援者の養成等の推進 手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員をはじめとした障害者の意思疎通を支援する人材の養成を実施します。 また、失語症者向け意思疎通支援者の資質の向上に資する取組を実施します。 ウ 知的障害者・発達障害者などへの意思疎通支援 知的障害者や発達障害者など意思疎通支援を必要とする障害者に対して、医療機関におけるコミュニケーション支援事業を実施するとともに、支援者の育成・確保を進めます。 (2)情報・意思疎通に関する理解の促進 情報の取得や意思疎通が困難な障害者に対する理解の促進に努めます。 ア 情報・意思疎通に関する啓発の実施 点字・手話・要約筆記などの各分野で実施されている講習会を支援します。併せて、市民や民間事業者に対して、知的障害者や発達障害者など意思疎通支援を必要とする障害者理解を深めるための啓発を実施します。 イ 本市における理解の促進 区役所など窓口での円滑なコミュニケーションを可能とするためのタブレット端末を設置します。 また、本市職員に対し手話等の研修を実施するなど資質向上を図り、よりきめ細かい意思疎通支援や「意識のバリアフリー行動宣言」の働きかけを行うことにより、情報バリアフリーの推進を図ります。 (36ページ) (3)意思疎通が困難な障害者への支援 緊急時や災害時などに周囲からの支援や配慮を得ることができるようヘルプカード※13の普及を図ります。 (37ページ) 第3 差別の解消、虐待防止及び権利擁護の推進 現状と課題 障害者が地域で安心して自立した日常生活を営むためには、障害を理由とする差別の解消や、障害者虐待の防止などの取組が大変重要です。 本市では、「障害者差別解消法」及び「障害者差別解消推進条例」に基づき、障害者差別相談センターを中心とした相談体制の整備とともに、本市職員が同法の趣旨を理解し、適切に対応するための職員対応要領の策定、市民への広報・啓発など、障害者差別の解消に向けた取組を進めてきました。 一方で、今なお、障害や障害者に対する誤解や偏見が存在し、周囲の理解が不十分なことにより、障害者の自立や社会参加が妨げられているという現状があります。 令和5(2023)年6月3日には、本市主催の名古屋城バリアフリーに関する市民討論会(以下「討論会」という。)において、参加者から他の参加者に対する差別発言がなされ、言い合いが生じる場面がありました。その場にいた職員は言い合いを制止するために駆け付けましたが、その後、別の参加者から差別用語を含む差別発言がなされたことも含め、発言の制止や注意喚起などの適切な対応を行わず、さらに、討論会終了後においても、差別発言に対する市としての説明や謝罪などの対応も行わなかったという事態が発生しました。 討論会においては、障害者がエレベーターの設置を求める意見を述べたことに対し、「そちらの車いすの方」との発言に引き続き、「わがまま」、「図々しい」、「我慢せい」といった発言がありました。これは、障害のある方とない方を分け隔てた上で、障害者のみに我慢を強いるものです。 (38ページ) また、直接差別用語を用いながら、「産まれながらにして不平等があって平等」、「そんな金はもったいないと思う」といった発言もありました。これは、障害のある方とない方を分け隔てた上で、障害者が障害のない方と同じようにあらゆる分野の活動へ参加する機会を確保する必要はないというものです。いずれも、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現や、全ての障害者が、社会を構成する一員としてあらゆる分野の活動に参加する機会が確保されることといった、障害者差別基本法などの法令に反するものであり、明確な障害者差別です。 本市として、このことを大変重く受け止め、人権擁護の観点から、今回の事案の問題点や課題等を整理・分析し、必要な調査・検討を行い、原因を究明のうえ、再発防止を図るため、「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会を設置し、検証を進めております。最終報告では、差別事案の背景となった過去の経緯も含めて検証される予定であり、今後、検証結果も踏まえ、差別を生まないよう構造的に施策を推進し、多面的な再発防止に取り組んでいく必要があります。 その他にも、事業者による合理的配慮の提供※14の義務化などを内容とする「障害者差別解消法」の改正法が令和6(2024)年4月に施行されること、「障害者差別解消推進条例」の施行から3年以上が経過することなども踏まえ、障害者差別解消推進条例を改正します。併せて、本市職員が適切に対応するための「職員対応要領」も改正し、それらの趣旨を踏まえ、本市職員一人ひとりが差別のない社会の実現にむけた責務を担うという意識を持ち、率先して差別の解消に取り組みます。さらに、対話によりお互いの理解を深めながら、市・事業者・市民が一体となって、障害者差別の解消に向けた取組をより一層発展させていくことが必要です。 また、引き続き障害者虐待相談センターの運営などを通じて、障害者虐待の防止に努めるとともに、障害者の権利擁護のための取組についても推進する必要があります。 (39ページ) さらに、「障害の有無にかかわらず、誰もが人格と個性を尊重され、住み慣れた地域で安心して暮らせる社会」の実現を図るためには、障害や障害者に対する理解を深めるための広報・啓発活動の推進が大変重要です。 これまで、「障害者基本法」に定める障害者週間(毎年12月3日〜9日)に開催する「障害者週間記念のつどい」などの機会をとらえて各種講演会やシンポジウムなどを開催するとともに、発達障害啓発週間(毎年4月2日〜8日)にあわせた映画上映会の開催やポスターの掲出などにより、市民、ボランティア団体などに対する啓発に努めており、今後もその内容の充実を図るなどさらに促進させていく必要があります。 (40ページ) 施策の基本的方向 1 障害を理由とする差別の解消の推進 (1)障害者差別の相談・紛争解決の取組の推進 相談・紛争解決の仕組みを活用することで、障害者差別の解消を図ります。 ア 相談体制の充実 障害者差別に関する相談を受け、関係機関と連携しながら、関係者間の調整などを行い事案の解決を図る専門機関として障害者差別相談センターを運営するとともに、障害者差別に関する相談に従事する人材の育成を図ります。 イ 紛争の解決 障害者差別に関する相談の解決に、一層の実効性をもたせるため、相談及び調整によっても解決しない悪質な事案に対しては、助言、あっせん、勧告、公表による紛争解決を図ります。 (2)職員などの理解促進 「職員対応要領」に基づく職員研修を徹底するとともに、「意識のバリアフリー行動宣言」の働きかけ、全庁的な庁内会議などを定期的に行い、本市職員の理解と意識を高めます。 また、市民利用施設の職員や受託事業者に対しても「職員対応要領」の趣旨について周知徹底を図ります。 (3)事業者及び市民の理解促進  ア 事業者の理解促進 事業者による合理的配慮の提供の義務化にあたり、事業者における障害者差別解消のための自発的な取組が促されるよう、障害者差別相談センターによる出前講座などによる研修機会の確保や、合理的配慮の提供への支援を検討するほか、理解促進に向けた広報啓発を進めます。 イ 市民の理解促進 市民向け講演会の実施など幅広い広報啓発活動を通じて、市民の理解促進を図ります。 (41ページ) (4)地域における障害者差別解消の推進 障害者差別解消の推進のための地域ネットワークとして、障害当事者や障害者団体、地域の関係機関から構成する障害者差別解消支援会議を設置し、情報共有や意見交換などを行いながら、障害者差別解消に向けた取組を進めます。 2 障害者虐待の防止 障害者虐待相談センターの運営や24時間365日の相談体制を確保するため休日・夜間相談窓口を設置し、障害者虐待の防止や早期発見を図ります。 また、緊急一時保護の居室を確保するとともに、相談対応や助言により、必要な障害福祉サービスの利用促進を図るなどの支援に取り組みます。 さらに、障害者差別の解消と一体的に障害特性に対する理解促進や障害者の人権に対する啓発などに取り組むことにより、障害者虐待の防止に努めます。 (1)養護者による虐待の対応 相談対応や助言等を障害者やその家族等に行うことにより障害者虐待防止に努めます。さらに、障害福祉サービスの利用促進を図るなど養護者支援に取り組みます。 (2)施設従事者等による虐待の対応 施設従事者等に対して、障害特性に対する理解促進や障害者の人権に対する啓発などに取り組むとともに、職員が働きやすい環境を整備することにより、障害者虐待の防止に努めます。 (42ページ) 3 権利擁護の推進 (1)障害者・高齢者権利擁護センターの運営支援 知的障害者など判断能力が十分でない人が、地域で適切なサービスを受けられるよう、権利擁護にかかる相談、福祉サービスの利用援助、金銭管理サービスなどの日常生活自立支援事業を行う障害者・高齢者権利擁護センターについて、引き続き運営を支援します。 (2)成年後見制度の利用促進 施設入所や在宅サービスの利用などにおいて、契約締結など法律行為が困難な場合には、成年後見制度を円滑に利用できるよう、後見等開始の審判請求並びに、審判請求に要した費用及び後見人などの報酬を助成する成年後見制度利用支援事業を推進します。併せて、市民後見人を引き続き養成するとともに、成年後見あんしんセンターによる支援・監督の下、市民後見人の活動の定着化を図ります。 また、法人後見を担う団体がスムーズに後見の受任が進むように支援し、交流会の開催や後見活動を行う支援者向けの研修の実施など法人活動を支援します。さらに、名古屋市成年後見制度利用促進計画に基づき、必要な方が適切に成年後見制度を利用できるよう、成年後見あんしんセンターによる制度の周知や利用者のニーズに合った候補者推薦、後見人等への支援などを行います。 4 広報・啓発活動の推進 障害を理由とする差別の解消をはじめ、障害者施策を社会全体で推進し、インクルーシブな社会を実現するためには、市民に対して障害や障害者に関する正しい理解を促進することが重要であるため、障害者団体などとの連携による幅広い広報・啓発活動を推進します。 ア 障害者週間などにおける当事者参加による啓発 障害者週間に開催する「障害者週間記念のつどい」など障害者が地域社会の一員であることの理解が深まるよう障害のある人もない人も共に参加し楽しみながら活動する機会の確保を図ります。 イ 人権週間や発達障害啓発週間などにおける啓発 人権週間(毎年12月4日〜10日)や世界自閉症啓発デー(毎年4月2日)を含む発達障害啓発週間に開催する啓発行事における講演会やシンポジウムなどによる幅広い広報・啓発に努めます。 (43ページ)  ウ 障害特性に応じたきめ細やかな啓発 ヘルプマーク※15の普及促進により、内部障害や難病をはじめ、外見からは分からない障害についての理解促進を図るなど、様々な障害特性の理解が進むような啓発に努めます。 エ 広報媒体を通じた啓発 広報なごや、市公式ウェブサイトやウェルネットなごやなどを活用し、障害の特性やその障害のある人が困っていることなどを紹介する動画「フミダスドーガ」を提供すること等により、障害や障害者に対する理解促進をより一層図ります。 オ 講師の派遣による啓発 市民・事業者などの集まりに対し、障害者団体等とも連携の上、障害のある人を含む講師を派遣する 「障害者理解に関する講師派遣事業」等を通じ、講演や実体験を通じた学びの機会を提供することで、障害や障害者に対する理解促進をより一層図ります。 カ 「障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック」の活用 「障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック(こんなときどうする?)」の活用を図り、障害や障害者に対する理解と意識を高めます。 キ 地域に根差した啓発活動 区役所や各区の自立支援連絡協議会を中心とした啓発活動などにより地域での障害や障害者に対する理解促進を一層図ります。 ヘルプマークとヘルプカードの見本 (44ページ) 白紙 (45ページ) 第4 自立した生活の支援・意思決定支援の推進 現状と課題 平成18(2006)年4月の「障害者自立支援法」の施行により三障害一元化が示され、身体障害者・知的障害者・精神障害者の区別なく必要とするサービスが利用できる仕組みとなりました。 また、平成22(2010)年12月の法改正により、発達障害者が対象に含まれることが明文化されるとともに、平成24(2012)年6月には「障害者自立支援法」が「障害者総合支援法」に改正され、平成25(2013)年4月からはサービス利用の対象者に難病患者などが追加されました。 平成30(2018)年4月から施行された「障害者総合支援法」と「児童福祉法」の改正においては、「生活」と「就労」に対する支援の一層の充実、高齢障害者による介護保険サービスの円滑な利用の促進、障害児支援のニーズの多様化へのきめ細かな対応、サービスの質の確保・向上を図るための環境整備などの方向性が示されています。 本市では、全ての障害者を対象とした身近な相談窓口である障害者基幹相談支援センターを平成26(2014)年4月に設置し、障害者のサービスの選択と自己決定を支援してきました。今後、多様なニーズに対応できるよう様々な関係機関との連携を一層図る中、適切な支援に繋げることが必要です。さらに、相談支援の質の向上を図るための体制確保が課題となります。 また、障害福祉サービス事業にNPOや営利法人などの参入が進んできましたが、サービス利用希望者も増えていることから、引き続きサービス基盤を充実するとともに、サービスの提供を希望する障害者が、必要な障害福祉サービスを継続的に受けられるよう、事業者やその他の関係者との連携を深めながら、事業所の安定的な運営とサービスの質の向上を図っていく必要があります。 さらに、必要なサービス提供にかかる人材の確保・定着も必要とされています。 (46ページ) 障害者の自立と社会参加の実現を図るためには、必要とする障害福祉サービスその他の支援を受けながら、障害者が自らその居住する場所を選択できることが大切です。 本人の意向を尊重した上で施設入所者や退院可能な精神障害者の生活の場を、地域生活へと移行していくことが求められています。移行を進める上では、地域における相談支援体制の充実とともに、住宅やグループホーム、地域生活支援拠点事業所など生活の場の確保と一層の質の向上が課題となります。 このように障害者が地域において日常生活を営むためには、本人の意思や意向が十分尊重されることが重要であり、自ら意思を決定することに困難を抱える障害者への意思決定支援を進めていく必要があります。 障害者の重度化・高齢化に伴う支援の在り方や支援する家族などの高齢化による障害者の家庭からの自立など、重度化・高齢化を踏まえた課題への対応とともに、生涯を通じ切れ目のない身近な地域での支援の充実を図ることが必要です。さらに、ひきこもり状態にある方の長期化や高齢化への対応が課題となっており、ひきこもりに関係する支援機関や団体などとの連携を一層進めていく必要があります。 重度障害児者への支援においては、在宅の重度障害児者の地域生活を支援するための日中活動の場の確保が引き続き課題となっています。 また、地域生活の継続が困難な医療的ケアを要する重症心身障害児者への支援も課題となっている中、本市の重症心身障害児者施設の運営を中心に、引き続き支援の充実を図る必要があります。 強度行動障害を有する者の障害特性に応じた支援について、平成29(2017)年度より専門支援員の養成、平成30(2018)年度より専門支援員の派遣から相談・研修に至るまでの総合的な事業として強度行動障害を有する者への支援事業を開始しました。今後も継続した支援を行うとともに、支援内容をさらに充実させていく必要があります。 (47ページ) 医療技術の進歩などを背景として、NICUなどに長期間入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な医療的ケア児が増えてきています。このような医療的ケア児が在宅生活を継続していくことを目的として、平成28(2016)年6月に「児童福祉法」が改正され、医療的ケア児の支援に関わる関係機関の連携の一層の推進を図るよう努めることとされました。 さらに、令和3(2021)年9月には「医療的ケア児支援法」が施行され、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する基本理念等が定められました。 本市では、これまで医療的ケア児の支援に関わる関係機関の連携を進めるための協議の場を設置・運営してきたほか、医療的ケア児とその家族の方が利用できる支援・サービスの情報を集約したウェブサイトを公開するなど、様々な取組を行ってきました。今後さらに、医療的ケア児とその家族が適切な支援を受けられるよう、職員の理解促進や市民への周知啓発をより一層進めていく必要があります。 また、本市においても、小児がんや心疾患、染色体・遺伝子異常、神経・筋疾患などの病気や、重症心身障害などにより、生命を脅かされる状況(Life-threatening conditions: LTC)にある子どもとその家族に対し、新たな支援が求められています。 平成28(2016)年8月には「発達障害者支援法」が改正され、乳幼児期から成人期まで切れ目のない支援を行うことが重要であると規定されました。 本市が運営する発達障害者支援センターでは、発達障害者や家族、関係機関からの相談を受けて、本人や家族が安心して地域生活をおくれるように支援のコーディネートを行っていますが、近年では新型コロナウイルス感染症の影響のため相談件数が減少傾向にあります。相談件数全体のうち6割程度は19歳以上の相談者となっています。 また、相談内容が複雑化しており、職員の専門性の向上や支援体制の充実が求められています。 (48ページ) 障害者の自立と社会参加を促進するためには、障害者の生活を豊かにする支援が重要です。スポーツ・レクリエーション活動や文化芸術活動を含む生涯学習を振興することにより、体力の増進、地域交流、余暇の充実を図る必要があります。 また、こうした多様な生涯学習に関する取組を各部局が情報共有を図りながら連携し、推進することが求められています。 障害者スポーツの分野においては、令和6(2024)年に神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会、令和7(2025)年に第25回夏季デフリンピック競技大会(東京)や令和8(2026)年に第5回アジアパラ競技大会(愛知・名古屋)の開催が予定される等、障害者スポーツへの関心はますます高まっており、より一層の機運の醸成を図るとともに、盛り上がりが一過的にならないよう、スポーツを『する』『みる』『ささえる』という観点で、障害者スポーツの振興を図っていく必要があります。 また、文化芸術活動の分野においては、平成30(2018)年6月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が施行され、障害の有無にかかわらず、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるよう、障害者による文化芸術活動を幅広く促進することが求められています。 (49ページ) 施策の基本的方向 1 相談支援体制の充実 (1)地域における相談支援体制の充実 障害者が住み慣れた地域の中で希望する暮らしを自分で選び、安心して暮らし続けるためには、日常生活上生じる課題について、身近なところで相談や支援できる体制が必要です。そのため、地域の相談支援の拠点として総合的な相談業務などを行う障害者基幹相談支援センターの体制強化及び重層的支援体制整備事業や関係機関との連携強化を図るとともに、特定及び一般相談支援事業の促進に努めます。 ア 障害者基幹相談支援センターの体制強化及び関係機関との連携強化 地域における相談支援体制の充実を図るため、障害者基幹相談支援センターの体制を強化し、区役所・保健センターと連携しながら各区の自立支援連絡協議会の運営を一層充実させるとともに、市の自立支援連絡会において、相談支援従事者の確保などの課題を共有する中で、地域の実情に応じた相談支援体制の連携強化を図ります。併せて、重層的支援体制整備事業とも連携しつつ、複合的な課題等を抱えている人や世帯を支える包括的な相談支援を推進します。 イ 特定及び一般相談支援事業の充実 障害者などが地域の身近なところで相談や支援が受けられるよう、特定及び一般相談支援事業の体制や質の充実を図ります。 ウ 多様な障害への専門的な対応 発達障害児者や家族に対する相談支援機能の充実とともに、関係者による発達障害者支援地域協議会で市内の課題などを協議し、発達障害者支援センターを中心とした地域生活支援体制の充実を図ります。 また、総合リハビリテーションセンターなどの相談支援機関において高次脳機能障害への専門的支援を地域と連携・協力し実施するほか、各区の保健センターにおいて難病患者や家族の相談に応じるなど療養生活の支援を実施します。 (50ページ) エ 医療的ケア児及びその家族に対する支援体制の充実 医療的ケア児及びその家族が適切な支援を受けられるよう、医療・保健・福祉・教育・保育などの関係機関が連携を図ることを目的とした名古屋市医療的ケア児支援ネットワーク会議を開催します。 また、医療的ケア児及びその家族が安心して地域生活をおくることができるよう、医療的ケア児に対する関係分野の支援を調整する医療的ケア児等コーディネーターを養成・配置します。併せて、医療的ケア児等コーディネーターに対して助言などを行う医療的ケア児スーパーバイザーを配置します。 さらに、医療的ケア児とその家族が安心して区役所・支所や保健センターの窓口で相談することができるよう、継続的に職員向けの研修を実施するなど職員への理解促進を図るとともに、医療的ケア児について、様々な手法を用いながら市民に対する広報及び周知啓発を推進します。 オ LTCにある子ども及びその家族に対する支援の充実 LTCにある子どもとその家族が、安心して楽しい時間を過ごすことができる、医療機関や家とは別の場所、いわゆるこどもホスピスの設立に向け、支援策について検討します。 (2)様々な相談活動への支援の拡充 障害者がより相談しやすい環境づくりを進めるため、当事者が相談に応じる相談活動、障害者・家族などの自助グループ、ボランティア団体などの諸活動などに対する育成・支援を実施します。 (51ページ) 2 地域生活を支援するサービスの量的・質的充実 (1)在宅サービスの拡充 障害者が住み慣れた地域で生活し、社会、経済、文化などの様々な分野でいきいきと活動できるようにするため、自立生活を支援する在宅サービスを拡充します。 また、常時介護を必要とする障害者への医療的ケアを含む在宅における適切な支援の在り方を検討します。 ア 訪問系サービスの拡充 訪問系サービスの量的拡大とともに障害特性に配慮し、必要な人へ必要なサービスが提供できるよう体制を確保します。 イ 短期入所サービスの拡充 短期入所の定員数の拡大を図るとともに、介護者の急な不在などへの対応として、緊急短期入所空床確保事業を継続して実施し、地域生活支援拠点事業所での緊急時の受け入れの促進にも努めます。 また、施設や医療機関などにおいて日中一時受入事業を継続して実施します。 ウ 配食サービスの実施 障害者が健康で自立した生活を営めるよう支援をするとともに、利用者の安否確認を行う配食サービスを実施します。 (2)外出支援策の推進 障害者の社会参加をより円滑にするために、外出支援策を推進します。 ア 移動支援事業の充実 希望する時間に利用ができるよう、ガイドヘルパーの確保と養成に努めるとともに、資質向上を図ります。 イ 身体障害者補助犬の利用支援 身体障害者補助犬の飼育費の助成や総合リハビリテーションセンターにおける補助犬の認定・相談事業などを実施し、障害者の自立支援や社会参加を支援します。 ウ 福祉特別乗車券の交付 障害者が市営交通機関などを利用する機会を確保し、社会参加を促進するため、福祉特別乗車券の交付を実施します。 エ タクシー料金の助成など 公共交通機関が利用できない障害者のために、タクシー料金の助成やリフトカー運行事業などを実施します。 (52ページ) (3)日中活動の場の充実 地域でいきいきとした自立生活をおくることができ、社会参加や社会活動を促進するため、様々な日中活動の場の充実を図ります。 ア 生活介護事業の充実 主に昼間に、日常生活の介護を行うとともに創作活動や生産活動の場を提供する生活介護事業の充実を図ります。 イ 精神障害者地域活動支援事業の充実 精神障害者に対して、社会との交流の促進を図り、レクリエーションや生産活動の機会などを提供するとともに、医療・福祉及び地域の社会基盤との連携強化のための調整などを行う精神障害者地域活動支援事業を充実します。 ウ デイサービス型地域活動支援事業の充実 障害児者の日中活動の場として、機能訓練、レクリエーションなどを提供するデイサービス型地域活動支援事業を充実します。 また、運営実態やニーズの把握に努め、必要な施策の充実について検討します。 エ 作業所型地域活動支援事業などの充実 地域における作業の場や生活訓練の場としての作業所型地域活動支援事業を充実するとともに、訓練・レクリエーションの場としての重症心身障害児小規模通所援護事業の活動を支援します。 (4)福祉的就労の場などの充実 一般就労と並び、自立した生活に必要な経済的基盤を確保するとともに働くことが生きがいにつながるよう、福祉的就労の場などの充実を図ります。 ア 働く場の充実 一般企業などでの就労が困難な方に、働く場を提供するとともに、就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓練を行う就労継続支援事業の充実を図ります。併せて、誰もが安心して働くことのできる場となるよう、質の向上に努めます。 イ 一般就労に向けた訓練の場の充実 一般企業などへの就労を希望する方に、一定期間、就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓練を行う就労移行支援事業の充実を図ります。併せて、質の向上に努めます。 (53ページ) (5)地域生活の場の確保 障害者が住み慣れた地域で自立した生活をおくることができる住まいや生活の場の確保を図ります。 ア グループホームの充実 障害者が、日常生活上の援助を受けながら、地域の中で共同生活をおくるグループホームについて、重度障害者等の受け入れを進めるなど、充実を図ります。 また、市営住宅のグループホーム利用を引き続き図ります。 イ 地域生活支援拠点事業所の充実 障害者が希望する地域生活を実現し、重度化・高齢化によるニーズの変化や「親亡き後」でも安心して生活を継続できるよう、地域全体で障害者の生活を支える体制を構築するため、障害者基幹相談支援センターのコーディネート機能を充実させ、「相談」「専門的人材の確保・養成」「地域の体制づくり」を担います。併せて、「緊急時の受け入れ・対応」及び「体験の機会・場」の強化を目的とし、地域生活支援拠点事業所の整備を進めるとともに、これと障害者基幹相談支援センターをはじめ、地域の相談支援事業所や障害福祉サービス事業所等が連携する体制を確保することにより面的整備を推進し、障害者の地域生活を支援します。 ウ 福祉ホームの確保 住居を求めている障害者が、自立した日常生活や社会生活を営むために利用するとともに、日常生活に必要な支援を提供する福祉ホームを確保します。 (6)自立訓練(機能訓練、生活訓練)の充実 視覚障害や高次脳機能障害などへの対応として、総合リハビリテーションセンターにおいて専門性の高い支援の実施を継続します。 (54ページ) (7)福祉用具などの研究開発・普及促進と利用支援 障害者の自立した日常生活を支援するため、福祉用具などの研究開発・普及促進と利用支援を図ります。 ア 福祉用具の研究開発の推進 総合リハビリテーションセンター及び福祉用具プラザが、大学などの研究機関と協同し、国の施策との連携を図りながら、福祉用具などの研究開発を推進します。 イ 福祉用具などの普及促進と利用支援の推進 自助具や介護用ロボット、ユニバーサルデザインの製品などを含めた福祉用具などの普及促進と利用支援の推進を図るため、なごや福祉用具プラザにおいて、福祉用具などの展示、相談及び講習会の開催や福祉用具などの製作・改造を行うほか、介護用ロボットの普及支援及び在宅重度障害者への訪問相談支援の強化を検討します。 また、福祉用具などの相談などに従事する専門職員の資質向上を図ります。 (8)経済的施策の充実 地域生活が安定的におくれるよう、各種手当の支給や医療費の助成などを実施します。 ア 各種手当の支給 障害者の経済的負担を軽減するため、特別障害者手当をはじめとした各種手当を支給するとともに、各種手当制度の給付水準の確保に努めます。 イ 障害者医療費助成の実施 現行の医療費助成制度を引き続き実施します。 (55ページ) 3 地域生活への移行支援 施設入所者や精神科病院に長期入院している精神障害者などが、本人の希望に基づいて、円滑に地域生活へと移行できるようグループホームなどの社会資源の整備を進めるとともに、地域移行支援、地域定着支援などを推進します。 ア 地域移行支援・地域定着支援などの拡充 入所施設や精神科病院などから地域生活に移行するための支援を行う地域移行支援及び常時の連絡体制を確保し緊急時の相談に応じるなどの地域定着支援の実施を拡充します。 また、地域での自立生活の継続を支援するため、障害者支援施設やグループホーム、精神科病院などから地域での一人暮らしに移行した障害者の生活への不安に対して、定期的な居宅訪問などにより状況把握を行い、必要な助言や関係機関との連絡調整を行う自立生活援助を実施します。 イ 地域生活体験事業などの実施 地域での自立生活を容易に受け入れられるよう、グループホームなどの生活に向けた地域生活体験事業を継続して実施するとともに、地域生活支援拠点事業所での地域生活体験利用の促進にも努めます。 4 重度障害者への対応 (1)重度障害者への支援の充実 重度障害者の生活の場を整備するとともに、在宅の重度障害者の日中活動の場を確保するため、通所施設での重症心身障害者等受入補助などの在宅支援策を実施します。 また、本市重症心身障害児者施設における短期入所などの在宅支援機能の強化を検討するなど、常時介護を必要とする障害者への医療的ケアを含む在宅における適切な支援に努めます。 ア 重症心身障害児者施設の運営 重症心身障害児者施設において、入所者の生活の場を確保するとともに、短期入所や相談などを通じて、市内の在宅の重症心身障害者やその家族、支援を行う事業者などを支援します。 イ 在宅重症心身障害者への訪問指導 在宅の重症心身障害者を支援するため、発達支援における指導や相談などの訪問支援を実施します。 (56ページ) ウ 重症心身障害児小規模通所援護事業の実施 地域において、5人以上の重症心身障害者などに訓練やレクリエーションなどを実施する通所援護事業を支援します。 エ 日中活動の場への受け入れの確保 障害者入所施設での重症心身障害者受入施設補助や、生活介護事業所及びデイサービス型地域活動支援事業所への重症心身障害者等受入補助を実施することにより、重症心身障害者の日中活動の場を確保します。 オ 地域での居住の場の確保 重度障害者が住み慣れた地域で生活できるよう、住宅改造に関する相談や補助を実施します。併せて、グループホームの改修費用や整備費用を補助し、居住の場を確保します。 (2)強度行動障害を有する者への支援 強度行動障害を有する者への支援として、生活介護事業所に対して適切な支援を行うのに必要な職員加配を行い、円滑な受け入れと行動障害の軽減を図る強度行動障害者受入補助を引き続き実施します。 また、障害特性に応じた支援を強化する観点から、平成29(2017)年度より専門支援員の養成を開始し、平成30(2018)年度より専門支援員の派遣から相談・研修に至るまでの総合的な事業として強度行動障害者支援事業を実施しています。さらに、令和2(2020)年度より、専門支援員の意見を踏まえ、受入に必要な環境整備を行うための補助を実施しています。 今後も、支援ニーズの把握を行い、居宅内における支援促進の検討も含め、家族支援の視点を踏まえて、支援内容の充実を図ります。加えて、強度行動障害等を有する発達障害者の困難事例に関わる障害福祉サービス事業所などに対し、訪問支援や地域支援向上のための研修等を行う発達障害者地域支援マネジャーを発達障害者支援センターに配置します。 (3)重度障害者の生活の場としての施設の確保 常時医療的ケアが必要な障害者や重度の強度行動障害を有する者など、地域生活の継続が困難な重度の障害者の意向を尊重した上で、生活の場としての入所施設について、現行の施設数を維持します。 また、障害児入所施設に入所している児童が、18歳以降、障害福祉サービス等を利用しつつ自立した生活又は社会生活への移行ができるよう各関係機関との移行調整を図るための協議の場を設置します。 (57ページ) 5 サービスの質の向上と多様なサービス提供体制の充実 (1)サービスの質の向上 障害者や家族が事業者やサービス内容を適切に選ぶことができるよう、障害福祉サービス等情報公表制度などを活用し、引き続きわかりやすい情報提供に努めます。 また、障害者が個々のニーズに応じた良質なサービス提供を受けられるよう、障害特性や制度の理解を深める研修などの実施、法令などの規定に基づいた事業者指定と事業者への指導・監査、事業者に対する苦情解決、及び第三者評価の実施の促進などによりサービスの質の向上を図ります。 (2)多様なサービス提供体制の充実 多様なサービスの提供体制を確保するために、障害福祉サービスの担い手の養成事業や必要な専門研修を実施するなど、事業所の人材確保や人材育成に向けた取組を推進します。 ア 従事者の育成と研修の充実 障害者の特性や個別性を十分に理解した上で、サービスが提供できるよう、ホームヘルパーや施設職員の現任研修を充実します。 イ 福祉人材育成における支援の実施 事業所が行う人材育成や職員定着を支援するため、福祉人材育成支援助成事業を引き続き実施します。 ウ 福祉人材の確保 障害者福祉の仕事への理解に向けた様々な広報媒体による情報発信とイメージアップに努めるほか、就労関係機関と連携して、高年齢者の能力活用、潜在的有資格者の掘り起しの方策を検討します。 また、移動支援事業従事者養成事業などを実施し、従事者の確保を図ります。 6 障害者の重度化・高齢化などに対する施策の実施 障害者の重度化・高齢化に伴う生活上のしづらさや、支援する家族の高齢化に伴う障害者の家庭からの自立などに対応するため、必要に応じて自立生活援助の活用を検討するなど、生活支援策の充実を図ります。 また、高齢障害者が、個々の障害特性に応じた適切な支援を受けるとともに、共生型サービスを含め、高齢障害者が、介護保険サービスなど必要なサービスを円滑に利用することができるよう、関係機関などとの連携を進めます。 (58ページ) 7 スポーツ、文化芸術活動を含む生涯学習の充実 障害者が社会で自立して生活する力を養い生活を豊かにできるよう、生涯にわたる自己実現の場として、様々なスポーツ、文化芸術活動を含む生涯学習の活動機会の充実を図ることにより、障害者の社会参加を促進します。 また、スポーツ交流、文化芸術活動を通じた、地域間交流や国際交流を支援します。 (1)レクリエーション施設などのバリアフリーの促進 レクリエーション施設や文化施設、スポーツ施設、生涯学習センターなどのバリアフリーを促進するとともに、市立施設における文化芸術活動の公演・展示について、字幕や音声案内サービスの提供など、障害者のニーズに応じた工夫・配慮がなされるよう努めます。 (2)障害者スポーツの推進 ア 障害者がスポーツに親しめる環境の整備 障害者スポーツセンターにおいて、スポーツのきっかけづくりとなるような教室を実施するほか、種目ごとに身近な場所で練習が可能な場を設け、障害者のスポーツ実施機会を提供します。 また、市内の各スポーツセンターにおいて、ニーズに応じたスポーツ実施機会を提供し、障害者の利用を促進します。 さらに、障害者が安心して気軽にスポーツを楽しむことができる環境づくりを行うため、新たな障害者スポーツセンターの整備を進めます。 イ 障害者スポーツの普及振興 市障害者スポーツ大会などの各種大会を開催し、成果発表の機会を提供するとともに、国内外で開催される大規模な障害者スポーツの競技大会を契機とし、障害者スポーツの普及振興を図ります。 また、スポーツ団体、当事者団体及び民間事業者などと連携・協働し、障害者スポーツに関する取組を支援します。 さらに、障害者がスポーツに取り組む際の経済的な負担を軽減させるため、障害者スポーツ競技用補装具等の購入費を補助します。 (59ページ) ウ 障害者スポーツを支える人材の育成・確保 障害者スポーツセンターにおいて、パラスポーツ指導員を養成し、障害者スポーツの振興を担う人材を育成します。 また、障害者スポーツへのボランティア活動を促進します。 (3)文化芸術活動の推進 障害者にも気軽にオーケストラの演奏など一流の文化芸術を楽しんでもらえる鑑賞機会の提供に努めます。 また、障害者団体と連携して障害者の作品などの発表の機会を提供することにより、障害者が様々な文化芸術活動に親しむことができるよう支援するとともに、国や県との連携によりその充実を図ります。 (4)スポーツや文化芸術活動を通じた交流の促進 スポーツや文化芸術活動などを通じ、交流が促進されるよう必要な支援に努めます。 (5)共に学べる生涯学習の機会の拡充 障害者のニーズに応じて、生涯を通じて学習できる機会を拡充します。 ア 学習プログラムなどの内容充実 障害者が学習しやすいよう学習プログラムや資料の内容の充実を図ります。 イ 生涯学習を支えるボランティアの育成 障害者が共に学ぶことができるよう、障害の特性に対応した個別の支援ができるボランティアの育成を図ります。 8 意思決定支援の普及啓発 障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドラインの普及などにより、自ら意思を決定すること及び表明することが困難な障害者に対し、本人の自己決定を尊重する観点から必要な意思決定支援を行います。 また、成年後見制度の利用促進に取り組むとともに、権利擁護支援の地域連携ネットワークによる支援を促進することにより、支援者による本人の意思決定が適切に行われることを推進します。 (60ページ) 白紙 (61ページ) 第5 保健・医療の推進 現状と課題 障害や発達の遅れなどをできる限り早期に発見し、適切な支援につなげていくためには、健康診査の実施や気軽に相談でき、早期発達支援を受けられる体制が必要です。本市では、各区の保健センターにおいて乳幼児健康診査などを行うとともに、市内に5か所ある地域療育センターにおいて発達相談に取り組んでいます。 近年の発達障害の認知の高まりなどを受けて地域療育センターにおける初診待機期間が長期化するなど、診療体制の充実が課題となっています。 また、医療的ケア児の増加に伴い、支援に関わる関係機関の連携強化が求められています。 20歳以上での障害の原因としては、交通事故などによる怪我のほか、生活習慣病が起因となるものも多いため、本市では、生活習慣病の発症及び重症化の予防や健康寿命の延伸を図ることなどを目的として策定した健康なごやプラン21(第2次)により、市民の健康づくりを支援しています。 がんや脳卒中など5疾病の一つである精神疾患の患者数は、全国で約615万人(令和2(2020)年患者調査)であり、この数値から推計する本市の精神疾患の患者数は約113,000人となっています。 また、全国の発達障害の患者数も587,000人(令和2(2020)年患者調査)となっています。これらを背景に精神障害者保健福祉手帳所持者数の増加も顕著であることから、精神保健・医療施策のさらなる充実が必要です。 本市においては、精神障害者の地域生活を支援し、自立と社会参加の促進を図る障害者基幹相談支援センターをはじめとする相談支援事業者などや、緊急に医療が必要となったときに相談・診察を受けられる精神科救急情報センターや精神科救急医療施設が整備されています。 (62ページ) 一方、精神科に入院している約3,600人の方のうち、1年以上入院している方の割合は6割となっています。長期入院している方の地域への移行を促進するとともに、合わせて地域の一員として、安心して誰もが自分らしく暮らせるよう、一層の地域定着の推進に向けて保健医療福祉の関係者が一体となって、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた取組を進めていく必要があります。 また、地域における精神保健福祉活動として、各区の保健センターが精神保健福祉相談や訪問指導、精神障害者家族教室などを開催しているほか、精神保健福祉センターがその中核機関として、普及啓発や複雑・困難な事例への対応、技術援助などの業務及び、地域の課題である依存症対策を行っています。精神障害者の増加傾向は著しく、また、ひきこもり状態にある方や未治療、治療中断など医療・福祉サービスにつながっていない方へのアプローチに加え、患者本人や家族の高齢化、アルコール健康障害・薬物・ギャンブルなどの依存症対策※16、複数の障害を有する方への支援など、地域精神保健福祉業務についても一層の機能強化が求められています。 難病患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上を図ることなどを目的に、平成27(2015)年に「難病法」が施行されました。「難病法」に基づく医療費助成制度の対象となる指定難病※17は段階的に拡大されており、令和6(2024)年4月からは341疾病となります。 また、同法改正により令和6(2024)年4月より、各種療養生活支援の円滑な利用等のため「登録者証」が創設されます。 難病患者数は少なく、その多様性のために他者からの理解が得にくいほか、療養が長期に及ぶことなどから、患者にとって心理的にも経済的にも大きな負担となります。難病患者が長期にわたり療養生活を送りながらも社会参加への機会が確保され、尊厳を持って安心して暮らしを続けていくことができるよう、難病の特性に応じた総合的な支援が求められます。 (63ページ) 医療との連携を基本としつつ福祉サービスの充実や難病の患者の支援体制の整備、ピアサポート※18に係る人材育成の支援に努めるとともに、レスパイトケアをはじめとするニーズに合った保健医療サービスや福祉サービスなどを円滑に利用できるよう、難病患者を多方面から支えるネットワークの構築が必要です。 総合リハビリテーションセンターは、障害者の相談から医療・訓練指導を経て社会復帰にいたるまでの一貫したリハビリテーションサービスを提供しています。附属病院については、令和7(2025)年4月からの市立大学病院化を予定していますが、総合リハビリテーションセンター内にて行ってきた医療から福祉への切れ目のない支援を地域に拡大できるよう、市立大学はもちろんのこと地域の医療機関等とも連携し、これまで支援に繋がっていなかった方への支援を強化することが求められています。 また、行動上の障害や意思疎通の困難さ、障害の重複などにより適切な医療を受けられない状況が生じないよう、治療体制の整備が求められています。 (64ページ) 施策の基本的方向 1 障害の原因となる疾病等の予防及び早期発見 (1)乳幼児に対する障害の原因となる疾病等の予防及び早期発見 小児・周産期医療体制を充実することにより、障害の原因となる疾病等の予防及び早期発見を図るとともに、乳幼児健康診査などによる障害の早期発見体制を充実します。 また、成長発達段階における遅れの気づきや、育児にかかる不安や負担などを軽減するため、子育て総合相談窓口において相談に応じ、必要な場合には、療育機関や医療機関など関係機関につなげます。 (2)健康づくりの推進 健康づくり、特に生活習慣の改善による生活習慣病の発症予防及び重症化予防などのため、健康教育・健康診査などを実施し、障害の発生予防及び早期発見に努めます。 2 精神保健・医療施策の推進※19 (1)精神障害に対する正しい理解の促進とこころの健康づくりの推進 精神疾患は、生涯を通じて4人に1人がかかるといわれるように、誰にも身近な疾患であり、適切な治療により症状の安定や消失、治癒が可能であるという認識を広めることは、増加する精神疾患の患者が早期に適切な治療に結びつくために重要であると同時に、精神障害に対する正しい理解を促進するためにも重要です。講演会の開催や刊行物の発行などの広報を通して、引き続き普及啓発に努めるとともに、精神保健の課題のある方を地域において身近で支える人材の育成を推進します。 また、うつ病などの早期発見と早期受診は自殺対策の観点からも重要であり、市民への普及啓発のほか、精神科以外の医療機関関係者への研修や精神科医療機関と他の医療機関との連携を推進します。 (2)精神科病院における適正な医療の確保 ア 人権に配慮した適正な医療の確保 人権に配慮した適正な医療を確保するため、引き続き、精神科病院に対する実地指導、実地審査を厳正に行うとともに、精神医療審査会では入院の要否や入院患者の処遇の適否の審査を適正に行います。 (65ページ) イ 精神科病院における虐待防止の推進 精神科病院の業務従事者による虐待を発見した場合における通報窓口を整備するとともに、精神科病院の虐待防止等に向けた組織風土の醸成を推進するための研修や普及啓発等の取組について検討を進めます。 (3)精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組み ア 保健・医療・福祉関係者などによるネットワークの構築 保健・医療・福祉関係者・当事者・家族会などによる顔の見える協議の場を通じて、関係者間の相互理解の促進や強化に取り組み、精神障害者の地域生活を支援する方策を重層的に協議します。 イ 地域で生活する精神障害者の病状の重篤化を防ぐ体制の整備 急激に精神症状が悪化した精神障害者に対する方策として、精神科救急情報センターと精神科救急施設からなる精神科救急医療システムを運営し、さらにその充実に向け関係機関と協議を進めます。 また、入院までは必要ないが夜間や休日に緊急に受診を希望される患者への対応体制や、身体合併症への対応、未治療者や医療中断者に対するアウトリーチによる支援体制の構築と充実を目指します。併せて、精神障害者が地域で安心して暮らせるよう、精神障害者を身近で支える人材を育成するための研修を継続的に実施するとともに、障害者基幹相談支援センターをはじめとする相談支援事業者、ボランティアグループなどによる日常的な関わりなど、関係機関と連携した支援体制の構築を推進します。 (4)精神障害者の地域への円滑な移行や一層の定着の推進 ア 住まいの確保支援に向けた検討 精神科病院からの地域移行における住まいの確保に向けて、居住支援関係者と連携し、居住支援に係る制度を活用するとともに、地域生活の定着を図るため賃貸住宅等に入居する精神障害者や居住支援関係者の安心を確保できるよう、入居後も含めた支援体制のあり方について検討を進めます。   (66ページ) イ ピアサポートの活用 ピアサポーターの養成・活用等を通じ、行政機関及び地域関係者も含めて入院患者の退院の動機づけ支援を行うとともに、一層の地域定着に向け当事者や家族を含めたピアサポートの活用を図り、障害や病気に対する正しい理解の普及を推進します。 ウ 地域生活支援に係る質の向上 地域移行や一層の地域定着を推進するため、精神障害者の特性に応じた適切な支援が実施されるよう、地域生活支援関係者の支援の質の向上に取り組みます。 (5)依存症対策 ア 依存症相談拠点 依存症に関連した問題で困っている本人、家族が相談につながるよう、精神保健福祉センターに依存症相談窓口を開設し、相談機能を強化するとともに、アルコール、薬物、ギャンブルなど依存症の対策を推進します。 イ 依存症専門医療機関、依存症治療拠点機関の選定 地域で適切な医療を受けられるよう、市内の依存症に関する治療を行っている精神科病院などを依存症の専門医療機関や治療拠点機関として選定し、依存症に関する正しい知識の普及や、市内の医療機関へ依存症に関する研修を実施します。 ウ 依存症問題に取り組む自助団体への支援 行政や医療機関以外のいわゆる自助団体の取組は重要であり、自助団体ならではの支援方法もあることから、幅広く支援するため、団体の補助事業を行います。 (67ページ) 3 総合的な医療施策・リハビリテーションの充実 (1)医療施策の充実 障害者が、身近な場所で生涯を通じて、いつでも必要かつ適切な医療の提供が受けられるよう医療施策の充実を図ります。 ア 適切な医療の提供 障害者が気兼ねなく安心して医療が受けられるよう、意思疎通支援の充実やインフォームド・コンセント※20の徹底を図り、医療従事者の障害者に対する理解促進や、医療機関における受診環境の充実を進め、障害者に対する適切な医療を提供します。特に行動上の障害や意思疎通の困難さ、障害の重複などにより救急医療や専門的医療が受けられない状況が生まれることがないよう体制整備について、関係機関と連携して検討します。 イ 障害者医療費助成の実施 現行の医療費助成制度を引き続き実施します。 ウ 歯科医療の充実 歯科医師会が開設している歯科保健医療センターにおいて、地域で診療が困難な障害児者を対象に口腔衛生相談・指導及び治療を行い、障害児者に対する歯科治療の機会を確保するとともに、高度な治療への対応を実施していることから、安定的な運営のための支援を引き続き行います。 また、定期的に歯科健康診査を受けることが困難と考えられる居宅の寝たきりの方が適切な健康管理を図れるよう、訪問での歯科健康診査を引き続き実施するとともに、障害の状況(加齢を含む)に応じた知識や技術を有する歯科専門職及び障害者支援施設等従事者を育成するための取組を促進します。 (2)リハビリテーションの充実 職場復帰や社会復帰、自立した地域生活に向け、適切なリハビリテーションの提供体制の充実を図るとともに、医療・心理・社会・教育・職業などの総合的なリハビリテーションの提供に努めます。 また、小児リハビリテーションにおいては、リハビリテーションを提供できる専門医師を養成し、リハビリテーション医療の提供の実施を図ります。 (68ページ) ア 総合リハビリテーションセンターの運営 本市におけるリハビリテーションの中核施設として、社会の中で利用できるサービスを自ら活用して社会参加していくための社会的リハビリテーションや、仕事への復職のための職業的リハビリテーションを実施します。 さらに、専門性の向上を図るとともに、知識・技術の普及啓発をはじめとした地域支援体制の整備やリハビリテーション情報の提供などリハビリテーションを実施する他の医療機関など関係機関との連携強化を図ります。 併せて、高次脳機能障害者に対しては、この分野における中核施設としての役割を発揮し、障害者基幹相談支援センターなどと協働し、地域支援体制の整備や関係機関との連携強化を図ります。 イ 高次脳機能障害者への支援の充実 総合リハビリテーションセンターにおいて、相談、訓練指導、社会復帰などの支援を行うとともに、専門性の向上、知識・技術の普及啓発や児童の就学支援、失語症者の専門相談支援などを関係機関と連携して取り組みます。 ウ 視覚障害者への支援の充実 眼科医療機関をはじめとした関係機関と連携し、診断後も相談、訓練指導、社会復帰などの支援が提供できる体制づくりを図ります。 4 障害者の健康づくりの推進 健康で心豊かに生活ができる持続可能な社会を目指し、生活習慣の改善による生活習慣病予防や、健康寿命の延伸、生活の質の向上を図るとともに、健やかに暮らせる環境づくりを推進していきます。 (69ページ) 5 難病対策の推進 (1)特定医療費助成制度等の実施 現行の医療費助成制度を引き続き実施します。併せて、「登録者証」の発行により難病の患者の障害福祉サービス等の円滑な利用を図ります。 (2)難病相談支援事業の実施 難病患者や家族が抱える様々な療養生活上の相談に応じるため、各区の保健センターにおいて難病訪問・相談支援事業を実施するほか、医療に関する相談、難病に関する知識の普及啓発、患者・家族同士の交流の促進などを図るため難病患者医療生活相談事業を実施します。 また、愛知県医師会の難病相談室が実施する専門医による医療相談や、ソーシャルワーカーによる療養相談・生活相談などの難病相談事業を支援するとともに、相談機関をはじめとする難病の患者の支援に関わる関係機関などのネットワークの構築のため、難病対策地域支援ネットワーク会議を開催します。 幼少期から慢性疾病に罹患しているため、長期にわたり療養が必要な児童などと家族に対しては、各区の保健センターにおいて疾病の治療と療養生活の相談、子どもの成長・発達に応じた支援などの相談支援事業を実施します。 また、慢性疾病児童などに対して、医療、福祉、教育、雇用支援に関連する支援を行っている関係機関や地域の患者会などの意見を取り入れながら、社会生活への自立促進を図る取組を行います。 6 保健・医療・福祉の連携強化 保健・医療・福祉の各方面のサポートを要する方が安心して生活を送ることができるよう、関係機関の連携強化を図り、生涯を通じたサービスが提供できるよう努めます。 また、地域療育センターにおける医師の確保策について検討するほか、医療的ケア児が地域で安心して暮らしていけるよう、医療的ケア児の支援を総合調整するコーディネーターや支援に従事する人材の育成に努めます。 (70ページ) 白紙 (71ページ) 第6 雇用・就業の支援 現状と課題 雇用や就業への支援は、地域で自立した生活を営むための経済的な基盤としての所得の確保や、働くことによる生きがいにつながるなど、障害者にとって非常に重要な施策と考えています。 障害の特性や状態などに応じた雇用・就業に対する支援が求められているなか、障害者の就労希望は高いものの、就職状況については厳しいものとなっています。 名古屋市を含む愛知県内の民間企業の実雇用率は2.19%(令和4(2022)年6月1日現在、法定雇用率は2.3%)と、依然として法定雇用率を達成していない状況です。 一方、本市では、令和4(2022)年6月1日現在、市長部局、市会事務局、教育委員会、上下水道局及び交通局のいずれにおいても法定雇用率(国及び地方公共団体における法定雇用率は2.6%、教育委員会の法定雇用率は2.5%)を達成しています。 さらに、令和6(2024)年4月以降、段階的に法定雇用率の引き上げられることから、引き続き法定雇用率の引き上げを見据えた取組がより一層必要となってきています。 令和6(2024)年4月以降の法定雇用率は次のとおりです。 民間企業 令和6(2024)年4月 2.5% 令和8(2026)年7月 2.7% 国及び地方公共団体 令和6(2024)年4月 2.8% 令和8(2026)年7月 3.0% 教育委員会 令和6(2024)年4月 2.7% 令和8(2026)年7月 2.9% こうした中、就職後についても、厳しい雇用環境により離職を余儀なくされる障害者や職場環境への適応が困難な障害者に対し、再就職に向けた支援や雇用を継続するための支援も必要です。 (72ページ)  国において、障害者の雇用対策についても積極的な取組が進められてきている中、本市においては、障害者の就労支援に関するネットワークの構築や企業を対象としたセミナーや企業見学会の開催による障害者雇用の啓発、企業及び障害者施設に対する相談支援を一体的に実施する窓口の運営など、一般就労への移行が一層促進されるよう施策を推進しています。 また、障害者の一般就労への定着も重要であることから、就労後の職場定着の取組がますます必要となっています。 さらに、安定して就労し続けるために就労と日常生活の両面についての相談・支援体制に対する障害者のニーズが多様化する中、それに応えるため、障害者就労などの相談支援機関として市内4か所の拠点を設け、就労及びこれに伴う日常生活上の相談・支援を一体的に行っています。 身体障害者、知的障害者、精神障害者だけでなく、発達障害者や高次脳機能障害者、難病患者への就労支援についても、障害や症状の特性を踏まえたきめ細かい支援が必要です。 また、中途障害者についても、それぞれの状況に合わせた支援が必要となります。 さらに、「障害者雇用促進法」や「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づき、職場における差別の禁止や虐待の防止、合理的配慮の提供の確保にも取り組んでいく必要があります。 障害者雇用を進めている企業に対しては、障害者雇用促進企業として認定し優遇措置を設けるとともに、「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(以下「障害者優先調達推進法」という。)」の趣旨も踏まえ、市内の障害者就労施設などの製品登録制度を実施するとともに、障害者のより一層の雇用促進につながる施策を引き続き実施する必要があります。 また、福祉的就労においては、利用者の賃金や工賃を向上し質の高い働き方が実現できるようにするための指導や支援が必要となります。加えて、一般就労と並び、福祉的就労として障害福祉サービスにおける訓練等事業や障害者就労施設などの充実をより一層図る必要があります。 (73ページ) 施策の基本的方向 1 就労の推進 (1)関係機関との連携強化 福祉施策と労働施策の一体的展開の観点から、国や県の雇用促進事業との連携をより一層図り、雇用を促進するための啓発活動などを進めます。 ア 本市における推進体制の強化 国や県をはじめ、本市の関係機関などへの働きかけをさらに推進していくため、障害者就労支援推進会議の実施など、本市における障害者の就労支援体系をより充実させ、雇用促進策の推進体制の強化を図ります。 イ 経済団体や事業主、就労支援機関などとの連携強化 経済団体や事業主、就労支援機関などとの連携をさらに強化することにより、障害者雇用の拡大を図ります。 ウ 啓発活動の推進 国や県と連携し、障害者雇用についての啓発活動などをさらに推進することにより、市民や企業の理解をより一層深めます。 (2)本市の障害者雇用の推進 本市における障害者雇用に対する理解を一層深めるとともに、民間企業の先頭に立ち模範を示して障害者雇用の推進を図ります。 ア 計画的な職員採用 本市における障害者雇用の現状や課題などを説明することにより、職員の障害者雇用に対する理解を一層深めます。 また、障害者を採用するための準備や職場定着支援を行い、引き続き、計画的な職員採用の拡大に努めます。 イ 重度障害者の採用 重度障害者の採用についても、引き続き率先して行い、重度障害者の採用の拡大に努めます。 (74ページ) (3)障害者の雇用・就労機会の拡充と賃金・工賃水準の引き上げ 障害者の雇用・就労機会を拡充し、また、賃金や福祉的就労における工賃水準の引き上げにつながるよう、全市的に「障害者優先調達推進法」の趣旨を踏まえつつ、引き続き、市内における障害者雇用を推進している企業への支援や障害者就労施設などの製品の販売等の支援の一層の促進を図ります。 ア 障害者雇用促進企業の優先発注などの推進 本市における物品購入や役務の発注に際しては、法定雇用率を超えて積極的に障害者を雇用している障害者雇用促進企業などへの優先発注や優先指名などを、引き続き推進します。 イ 障害者就労施設などの製品の販売支援などの促進 障害者の経済的自立につなげるため、市内の障害者就労施設などの製品の優先発注を引き続き実施するとともに、販路拡大や販売促進に係る施策を検討します。 (4)福祉的就労の場などの充実(再掲) 一般就労と並び、自立した生活に必要な経済的基盤を確保するとともに働くことが生きがいにつながるよう、福祉的就労の場などの充実を図ります。 ア 働く場の充実 一般企業などでの就労が困難な方に、働く場を提供するとともに、就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓練を行う就労継続支援事業の充実を図ります。併せて、誰もが安心して働くことのできる場となるよう、質の向上に努めます。 イ 一般就労に向けた訓練の場の充実 一般企業などへの就労を希望する方に、一定期間、就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓練を行う就労移行支援事業の充実を図ります。併せて、質の向上に努めます。 (5)多様な就労形態への支援 障害の特性や状態に即した多様な就労形態が求められていることに対し、障害者や企業への支援を行います。 また、生活困窮者支援を始めとした他の就労施策との連携を図るとともに、多様な新しい働き方の場の提供について、国の動向を注視しながら、推進するべき施策の方向性などを検討します。 併せて、国から新たに示された就労選択支援事業や一般就労中における就労系障害福祉サービスの一時的な利用への取組についても、国の動向を注視しながら、関係機関等と連携し、推進するべき施策の方向性などを検討します。 (75ページ) ア 求められる多様な就労形態に対応した企業開拓などの推進 障害の特性や状態に即した多様な委託訓練や見学・実習の受け入れに向けた企業開拓を行うとともに、企業に対して障害者雇用を促進するための支援をします。 また、障害者雇用が可能な企業についての情報提供を、就労移行支援事業所などに対して行います。 イ 就労定着の推進 就労定着支援事業への参入について事業者に働きかけるとともに、サービスの利用促進等を行い、職場定着率の向上を図っていきます。 また、特別支援学校卒業生など就労定着支援事業を利用できない方に対しては、市内4か所に設置されている障害者就労などの相談支援機関において、職場定着の支援を行います。 (6)就業の確保、就労定着支援、生活支援を含めた就労の安定を図るための総合的な相談支援体制の推進 就職を希望する特別支援学校卒業生や就労移行支援事業所の利用者などの就業を促進するため、相談機能のより一層の充実を図ります。 ア 障害者就労などの支援機関による支援 市内4か所に設置されている障害者就労などの相談支援機関を中心に、様々な相談に応じ、就労やこれに伴う日常生活上の相談・支援の希望について、一体的な対応を推進します。 イ 障害者の能力や適性に応じた職業リハビリテーションの実施 総合リハビリテーションセンターにおいて、身体障害者や高次脳機能障害者などに対して、高い専門性を有したリハビリテーションを実施し、障害者の能力や適性に応じた職業能力を開発し、就業の促進を図ります。 (76ページ) (7)特別支援学校高等部における就労支援 特別支援学校高等部における就労支援の充実を図ります。 ア 特別支援学校高等部における就労支援 知的障害者を対象としている市立特別支援学校において、関係機関との情報共有を密にした職業教育の充実を図るとともに、守山特別支援学校産業科への就労支援コーディネーターや職業指導講師の派遣など、特別支援学校高等部の就労支援の充実を図ります。 イ 企業などへの就労支援のための教育・福祉・企業などの連携 企業などへの就労支援のため、教育・福祉・企業などの有識者で構成する職業自立推進運営委員会を設置し、就労支援策の検討及び関係機関のネットワークの強化を図ります。 (77ページ) 第7 教育・発達支援の充実 現状と課題 本市では、障害の早期発見、早期発達支援を目的として障害児や発達に遅れのある子どもとその保護者に対し、相談、発達支援、医療及びリハビリテーションを総合的に行う地域療育センターを地域の中核療育施設として位置づけています。平成26(2014)年に東部地域療育センターが開設され市内5か所体制となったところですが、近年の発達障害の認知の高まりなどを受けて地域療育センターにおける初診待機期間が長期化するなど、診療体制の充実が課題となっています。 また、「児童福祉法」に基づく児童発達支援事業所及び放課後等デイサービス事業所の数は年々増加しており、身近な地域で支援を受けることができるようになってきた一方、支援の質の向上を図っていく必要があります。 なお、保育所などへの障害児の入所希望も年々増加しているため、幼児期・学齢期における障害児の受け入れをすすめ、障害のある子もない子も、共に育ち、共に遊ぶ機会を拡充する必要があります。 さらに、平成30(2018)年4月には「児童福祉法」が改正され、居宅訪問型児童発達支援の創設や保育所等訪問支援の対象が拡充され、ニーズに応じた支援体制の充実が必要となっています。 このほか、親子遊びなどを通じた早期発達支援の場である障害児いこいの家事業は、発達に遅れや不安のある子どもを育てる保護者が気軽に立ち寄り、子どもの発達について相談し、同じ悩みを抱える保護者同士の交流の場として活用されています。本市ではより身近な地域で支援を受けることができるよう拡充に努めており、令和4(2022)年4月現在、16か所にて実施しています。 また、令和6年(2024)年4月に施行される「児童福祉法」の改正において児童発達支援センターを、地域の障害児の健全な発達における中核的な役割を果たす機関として位置づけ、障害児通所支援事業所やその他関係機関と密接な連携等を図り、重層的な支援体制を整備する方針が示されています。 (78ページ) さらに本市では、市立特別支援学校、障害の種別に応じた特別支援学級や通級指導教室の整備にも努めています。 通常の学級では、特別な教育的支援を必要とする児童生徒が在籍していることから、インクルーシブ教育システムの理念のもと、一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズに応じた教育を推進するため、全校体制で担任をサポートし、児童生徒の指導・支援を行うよう努めます。 一方、特別支援学校の過大化による教室不足が課題になっており、引き続き解消に向けて取り組んでいく必要があります。 市立特別支援学校高等部を卒業した後、多くの卒業生が、一般就労や就労移行支援事業所に進むなどしています。特別支援学校高等部での就労後の定着支援を含めた職業教育の充実、労働、福祉の関係機関との連携をすすめるとともに、本人のニーズにあった進路指導を充実させる必要があります。 (79ページ) 施策の基本的方向 1 相談・支援体制の拡充 学齢前、学齢期、卒業後など生涯を通じて一貫した相談支援体制の充実と連携の強化を図ります。 ア 各相談支援機関の連携強化 地域療育センター、障害者基幹相談支援センター、ハートフレンドなごやなどの各相談支援機関の連携を図り、障害児者一人ひとりへの切れ目のない相談支援ができるよう連携強化を図ります。 イ 障害児相談支援事業の充実 障害児通所支援又は障害福祉サービス等を利用する全ての障害児を対象として、地域の身近なところで相談や支援が受けられるよう、障害児相談支援事業の体制や質の充実を図ります。 ウ 発達支援・教育の連携 幼稚園、保育所などや家庭における子どもの様子や支援の方法を、切れ目なく小学校に引き継ぐ「なごやっ子サポートリレーシート」を引き続き実施し、発達支援・教育の連携を図ります。 エ 発達障害者に対する支援の充実 発達障害者が、生涯を通じて、必要な時期に必要な支援を受けられる支援体制を整えるため、公立大学法人名古屋市立大学と連携し、発達障害者に対する支援の充実を図ります。 また、自閉症を始め発達障害を有する者に対する支援を総合的に行う拠点として、発達障害者支援センターを設置し、相談支援、生涯を通じて当事者及びその家族、関係機関等を支援するネットワークづくりや必要な情報発信、支援者研修等の事業を行います。 オ 子どもの発達が気になる段階からの支援 障害児いこいの家事業について、市内16か所で実施するほか、ペアレントメンター※21による相談の実施など支援の充実を図ります。 また、発達に遅れや不安のある子どもの保護者に対しては、早い段階からの支援が重要であることから、地域の子育て支援施策との連携を図ります。 (80ページ)  カ 学校と公共職業安定所などとの連携強化 特別支援学校を含む学校の卒業生の多様な進路の確保を図るため、公共職業安定所や市内4か所に設置されている障害者就労などの相談支援機関などと学校の連携強化を進めます。 また、障害福祉サービスを利用した福祉事業所を進路として選択する生徒に対して、教育と福祉との連携強化を図り、対応します。 2 発達支援体制の充実 (1)早期発達支援体制の整備 より身近な地域で障害の早期発見、早期発達支援が可能となるよう早期発達支援体制の充実を図り、障害児や家族に対する支援を推進します。 ア 地域療育センターの充実 障害児や発達に遅れなどがある子どもと保護者が、身近な地域で早期に発達支援を受けることができるよう、地域療育センターを増設します。 イ 児童発達支援事業の充実 未就学児が、地域の身近なところで集団生活への適応訓練などを受けられる場として、児童発達支援事業を推進するとともに、事業者に対する指導を徹底するなど、サービスの質の確保に努めます。 ウ 地域における発達支援体制の整備 障害児の発達支援については、早期に身近な地域において、支援を受けることができる体制を整えるため、障害児等療育支援事業や療育グループ事業を引き続き実施します。併せて、地域療育センターに地域支援・調整部門を設置し、幼稚園、保育所等のバックアップを行うことにより、早期子ども発達支援と子ども・子育て支援を一体的に実施します。 エ 子ども発達支援に関する体系的研修の実施 子ども発達支援に携わる職員の知識習得や支援スキル等の向上を目的とした、体系的な研修を実施します。 オ 家族に対する支援 乳幼児期を含め早期から保護者等に十分な情報を提供し、子どもの個性や特性について正しく理解を促し、適切な子育てを行えるよう育児不安の段階から支援を実施します。 (81ページ) (2)多様化する発達支援ニーズへの対応 学齢期における発達支援や個々の児童の状況に応じたきめ細かいサービスの提供を推進します。 ア 放課後等デイサービス事業の充実 小学生・中学生・高校生が授業の終了後又は休業日に地域の身近なところで生活能力の向上のために必要な訓練などを受けられる場として、放課後等デイサービス事業を推進するとともに、一人ひとりの成長発達において必要な支援を受けられるよう、サービスの質の確保に努めます。 イ 保育所等訪問支援等の実施 地域療育センターに地域支援・調整部門を設置することにより、幼稚園、保育所等に通う子どもの発達支援を進めるとともに、希望する全ての子どもが保育所等訪問支援を利用できるよう体制を整えます。 ウ 居宅訪問型児童発達支援の実施 障害児通所支援を利用するために外出することが困難な重度の障害児などに対し、支援を行う居宅訪問型児童発達支援について、ニーズの把握に努めるとともに、希望する全ての子どもが居宅訪問型児童発達支援を利用できるよう体制を整えます。 (3)サービスの質の向上 障害児の保護者が事業者やサービス内容を適切に選ぶことができるよう、名古屋市子ども発達支援ウェブサイトなどを活用し、わかりやすい情報提供に引き続き努めます。併せて、障害児が個々の特性に応じた良質なサービス提供を受けられるよう、障害特性や制度理解を深める研修などを実施します。 また、法令などの規定に基づいた事業者指定と事業者への指導・監査、事業者に対する苦情解決及び第三者評価の実施の促進などによりサービスの質の向上を図ります。 (82ページ) 3 学校教育の充実 (1)教育的ニーズに応じた教育の推進 教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行うとともに、障害の有無にかかわらず互いの個性を尊重し合いながら学んでいくことができるよう、インクルーシブ教育システムの理念を取り入れるとともに、障害の状態や特性に応じた多様な学びの場の整備に努めます。 ア 就学時、進学時における適切な就学先決定の実施 障害のある児童生徒の就学先決定に当たっては、本人・保護者に対する十分な情報提供のもと、本人・保護者の意見を最大限に尊重しつつ、本人・保護者と教育委員会、学校などが、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とするとともに、発達の程度や適応の状況などに応じて、柔軟に「学びの場」を変更できることについて、引き続き関係者への周知を行います。 イ 障害のある児童生徒に対する適切な教育的支援の実施 児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高めるため、障害の状況や教育の場に応じた指導方法や学習形態の工夫改善、拡大教科書、デジタル教材、ICT機器、補聴援助システムの活用など、障害のある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行います。 (2)特別支援学校の過大化による教室不足の解消 特別支援学校の児童生徒数の増加に伴って、特別支援学校全体が狭くゆとりが少なくなってきている状況を解消するため、天白特別支援学校の増築を行います。 (3)学校における医療的ケアの実施 学校において医療的ケアを提供する看護介助員を配置するなど幼児児童生徒への支援体制の充実に努めます。 (83ページ) (4)適切な指導の推進 特別支援教育を推進する上で、関係機関との連携に努めるとともに、幼稚園、小・中学校、高等学校、特別支援学校の全てにおいて教職員への研修の充実を図ります。 ア 適切な指導のための関係機関との連携強化 障害のある児童生徒一人ひとりへの適切な指導を進めるため、就学前から学校卒業後までの教育に関する相談機関である教育センターはじめ教育機関と、福祉、医療、労働など関係機関との連携強化を図ります。 また、県立高等学校にかかわる適切な指導を進めるため、愛知県教育委員会と連携を図ります。 イ 個別の教育支援計画の策定と活用の推進 障害児が就学前から卒業後まで切れ目のない支援を受けることができるように、保護者の参画のもと、医療、保健、福祉、労働などの関係機関と連携し、個別の教育支援計画の策定を進めるとともに、学校間などでの引き継ぎなどでの活用を推進します。 また、名古屋市立高等学校においても、必要な生徒に個別の教育支援計画の策定と活用を推進します。 ウ 障害に対する理解や交流及び共同学習の推進 障害のある児童生徒と、障害のない児童生徒が互いに理解し、人格と個性を尊重し合える共生社会の実現を目指し、ともに学ぶことができる交流及び共同学習を推進します。 エ 全ての教職員に対する障害理解と特別支援教育の推進 「障害者権利条約」など法制度を含む最新の知見を踏まえながら、全ての教職員が障害に対する理解や特別支援教育に係る専門性を深める研修を推進します。 (84ページ) (5)学校におけるバリアフリーの充実 ア 学校施設のバリアフリー化の推進 国から示された「公立小中学校等施設のバリアフリー化に関する整備目標」を踏まえ、障害のある児童生徒の教育環境改善のため、車椅子使用者用トイレの整備やスロープ等による段差解消を実施するとともに、要配慮児童生徒在籍校等へエレベーターを整備します。 イ 介助者などの配置 発達障害者対応支援員、発達障害者対応支援講師や主に身体障害のある幼児児童生徒に対して、学校生活介助アシスタントを配置します。 また、医療的ケアが必要な幼児児童生徒に、看護介助員を配置します。 (6)特別支援学校高等部における職業教育の充実 特別支援学校高等部産業科において、就労支援コーディネーターや職業指導講師などを配置し、進路指導及び就労支援の充実に努めます。 4 幼児期・学齢期における共に育つ場・機会の拡充 幼児期・学齢期において、共に育つ場の機会を拡充するため、幼稚園・保育所などにおける障害児の受け入れなどを推進します。 ア 幼稚園・保育所における障害児の受け入れの推進 教育委員会と子ども青少年局などの関係機関が連携し、幼稚園・保育所における障害児の受け入れを推進します。 イ 放課後事業での障害児の受け入れ促進 障害児が地域で共に豊かな放課後などを過ごすことができるよう、留守家庭児童健全育成事業、トワイライトスクール及びトワイライトルームでの障害児の受け入れを促進します。 ウ 共に学ぶ交流機会の創出 共生社会の実現を目指し、共に学ぶ交流機会の創出を図ります。 (85ページ) 8 防災・防犯などの推進 現状と課題 平成23(2011)年3月の東日本大震災では、非常に多くの命が失われ、その中でも、65歳以上の高齢者の死亡率の割合が約6割、障害者の死亡率は被災住民全体の死亡率の約2倍との調査結果もあります。さらに、平成28(2016)年4月の熊本地震では、指定避難所などでの生活環境が確保されず、要配慮者※22への支援が十分に行われなかったと報告されています。南海トラフ地震の発生確率が今後30年間で70〜80%(40年間で90%程度)と切迫度を増し、本市では発生した場合の地震動、津波により大きな被害を想定しており、対策が必要とされています。 一方、風水害についても平成30(2018)年7月豪雨や令和元(2019)年東日本台風、令和2(2020)年7月豪雨など、記録的な大雨による甚大かつ広域的な被害が全国各地で多発しています。そのような災害に対応するため、平成27(2015)年に「水防法」が改正されたことを受け、本市も想定し得る最大規模の洪水・内水氾濫・高潮などの浸水想定区域を踏まえた、新しいハザードマップを令和4(2022)年3月から順次公表しました。 こうした状況の中、本市においては、「名古屋市防災条例」により、「自助」「共助」「公助」の基本的な理念を定めるとともに、地域防災計画にて災害予防、災害応急対策及び災害復旧について定め、計画的かつ効率的な防災行政の推進を図ってまいりました。今後も、安否確認、避難支援などの仕組みや緊急時における情報伝達の方法、発災時における障害者等要配慮者の安全確保、災害後の支援策などについて、有効な方策を検討していくほか、施設などにおいては、災害時に地域との協力体制が築けるよう日頃から地域との結びつきを図っていく必要があります。 (86ページ) また、障害者支援施設などを利用する障害者が安心して生活できるよう、防犯に係る安全確保のための環境整備や職員の対応に関する点検などの取組を促進するとともに、関係機関や地域住民などと連携し、安全確保体制を構築し、地域と一体となった開かれた施設になることを推進する必要があります。 さらに、障害者が地域において安心して生活ができるよう、防犯に関する取組や消費者トラブルの防止をより一層充実させる必要があります。 (87ページ) 施策の基本的方向 1 防災対策の推進 (1)災害時の避難・救助体制などの充実 発生が危惧されている南海トラフ地震などの大規模災害に備え、障害者等要配慮者を支援するとともに、緊急時に円滑に救助できるよう取組を進めます。 ア 個別避難計画作成の推進等 避難行動に支援が必要な方の個別避難計画の作成について、地域住民や福祉事業者をはじめ様々な関係者と連携しながら取組を進めるとともに、地域における要配慮者の安否確認や避難支援など助け合いの取組が推進されるよう支援します。さらに、要配慮者自身に対しても、自助に取り組むことができるよう啓発します。 イ 避難支援訓練の実施 障害者の地域生活を支援していく各区の自立支援連絡協議会と行政の一層の連携を図り、避難誘導、指定避難所での支援などに関する訓練などを関係機関や障害者などの要配慮者本人の参加を得ながら実施し、要配慮者自身の災害対応力の向上を図るとともに、障害特性に応じた支援と合理的配慮を得ることができるよう努めます。 ウ 災害時の医療体制の検討 大規模災害時における医療体制の在り方について、名古屋市医師会や災害医療コーディネーター等で構成する名古屋医療圏地域災害医療部会を開催し、関係機関との連携体制などについて検討を継続します。 エ 福祉避難所などの拡充 通常の避難所生活に困難をきたす要配慮者などを対象に開設する福祉避難所について、福祉施設などへの働きかけを行い、指定福祉避難所への備蓄物資の補助、マンパワーの確保など、避難生活の支援を行い、さらなる福祉避難所のか所数の増加を図ります。 また、小学校などの指定避難所における要配慮者に配慮された空間である福祉避難スペースの確保を進めます。   (88ページ) オ 福祉仮設住宅の供給 災害時における応急仮設住宅の建設にあたっては、関係部局などの間で調整を進め、障害者などに配慮した福祉仮設住宅の供給に努めます。 カ 災害時のこころのケア体制 本市域で大規模災害が発生した際は、DPAT※23の派遣要請などを行い、こころのケア活動を実施します。 また、災害時のこころの健康についての研修や普及啓発を行います。 キ 避難確保計画の作成等促進 想定し得る最大規模の洪水等を前提とした浸水想定区域内の要配慮者利用施設について、利用者の安全な避難確保に係る計画等の作成を支援するとともに、避難訓練実施報告書の提出を促進します。 ク 耐災害性強化対策の促進 地震や水害の発生時における建物の倒壊、破損等での人的被害の防止、円滑な避難の確保及び停電・断水時の施設機能の維持のため、障害者支援施設の施設整備等を促進します。 ケ グループホームのスプリンクラー設備の整備補助 防災の観点から、今後入居者の重度化に伴ってスプリンクラー設備の設置義務が生じる可能性の高い既存のグループホームに対して整備補助を行うことにより、安全な住環境の確保に繋げていきます。 コ 聴覚障害者及び音声又は言語機能障害者の緊急通報対応 火災や救急事案の発生時に、聴覚障害者及び音声又は言語機能障害者からの緊急通報をファックスや電子メール、さらにはスマートフォンなどを活用した音声によらない緊急通報システムにて受け付けることにより、緊急通報への円滑な対応を図ります。さらに、救急搬送時に依頼に応じて曜日・時間帯を問わず、手話通訳者や要約筆記者を医療機関へ派遣します。 (2)災害時の情報伝達手段についての検討 災害時においてテレビ、ラジオ、電子メール、SNS、ウェブサイト、防災スピーカー、広報車など様々な障害特性に応じた多様な手段による情報伝達を実施するとともに、迅速性・多様性の観点から継続的に情報伝達手段について検討します。 (89ページ) 2 防犯対策の推進 (1)障害者支援施設などにおける安全体制の構築 地域に開かれた社会福祉施設などの防犯・安全確保に関するハンドブックなど、防犯に関する情報を提供することにより、障害者支援施設などにおける安全体制の構築に向けた普及啓発を実施します。併せて、不審者などの緊急情報を、関係機関が共有する連絡・通報体制の整備や、周辺環境や利用者の状態などに応じた施設の設備面における安全対策など、障害者支援施設などにおける安全体制の構築を推進します。 (2)防犯教室などによる啓発活動の実施 地域安全指導員の行う防犯市民講座などを通じ、街頭犯罪などの犯罪被害にあわないよう、普及啓発活動を実施します。 3 消費者トラブルの防止 (1)消費者教育の推進 高齢者や障害者を含めた全ての消費者が自立し、自主的かつ合理的に行動できるよう消費者教育を推進し、消費者トラブルの防止に努めます。 (2)関係機関との連携 名古屋市消費者安全確保連絡会議において、会議開催や情報提供等を通じて連携を図り、消費者被害防止に努めます。 (90ページ) 白紙