名古屋市障害のある人もない人も共に生きるための障害者差別解消推進条例ガイドブック この条例は、障害のある人もない人もお互いを尊重し、思いやる気持ちを持ちながら、安心して暮らせるまちづくりを目指して制定しました。(平成31年4月施行) 本市では、『意識のバリアフリー行動』を推進し、障害を理由とする差別の解消に向けたさらなる取り組みを進めてまいります。 令和7年4月 条例がめざすまち 障害のある人もない人も、かけがえのない存在として尊重される社会の実現は、名古屋市民みんなの願いです。 しかし、今なお、障害のある人への誤解や偏見があり、障害のある人の自立や社会参加が妨げられているという現状があります。 こうした状況を解決するためには、誰でも事故や病気などにより、障害を有することになる可能性があることを認識し、「障害を理由とする差別」をみんなの課題として捉え、取り組んでいくことが大切です。 それとともに、子どもの頃から障害のあるなしにかかわらず、一緒に学び遊ぶ中で、正しい知識や理解する心を育てることも必要です。 この条例では、市・事業者・市民が一体となって、障害や障害のある人への理解を深め、障害を理由とする差別の解消の推進に取り組み、みんなが安心して共に暮らせるまち・なごやをつくることを目指します。 市 事業者や市民の理解を促進し、障害を理由とする差別を解消するための施策を行います。 事業者(注)(会社やお店など) 障害のある人もない人も共に利用しやすい環境づくりやサービスの提供などに努めます。 (注)事業者とは、商業その他の事業を行う企業や団体、店舗であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同じサービス等を反復継続する意思をもって行う者となります。個人事業主やボランティア活動をするグループなども対象となります。 市民 障害のある人もない人も共に暮らしやすい環境づくりに努めます。 条例の基本理念 条例では、障害を理由とした差別を解消するために重要なこと(基本理念)として、次の7つを定めています。 1 すべての障害のある人が、社会において、あらゆる活動に参加できることが重要です。 2 すべての障害のある人が、どこで誰と暮らすかを選ぶことができ、地域の中でみんなと暮らせることが重要です。 3 すべての障害のある人が、コミュニケーションのための手段や、情報を得たり利用したりするための手段を選べることが重要です。(手話を含む言語、点字、音声、文字による表示、わかりやすい表現、絵図など障害の特性に応じた手段)また、自分の意思を決定することが困難な障害者への支援も重要です。 4 すべての障害のある人は、障害を理由とする差別に加えて、性別や年齢など他の理由でも差別を受けることがあります。それぞれの状況に応じた配慮がされることが重要です。 5 障害を理由とする差別を解消するためには、差別する側とされる側に分かれて、相手を一方的に非難するのではなく、話し合いを通じて、お互いをよく理解することが重要です。 6 災害が起きたときの安心安全のためには、障害の特性に応じた配慮(避難環境を整えることや、情報の提供方法等)が重要です。 7 子どもの頃から、家庭や学校をはじめとする社会のあらゆる場面で、障害に関する知識や理解を深め、障害のあるなしにかかわらず、共に助けあい、学び合う心を育てることが重要です。 障害のある人とは… 身体障害や知的障害のある人、精神障害のある人(発達障害、高次脳機能障害を含む)、難病のある人、その他の障害のある人で、身体や心の機能の障害や、社会にある様々な障壁(社会的障壁)によって、継続的・断続的に生活のしづらさを感じている人全てが対象です。 障害者手帳を持っている人のことだけではありません。 障害のある人にとっての社会的障壁とは… 困っているのは、身体や心の機能に障害があるから? 障害のある人が感じる生活のしづらさは、「その人の身体や心の機能に障害があるから」という個人の問題のみが理由ではありません。 社会には、障害のない人を基準につくられている事物が多く存在します。 そのため、障害のない人にとっては障壁と感じられないものが、障害のある人にとっては生活のしづらさを感じる障壁となるのです。 そのような、社会の側がつくり出す様々な障壁のことを「社会的障壁」といいます。 障害のある人もない人も、地域で共に安心して暮らしていくために、このような社会的障壁をなくさなくてはいけません。 社会的障壁(バリア)とは… @ 物理的なバリア 通行・利用しにくい施設、設備など A 制度的なバリア 利用しにくい制度など B 文化・情報面でのバリア 障害のある人の存在を意識していない慣習、文化など C 意識上のバリア 障害のある人への偏見など 社会的障壁の例 入口や通路の段差 早口で専門用語の多い説明 この条例では、「障害を理由とする差別」の解消を目指しています。 「障害を理由とする差別」とは、次の2つがあります。 不当な差別的取扱いをすること 合理的配慮の提供をしないこと この条例では次のように定めています。 市は不当な差別的取扱いをしてはいけません 市は合理的配慮の提供をしなければいけません 事業者は不当な差別的取扱いをしてはいけません 事業者は合理的配慮の提供をしなければいけません(令和6年4月から義務化) 不当な差別的取扱いとは… 「不当な差別的取扱い」とは、障害を理由として、正当な理由なく、サービスの提供を拒否したり、提供に当たって場所や時間帯などを制限したり、障害のない人には付けない条件を付けたりすることをいいます。 条例では、障害のある人の生活に関わる9つの分野について差別の事例を示すとともに、9つの分野以外の行為についても包括的に禁止しています。 障害のある人の生活に関わる分野 福祉サービス 医療 教育、療育又は保育 雇用 商品販売サービス提供 不動産取引 建物、施設及び公共交通機関 スポーツ文化芸術等 情報の提供と意思表示の受領 その他 こんなことが「不当な差別的取扱い」になります 大切なこと 正当な理由がないにもかかわらず、障害があることを理由に、障害のある人が不利となるような対応をしてはいけません。 正当な理由がある場合は、障害のある人にその理由を丁寧に説明し、理解を得るよう努めなければいけません。 「正当な理由」があるかないかについては、具体的な場面や状況に応じて個別に判断されます。 事例 1 福祉サービスの提供 障害を理由に、サービスの提供を拒否する。 本人の気持ちを確認せず、事業者と家族との話し合いだけで施設入所を決める。 2 医療の提供 障害を理由に、診察や検査を後回しにする。 入院治療の必要性が低く、障害のある人が退院を希望しているのに、むりやり入院を継続する。 3 教育、療育又は保育 障害のある人や保護者の意見を聞かず、通う学校を決める。 障害を理由に、障害のある人が希望するクラブ活動への参加を制限する。 障害を理由に、保育園や幼稚園の入園を認めない。 4 労働者の雇用 障害を理由に、応募や採用を拒否する。 障害を理由に、賃金、労働時間、働く場所、昇進などの労働条件を不利に扱う。 5 商品の販売、サービスの提供 補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)がいることを理由に、飲食店への入店を断る。 障害を理由に、旅行ツアーの申込みで付き添い人を一律に求める。 6 不動産の取引 障害を理由に、アパートを借りる契約を一律に拒否する。 障害を理由に、マンションに入居するための審査で保証人の数を増やしたり、特別な保証人(障害者団体等)を求めたりする。 7 建物、施設及び公共交通機関の利用 車いすを理由に、タクシー乗車を一律に拒否する。 バリアフリー化された施設だが、「対応できる職員がいない」と施設への入場を断る。 8 スポーツ、文化芸術活動その他の生涯学習活動 障害を理由に、文化講習の参加に介助者の同伴を求める。 9 障害のある人への情報提供、障害のある人からの意思表示の受領 「障害のある人には分からないだろう」と判断して情報提供をしない。 聴覚障害のある人が、自分の意思を伝えるために手話通訳者の同席を求めたが、それを断る。 その他 本人を無視して、介助者や支援者、付き添い人だけに話しかける。 障害のある人を子ども扱いする。 合理的配慮の提供とは… 「合理的配慮の提供」とは、障害のある人から何らかの配慮を求められたときに、お金や労力など負担になり過ぎない範囲で、その人の困っていること(社会的障壁)を取り除くために必要で合理的な配慮を行うことをいいます。 しかし、障害のある人が求める配慮は、障害の特性、性別、年齢や具体的な場面などによって一人ひとり違います。 大切なこと 合理的配慮は、障害のある人に対する特別扱いではなく、障害のある人が障害のない人と同じ生活を営むための大切な配慮です。 建設的な話し合いによって、お互いの状況の理解を深め、柔軟に対応する必要があります。 負担が大きくて(過重な負担)配慮ができない場合は、障害のある人にその理由を丁寧に説明し、理解を得るように努めなければいけません。 負担が大きいかどうかは、事業等の規模やその規模からみた負担の程度、財政状況、業務遂行に及ぼす影響などを考慮して判断されます。 意思の表明がない場合であっても、社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるならば、適切と思われる配慮の提供を申し出るなど、自主的な取り組みに努める必要があります。 合理的配慮を行うための環境の整備 市及び事業者は、個々の障害のある人への合理的配慮をしやすくするために、環境の整備に努めることとされています。 環境の整備の例 施設のバリアフリー化 情報のアクセシビリティーの向上(ウェブサイトの改良) 職員に対する研修 合理的配慮の提供事例@ 肢体不自由 障害のある人からの申出 飲食店で車いすのまま着席したい。 合理的配慮の提供 机に備付けの椅子は、片付けて、車いすのまま着席できるスペースを確保した。 視覚障害 障害のある人からの申出 店舗までの通路にある点字ブロックの上に自転車が置かれており、立ち往生してしまった。 合理的配慮の提供 店舗まで店員が案内することとした。 注1 合理的配慮の内容は個別の場面に応じて異なるものになりますので、この事例はあらゆる事業者が必ずしも実施するものではないこと、またこの事例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意する必要があります。 聴覚障害 障害のある人からの申出 病院の待合室で診察順を待っている時、呼び込まれてもわからない。 合理的配慮の提供 通常は、診察室から次の受診者の名前を呼んでいるが、待合室の座席まで呼びに行くようにした。 重症心身障害 障害のある人からの申出 車いすがリクライニングタイプのため、スーパーの会計時にレジに並ぶこともレジ横を通ることも難しい。 合理的配慮の提供 レジにおいて、会計の順番が来るまで店員は買物かごを預かり、順番になった時に声をかけるようにし、それまで広いところで待てるよう配慮した。 注2 合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人と事業者との間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが重要です。 合理的配慮の提供事例A 知的障害 障害のある人からの申出 イベント会場において、知的障害のある子どもや大人が、発声やこだわりのある行動をしてしまう。 合理的配慮の提供 会場のスタッフが母親や支援者から、その人の特性やコミュニケーションの方法等について聞き取り、落ち着かない様子のときは個室に誘導するなどの対応をした。 発達障害 障害のある人からの申出 文字の読み書きに時間がかかるため、セミナーへ参加中にホワイトボードを最後まで書き写すことができない。 合理的配慮の提供 書き写す代わりに、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット型端末などで、ホワイトボードの写真を撮影できることとした。 注3 合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人の性別、年齢等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた配慮が求められることに留意する必要があります。 精神障害 障害のある人からの申出 障害の状況によっては、セミナー参加中に情緒不安定になってしまうことがある。 合理的配慮の提供 情緒不安定になったときには、落ち着くまで一人になれる場所へ移動して休むことができるようにした。 内部障害や難病 障害のある人からの申出 難病が原因で身体障害があり、カウンターが高く、立った姿勢を保つのが難しいので、座ったまま(低いカウンター)で手続きをしたい。 合理的配慮の提供 窓口のスタッフが待合室の座席に行き、手続きを行うこととした。 ヘルプマーク 援助や配慮を必要としていることが外見からはわからない人が、周囲の人に配慮を必要としていることを知らせることで、援助が得やすくなるよう作成したマークです。 障害の特性を知ってサポートしよう! 障害のある人が求めている配慮は、障害特性や具体的場面によって一人ひとり違います。ここから紹介する内容はあくまで一例です。 障害の特性をしっかり理解するとともに、実際の場面では、個々の状況に応じた対応に努めます。 それぞれの状況に応じて、何か手立てはないかということを一緒に考える姿勢が大切です。 肢体不自由 肢体不自由とは、手や足、体の胴の部分に障害があることを言います。 歩いたり、立ったり、物の持ち運びなどに支障があり、そのために多くの人が杖や装具、車いすなどを使用しています。 障害の特性は一人ひとり違います。 こんなことで困っています! 歩道や施設などに段差や障害物があり、移動することができません。 車いすに乗っていると、高いところの物が見えなかったり、届かなかったりします。 発語の障害やまひのある人は、自分の意思を上手く伝えられません。 こんなサポートがあります! 困っている人がいたら、まずは声をかけ、本人の意思を確認してから手助けします。また、普段から歩道や通路を物でふさがないように気をつけます。 会議や会場を準備する際は、入口からの動線など、席の位置に配慮するとともに、必要に応じて車いす利用者や支援者の席を用意します。 聞き取りにくい時は、きちんと内容を確認します。また、子ども扱いをせずに、その人の年齢にふさわしい対応に心がけます。 視覚障害 視覚障害には、まったく見えない「全盲」、眼鏡などで矯正しても視力が弱い「弱視」、見える範囲(視野)がせまい「視野狭窄」があります。 障害の特性は一人ひとり違います。 こんなことで困っています! 進行方向、目的の場所やものがわからないなどの困難に直面していても、どこに人がいるか分からないため、自分から尋ねることができません。 慣れていない場所では、一人で移動することが困難です。 目からの情報が得られない、または得にくいため、音声や手で触れるなどの方法で情報を得ています。 こんなサポートがあります! 困っている人がいたら、まずは声をかけます。説明をするときは、「あそこ」「そっち」といった指示語や、「赤い看板」といった視覚情報を表す言葉は避け、「5m先を右」など具体的な方向や距離を示すようにします。 誘導の希望があれば、障害者の横半歩前に立ち、腕をつかんでもらいスピードに気を付けながら案内します。身長差がある場合は、肩に手を置いてもらう方法もあります。また、普段から点字ブロックを人や自転車などでふさがないようにします。 資料などを点字や拡大文字、音声形式で用意したり、読み上げて伝えたりします。また、資料などへの記入でお困りの場合は、本人の希望を聞き、代筆を行います。 盲ろう(視覚と聴覚の重複障害) 全く見えず聞こえない「全盲ろう」、見えにくく聞こえない「弱視ろう」、全く見えず聞こえにくい「盲難聴」、見えにくく聞こえにくい「弱視難聴」の方がいます。障害の状態や程度、原因、成育歴等により、コミュニケーション手段は異なり、支援方法も異なります。障害の状態や程度に応じて視覚障害や聴覚障害の方と同じ対応が可能な場合もあります。手書き文字や触手話、指点字などを利用する方もいます。 聴覚障害 人の声や物音が聴こえない、または聴こえにくいという障害を聴覚障害と言います。 外見からは障害のあることがわかりにくいために、「障害は軽い、耳が聴こえないだけ」などといった誤解を受けたり、不利益な目にあったり、危険にさらされたりと、社会生活上の不安は尽きません。 障害の特性は一人ひとり違います。 こんなことで困っています! 音声情報によって周囲の状況を判断することが困難です。事故などで緊急のアナウンスが流れても、何が起こっているのかわかりません。 話し言葉による意思の疎通(コミュニケーション)がはかれない場合があります。また、日本語の理解(読み書きも含む)が難しい方もいます。 聴こえづらい、または話しづらいため、電話での問い合わせをすることが困難です。 こんなサポートがあります! 行政や病院、銀行などの窓口で順番を知らせるときや緊急時の情報提供などは、目で見てわかる方法を取ります。(電光掲示板、ホワイトボードなど) 耳マークを窓口に設置し、本人の意向を確認して、「手話」、「要約筆記」、「筆談」、「口話」などいろいろな方法でコミュニケーションを図ります。また、日本語の理解には個人差があるためその人に合わせてやりとりします。 問い合わせなどは電話番号だけでなく、FAX番号やメールアドレスを併記します。 重症心身障害 重度の肢体不自由と重度の知的障害などが重複している最も重い障害を重症心身障害と言います。 この重症心身障害は医学的には、大人になっても2歳程度の知能で寝たきりの人や、2歳から3歳までの知能でやっと座ることができる人とされています。 自宅で介護を受けたり、専門施設に入所したりするなどして生活しています。また、日中などは大きな車いすで外出したりしています。 障害の特性は一人ひとり違います。 こんなことで困っています! 自分一人では日常生活を送ることが困難で、すべての生活面において全介助が必要です。 言葉による理解や意思の伝達が困難なので、何もわかっていないように思われます。 みんなと外出を楽しみたいが、食べ物が飲み込みづらいなど通常の食事が取れないため、外食をあきらめることがあります。 こんなサポートがあります! 車いすやストレッチャーを見かけて、手助けが必要だと思ったときは、本人や介護している方に声をかけましょう。 言葉で話せなくても感じるこころは同じなので、みなさんと同じように接することが大切です。 食べ物が飲み込みづらい人のために、刻み食やミキサー食を用意し、できるだけ他の人と同じものを食べてもらえるようにします。 知的障害 知的障害とは、生活や学習面で現れる知的な働きや発達が同年代の人の平均と比べ、ゆっくりしていることを言います。 先天性・後天性さまざまな原因による脳の機能障害です。脳内の障害のため、見た目では分かりづらい障害です。 発語がなく身の回りの全面的支援が必要な最重度障害の人から、職業生活をほぼ送れる軽度障害の人まで、障害の現れ方にさまざまな違いがあります。 主な特性 障害の特性は一人ひとり違います。 社会生活への参加がしづらい コミュニケーション力が弱い 抽象的な概念、複雑なことは理解しにくい 集中力が低い 自己コントロール力が弱い 状況を判断することが苦手 読み書きや計算が苦手 など こんなことで困っています! 外見からはわかりにくい人もいるので、周囲から障害を理解してもらうことが難しいです。 複雑な話や抽象的な話を理解しにくい人がいます。 ひとつの行動にこだわったり、同じ質問を繰り返したりする人がいます。 こんなサポートがあります! 知的障害の間違った知識や思い込みをなくし、障害の特性を理解することが大切です。 顔をみて、ゆっくりとわかりやすい言葉で話します。身振りをまじえたり、絵や写真などを使ったりしてコミュニケーションを図ることも大切です。 子ども扱いをせずに、その人の年齢にふさわしい対応を心がけます。 発達障害 発達障害とは、脳機能の発達が関係する生まれつきの障害で、「自閉スペクトラム症」(ASD)や「注意欠如多動症」(ADHD)、「限局性学習症」(SLD)などがあります。 知的な遅れがある場合もあれば、知的な遅れがない、または平均以上の場合もあります。 障害の特性による困難さと同時に優れた能力を持つこともあり、知的な遅れがなくても、そのアンバランスさから、理解されにくい障害です。 主な特性 障害の特性は一人ひとり違います。 感覚が過敏、または逆に感覚が鈍い(音、痛み、体に触れる、味、臭い)(ASD) 集中できない、うっかりミスが多い(ADHD) 衝動性がある(ADHD) じっとしていられない(ADHD) 読み書きや計算などの特定の能力に著しい困難がある(SLD) など これらの障害が重複している場合があります こんなことで困っています! 外見からはわかりにくい人もいるので、周囲から障害を理解してもらうことが難しいです。 言葉を話していても、理解していない人や、独り言が多い人がいます。 コミュニケーションや対人関係を築くことが苦手な人がいます。また、相手の表情やその場の雰囲気を読み取るのが苦手な人がいます。 こんなサポートがあります! 個々の障害の特性を理解して、その人に合わせた支援をします。 曖昧な言葉(「ちゃんと」、「きちんと」など)ではなく、具体的に話をします。絵、写真などをまじえて、短い言葉でおだやかに話をします。 混乱している様子や不安な様子の時は静かな場所を用意して対応します。 精神障害 精神疾患により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限がある方が、精神障害者に当たります。 精神疾患には、認知症、高次脳機能障害、アルコール依存症や薬物依存症、統合失調症、うつ病や躁うつ病、不安障害や強迫性障害、摂食障害、パーソナリティ障害、てんかんなど様々な疾患があります。個々の障害についての理解が求められます。 ここでは、それらの疾患の一つである統合失調症の特性について紹介します。 統合失調症の主な特性 障害の特性は一人ひとり違います。 妄想や幻聴が現れる やる気が起きない、疲労感が濃い状態になる 融通がきかない 社会生活能力に乏しい 目標の立て方が現実的でない ストレスに弱い 新しいこと、知らないことに対する極度の不安と緊張がある など こんなことで困っています! 外見からは分かりにくく、障害についてあまり理解されないため、相談もできず、一人で悩むときがあります。 ストレスに弱く、対人関係やコミュニケーションが苦手な人がいます。 社会生活に慣れていない人がいます。 こんなサポートがあります! 精神障害の間違った知識や思い込みをなくし、個々人の障害や生活のしづらさを理解することが大切です。 「○○してはダメ」と否定的な言葉でなく、「○○しましょう」と肯定的な言葉で話します。 特に相手の言動など理解できないことに関しては、常識の範囲内で相手に不安を感じさせないように、ゆっくりとおだやかにわかりやすく話します。 精神疾患の状態によっては、関わりを求められた時に、関わり方を工夫しながら、穏やかに見守ることが必要な場合があります。 高次脳機能障害 高次脳機能障害とは、ケガや病気で脳に何らかの損傷があったときに生じる脳の機能障害の一つで、考えたり行動したりすることが難しくなります。 たとえ知的に低下していなくても、物覚えや注意力などの認知能力の障害があったり、性格や行動の障害があったりするので、仕事や生活に困難が生じます。 主な特性 障害の特性は一人ひとり違います。 すぐに忘れる、新しいことが覚えられない(記憶障害) 集中できない、いくつかのことが同時にできない、ミスが多い(注意障害) 段取りが悪くなる、計画が立てられない、融通が利かない(遂行機能障害) 自分の言いたいことがうまく言えない、言われていることがわからない(失語症) 些細なことでイライラする、欲求が抑えられない、人の気持ちがわかりにくい、やる気が出ない、こどもっぽい、疲れやすい、こだわりが強い(社会的行動障害) など こんなことで困っています! 外見からはわかりにくいため、できなくなったことを本人の努力不足と思われてしまうことがあります。 早口や、長い説明、抽象的な言葉などは理解しにくいことがあります。 コミュニケーションや対人関係を築くことが難しくなっていることがあります。 疲れやすいため、職場や学校などでぼーっとしてしまうことがあります こんなサポートがあります! 個々の障害の特性を理解して、その人に合わせた支援をします。 障害を理由に生じていることに対しては、正しいやり方をわかりやすい言葉で話します。 疲れたときには、休憩できるように配慮します。 内部障害や難病 内部障害とは、病気などで身体の内部(心臓、腎臓、肺、ぼうこう、直腸、小腸、肝臓など)の働きが弱くなったり、働かなくなったりする機能の障害や、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能の障害を言います。 難病とは、発病の原因が明確でないために治療方法が確立しておらず、長期の医療・療養を必要とする疾患(潰瘍性大腸炎、パーキンソン病など)です。 外見からは分からないため、理解されにくい障害ですが、日常生活で健常者にとって当たり前のことがなかなかできなかったり、誤解や差別を受けたりすることがあります。 障害の特性は一人ひとり違います。 こんなことで困っています! 外見からは分かりにくく、周りから理解されにくいため、電車やバスの優先席に座りにくいなど、心理的ストレスを受けやすい状態にあります。 疲れやすいため、長時間立って待つことができません。 外見からは分からないが、つらい・苦しい・痛い・疲れやすいなどの症状が断続的に続く中で、就労・就学など社会参加をしています。 こんなサポートがあります! まずは、外見からは配慮や援助が必要なことがわからない人がいることを理解し、困っている様子を見かけたら声をかけ、思いやりのある行動をします。 立って待つことが困難な人がいたら、まわりの理解を得てイスを用意し、順番が来たら声をかけるなどの配慮をします。 体調の状況により、援助や配慮が必要になります。気づいた方は声をかけてください。 注 オストメイトマーク 人工肛門・人工膀胱を造設している方(オストメイト)のための設備があることを表し、オストメイト対応のトイレの入口・案内誘導プレートなどに表示されています。 障害者差別解消を推進する取り組み 広報・啓発 事業者や市民が、障害や障害のある人への理解と関心を深めるために必要な広報・啓発活動を行います。 障害のあるなしにかかわらず、みんながお互いに理解を深めることができる機会や情報提供を行います。 教育上の支援 障害のある幼児、児童、生徒が、できる限り障害のない幼児、児童、生徒といっしょに学び、必要な教育を受けることができるよう、医療機関や福祉施設などの関係機関と連携し、必要な支援を行います。 手話言語の普及・意思疎通手段の利用促進 事業者や市民における手話の利用が普及するよう、広報・啓発活動を行います。 手話を含む言語、点字、音声、文字による表示、わかりやすい表現、絵図などの意思疎通手段で、障害の特性に応じたものの利用の促進を図ります。 災害時の支援 災害発生時などの緊急時において、障害のある人に対し、その安全を確保するために必要な支援を行うとともに、意思疎通を図ることが難しい障害のある人に対し、その障害の特性に応じた情報の提供を行います。 『意識のバリアフリー行動』を推進するための施策 『意識のバリアフリー行動』とは? 「周囲からの心ない言葉、偏見や差別、無関心など、障害のある人を受け入れない意識上のバリアをなくすため、障害の有無にかかわらず、誰もが障害及び障害のある人に対する理解を深め、バリアを感じている人の身になって考え、そのために必要な行動を起こすこと」をいいます。   私たちの周りには、どのようなバリアを感じている人がいるか、どのようなバリアフリーの工夫があるかに目を向けてみましょう。 私たちの一人ひとりが『意識のバリアフリー行動』を実践することにより、バリアのない社会を広げていきましょう。 @こんなときどうする? 障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック 障害及び障害のある人の正しい理解のため、各障害の特性とこれまで実際に障害のある人が体験した事例等をもとに、適切な接遇応対の例を紹介したものです。 市の公式ウェブサイトからダウンロードできます。「名古屋市 こんなときどうする」で検索してください。 Aこんなときどうする? 一歩踏み出す勇気をあなたに フミダスドーガ 障害の特性や、その障害のある人が困っていること、具体的なサポートの方法を知り、障害や障害のある人への理解を深めるためのアニメーション動画を配信しています。 「肢体不自由」篇 「知的障害」篇 「視覚障害」篇 「発達障害」篇 「聴覚障害」篇 「精神障害」篇 「重症心身障害」篇 「内部障害や難病」篇 市の公式ウェブサイトから視聴できます。「名古屋市 こんなときどうする」で検索してください。 Bナゴヤあいサポート事業 障害の特性を理解して、障害のある人に対してちょっとした手助けや配慮を実践する「あいサポーター」を養成することにより、障害の有無にかかわらず、全ての人が住みやすい地域社会を市民皆でつくっていく、「あいサポート運動」を行っています。 あいサポーター養成研修 日常生活において障害のある人が困っているときなどに、ちょっとした手助けをする意欲のある方であれば、「あいサポーター養成研修」を受講すれば、誰でも「あいサポーター」(小学生は「あいサポートキッズ」)になることができます。 (1)集合研修(年6回程度開催) 研修内容 あいサポート運動 様々な障害の特性、困りごと、必要な配慮等 障害理解を深める研修 対象 市民、市内在学・在勤者 費用 無料 (2)講師派遣研修(随時開催) ご要望に応じて体験型などの研修内容を企画します。 対象 市民または市内の事業所の5名以上(原則)の集まり 講師料 無料(会場は申込者にてご用意ください) 受付窓口・問い合わせ先 ナゴヤあいサポート事業事務局 TEL 052-678-3001 FAX 052-678-2888 URL https://shougairikai-nagoya.jp/aisupport C障害者への合理的配慮の提供支援に係る助成事業 事業者による障害のある人への合理的配慮の提供を支援するため、物品購入等に要する費用に対して一部助成を行っています。 助成対象者 市内に事務所等を有し、飲食・物販・医療等のサービスを不特定多数の者が利用し、障害のある人の利用が見込まれる事業を行う事業者 市内において活動している町内会、サークル等の団体やグループ 助成内容 合理的配慮の提供に必要な以下の経費 (1)コミュニケーションツール作成費 対象経費 点字メニュー、コミュニケーションボードの作成経費、チラシ等の音訳経費等のコミュニケーションツールの作成に係る経費 助成限度額 5万円 (2)物品購入費 対象経費 筆談ボード、折り畳み式スロープ等の物品の購入に係る経費 助成限度額 10万円 D出前講座 障害のある人もない人も多様なあり方を認め合い、共に生きる社会を目指す「障害者差別解消法」を理解していただく講座です。障害のある人から配慮の申し出があった場合の対応方法など、わかりやすく説明します。 対象 市内の企業・団体・グループ 講師料 無料(会場は申込者にてご用意ください) C・Dの受付窓口・問い合わせ先 名古屋市障害者差別相談センター TEL 052-856-8181 FAX 052-919-7585 URL https://nagoya-sabetsusoudan.jp 相談・解決の仕組み 名古屋市障害者差別相談センターは、障害者差別に関する相談を受け、関係機関と連携しながら、相談内容にかかわる関係者間の調整などを行い、差別の解消を図る専門機関です。 障害のある人やその家族・関係者及び事業者(企業・団体・店舗。個人事業主やボランティアグループ等も含む)は相談窓口に相談ができます。 注 相談にあたりましては、プライバシーには十分配慮いたします。 相談窓口は名古屋市障害者差別相談センター及び地域の相談窓口(各区の区役所・支所、保健センター、障害者基幹相談支援センター)があります。 相談窓口では「説明や助言」、「当事者間の調整」により解決を図ります。 また、人権相談全般については法務局、雇用・労働相談についてはハローワーク・愛知労働局職業対策課の専門相談窓口へ引継ぎをします。 相談によっても解決しない場合、障害のある人やその家族・関係者は、市に対して「助言、あっせんの申立て」ができます。 注 差別相談事案の相手方が市の場合も、助言・あっせんの申立ての対象となります。 学識経験者・障害者又はその家族・障害福祉事業者・事業者代表の委員で構成される「名古屋市障害者差別解消調整委員会」が助言・あっせんを行うことにより解決を図ります。 助言・あっせんにより解決しないときは、市長による勧告や公表を行う場合があります。 対話を通じてお互いの理解を深めることで、障害を理由とする差別を解消していきます。 障害のある人が困っているときには どのようなことができるか一緒に考えてみましょう。 ひとつの方法が無理でも違う方法がないか一緒に考えてみましょう。 困ったときはご相談ください 名古屋市障害者差別相談センター 月曜日から金曜日、第3土曜日(祝日・年末年始を除く) 9時から17時(水曜日は20時まで) 住所 〒462-8558 名古屋市北区清水四丁目17番1号 名古屋市総合社会福祉会館5階 電話 052-856-8181 ファックス 052-919-7585 Eメールアドレス inclu@nagoya-sabetsusoudan.jp ホームページ http://nagoya-sabetsusoudan.jp 交通手段 地下鉄名城線「黒川駅」から約400メートル 地域の相談窓口として各区の区役所・支所、保健センター、障害者基幹相談支援センターがあります。 条例についてのお問い合わせ 名古屋市健康福祉局障害福祉部障害企画課 〒460-8508 名古屋市中区三の丸三丁目1番1号 電話 052-972-2538 ファックス 052-951-3999 Eメール a2538@kenkofukushi.city.nagoya.lg.jp 条例をはじめとする名古屋市の取り組みについては「名古屋市 障害者差別解消」で検索してください。