1ページ 資料1 条例の枠組み(案) 1 前文 @障害者基本法の改正、障害者差別解消法の制定といった国内法の整備や障害者権利条約の批准など障害者差別解消が進められているが、今なお、障害者に対する誤解や偏見、見た目ではわからない障害者に対して周囲の理解が不十分であることから、障害者の自立や社会参加が妨げられている現状を述べる。 A障害を理由とする差別をなくすためには、子どもの頃から障害や障害者への知識や理解を深めることが必要であることを述べる。 B誰もが高齢になれば身体機能は低下することになるとともに、事故や疾病などにより障害を有することになる可能性があることから、すべての市民に共通する課題と認識し、市・事業者・市民が一体となって、主体的に取り組んでいく必要があることを述べる。 Cお互いを思いやる気持ちをもって、それぞれ尊重し合い、多様なあり方を認め合いながら、障害の有無にかかわらず誰もが安心して生活できるまちなごやを、つくっていく決意を述べる。 《説明》 ・前文は、条例制定の由来、理念、趣旨、目的、基本原則等を述べた文章であって規範性を持つものではありませんが、条例の一部を構成し条例の各条項の解釈基準となります。 ・前文を置く場合には、目的規定や理念規定と重複しますので、以下の目的規定や理念規定は簡潔に表現することになります。 ・この条例の趣旨として、障害者差別解消法の考え方などをわかりやすく示し、障害の有無にかかわらず誰もが暮らしやすい地域社会の実現に向けたものであることを示します。 2 目的 障害を理由とする差別の解消の推進に関し基本理念を定め、市、事業者及び市民の責務を明らかにし、障害を理由とする差別の解消を推進するための基本的事項を定めることにより、障害の有無にかかわらず、誰もが人格と個性を尊重され、住み慣れた地域で安心して暮らせる社会を実現する。 《説明》 ・目的規定は、立法目的を簡潔に表現したもので、条例全体の解釈・運用の指針となるものです。 ・なお、基本理念は、「4基本理念」に定め、責務は「5市、事業者及び市民の責務」において明らかにしています。 2ページ 3 用語の意義 @「障害者」・・・身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊な疾病をいう。)等を原因とする障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 A「社会的障壁」・・・障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 B「不当な差別的取扱い」・・・正当な理由なく、障害を理由として、障害者でない者と異なる不利益な取り扱いをすることをいう。 C「合理的配慮」・・・障害の有無にかかわらず誰もが実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害者(障害者がその意思の表明を行うことが困難である場合にあっては、その家族等)の求めに応じて、必要かつ適切な現状の変更又は調整を行うこと。ただし、社会通念上その実施に伴う負担が過重になるものを除く。 D「障害を理由とする差別」・・・不当な差別的取扱いをすること又は合理的配慮をしないことをいう。 《説明》 ・定義規定は、条例の中で用いる用語の意義を定めるもので、用語の意義を明確にし、解釈上の疑義をなくすためのものです。 ・原則として、障害者差別解消法及び愛知県障害者差別解消推進条例(以下「県条例」といいます。)と共通した定義として、「障害者」と「社会的障壁」を定めています。 ・障害者差別解消法では、「難病」等について、「障害」の定義に例示されていませんが、近年の法律で明記されることとなった背景を踏まえ意識いただくために例示として加えています。 ・「障害を理由とする差別」に関し、「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮」について、障害者差別解消法や県条例では定義していませんが、障害者差別解消に当たっては、その意味を普及することが重要であることから、定義しています。 ・特に合理的配慮については、事業者や市民において、障害者を優遇するような特別扱いと誤解されがちであることから、実質的な平等を図るための措置であることを明らかにしています。 3ページ 4 基本理念 障害を理由とする差別の解消の推進は、障害の有無にかかわらず、誰もが等しく基本的人権を生まれながらに有する個人として尊重され、自立した地域生活を営む権利が保障されることを前提として、次に掲げる基本理念に基づき行う。 @全ての障害者が、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること A全ての障害者が、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々とともに暮らすことを妨げられないこと B全ての障害者が、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段及び情報の取得又は利用のための手段を選択する機会が確保されるとともに、意思決定が困難な障害者に対する支援が確保されること C全ての障害者は、障害があることに加え、性別や年齢その他の複合的な要因により特に困難な状況に置かれる場合には、その状況に応じた適切な配慮がなされること D障害を理由とする差別の解消に当たっては、差別する側と差別される側とにわけて、相手方を一方的に非難し、又は制裁を加えようとするものであってはならず、当事者間の建設的な対話による相互理解を基本とすること E災害時において障害者の安全を確保するため、障害特性に応じた適切な配慮が求められること F家庭や学校を始めとする社会のあらゆる場面において、子どもの頃から障害に関する知識や理解を深め、障害の有無にかかわらず共に助け合い学び合う心をはぐくむこと 《説明》 ・理念規定は、条例の基本原理を示すもので、条例制定の理念や方針を強調したい場合に規定するものです。 ・誰もが障害の有無にかかわらず基本的人権を有することを基本として、市、事業者、市民が、障害者差別解消に取り組むために必要となる重要な視点を示しています。 ・この条例では、障害を理由とする差別に関する相談や紛争解決の仕組みを規定していますが、関係当事者間の相互理解のもと建設的な対話による解決を基本とします。 ・市民においては、市や事業者のように具体的な差別の禁止を明確にした規定を置いていませんが、この基本理念に基づいて、障害者に対する正しい理解のもと、適切な対応を行えるようにするものです。 4ページ 5 市、事業者、市民の責務 (1)市の責務 @基本理念にのっとり、障害及び障害者に関する理解の促進を図るとともに、障害を理由とする差別の解消に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。 A障害者差別解消に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 (2)事業者及び市民の責務 @基本理念にのっとり、障害及び障害者に関する理解を深め、障害者が日常生活及び社会生活において直面する課題を共に考え解決を図り、地域で誰もが共に暮らしていくための良好な環境づくりに努めるものとする。 A市が実施する障害を理由とする差別の解消に関する施策に協力するものとする。 《説明》 ・責務規定は、地方公共団体、事業者、市民などの責務を示すもので、条例の目的を達成するために、これらの者に一定の責務があることを強調したい場合に規定するものです。 ・障害者差別解消は、市の取組みだけで実現することは不可能であり、事業者と市民の理解・協力が必要になることから3者の責務を定めています。 ・既存の法律に定められている責務を前提に、この条例でめざす共生社会の実現に向けた障害者差別解消の取組みを一層推進するための一般的な責務として定めています。 5ページ 6 事前的改善措置 市及び事業者は、合理的配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。 《説明》 ・障害者差別解消法及び県条例と同様に、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置について規定します。 7 差別の禁止 (1)不当な差別的取扱いの禁止 市及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、正当な理由なく障害を理由として次に掲げるような不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 @福祉サービス ・障害福祉サービスの提供の拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること ・福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援を行うことなく、障害者の意思に反して、障害者支援施設などへの入所及び入居を強制すること A医療 ・医療の提供を拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること ・障害者の意思に反して、医療を受けることを強制すること B教育 ・当該障害者の年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするために必要な指導又は支援を講じないこと ・障害者又はその保護者の意見を聴かず、若しくは意思を尊重せず、また、必要な説明を行わずに就学すべき学校を決定すること C労働及び雇用 ・応募もしくは採用を拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること ・賃金、労働時間、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、その他の労働条件について不利益な取扱いをすること D商品販売・サービス提供 ・商品の販売又はサービスの提供を拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること 6ページ E不動産取引 ・不動産の売買、賃貸、転貸又は賃借権の譲渡を拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること F建物、施設及び公共交通機関 ・施設等や公共交通機関の利用を拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること Gスポーツ・文化芸術活動等 ・スポーツ・文化芸術活動その他の生涯学習活動の参加を拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること H情報提供・意思表示の受領 ・障害者に対する情報の提供を拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること ・障害者から意思表示を受けることを拒否、制限、これに条件をつけること又はその他障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること Iその他 以上のほか、障害者に対して、障害者でない者とは異なる不利益な取扱いをすること (2)合理的配慮の提供 @市は、その事務又は事業を行うに当たり、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮をしなければならない。 A事業者は、その事業を行うに当たり、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮をするように努めなければならない。 B事業者は、その事業を行うに当たっては、障害者差別解消法第11条第1項に規定する対応指針に即して、適切な対応に努めるものとする。 C市及び事業者は、障害者を雇用する場合において、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮をしなければならない。 (3)正当な理由や過重な負担についての説明 市及び事業者は、不当な差別的取扱いに該当しない正当な理由があると判断する場合及び合理的配慮に該当しない過重な負担があると判断する場合には、障害者にその内容を説明し、理解を得るよう努めるものとする。 《説明》 ・不当な差別的取り扱いの禁止に関して、障害者が自立した生活を営むうえで重要な分野について、具体的に例示列挙することで注意喚起します。 ・不当な差別的取扱いに該当しない場合の「正当な理由」や合理的配慮を提供しないことに該当しない場合の「過重な負担」について、代替手段も含めた関係当事者の建設的な対話を進めていく前提となることなどから、その内容を把握している事業者が障害者へ説明することを定めています。 7ページ 8 相談及び紛争解決の仕組み (1)相談体制 @市は、前項の相談に的確に対応するため、障害者差別解消法第14条に基づく名古屋市障害者差別相談センター(以下「差別相談センター」という。)を設置するとともに、各区に地域の相談窓口を置く。 A障害者及びその家族その他の関係者(以下「障害者等」という。)又は事業者は、差別相談センター又は地域の相談窓口に対し、障害を理由とする差別に関する相談をすることができる。 B市は、差別相談センター事業の全部又は一部を障害者の相談支援を行う者に委託することができる。 C差別相談センター又は地域の相談窓口は、差別相談を受けた場合は、必要に応じて次に掲げる対応を行う。 @事実の確認 A必要な助言又は情報提供 B相談にかかる当事者間の調整 C関係行政機関に対する通報その他通知  (ただし、地域の相談窓口においてBの対応が必要と判断する困難事案については、差別相談センターが引き継いで行う。) D相談事案の相手方である事業者は、障害者等が相談したことを理由として、当該事業にかかる利用の禁止や制限その他不利益な扱いをしてはならない。 8ページ (2)紛争解決の仕組み @障害者等は、障害者差別相談センターによる調整によってもなお問題が解決しないときは、市長に対し、必要な助言又はあっせんを求めることができる。 A市長は、以下の者に対して必要な措置をとるよう勧告することができる。 ・正当な理由なくあっせんを受諾しない差別を行った事業者 ・あっせんための調査を拒否した障害者等または事業者 ・虚偽の説明や資料提供した障害者等または事業者 B市長は、勧告を受けた者が正当な理由なく勧告に従わないときは、あらかじめ意見陳述の機会を与えたうえで、公表することができる。 C市長の諮問に応じて差別相談事案を解決するために(仮称)調整委員会を設置する。  ※定足数、委員の構成や組織運営に必要な事項は、条例に定め、詳細な手続き等は規則に委任します。 《説明》 ・障害者差別相談センターを中心とする現在の本市の相談体制について、障害者差別解消法第14条に基づく位置づけとして明記します。 ・障害者差別に関する紛争については、関係当事者間の建設的な対話によって解決を図ることを基本としていますが、繰り返し差別を行い自主的な改善が望めない場合などにおいて、(仮称)調整委員会の意見を聴取を聞いたうえで、条例の実効性を確保するため、勧告・公表といった仕組みを設けます。 9ページ 参考 相談及び紛争解決の仕組み(イメージ) 第1段階(現在のしくみと同じ) ※相談は障害者差別相談センターの他にも地域の相談窓口でも受け付けるが、困難事案(調査・調整を要する事案)は障害者差別相談センターで対応する。 @障害を理由とする差別の相談 相談者→地域の相談窓口(区役所・支所・保健所、障害者基幹相談支援センター)、障害者差別相談センター A説明・助言 地域の相談窓口→相談者・相手方  説明・助言・調査・調整 障害者差別相談センター→相談者・相手方  障害者差別相談センターは必要に応じて学識経験者、障害当事者、事業者などの助言も得ながら対応 (解決した場合は第1段階で終了) 解決しなかった場合は第2段階以降の新たなしくみへ 第2段階 @申立て 相談者→市長 A助言・あっせんの依頼 市長→調整委員会 B調整経過の報告 障害者差別相談センター→調整委員会 C調査・助言・あっせん(案) 調整委員会→相談者・相手方 (解決した場合(相談者があっせんを受諾しなかった場合も)は第2段階で終了) 正当な理由なくあっせんに応じない場合など解決しなかった場合は第3段階へ 第3段階 @市長は、調整委員会の求めに応じて勧告することができる。 A市長は、正当な理由なく勧告に従わないときにはその旨を公表することができる。 ※公表に係る者に対し、公表する前に意見陳述の機会を与える。 10ページ 9 障害者差別解消を推進する取り組み (1)普及・啓発 @市は、事業者及び市民の障害及び障害者に対する理解と関心を深めるために必要な広報啓発活動を行うとともに、障害の有無にかかわらず、すべての人が相互理解を深めることができるような機会や情報の提供を行うものとする。 A市は、障害のある幼児、児童及び生徒が、可能な限り障害のない幼児、児童及び生徒とともに学び、必要な教育を受けることができるよう、医療機関、福祉施設その他の関係機関と連携し、必要な支援を行うものとする。 (2)情報及び意思疎通 @市は、手話が言語であることの普及及び手話、点字、音声、文字表示、わかりやすい表現、情報支援機器(情報の取得及び意思疎通を容易にする機器をいう。)その他の障害者にとって利用しやすい多様な意思疎通手段の利用促進を行うものとする。 A市は、災害発生時その他緊急時に、障害者に対し、その安全を確保するために必要となる支援を行うとともに、意思疎通を図ることが困難な障害者に対し、その障害の特性に応じた情報提供を行うものとする。 (3)地域における取組 市は、地域における障害を理由とする差別の解消の推進について情報共有し、その取り組みを効果的かつ円滑に行うため、障害者差別解消法第17条第1項に基づく名古屋市障害者差別解消支援会議を組織する。 《説明》 ・障害者差別解消を推進する取組として、本市の基本的となる施策を規定しています。 ・障害者差別解消法第17条に定められている「障害者差別解消支援地域協議会」の位置づけとして設置している「障害者差別解消支援会議」において、条例の進行管理を行います。 10 附則 条例の施行状況や社会状況等を踏まえた検討条項を置く。