障害を理由とする差別の解消の推進に関する名古屋市職員対応要領 名古屋市 はじめに 平成28年4月1日から障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行されます。 この法律は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、国の行政機関、地方公共団体等及び民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置などについて定めることによって、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。 この対応要領は、同法に基づき、市職員が障害のある方に対し、不当な差別的取扱いをしないこと、また必要かつ合理的な配慮を行うために必要な考え方などを記載しており、職務遂行上の基本的な規範となるものです。 日々の職務遂行にあたっては、この対応要領を遵守し、障害に対する理解と障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めるとともに、組織全体で差別の解消に取り組んでいかなければなりません。 私たち市職員一人ひとりが、法の趣旨を理解し、差別のない社会の実現に向けた責務を担うという意識を持ち、率先して取り組みを進めることが、名古屋市における障害者差別の解消につながります。 名古屋市が障害の有無にかかわらず、すべての人が暮らしやすいまちとなるように、法の趣旨の実現に向けて取り組んでいきましょう。 名古屋市長 河村たかし 目次 第1章 総論 1頁 1趣旨 1頁 2対応要領の対象 1頁 3法の背景と基本的な考え方 2頁 4法の対象となる障害者 5頁 第2章 障害を理由とする差別 6頁 1不当な差別的取扱いの禁止 7頁 2合理的配慮の提供 9頁 ・障害種別の特性について 20頁 第3章 市民からの相談 26頁 第4章 研修・啓発 27頁 第5章 附則 27頁 ・参考情報 28頁 P1 第1章 総論 1 趣旨 この対応要領は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法。以下「法」という。)第10条第1項に基づき、市職員が、法の趣旨を理解し、障害のある方に対して、適切に対応するための基本的事項を定めるものです。対応要領は、服務規律の一環として定められるものであり、市職員はこれを遵守しなければなりません。 2 対応要領の対象 (1)対象となる職員 この対応要領の対象となるのは、原則として、いわゆる常勤の特別職職員及び一般職職員(臨時的任用職員を含む。「名古屋市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」第2条第1号に規定する職員と同じ。)と「名古屋市非常勤の職員の報酬及び費用弁償に関する条例」別表第3に掲げる職員(但し、報酬を支給されない者を除く。)です。 このうち、地方公営企業(上下水道局、交通局及び病院局)については、法上は、「事業者」として扱うことが適当であるとされており、各事業の主務大臣が定める対応指針とともに、この対応要領に沿った適切な対応が必要となります。 なお、地方独立行政法人である公立大学法人名古屋市立大学については、個別に対応要領を作成するため、その職員は、この対応要領の対象から除外されます。 (2)受託業者等 事務の処理等を委託(指定管理者に公の施設の管理運営を行わせること及び事業者と共同で事業を行うことを含む。)するとき又は公の施設を民営化するときは、受託業者等が、当該事業の主務大臣が定める対応指針に則って、法に適切に対応するとともに、委託等の業務に従事する職員が、この対応要領に準じて、適切な対応を行えるよう、必要な措置を講じるものとします。 P2 3 法の背景と基本的な考え方 (1)障害者制度改革 平成18年、国連において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である「障害者の権利に関する条約」(以下「権利条約」という。)が採択されました。 我が国では、平成19年に権利条約に署名し、以来、「障害者基本法」の改正や、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)」、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」の施行など、様々な法整備を進め、一連の取り組みの成果を踏まえて、平成26年1月、同条約を批准しました。今後は、権利条約の実施状況を定期的に国連に報告し、審査を受けることになります。 参考(囲み記事) 障害者制度改革の歩み(略譜) 平成16年6月 障害者基本法」改正:障害者差別禁止の基本的理念を明示 平成18年12月 国連において「権利条約」採択 平成19年9月 「権利条約」署名 平成23年8月 「障害者基本法」改正:障害者差別禁止の基本原則を規定 平成24年10月 「障害者虐待防止法」施行 平成25年4月 「障害者総合支援法」施行(一部平成26年4月施行) 平成25年6月 「障害者差別解消法」の制定 平成26年1月 「権利条約」批准 平成28年4月 「障害者差別解消法」の施行 P3 (2)障害者差別禁止の基本原則 権利条約は第2条において、障害に基づく差別とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。と定義しています。 我が国においては、平成16年の障害者基本法の改正において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示されました。さらに、平成23年の同法改正の際には、権利条約の趣旨を踏まえ、同法第2条第2号において、社会的障壁について「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。」と定義されるとともに、基本原則として、同法第4条第1項に、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと、また、同条第2項に、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定されました。 そして、平成25年6月、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、差別の禁止の基本原則を具体化するものとして、法が制定されました。(施行は平成28年4月) 参考(囲み記事) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 (目的) 第一条 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 P4 (3)法の基本的な考え方 障害者基本法が目指す「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会」を実現するためには、日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要です。 このため、法は、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し、行政機関等及び事業者に対し、差別の解消に向けた具体的取り組みを求めるとともに、普及啓発活動等を通じて、障害者も含めた国民一人ひとりが、それぞれの立場において自発的に取り組むことを促しています。 (4)行政機関等の義務 法は、第7条において、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の不提供の禁止を行政機関等の法的義務として定めています。 本市では、「障害のある人もない人も共に生きる社会」の実現を目指し、市職員が率先して障害や障害者の理解を深めるため、平成20年度から「意識のバリアフリー行動宣言」を進めてきましたが、法の施行により、法的にも、各職場において、障害や障害者に配慮した対応が求められることになります。 参考(囲み記事) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止) 第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 P5 4 法の対象となる障害者 法の対象となる障害者は、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者、すなわち、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」です。 これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものであるとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえています。したがって、法が対象とする障害者は、障害者手帳(身体障害者手帳・愛護手帳(療育手帳)・精神障害者保健福祉手帳)の所持者に限られません。 なお、市が事業主としての立場で労働者である障害者(障害のある職員)に対して行う差別解消のための措置は、法とは別途、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)及び地方公務員法の定めるところによるものとされています。 参考(囲み記事) 本市の障害者施策 ・本市では、障害者基本法に基づき、平成16年4月に、平成25年度までの10年間を計画期間とする「名古屋市障害者基本計画」を策定し、障害者福祉の総合的・体系的な推進を図ってきました。 ・平成26年3月には、計画策定以降の障害者をとりまく環境の変化などを踏まえ、新たに「名古屋市障害者基本計画(第3次)」を策定し、「障害のある人もない人もお互いに人格と個性を尊重し合いながら共に生きる地域社会」の実現を目指して、障害者施策の総合的かつ計画的な推進に努めています。 P6 第2章 障害を理由とする差別 市職員は、法第7条第1項の規定のとおり、事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはなりません。また、法第7条第2項の規定のとおり、事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければなりません。 ここでは、その基本的な考え方と具体例を示していますが、何を差別と感じるかは、応対の仕方によっても左右されることがあり、また、来庁される方の障害の有無や種別は、必ずしも明確ではありません。市民サービスにおいては、常に障害のある方も含まれていることを念頭に置き、丁寧で分かりやすい応対に心がけるとともに、相手の立場に立って、個別の状況に応じた配慮を行うことが重要です。 参考(囲み記事) 個人的な思想や言論は法の対象外 法は、行政機関や事業者を対象にしており、一般私人の行為や、個人の思想、言論は、法による規制にはなじまないと考えられることから、対象にしていません。 しかし、法第4条では、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めることが国民の責務とされており、市職員として、率先して法の趣旨の実現に向けて取り組まなければなりません。 参考(囲み記事) 行政機関等と事業者の義務 行政機関等においては、「不当な差別的取扱いの禁止」及び「合理的配慮の不提供の禁止」が法的義務とされていますが、民間事業者においては、前者は法的義務、後者は努力義務とされています。 P7 1 不当な差別的取扱いの禁止 (1)基本的な考え方 ア 不当な差別的取扱いとは ・法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する、又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。 ・なお、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではありません。したがって、次のようなことは、不当な差別的取扱いには当たりません。 ・障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置) ・合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱い ・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認すること イ 正当な理由の判断の視点 ・正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに当たりません。正当な理由に相当するのは、その取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。 ・正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者や第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び本市の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。 ・正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めます。 P8 (2)不当な差別的取扱いとなりうる事例 ・障害を理由に窓口対応を拒否する。 ・障害を理由に対応の順序を後回しにする。 ・障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 ・障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 ・事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。 なお、ここに記載された事例はあくまで例示であり、ここに記載されていないものが差別ではないということではありません。また、記載された事例であっても、差別に当たるかどうかは、個別の事案ごとに判断する必要があり、客観的に見て正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに当たらないこともあります。 P9 2 合理的配慮の提供 (1)基本的な考え方 ア 合理的配慮とは ・権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。 ・法は、権利条約における定義を踏まえ、行政機関等がその事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行うことを求めています。 ・合理的配慮は、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要があります。 ・合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものです。当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、「エ 過重な負担の判断の視点」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の話し合いによる相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要があります。また、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものです。 ・合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等にも配慮する必要があります。 イ 意思の表明について ・意思の表明は、言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達などの手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられます。 ・本人の意思表明が困難な場合には、家族や介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含みます。 P10 ・意思の表明がない場合であっても、社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるならば、適切と思われる配慮の提供を申し出るなど、自主的な取り組みに努めます。 ウ 環境整備との関係 ・法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしています。環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれます。 ・障害者差別の解消のための取組は、このような環境整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための施策、職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要です。 ・合理的配慮は、このような環境整備を基礎として、個々の障害者に対し、個別の状況に応じて実施される措置であることから、環境整備の状況により、合理的配慮の内容は異なります。 ・合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や、当該障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、不特定多数の障害者を対象とした環境整備を考慮に入れることも重要です。 エ 過重な負担の判断の視点 ・過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、次の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。  事務や事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)  実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)  費用や負担の程度 ・過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めます。 P11 (2)合理的配慮として考えられる事例 ここでは、障害の特性に応じて、一般的に考えられる事例を記載していますが、既述のとおり、合理的配慮は、障害の特性や具体的な状況に応じて異なり、個別性の高いものであるため、記載された事例について、一律に実施することを求めるものではありません。また、記載された事例の他にも、個別の状況に応じて、合理的配慮が必要な場合があります。 それぞれの障害や疾病の中でも個々の態様は様々であり、例えば、「視覚障害」といっても、見え方の困難さはそれぞれ違い、多様な見えにくさがあります。対応に迷った際には、相手の方にどのようにすべきかを確認し、個別の状況に応じた対応に努めるよう配慮します。対応が困難な場合にも、何か手立てはないかということを相手の方と共に考える姿勢が大切です。 ア 窓口など 以下の表は主な対象 事例の順となっています。 全ての障害 ・本人の希望により代筆した場合は、本人に内容を確認してもらう。(視覚障害の場合は、代読して確認する。この際、個人情報に関わる事項については、周囲に聞こえないよう留意する。) ・来庁が困難な方について、申請等で可能なものは、郵送やメール等で受付できるように努める。 視覚障害 ・案内や説明をするときは、「こちら」「そこ」といった指示語や「黄色の用紙」といった視覚情報を表す言葉を避ける。場所は「30センチ右」「2歩前」、物は「○○の申請書」など具体的に説明する。 ・書面は必要や希望に応じて読み上げて説明する。この際、個人情報に関わる事項については、周囲に聞こえないよう留意する。 ・応対中に席を外す場合や、席に戻った際には声をかける。 ・申請等で可能なものは、点字文書やメール等で受付できるように努める。 P12 聴覚障害 ・耳マーク(注1)を窓口に設置し、本人の意向を確認して筆談など(注2)で対応する。 ・筆談の際は、読み書きが困難な聴覚障害者がいることに留意し、本人の言語能力に合わせて、理解を確認しながら書く。 ・ゆっくり、はっきり口元がわかるように話す。 ・残存聴力を有し補聴器や人工内耳を使用している場合は、聞こえの状況を確認しながら話す。 ・聞き取りにくかった場合は、推測せず、聞き返す、紙に書いてもらうなど、本人の意思を確認する。 言語障害 ・本人の意向を確認して筆談で対応する。 ・ゆっくり、はっきり、短くわかりやすい言葉で話す。 ・依頼することは順番に1つずつ話す。 ・特に重要なことや、日時・金額などの数字はメモに書いて渡す。 ・理解されにくいときは、図や身振りなどを交えて話す。 ・聞き取りにくかった場合は、推測せず、聞き返す、紙に書いてもらうなど、本人の意思を確認する。 内部障害及び難病 ・体調に配慮し、必要に応じて、いす等のあるところに案内して、職員が窓口から出て対応する。 知的障害 ・穏やかな口調で、ゆっくり、丁寧に話す。 ・短くわかりやすい言葉で、できるだけ具体的に話す。 ・依頼することは順番に1つずつ、理解を確認しながら話す。 ・特に重要なことはメモに書いて渡す。 精神障害 ・不安を感じさせないよう、穏やかな口調で話す。 ・できるだけ静かな場所で話を聞くよう努める。 発達障害 ・穏やかな口調で、ゆっくり、丁寧に話す。 ・短くわかりやすい言葉で、できるだけ具体的に話す。 ・依頼することは順番に1つずつ話す。 ・特に重要なことはメモに書いて渡す。 ・できるだけ静かな場所で話を聞くよう努める。 P13 高次脳機能障害 ・短くわかりやすい言葉で、できるだけ具体的に話す。 ・依頼することは順番に1つずつ話す。 ・特に重要なことはメモに書いて渡す。 注1 耳マーク 聴覚障害者のコミュニケーションの円滑化を図るために制定されたもので、耳が不自由であることを表示し、協力を求めることを表す。また、受付等に掲示し、筆談などに応じることを知らせ、聴覚障害者がより安心して問い合わせができるよう配慮する。 注2 聴覚障害者のコミュニケーション手段 筆談 紙などに書いて伝える。 口話 相手の口(唇)の動きを読み取って、話の内容を理解する。 手話 手の形や動作等によって表現される。本来は独自の語彙や文法体系を持つ“言語”である。 その他、情報提供手段として、「手話通訳」と「要約筆記(話の内容を手書き又はパソコンを用いて、要約してその場で伝える。)」がある。) 庁内の物理的環境に関する配慮の例 事例 ・入口からの動線に配慮し、通路等に障害物を置かない。 ・誘導用ブロックに障害物を置かない。 ・障害者用駐車場は目的外の利用がされないよう注意を促す。 ・休憩用のいす等を用意する。 ・車いす利用者に配慮した記載台や机等を用意する。 ・文字だけでなく絵や図なども用いた分かりやすい案内表示に努める。 ・緊急時を含む館内放送を行う場合は、掲示板やホワイトボード等を活用し音声以外での情報提供に配慮する。 参考 法において、不特定多数の障害者を想定して行われる施設のバリアフリー化は、個々の障害者を対象として行われる合理的配慮を的確に行うための環境整備として、別途、行政機関等に努力義務が課せられており、市として、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」等に基づき、引き続き推進してくこととしています。 P14 イ 印刷物など 以下の表は主な対象 事例の順となっています。 視覚障害 ・文字の大きさや配色など(注3)に配慮する。 ・図や表には説明書きをつける。(本文に図や表の要旨を入れ、本文を読むだけで理解できるとよい。) ・特定の人を対象とする場合は、点字版や拡大版など(注4)の希望を事前に確認して対応する。 ・不特定多数の人を対象とする場合は、点字版や拡大版など(注4)の申し出があった場合は、対応する。即時の対応が困難な場合は、本人の意思を確認し、他の手段(注4)も含めて検討する。 ・郵便物を送付する際は、希望に応じて、封筒に差出課等を点字でも記載する(点字シールを貼る)。 ・インターネットを通じて情報提供する場合は、音声読上げソフトに対応したホームページを作成するよう留意する。PDFファイルを掲載する場合は、文字情報の入ったPDFファイルを掲載する、テキスト形式のファイルを併せて掲載するなど配慮する。 ・広報用ビデオやDVD等を作成する場合、インターネット動画を通じて情報提供する場合は、ナレーションを入れるなど映像以外での情報提供に配慮する。 聴覚障害 ・問い合わせ先として、ファックス番号を記載する。必要に応じてメールアドレスを併記するように努める。 ・広報用ビデオやDVD等を作成する場合、インターネット動画を通じて情報提供する場合は、必要に応じて字幕やテロップを付けるなど音声以外での情報提供に配慮する。 知的障害及び発達障害 ・印刷物の内容や対象者等により、必要に応じて、難しい漢字にはルビをつけたり、絵や図を使ったりして、理解しやすい表現に配慮する。 ・やさしい日本語の使用に留意する。 P15 注3 配色の配慮の例(「印刷物ガイドライン」(巻末:参考情報)) 代表的な例では、赤系統と緑系統の色の区別がつきにくいかたがいる。色の組み合わせに注意し、「暖色系と寒色系」「明るい色と暗い色」を対比させると識別しやすい。 また、色だけに頼ったデザインは、弱視や色覚障害のかたには理解できない場合がある。下線やドットを入れるなど、色以外の情報を付加すると識別しやすくなる。 (例1)赤字と下線で強調する例 (例2)四角のますを、色だけでなく、ドットや斜線の模様で区別する例 注4 視覚障害者の情報提供手段 点字版 点字を読むことができる方に有効。 拡大版 主に弱視の方に有効。拡大コピー・拡大印刷したものを用意する。 音声版 文字情報が録音された音声テープやCD等を用意する。 テキストファイル 音声読み上げソフトで活用できるよう、情報をテキストファイルで提供する。 音声コード(SPコード) 視覚障害者用活字文書読み上げ装置*で読み取ることができる音声コード(文字情報をデジタル情報に変換した二次元コード)を紙面に添付する。 本市に給付申請された視覚障害者に対して給付されているほか、各区役所の福祉課にも備え付けられている。 P16 ウ 会議など (ア)資料その他の準備など 以下の表は主な対象 事例の順となっています。 全ての障害 ・障害や疾病の態様は様々であるため、必要な配慮について事前に確認し、対応する。 視覚障害 ・資料は、点字版や拡大版など(注4)の希望を確認し、事前に送付する。 ・最寄り駅又は駐車場からの動線を考慮し、本人の意向を確認して、必要があれば当日の案内役等を用意する。 聴覚障害 ・手話通訳や要約筆記の希望を確認し、対応する。 ・資料は事前に送付する。(手話通訳者や要約筆記者にも事前に送付する。) ・議事録を送付する。 言語障害及び高次脳機能障害 ・資料は事前に送付する。(支援者がいる場合は支援者にも事前に送付する。) 肢体不自由 ・最寄り駅又は駐車場からの動線を考慮し、本人の意向を確認して、必要があれば当日の案内役等を用意する。 知的障害 発達障害 ・資料は、希望を確認してルビをふり、事前に送付する。(支援者がいる場合は支援者にも事前に送付する。) ・事前に説明の機会を設けることが望ましい。 難病 ・会話や意思伝達が困難な方等について、支援者がいる場合は、支援者にも資料を用意する。 P17 (イ)会場など 以下の表は主な対象 事例の順となっています。 視覚障害 ・席に案内した際、配席など会場内の状況を説明する。 ・床のコードやケーブルはカバーし、余分な机等を片付けるなど、会場内の移動の妨げにならないように配慮する。 ・出席者の状況により、必要に応じて、照明やカーテンの開閉など部屋の明るさを調整する。 聴覚障害 ・手話通訳や要約筆記が見えやすい席を配慮する。 ・できるだけマイクを使用し、スピーカーの位置に配慮する。 ・出席者の希望等により、必要に応じて、補聴援助システム(磁気ループ(注5))を導入する。 言語障害及び高次脳機能障害 ・必要に応じて支援者の席を用意する。 肢体不自由、内部障害及び難病 ・入り口からの動線など、席の位置に配慮する。 ・床のコードやケーブルはカバーし、余分な机等を片付けるなど、会場内の移動の妨げにならないように配慮する。 ・必要に応じて車いす利用者や支援者の席を用意する。 知的障害 ・必要に応じて支援者の席を用意する。 精神障害及び発達障害 ・不安を感じさせないよう、配席等に配慮する。 注5 磁気ループ 音・声に応じて変化する磁力線を発生するループコイルに誘導コイルを感応させ、増幅して音・声を聞く方法。ループアンテナを会場内に設置し、補聴器の聞こえを補助する仕組み。 参考 T付き耳マーク 磁気ループ設置場所及び対応機器を示すマーク P18 (ウ)進行など 以下の表は主な対象 事例の順となっています。 全ての障害 ・長時間にわたる場合は、休憩をはさむ、休憩場所を用意するなど、負担を軽減するよう配慮する。 ・体調等に応じ、途中離席が可能であることを予め周知する。 ・最初に進行予定を示し、時間の見通しが分かるようにする。 視覚障害 ・スクリーンや映像をやむを得ず使用する場合は、始めにその旨を断り、説明はわかりやすく、内容を省略せずに行う。 ・点字資料の場合は、ページの番号が違うので、説明に留意する。 視覚障害、聴覚障害、言語障害、知的障害、発達障害及び高次脳機能障害 ・進行役は、出席者に対し、できるだけ簡潔に、分かりやすい言葉で発言するよう求める。 ・進行役は、出席者の発言を整理し、審議事項を明確にしながら議事を進める。 ・進行役は、発言が重なることや、あまりにも議論の展開が速まらないように留意する(手話通訳・要約筆記も意識する)。 ・出席者は、説明や発言の際は早口にならないよう留意する(手話通訳・要約筆記も意識する。通常の速さでよい)。 P19 (エ) イベントなど 以下の表は主な対象 事例の順となっています。 全ての障害 ・多機能トイレ等の設備について案内表示をする。 ・休憩所(スペース)や救護所の設置に努める。 視覚障害 ・事前申込制の講演会や講座等では、参加申込書等で、点字版や拡大版など※4の資料の希望を確認し、対応する。 ・不特定多数の人を対象とする講演会等で、事前に点字版や拡大版など※4の資料の希望があった場合は、対応する。事前広報を通じて、事前に申し出る機会を設けることが望ましい。 ・事前広報は、活字媒体だけでなく、インターネットの活用等、幅広い手段で行う。 ・不特定多数の人を対象とするイベント等では、その内容や対象者等により、必要に応じて点字版や拡大版など※4の資料等を準備するように努める。 聴覚障害 ・事前申込制の講演会や講座等では、参加申込書等で、手話通訳や要約筆記の希望を確認し、対応する。 ・不特定多数の人を対象とする講演会等で、事前に手話通訳や要約筆記の希望があった場合は、対応する。事前広報を通じて、事前に申し出る機会を設けることが望ましい。 ・会場内の案内は、電光掲示板やホワイトボードの活用、文書の配布等により、音声以外での情報提供に配慮する。 ・不特定多数の人を対象とするイベント等では、その内容や対象者等により、必要に応じて、手話通訳や要約筆記の対応を行うよう努める。 肢体不自由 ・受付の配置やパネル展示等は、車いす利用者にも配慮して行う。 ・講演会等では車いす利用者や支援者用のスペースを確保する。 知的障害及び発達障害 ・会場内地図の配布や案内所の設置、動線の表示等、会場内の配置や利用方法を分かりやすくするよう努める。 ・講演会等では静かで落ち着ける場所(部屋)の設置に努める。 難病 ・難病患者の方の参加が多数見込まれる場合は、休憩所(スペース)を十分確保するとともに、救護所を設置し、医療・看護スタッフを配置するよう努める。 P20 障害種別の特性について ここでは、基本的な内容を記載しています。障害種別の特性と、障害者が実際に体験した事例等をもとに適切な接遇応対の例を紹介した冊子「こんなときどうする? 障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック」(巻末:参考情報)も併せて活用してください。 1 視覚障害 視覚障害といっても、見え方は様々である。全く見えない(全盲)、眼鏡等で矯正しても視力が弱い(弱視(ロービジョン))、見える範囲が狭い(視野狭窄、特定の色が区別できない(色覚障害)、まぶしくて見づらいなどの方がいる。先天性か、病気や事故による中途障害かによっても、障害の内容には個人差がある。 主な特徴 ・保有視力や聴覚、触覚などから情報を得ている ・視覚の活用による言葉の習得に課題があることにより読み書きが困難な方もいる ・慣れていない場所では一人で移動することが難しい方もいる 2 聴覚障害 聴覚障害といっても、聞こえ方は様々である。全く聞こえない、聞こえにくい、片方の耳がよく聞こえないなどの方がいる。また、言語障害を伴う方とほとんど伴わない方がいる。先天性か、病気や事故による中途障害かによっても、障害の内容には個人差がある。外見からは障害のあることが分かりにくく、周囲に気づいてもらえないことも多い。 主な特徴 ・視覚や残存聴力などから情報を得ている ・聴覚の活用による言葉の習得に課題があることにより読み書きが苦手な方もいる ・声に出して話せても、聞こえているとは限らない ・補聴器をつけていても、明瞭に聞こえているとは限らない P21 視覚と聴覚の重複障害(盲ろう) 全く見えず聞こえない「全盲ろう」、見えにくく聞こえない「弱視ろう」、全く見えず聞こえにくい「盲難聴」、見えにくく聞こえにくい「弱視難聴」の方がいる。障害の状態や程度、原因、成育歴等により、コミュニケーション手段は異なり、支援方法も異なる。障害の状態や程度に応じて視覚障害や聴覚障害の方と同じ対応が可能な場合もある。手書き文字や触手話、指点字などを利用する方もいる。 3 言語障害(音声機能障害・言語機能障害) 音声機能障害は、咽頭等音声を発する器官に障害があるため、音声や発音、話し方に障害があることをいう。言語機能障害は、言葉の理解や表現に障害があることをいい、先天的な聴覚障害のために発話習得が不十分な場合や、脳血管障害等による失語症等、様々なケースがあり、障害の内容には個人差がある。外見からは障害のあることが分かりにくく、周囲の理解を得づらいことがある。 主な特徴 ・発声機能を喪失した方の中には、食道発声法や電動式人口咽頭等を使用して会話をする方もいる ・失語症の方は一見、滑らかに話をしていても、言い間違いや聞き間違いをすることがあり、また、複雑な内容や長い文章は理解することが難しいことがある 4 肢体不自由 手や足、胴の部分に障害があることをいう。歩行、座位や立位の姿勢保持、物の持ち運び等に支障があり、多くの方が杖や装具、車いすなどを使用している。脳性マヒで意思とは関係なく身体が動く不随意運動を伴う方もいる。障害の程度は個人差があり、複数の障害が合併していることもある。 主な特徴 ・移動に制約のある方、文字の記入が困難な方もいる ・話すことが困難で、自分の意思を伝えにくい方もいる ・体温調節が困難な方もいる P22 5 内部障害 病気等により内臓の働きが弱くなったり、損なわれたりする機能の障害、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能の障害がある。外見からは障害のあることが分かりにくく、周囲の理解を得づらいことがある。 主な内部障害 心臓機能障害 不整脈、狭心症、心筋症等のために心臓機能が低下した障害で、動悸、息切れ、疲れやすいなどの症状がある。ペースメーカーを体内に埋め込んでいる方もいる。 腎臓機能障害 腎機能が低下した障害で、人工透析治療を受けている方もいる。定期的に一定の時間をかけて受ける必要があり、様々な負担がかかる。 呼吸器機能障害 呼吸機能が低下した障害で、呼吸困難、息切れでいつも息苦しい状態である。酸素ボンベを携帯している方、人工呼吸器を使用している方もいる。 膀胱・直腸機能障害 膀胱疾患や腸管の通過障害で、排便・排尿のコントロールが必要。人工肛門・人口膀胱(ストマ)を造設している方(オストメイト)もいる。 小腸機能障害 小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている方もいる。 肝臓機能障害 肝炎ウィルス等により肝臓の機能が損なわれた障害で、倦怠感、易疲労感、嘔気、嘔吐、けいれん、腹水の貯留、肝性脳症等の症状がある。 ヒト免疫不全ウィルス免疫機能障害 ヒト免疫不全ウィルスによって免疫機能が低下した障害で、様々な感染症や脳・神経の障害を患ったりする。 主な特徴 ・障害のある臓器だけでなく全身状態が低下しているため、疲れやすい 6 知的障害 生活や学習面で現れる知的な働きや発達が、同年齢の人の平均と比べゆっくりとしていることをいう。知的能力の程度や、自閉症等の他障害との合併障害により、障害の内容や程度には個人差がある。脳内の障害であるため、外見からは分かりにくく、周囲の理解を得づらいことがある。 主な特徴 ・複雑な話や抽象的な概念を理解しにくい ・人に尋ねることや言葉で自分の気持ちを伝えることが苦手な方もいる ・未経験の出来事や急な状況変化への対応が苦手な方もいる ・読み書きや計算が苦手な方もいる P23 7 精神障害 統合失調症、うつ病、躁うつ病、てんかん、アルコールや薬物依存症等の精神疾患のために、日常生活や社会生活がしづらくなることをいう。代表的な疾患である統合失調症では、脳(神経)の働きが活発になりすぎて、幻視、幻聴、妄想が現れたり、その後、やる気が起きない、疲労感が濃い状態になったりすることがある。外見からは障害のあることが分かりにくく、周囲の理解を得づらいことがある。 主な特徴 ・ストレスに弱い方や対人関係やコミュニケーションが苦手な方が多い ・周囲の言動を被害的に受け止め、恐怖感を持ってしまう方もいる ・声の大きさの調整が適切にできない場合もある ・同じ質問を繰り返したり、つじつまの合わないことを一方的に話したりする方もいる ・病気のことを他人に知られたくないと思っている方も多い 8 発達障害 脳の機能障害によって生じるもので、自閉症等の広汎性発達障害や注意欠如多動性障害、学習障害等がある。知的な遅れがある場合もあれば、平均以上の能力がある場合もある。脳機能の発達のアンバランスさから、得意・不得意の差が大きいため、周囲の理解を得づらいことがある。 主な発達障害 広汎性発達障害 自閉症、アスペルガー症候群等が含まれる。社会性・コミュニケーション力が低い、興味や活動の範囲が狭く、パターン化した行動やこだわりが強いなどの特徴がある。聴覚過敏や触覚過敏、逆に痛みや疲れを感じにくい等の感覚の問題がある場合もある。 注意欠如多動性障害 不注意(集中できない、うっかりミスが多いなど)、多動(待つことが苦手で動き回る、じっとしていられないなど)、衝動性(考えるよりも先に言動や行動を起こしてしまうなど)等の特徴がある。 学習障害 全般的な知的発達に遅れはないのに、読む・書く・計算するなどの特定の能力に著しい困難がある状態をいう。 主な特徴 ・遠回しの言い方やあいまいな表現は理解しにくい ・相手の表情、態度やその場の雰囲気を読み取ることが苦手な方もいる ・順序立てて論理的に話すことが苦手な方もいる ・関心のあることばかり一方的に話す方もいる P24 9 高次脳機能障害 事故や脳血管障害等の病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知障害や行動障害等の症状のことをいう。身体に障害が残らないことも多く、外見からは分かりにくく、周囲の理解を得づらいことがある。 主な特徴 主な症状として、以下のようなものがある。 ・記憶障害(すぐに忘れる、新しいことを覚えられないなど) ・注意障害(不注意が多い、集中力が続かないなど) ・遂行機能障害(計画を立てて物事を進められない、指示されないと動けないなど) ・社会的行動障害(すぐに怒る、欲しいものを我慢できないなど) 10 難病 「難病」は、医学的に明確に定義された病気の名称ではなく、原因が解明されておらず、治療法が確立していない疾病で、その病態は様々である。 疾患群別の特徴 血液系疾患 貧血による運動機能の低下や血小板減少による出血傾向がみられる方がいる。原発性免疫不全症候群では、感染の予防が重要となる。 免疫系疾患 多臓器が侵される場合がある。全身の血管に炎症が起きる疾病では、臓器に虚血症状を起こし、脳、心、腎などの血流不全になることがある。 内分泌系疾患 ホルモンが不足又は過剰となる疾病がある。症状は様々で、変動が大きいものがある。 代謝系疾患 細胞に代謝産物が蓄積、四肢の痛み、血管腫、腎不全、心症状も出現する。 神経・筋疾患 運動障害により、歩行、食事、排泄、整容などに影響が出る。思考や感覚は低下しないことが多く、適切な介助や援助によりQOLが向上する。 視覚系疾患 視野狭窄や夜間、暗室での視力が極端に低下することがある。 聴覚・平衡機能系疾患 めまいを引き起こす疾病がある。頭や体の向きを急に変えないなどの注意も必要となる。 循環器系疾患 動悸、易疲労感、浮腫、息切れなどの心不全症状がみられる。 呼吸器系疾患 階段昇降や肉体労働が困難になる。喫煙など室内外の空気の汚れにより症状は増悪する。 消化器系疾患 腸疾病では粘血便、下痢、腹痛を慢性的に繰り返す。肝・胆・膵疾病では、肝不全症状や、皮膚のかゆみ、黄疸などがみられる。 P25 皮膚・結合組織疾患 外見の変化や合併症のため日常生活に困難を感じることが多い。皮膚症状に加え、眼、難聴、小脳失調症など歩行障害を合併するものもある。 骨・関節系疾患 対麻痺や四肢麻痺を起こす場合がある。 腎・泌尿器系疾患 腎機能に応じて、食塩や蛋白質、水分などの制限が必要になる。多発性嚢胞腎では感染症や打撲による腎損傷に注意が必要。 スモン 中枢神経と末梢神経を侵し、びりびり感などの異常感覚とともに、多様な合併症が出現する。 主な特徴 ・症状には頻繁に変化がみられる、日によって変化が大きいといった特徴や、進行性の症状、大きな周期での回復と悪化を繰り返すことがある。 ・痛みや脱力感、倦怠感など外見上分かりにくい症状に悩まされていることも多い ・言語障害や四肢麻痺などのため、会話や意思伝達に困難がある場合もある P26 第3章 市民からの相談 障害者差別の解消を効果的に推進するためには、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要です。また、相談事案を集約することにより、障害者差別に係る事例の集積、共有化を図り、本市における障害者差別解消の取り組みに活かしていきます。 対応の留意事項 市政相談「市民の声」等を通じ、市職員の対応や市が実施する事業、市が管理する施設等に関して、障害を理由とする差別に関する相談を受けた場合は、当該事業等を所管する部署において、以下の事項に留意しながら、組織として対応します。 なお、相談内容が市政とは関係のない事案である場合は、他の適切な相談機関を紹介します。 ・障害の特性は様々であり、それに応じて必要な措置も異なるため、まずは申出者の話を丁寧に聞き、何が課題なのか、何が必要なのかを考えます。 ・即時の対応が困難な場合や、過重な負担にあたると判断した場合は、代替手段がないか、検討します。 ・必要に応じて、申出者との間で事案の解決に向けた話し合いを行います。 ・対応ができない場合は、その理由を説明し、理解を得るよう努めます。 P27 第4章 研修・啓発 1 職員研修の実施 新規採用者研修、人権指導者養成研修そのたの研修の機会を通じて、職員一人ひとりが障害に対する理解と障害を理由とする差別の解消に資する基本的な事項の理解を深めるとともに、障害のある人に対し、対話と共感をもとにした柔軟で丁寧な対応を心掛けられるような「意識のバリアフリー」の向上を果たしていきます。 2 各職場における取り組みの推進 管理職員は、各職場における障害を理由とする差別の解消を推進するため、日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、職員の注意を喚起し、認識を深めさせるよう努めるとともに、障害者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申し出等があった場合は、迅速かつ適切に対処するものとし、その後の取り組みに活かしていきます。 第5章 附則 1 対応要領は、国の基本方針の見直しや、不当な差別的取扱い、合理的配慮の事例の集積等を踏まえ、必要に応じて、見直し、充実を図ることとする。 2 対応要領の見直しに当たっては、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずることとする。 P28 参考情報 1 関連問い合わせ先 ・手話通訳・要約筆記の派遣 (名古屋市手話通訳者派遣事業・要約筆記者派遣事業(委託事業)) (名古屋市盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業(委託事業)) 社会福祉法人名古屋市身体障害者福祉連合会 名身連聴覚言語障害者情報文化センター(中村区中村町7丁目84-1) 電話:413-5885 ファックス:413-5853 開館:月・木・金(9:00〜20:30)、火・土・日・祝日(9:00〜16:30) 休館:毎週水曜日(祝日除く)、年末年始等 派遣申込書により、原則として派遣希望日の1週間前までに申し込みが必要です。詳細及び申込書様式は、以下のホームページを参照してください。 手話通訳 http://www.meishinren.or.jp/htm/section/chogen/syuwatuyaku.html 要約筆記 http://www.meishinren.or.jp/htm/section/chogen/yoyakuhikki.html ・要約筆記関連備品・磁気ループの貸出も上記の名身連聴覚言語障害者情報文化センターで行っています。 詳細及び申込書様式は、以下のホームページを参照してください。 http://www.meishinren.or.jp/htm/section/chogen/comyukiki.html P29 ・点字印刷 (1)健康福祉局障害福祉部障害企画課 電話:972-2587、972-2585 ファックス:951-3999 点訳者を配置しています。 ・点訳や墨字訳、そのほか視覚障害のある方への情報提供方法に関することについてご相談ください。 ・点訳や墨字訳については、文書量や依頼時期により対応の可否があるため、早めにご相談ください。 ・依頼の際は、印刷物の現物とともに、できる限りその文字データ(ワードやテキストデータ)を併せてご提出ください。より速やかに対応できます。 点字用ラベルプリンターが利用できます。電話連絡の上、障害企画課へお越しください。但し、点字用テープは各所属でご準備の上、ご持参ください。 (2)社会福祉法人名古屋ライトハウス 名古屋盲人情報文化センター(港区港陽1丁目1-65) 電話:654-4523 ファックス:654-4481 開館:9時半から17時 休館:毎週土曜日、祝日、第5日曜日、第3木曜日、年末年始等 製作費や製作期間は、文書量や図表の有無等によって異なりますので、直接お問い合わせください。 参照ホームページ https://www.e-nakama.jp/niccb/public/ ・音声版の作成も上記の名古屋盲人情報文化センターで行っています。 P30 ・「こんなときどうする? 障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック」 健康福祉局障害福祉部障害企画課 電話:972-2585 ファックス:951-3999 ・「印刷物ガイドライン ユニバーサルデザインの視点から」 健康福祉局障害福祉部障害企画課 電話:972-2585 ファックス:951-3999 ・市役所の主な障害関連機関 身体障害者更生相談所 瑞穂区弥富町字蜜柑山1-2 電話:835-3821 ファックス:835-3724 身体障害者に対して専門的知識及び技術を必要とする相談や判定等を実施。 知的障害者更生相談所 熱田区千代田町20-26 電話:678-3810 ファックス:683-8221 知的障害者に対して相談や判定等を実施。 精神保健福祉センターここらぼ 中村区名楽町4-7-18 電話:483-2095 ファックス:483-2029 市民の心の健康の保持増進や精神障害者の社会復帰、社会参加の促進を図るため、各種相談事業や啓発活動等を実施。 発達障害者支援センターりんくす名古屋 昭和区折戸町4-16 電話:757-6140 ファックス:757-6141 発達障害者やその家族、関係機関等を対象に、相談支援、各種研修や啓発活動等を実施。 総合リハビリテーションセンター 瑞穂区弥富町字蜜柑山1-2 電話:835-3811 ファックス:835-3745 身体障害者の相談から医療、訓練指導、社会復帰に至るリハビリテーションサービスを提供。高次脳機能障害支援事業も実施。 P31 2 関連相談機関 以下の表は、区分、相談機関、内容等の順となっています。 電話番号・ファックス番号の市外局番は、特に記載がない場合「052」です。 市政 市民相談室(名古屋市市民経済局広聴課)、区役所まちづくり推進室 市政全般に関する苦情、要望、意見等の受付、相談 人権 ソレイユプラザなごや(なごや人権啓発センター) 電話:684-7017 ファックス:684-7018 人権問題に関する一般的な相談 法務省「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)」 電話:0570-003-110 「インターネット人権相談」ホームページからメールも可 人権侵害に関する相談 法律 総務省くらしの行政・法律相談所(名古屋総合行政相談所) 電話:961-4522 弁護士による相談は要予約、収入等要件有 法律問題(民事) 愛知県弁護士会 名古屋法律相談センター 電話:565-6110 一般法律相談、消費者被害相談、高齢者・障害者相談等 教育 子ども教育相談「ハートフレンドなごや」(名古屋市教育センター) 電話:683-8222(予約電話:683-6415) 「ハートフレンドなごや」ホームページからメールも可 子どもの教育・養育上の相談全般 労働 愛知労働局総合労働相談センター 電話:972-0266 解雇、配置転換、賃下げ、いじめ等労働問題の相談 医療 名古屋市医療安全相談窓口 電話:972-2634 医療についての心配・苦情などの相談 愛知県医師会医療安全支援センター(苦情相談センター) 電話:241-4163 医療に関する苦情相談 愛知県医師会難病相談室 電話:241-4144 難病患者の医療相談、療養・生活相談 消費生活 名古屋市消費生活センター 電話:222-9671 「名古屋市消費生活センター」ホームページからメールも可 消費生活に関する相談 P32 障害者 区役所福祉課・支所区民福祉課 身体障害児・者、知的障害児・者の福祉に関する相談 区役所保健所保健予防課 精神保健及び精神障害児・者の福祉に関する相談、難病患者の医療・相談・生活相談 障害者基幹相談支援センター 総合相談、障害福祉サービス等の利用に関する相談 名古屋市障害者・高齢者権利擁護センター 北部:電話919-7584 ファックス919-7585 南部:電話678-3030 ファックス678-3051 東部:電話803-6100 ファックス803-6600 生活相談・法律相談 名古屋市成年後見あんしんセンター 電話:856-3939 ファックス:919-7585 成年後見制度に関する相談 名古屋市障害者虐待相談センター 電話:856-3003 ファックス:919-7585 (土 日 祝・夜間 電話:301-8359) 障害者の虐待に関する相談 裏表紙 健康福祉局障害福祉部障害企画課 電話:972-2585 ファックス:951-3999