生物多様性なごや戦略実行計画2030概要版 1ページ 生物多様性なごや戦略実行計画2030について  趣旨  (1)計画の目的   本市では、生物多様性に関する計画として、「生物多様性2050なごや戦略」を2010年に策定し、そのビジョンのもと、環境分野の総合的な計画である「名古屋市環境基本計画」において方針を定め、取り組みを進めてきたところですが、これまで生物多様性に特化した中・短期的な計画は設けていませんでした。   新たな世界目標や国家戦略ができたこの機会を捉え、本市における生物多様性に関する取り組みの強化と着実な進捗管理をはかるため、本市が2030年までに重点的・優先的に取り組む具体的な事柄やロードマップを定めた実行計画を新たに策定しました。  (2)計画のポイント   本計画は、本市と市民・市民団体・事業者等の多様な主体が、役割分担のもと、パートナーシップによる生物多様性に関する取り組みを進めていくための共通の指針となるものです。   本計画では、本市の地域特性や状況を考慮しながら、特に重点的・優先的な取り組みを明確にしています。  (3)計画期間   2023年度から2030年度まで 2ページ なぜ生物多様性が大切なのか  生物多様性とは   生物多様性とは、多様な生きものが存在し、それらの生きものがお互いにつながりあい、バランスが保たれている状態のことを言います。   地球上には様々なし自然の中に、長い歴史の中でそれぞれの環境に適応して進化した多様な生きものが存在し、相互につながり、支えあって生きています。    生物多様性がなくなると何が困る?   食料や水の供給、気候の安定など、生物多様性がもたらす恵みがなければ、私たちの暮らしは成り立ちません。もし、生物多様性がなくなると、私たちの生活に大きな影響が生じます。   具体的には、次に示す1から4の影響が考えられます。   (1)すべての生命の基盤がなくなります   (2)生活や事業活動に必要なものがなくなります   (3)豊かな文化が消えていきます   (4)生活の安全が脅かされます 3ページ  生物多様性の危機   私たち日本人を含めた人間活動が原因で、急速なスピードで生きものの絶滅が進んでいます。    生物多様性に影響を与える私たちの暮らし   私たちは世界中の生物多様性の恵みに依存し、また、影響を与えています。 4ページ  計画策定の背景  1 世界・国・社会等の動向     2022年12月にカナダ・モントリオールで開催された生物多様性COP15第2部において、2030年を目標とした新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。     これを受け、国においては、2023年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」が策定されました。       生物多様性国家戦略2023-2030の構成      2030年に向けた目標ネイチャーポジティブの実現      5つの基本戦略       ①生態系の健全性の回復        場の保全・再生(30by30目標等)、利用・管理における負荷軽減、野生生物保全       ②自然を活用した社会課題の解決         地域づくり、NbSによる気候変動対策とのシナジー最大化・トレードオフ最小化、鳥獣管理       ③ネイチャーポジティブ経済の実現         リスクや機会の評価、目標設定、情報開示、ファイナンス       ④生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動(⼀人⼀人の行動変容)        理解増進、人材育成、消費活動における行動変容、保全行動の促進       ⑤生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進        情報基盤整備、空間計画、国際連携        COP10以降、世界や日本国内における生物多様性の取り組みは一定の進捗が見られたものの、生物多様性の減少に歯止めがかかっておらず、本市でも同様の状況にあります。     最近では、気候変動による自然災害の深刻化、人口減少・高齢化などの課題の顕在化、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡第などを受け、社会のあり方そのものが根本から問われています。    2 市民意識   生物多様性の認知度84.5%   暮らしの中で生物多様性に配慮した行動をしている市民の割合55.5%      市民意識調査の結果概要    生物多様性という言葉は認知されているが、具体的な行動に結びついていない。    行政に求めることは、自然環境の保全に関すること。(身近な自然の保全再生、外来種の駆除、緑化の推進等)    市民が取り組みたいことは、日常生活の中で取り組めること。(食事、買い物、緑化等)    市民が行政に求めつつ、自らも行いたいことは緑化に関すること。(花や木、野菜を育てる) 5ページ  名古屋市のおけるCOP10以降の取り組みの総括   2010年に愛知・名古屋において開催されたCOP10を契機に、2011年に設立した「なごや生物多様性センター」と「なごや生物多様性保全活動協議会」との両輪による様々な取り組みが進んだほか、多様な主体との協働による生物多様性に関する様々な取り組みが進みました。 6ページ  重点方針   2030年までの重点方針    これまでの課題を踏まえつつ、本市特有の状況と社会の要請を、今後の重点的・優先的な視点として考慮し、「2030年までの重点方針」を次のとおリ設定しました。      これまでの課題    まちなかにおける生態系の回復の促進    なごや生物多様性センターに集積された生きものの情報・標本の有効活用等    市民の具体的な行動のさらなる推進    事業活動における生物多様性の配慮の働きかけ等    生物多様性の大切さを伝え、行動を促す機会の拡大    ユース世代への働きかけ、さらなる参画促進等    なごや生物多様性センターのさらなる機能強化    保全活動等の担い手不足や高齢化への対応等    重点的・優先的な視点   1なごや特有の状況    市域の大半が市街化区域    リニア中央新幹線開業に向け活発化する再開発    人口減少・高齢化   2地球環境問題への対応    気候変動問題    プラスチック問題   3社会変革に向けた新たな視点    持続可能な開発目標(SDGs)    自然を活用した解決策(NbS)    地域循環共生圏    新型コロナウイルス感染症からの教訓   4市民の意識    市民の具体的な行動の促進    重点的・優先的に取り組むべき事柄として、2030年までの重点方針   重点方針1 生物多様性に配慮したまちづくりの推進   重点⽅針2 社会変革につながる取り組みの促進   重点⽅針3 自然と共生する人づくり   重点⽅針4 生物多様性保全の拠点・ネットワークの強化 7ページ  重点方針1 生物多様性に配慮したまちづくりの推進   2030年までの取り組みの方向性   ➊保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM)の認定促進と保全   ➋身近な生きものに関する生息・生育状況の把握   ➌まちづくりに活かすための生きもの情報の提供   ➍外来種対策の推進   ➎生物多様性に配慮した緑化の推進   ➏緑の保全・創出   ❼都市農地の保全   ❽生きものにもやさしい魅力ある水辺空間の創出   ❾藤前干潟の保全   重点方針1の進捗管理のための指標    市内における自然共生サイト認定数(累計)を2030年までに5か所以上    都心の生きもの復活事業の実施か所数(累計)を2030年までに20カ所以上    新たに確保された緑の面積(累計)を2030年までに2021年からの10年間で400ha  重点方針2 社会変革につながる取り組みの促進   2030年までの取り組みの方向性   ➊グリーンインフラの取り組みの推進   ➋環境や社会に配慮した製品・サービスの普及促進   ➌健全なプラスチック利用   ➍食品ロス削減の推進   ➎地域循環共生圏(ローカルSDGs)の形成   ➏生物多様性に配慮した事業活動の促進   重点方針2の進捗管理のための指標    暮らしの中で生物多様性に配慮した行動をしている市民の割合を2030年までに60%    なごやSDGsグリーンパートナーズ登録認定数(累計)を2030年までに4300件 8ページ  重点方針3 自然と共生する人づくり   2030年までの取り組みの方向性   ➊日常生活を通した生物多様性の行動促進   ➋藤前干潟を通した人づくり   ➌なごや環境大学における人づくり・人の輪づくり   ➍なご生生物多様性センターにおける人づくり   ➎環境学習センター(エコパルなごや)における環境学習の推進   ➏学校教育における生物多様性の学習支援   ❼自然と親しむ機会の提供   重点方針3の進捗管理のための指標    暮らしの中で生物多様性に配慮した行動をしている市民の割合を2030年までに60%    市民団体、事業者、教育機関など「なごや環境大学」を支える団体数(累計)を2030年までに565団体  重点方針4 生物多様性保全の拠点・ネットワークの強化   2030年まで取り組みの方向性   ➊なごや生物多様性センターの拠点機能の強化   ➋調査・保全活動に関わる人の拡大と連携強化   ➌地域の保全活動を持続可能なかたちで進めるための仕組みづくり   ➍自治体連携の推進   重点方針4の進捗管理のための指標    なごや生きものライブラリーの閲覧数(年間)を2030年までに50000件    市民参加型生きもの調査の延べ参加者数(累計)を2030年までに2021年からの10年の累計で34000人 9ページ 生物多様性のために私たちができることは?  生物多様性のために私たちができることはたくさんありますが、本計画で重視している、「生物多様性を回復させる」、「日々の行動で世の中の流れを変える」という視点で整理しました。  まずは、ここで紹介することを意識して取り組んでみましょう。    市民  1保全活動に関わる   身近な自然の調査・保全活動に参加する   各種の講座・イベント等に参加する  2緑化に取り組む   庭やベランダなどで植物を育てる   生物多様性に配慮した緑化に取り組む  3買い物にこだわる   地元のものをできるだけ選んで買う   環境や社会に配慮したものを選んで買う   マイバックを持参する    市民団体  1活動を継続・発展させる   新たな構成員を確保する   活動への参加者層を拡大する   多様な主体と連携する   活動資金を確保する  2多様な主体と協働する   市民、事業者、教育機関、行政等と連携し、生物多様性の機運を醸成する  3成果や課題を積極的に発信する   SNSや発表の機会を有効活用する 10ページ  事業者  1身近な自然の調査・保全活動に関わる   社会貢献や社員研修の一環として、近な自然の調査・保全活動に関わる   資金面から地域の保全活動を支援する  2緑化に取り組む   敷地内の緑を増やす   生物多様性に配慮した緑化に取り組む  3本来業務に生物多様性の配慮を取り入れる   環境や社会に配慮した商品の取扱いや使用を増やす   原料調達、製造、販売等の一連の企業活動の流れを生物多様性に配慮したものとする  教育機関  1身近な自然の調査・保全活動に関わる   授業や課外活動の一環として地域の調査・保全活動に関わる  2緑化に取り組む   敷地内の緑を増やす   生物多様性に配慮した緑化に取り組む  3生物多様性について学ぶ機会をつくる   生物多様性と自分たちの生活のつながりについて授業で取り上げる 11ページ  本計画は、本市と市民・事業者・市民団体等の多様な主体が、役割分担のもと、パートナーシップによる取り組みを進めていくための共通の指針となるものであり、計画の進捗管理においても、多様な主体との連携により振り返り等を行っていきます。  また、重点方針のロードマップにおいて示す前期(2023・2024年度)、中期(2025〜2027年度)、後期(2028〜2030年度)の節目を捉え、PDCAサイクルによる点検・評価を行い、施策等の見直しを検討します。