7ページ 第2章 文化芸術を取り巻く状況 1 名古屋の文化的背景 名古屋は、約1900年前に三種の神器のひとつである草薙の剣が熱田の地に祀られ、古墳時代には大型の前方後円墳が築造される等、長い歴史を持つまちです。また、古来より鎌倉街道、のちの「東海道」が東西を結び、人々が行き交う場所でした。 名古屋がこの地域の拠点として発展する契機となったのは、1610年の名古屋城の築城開始と、それに伴って清須の町が名古屋城の城下町として移転してきた「清須越」にあります。 江戸期においては、尾張徳川家の初代藩主義直、七代藩主宗春など歴代の藩主の多くが文化や学問の振興に取り組み、さまざまな文化芸術活動が活発になりました。特に茶道や能、狂言等、武家のたしなみとされる文化・芸能が花開くとともに、町民にも芝居等の文化が広まりました。また、俳諧、文学、出版、歌舞伎、長唄等、幅広い分野の文化・芸能が飛躍的に盛んになり、「芸どころ名古屋」の気風が培われました。 一方、名古屋は、木曽からの木材の集散地であり、木材を細工する技能に富んだ土地柄であったこともあり、この時期には華やかなからくり人形を持つ山車が作られ、現在にもその伝統は息づいています。 明治以降は、自動織機の発明をきっかけとして、世界をリードする自動車産業や機械産業、航空機産業等の豊かな産業が発展していきました。また、近隣に日本六古窯に数えられる瀬戸や常滑があることで、陶磁器素地に絵付けを施し輸出する産業が盛んとなり、現在でも中村区則武で製造されている陶磁器は世界に誇るブランドとして知られています。加えて、世界三大ウールのひとつである「尾州ウール」の隣接地として、織物の技能において国内外の有名な縫製メーカーからも注目されています。 このように、当地域は江戸時代に培われた芸どころ名古屋の気風が、産業の発展とともに新たな文化やものづくりの技にも受け継がれています。 8ページ 2 本市の文化行政 昭和53(1978)年3月の「市民文化をすすめるための提言」(名古屋・市民文化懇談会)を受けて、昭和57(1982)年度に名古屋市市民文化振興事業積立基金(以下、市民文化振興事業積立基金という。)を設置し、昭和58(1983)年度に名古屋市文化振興事業団を設立しました。 平成5(1993)年6月には、「文化都市なごやの飛躍をめざして(提言)」(文化都市なごやを考える懇談会)において、名古屋が文化都市として更に飛躍するための具体的な事業や施策について提言を受けています。 平成21(2009)年度には、名古屋市文化振興に関する有識者懇談会の提言を受け、名古屋市文化振興計画を策定した後、平成28(2016)年度に名古屋市文化振興計画2020、令和3(2021)年度に文化芸術推進計画2025を策定し、文化芸術の推進に取り組んできました。 令和4(2022)年10月には名古屋アーツカウンシルの実動組織として、文化芸術団体・芸術家への支援や先駆的な取り組みの実践、調査研究等の機能を有する「クリエイティブ・リンク・ナゴヤ」を設置しました。また、令和6(2024)年4月には文化芸術の推進に関する基本理念を定めるとともに、市の責務や文化芸術活動を行う者・事業者の役割等を明らかにし、本市の文化芸術の推進を総合的かつ計画的に実施するために文化芸術推進基本条例を制定しました。本条例の施行に伴い、本市の文化芸術施策に対する提言機能と文化芸術事業に対する助言・評価機能を有する文化芸術推進評議会が設置されました。これにより、文化芸術推進評議会とクリエイティブ・リンク・ナゴヤを包括した文化芸術を推進する体制である、名古屋アーツカウンシルが本格的に始まりました。 本市の文化行政に関する主な流れの表を掲載 昭和53(1978)年:「市民文化をすすめるための提言」(名古屋・市民文化懇談会) 昭和57(1982)年:市民文化振興事業積立基金 設置 昭和58(1983)年:名古屋市文化振興事業団 設立 平成 5(1993)年:「文化都市なごやの飛躍をめざして(提言)」(文化都市なごやを考える懇談会) 平成 6(1994)年:市民文化に関する事項を教育委員会から市民局(平成12年度から市民経済局)へと移管 平成21(2009)年:名古屋市文化振興計画 策定 平成25(2013)年:名古屋市文化振興計画 重点プロジェクトの改定 平成28(2016)年:組織改正による観光文化交流局の設置に伴い、文化振興室(令和4年度から文化芸術推進課)も市民経済局から同局内に移管、名古屋市文化振興計画2020 策定 令和 3(2021)年:名古屋市文化芸術推進計画2025 策定 令和 4(2022)年:クリエイティブ・リンク・ナゴヤ 設置 令和 6(2024)年:文化芸術推進基本条例 制定、文化芸術推進評議会 設置 9ページ~12ページ 3 文化芸術推進計画2025の振り返りと課題 文化芸術推進計画2025は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けていた令和2(2020)~令和3(2021)年度にかけて策定しました。当時、すでに文化芸術を取り巻く状況は厳しくなっており、コロナ禍はさらにその状況に拍車をかけていたことから、「文化芸術が活きるまち・芸どころ名古屋~文化芸術の灯を守り輝かせ、豊かな未来を創造する~」を基本理念に掲げ、規模を縮小する等さまざまな感染症対策を行いながら文化芸術事業を継続して実施し、また各文化施設も供用を継続し活動の場の維持を図ることで、文化振興に取り組みました。また、クリエイティブ・リンク・ナゴヤを設置し、さらに文化芸術推進基本条例に基づいた文化芸術推進評議会を設置することで、本市の新たな文化芸術推進体制である名古屋アーツカウンシル体制を構築しました。 ※文化芸術推進計画2025の評価指標について、策定時の値、現状値及び目標をまとめた表を掲載 表の内容は、全体指標の、市民の名古屋文化の評価「文化的なまちだと思う」、「どちらかといえば文化的なまちだと思う」の割合は策定時に51.4%(出典は令和2年ネットモニターアンケート)、現状値は44.4%(出典は令和6年市政アンケート)、目標は62%。 重点項目指標の、名古屋版アーツカウンシル支援件数は策定時に1年あたり5件(出典は令和2年名古屋市データ)、現状値は累計支援件数が51件(出典は令和6年名古屋市データ)、目標値は累計支援件数が50件。 重点項目指標の、ユネスコ創造都市ネットワークにおけるネットワーク交流事業件数は策定時に1年あたり4件(出典は令和2年名古屋市データ)、現状値は累計事業件数が16件(出典は令和6年名古屋市データ)、目標値は累計事業件数が30件。 重点項目指標の、直近3年間に文化をホール、美術館等で直接鑑賞をした市民の割合は策定時に86.0%(出典は令和2年ネットモニターアンケート)、現状値は70.1%(出典は令和6年市政アンケート)、目標は89%。 視点「親しむ」の指標の、市民の名古屋の鑑賞環境の評価(魅力的な公演や展覧会がある)は策定時に17.2%(出典は令和2年ネットモニターアンケート)、現状値は12.8%(出典は令和6年市政アンケート)、目標は20%。 視点「親しむ」の指標の、市民の文化情報の入手環境の評価(公演や展覧会に関する情報が入手しやすい)は策定時に17.2%(出典は令和2年ネットモニターアンケート)、現状値は7.4%(出典は令和6年市政アンケート)、目標は20%。 視点「磨く」の指標の、芸術家の数は策定時に11,850人(出典は平成27年国勢調査)、現状値は12,460人(出典は令和2年国勢調査)、目標は12,870人。 視点「磨く」の指標の、名古屋独自の歴史や文化に根ざした事業(やっとかめ文化祭)の認知は、策定時に27.1%(出典は令和2年ネットモニターアンケート)、現状値は5.0%(出典は令和6年市政アンケート)、目標は30%。 視点「活かす」の指標の、名古屋独自の魅力や文化で自信を持って紹介できるものがある市民の割合は策定時に59.8%(出典は平成30年市総合計画)、現状値は46.7%(出典は令和5年市総合計画)、目標は78%。 視点「支える」の指標の、文化施設利用率は策定時に92.1%(出典は平成30年名古屋市データ)、現状値は87.7%(出典は令和6年名古屋市データ)、目標は90%以上。 視点「支える」の指標の、文化施設利用者満足度は策定時に99.5%(出典は平成30年名古屋市データ)、現状値は99.3%(出典は令和6年名古屋市データ)、目標は90%以上。 視点「支える」の指標の文化関連産業(就業者数)は策定時に29,768人(出典は平成26年経済センサス基礎調査)、現状値は25,346人(出典は令和3年経済センサス基礎調査)、目標は32,700人。 視点「支える」の指標の文化関連産業(事業所数)は策定時に2,941事業所(出典は平成26年経済センサス基礎調査)、現状値は2,468事業所(出典は令和3年経済センサス基礎調査)、目標は3,235事業所。 脚注 現状値は本計画策定審議時における最新の数値。 策定時にネットモニターアンケートで調査した項目は、現状値を市政アンケートで調査しており、調査対象及び実施方法が異なる。 ※文化芸術推進計画2025の振り返りと課題をまとめた表を掲載 表の内容は、 視点「親しむ」 施策:文化芸術を享受する機会の拡大。子ども・青少年の創造性・人間性の育成。国内外に向けた情報発信力の強化。 振り返りと課題: ・本市や名古屋市文化振興事業団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、各施設の事業やアウトリーチ活動等を通じ、子どもたちを始めとした多くの市民に、文化芸術に気軽に触れられる機会を提供している。 ・文化芸術推進評議会では学校での部活動や文化芸術活動の縮小による子どもの文化体験機会が減少しており、対応が必要という意見をいただいている。また、経済格差による文化体験格差も発生している(16ページ参照)ことから、対応が求められている。 ・今後必要な取り組みとして「身近な施設で、気軽に、文化芸術を鑑賞できる機会を提供する」及び「まちなかで、日常的に、文化芸術に触れる機会を提供する」が特に求められている(19ページ参照)ことから、引き続きこれらの施策を行う必要がある。 ・情報発信については、名古屋の文化芸術に対して「公演や展覧会に関する情報が入手しにくい」という意見が「特になし」を除き最も多いため(18ページ参照)、チラシ配架やマスコミへの情報提供など既存の取り組みだけでなく、SNSの発信に力を入れる等の対応が求められている。 視点「磨く」 施策:創造活動の支援。市民文化活動の支援。文化・歴史資源の保存・継承・活用。 振り返りと課題: ・コロナ禍においても、文化芸術活動の場の維持を図ってきた。また、名古屋の文化・歴史資源を活用した取り組みとして、「やっとかめ文化祭」や「ストリーミング・ヘリテージ | 台地と海のあいだ」を実施してきた。やっとかめ文化祭は、令和5(2023)年度より「やっとかめ文化祭DOORS」と名称を改め、学生連携や若手ディレクターによる企画、観光との連携など新たな取り組みにも挑戦している。 ・クリエイティブ・リンク・ナゴヤで、若手アーティストへのキャリアアップ支援を開始した。 ・文化芸術関連大学・専門学校の卒業生は 3割以上が文化芸術関連の仕事に就いていることから(25ページ参照)、若い世代がこれまでの学びや取り組みを活かし、さらに活躍ができるよう支援する必要がある。 ・新型コロナウイルス感染症拡大の影響により文化芸術団体の規模が縮小しており(15ページ参照)、文化芸術団体は名古屋の文化芸術環境として「芸術家等への創造活動の支援」や「市民文化活動の支援」等が充実していないと考えている(23ページ参照)ことから、練習・創作・発表など活動の場の提供等の支援が求められている。 ・伝統芸能分野における文化芸術団体のメンバー等は70歳代以上の割合が他ジャンルと比べて高く(22ページ参照)、その継承が課題である。 ・文化芸術活動における年収は300万円未満が75.2%(23ページ参照)と低いことから、活動への助成等の支援が必要である。 ・人材育成や交流機会の創出に、より効果的に取り組んでいくためには、クリエイティブ・リンク・ナゴヤ等を活用しながら実施する必要がある。 ・名古屋の文化芸術等で誇れると思うものとして「名古屋にある歴史的建造物」や「名古屋の生活文化」の回答が多く(19ページ参照)、文化・歴史に根ざした魅力向上として、文化・歴史資源の保存・継承・活用が求められている。 視点「活かす」 施策:社会的課題の解決への活用。観光・産業との好循環。文化芸術を活かしたまちづくり。 振り返りと課題: ・文化芸術の振興のみならず、文化芸術により生み出される価値を他分野へ活用することを意識した取り組みを実施している。 ・クリエイティブ・リンク・ナゴヤを設置し、他分野連携活動への助成支援事業等を実施することで、文化芸術によって生み出される多様な価値を他分野に活かし、社会に好循環を生み出そうとする意欲的な事業を開始した。 ・今後、文化芸術と他分野(観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業等)との連携を加速させるとともに、改築を予定している市民会館や、暫定利用している金山南ビル美術館棟がある金山地区において、広場や公共的な空間の創出・活用を行うことで、文化芸術をまちづくりへ活かしていく必要がある。 ・文化芸術以外の他分野と連携して実施する社会連携事業をこれまでに行った経験がある芸術家等は45.5%、経験はないが今後やってみたいと考えている芸術家等は40.7%に上り(24ページ参照)、他分野連携に対するニーズがあることから、クリエイティブ・リンク・ナゴヤを中心に他分野連携を推進していくことが求められる。 視点「支える」 施策:多様な連携、体制の充実。文化施設の整備、管理運営。 振り返りと課題: ・令和4(2022)年度にクリエイティブ・リンク・ナゴヤを、令和6(2024)年度に文化芸術推進評議会を設置し、名古屋アーツカウンシル体制を構築した。 ・令和6(2024)年度に「新たな劇場の基本計画」を策定した。 ・文化施設の利用率及び利用者満足度は高い水準を維持しており、文化施設の適切な維持保全を引き続き実施しつつ、老朽化に伴う今後の計画的な改修・改築等の検討を進めていく必要がある。 ・興行主催者等へのヒアリングから、いわゆる「名古屋飛ばし」と言われる一因として、会場の需給バランスの問題があると認識しており、対策が求められている。 ・本市の文化芸術施策を実現するパートナーである名古屋市文化振興事業団、名古屋フィルハーモニー交響楽団との連携に努め、当地域の文化芸術活動が持続的に発展・拡大する基盤づくりや文化施設間の連携強化に取り組んでいく必要がある。 ・ネーミングライツの導入により民間活力の活用が進んでいるが、文化芸術を支える事業予算の確保は年々厳しくなっていることから、財源の確保に取り組んでいく必要がある。 重点項目「新たな文化芸術推進体制の構築(名古屋版アーツカウンシル)」 振り返り: ・本市は、令和2(2020)年度に試行実施を行い、令和4(2022)年10月に、助成・支援、パイロット事業、調査研究・情報発信を行うクリエイティブ・リンク・ナゴヤを、令和6(2024)年4月に文化芸術推進基本条例を施行し、政策提言、助言・評価を行う文化芸術推進評議会を立ち上げ、名古屋アーツカウンシルの体制を構築した。今後、この体制を継続的に運用しながら、引き続き、名古屋の魅力・活力の向上に資するための方策を検討し実施する。 脚注 名古屋版アーツカウンシルは、令和7(2025)年4月より名古屋アーツカウンシルに改称。 重点項目「ユネスコ・デザイン都市なごや/ユネスコ創造都市ネットワーク」 振り返り: ・国際会議でのユネスコ創造都市との交流事業や、クリエイティブ・カフェ等の人材育成事業を通じて、社会的課題解決手法や優良事例の共有、都市魅力の相互発信を行ってきた。令和2(2020)~令和4(2022)年度には、ユネスコ・デザイン都市なごや推進事業実行委員会を構成団体として、オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とする「文化プログラム」の中核的事業である日本博事業「ストリーミング・ヘリテージ | 台地と海のあいだ」を開催。さらに、令和5(2023)年度からは国内デザイン都市三都市連携事業を開催する等、新たな事業展開を図っている。 重点項目「新たな劇場の整備(市民会館の改築)と文化施設の有機的連携」 振り返り: ・新たな劇場の整備(市民会館の改築)については、第3ホールをアスナル街区に整備することを新たに示したこと等から計画に遅れが生じたものの、改築に向けた検討を進め、令和6(2024)年度に「新たな劇場の基本計画」を策定。 ・今後は、事業者公募に向けてより詳細な整備や管理運営等の内容の検討を進めるとともに、他の文化施設との有機的連携のあり方についても検討をより進めていく。 13ページ 4 文化芸術を取り巻く潮流及び現状 (1)国の文化芸術政策の動向 ア 「文化芸術推進基本計画(第2期)」の策定 平成29(2017)年に議員立法で、「文化芸術振興基本法」が改正されて成立した「文化芸術基本法」の規定に基づき、令和5(2023)年に「文化芸術推進基本計画(第2期)」(令和5(2023)年度~令和9(2027)年度)が閣議決定されました。同計画は、我が国の文化芸術を取り巻く状況の変化や第1期計画の成果と課題を踏まえ、今後5年間において推進する7つの重点取り組み、16の施策群、これらの施策の着実かつ円滑な実施に必要な取り組みを示しています。 第2期計画においては、第1期計画期間中における文化芸術を巡る主な動向(文化庁の京都移転決定、博物館法や文化財保護法の改正、文化観光推進法の制定など)、新型コロナウイルス感染症が文化芸術に与えた影響(文化芸術イベントの中止・延期・規模縮小、文化芸術活動の減少など)、社会状況の変化(デジタル化の急速な進展、急激な少子高齢化など)等を踏まえ、例えば下記のようなキーワードが新たに記載されています。 文化芸術推進基本計画(第2期)に新たに記載されたキーワード(例) 社会・経済情勢に関するキーワード:コロナ(ウィズコロナ・ポストコロナ)、気候変動 デジタル技術に関するキーワード:AIによるコンテンツの生成、DX(デジタルトランスフォーメーション)、NFT(Non-Fungible Token)、CBX(Cultural Business Transformation)、オンライン鑑賞、デジタルアーカイブ 文化芸術支援に関するキーワード:クラウドファンディング、ファンドレイジング 教育に関するキーワード:文化部活動の地域連携や地域文化クラブ活動への移行 文化施設に関するキーワード:PPP/PFI、コンセッション その他のキーワード:文化芸術活動の担い手との適正な契約、建築文化 イ 手話に関する施策の推進に関する法律(手話施策推進法)の施行 「手話に関する施策の推進に関する法律」が令和7(2025)年6月18日に成立し、同月25日に公布、施行されました。本法律は、手話がこれを使用する者にとって日常生活及び社会生活を営む上での言語、その他の重要な意思疎通のための手段であることに鑑み、手話の習得及び使用に関する施策、手話文化の保存、継承及び発展に関する施策並びに手話に関する国民の理解と関心の増進を図るための施策など、手話に関する施策を総合的に推進することを目的としています。 その他にも、文化庁では、制作や実演の現場での暴言等による精神的な攻撃や演出等を理由とした性的な言動等、ハラスメントに関する問題が生じているため、令和5(2023)年度から2年間、ハラスメント防止対策支援事業を実施しています。 14ページ (2)人口減少 日本の常住人口は平成20(2008)年をピークに減少に転じていますが、本市の常住人口は、令和2(2020)年まで24年連続で増加していました。しかしながら、令和3(2021)年に減少に転じ、2年連続で減少しました。令和5(2023)年に再び増加し、令和6(2024)年10月1日現在の常住人口は、2,331,264人となっていますが、令和2(2020)年の2,332,176人をピークとして、減少傾向が続くと推計されています。人口減少に伴う文化芸術活動の担い手不足など、地域の文化芸術を支える基盤への影響が想定されます。 ※本市における常住人口の推移と推計について、実績値は名古屋市「統計なごやweb版」愛知県人口動向調査結果(名古屋市分)、推計値は名古屋市推計(令和5年10月1日現在)を出典とするグラフを掲載 (3)新型コロナウイルス感染症の影響 令和元(2019)年に発生し、令和2(2020)年に入ってから世界中で感染が拡大した新型コロナウイルス感染症により、多くの文化芸術イベントが中止・延期・規模縮小を余儀なくされ、文化芸術活動や観光需要の減少など、名古屋の文化芸術に大きな影響を与えました。 本市で活動する文化芸術団体へのアンケートによれば、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の令和元(2019)年度の活動に比べて、令和6(2024)年度の活動では、メンバー等の人数は「減っている」が53.3%、練習・発表等の回数は「減っている」が37.0%、活動内容・効果は「低下している」が32.6%となっています。 15ページ ※令和元(2019)年度と令和6(2024)年度の活動の規模や内容・効果の変化について、令和6年の名古屋市「名古屋市で活動する文化芸術団体等へのアンケート調査」を出典とするグラフを掲載 名古屋の芸術家等に対するアンケートによれば、コロナ禍による仕事量の変化について、60.1%が「コロナ禍で激減した」と回答し、うち32.6%は「現在はかなり復調している」と回答しています。 ※コロナ禍による仕事量の変化について、令和6年のクリエイティブ・リンク・ナゴヤ「名古屋の芸術家等の活動状況に関するアンケート調査」を出典とするグラフを掲載 他方で、コロナ禍を経て文化芸術の持つ本質的及び社会的・経済的価値の重要性や、今後有事が生じた場合の迅速な対応の必要性が再認識されたり、IT技術の活用推進やオンライン上での鑑賞機会の増加につながったりと、文化芸術政策において新たな取り組みがなされました。 令和5(2023)年5月には、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行し、文化芸術活動を含む市民の日常生活も回復を見せています。こうした状況を踏まえ、市民の安心・安全を確保しつつ、文化芸術活動の再開・発展を支援する施策を積極的に展開していくことが求められます。 16ページ (4)子ども・若者の文化体験が及ぼす影響 文部科学省が行った青少年の体験活動の推進に関する調査研究によると、小学6年生の頃に、文化的体験をより多く体験していた児童ほど、高校生になっても、向学校的(勉強・授業を楽しいと思っているか)、自尊感情、外向性、新奇性追求、感情調整、肯定的な未来志向、心の健康に良い影響を与えていたことが分かります。文化的体験をする機会が多いと、家庭の経済状況にかかわらず、良い影響が見られます。 また、父母の収入水準と年間の文化的体験の関係をみると、世帯所得が高い方が文化的体験をする機会が多いことが分かります。 ※文化的体験が及ぼす影響(文化的体験とその後の意識等との相関分析)、「自尊感情」に関する父母の収入水準別の分析(「文化的体験」による平均値差)、父母の収入水準と年間の文化的体験の関係について、令和3年の文部科学省「青少年の体験活動の推進に関する調査研究 報告書」を出典とするグラフをそれぞれ掲載 17ページ (5)市民の意識 ア 市民の文化芸術に対する意識 興味のある文化芸術の分野について、「芸術」の割合が最も高くなっており、次いで、「メディア芸術」「生活文化等」「文化財並びにその保存技術」の順に高くなっています。 ※興味のある文化芸術の分野について、令和6年の名古屋市「市政アンケート」を出典とするグラフを掲載 18ページ イ 名古屋の文化芸術に対する意識 名古屋を「文化的なまちだと思う」の割合は17.3%で、「どちらかといえば文化的なまちだと思う」を合わせると70.6%となっています。 ※名古屋を「歴史文化」や「文化芸術」が豊かな「文化的なまち」だと思うかについて、令和7年の名古屋市「名古屋市総合計画2028成果指標に関するアンケート調査」を出典とするグラフを掲載 本市の現在の文化芸術について、「公演や展覧会をするための文化施設が整っている」の割合が比較的高く20.7%となっている一方、「公演や展覧会に関する情報が入手しにくい」の割合も24.8%となっています。 ※本市の現在の文化芸術について、令和6年の名古屋市「市政アンケート」を出典とするグラフを掲載 19ページ 名古屋の文化芸術等で誇れると思うものは、「名古屋にある歴史的建造物」の割合が高く64.8%となっており、次いで「名古屋の生活文化」が36.5%となっています。 ※名古屋の文化芸術等で誇れるものについて、令和6年の名古屋市「市政アンケート」を出典とするグラフを掲載 今後必要な取り組みについて、「身近な施設で、気軽に、文化芸術を鑑賞できる機会を提供する」の割合が最も高く、次いで、「まちなかで、日常的に、文化芸術に触れる機会を提供する」、「文化芸術を活用して、観光、まちづくり等文化芸術以外の分野と協力した活動を行う」の順に高くなっています。 ※今後必要な取り組みとして、令和6年の名古屋市「市政アンケート」を出典とするグラフを掲載 20ページ (6)文化芸術関係者の現状 ア 文化芸術関連の就業者数 令和2(2020)年の著述家、記者、美術家、デザイナー、写真家、音楽家、舞台芸術家など、本市の文化芸術関連の就業者の数は12,460人です。 職種別では、「デザイナー」が4,730人、「個人教師(音楽)」が1,650人、「記者、編集者」が1,500人、「写真家、映像撮影者」が1,480人となっています。全国比では「個人教師(舞踊家、俳優、演出家、演芸家)」が2.5%、「デザイナー」、「個人教師(音楽)」が2.4%と高くなっています。 年齢別では、「著述家、記者、編集者」は40歳代が、「美術家、デザイナー、写真家」は30歳代が、「音楽家、舞台芸術家(個人教師は除く)」は40歳代及び50歳代が最も多くなっています。 ※本市の文化芸術関連の就業者数(職種別、年齢別)について、令和2年の総務省「国勢調査」を出典とする表を掲載 21ページ 令和3(2021)年の本市の文化芸術関連産業の従業員数をみると、「書籍・文房具小売業」が10,326人と最も多く、次いで、「映像情報制作・配給業」、「新聞業」、「デザイン業」、「興行場、興行団」、「出版業」、「広告制作業」の順に多くなっています。全国比(従業員数)では、「広告制作業」(5.2%)、「興行場、興行団」(4.6%)、「デザイン業」(4.5%)、「新聞業」(4.2%)等が高くなっています。 ※本市の文化芸術関連産業の従業員数について、令和3年の総務省「経済センサス活動調査」を出典とする表を掲載 22ページ イ 文化芸術団体、芸術家等の活動状況 文化芸術団体のメンバー等は、60歳代、50歳代、40歳代の割合が比較的高くなっています。伝統芸能は70歳以上の割合が他と比べて高くなっています。 ※文化芸術団体のメンバー等の主な年代について、令和6年の名古屋市「名古屋市で活動する文化芸術団体等へのアンケート調査」を出典とするグラフ及び表を掲載 芸術家等の活動年数は、20年以上~30年未満、30年以上~40年未満の割合が高くなっています。 ※芸術家等の活動年数について、令和6年のクリエイティブ・リンク・ナゴヤ「名古屋の芸術家等の活動状況に関するアンケート調査」を出典とするグラフを掲載 23ページ 本市在住・在勤又は本市で活動する芸術家等の活動収入について、「1円以上 100万円未満」「100万円以上 300万円未満」の割合が高くなっています。 ※芸術家等の文化芸術活動収入(年収)について、令和6年のクリエイティブ・リンク・ナゴヤ「名古屋の芸術家等の活動状況に関するアンケート調査」を出典とするグラフを掲載 文化芸術団体の本市の文化芸術環境への評価は「芸術家等への創造活動の支援」「市民文化活動の支援」「名古屋市の文化芸術情報の発信」等について「充実していると思わない」「どちらかといえば充実していると思わない」の割合が高くなっています。 ※本市の文化芸術環境への評価について、令和6年の名古屋市「名古屋市で活動する文化芸術団体等へのアンケート調査」を出典とするグラフを掲載 24ページ 本市在住・在勤又は本市で活動する芸術家等の社会連携事業の経験の有無について、「社会連携事業の経験がある」が45.5%、「社会連携事業の経験がないが、やってみたいと思う」が40.7%となっています。 ※芸術家等の社会連携事業の経験及び関心の有無について、令和6年のクリエイティブ・リンク・ナゴヤ「名古屋の芸術家等の活動状況に関するアンケート調査」を出典とするグラフを掲載 本市在住・在勤又は本市で活動する芸術家等が連携してみたい分野は、「教育」「まちづくり」の割合が高くなっています。 ※芸術家等が連携してみたい分野について、令和6年のクリエイティブ・リンク・ナゴヤ「名古屋の芸術家等の活動状況に関するアンケート調査」を出典とするグラフを掲載 25ページ ウ 文化芸術関連の大学・専門学校生の進路 本市には、芸術、メディア芸術、デザイン等の文化芸術関連の学部等を有する大学が13校(本市近郊を含めると24校)、専門学校が18校あり、地域の文化芸術分野における人材の育成と輩出の役割を担っています。 ※文化芸術関連の大学及び専門学校数について、令和7年の名古屋市データを出典とする表を掲載 脚注 大学数の名古屋市内/名古屋市近郊の区分については、大学本部の所在地による。 名古屋市近郊の大学とは名古屋市中心部からおおよそ20Km圏内の市町村に本部の所在地がある大学を示す。 文化芸術関連大学・専門学校等アンケート調査によると(13校18学部が回答)、卒業生の進路について、各項目について回答いただいた割合の平均値をみると、「一般企業・団体に就職」の割合が最も高く、次いで、「文化芸術関連の企業・団体等に就職」となっています。 ※文化芸術関連大学及び専門学校の卒業生の進路について、令和6年の名古屋市「文化芸術関連大学・専門学校等アンケート調査」を出典とする表を掲載 26ページ~27ページ (7)文化施設 ア 市内の文化施設 本市には、名古屋市、愛知県、民間等の所有する文化施設があります。本市の施設としては市民会館を始めとするホールなど、愛知県の施設としてはホールと美術館等の複合施設である愛知芸術文化センターなど、民間の施設としては御園座や名古屋四季劇場などがあります。 ※市内に立地するホール施設の数について、名古屋市、愛知県所有の施設は全国劇場・音楽堂等総合情報サイトを、民間の施設(300席以上)はウェブサイト検索による名古屋市独自調査を出典とする表を掲載 イ 本市が所有する文化施設 本市所有の文化施設について、公会堂(昭和5(1930)年)、市民会館(昭和47(1972)年)、博物館(昭和52(1977)年)、芸術創造センター(昭和58(1983)年)、美術館(昭和63(1988)年)など名古屋の文化芸術の拠点となる施設の整備を進めました。 また、演劇練習館(平成7(1995)年)、音楽プラザ(平成8(1996)年)、青少年文化センター(平成8(1996)年)、能楽堂(平成9(1997)年)など、創作活動や発表の場を整備しました。 地域文化振興の拠点として、平成3(1991)年の中村文化小劇場の開館以降、文化小劇場の整備を進め、平成28(2016)年の昭和文化小劇場で15館となり整備を完了しました。 文化施設の効果的な運営を図るために、平成16(2004)年度からは一部の施設において利用料金制を取り入れ、平成18(2006)年度より美術館・博物館等を除く文化施設において指定管理者制度を導入しました。 一方で、平成30(2018)年に名古屋ボストン美術館が閉館となり、本市では金山南ビル美術館棟の利活用として、令和3(2021)年2月より試行的に美術館・博物館用途での短期貸付による暫定利用を開始しました。 市民会館は開館から53年が経過し、施設の老朽化が進行していることから、その利用実態の分析や利用者等へのヒアリング、先進事例調査等を通じて、市民会館の抱える課題整理や、今後の市民会館に求められる役割・機能等の検討を行ってきました。令和元(2019)年度には、市民会館の整備検討懇談会を設置し、整備方針についての検討を進めてきました。令和3(2021)年度には「新たな劇場の基本構想」、令和6(2024)年度には「新たな劇場の基本計画」を策定し、新たな劇場の施設構成や規模及びその内容、管理運営に関する具体的な考え方等を示しています。 本市の文化施設については、設置管理条例等において、各施設の設置目的及び位置付けが定められています。また、有識者や実演家等によって構成された文化施設のあり方検討会議で示された「文化施設のあり方提言」(平成23(2011)年度)における方針を踏まえ、文化施設の機能を活かし、市民会館、公会堂を鑑賞型施設、芸術創造センター、青少年文化センターを創造発信型施設と位置付けています。 ※現在の本市の文化施設の位置付けについて、各施設ごとに、条例における設置目的及び位置付けを示した表を掲載 市民会館の条例における設置目的: 芸術文化の振興及び市民福祉の向上を図る 市民会館の位置付け:【鑑賞型施設】 ・優れた文化芸術公演の鑑賞の場 ・市民の文化活動、発表の場 ・地域の賑わいを創出する場 脚注 「新たな劇場の基本計画」において、新たな劇場の基本理念や基本方針等を策定 公会堂の条例における設置目的: 市民文化の向上及び住民福祉の増進を図る 公会堂の位置付け:【鑑賞型施設】 ・市民が利用する集会施設 ・文化芸術公演の鑑賞の場 脚注 平成29・30年度に改修を行い、鑑賞機能を拡充 芸術創造センターの条例における設置目的: 芸術文化の創造及び芸術文化活動の交流の場を市民に提供するとともに、芸術文化に関する情報資料の供用等を行うことにより、芸術文化の振興に寄与する 芸術創造センターの位置付け:【創造発信型施設】 ・名古屋らしい文化芸術の創造拠点 ・文化芸術活動の交流拠点 ・文化芸術関連の情報収集・発信拠点 ・文化芸術における専門人材の配置及び育成する場 青少年文化センターの条例における設置目的: 芸術文化の創造及び芸術文化活動の交流の場を市民に提供することにより、青少年の芸術文化の振興に寄与する 青少年文化センターの位置付け:【創造発信型施設】 ・青少年の文化芸術活動・交流拠点 ・青少年の文化芸術関連の情報収集・発信拠点 ・創造・発信機能を担う人材を育成する場 文化小劇場の条例における設置目的: 市民の身近な文化活動の場を提供することにより、市民文化の振興に寄与する 文化小劇場の位置付け: ・地域文化発信・創造の拠点 ・市民が身近に文化に触れる場 ・市民の参画と協働の場 ・地域に密着した事業を展開する場 ・各館が連携し市内全域に質の高い文化芸術事業を提供する場 能楽堂の条例における設置目的: 能楽その他の伝統芸能の振興を図るとともに、文化活動及び観光の推進に寄与する 能楽堂の位置付け: ・能楽その他伝統芸能を振興する拠点 ・文化活動及び観光の推進に寄与する場 市民ギャラリーの条例における設置目的: 美術作品等の発表の場を提供することにより、市民文化の振興に寄与する 市民ギャラリーの位置付け: ・美術作品等の発表の場 ・市民が身近に文化に触れる場 演劇練習館の条例における設置目的: 演劇その他の舞台芸術の練習の場を市民に提供することにより、芸術文化の振興に寄与する 演劇練習館の位置付け: ・演劇その他の舞台芸術の練習の場 音楽プラザの条例における設置目的: 音楽その他の舞台芸術の練習の場を市民に提供することにより、芸術文化の振興に寄与する 音楽プラザの位置付け: ・音楽その他の舞台芸術の練習の場 短歌会館の条例における設置目的: 市民文化の向上を図る 短歌会館の位置付け: ・市民等が利用する文化施設 東山荘の条例における設置目的: 市民の茶道、花道等の伝統的芸術の振興を図る 東山荘の位置付け: ・茶道・花道等の伝統的芸術の活動拠点 28ページ ウ ホール及び練習施設の他都市比較 各都市の1,000席以上の公共ホール数を比較すると、大阪府(大阪市)より多く、東京都と比べても同水準の数字となっています。 ※1,000席以上の公共ホール数について、令和7年の全国劇場・音楽堂等総合情報サイトを出典とする表を掲載 脚注 同一施設に1,000席以上のホールが複数ある場合は、ホールごとにカウント ※参考として、1,000席以上の民間ホール数について、令和7年のウェブサイト検索による名古屋市独自調査を出典とする表を掲載 脚注 同一施設に 1,000席以上のホールが複数ある場合は、ホールごとにカウント また、公共の練習施設の数や練習室等が付随したホール等の数に関しては、五大市及び福岡市で比較すると名古屋市は最も多いということが分かります。 ※公共の練習施設の部屋数等について、令和7年の各都市照会による名古屋市独自調査を出典とする表を掲載