3ページ 第1章 策定の趣旨 1 基本的な考え方 名古屋において長年にわたり受け継がれてきた独自の文化芸術は、社会に活力を生み出し、さらに文化芸術それ自体に活力をもたらしてきました。今後も名古屋が都市の求心力を高めながら、持続的に発展していくためには、文化芸術により生み出されるさまざまな価値の重要性を十分に認識して、この文化芸術と社会との相互作用を維持していく必要があります。 文化芸術のたゆまぬ創造を促し、誰もが等しく文化芸術を享受できるような環境の整備を図るとともに、文化芸術の多様な価値を好循環させ、名古屋を「魅力と活力にあふれるまち」にしていきます。 2 計画の位置付け 本市は、令和3(2021)年度に、5年間の計画期間(令和3(2021)~令和7(2025)年度)で、文化芸術推進の基本的な考え方等をまとめた「名古屋市文化芸術推進計画2025」(以下、文化芸術推進計画2025という。)を策定し、文化芸術推進施策を実施してきました。 また、文化芸術の振興及び文化芸術により生み出される価値の関連分野への活用を推進するために、名古屋市文化芸術推進基本条例(以下、文化芸術推進基本条例という。)を制定し、令和6(2024)年4月1日に施行しました。文化芸術推進基本条例の第7条では、「推進施策を総合的かつ計画的に実施するため、文化芸術の推進に関する基本的な計画を定めなければならない。」としています。 このため、これまでの本市の施策を振り返り、国の文化芸術施策の動向や文化芸術を取り巻く環境に対応するとともに、名古屋の文化芸術の底上げとその裾野を拡大しながら、より一層名古屋の文化芸術を推進していくため、次期計画として「名古屋市文化芸術推進計画2030」(以下、文化芸術推進計画2030という。)を策定することとしました。 この計画は、本市の総合計画である「名古屋市総合計画2028」で定められた、めざす都市像5「魅力と活力にあふれ、世界から人や企業をひきつける、開かれた都市」の施策38「歴史・文化に根ざした魅力向上を図ります」に基づく文化芸術に関する行政計画であり、文化芸術と密接な関係のある観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の各分野とも関連しています。  なお、本計画は、文化芸術推進基本条例に基づき設置された名古屋市文化芸術推進評議会(以下、文化芸術推進評議会という。)の答申を踏まえ策定しています。 4ページ 計画の位置付けのイメージ図を掲載 文化芸術推進基本条例(抜粋) (推進計画) 第7条 市長は、推進施策を総合的かつ計画的に実施するため、文化芸術の推進に関する基本的な計画(以下「推進計画」という。)を定めなければならない。 2 市長は、推進計画を定めるに当たっては、あらかじめ名古屋市文化芸術推進評議会の意見を聴かなければならない。 3 市長は、推進計画を定めるに当たっては、市民等の意見を反映することができるように適切な措置を講ずるものとする。 4 市長は、推進計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 5 前3項の規定は、推進計画の変更について準用する。 5ページから6ページ 3 計画期間 計画期間は、本市の文化芸術推進基本条例に基づき、長期的な展望を踏まえつつ、令和8(2026)年度から令和12(2030)年度までの5年間とします。なお、本計画は施策の進捗状況を踏まえ、適宜内容を見直しながら進めます。 4 この計画における文化芸術の定義 この計画において「文化芸術」とは、文化芸術基本法における文化芸術の定義「芸術、メディア芸術、伝統芸能、芸能、生活文化・国民娯楽及び出版物、文化財」を踏まえたものとしています。なお、文化施設など一般的に利用されている熟語は「文化」を用いています。 【参考】文化芸術基本法に記載されている文化芸術(抜粋) 芸術分野の例:文学、音楽、美術、写真、演劇、舞踊、その他の芸術 メディア芸術分野の例:映画、漫画、アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術 伝統芸能分野の例:雅楽、能楽、文楽、歌舞伎、組踊、その他の我が国古来の伝統的な芸能 芸能分野の例:講談、落語、浪曲、漫談、漫才、歌唱、その他の芸能 生活文化・国民娯楽及び出版物分野の例:生活文化(茶道、華道、書道、食文化、その他の生活に係る文化)、国民娯楽(囲碁、将棋、その他の国民的娯楽)並びに出版物及びレコード等 文化財分野の例:有形及び無形の文化財並びにその保存技術 5 期待される各主体の役割 (1)市民 市民は、文化芸術活動の主役で、担い手で、また生活者でもあります。ひとりひとりの生活の中で文化芸術に親しみ、磨き育て、活かし、支えていくことで、シビックプライドを醸成しながら、文化芸術の発展を図ることが期待されます。 (2)文化芸術関係者 文化芸術に関わる芸術家、クリエイター、伝統芸能の伝承者、文化芸術団体、研究者等は、文化芸術を磨き育て、活かしていく役割を担っています。また、文化施設の管理・運営者、技術者等が文化芸術活動を支えながら、自発的に新たな事業を企画し、実現していくことが期待されます。 さまざまな文化芸術関係者において、文化芸術活動が文化芸術の推進に資するものであることを認識し、自主的かつ主体的に、文化芸術活動の充実を図ることが期待されます。 (3)民間事業者 民間のホール、劇場、映画館、ギャラリー等は名古屋の文化芸術を支える大切な基盤となっています。また、企業における社会貢献や地域貢献の観点での文化芸術活動への支援は、文化芸術の推進において大事な役割を担っています。 事業者は各々の実情を踏まえつつ、事業活動を通じて、文化芸術の推進に貢献することが期待されます。 (4)名古屋市 文化芸術の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、実施します。 名古屋アーツカウンシルを軸に、公益財団法人名古屋市文化振興事業団(以下、名古屋市文化振興事業団)、公益財団法人名古屋フィルハーモニー交響楽団(以下、名古屋フィルハーモニー交響楽団)、クリエイティブ・リンク・ナゴヤと連携しながら、さまざまな分野において文化芸術を活用することで、地域の活力を生み出します。また、美術館等の教育文化施設を始めとする本市各部所及び国や他の地方公共団体、市民、文化芸術関係者、民間事業者との連携に努めます。 ■コラム:「アーツカウンシル」とは? 一般に「アーツカウンシル」とは、文化芸術に対する助成を基軸に、行政と一定の距離を保ちながら、公正で効率的な文化芸術支援をしていくための専門機関のことを指します。 アーツカウンシルの先駆けはイギリスの「アーツカウンシル・イングランド(ACE)」であり、文化芸術団体あるいはプロジェクトに助成金を支給するほか、芸術教育、芸術経営、スポンサー探し、企業とのパートナーシップ等の支援を担う公的機関です。ACEは、政府と芸術団体等が一定の適切な距離を保つ「アームズ・レングスの原則」に基づき、政府から独立して意思決定を行うことができる仕組みとなっています。 我が国においても、国のアーツカウンシル機能を独立行政法人日本芸術文化振興会が担っているほか、地方自治体が地域アーツカウンシルを設置する例も増えてきています。地域アーツカウンシルの組織形態や規模、活動内容や設置方法はさまざまですが、概ね専門人材による助言、審査、評価、調査研究等の機能を有しており、日本の「アーツカウンシル・ネットワーク」には令和7(2025)年6月現在、20団体が加盟しています。 脚注 独立行政法人日本芸術文化振興会とは、我が国の伝統芸能及び現代舞台芸術の中核的拠点、文化芸術活動に対する公的支援の役割を担う機関。主な事業として、文化芸術活動に対する援助、伝統芸能の公開及び現代舞台芸術の公演、伝統芸能の伝承者の養成及び現代舞台芸術の実演家その他の関係者の研修、伝統芸能及び現代舞台芸術に関する調査研究の実施並びに資料の収集及び活用、劇場施設の貸与、日本博の運営・実施がある。