15ページ 第2期名古屋市成年後見制度利用促進計画 第1章 計画策定にあたって 1 計画策定の趣旨 成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより、判断能力が十分でない人の権利を守り、生活や財産を法律的に支援する制度です。 本市では、令和2年3月に名古屋市成年後見制度利用促進計画を策定し、成年後見あんしんセンターを権利擁護支援の地域連携ネットワークの中核機関に位置づけ、成年後見制度の利用促進に取り組んできました。 一方、認知症高齢者などの増加に伴い、権利擁護支援のニーズも増加する見込みであり、今後は、日常生活自立支援事業などの既存の支援の充実や、新たな支援策の検討など、成年後見制度を含む権利擁護支援を総合的に充実させていくことが必要です。 これらを踏まえ、支援が必要な人を適切な権利擁護支援につなぎ、その人の権利が守られる地域づくりを目指し、第2期名古屋市成年後見制度利用促進計画を策定するものです。 2 計画の位置づけ 本計画は成年後見制度の利用の促進に関する法律第14条に基づく本市の成年後見制度の利用促進に関する基本的な計画です。また、「なごやか地域福祉2029(第4期名古屋市地域福祉計画・第7次名古屋市社会福祉協議会地域福祉推進計画)」との整合性を図り、連携した取り組みを進めます。 3 計画期間 令和7年度から令和11年度までの5年間とします。 4 計画の策定体制 本計画は、法律・福祉の専門職団体、相談支援機関、家族会などの代表者で構成する、「成年後見制度利用促進に関する懇談会」の意見などを踏まえ策定しました。   16ページ 第2章 現状と課題 1 本市における現在の取り組み (1)成年後見あんしんセンターの運営(広報・啓発、専門相談、後見人への支援など) (2)成年後見制度利用支援事業の実施(市長申立、後見報酬などの助成) (3)障害者・高齢者権利擁護センターの運営(金銭管理サービスなど) (4)あんしんエンディングサポート事業の実施(生前の見守り・葬儀納骨など) (5)相談支援機関による権利擁護支援の実施(相談対応) 2 権利擁護支援の充実に向けた課題 ○支援の必要な人を迅速かつ適切に成年後見制度につなぐための支援 後見人が選任されるまでの時間の短縮に向けた取り組みが必要 本人と後見人候補者による申立て前の面談の実施など、本人のニーズに合った後見人候補者を推薦するための取り組みが必要 ○成年後見制度の利用者の増加を見据えた後見人の確保 多様な専門職や市民後見人、法人後見実施団体への受任拡大などにより、後見人の担い手を確保することが必要 国の動向を注視しつつ、後見人への報酬助成の拡充に向けた検討が必要 ○安心して成年後見制度を利用していただくための相談支援の強化 後見人への苦情などに関する対応の強化が必要 福祉・医療に関する調整などが必要な困難ケースについて、後見人への相談支援の強化が必要 ○総合的な権利擁護支援策の充実 【日常生活自立支援事業】 障害者・高齢者権利擁護センターによる金銭管理サービスなどを利用するまでの待機期間の短縮が必要 サービス内容を含め、センターの広報・啓発が必要 【意思決定支援】 ・市民向けの広報啓発や支援者向け研修の開催など、意思決定支援を推進する取り組みが必要 【事前に備える制度の利用促進】 ・任意後見制度や民事信託に関する市民向け説明会の開催など、事前に備える制度の適切な利用の促進に向けた取り組みが必要 【身寄りのない人の権利擁護支援】 ・身寄りのない人が求める支援ニーズについて、支援策の検討が必要 17ページ 第3章 計画が目指すもの 1 基本理念 人権が尊重され、誰もがいきいきと暮らし、活躍できる都市、名古屋を目指して 2 基本目標 認知症、知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人が必要な支援を受けながら、一人ひとりの意思が尊重され、その意思に基づき、自分らしく生きていくために、地域における連携した支援の仕組みづくりを推進します。 第4章 取り組みの展開 権利擁護支援が必要な人の意思が尊重され、成年後見制度を自分らしい生活を実現するための制度として利用できるよう、引き続き、地域連携ネットワークによる権利擁護支援の推進を図るとともに、総合的な権利擁護支援策の充実を図ります。 1 地域連携ネットワークによる権利擁護支援の推進 「権利擁護支援の必要な人の発見・支援」、「早期の段階からの相談対応」、「意思決定支援・身上保護を重視した成年後見制度の運用」という3つの役割を念頭に、地域のチーム、中核機関、法律・福祉の専門職団体や相談支援機関などで構成する協議会が有機的に連携し、権利擁護が必要な人を地域全体で支援します。 18ページ [成年後見あんしんセンターの運営] ①広報・啓発 ・市民向け広報・啓発  ・地域での早期発見のための広報・啓発 ②相談受付・アセスメント・支援策の検討 ・個別相談  ・地域の相談支援機関及びチーム会議に対するバックアップ支援 ③成年後見制度の利用促進 ・迅速かつ適切に成年後見制度につなぐための支援 ・利用者のニーズに合った候補者推薦 ・後見人の確保と支援 ・日常生活自立支援事業など関連制度との連携 ・成年後見制度利用支援事業の実施 ④後見人への支援 ・研修会、相談会の開催 ・個別相談 ・個別支援 ・市民後見人への支援・監督 ・法人後見団体への支援 [協議会の運営] ①中核機関の取り組みや課題などに対する協議 ・多様な後見人候補者を推薦する仕組みづくり ・各専門職団体の協力体制の整備 ・権利擁護支援に関する地域課題の検討 ②家庭裁判所との情報交換・調整 2 総合的な権利擁護支援策の充実 認知症高齢者などの増加に伴う、権利擁護支援ニーズの多様化に対応するため、日常生活自立支援事業などの既存の支援の充実や、新たな支援策の検討など、権利擁護支援策を総合的に充実させていきます。 ①日常生活自立支援事業の迅速かつ適切な提供 ・障害者・高齢者権利擁護センターの待機期間の短縮   ・広報・啓発 ②意思決定支援の推進 ・市民向け広報・啓発 ・支援者向け研修の開催 ③事前に備える制度の適切な利用の促進 ・任意後見制度の市民向け広報・啓発 ・民間企業と連携した民事信託の講演会やセミナーの開催 ④身寄りのない人の権利擁護支援 ・身寄りのない人が求める支援ニーズについて、行政が支援すべき対象者や支援方法などの検討 19ページ 地域連携ネットワークのイメージ 地域のチームが権利擁護支援の課題について対応できるよう、成年後見あんしんセンターによる専門的支援を実施 第5章 計画の進行管理と評価 本計画の進行管理・評価は、「成年後見制度利用促進に関する懇談会」から意見を聴取することにより行います。   20ページ (参考)成年後見制度の概要 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。 法定後見制度は、本人の判断能力が不十分となった後に、家庭裁判所によって後見人が選ばれる制度です。本人の判断能力に応じて、「補助」、「保佐」、「後見」の3つの類型があります。 補助 判断能力が不十分な人  保佐 判断能力が著しく不十分な人  後見 常に判断能力を欠いている人 後見人は、本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に代わり、財産を管理したり必要な契約を結んだりすることによって、本人を保護・支援します。 後見人の職務 財産管理 本人の財産の管理に関する事務 身上保護 本人の生活、療養看護に関する事務 任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、あらかじめ本人が選んだ人(任意後見人)に判断能力が低下した場合に代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度です。