名古屋市人権に関する条例(仮称)骨子案 1ページ (前文) 世界人権宣言では、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」とうたわれています。 しかし、差別や偏見は今もなお存在し、これらは人々に精神的苦痛や社会的孤立をもたらし、時には生命を脅かしています。 さらに、現代社会においては、人権をめぐる問題が多様化、複雑化、複合化しています。 人権問題は、個人の考え方や行動だけが原因なのではなく、社会の仕組みやルールの中にある差別や排除によって起こることもあります。 差別、暴力、虐待その他の人権侵害行為は決して許されるものではありません。 私たち一人ひとりが、互いの多様な個性を認め合い、互いの人権を尊重するために主体的に行動することが必要です。 人権尊重の理念が人権文化として日常生活のあらゆる場面において定着した、誰もが人権を保障され、差別と偏見のないまちの実現をめざすことを決意し、この条例を制定します。 1 目的 この条例は、社会構造による差別を含むあらゆる差別の解消をはじめとする人権尊重のまちづくりに関し、基本理念を定め、市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、差別の解消に向けた体制整備及び人権が尊重されるまちづくりを推進するための施策(以下「人権施策」という。)の基本となる事項を定めることにより、誰もが人権を保障され、差別と偏見のないまちの実現をめざすことを目的とする。 2 定義 (1)人種等の属性 人種、国籍、民族、言語、宗教、政治的意見その他の意見、年齢、性別、性的指向、性自認、障害、感染症等の疾病、外見、職業、社会的身分、被差別部落の出身であることその他の属性をいう。 (2)不当な差別的取扱い 正当な理由なく、人種等の属性を理由にサービスや機会の提供を拒否したり、不利な条件を付けて権利や利益を侵害すること。 (3)不当な差別的言動 人種等の属性を理由に、差別的意識を助長、誘発する目的で危害を加えると公然と脅したり、強く侮辱したりして、その人たちを社会から排除するよう扇動する言動。 2ページ 3 基本理念 次に掲げる基本理念に基づき、誰もが人権を保障され、差別と偏見のないまちづくりを推進する。 (1)誰もが生まれながらに等しく基本的人権を有する個人として多様性が認められ、大切にされること。 (2)多様な個性や能力が認められ、平等な機会(積極的改善措置を含む。)が与えられることで、誰もが活躍できる発展的な組織及び社会をつくること。 (3)誰もが同じように生活を営む上で障壁となるような制度、慣行その他一切を除去すること。 (4)差別の解消にあたっては、誰もが意図せず差別的な結果を生じさせうることを認識し、対話による相互理解を基本とすること。 (5)複数の属性があることで特に困難な状況にある場合に、適切な配慮がなされること。 (6)市、事業者及び市民が一体となって人権尊重のまちづくりを行うこと。 4 責務 (1)市及び市職員の責務 ア 基本理念にのっとり、人権尊重の視点に立ったあらゆる事業や施策を実施する。 イ 常に人権を尊重し、公共の福祉の担い手として、公正な判断と誠実な職務を遂行するとともに、条例の目的を遂行するために率先して行動する。 ウ 職員の人権意識の向上を図る。 エ 複数の属性が重なる問題に対し、関係機関や施策が連携して対応する。 オ 市が設置する公の施設における不当な差別的言動の防止に努める。 カ 市民の人権に対する主体的な考え、学び、行動を尊重する。 キ 家庭、地域、学校、職場その他の社会のあらゆる場における市民の自主的な市民活動や社会参加を支援する。 ク 必要な財政上の措置を行う。 (2)事業者の責務 ア 基本理念にのっとり、人権尊重のまちづくりの担い手として認識する。 イ 従業員等の人権意識の向上を図る。 ウ 従業員等の人権を尊重する。 エ 事業活動において人権尊重のまちづくりへの寄与に努める。 オ 市が実施する人権施策への協力に努める。 (3)市民の責務 ア 基本理念にのっとり、家庭、地域、学校、職場その他の社会のあらゆる場における人権尊重のまちづくりへの寄与に努める。 イ 市が実施する人権施策への協力に努める。 3ページ 5 審議会 市長の附属機関として、人権施策の推進に関する重要事項について調査審議を行う審議会を設置する。 6 基本方針 人権施策を総合的、計画的に推進するために、基本方針を策定する。 7 差別等の禁止 (1)以下の各場面において不当な差別的取扱いを禁止する。 ①医療 ②教育、療育、保育 ③雇用 ④福祉サービス  ⑤商品販売、サービス提供  ⑥交通 ⑦不動産取引 ⑧婚姻(当事者間の自由意思による婚姻成立の侵害) (2)個人の秘密を本人の同意なく暴露したり、公表をする又はしない旨を強要することを禁止する。 (3)いじめ、虐待、ハラスメント、誹謗中傷その他の人権侵害行為を禁止する。 (4)差別を助長、誘発する目的での調査、情報の収集又は提供とみなされる行為を禁止する。禁止する行為については、事前に審議会で意見聴取を行った上で、具体的に規則に定める。 8 相談体制 (1)市は、人権侵害行為に関する相談(以下「人権相談」という。)に的確に対応するため、相談機関を設置する。 (2)人権侵害行為を受けた者等(以下「相談者」という。)は相談機関に人権相談を行うことができる。 (3)相談機関は、人権相談を受けた場合には、必要に応じて、事実確認を行い次に掲げる対応を行う。 ア 相談者への説明又は助言 イ 相談者と相談事案の相手方との調整 ウ 関係機関への通報、通知 (4)市は、人権相談に的確に対応するために、必要な知識、技術を有する人材を育成する。 (5)相談員は、その職務において人権侵害行為が行われていると思われるときは、調査、調整を行うことができる(原則、人権侵害行為を受けた者の同意を必要とする。)。 (6)市の機関は、相談機関と積極的に協力し連携を行う。 9 紛争解決 (1)調整委員会の設置 4ページ 人種等の属性を理由とした差別に係る相談を解決するために、市長の附属機関として、調整委員会を設置する。 (2)助言又はあっせん ア 不当な差別的取扱いを受けた者等(以下「申立人」という。)は、相談機関が調整を行っても解決しないときは、調整委員会へ必要な助言又はあっせんを行うよう申立てをすることができる(ただし、他の救済制度の対象となる場合等を除く。)。 イ 調整委員会は、申立人及び相談事案の相手方等に対し、当該申立てに係る事実について必要な調査を行い、適当でないと認める場合等を除き、助言又はあっせんを行う。なお、申立人及び相談事案の相手方等に対し、説明や資料の提出等を求めることができる。 (3)勧告 調整委員会は、あっせん案を受諾しない相談事案の相手方等に対して勧告を行うことができる。 (4)報告 ア 調整委員会は、市の機関に対して勧告をしたときは、是正の措置等について報告を求める。 イ 報告を求められた市の機関は、60日以内に、是正の措置等について、理由を付して報告しなければならない。 (5)公表 調整委員会は、正当な理由なく、当該勧告に従わないときは、あらかじめその者に意見を述べる機会を与えた上で、その旨を公表することができる。 (6)市長への意見提出 調整委員会は、市の施策について、人権を侵害するおそれがあると認めるときは、市長に対し、意見書を提出することができる。 (7)調整委員会の独立性 市の機関は、調整委員会の職務の遂行に関し、独立性を尊重するとともに、積極的に協力しなければならない。 10 基本施策 (1)公共の場所における不当な差別的言動への対応 ア 市長は、公共の場所において、拡声器(携帯用のものを含む。)の使用やビラ等の配布、看板等の掲示により、不当な差別的言動が行われたと認めるときは、その概要を公表する。 イ 市長は、不当な差別的言動を行った者が再度行うおそれがある場合は、地域や期間を定め、同じ内容の差別的言動を行い、又は行わせてはならないことを勧告することができる。 ウ 市長は、勧告に従わなかった場合は、再度の勧告を同様に行うことができる。 5ページ エ 市長は、再度の勧告に従わなかった場合は、あらかじめその者に意見を述べる機会を与えた上で、勧告の概要を公表することができる。 オ 市長はアからエまでの対応を行うにあたっては、事前に調整委員会で意見聴取を行う。 (2)インターネット上における人権侵害行為への対応 ア 市は、インターネットの適切な利用に関するリテラシーの向上を図るための教育及び啓発を行う。 イ 市は、インターネット上における人権を侵害する書き込み等の拡散を防止するため、モニタリング(人権侵害行為に該当する書き込み等の監視)を行う。 ウ 市は、市民や市内の特定の地域等に関する人権侵害行為に該当する書き込み等を確認した場合は、その内容が拡散されることを防止する。 エ 市長は、人権侵害行為に該当する書き込み等が継続して行われ、発信者が明らかな場合は、必要な措置を行うよう勧告することができる。 オ 市長は、インターネット上の不当な差別的言動が、虚偽の事実に基づき拡散され、かつ具体的な人権侵害行為を助長、誘発するおそれが高いときは声明を出すことができる。 カ 市長は、ウからオまでの対応を行うにあたっては、事前に調整委員会で意見聴取を行う。 (3)人権教育・啓発 ア 市は、全ての市民が、人種等の属性にかかわらず、一人ひとりの個性や価値観が尊重され、共に支え合い活躍できる、社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)による共生社会の実現に向けて、家庭、地域、学校、職場その他の様々な場を通じて、人権教育及び人権啓発を実施するとともに、必要な環境整備に努める。 イ 市は、発達段階やライフステージに応じて、人権に対する理解を深め体得できる多様な機会の提供、効果的な手法の採用及び自発性の促進を行う。 ウ 市は、人権に関する市民等の関心及び理解を深めるため、人権に関する条約等の趣旨及び内容に関する周知及び普及啓発を行う。 (4)専門的知識・技術の向上支援 市は、教育、福祉、保健医療その他人権分野に関わる全ての職種の者に、専門的知識及び技術の資質向上を図るための支援を行う。 (5)事業者・民間団体との連携・支援 市は、人権問題の解決に取り組む事業者及び民間の団体と連携、協力及び支援を行う。 (6)情報の質の保障 ア 市は、人種等の属性に係る固定的な考え方に基づく偏見及び差別的意識を助長する表現を使用しない。 イ 市は、人種等の属性にかかわらず、誰もが円滑に情報を取得、利用できるよう 6ページ 必要な措置を行う。 11 附則 施行後3年を経過した時点において、その施行状況を踏まえ、審議会において実効性等について検討を行い、その結果に基づき、必要な見直しを行う(ただし、必要があれば、その期間の経過を待たずに検討する。)。