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第5章 これからの「まち協」

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このページを印刷する最終更新日:2015年8月31日

ページID:72353

第5章 これからの「まち協」

前回のあらすじ

第4章では、愛知万博への出展に向けた古橋さんの挑戦と、そこで感じた課題について話を深く掘り下げました。それを踏まえたうえで、古橋さんは現在の「まち協」での取り組みをどう捉えているのでしょうか?

さあ、最終章のはじまりです!

 

ポットラック・スクールでの交流会の様子

(ポットラック・スクールでの交流会の様子。)

本編

司会:

これまでの体験の上に、いまのまち協事業があることもよくわかりました。

古橋:

僕はこれといった得意分野がないので、常に必死にやるしかないんです。もってるものを総動員して対処する。あの頃も、今もそのスタンスややり方はあまり変わっていないですね。ただ、今のこのまち協はかなり特殊ですので、この7年間で新しく学んだことはかなり多いと思います。

司会:

まち協に来て苦労したことはありますか。

古橋:

はじめは行政との関わり方が分かりませんでしたね。行政の論理はかなり特殊ですが、それをつくり出している責任の一端は、私たち市民にあることもよくわかりました。そういう仕組みを理解した上で、どう動くのかが重要ですよね。理解することと実践できることの間には距離もありますし、かなり苦労しました。それは現在進行形でもあります。

司会:

発見したこととかはありますか?

古橋:

最近、まちづくりの分野では、いやまちづくりだけではないのかもしれませんが、絆とかネットワークという横軸の繋がりが重視されるようになっていますね。もちろん、それはそれで大変重要なことだと思うんですが、僕としては、アイデンティティというか歴史的な縦軸の繋がりが重要だと考えていて、この現場でも港まちの歴史性みたいなことを掘り下げていく中で、コンセプトを再発見してきたように思います。

司会:

縦軸?歴史?どういうことでしょう?

古橋:

この港まちのことでいえば、かつてこの港まちには、多くの港湾労働者が集まり、それを支える商売を通してまちの人々の生活が成り立っていた時代がありました。また、これは今でもそうですが、この名古屋港を通る物資が、多くの人々の生活を支えている。そんな特長を、歴史的な観点から眺め直してみると、名古屋の港まちが、そもそも「みんなの港まち」だったし、今もそうなんだという認識が浮かび上がってくるのです。

横浜港や神戸港と比べると、名古屋港は何もないと思われますが、可視化されてないだけで、本当はおもしろい資源がたくさんありますし、それをこれから再発見していくのだとすれば、ポテンシャルも高いといえます。

私たちの事業のコンセプトコピーを「なごやのみ(ん)なとまち」としているのは、名古屋の港まちを「みんなの港まち」としてしっかり可視化し、より多くの人々に愛着がもたれるまちにしていくことです。しかし、そのゴールへの道筋ややり方は、いろいろあると思いますので、ある程度の自由度を担保したい。公共性や公共空間をどうやってみんなでデザインしていくのか。その辺に、この事業の難しさとおもしろさがあると思います。

「なごやのみ(ん)なとまち」なんて、まるで駄洒落ですが、シンプルでわかりやすいこと、鼻で笑えるくらいの脱力感が大事だと思っています。長く続けていかなければなりませんから、ガチガチなのは続きませんよ。

 

ポットラック・スクールにおけるゲストトーク

(ポットラック・スクールにおけるゲストトークの様子。)

司会:

なるほど。まち協の事業は「みんなとまち」に収れんするわけですね。しっかりしたビジョンもありますし、行政からも信用されてきてるという印象ですよ。今後の展望についても聞かせてください。

古橋:

8年目になるんですけど、仮に10年ひと現場とするならば、これからの数年が大切だなぁと考えています。

司会:

どんなことをやっていきたいですか。

古橋:

今年は、地元の西築地小学校が100周年を迎えており、地域としても一つの節目を迎えています。港まちの歴史を振り返り、そのアイデンティティとか地域の誇りとか言うものをもう一度一人ひとりが考えられる絶好の機会だと思います。そのプロセスの中で、「なごやのみ(ん)なとまち」という考え方が、何かキーとなる役割を果たせるのかもしれないと期待しています。

また、本質的な部分を問い直すという意味では、まち協でもアートの力を取り入れる事業をスタートしていきます。今、世界では、人間の創造性に着目した創造都市論という考え方に注目が集まっていますが、実は名古屋もそうした創造都市の世界的なネットワークに所属する都市なんです。アートは、デザインや建築などと並ぶクリエイティブな分野の一つと捉えられますが、同時にアートの本質は、それらの分野全体に影響を与える根源的な影響力を有しています。アートの力を取り入れて、この港まちから創造都市名古屋を支えるような取り組みが展開できたら素晴らしいですね。

司会:

またアイデンティティの話が出てきましたね。

古橋:

そうですね。片仮名はいけませんね(笑)

でも、アイデンティティという言葉は、学生時代に留学した頃からずっと考え続けている言葉でもあります。自分は何に所属していいて、誰の何のために生きていくのか。少し大げさなフレーズに聞こえますが、そういうことに全く無頓着なのってけっこう問題だと思うんです。アイデンティティなんて言い方でなくてもかまいませんが、「おまえ何のために生きてんの?」みたいなことが、冗談混じりに語り合えるような地域づくりが大切だと思うんですね。

あと、あれは帰国後だったと思いますが、日本文化についていろいろ興味を持って調べていたときに、心理療法家の故河合隼雄さんの著書に出会いまして、アイデンティティという用語についてはそこでも大きな影響を受けているように思います。

司会:

心理学ですか?

古橋:

心理学は、学問としても歴史がありますし、様々な分野に通じるところがあると思いますが、まちづくりにもかなり参考になるところがあります。まちの在り方とか、まちづくりに人づくりがなぜ大切なのかとか、参加やワークショップ、さらにはファシリテーションという専門的な技術を考えるときにも、心理学はかなり参考になります。もちろん僕はその専門家ではないので、本でかじっているだけですがね。

司会:

おもしろいですね。もう少しいいですか?

古橋:

いやいや、専門家ではないので、あんまり突っ込まれると困ります(笑)。例えば、心理カウンセリングというのは、悩みを抱える患者がカウンセラーを訪ねてきて話を聞いてもらうんですが、カウンセラーが解決策を与えるのではなく、患者と一緒になって考えていく作業だそうです。まちづくりを専門にしていると「あなたは何をしてくれるの?」という視線を感じることが多いですが、僕らは何かをしてあげる専門家ではありませんよね。まさに一緒になって奮闘しますが、いつもたいしたことはできないなぁという自覚があります。カウンセラーとまちづくりは、専門性は全く異なりますが、態度そのものには通じるところがあるように思います。

 

みなとまちガーデンの写真

(地域のみんなで身近な緑をつくる「みなとまちガーデンプロジェクト」の様子。)

司会:

なるほど。しかし、まちづくりと心理学がつながるとは思いませんでした(笑)

おもしろいですね。では、最後に一言お願いします。

古橋:

そうですねぇ。「み(ん)なとまち」は、港まちのまちづくりでしかできない試みではありますが、実は「みんなとまちをつくる」ことは、どんな地域にとってもそこに人がいる以上は成立する考え方だと思います。だからこそ、僕らの取り組みをその先駆けとして意義あるものにしていかなくてはと思っています。これからも港まちを盛り上げて、日本中に知られる存在になって、「名古屋の港まち、いいよね。」、「名古屋のあいつら元気だよね。」と言われるようになったら嬉しいですよね。

司会:

ありがとうございました。

 

目次

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