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ウエストナイル熱、ウエストナイル脳炎

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このページを印刷する最終更新日:2018年4月4日

ページID:13275

ページの概要:ウエストナイル熱、ウエストナイル脳炎について

ウエストナイル熱とはどんな病気?

蚊を介してヒトに感染します

 この病気は「ウエストナイルウイルス」という病原体によって引き起こされます。1930年代に病原体がはじめて確認されたアフリカの地方の名から、この名前がついています。ウエストナイルウイルスの感染の特徴は、蚊を媒介としてヒトに感染することです。自然界においてこのウイルスは、多くの種類の野鳥とその血を吸う蚊との間で感染サイクルが成立しています。一方、蚊は鳥だけでなくヒトや家畜の血も吸います。そのためウエストナイルウイルスをもった蚊に刺されることでヒトが感染するわけです。病原体的にも仕組み的にも、「日本脳炎」とよく似た感染症です。
 このウイルスに感染しても約8割の方は症状が出ないまま治癒します(症状が出るのは感染者の約2割です)。輸血や臓器移植など特殊な例を除いて、ヒトからヒトへの感染は起こりません。しかし一旦発病すると、まれに重い脳炎を起こすことがあり、特に高齢者の方は注意が必要です。現在のところ、日本での感染の報告はありません。

インフルエンザに似た症状です

 ヒトにおける潜伏期間は3日から15日程度です。発症すると、突然の発熱(高熱)、発疹、頭痛、筋肉痛、食欲不振など、インフルエンザに似た症状が見られます。多くの場合予後は良好で1週間程度で回復するのですが、麻痺、痙攣、昏睡などを伴った髄膜炎・脳炎症状を呈して重症化する場合があります。このような重い状態に至るのは、感染者の約1%で、特に高齢者に多く見られます。ウエストナイル脳炎になると命を落とす危険性が出てきます。

まだ「特効薬」はありません

 発症した方に用いる治療薬(抗ウイルス剤)は、残念ながらまだありません。それぞれの症状を緩和するための「対症療法」が行われることになります。ワクチンについてもまだ開発段階であり、日本脳炎ワクチンが有効との報告も一部ありますが、今後の研究成果が待たれるところです。ウイルスを蚊が媒介することから、アメリカやヨーロッパでは夏場の感染が多いようです(アメリカでは8から10月に多くの患者が報告されています)。今後は日本も無関係とは言えません。日頃から蚊を増やさないこと、蚊に刺されないことに心がける必要があります。

世界における流行状況

世界の各地で流行が見られます

 1937年にウガンダのウエストナイル地方で初めて確認された後、アフリカ、西アジア、中東、ヨーロッパ等で感染者が確認されていました。

 1999年にアメリカ合衆国ニューヨーク市周辺での流行が報告されてから大きな注目を集めるようになり、毎年蚊の活動が活発になる7月から10月頃にかけて主に米国、カナダなど北米地域でウエストナイルウイルス感染者が報告されています。

過去の流行地域は次のとおりです。

1994年 アルジェリア
1996年 ルーマニア
1997年 イタリア、チェコスロバキア
1998年 コンゴ共和国
1999年 ロシア
2000年 イスラエル、フランス
2003年 カナダ、アメリカ合衆国

アメリカ合衆国の感染者情報

 1999年に初めて患者が発生し、62人がウエストナイル熱と診断され、その内7人が死亡しました。

 2000年には21人が発病し、地域的にも広がりを見せはじめました。ウエストナイルウイルスが越冬したとの報告もされています。

 2001年になるとウエストナイル熱患者は66人で、地域は10州と広がり、フロリダ、カリブ海諸国にも及びました。

 2002年になると発生地域は全米に拡大し、アメリカ合衆国の患者数は4,156人、死亡者数は284人が報告されました。

 2003年には46州で発生し患者数9,862人、死亡者数264人と感染被害は最大規模になりました。このうちコロラド州で2,947人、ネブラスカ州で1,942人、サウスダコタ州で1,039人、テキサス州で720人、ノースダコタ州で617人の患者が報告されています。

 2004年には41州で発生し患者数2,539人、死亡者数100人が報告されています。

 2005年には42州で発生し患者数3,000人、死亡者数119人が報告されています。このうちカリフォルニア州で880人、イリノイ州で252人、サウスダコタ州で229人の患者が報告されています。またアリゾナ州、コロラド州、ルイジアナ州、ネブラスカ州、テキサス州の患者報告数は100人を超えています。

 2006年には44州で発生し患者数4,269人、死亡者数177人が報告されています。このうちアイダホ州996人をはじめ、カリフォルニア州、コロラド州、イリノイ州、ネブラスカ州、テキサス州の患者報告数は200人を超えています。

 2007年には43州で発生し患者数3,630人、死亡者数124人が報告されています。このうちコロラド州で576人、カリフォルニア州で380人、ノースダコタ州で369人、テキサス州で260人、サウスダコタ州で208人、モンタナ州で202人が報告されています。

 2008年には43州で発生し患者数1,356人、死亡者数44人が報告されています。このうちカリフォルニア州で445人、アリゾナ州で114人が報告されています。

 2009年には38州で発生し患者数720人、死亡者数32人が報告されています。このうちテキサス州で115人、カリフォルニア州で112人、コロラド州で103人が報告されています。

 2010年には41州で発生し患者数1,021人、死亡者数57人が報告されています。このうちアリゾナ州で167人、ニューヨーク州で128人、カリフォルニア州で111人が報告されています。

 2011年には44州で発生し患者数712人、死亡者数43人が報告されています。このうちカリフォルニア州で158人が報告されています。

 2012年には50州で発生し患者数5,674人、死亡者数286人が報告されています。このうちテキサス州で1,868人、カリフォルニア州で479人、ルイジアナ州で335人が報告されています。また、イリノイ州、ミシシッピー州、サウスダコタ州、ミシガン州の患者報告数は200人を超えています。

 2013年には48州で発生し患者数2,469人、死亡者数119人が報告されています。このうちカリフォルニア州で379人、コロラド州で322人、ネブラスカ州で226人が報告されています。また、テキサス州、サウスダコタ州、ノースダコタ州、イリノイ州の患者報告数は100人を超えています。

 2014年には45州で発生し患者数2,205人、死亡者数97人が報告されています。このうちカリフォルニア州で801人、テキサス州で379人が報告されています。また、ネブラスカ州、ルイジアナ州、コロラド州、アリゾナ州の患者報告数は100人を超えています。

 2015年には45州で発生し患者数2,175人、死亡者数146人が報告されています。このうちカリフォルニア州で783人、テキサス州で275人が報告されています。また、アリゾナ州、コロラド州の患者報告数は100人を超えています。

日本国内

 2005年9月にアメリカ合衆国ロサンゼルスから帰国した30歳代の男性会社員が神奈川県内で診察を受け、国立感染症研究所で血液検査をした結果、国内初のウエストナイル熱患者と診断された1例があります。

ウエストナイル熱は「動物由来感染症」「輸入感染症」

 結核やはしかのように、ヒトからヒトにうつって拡がっていく感染症はよく知られています。しかしヒトとヒトとの間では感染しないウエストナイル熱が、近年どうしてアメリカに見るような大規模な地域的拡大を起こしているのでしょうか? この病原体がアメリカに侵入した経緯については、ウエストナイルウイルスに感染した蚊が航空機でニューヨークに運ばれ、現地の鳥を吸血して感染が拡大した可能性が指摘されています。このようにウエストナイルウイルスは、他国から運ばれ輸入されるという意味で「輸入感染症」(Afferent infectious disease)であり、また、動物(鳥)からヒトに感染するという意味で「動物由来感染症」(Zoonosis)でもあります。
 感染拡大の原因が、「航空機で感染蚊が運ばれたことによる」のであれば、日本も決して他人事では済まされません。海外から到着した航空機内に蚊が侵入していないか調べるのはもちろんのこと、我々の身近な地域において鳥や蚊の状況を把握することが大切なのです。その方法について以下に述べましょう。

流行を早くキャッチするための方策

大量死したカラスの情報は早期発見に役立ちます

 ウエストナイルウイルスは主に鳥類と蚊との間で感染サイクルを形成しています。一口に鳥と言っても種類は様々ですが、ニューヨークの例では、ウエストナイルウイルスによって死んだ可能性のある鳥の3分の1から4分の1をカラスが占めていたようです。事実、ヒトでの流行の前に2か月から3か月先立ってカラスの死亡が多く報告されており、カラスの生態を観察することが、ウエストナイルウイルスの侵入監視と流行の予測にとって有効な手段となるのです。

「媒介蚊対策に関するガイドライン」を策定

 平成15年6月、厚生労働省は蚊に対する対策として、「ウエストナイル熱媒介蚊対策に関するガイドライン」を関係機関に示しました。そこには、次の内容が指示されています(なお、「サーベイランス」とは発生状況を把握し、動向を監視することです)。

  • 蚊のサーベイランスを実施し、地域に分布する蚊の種類や生息場所などを十分に把握する。
  • 蚊のサーベイランスで得られた情報をもとにして、蚊の幼虫の育つ水たまりなどの環境を改善することにより、幼虫の発生源をなくし成虫蚊の発生を抑制する。

 アメリカの調査によれば、30種類以上の蚊の体内からウエストナイルウイルスが検出されたと言います。ヒトや野鳥の血を吸う習性をもち、発生する数も多く、日本でも注意すべき蚊としては、以下の11種類が上げられています。
アカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ、コガタアカイエカ、ヒトスジシマカ、ヤマダシマカ、キンイロヤブカ、ヤマトヤブカ、セスジヤブカ、オオクロヤブカ、シナハマダラカ

法律により患者の届け出が義務づけられています

 感染症の発生の予防と蔓延の防止を目的として「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が定められています。アメリカでの流行を受けて、厚生労働省は平成14年11月、ウエストナイル熱をこの法律の対象として追加しました。医師がウエストナイル熱の患者を診察した場合は知事(保健所)への届け出が義務づけられたのです。現在ウエストナイル熱を含めて113の感染症についてサーベイランスが実施され、患者数が全国的に集計されています。名古屋市衛生研究所も、患者の発生動向調査(名古屋市感染症情報センター)やウイルス検査などを通して早期発見、感染拡大の防止につとめてまいります。

名古屋市のウエストナイル熱対策

平常時は3種類の動向調査に取り組みます

感染症発生動向調査事業

 医療機関から各区保健所への届け出に基づき、市内の患者の発生状況をとりまとめ、毎週の集計結果を週報としてホームページ上に公開しています。特定の場所で患者が多く発生した際には、保健所が中心となって現地調査を実施します。

蚊の発生状況調査

 ウエストナイル熱はヒトがウエストナイルウイルス感染蚊に刺されることによって感染します。5月から10月にかけて、主な媒介蚊であるイエカやヤブカの発生状況を生活衛生センターが調査し、衛生研究所で蚊の同定とウイルス検査を行います。

死亡(衰弱)鳥類の調査

 アメリカではウエストナイル熱の流行に先立って、死亡した野鳥(カラスなど)が多く報告されました。こうした前兆をとらえるため、公園や道路等において発見された野鳥の数を通年監視します。

患者が発生(またはウイルスを検出)した際の対策

市民への情報提供

 患者の発生状況および蚊の発生動態について市民や医療機関に情報提供するとともに、広報等により市民に注意喚起をいたします。

必要な医療の確保

 確定診断のための検査を実施いたします。

蚊の駆除対策

 ウイルスを媒介する蚊の駆除は重要です。各区の保健所が駆除の指導にあたるとともに、必要な場合には、名古屋市生活衛生センターが蚊の駆除を行います。

‐蚊の退治は幼虫から‐(健康福祉局健康部環境薬務課環境衛生係)

蚊の発生状況調査結果

蚊の捕集結果とウエストナイルウイルス検査結果

死亡(衰弱)鳥類の調査結果

カラスの死亡状況

名古屋市では、健康福祉局、緑政土木局、環境局が連携して、カラスの死体について情報収集を行っています。各局からの報告をもとに健康福祉局保健医療課が月ごとの集計を行います。

平成30年のカラスの死亡状況
区名1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年間
千種      

 

   5
          1

          3
西          5
中村     

 

    1
          5
昭和

          4
瑞穂          1
熱田          3
中川          4
          2
          3
守山          3
          7
名東          7
天白          2
全市25 31           56
平成29年までのカラスの死亡状況
調査年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計
平成29年 38 32 39 32 110 102 45 49 41 40 43 32 603
平成28年 15 27 25 28 90 93 54 31 38 35 39 40 515
平成27年 19 16 21 24 79 87 48 30 21 41 30 21 437
平成26年 29 19 23 34 68 67 50 37 25 30 30 24 436
平成25年 15 10 12 23 75 88 52 36 36 37 30 17 431
平成24年 17 11 16 19 63 46 37 34 32 35 24 11 345
平成23年 13 12 16 15 46 53 26 26 13 19 12 14 265
平成22年 10 12 15 10 33 25 30 15 21 19 12 13 215
平成21年 16 13 20 20 29 40 27 21 19 24 11 7 247
平成20年 6 17 15 17 75 46 36 25 22 21 15 22 317
平成19年 19 14 20 18 37 30 25 14 25 25 12 13 252
平成18年 18 5 14 13 25 19 23 26 23 16 10 7 199
平成17年 8 8 4 12 25 20 9 13 31 34 21 21 206
平成16年 2 5 34 23 38 21 16 15 14 7 8 6 189
平成15年 2 5 5 8 12 10 6 5 8 7 4 8 80

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