ヒアリング(平成29年9月21日〜10月17日実施)の主な意見 (分類は資料2「条例の枠組み(案)」に対応) 1 前文 ・前文を分かりやすさせるという意見を出したが、分かりやすくなったと思う。前文と目的がどう違うのかと思うことはある。 ・立派な前文をつくっても市民に読まれない可能性もある。 ・前文は福祉特別乗車券などの名古屋市の取り組みよりも相互理解と決意を述べたものを先にした方がいいと思う。 ・「障害者と健常者」は既に障害のある人とまだ障害のない人の違いでしかない。法的義務や努力義務というよりも、今は障害のない人たちに対し、他人事ではなく自分も障害者になる可能性はあるという自分のこととして考えてもらう必要がある。 ・「障害者と障害者でない人」というよりも、「既に障害のある人とまだ障害のない人」というように言い方を変えるだけでも違うと思う。 ・他の委員の発言にもあったが、今は障害が無くても明日には障害者になるかもしれない。 ・差別に焦点を当てるとそっぽを向かれることもある。「みんなで明るい」という感じがよいと思う。前文や目的もそのような書き方にすることで入りやすいし、差別の解消にも繋がる。 2 目的 ・多くの人に負荷をかけるよりも、大きな明るい目標に近づいていく方がよい。 3 用語の意義 ・「難病等」の範囲を障害者総合支援法の範囲と同じということになると、歌手のレディー・ガガさんが罹った線維筋痛症は含まれないと思うので、そのような解釈だと含まれないものも出てくる。手帳の有無や法律に含まれるかは問わない考え方とする。 ・直接差別だけでなく間接差別の問題もあるので、差別の定義は広くしてもらいたい。 4 基本理念 ・条例の理念については、具体的な内容があり、すっきりしない。 ・外見では障害者には見えないために「ヘルプカード」などを見せたとしても、それが何なのかと思われる。外国の人たちは席を譲ってくれることが多いので、教育が大事だと思う。優先席が必要な人は見た目だけでは判断してはいけないことを教育しないといけない。一見健常者とみられる人が優先席を利用している場合も見た目でわからない疾患を抱えているケースもあるとの想像・理解も大切である。 ・小さい頃からいろいろな子どもがいることを理解することが大切である。年齢が低い間に理解してもらえば、大人になったときに社会にいろいろな人がいることを理解されやすいと思う。 ・日常的なことだけでなく、災害時の配慮を今よりももう一歩進んだ形で出す。 5 市、事業者、市民の責務 ・差別の禁止等の中に市民を入れられないならば、責務の中で市民のことを事業者とは別にしてしっかりと書き、「差別の禁止等」の見出しも「市及び事業者の差別の禁止等」とする。 ・障害者差別解消法第4条では「国民の責務」があるので、それに基づいたことを書くのがよい。 ・事業者と市民の責務については、名古屋市の責務ほど強めにはしない方向でバランスは取れていると思う。 ・国の障害者差別解消法や愛知県の「障害者差別解消推進条例」があるので、「責務」がいいかもしれないが、障害のない人には未知の世界もある。障害者差別相談センターができて機能し始めている段階で「責務」とするのはきついと思う。 6 事前的改善措置 ・事前的改善措置を努力義務として明文化するかについては、これまでほとんど触れられていない。 ・バリアフリーもスロープ板を渡すような最低限のことは必要である。 7 差別の禁止 (1)不当な差別的取扱いの禁止 ・(E不動産取引)住居を借りるときに実際に苦労することが多いから「不動産取引」を「住宅・住居の確保」とする。 ・(H情報提供・意思表示の受領)コミュニケーションに不自由な人への対応があるとよい。 (2)合理的配慮の提供 (事業者も義務とする意見) ・障害者に対する理解が昔よりよくなっていることもあるが、差別は未だに残っているために条例は必要であり、条例であるからには縛ることは必要である。 ・差別の禁止は障害者権利条約や法律でも謳っているので、合理的配慮はそもそもしなければならないものである。障害者差別解消法では合理的配慮に対して「負担が過重でないとき」という文言もあるので、負担になり過ぎない範囲では合理的配慮をしなければならない。 ・努力義務でも努力はしないといけないので義務とは大差ない。(義務とした方がよい。) ・罰則がないのでどこまで対応できるかという問題はあるが、「合理的配慮をしなければならない」としてもいいと思う。 (事業者は努力義務とする意見) ・「努力義務」として、悪質なものだけを対応する。 ・名古屋市の条例が強く縛ることにより、例えば、愛知県内でも名古屋市内と名古屋市外では食い違いが出てしまうので避けるべきではないかと思う。 ・事業者は名古屋市から求められたときには逆にその根拠を迫る可能性もある。 ・事業者は努力義務やむなしではないか。障害当事者の立場としては義務がいいが、障害のある人とない人が対立する構図はよくないので、まずは努力義務でいいのではないかと思う。 ・厳しいのはいいことかもしれないが、事業者には大きな壁ができたと感じてしまうので、合理的配慮の義務化はしなくてもいい。 ・厳しめに書くことで条例をたてにして要求することによりお互いの溝を深めてしまう問題もある。 ・最初は努力義務で何年かごとの見直しが納得されやすい。 ・全文を読めば理解できるかもしれないが、「〜しなければならない」というところだけ取り出されることもありうるので、きついかもしれない。「努めなければならない」の方がよい。 ・どこまでできるかはそれぞれなので、努力義務とせざるをえないと思う。 (事業者は部分的に義務とする意見、どちらともいえない意見、その他関連する意見) ・合理的配慮はすべて同じ取り扱いとするのではなく、愛知県の「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」のような他に基準があるものは代替手段としてなされる合理的配慮も含めて義務とする。 ・義務とするならば、「過重な負担」をはっきりとさせることや、環境の整備との明確な整理も必要である。 ・条例は厳しくしてほしいが、厳しくすることで市民の間に「ここまではできない」とも言われる。 ・市民に受け入れてもらうためには努力義務となるが、障害者が使えるものになるためには義務としないといけない。 ・知的障害の人は物理的なものでは解決できないことがある。 ・「負担になり過ぎない範囲」とするが、どれくらいなのか。一定の負担は発生するが、「過重でない範囲」よりも程度が軽いように思う。「負担が重過ぎない範囲」などの表現がいいと思う。 ・意思表示に対して自分たちでできること以上のことは他のところを紹介するという方法もあるように思う。 ・当事者が意見表明をできないときに家族や後見人が代理でできることを明記する。 ・事業者には厳しくてもいいが、市民に厳しいと逆差別のような問題が起きることもある。 (障害者雇用における合理的配慮に関する意見) ・障害者が働く中で事業者に理解してもらえるように啓発し、障害者雇用が進むように条例に明記する。 (3)正当な理由や過重な負担についての説明 ・意思表示されたことに対しては、できることには対応し、できないことにはできない理由を説明する。 8 相談及び紛争解決の仕組み (1)相談体制 ・愛知県に条例がある中で名古屋市が条例をつくる上では、名古屋市が設けている障害者差別相談センターに強い権限を与えないと、せっかく条例をつくっても意味がない。 ・条例の中で障害者差別相談センターに権限や法的な裏付けを与えて障害者差別相談センターを活躍しやすくする。 ・委託といっても名古屋市の事業であり、名古屋市の職員でも民間の職員でも変わらないと思う。現在は公的部門の民間活力の活用も主流なので、しっかりと条例でも解決のために障害者差別相談センターが何をするのか明記して機能しやすくすべきである。 ・障害者基幹相談支援センターは福祉相談が主なので、障害者差別相談センターが中心になるのがよい。 ・紛争解決の際に普段利用しているところが相談窓口になることは利用しやすいものの、障害者基幹相談支援センターは事業者の立場でもある社会福祉法人なども関わっているために事業者の側と思われるおそれもあり、行政のような第三者による対応の方が障害者からは一方的だとは思われない。 ・相談窓口はたくさんあった方がいいので、障害者基幹相談支援センターも含める。 ・障害者差別相談センターに強い権限を持たせ、愛知県との役割分担を明確にしないといけない。 (2)紛争解決の仕組み ・紛争解決もちゃんと話し合っていればよく、無視するような場合は最終的に公表も必要である。 ・二重の構造になることでうまく動くのかという問題もある。障害者差別相談センターがしっかりと対応すればそこで済むことではある。 ・障害者本人による申し立ても大変なので、障害者本人の希望が前提であるが、障害者差別相談センターが申し立ての補助や代行をする方法もあるとよい。 ・紛争解決のしくみは公表に至るまで整備すべきである。 ・新たな体制というしくみはつくっておいた方がいいと思う。 9 障害者差別解消を推進する取り組み ・権利の主張よりも理解が重要であるので、啓発が必要である。 ・差別や合理的配慮自体が何であるのかが市民にも知られていないので、条例を市民や事業者に知られるような工夫が必要である。 ・パンフレットをつくったりイベントを開催しても、一部の人しか読まなかったり参加しない。若い人たちでも新聞は読まずにインターネットの利用が多いので、うまく伝わる工夫が必要である。 ・市民公開講座を開いても障害者、高齢者、子ども連れなどいろいろな人を対象にしないと人は来ない。 ・悪い事例だけでなくいい事例も紹介し、それを褒めたり表彰することで広めていく。いい事例を導入しても市民に知られないと広まらない。 ・小学校の教育で障害の特性を理解して育むことも必要だと思う。障害のある子どもも普通学級に通うことはインクルーシブな教育である。 ・毎年、障害者差別解消の条例について検証する機会を設けると規定する。 ・やるべき啓発として、義務を前面に出すよりも、温かい世の中をつくるということの方が差別も解消されるのではないか。 10 附則 ・条例ができることで問題が明確になることもあるので、定期的に見直す機会を設ける。 ・何年かごとに見直すということもあると思う。障害者差別解消法に倣って3年ごとに見直してもいいとは思う。